説明

発泡シート用スチレン系樹脂組成物、発泡シート及び発泡容器

【課題】 容器などの成形に用いられる発泡シートの従来の機械的強度を保ちながら、熱成形条件の拡大(成形範囲、加熱時間の低減)が可能な発泡シート用スチレン系樹脂組成物と該スチレン系樹脂組成物からなる発泡シート及び発泡容器を提供すること。
【解決手段】 スチレン系樹脂と発泡剤とを含有する発泡シート用スチレン系樹脂組成物であって、スチレン系樹脂が、分岐末端に二重結合を有する多分岐状マクロモノマー(a1)とスチレン系モノマー(a2)とアクリル酸エステル(a3)とを、前記スチレン系モノマー(a2)と前記アクリル酸エステル(a3)との使用割合(a2)/(a3)が98/2〜85/15(質量比)で共重合させた樹脂を含有することを特徴とする発泡シート用スチレン系樹脂組成物、これから得られる発泡シート、これを2次成形してなる発泡容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐構造を有する特定のスチレン系樹脂を含有する発泡シート用スチレン系樹脂組成物及び該組成物を用いた発泡シートとそれを用いて得られる発泡容器に関する。詳しくは、流動性が同等の多分岐ホモポリスチレンと比較した場合、成形加工特性が良好で、低温成形・広成形加工・短時間二次成形を可能とし、発泡容器用として好適に用いることができるスチレン系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂は剛性が高く、寸法安定性、透明性、成形安定性などに優れ、安価なことから、押出成形などによってシート化した後、このシートを真空成形や圧空成形などにより成形し、食品や日用雑貨の包装容器などの二次加工製品に用いられている。特に、ラーメンや丼に用いられる食品容器は、深さと開口部との比に於いて深さが大きくなるため、高い成形性が必要であり、しかも断熱性を必要とすることから、押出発泡成形されたスチレン系樹脂発泡シートを用いて成形された発泡容器が使用されている。
【0003】
押出発泡成形されたスチレン系樹脂発泡シートを用いて容器成形を行う際、その素材のシートには、真空成形や圧空成形などの熱成形条件幅が広く、さらに機械的強度に優れた容器が得られることが望ましい。その改善策として、本発明者らは、高流動性でありながら溶融状態で高い張力を発現する多分岐ポリスチレンを開発することで課題に対応した(特許文献1参照。)。しかしながら、近年、環境負荷や生産コスト削減の観点から、同じエネルギーコストで生産性を増加させる必要性が求められている。例えば、発泡シートの二次成形加工において、シート加熱時間の短縮による生産スピードの向上、またはシート加熱温度の低温化による対応が求められている。同時に、ニーズの多様化や既存製品との差別化を図るために、高意匠性(複雑成形特性)の要求も高まっている。しかしながらこの要求を達成することと、前述した生産性向上とは相反するものであり、スチレン系モノマー単体による樹脂設計では、もはや対応が限界である。一方で、上記課題を克服するためにスチレン−アクリル酸エステル系樹脂等のその他のモノマーを併用した共重合体や、その他の樹脂と混合した樹脂組成物を用いることも考えられるが、得られる発泡容器の機械的強度の低下等、スチレン系樹脂が本来有する性能を損なう可能性がある。
【0004】
【特許文献1】特開2005−281405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、容器などの成形に用いられる発泡シートの従来の機械的強度を保ちながら、熱成形条件の拡大(成形範囲、加熱時間の低減)が可能な発泡シート用スチレン系樹脂組成物と該スチレン系樹脂組成物からなる発泡シート及び発泡容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、多分岐状マクロモノマーとスチレン系モノマーとアクリル酸エステルとを共重合させることにより得られる多分岐状のスチレン系樹脂を含有する組成物が、溶融流動性に優れ、溶融時の伸張性が良好であり、押出発泡シートの原料に用いた場合、発泡シートの機械的強度を保ちながら、熱成形条件幅を拡大することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、分岐末端に二重結合を有する多分岐状マクロモノマー(a1)とスチレン系モノマー(a2)とアクリル酸エステル(a3)とを、前記スチレン系モノマー(a2)と前記アクリル酸エステル(a3)との使用割合(a2)/(a3)が97/3〜85/15(質量比)で共重合させた樹脂を含有することを特徴とする発泡シート用スチレン系樹脂組成物と該樹脂組成物を押出成形して得られる発泡シート、該発泡シートを二次成形した発泡容器を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の発泡シート用スチレン系樹脂組成物は、成形加工性に優れ、得られる発泡シートの機械的強度が良好であり、さらに、低温成形が可能である。従って発泡シートの二次成形における伸張性が高いために破泡しづらく、短い加熱時間・低温加工で、深さと開口部との比の広い範囲の容器の製造を可能にし、電力コスト削減と高意匠性の両立を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明を詳細に説明する。
〔スチレン系樹脂(A)〕
本発明で用いるスチレン系樹脂(A)は、分岐末端に二重結合を有する多分岐状マクロモノマー(a1)とスチレン系モノマー(a2)及びアクリル酸エステル(a3)とを共重合させることにより得られる多分岐状の樹脂を必須成分として含有するスチレン系樹脂である。なお、本発明で用いるスチレン系樹脂(A)は、多分岐状マクロモノマー(a1)とスチレン系モノマー(a2)及びアクリル酸エステル(a3)とを共重合させて得られる多分岐状の樹脂と共に、同時に生成する多分岐状マクロモノマー(a1)を含有しないスチレン系モノマー(a2)とアクリル酸エステル(a3)との共重合体を含有していても良い。更に、予め別々に製造した多分岐状マクロモノマー(a1)とスチレン系モノマー(a2)とアクリル酸エステル(a3)とを共重合させた多分岐状の樹脂に混合して用いても良い。
【0010】
前記スチレン系樹脂(A)の流動性については、型再現性や離型性、成形サイクルの短縮化、得られる成形品の外観、強度とのバランスに優れる点で、200℃でのメルトマスフローレート(MFR)が1.0〜5.0g/minの範囲であることが好ましい。
【0011】
〔GPC−MALLS、スチレン系樹脂(A)の両対数グラフの傾き〕
本発明で用いるスチレン系樹脂(A)をGPC−MALLS(MALLS:多角度光散乱検出器)により分子量を測定すると、分子量以外に分子量と慣性半径(粒子径)の関係を求めることが可能である。スチレン系樹脂(A)について、GPC−MALSから求められる該樹脂の分子量を横軸、慣性半径を縦軸とした両対数グラフにおける分子量25万〜1000万の領域での傾きは、強度と成形加工性とを優れたバランスで発現させる点で、0.30〜0.50であることが最も好ましい。傾きが0.50よりも大きくなると、線状のポリスチレンにより近い物性となり、逆に0.30よりも小さくなると、分岐度増加に伴う分子量増大により流動性が低下し、成形加工性に影響を与えることがある。
【0012】
〔スチレン系樹脂(A)の分子量〕
本発明で用いるスチレン系樹脂(A)は、低温押出成形性、強度と加工性とのバランスにおいてGPC−MALLSから求められる重量平均分子量は25万〜75万が好ましく、より好ましくは25万〜55万である。重量平均分子量が25万以下では強度が低下する傾向があり、75万以上では樹脂の粘度が増加し、低温による押出成形性が困難となる傾向がある。
【0013】
〔多分岐状マクロモノマー(a1)〕
本発明で使用する多分岐状マクロモノマー(a1)としては、本願発明の目的とする加工性に優れたスチレン系樹脂(A)を容易に得られる点、特に多分岐状の樹脂の重量平均分子量を1000万以下に制御する観点から、複数の分岐を有し、且つその先端部に複数の重合性二重結合を有する、重量平均分子量(Mw)が、好ましくは1,000〜15,000、より好ましくは2,000〜9,000のマクロモノマーであることが好ましい。
【0014】
前記多分岐状マクロモノマー(a1)の先端部には1分子あたり2個以上の重合性二重結合を有していることを必須とするものである。前記重合性二重結合の含有量としては、該マクロモノマー1g当たり0.1〜5.5mmolの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5〜3.5mmolの範囲である。0.1mmolより少ない場合は、高分子量の多分岐状の樹脂が得られにくくなり、5.5mmolを超える場合は、多分岐状の樹脂の分子量が過度に増大する傾向がある。
【0015】
〔多分岐状マクロモノマー(a1−i)〕
本発明において使用できる多分岐状マクロモノマー(a1)としては、エステル結合、エーテル結合又はアミド結合を有する構造単位を繰り返すことによって形成する分岐構造と、分岐末端に1分子中2個以上の重合性二重結合とを有する多分岐状マクロモノマー(a1−i)を挙げることができる。
【0016】
エステル結合を有する構造単位を繰り返して分岐構造を形成した多分岐状マクロモノマー(a1−i−1)は、分子鎖を形成するエステル結合のカルボニル基に隣接する炭素原子が4級の炭素原子である多分岐状ポリエステルポリオールに、ビニル基またはイソプロペニル基などの重合性二重結合を導入したものを好ましい態様として挙げることができる。多分岐状ポリエステルポリオールに重合性二重結合を導入するには、エステル化反応や付加反応によって行なうことができる。尚、上記多分岐状ポリエステルポリオールとして、Perstorp社製「Boltorn H20、H30、H40」が市販されている。
【0017】
前記多分岐状ポリエステルポリオールは、そのヒドロキシ基の一部にあらかじめエーテル結合やその他の結合によって置換基が導入されていてもよいし、また、そのヒドロキシ基の一部が酸化反応やその他の反応で変性されていてもよい。また、多分岐状ポリエステルポリオールは、そのヒドロキシ基の一部が、あらかじめエステル化されていてもよい。
【0018】
前記多分岐状マクロモノマー(a1−i−1)としては、例えばヒドロキシ基を1個以上有する化合物に、カルボキシ基に隣接する炭素原子が4級の炭素原子であり、且つヒドロキシ基を2個以上有するモノカルボン酸を反応させて多分岐状のポリマーとし、次いで該ポリマーの末端基であるヒドロキシ基にアクリル酸やメタクリル酸などの不飽和酸、イソシアネート基含有アクリル系化合物などを反応させて得られるものが挙げられる。尚、エステル結合を有する構造単位を繰り返して分岐構造を形成した多分岐状ポリマーについては、タマリア(Tamalia)氏等による「Angew.Chem.Int.Ed.Engl.29」p138〜177(1990)に記載されている。
【0019】
前記ヒドロキシ基を1個以上有する化合物としては、a)脂肪族ジオール、脂環式ジオール、又は芳香族ジオール、b)トリオール、c)テトラオール、d)ソルビトール及びマンニトール等の糖アルコール、e)アンヒドロエンネア−ヘプチトール又はジペンタエリトリトール、f)α−メチルグリコシド等のα−アルキルグルコシド、g)エタノール、ヘキサノールなどの一官能性アルコール、h)重量平均分子量が多くとも8,000であるアルキレンオキシド或いはその誘導体と、上記a)〜g)のいずれかから選択された1種以上の化合物中のヒドロキシ基とを反応させることにより生成されたヒドロキシ基含有ポリマーなどを挙げることができる。
【0020】
前記a)肪族ジオール、脂環式ジオール及び芳香族ジオールとしては、例えば、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリテトラヒドロフラン、ジメチロールプロパン、ネオペンチルプロパン、2−プロピル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール;シクロヘキサンジメタノール、1,3−ジオキサン−5,5−ジメタノール;1,4−キシリレンジメタノール、1−フェニル−1,2−エタンジオールなどが挙げられる。前記b)トリオールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロールブタン、グリセロール、1,2,5−ヘキサントリオール、1,3,5−トリヒドロキシベンゼンなどが挙げられる。前記c)テトラオールとしては、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジグリセロール、ジトリメチロールエタンなどを挙げることができる。
【0021】
前記カルボキシル基に隣接する炭素原子が4級の炭素原子であり、且つヒドロキシ基を2個以上有するモノカルボン酸としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、α,α,α−トリス(ヒドロキシメチル)酢酸、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)吉草酸、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸などがあげられる。前記モノカルボン酸を使用することにより、エステル分解反応が抑制され、多分岐状ポリエステルポリオールを形成することができる。
【0022】
また、前記多分岐状ポリエステルポリオールを製造する際に、触媒を使用するのが好ましく、前記触媒としては、例えば、ジアルキルスズオキシド、ハロゲン化ジアルキルスズ、ジアルキルスズビスカルボキシレート、あるいはスタノキサンなどの有機錫化合物、テトラブチルチタネートなどのチタネート、ルイス酸、パラトルエンスルホン酸などの有機スルホン酸などが挙げられる。
【0023】
エーテル結合を有する構造単位を繰り返して分岐構造を形成した多分岐状マクロモノマー(a1−i−2)としては、例えば、ヒドロキシ基を1個以上有する化合物に、ヒドロキシ基を1個以上有する環状エーテル化合物を反応させることにより多分岐状のポリマーとし、次いで該ポリマーの末端基であるヒドロキシ基にアクリル酸やメタクリル酸などの不飽和酸、イソシアネート基含有アクリル系化合物、4−クロロメチルスチレンなどのハロゲン化メチルスチレンを反応させて得られるものが挙げられる。また、該多分岐状ポリマーの製法としては、Williamsonのエーテル合成法に基づいて、ヒドロキシ基を1個以上有する化合物と、2個以上のヒドロキシ基とハロゲン原子、−OSOOCH又は−OSOCHを含有する化合物とを反応する方法も有用である。
【0024】
ヒドロキシ基を1個以上有する化合物としては、前記で挙げたものを何れも使用することができ、ヒドロキシ基を1個以上有する環状エーテル化合物としては、例えば、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、2,3−エポキシ−1−プロパノール、2,3−エポキシ−1−ブタノール、3,4−エポキシ−1−ブタノールなどが挙げられる。Williamsonのエーテル合成法に於いて使用されるヒドロキシ基を1個以上有する化合物としても、前記したものでよいが、芳香環に結合したヒドロキシ基を2個以上有する芳香族化合物が好ましい。前記化合物としては、例えば、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、1,4−キシリレンジメタノール、1−フェニル−1,2−エタンジオールなどが挙げられる。また、2個以上のヒドロキシ基とハロゲン原子、−OSOOCH又は−OSOCHを含有する化合物としては、例えば、5−(ブロモメチル)−1,3−ジヒドロキシベンゼン、2−エチル−2−(ブロモメチル)−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−(ブロモメチル)−1,3−プロパンジオール、2−(ブロモメチル)−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。なお、上記多分岐状のポリマーを製造する際には、通常触媒を使用することが好ましく、前記触媒としては、例えば、BFジエチルエーテル、FSOH、ClSOH、HClOなどを挙げることができる。
【0025】
また、アミド結合を有する構造単位を繰り返して分岐構造を形成した多分岐状マクロモノマー(a1−i−3)としては、例えば、分子中に窒素原子を介してアミド結合を繰り返し構造に有するものがあり、Dentoritech社製のゼネレーション2.0(PAMAMデントリマー)が代表的なものである。
【0026】
〔多分岐状マクロモノマー(a1)とスチレン系モノマー(a2)とアクリル酸エステル(a3)との重合方法〕
前記多分岐状マクロモノマー(a1)とスチレン系モノマー(a2)とアクリル酸エステルモノマー(a3)とを共重合させることにより、多分岐状の樹脂と、重合条件により同時に生成する線状の樹脂及び低分岐樹脂との混合物である樹脂混合物が得られる。この時、前述の多分岐状マクロモノマー(a1)をスチレン系モノマー(a2)とアクリル酸エステル(a3)の総量に対して好ましくは50ppm〜1%、より好ましくは100ppm〜3000ppmの比率で用いることにより、多分岐状の樹脂の生成が容易であり、ゲル化の抑止をすることが簡便であると共に、本発明で用いるスチレン系樹脂(A)を効率よく得ることができる。
【0027】
重合反応には種々の汎用されているスチレン系モノマーの重合方法を応用することができる。重合方式には特に限定はないが、塊状重合、懸濁重合、あるいは溶液重合が好ましい。中でも生産効率の点で特に連続塊状重合が好ましく、例えば一個以上の攪拌式反応器と可動部分の無い複数のミキシングエレメントが内部に固定されている管状反応器を組み込んだ連続塊状重合を行うことにより、優れた樹脂を得ることができる。重合開始剤を使用せずに熱重合させることもできるが、種々のラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。また、重合に必要な懸濁剤や乳化剤などのような重合助剤は、通常のポリスチレンの製造に使用されるものを使用できる。
【0028】
重合反応での反応物の粘性を低下させるために、反応系に有機溶剤を添加してもよく、その有機溶剤としては、例えば、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、アセトニトリル、ベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、アニソール、シアノベンゼン、ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン等が挙げられる。特に多分岐状マクロモノマーの添加量を多くしたい場合には、ゲル化を抑制する観点からも有機溶剤を使用することが好ましい。これにより、先に示した多分岐状マクロモノマー(a1)の添加量を飛躍的に増量させ分岐構造を多く導入することができ、且つ、ゲル化が生じにくくなる。
【0029】
前記ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール類、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキサイド、ジシナモイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシイシプロピルモノカーボネート等のパーオキシエステル類、N,N'−アゾビスイソブチルニトリル、N,N'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、N,N'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、N,N'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、N,N'−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等が挙げられ、これらの1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
更に、得られる樹脂混合物の分子量が過度に大きくなりすぎないように連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤としては、連鎖移動基を1つ有する単官能連鎖移動剤でも連鎖移動基を複数有する多官能連鎖移動剤でも使用できる。単官能連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類、チオグリコール酸エステル類等が挙げられる。多官能連鎖移動剤としては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール中のヒドロキシ基をチオグリコール酸または3−メルカプトプロピオン酸でエステル化したもの等が挙げられる。
【0031】
本発明で用いることのできるスチレン系モノマー(a2)としては、例えば以下の物が挙げられる。スチレン及びその誘導体;例えばスチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、オクチルスチレンの如きアルキルスチレン、フロロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレンの如きハロゲン化スチレン、更にニトロスチレン、アセチルスチレン、メトキシスチレン等がある。
【0032】
また、本発明で用いることのできるアクリル酸エステル(a3)としては、例えば以下の物が挙げられる。アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル等があるが、スチレン系モノマーとの重合反応の制御のし易さ、工業上容易に入手可能な点からアクリル酸ブチルを用いることが好ましい。
【0033】
本発明において、前記スチレン系モノマー(a2)とアクリル酸エステル(a3)との使用割合は、(a2)/(a3)で表される質量比で98/2〜85/15であることを必須とする。アクリル酸エステル(a2)の使用割合が2部未満であると、ホモポリスチレンの物性挙動に近くなり、本願の要求を満たす成形加工性を発現しない。また、アクリル酸エステル(a2)が15部より多くなると、得られる発泡容器の物性強度の低下が生じるため好ましくない。
【0034】
さらに、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、上記スチレン系モノマー(a2)、アクリル酸エステル(a3)と共重合可能な成分を併用しても良い。例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸アクリルエステルやメタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの重合性不飽和脂肪酸、ビニルシアン化合物類、不飽和カルボン酸無水物類、アミノ基含有不飽和化合物などが挙げられ、2種類以上組み合わせて使用することも可能である。
【0035】
〔発泡シート〕
本発明の発泡シートは、前述のスチレン系樹脂(A)に発泡剤(B)を含浸させて発泡シート用スチレン系樹脂組成物とし、押出機に供給し、加熱溶融させて混練した後、サーキュラーダイ、Tダイなどから押し出すとともに発泡させることによる通常の発泡成形法により得られるものである。この発泡剤(B)は、樹脂(A)とは別に押出機中に供給する方法でも構わない。発泡剤(B)としては、プロパン、ブタン、ペンタン、へキサンなどの低級炭化水素や塩化メチル、ジクロロメタン、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタンなどのハロゲン炭化水素、水、二酸化炭素、窒素などを用いることが望ましい。
【0036】
ここで成形する押出発泡シートは、厚みが0.5mm〜6mm、好ましくは1.0mm〜4.0mmであり、かさ密度が0.025g〜0.35g/cm、好ましくは0.04g〜0.25g/cmである。0.5mm未満であると、二次発泡時にシート破損する可能性が高く、また、このシートを用いた容器などの二次加工製品の実用性機械的強度が充分に得られないこともある。6mmより厚みがある場合には、二次加工において支障をきたすことがある。さらに、かさ密度においては、0.025g/cm未満では二次発泡時でのシート破損する可能性があり、二次加工製品の強度が低下する場合がある。また、0.35g/cmより大きい場合では押出発泡シートの特性が発現しない可能性がある。
【0037】
押出発泡シートにおいて、発泡セル径の均一性が高いものが二次加工製品の成形用素材として好適であることから、スチレン系樹脂(A)にタルクや炭酸カルシウムなどの造核剤を配合したものを用いることが好ましい。
【0038】
また、得られる発泡シートの表面に、シリコーンや帯電防止剤などを塗布することにより表面特性を向上させることも可能である。
【0039】
さらに、発泡シートの強度を補強するために、従来行われる発泡シートの表裏層にインフレーションフィルム加工することも可能である。
【0040】
〔発泡容器〕
本発明で提供する発泡容器は、前述の発泡シートを真空成形、圧空成形などの熱成形により二次成形することで得られるものである。前述の、成形加工性に優れるスチレン系樹脂(A)を用いることにより、従来の成形温度範囲(発泡体表面温度)130℃〜150℃よりも例えば、10〜30℃程度低い温度でも成形することが可能であり、また、加熱時間の短縮も可能である。
【0041】
更に、ニーズの多様化によって生じてきている高意匠性の発泡容器や、丼等に使用される深さのある容器へも好適に用いることができ、特に深さ(H)と開口部(W)との比(H/W)が0.1〜1.2の範囲の発泡容器を、生産性効率を高く維持したままで成形することができる。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。本発明はもとより、これらの実施例の範囲に限定されるべきものではない。なお、下記実施例中、「部」は特に断りの無い限り、質量基準である。
【0043】
用いた測定方法について説明する。
〔多分岐状マクロモノマーのGPCによる測定条件〕
高速液体クロマトグラフィー(東ソー株式会社製HLC−8220GPC)、RI検出器、TSKgel G6000H×1+G5000H×1+G4000H×l+G3000H×l+TSKguard columnH×l−H、溶媒THF、流速1.0ml/分、温度40℃にて測定した。
【0044】
〔スチレン系樹脂のGPC−MALLS測定条件〕
Shodex HPLC、検出器Wyatt Technology DAWN EOS、Shodex RI−101、カラムShodex KF−806L×2、溶媒THF(恒温40℃)、流量1.0ml/minにて測定した。また、GPC−MALLSの測定の解析は、Wyatt社の解析ソフトASTRAにより求めた。
【0045】
実施例1のGPC−MALLSから求められる質量平均分子量−慣性半径の両対数グラフを図1に示した。
【0046】
〔メルトマスフローレイト測定法〕
JIS K7210:99に従って測定した。なお測定条件は、温度200℃、荷重49Nである。
【0047】
〔NMR測定法(多分岐状マクロモノマー)〕
多分岐状マクロモノマーの二重結合性については、核磁気共鳴分光法(H−NMR)により、重クロロホルムに溶解して、二重結合のピークから求めた。
【0048】
〔押出発泡シート化〕
スチレン系樹脂にタルクを1部添加し、発泡時はブタンガスを用いて厚み2.0mmの押出発泡シートを成形した。
【0049】
〔押出発泡シートの二次成形〕
容器の形状としては、深さ(H)と開口部(W)との比(H/W)が、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0、1.2の6種類の深さのみ異なる容器を成形した。成形条件として、発泡シートの予備加熱時間(5秒及び6秒)、加熱のヒーター温度(上部/下部=300℃/340℃、280℃/320℃)を変更して検討した。成形品の評価は、深絞りするにつれて生ずる表面破れ(ナキ)と破れ穴の発生のしにくさを、深絞り成形性として評価することとした。評価方法としては、目視により、その外観を下記の7段階で評価した。
5:良好
4:若干のナキあり。
3:ナキあり。
2:ナキと小さい破れ穴あり。
1:中程度の破れ穴あり。
0:大きな破れ穴あり。
*:表面ヤケ
【0050】
〔押出発泡シート成形品の強度評価〕
深さ(H)と開口部(W)との比(H/W)が0.2の成形品を用いて、天地圧縮強度を測定し、実用的に問題ないものを○、難ありを△、不可を×とした。
【0051】
(参考例1)多分岐状マクロモノマー(Mm−1)の合成
<メタクリロイル基及びアセチル基を有する多分岐状マクロモノマーの合成>
7%酸素導入管、温度計、コンデンサーを備えたディーンスタークデカンター、および攪拌機を備えた反応容器に、「Boltorn H20」10g、ジブチル錫オキシド1.25g、イソプロペニル基を有するメチルメタクリレート100g、およびヒドロキノン0.05gを加え、混合溶液中に3ml/分の速度で7%酸素を吹き込みながら、撹拌下に加熱した。デカンターへの留出液量が1時間あたり15〜20gになるように加熱量を調節し、1時間ごとにデカンター内の留出液を取り出し、これに相当する量のメチルメタクリレートを加えながら4時間反応させた。反応終了後、メチルメタクリレートを減圧下で留去し、残っているヒドロキシ基をキャッピングするために無水酢酸10g、スルファミン酸2gを加えて室温下、10時間撹拌した。濾過でスルファミン酸を除去し、減圧下で無水酢酸および酢酸を留去した後に、残留物を酢酸エチル70gに溶解し、ヒドロキノンを除去する為に5%水酸化ナトリウム水溶液20gで4回洗浄した。さらに7%硫酸水溶液20gで2回、水20gで2回洗浄した。得られた有機層にメトキノン0.0045gを加え、減圧下、7%酸素を導入しながら溶媒を留去し、イソプロペニル基およびアセチル基を有する多分岐状マクロモノマー(Mm−1)11gを得た。得られた多分岐状マクロモノマー(Mm−1)の重量平均分子量は3,000、数平均分子量は2,100、二重結合導入量は2.00mmol/gであり、イソプロペニル基およびアセチル基導入率は、それぞれ55%および36%であった。
【0052】
(参考例2)多分岐状マクロモノマー(Mm−2)の合成
<メタクリロイル基及びアセチル基を有する多分岐状マクロモノマーの合成>
7%酸素導入管、温度計、コンデンサーを備えたディーンスタークデカンター、および攪拌機を備えた反応容器に、「Boltorn H30」10g、ジブチル錫オキシド1.75g、イソプロペニル基を有するメチルメタクリレート150g、およびヒドロキノン0.075gを加え、混合溶液中に3ml/分の速度で7%酸素を吹き込みながら、撹拌下に加熱した。デカンターへの留出液量が1時間あたり15〜20gになるように加熱量を調節し、1時間ごとにデカンター内の留出液を取り出し、これに相当する量のメチルメタクリレートを加えながら8時間反応させた。反応終了後、メチルメタクリレートを減圧下で留去し、残っているヒドロキシ基をキャッピングするために無水酢酸15g、スルファミン酸3gを加えて室温下、10時間撹拌した。濾過でスルファミン酸を除去し、減圧下で無水酢酸および酢酸を留去した後に、残留物を酢酸エチル100gに溶解し、ヒドロキノンを除去する為に5%水酸化ナトリウム水溶液20gで4回洗浄した。さらに7%硫酸水溶液20gで2回、水20gで2回洗浄した。得られた有機層にメトキノン0.007gを加え、減圧下、7%酸素を導入しながら溶媒を留去し、イソプロペニル基およびアセチル基を有する多分岐状マクロモノマー(Mm−2)11gを得た。得られた多分岐状マクロモノマー(Mm−2)の重量平均分子量は5,200、数平均分子量は3,600、二重結合導入量は3.00mmol/gであり、イソプロペニル基およびアセチル基導入率は、それぞれ53%および41%であった。
【0053】
(参考例3)多分岐状マクロモノマー(Mm−3)の合成
<メタクリロイル基及びアセチル基を有する多分岐状マクロモノマーの合成>
7%酸素導入管、温度計、コンデンサーを備えたディーンスタークデカンター、および攪拌機を備えた反応容器に、「Boltorn H40」10g、ジブチル錫オキシド2.5g、イソプロペニル基を有するメチルメタクリレート200g、およびヒドロキノン0.1gを加え、混合溶液中に3ml/分の速度で7%酸素を吹き込みながら、撹拌下に加熱した。デカンターへの留出液量が1時間あたり15〜20gになるように加熱量を調節し、1時間ごとにデカンター内の留出液を取り出し、これに相当する量のメチルメタクリレートを加えながら10時間反応させた。反応終了後、メチルメタクリレートを減圧下で留去し、残っているヒドロキシ基をキャッピングするために無水酢酸20g、スルファミン酸4gを加えて室温下、10時間撹拌した。濾過でスルファミン酸を除去し、減圧下で無水酢酸および酢酸を留去した後に、残留物を酢酸エチル70gに溶解し、ヒドロキノンを除去する為に5%水酸化ナトリウム水溶液20gで4回洗浄した。さらに7%硫酸水溶液20gで2回、水20gで2回洗浄した。得られた有機層にメトキノン0.0045gを加え、減圧下、7%酸素を導入しながら溶媒を留去し、イソプロペニル基およびアセチル基を有する多分岐状マクロモノマー(Mm−3)11gを得た。得られた多分岐状マクロモノマー(Mm−3)の重量平均分子量は7,900、数平均分子量は4,200、二重結合導入量は2.90mmol/gであり、イソプロペニル基およびアセチル基導入率は、それぞれ49%および48%であった。
【0054】
実施例1
スチレン97部、アクリル酸ブチル3部、参考例1で得られた多分岐状マクロモノマー(Mm−1)をスチレンに対し100ppm、及びトルエン10部からなる混合溶液を調整し、更に、有機過酸化物としてスチレンに対し300ppmのt−ブチルパーオキシベンゾエートを加え連続的に塊状重合させた。
【0055】
重合させて得られた混合溶液を熱交換器で220℃まで加熱し、50mmHgの減圧下で揮発性成分を除去した後、ペレット化してスチレン系樹脂(A−1)を得た。
【0056】
得られたスチレン系樹脂(A−1)を用いて押出発泡シートを成形し、さらに、下記条件1〜3で二次成形して、各種の発泡容器を得た。
条件1:加熱ヒーター温度 上部/下部=300℃/340℃、加熱時間5秒
条件2:加熱ヒーター温度 上部/下部=300℃/340℃、加熱時間6秒
条件3:加熱ヒーター温度 上部/下部=280℃/300℃、加熱時間6秒
【0057】
実施例2
実施例1における多分岐状マクロモノマー(Mm−1)のスチレンに対する添加量を300ppmにした以外は、実施例1と同様にしてスチレン樹脂(A−2)を得、この樹脂(A−2)を用いて押出発泡シートを成形し、さらに二次成形して発泡容器を製造した。
【0058】
実施例3
実施例1における原料の使用割合を、スチレン95部、アクリル酸ブチル5部、多分岐状マクロモノマー(Mm−1)のスチレンに対する添加量400ppmにした以外は、実施例1と同様にしてスチレン樹脂(A−3)を得、この樹脂(A−3)を用いて押出発泡シートを成形し、さらに二次成形して発泡容器を製造した。
【0059】
実施例4
スチレン90部、アクリル酸ブチル10部、参考例2で得られた多分岐状マクロモノマー(Mm−2)をスチレンに対し500ppm、及びトルエン10部からなる混合溶液を調整し、更に、有機過酸化物としてスチレンに対し150ppmのt−ブチルパーオキシベンゾエートを加え連続的に塊状重合させた。
【0060】
重合させて得られた混合溶液を熱交換器で220℃まで加熱し、50mmHgの減圧下で揮発性成分を除去した後、ペレット化してスチレン系樹脂(A−4)を得た。この樹脂(A−4)を用いて押出発泡シートを成形し、さらに二次成形して発泡容器を製造した。
【0061】
実施例5
実施例4における原料の使用割合を、スチレン85部、アクリル酸ブチルを15部、多分岐状マクロモノマー(Mm−2)を200ppmにした以外は、実施例4と同様にしてスチレン樹脂(A−5)を得、この樹脂(A−5)を用いて押出発泡シートを成形し、さらに二次成形して発泡容器を製造した。
【0062】
実施例6
スチレン98部、アクリル酸ブチル2部、参考例3で得られた多分岐状マクロモノマー(Mm−3)をスチレンに対し100ppm、及びトルエン10部からなる混合溶液を調整し、更に、有機過酸化物としてスチレンに対し100ppmのt−ブチルパーオキシベンゾエートを加え連続的に塊状重合させた。
【0063】
重合させて得られた混合溶液を熱交換器で220℃まで加熱し、50mmHgの減圧下で揮発性成分を除去した後、ペレット化してスチレン系樹脂(A−6)を得た。この樹脂(A−4)を用いて押出発泡シートを成形し、さらに二次成形して発泡容器を製造した。
【0064】
実施例7
実施例6における原料の使用割合を、スチレン90部、アクリル酸ブチル10部、多分岐状マクロモノマー(Mm−3)を300ppmにした以外は、実施例6と同様にしてスチレン樹脂(A−7)を得、この樹脂(A−7)を用いて押出発泡シートを成形し、さらに二次成形して発泡容器を製造した。
【0065】
実施例8
実施例3のアクリル酸ブチルをアクリル酸プロピルにした以外は、実施例3と同様にしてスチレン樹脂(A−8)を得、この樹脂(A−8)を用いて押出発泡シートを成形し、さらに二次成形して発泡容器を製造した。
【0066】
比較例1
スチレン100部、参考例1で得られた多分岐状マクロモノマー(Mm−1)をスチレンに対し100ppm、及びトルエン10部からなる混合溶液を調整し、更に、有機過酸化物としてスチレンに対し200ppmのt−ブチルパーオキシベンゾエートを加え連続的に塊状重合させた。
【0067】
重合させて得られた混合溶液を熱交換器で220℃まで加熱し、50mmHgの減圧下で揮発性成分を除去した後、ペレット化してスチレン系樹脂(A’−1)を得た。
【0068】
得られたスチレン系樹脂(A’−1)を用いて押出発泡シートを成形し、さらに、二次成形して発泡容器を得た。
【0069】
比較例2
比較例1における多分岐状マクロモノマー(Mm−1)のスチレンに対する添加量を600ppmにした以外は、比較例1と同様にしてスチレン樹脂(A’−2)を得、この樹脂(A’−2)を用いて押出発泡シートを成形し、さらに二次成形して発泡容器を製造した。
【0070】
比較例3
実施例1において多分岐状マクロモノマーを用いずに合成した以外は、実施例1と同様にしてスチレン樹脂(A’−3)を得、この樹脂(A’−3)を用いて押出発泡シートを成形し、さらに二次成形して発泡容器を製造した。
【0071】
比較例4
実施例4において多分岐状マクロモノマーを用いずに合成した以外は、実施例4と同様にしてスチレン樹脂(A’−4)を得、この樹脂(A’−4)を用いて押出発泡シートを成形し、さらに二次成形して発泡容器を製造した。
【0072】
比較例5
スチレン82部、アクリル酸ブチル18部、参考例3で得られた多分岐状マクロモノマー(Mm−3)をスチレンに対し100ppm、及びトルエン10部からなる混合溶液を調整し、更に、有機過酸化物としてスチレンに対し100ppmのt−ブチルパーオキシベンゾエートを加え連続的に塊状重合させた。
【0073】
重合させて得られた混合溶液を熱交換器で220℃まで加熱し、50mmHgの減圧下で揮発性成分を除去した後、ペレット化してスチレン系樹脂(A’−5)を得た。この樹脂(A’−5)を用いて押出発泡シートを成形し、さらに二次成形して発泡容器を製造した。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
【表4】

【0078】
【表5】

【0079】
【表6】

【0080】
【表7】

【0081】
表1〜表7から、本発明のスチレン系樹脂組成物は、従来のスチレン系樹脂組成物から得られる発泡シートの機械的強度を保ちながら、成形加工領域の拡大・成形時間短縮・成形温度の低下が可能であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】実施例1で得られたスチレン系樹脂のGPC−MALLSから求められる質量平均分子量−慣性半径の両対数グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂(A)と発泡剤(B)とを含有する発泡シート用スチレン系樹脂組成物であって、
前記スチレン系樹脂(A)が、分岐末端に二重結合を有する多分岐状マクロモノマー(a1)とスチレン系モノマー(a2)とアクリル酸エステル(a3)とを、前記スチレン系モノマー(a2)と前記アクリル酸エステル(a3)との使用割合(a2)/(a3)が98/2〜85/15(質量比)で共重合させた樹脂を含有することを特徴とする発泡シート用スチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
前記スチレン系樹脂(A)が、
(1)GPC−MALLS法により求められる重量平均分子量が25万〜75万であり、
(2)該重量平均分子量を横軸とし、GPC−MALLSにより求められる慣性半径を縦軸とした対数グラフに於ける分子量25万〜1000万の領域での傾きが0.30〜0.50
である請求項1記載の発泡シート用スチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記アクリル酸エステル(a3)がアクリル酸ブチルである請求項1又は2記載の発泡シート用スチレン系樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項記載の発泡シート用樹脂組成物を押出発泡成形して得られることを特徴とする発泡シート。
【請求項5】
請求項4記載の発泡シートを二次成形して得られることを特徴とする発泡容器。
【請求項6】
深さ(H)と開口部(W)との比(H/W)が0.1〜1.2である請求項5記載の発泡容器。

【図1】
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【公開番号】特開2009−263512(P2009−263512A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115245(P2008−115245)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】