説明

発振装置

【課題】発振装置において、内部部品に水分が付着することを抑制する。
【解決手段】圧電振動子10と、一面において圧電振動子10を拘束する振動部材20と、振動部材20の縁を保持する支持枠30と、振動部材20の一面または一面とは反対の他面を覆うように設けられた遮蔽部材と、を備え、遮蔽部材の振動部材20と対向する面とは反対の面には、底面に撥水層52が設けられた溝部44が形成されており、遮蔽部材は、平面視で溝部44の内側に位置し、かつ内面に親水層54が設けられた音孔40を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子を有する発振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に搭載する電気音響変換器として、圧電型電気音響変換器がある。圧電型電気音響変換器は、圧電振動子に電界を印加することにより発生する伸縮運動を利用して、振動振幅を発生させるものである。圧電型電気音響変換器は、振動振幅を発生させるために多数の部材を必要とせず、薄型化に有利である。
圧電振動子に関する技術としては、例えば特許文献1〜4に記載のものがある。
【0003】
特許文献1に記載の技術は、圧電発音体を防水性のある膜で被覆するというものである。特許文献2に記載の技術は、圧電素子を有する振動板の周縁部に貼り付けられたフィルムを支持部材によって支持するというものである。特許文献3に記載の技術は、駆動板部の振動を、キャビティ内に封入された媒体を介して振動板部に伝達するというものである。特許文献4に記載の技術は、振動膜を高分子ゲルによって構成するというものである。
【0004】
圧電素子に関する技術としては、例えば特許文献5に記載の、超音波センサに関するものもある。特許文献5には、変換手段を保護する保護手段を有する超音波センサが開示されている。
また、他の電気音響変換器に関するものとしては、例えば特許文献6および7に記載のものがある。特許文献6に記載の技術は、放音孔の周囲に水との間の界面張力を減じる粗さを確保するというものである。特許文献7に記載の技術は、音響波を導入する音孔の前面に有孔板を設けるというものである。いずれにおいても、電子機器の防水性能を向上させると記載されている。電子機器の防水に関する技術としては、他にも例えば特許文献8および9に記載のものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭58−26299号公報
【特許文献2】特開昭63−257400号公報
【特許文献3】特開2007−104650号公報
【特許文献4】特開2003−219499号公報
【特許文献5】特開2006−94459号公報
【特許文献6】特開2004−193291号公報
【特許文献7】特開2002−186075号公報
【特許文献8】特開2003−324977号公報
【特許文献9】特開2002−357131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
圧電振動子を有する発振装置は、圧電振動子が有する電極間に電圧を印加することにより振動振幅を発生する。このため、圧電振動子等の内部部品に水分が付着した場合には、発振装置が故障してしまうおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、発振装置において、内部部品に水分が付着することを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明によれば、圧電振動子と、
一面において前記圧電振動子を拘束する振動部材と、
前記振動部材の縁を保持する支持枠と、
前記振動部材の前記一面または前記一面とは反対の他面を覆うように設けられた遮蔽部材と、
を備え、
前記遮蔽部材の前記振動部材と対向する面とは反対の面には、底面に撥水層が設けられた溝部が形成されており、
前記遮蔽部材は、平面視で前記溝部の内側に位置し、かつ内面に親水層が設けられた音孔を有している発振装置が提供される。
【0009】
また、第2の発明によれば、圧電振動子と、一面において前記圧電振動子を拘束する振動部材と、前記振動部材を保持する防水フィルムと、前記防水フィルムの縁を保持し、かつ前記防水フィルムの前記振動部材を保持する面とは反対の面側が開放されている支持枠と、を備え、前記防水フィルムは、開口を有しておらず、かつ全周において前記支持枠と接している発振装置が提供される。
【0010】
また、第3の発明によれば、第1圧電振動子と、一面において前記第1圧電振動子を拘束する振動部材と、前記振動部材の縁を保持する支持枠と、前記第1圧電振動子と接するように前記振動部材の前記一面側に設けられ、かつ前記振動部材および前記支持枠とともに密閉空間を構成する第1ゲル層と、を備える発振装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、発振装置において、内部部品に水分が付着することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係る発振装置を示す断面図である。
【図2】図1に示す発振装置の一部を示す拡大断面図である。
【図3】図1に示す圧電振動子を示す断面図である。
【図4】第2の実施形態に係る発振装置を示す断面図である。
【図5】図4に示す発振装置を示す平面図である。
【図6】図4に示す発振装置を示す機械回路図である。
【図7】第3の実施形態に係る発振装置を示す断面図である。
【図8】図7に示す発振装置の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0014】
図1は、第1の実施形態に係る発振装置100を示す断面図である。本実施形態に係る発振装置100は、本明細書における第1の発明に対応するものである。本実施形態に係る発振装置100は、圧電振動子10と、振動部材20と、支持枠30と、遮蔽部材と、を備える。発振装置100は、例えば携帯電話機等の電子機器に搭載される。
【0015】
振動部材20は、一面において圧電振動子10を拘束する。支持枠30は、振動部材20の縁を保持する。遮蔽部材は、振動部材20の一面または一面とは反対の他面を覆うように設けられる。遮蔽部材の振動部材20と対向する面とは反対の面には、底面に撥水層52が設けられた溝部44が形成されている。遮蔽部材は、平面視で溝部44の内側に位置し、かつ内面に親水層54が設けられた音孔40を有している。以下、発振装置100の構成について、詳細に説明する。
【0016】
振動部材20は、例えば平板形状を有している。振動部材20は、金属や樹脂等、脆性材料であるセラミックに対して高い弾性率を持つ材料によって構成され、例えばリン青銅、又はステンレス等の汎用材料によって構成される。振動部材20の厚みは、5〜500μmであることが好ましい。また、振動部材20の縦弾性係数は、1〜500GPaであることが好ましい。振動部材20の縦弾性係数が過度に低い、または高い場合、発振装置の振動特性や信頼性を損なうおそれがある。
【0017】
図1に示すように、遮蔽部材は、例えば筐体50である。支持枠30は、筐体50に固定されている。筐体50は、例えば振動部材20の一面を覆うように支持枠30を固定する。筐体50、支持枠30、および振動部材20によって囲われた空間は、例えば音孔40のみを介して外部と接続する。
【0018】
図1に示すように、撥水層52は、溝部44の底面全面に設けられている。また、撥水層52は、例えば親水層54の溝部44側に位置する端部を覆うように設けられている。撥水層52は、例えばPET、ウレタン、ブチルゴムまたはアクリルにより構成される。
図1に示すように、親水層54は、音孔40の内面全面に設けられている。また、親水層54は、例えばフッ素やシラン系化合物により音孔40の内面をコーティングすることによって形成される。
【0019】
図2は、図1に示す発振装置100の一部を示す拡大断面図である。音孔40の内面には親水層54が設けられているため、遮蔽部材である筐体50、支持枠30、および振動部材20によって囲われた空間に侵入した水滴は、音孔40に向かって移動する。音孔40に移動した水滴は、親水層54を伝って、溝部44へ移動する。溝部44の底面には撥水層52が設けられているため、親水層54から溝部44へ移動してきた水滴56は、溝部44においてメニスカスを形成する。これにより、水滴56の表面張力は増加する。従って、溝部44に移動してきた水滴56が、再度音孔40から発振装置100の内部へ侵入することが防止される。
【0020】
振動部材20と遮蔽部材との間隔は、例えば音孔40の直径の3倍以上である。このように、振動部材20と遮蔽部材との間隔と、音孔40の直径との関係を最適値に調整することにより、発振装置100内部から発振装置100外部における流路抵抗を低減することができる。従って、発振装置100内部に侵入した水分を、容易に外部へ排除することが可能となる。
【0021】
図3は、図1に示す圧電振動子10を示す断面図である。図3に示すように、圧電振動子10は、圧電体70、上部電極72および下部電極74を有している。圧電体70は、上部電極72および下部電極74に挟まれている。また、圧電体70は、その厚さ方向(図3中上下方向)に分極している。圧電振動子10は、振動部材20の一面と水平な面方向において、例えば円形または楕円形を有する。
【0022】
圧電体70は、圧電効果を有する材料により構成され、例えば電気機械変換効率が高い材料としてジルコン酸チタン酸鉛(PZT)またはチタン酸バリウム(BaTiO)等により構成される。また、圧電体70の厚みは、10μm〜1mmであることが好ましい。厚みが10μm未満である場合、圧電体70は脆性材料により構成されるため、取り扱い時において破損等が生じやすい。一方、厚みが1mmを超える場合、圧電体70の電界強度が低減する。このため、エネルギー変換効率の低下を招く。
【0023】
上部電極72および下部電極74は、電気伝導性を有する材料によって構成され、例えば銀または銀/パラジウム合金等によって構成される。銀は、低抵抗な汎用材料であり、製造コストや製造プロセスの観点から優位である。また、銀/パラジウム合金は、耐酸化性に優れた低抵抗材料であり、信頼性に優れる。上部電極72および下部電極74の厚みは、1〜50μmであることが好ましい。厚みが1μm未満の場合、均一に成形することが難しくなる。一方、50μmを超える場合、上部電極72または下部電極74が圧電体70に対して拘束面となり、エネルギー変換効率の低下を招く。
【0024】
発振装置100は、制御部90と、信号生成部92と、を備えている。信号生成部92は、圧電振動子10と接続し、圧電振動子10に入力する電気信号を生成する。制御部90は、信号生成部92に接続し、信号生成部92による信号の生成を制御する。外部から入力された情報に基づいて制御部90が信号生成部92の信号の生成を制御することにより、発振装置100の出力を制御することができる。
【0025】
発振装置100をパラメトリックスピーカとして使用する場合、制御部90は信号生成部92を介して、パラメトリックスピーカとしての変調信号を入力する。この場合、圧電振動子10は、20kHz以上、例えば100kHzの音波を信号の輸送波として用いる。
また、発振装置100を通常のスピーカとして使用する場合には、制御部90は信号生成部92を介して、音声信号をそのまま圧電振動子10へ入力してもよい。
また、発振装置100を音波センサとして使用する場合、制御部90に入力される信号は、音波を発振する旨の指令信号である。そして、発振装置100を音波センサとして使用する場合、信号生成部92は圧電振動子10に圧電振動子10の共振周波数の音波を発生させる。
【0026】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態によれば、遮蔽部材の振動部材20と対向する面とは反対の面には、底面に撥水層52が設けられた溝部44が形成されている。また、遮蔽部材は、平面視で溝部44の内側に位置し、かつ内面に親水層54が設けられた音孔40を有している。このため、発振装置100の内部に侵入した水分を容易に外部へ排除することができる。また、外部に排除した水分が、再度発振装置100内部へ侵入することが抑制される。従って、発振装置において、内部部品に水分が付着することを抑制することができる。
【0027】
図4は、第2の実施形態に係る発振装置102を示す断面図である。本実施形態に係る発振装置102は、本明細書における第2の発明に対応するものである。本実施形態に係る発振装置102は、圧電振動子10と、振動部材20と、防水フィルム22と、支持枠30と、を備えている。発振装置102は、例えば携帯電話機等の電子機器に搭載される。
【0028】
振動部材20は、一面において圧電振動子10を拘束する。防水フィルム22は、振動部材20を保持する。支持枠30は、防水フィルム22の縁を保持し、かつ防水フィルム22の振動部材20を保持する面とは反対の面側が開放されている。防水フィルム22は、開口を有しておらず、かつ全周において支持枠30と接している。以下、発振装置102の構成について詳細に説明する。
【0029】
図5は、図4に示す発振装置102を示す平面図であって、発振装置102の防水フィルム22および支持枠30の構成を示す図である。図5に示すように、防水フィルム22は、開口を有しておらず、かつ全周において支持枠30と接している。このため、防水フィルム22の一方の面側の空間と、他方の面側の空間は、防水フィルム22によって隔離される。
防水フィルム22としては、例えば防水性、防塵性のあるPET、ウレタン、ブチルゴムまたはアクリル等の樹脂材料を用いることができる。これにより、防水フィルム22の振動部材20を保持する面とは反対の面側から侵入してきた水分が、圧電振動子10や振動部材20に付着することが抑制される。
【0030】
防水フィルム22の膜厚は、例えば10μm以上500μm以下である。また、振動部材20の振動方向(図4中上下方向)および面内方向(図4中左右方向)において、防水フィルム22のバネ定数を、支持枠30のバネ定数の1/10以下とすることができる。このように、防水フィルム22の膜厚やバネ定数を調整することにより、後述するように、圧電振動子10および振動部材20の振動を支持枠30から分離することができる。
また、図4に示すように、防水フィルム22の振動部材20を保持する面とは反対の面上には、振動部材20等は設けられていない。
【0031】
図4に示すように、支持枠30は、例えば防水フィルム22の振動部材20を保持する面側が閉じられ、反対側が開放された筒状の形状を有するように構成することができる。この場合、防水フィルム22の振動部材20を保持する面と対向する部分において、例えば音孔42を設けることができる。
【0032】
振動部材20は、例えば第1の実施形態に係るものと同様のものを用いることができる。また、圧電振動子10は、例えば第1の実施形態に係るものと同様のものを用いることができる。
【0033】
発振装置102は、制御部90と、信号生成部92と、を備えている。制御部90および信号生成部92は、例えば第1の実施形態に係るものと同様のものを用いることができる。また、発振装置102の出力制御についても、制御部90および信号生成部92を用いて、第1の実施形態と同様に実施することができる。
【0034】
発振装置102は、筐体50を備えている。図4に示すように、筐体50は、防水フィルム22の振動部材20を保持する面とは反対の面と対向するように支持枠30を固定している。支持枠30は、例えば筐体50上に防水性の両面テープを用いて固定することができる。これにより、発振装置100の防水性、防塵性を向上することができる。
また、筐体50は、少なくとも一つの音孔40を有している。支持枠30、防水フィルム22および筐体50で囲われた空間は、音孔40のみを介して外部と接続している。
【0035】
図6は、図4に示す発振装置102を示す機械回路図である。圧電振動子10および振動部材20は、質量m、バネ定数k、および機械損失係数Cを有している。支持枠30は、質量m、バネ定数k、および機械損失係数Cを有している。筐体50は、質量m、バネ定数k、および機械損失係数Cを有している。防水フィルム22は、質量m、バネ定数k、および機械損失係数Cを有している。
【0036】
振動部材が、筐体に固定される支持枠に対し機械的に取り付けられている場合、筐体および支持枠は、振動部材とともに機械振動要素を構成する。このため、発振装置の振動系は、筐体および支持枠を含めたものとなる。従って、発振装置の発振周波数や振動振幅を決定するためには、筐体や支持枠の機械的特性を考慮しなければならない。この場合、発振装置の設計は困難となる。
【0037】
本実施形態において、振動部材20は、防水フィルム22を介して支持枠30に保持されている。このため、圧電振動子10および振動部材20からの振動は、防水フィルム22によって吸収され、支持枠30や筐体50へ伝達されない。
このように、発振装置100の発振周波数や振動振幅を決定するために筐体50や支持枠30の機械的特性を含める必要がない。従って、発振装置の設計を容易とすることが可能となる。
【0038】
本実施形態によれば、防水フィルム22は、開口を有しておらず、かつ全周において支持枠30と接している。このため、防水フィルム22の振動部材20を保持する面とは反対の面側から侵入してきた水分が、圧電振動子10や振動部材20に付着することが抑制される。従って、発振装置において、内部部品に水分が付着することを抑制することができる。
【0039】
図7は、第3の実施形態に係る発振装置104を示す断面図である。本実施形態に係る発振装置104は、本明細書における第3の発明に対応するものである。本実施形態に係る発振装置104は、圧電振動子10と、振動部材20と、支持枠30と、ゲル層26と、を備えている。発振装置104は、例えば携帯電話機等の電子機器に搭載される。
【0040】
振動部材20は、一面において圧電振動子10を拘束する。支持枠30は、振動部材20の縁を支持する。ゲル層26は、圧電振動子10と接するように振動部材20の一面側に設けられ、かつ振動部材20および支持枠30とともに密閉空間を構成する。以下、発振装置104の構成について詳細に説明する。
【0041】
図7に示すように、支持枠30は、例えば両端が開放された筒状の形状を有している。また、支持枠30は、例えば筐体50に固定されている。筐体50は、振動部材20から出力された音波を放射する音孔40を有している。
【0042】
発振装置104は、例えば弾性部材24を備えている。弾性部材24は、振動部材20の縁に設けられている。また、弾性部材24は、例えば振動部材20の全周に設けられる。弾性部材24は、例えばウレタン、PET、またはポリエチレン等の樹脂材料等によって構成される。支持枠30は、弾性部材24を介して振動部材20を保持している。
【0043】
ゲル層26は、全周が支持枠30の内面に接するように設けられている。また、ゲル層26は、開口を有さない。これにより、ゲル層26は、振動部材20および支持枠30とともに、密閉空間を構成することとなる。
【0044】
ゲル層26は、例えばシリコンハイドロゲル、またはポリエチレンオキシドゲル等によって構成される。ゲル層26は、常温において固形化した状態を保つ。一方で、発振装置104の駆動時において圧電振動子10から発生する熱を受けて液化する。
発振装置100内部への水分の侵入は、固形化したゲル層26によって抑制することができる。このため、圧電振動子10や振動部材20に水分が付着することを抑制することができる。
【0045】
発振装置104の駆動時においては、圧電振動子10から発生した熱を受けてゲル層26は液化する。このため、圧電振動子10および振動部材20の振動がゲル層26によって妨げられることは回避され、音孔40から放射される音波によって十分な音圧を確保することができる。
また、液化したゲル層26は、圧電振動子10および振動部材20の振動を受けて振動する。このため、ゲル層26からも音波が出力されることとなる。従って、高い音圧レベルを有する発振装置を実現することが可能となる。
【0046】
また、本実施形態において、ゲル層26は、発振装置104が振動する際に発生する応力が集中する発振装置104の端部に設けられている。これにより、落下時等における衝撃エネルギーはゲル層26に吸収されることとなる。従って、発振装置の機械的強度を向上させることができる。
【0047】
振動部材20は、例えば第1の実施形態に係るものと同様のものを用いることができる。また、圧電振動子10は、例えば第1の実施形態に係るものと同様のものを用いることができる。
【0048】
発振装置104は、制御部90と、信号生成部92と、を備えている。制御部90および信号生成部92は、例えば第1の実施形態に係るものと同様のものを用いることができる。また、発振装置104の出力制御についても、制御部90および信号生成部92を用いて、第1の実施形態と同様に実施することができる。
【0049】
図8は、図7に示す発振装置104の変形例に係る発振装置106を示す断面図である。発振装置106は、圧電振動子12およびゲル層28を備えている点を除いて、発振装置104と同様の構成を有している。圧電振動子12は、振動部材20の他面に拘束されている。また、ゲル層28は、圧電振動子12と接するように振動部材20の他面側に設けられ、かつ振動部材20および支持枠30とともに密閉空間を構成する。
【0050】
圧電振動子12は、例えば第1の実施形態における圧電振動子10と同様のものを用いることができる。
発振装置106は、振動部材20の一面および他面に圧電振動子10、12を備えたバイモルフ構造を有している。この場合、圧電振動子10と圧電振動子12は、分極方向が互いに逆である。また、圧電振動子10と圧電振動子12は、平面視で重なるように設けられている。
発振装置106がバイモルフ構造を有することにより、振動振幅の増大を図ることができる。
【0051】
ゲル層28は、全周が支持枠30の内面に接するように設けられている。また、ゲル層28は、開口を有さない。これにより、ゲル層28は、振動部材20および支持枠30とともに、密閉空間を構成することとなる。
また、ゲル層28は、例えばシリコンハイドロゲル、またはポリエチレンオキシドゲル等、ゲル層26と同様の材料により構成することができる。ゲル層28は、常温において固形化した状態を保つ。一方で、発振装置106の駆動時において圧電振動子12から発生する熱を受けて液化する。
【0052】
発振装置100内部への水分の侵入は、固形化したゲル層26およびゲル層28によって抑制することができる。このため、圧電振動子10や振動部材20に水分が付着することを抑制することができる。
【0053】
また、発振装置106の駆動時において液化したゲル層26、28は、圧電振動子10、12および振動部材20の振動を受けて振動する。このため、ゲル層26、28から音波が出力されることとなる。従って、十分な音圧を確保することができる。
【0054】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態によれば、圧電振動子10と接するように振動部材20の一面側に設けられ、かつ振動部材20および支持枠30とともに密閉空間を構成するゲル層26を備えている。発振装置100内部への水分の侵入は、ゲル層26によって抑制することができる。このため、圧電振動子10や振動部材20に水分が付着することを抑制することができる。従って、発振装置において、内部部品に水分が付着することを抑制することができる。
【0055】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0056】
10 圧電振動子
12 圧電振動子
20 振動部材
22 防水フィルム
24 弾性部材
26 ゲル層
28 ゲル層
30 支持枠
40 音孔
42 音孔
44 溝部
50 筐体
52 撥水層
54 親水層
56 水滴
70 圧電体
72 上部電極
74 下部電極
90 制御部
92 信号生成部
100 発振装置
102 発振装置
104 発振装置
106 発振装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動子と、
一面において前記圧電振動子を拘束する振動部材と、
前記振動部材の縁を保持する支持枠と、
前記振動部材の前記一面または前記一面とは反対の他面を覆うように設けられた遮蔽部材と、
を備え、
前記遮蔽部材の前記振動部材と対向する面とは反対の面には、底面に撥水層が設けられた溝部が形成されており、
前記遮蔽部材は、平面視で前記溝部の内側に位置し、かつ内面に親水層が設けられた音孔を有している発振装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発振装置において、
前記撥水層は、前記親水層の前記溝部側に位置する端部を覆うように設けられている発振装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発振装置において、
前記撥水層は、PET、ウレタン、ブチルゴムまたはアクリルである発振装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1項に記載の発振装置において、
前記親水層は、フッ素、またはシラン系化合物により前記音孔の内面をコーティングすることによって形成される発振装置。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか1項に記載の発振装置において、
前記振動部材と前記遮蔽部材との間隔は、前記音孔の直径の3倍以上である発振装置。
【請求項6】
圧電振動子と、
一面において前記圧電振動子を拘束する振動部材と、
前記振動部材を保持する防水フィルムと、
前記防水フィルムの縁を保持し、かつ前記防水フィルムの前記振動部材を保持する面とは反対の面側が開放されている支持枠と、
を備え、
前記防水フィルムは、開口を有しておらず、かつ全周において前記支持枠と接している発振装置。
【請求項7】
請求項6に記載の発振装置において、
前記防水フィルムの前記振動部材を保持する面とは反対の前記面と対向するように前記支持枠を固定し、かつ少なくとも一つの音孔を有する筐体を備え、
前記支持枠、前記防水フィルムおよび前記筐体で囲われた空間が、前記音孔のみを介して外部と接続している発振装置。
【請求項8】
第1圧電振動子と、
一面において前記第1圧電振動子を拘束する振動部材と、
前記振動部材の縁を保持する支持枠と、
前記第1圧電振動子と接するように前記振動部材の前記一面側に設けられ、かつ前記振動部材および前記支持枠とともに密閉空間を構成する第1ゲル層と、
を備える発振装置。
【請求項9】
請求項8に記載の発振装置において、
前記第1ゲル層は、シリコンハイドロゲル、またはポリエチレンオキシドゲルによって構成される発振装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の発振装置において、
前記振動部材の前記一面とは反対の他面に拘束される第2圧電振動子と、
前記第2圧電振動子と接するように前記振動部材の前記他面側に設けられ、かつ前記振動部材および前記支持枠とともに密閉空間を構成する第2ゲル層と、
を備える発振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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