説明

発散収束流路を備えたポペット弁及び全圧力損失を低減する方法

【課題】圧縮機性能を向上させ且つメンテナンス及び停止時間が低減されたハイパー圧縮機用ポペット弁を開発すること。
【解決手段】弁本体(11)と、弁(50)の流れ入口から流れ出口までの流路を形成するように弁本体(11)内部に配置されたポペットガイド(16)と、ポペットガイド(16)の内部に配置されたポペットシャッタ(54)と、ポペットシャッタ(54)の外側表面の一部と弁本体(11)の内側表面の対応する一部とによって形成された収束発散流路(68)とを含むポペット弁(50)が開示される。ポペット弁(50)のポペットシャッタ(54)に作用する閉鎖圧力による力を低減するための方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示される実施形態は、全体的に圧縮機に関し、より詳細には、収束発散流路を備えたハイパー圧縮機のポペット弁及びこれらの弁における全圧力損失を低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイパー圧縮機は、最大3,000バール又はそれ以上のガス圧力レベルを発生することができ、限定ではないが、低密度ポリエチレンすなわちLDPEの製造を含む産業用途において広く使用されている。これらの圧縮機の効率性能は、吸込及び吐出自動ポペット弁によって少なくとも部分的に制御される。図1は、開放位置にある従来のポペット弁10を示している。図示のように、従来のポペット弁10は、ハイパー圧縮機の内外のガス流路を開閉するよう構成されたポペット又はポペットシャッタ12と、ポペット12を閉鎖位置で保持するよう構成されたバネ14と、ポペット12及びバネ14を収容するポペットガイド16とを包含する弁本体11を含む。図示のように、ポペットシャッタ12が強制開放されると入口18から出口20までの流路17が形成され、該流路17は、ポペットシャッタ12と弁本体11との間に形成されるスペースによって、並びにポペットガイド16と弁本体11との間のスペースによって定められる。従来のポペット弁10のポペットガイド16は更に、流れのよどみ域においてポペットガイド16の内側チャンバ26を流路17に接続する、ポペットガイド16の軸線24に沿った吐出開口22を更に含み、ポペットガイド16の内側チャンバ26の背圧は従来のポペット弁10の軸線24の周りの静圧によって少なくとも部分的に定められる。
【0003】
これらのポペット弁は、LDPEの製造プラントで使用されるハイパー圧縮機の信頼性において重要な役割を果たす。このような弁の性能は、高い作動ガス圧力に耐える選択材料特性及び好適な設計だけでなく、ポペットシャッタ12の適正な動的挙動にも依存する。弁の適正な開閉は、とりわけ、弁を開放するようにポペットシャッタ12及びポペットガイド16に作用する抗力(この抗力は、記載した弁部品とのガス流の相互作用によって発生する)、従来の弁10を閉鎖するようポペットガイド16に作用するガス圧による力(このガス圧による力は、ポペットガイド16の背面に作用する流れ背圧により発生する)、ポペットシャッタ12の質量に関連する慣性力、及び弁を閉鎖するようにバネ14により発生するバネ力とを含む、弁に作用する複数の動力に関連する種々の設計制約による影響を受ける。
【0004】
上述の設計制約の1つの例は、ハイパー圧縮機のピストンの吸込ストローク中にシャッタを完全且つ安定的に開放する要件を含む。この事例では、流れ面積が縮小されることにより、圧力損失が増大し、ガス温度が高くなり、圧縮機効率の損失を生じる可能性がある。更に、シャッタの不安定な動きはまた、主として可動部品と固定部品との間の衝突回数が増加することに起因して、故障メンテナンス間隔が短くなる可能性がある。設計制約の別の例は、逆流を避けるためにピストン運動が反転する前に伸縮バネによりシャッタを閉鎖する要件に関する。加えて、早期閉鎖中のポペットの動きは、バネ力と同じ方向に作用するガス抗力により更に加速することができる。更に別の例は、表面の衝突摩耗、並びに不必要に弁構成部品の衝突強度を高めること、すなわち弁重量及びコストを増大させることを防ぎ又は最小限にするために、可動部品と固定部品間の衝突速度を許容限界内に維持する要件に関する。最後に、設計制約の別の例は、幾つかの要因の中でも特に、ガス中に潤滑油及び他の汚染物質が存在することによって、互いに接触して種々の表面で固着を引き起こし、結果として衝突速度の増大及び弁閉鎖遅延を生じることになる固着現象に対する低感度についての要件である。
【0005】
ガス温度が高い、早期の摩耗、ポリマーの存在、又は音が大きいことなどの種々の要因は、弁寿命の短縮につながる可能性のある、弁性能が不十分であることの指標とすることができる。3次元数値流体力学(すなわちCFD)を広範に使用して、種々の弁動作条件での圧力損失、抗力、圧力分布、及び流量係数を正確にシミュレートすることができる。これらのシミュレーション検討及び実験結果に基づくと、ポペット運動は、重要な性能要因と相関付けられ、弁寿命を推定するのに使用することができ、更に、従来の弁構成では、上述の抗力及び圧力が弁を安定して又は完全に開放するには不十分であることが分かっている。更に又、従来の弁10の流路では、弁が開放されている間、図1において要素28で識別される領域においてポペットシャッタ12と弁本体11の内側表面との間に突然の膨張流が形成され、その結果、流れの圧力損失が引き起こされ、これは、当初は弁開放の助けとなるが、後で開放が進むにつれて、当該領域における圧力損失が大きいこと及びこれに伴って流動不安定性が発生することに起因して、弁の動的性能に好ましくない影響を及ぼすことになる。従って、弁開放プロセスの間のこの局所的に持続する圧力損失、並びに上述のようなポペットガイド16の内側チャンバ26の背圧によって同時に発生する圧力増大により、従来のポペット弁10の動的性能が不十分なものになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、弁開放中の性能を改善し、これに加えて、弁が完全に開放されたときの全圧力損失を低減し、よって圧縮機性能を向上させ且つメンテナンス及び停止時間が低減されたハイパー圧縮機用ポペット弁を開発することが望ましいことになる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ポペット弁の開放プロセスの間の制御変数の1つは、流路に沿った全圧力損失である。ポペットシャッタと、該ポペットシャッタが着座する弁本体の内側表面との間に収束発散流路を形成することによって、収束発散流路の領域における局所圧力損失は、弁が開くにつれて低減するように制御され、これにより弁開放プロセス全体の間の性能が改善される。ポペット及び着座部輪郭の両方は、収束発散通路の適正なスロート断面構成を設定するように別個に配置することができる。加えて、ポペットチャンバに作用する背圧によって発生する力を低減するために、弁チャンバ内部の低静圧は、収束発散流路のスロートをポペットガイドの内側チャンバに接続する流れパージ通路を設けることによって生成することができ、これにより、内部ポペットチャンバに作用するガス圧力による力を低減して弁を閉鎖させ、弁に沿って必要な差圧を低減して弁を開放し、更に弁の動的開放を安定化するようにする。
【0008】
上記で要約された必要性又は当該技術分野で公知の他の事柄の1つ又はそれ以上は、弁本体と、流れ入口から流れ出口までの流路の第1の部分を形成するように弁本体内部に配置されたポペットガイドと、ポペットシャッタの外側表面と弁本体の内側表面との間の流路の第2の部分を形成するようにポペットガイド内部に配置されたポペットシャッタと、ポペットシャッタの外側表面の一部と弁本体の内側表面の対応する一部とによって形成された収束発散流路とを含むポペット弁によって対処される。
【0009】
開示される主題によるポペット弁はまた、弁本体と、流れ入口から流れ出口までの流路の第1の部分を形成するように弁本体内部に配置されたポペットガイドと、流路の第2の部分を形成するようにポペットガイド内部に配置されたポペットシャッタと、流れ入口の内側表面に向けてポペットシャッタを付勢して流路を遮断するように構成されたポペットガイドの内側チャンバ内部に配置された付勢部材と、ポペットシャッタの外側表面の一部及び弁本体の内側表面の対応する部分によって形成された収束発散流路と、ポペットガイドの内側チャンバを収束発散流路のスロートと流れ連通して配置するよう構成されたパージ流路とを含む。
【0010】
ポペット弁のポペットシャッタに作用する閉鎖圧力による力を低減する方法もまた、本明細書で開示される主題の範囲内にある。これらの方法は、ポペット弁が開き始め、ポペットシャッタが弁本体の着座面近傍に配置されたときには、ポペットシャッタの外側表面の一部と弁本体の内側表面の対応する部分とによって形成される収束発散流路の位置における全圧力損失を増大させ、ポペットシャッタに作用する力を増大させてポペット弁を開放させるようにする段階と、ポペット弁が引き続き開いており、ポペットシャッタが着座面から離れて移動するときには、収束発散流路のスロート域が増大するにつれて全圧力損失を減少させる段階とを含む。
【0011】
上記の簡単な説明では、以下の詳細な説明をより理解できるようにするため、並びに当該技術分野への本発明の寄与をより評価できるようにするめに、本発明の種々の実施形態の特徴を記載している。勿論、以下で説明されることになり、且つ添付の請求項の主題となる本発明の他の特徴も存在する。
【0012】
この点に関して、本発明の幾つかの実施形態を詳細に説明する前に、本発明の種々の実施形態は、その応用において以下説明で記載され又は図面で示された構成の詳細及び構成部品の配置に限定されるものではないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、種々の方法で実施及び実行することができる。また、本明細書で使用される表現及び用語は、説明の目的のものであり、限定とみなすべきではないことを理解されたい。
【0013】
従って、開示事項のベースとなる概念は、本発明の幾つかの目的を実行する他の構造、方法、及び/又はシステムを設計するための根拠として容易に利用することができることは、当業者であれば理解されるであろう。従って、本発明の請求項は、本発明の技術的思想及び範囲から逸脱しない範囲においてこのような均等な構成を含むものとみなすことが重要である。
【0014】
更に、要約書の目的は、一般的には特許審査官及び/又は一般人、並びに特に、特許又は法律の用語もしくは表現に精通していない科学者、技術者、及び実施者が、本出願の具述的な開示事項の特質及び本質を一瞥して判断できるようにすることである。従って、要約書は、請求項によってのみ評価される本発明又は本出願を定義することを意図しておらず、更に、本発明の範囲をどのようにも限定するものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】閉鎖位置にある従来のポペット弁の切り欠き図。
【図2A】開示される主題の例示的な実施形態による、開放位置にあるポペット弁の切り欠き図。
【図2B】ポペット弁の収束発散通路の拡大図。
【図3】弁の異なる位置に配置された収束発散通路を備えた、開示された主催の別の例示的な実施形態による開放位置にあるポペット弁の切り欠き図。
【図4】開示された主題の別の例示的な実施形態による開放位置にあるポペット弁の切り欠き図。
【図5】開示された主題の更に別の例示的な実施形態による開放位置にあるポペット弁の切り欠き図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の開示される実施形態並びにその付随する利点のより完全な理解は、添付図面を参照しながら検討したときに、以下の詳細な説明を参照することによってより十分に理解することから得られるであろう。
【0017】
本明細書で開示される主題の実施形態は、全体的に圧縮機に関し、より詳細には、開放プロセス中の全圧力損失を低減するための収束発散流路を含むハイパー圧縮機のポペット弁に関する。ポペット弁の開放プロセス中の制御変数の1つは、流路に沿った全圧力損失である。ポペットシャッタと、該ポペットシャッタが着座する弁本体の内側表面との間に収束発散流路を形成することによって、収束発散流路の領域における局所的な圧力損失が弁の開放につれて低減するように制御され、これにより弁開放プロセス全体にわたる性能が改善される。加えて、ポペットチャンバに作用する背圧によって発生する力を低減するために、開示される主題の2つの構造的特徴の1つによって、弁チャンバ内部に低い静圧を生成することができる。第1の特徴は、ポペットガイドの内側チャンバに収束発散流路のスロート部を接続する流れパージ通路を設けることであり、第2の特徴は、ポペットガイドの内側チャンバに弁の流路内の低静圧領域を接続する流れパージ通路を設けることであり、これによって、内部ポペットチャンバに作用するガス圧力による力を低減して弁を閉鎖させ、弁に沿って必要な差圧を低減して弁を開放し、更に弁の動的開放を安定化するようにする。ここで、幾つかの図全体を通して同じ参照符号が同じ要素又は対応する要素を示す図面を参照し、本明細書で開示されるポペット弁の幾つかの実施形態を説明する。
【0018】
図2Aは、開示される主題の例示的な実施形態によるポペット弁50を示し、図2Bは図2Aの一部の拡大図である。図示のように、ポペット弁50は開放位置で示されている。ポペット弁50は、弁本体52、シャッタ54、シャッタガイド56、及びシャッタ54をシャッタガイド56から離れるように付勢するバネ58とを含む。ポペット弁50はまた、入口58と出口60とを含む。作動時、バネ58は、シャッタ54を押し出してシャッタ54の表面の一部62が弁本体52の内側表面64に支えられ、これによりガスが入口58から出口64に又はその逆に流出するのを防ぐようにする。入口58内のガスの圧力によってシャッタ54に加わる力がバネ58の付勢力よりも大きいときには、シャッタ54は開放位置に移動し、シャッタ54と弁本体52との間並びにシャッタガイド56と弁本体52との間に形成された流路を通って入口58から出口60にガスが流れることができるようになる。
【0019】
図2Bで示すように、ポペット弁50の流路66は更に、ポペットシャッタ54と弁本体52との間に形成された収束発散通路68を含む。作動時には、ポペット弁50が開放し始めると、ポペットシャッタ54が弁本体52に比較的近接しているときには、従来のポペット弁と比べて、収束発散通路66を通る流れにおいてより高い全圧力損失が収束発散通路68の位置で発現する。しかしながら、ポペットシャッタ54が弁本体52から更に離れて移動すると、収束発散通路68を通る圧力損失は、弁が引き続き開放するにつれて低減される。ポペットシャッタ54と、該ポペットシャッタが着座する弁本体52の内側表面との間に収束発散通路68を形成することによって、収束発散通路68の領域での局所的な圧力損失が、弁が開放するにつれて低減するように制御され、これにより弁開放プロセス全体にわたる性能が改善される。ポペット及び着座部輪郭の両方が収束発散通路68の適正なスロート断面構成を設定するように別個に配置することができる。また、収束発散通路68の位置は軸方向に移動され、開示される機能を依然として維持することができる。図3に示すように、当該図面に示される例示的な実施形態は、ポペットシャッタ54が弁本体52に着座するポイントから軸方向に離れて配置された収束発散通路68を示している。
【0020】
図2Bに更に示されるように、収束発散通路68の各々は、収束部分70、最小区域又はスロート72、及び発散セクション74を含む。図2に示すように、本明細書で開示される主題の1つの実施形態では、ポペットガイド56の軸線78に沿った吐出開口76は、ポペットガイド56内側チャンバを流路に接続し、これにより強制的に閉鎖するようポペットシャッタ54に作用する背圧を決定する。従って、上記で説明されたように、軸線78に沿った収束発散通路66の軸方向位置は、弁開放中に最も大きなシャッタ力を生成するように軸方向に変えることができる。また、上述したように、吐出開口76は、内側チャンバ80を出口60の排気流と連通状態を維持し、内側チャンバ80が、軸線78に沿って出口60(排気流)と実質的に同じ背圧を有するようにする。
【0021】
従って、収束発散通路68が配置されるポペットシャッタ54の縁部付近の流路の適正な輪郭形成によって、特にポペットヘッドのゾーンにおいて、上述のように従来のポペット弁で見られる突然の膨張が存在することに起因した境界層分離及び再循環渦流の発生が排除又は実質的に低減される。当業者であれば理解されるように、これらの渦は、連続した循環形成プロセスに起因して流れの不安定性の原因となる。従って、定常状態のCFDシミュレーションは、弁を通る流れに対するこれらの渦流の作用並びにポペット動特性に関する定量的情報を提供することができないが、これらのシミュレーションは、本明細書で開示されるような、弁を通る流れのこのような損失源を排除又は実質的に低減するよう構成された様々な幾何形状の設計に有用なツールである。従って、ポペットシャッタ54のヘッドに収束発散幾何形状を使用することで、突然の膨張を有する流れ領域を防ぎ、流れ転回を平滑にすることによって境界層分離が排除又は実質的に回避される。
【0022】
図2の吐出開口76が流れのよどみ域に接続されているので、ポペット弁50の軸線上で静圧によって少なくとも部分的に定められているポペットガイド56の内側チャンバ80の背圧は、図4及び5に示す例示的な図で示される様々な実施形態によって低減することができる。図4は、ポペット弁90の例示的な実施形態を示しており、ここでは、収束発散通路68の低静圧領域をポペットガイド92の内側チャンバ80に接続する流路94を設けることによってポペットガイド92の内側チャンバ80内に低い静圧を発生させることができ、これによりポペットシャッタ96の背面に作用するガス圧力による力を低減してポペット弁90を閉鎖させ、ポペット弁90に沿って必要な差圧を低減して弁を開放し、更にポペット弁90の動的開放を安定化するようにする。パージ流路94の位置は、弁開放プロセスを促進するためにポペット弁90の内側チャンバ80において低静圧を有するように最適化することができる。1つの例示的な実施形態において、パージ流路94の各々は、収束発散通路68のスロート72を内側チャンバ80に接続する。図4に示す主題の実施形態では、パージ流路94は、流路66と内側チャンバ80との間の唯一の流体接続である。
【0023】
従って、弁を開放するためにガス力の増大を可能にする図4に示す実施形態の有利な特徴の1つは、パージ流路のシフトである。ポペットシャッタとポペットガイド(ここにバネ58が配置されている)との間に含まれる容積からのガスの流入及び流出の基本となるこのような通路は、図2におけるよどみゾーンに配置され、従って、ポペット背面に印加される圧力が高くなる。ガス速度がより高い値に達する収束発散通路68のスロートにこれらのパージ流路をシフトさせると、ポペット弁を近接させるように作用するガス力を引き起こす圧力を低くすることが可能となり、従って、バネ力の反作用よりも大きな抗力をもたらすことになる。
【0024】
図5の例示的な実施形態のポペット弁100において、図示のように、シャッタガイド102は、流路66の一部を形成する2つの後方孔104と、シャッタガイド102の内部チャンバ72を流路66と流れ連通して配置する1つ又はそれ以上の吐出孔106とを含む。図5に更に示すように、吐出孔106は、ポペット弁100の中心線74に対して傾斜され、ポペット弁100を通るガス流が加速される流路66の領域が、シャッタガイド102の内部チャンバ72に接続されるようにする。流れは加速流領域を通って加速されるので、内部チャンバ72内の静圧が低下し、これにより弁本体52の内側表面64に対してシャッタを付勢するようにシャッタ54に作用するガス圧力による力を低減する。加えて、当業者には理解されるように、後方孔104の直径Drrは、流れ加速領域における流れ加速量を制御するように選択することができる。詳細には、ポペット弁100の後方孔104の直径は、図1に示す従来の弁10の対応する孔よりも小さい。例えば、限定とみなすべきではないが1つの特定の実施形態では、ポペット弁100のDrrは、従来の弁10の吐出開口22の直径Ddoの66%である。従って、ポペット弁100及び従来の弁10が25mmの同じ入口直径Diを有するとすると、従来の弁10に対するDdo/Diは約0.6であり、ポペット弁100に対するDrr/Diは、0.36から0.44までの範囲に及び、好ましくは0.4とすることができる。加えて、傾斜吐出孔106の傾斜角度は、内部チャンバ72内のバネ58の配置を考慮して、内部チャンバ72が後方孔104に確実に接続されるように決定される。従って、今説明した例示的な実施形態では、傾斜角度の値の範囲は、10度と25度の間、好ましくは19度である。
【0025】
以上のことから、図2〜5のポペット弁50、90、100の有利な特徴の幾つかは、以下のことを含む。
・(1)弁本体とポペットシャッタ54との間に収束発散通路が形成され、ポペット弁が開放し始めると、ポペットシャッタが弁本体に比較的近接しているときには従来のポペット弁と比べて、収束発散通路を通る流れにおいてより高い全圧力損失が収束発散通路の位置で発現するようにされる。しかしながら、ポペットシャッタが弁本体から更に離れて移動すると、収束発散通路を通る圧力損失は、弁が引き続き開放するにつれて低減され、これにより弁開放プロセス全体にわたる性能が改善される。
・(2)収束発散通路の低静圧領域をポペットガイドの内側チャンバに接続する流路を設け、これによりポペットシャッタの背面に作用するガス圧力による力を低減してポペット弁を閉鎖させ、ポペット弁に沿って必要な差圧を低減して弁を開放し、更にポペット弁の動的開放を安定化するようにする。
・(3)流路の後方孔をシャッタガイドの内側チャンバに接続する1つ又はそれ以上の傾斜吐出孔を設け、これにより低圧の位置(すなわち流れ加速の位置)からの静圧をシャッタガイドの内側チャンバに伝達するようにする。結果として、背圧が低減され、弁開放は、開放/閉鎖過渡事象中により安定になる。これにより、弁を通る圧力損失が低減され、吐出時のガス温度が低下し、更に衝突速度が低減されるので、弁摩耗が減少し、弁寿命が改善されることになる。当業者には理解されるように、ポペット弁の動的性能を改善するために本明細書で開示された種々の特徴は、個々に、或いは記載されたあらゆる組み合わせで用いることができる。
【0026】
流体運動及び弁動特性を考慮したCFDシミュレーション結果により、上述のようなポペット弁50、90、100の動作が確認された。弁動特性の数学的モデルは、2つの微分方程式に基づいており、1つは、一定の圧力低下における開放弁を通過するガス流に関連し、もう1つは、シャッタ質量に起因する慣性力、減衰力、伸縮バネからの弾性力、弁を通過するガスの抗力、及びシャッタ移動の終わりにおける固定部品とのシャッタの衝突力の影響を受けたシャッタの運動の法則に関連している。流体流は、二方程式渦粘性乱流モデル(K−ω)を壁統合境界処理で用いて定常流についてレイノルズ平均Navier−Stokes方程式を解くことによって予測された。
【0027】
本明細書で開示される主題の開示された実施形態は、幾つかの例示的な実施形態と関連して特異性及び詳細事項に関して図面において示され、且つ上記で十分に説明されたが、新規の教示事項、本明細書で記載された原理及び概念、並びに添付の請求項に記載の主題の利点から実質的に逸脱することなく、多くの修正、変更、及び省略が可能である。従って、開示された発明の適正な範囲は、全てのこのような修正、変更、及び省略が含まれるように、添付の請求項を最も広く解釈することによってのみ決定すべきである。加えて、あらゆるプロセス又は方法ステップの順序又は配列は、代替の実施形態に応じて変更され、又は再配列することができる。最後に、請求項のある機能的記載は、記載された機能を実施するものとして本明細書で説明された構成、並びに構造上の均等物だけでなく均等な構造物をも保護するものとする。
【符号の説明】
【0028】
11 弁本体
16 ポペットガイド
17 流路
18 流れ入口
20 流れ出口
50 ポペット弁
54 ポペットシャッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポペット弁(50)であって、
中心軸、流れ入口(18)、及び流れ出口(20)を有する弁本体(11)と、
前記流れ入口(18)から前記流れ出口(20)までの流路(17)の第1の部分を形成するように前記弁本体(11)内部に配置されるポペットガイド(16)と、
を備え、
前記流路(17)が、前記弁本体(11)の内側表面と前記ポペットガイド(16)の外側表面との間に形成されて、前記ポペットガイド(16)内の少なくとも1つの孔を貫通し、
前記ポペット弁(50)が更に、
外側表面と前記弁本体(11)の内側表面との間に流路の第2の部分を形成するように前記ポペットガイド(16)の内部に配置されたポペットシャッタ(12)と、
前記ポペットシャッタ(12)の外側表面の一部と前記弁本体(11)の内側表面の対応する部分とによって形成された収束発散流路(17)と、
を備えたポペット弁(50)。
【請求項2】
前記ポペット弁(50)が開くと、前記収束発散通路を通る流れの全圧力損失は、最初に前記ポペットシャッタ(12)が前記弁本体(11)に近接したときに増大し、前記ポペット弁(50)が引き続き開いている状態で前記ポペットシャッタ(12)が前記弁本体(11)から離れて移動するにつれて減少する、
請求項1に記載のポペット弁(50)。
【請求項3】
前記ポペットガイド(16)の内側チャンバ内部に配置された付勢部材を更に備え、該付勢部材が、前記ポペットシャッタ(54)を前記流れ入口の内側表面に向けて付勢して前記流路を遮断するように構成されている、
請求項2に記載のポペット弁(50)。
【請求項4】
前記収束発散流路(68)は、前記ポペット弁(50)が閉鎖されたときに前記ポペットシャッタ(54)が前記弁本体(11)に着座する位置に隣接する前記ポペットシャッタ(54)の縁部に配置される、
請求項3に記載のポペット弁(50)。
【請求項5】
前記収束発散流路(68)は、前記ポペット弁(50)が閉鎖されたときに前記ポペットシャッタ(54)が前記弁本体(11)に着座する位置に隣接する前記ポペットシャッタ(54)の縁部から軸方向上流側に配置される、
請求項3に記載のポペット弁(50)。
【請求項6】
前記ポペットガイド(16)の内側チャンバを前記流路の低静圧領域と流れ連通して配置するように構成されたパージ流路(94)を更に備える、
請求項2に記載のポペット弁(50)。
【請求項7】
前記低静圧領域が、収束発散通路(68)のスロートである、
請求項6に記載のポペット弁(50)。
【請求項8】
前記低静圧領域が、前記ポペットガイド(16)の少なくとも1つの孔である、
請求項6に記載のポペット弁(50)。
【請求項9】
前記パージ流路(94)が、前記弁本体の中心軸に対して傾斜されている、
請求項8に記載のポペット弁(50)。
【請求項10】
前記流れ入口の直径に対する前記少なくとも1つの孔の直径の比が、約0.36から約0.44の範囲にわたる、
請求項9に記載のポペット弁(50)。
【請求項11】
ポペット弁(50)であって、
中心軸、流れ入口、及び流れ出口を有する弁本体(11)と、
前記流れ入口から前記流れ出口までの流路の第1の部分を形成するように前記弁本体(11)内部に配置されるポペットガイド(16)と、
を備え、
前記流路が、前記弁本体(11)の内側表面と前記ポペットガイド(16)の外側表面との間に形成されて、前記ポペットガイド(16)内の少なくとも1つの孔を貫通し、
前記ポペット弁(50)が更に、
外側表面と前記弁本体(11)の内側表面との間に流路の第2の部分を形成するように前記ポペットガイド(16)の内部に配置されたポペットシャッタ(12)と、
前記ポペットガイド(16)の内側チャンバ内部に配置され、前記ポペットシャッタ(54)を前記流れ入口の内側表面に向けて付勢して前記流路を遮断するように構成された付勢部材と、
前記ポペットシャッタ(54)の外側表面の一部と前記弁本体(11)の内側表面の対応する部分とによって形成された収束発散流路(68)と、
前記ポペットガイド(16)の内側チャンバを前記収束発散流路(68)のスロートと流れ連通して配置するよう構成されたパージ流路(94)と、
を備えたポペット弁(50)。
【請求項12】
前記ポペット弁(50)が開くと、前記収束発散通路(68)を通る流れの全圧力損失は、最初に前記ポペットシャッタ(54)が前記弁本体(11)に近接したときに増大し、前記弁が引き続き開いている状態で前記ポペットシャッタ(54)が前記弁本体(11)から離れて移動するにつれて減少する、
請求項11に記載のポペット弁(50)。
【請求項13】
中心軸、流れ入口、及び流れ出口を備えた弁本体(11)を有するポペット弁(50)のポペットシャッタ(54)に作用する閉鎖圧力による力を低減するための方法であって、前記ポペット弁(50)が、ポペットガイド(16)と、該ポペットガイド(16)の内部に配置された前記ポペットシャッタ(54)を前記弁本体(11)に接して付勢し、前記ポペット弁(50)を閉鎖するように構成された付勢部材とを更に備え、
前記方法が、
前記ポペット弁(50)が開き始め、前記ポペットシャッタ(54)が前記弁本体(11)の着座面近傍に配置されたときには、前記ポペットシャッタ(54)の外側表面の一部と前記弁本体(11)の内側表面の対応する部分とによって形成される収束発散流路の位置における全圧力損失を増大させ、前記ポペットシャッタ(54)に作用する力を増大させて前記ポペット弁(50)を開放させるようにする段階と、
前記ポペット弁(50)が引き続き開いており、前記ポペットシャッタ(54)が前記着座面から離れて移動するときには、前記収束発散流路(68)のスロート域が増大するにつれて前記全圧力損失を減少させる段階と、
を含む方法。
【請求項14】
前記ポペットガイド(16)の内側チャンバを前記収束発散流路(68)の低静圧域と流れ連通して配置し、前記弁本体(11)の内側表面に向かう前記ポペットシャッタ(54)の内側表面に作用する流体圧力による力を低減して前記ポペット弁(50)を閉鎖するようにする段階を更に含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ポペットガイド(16)の内側チャンバを前記ポペット弁(50)の入口から出口までの流れにおける低静圧域と流れ連通して配置し、前記弁本体(11)の内側表面に向かう前記ポペットシャッタ(54)の内側表面に作用する流体圧力による力を低減して前記ポペット弁(50)を閉鎖するようにする段階を更に含み、
前記低静圧域が、前記入口から前記出口までの流れが前記ポペットガイド(16)の孔を通過するときの前記流れの加速域に配置される、
請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−69235(P2011−69235A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−218725(P2009−218725)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(500445479)ヌオーヴォ ピニォーネ ホールディング ソシエタ ペル アチオニ (34)
【氏名又は名称原語表記】Nuovo Pignone Holding S.p.A.
【Fターム(参考)】