説明

発泡スチロール廃材の混合組成物

【課題】廃材の発泡スチロールの再生法として、化学の浸漬法(化学組成体の力のみでこれを達成すること)の中で、現在汎用の物の処理スピード,液のスタミナ(耐久力),溶解力の向上,原料コスト上昇の抑制、且つ安心安全な材料を提供する。
【解決手段】テルペン系炭化水素をベースとしながら、同じ炭化水素系の飽和体である炭化水素C2n+2(n=6〜18の正数)を、ある範囲(10〜40w%)加えることにより、従来品を大きく凌ぐ効果をもたらせたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電化製品や調度品等の緩衝材、各種生鮮食品容器、その他加工食品の包材に主として用いられる発泡スチロールの使用済み廃材のリサイクル処理法に関し、より簡易・安全・経済的で、バリアフリー度の高い処理組成物に関するものである。近年、当該廃材は、利用する商品の量産化と低コスト、安全性が奏功し、増加の一途を辿り、一方では水質汚染、大気汚染、二次汚染、及び石油製品の省エネ・省資源化と相まって、即刻に、早急に対処しなければならない課題となっているものの解決手法より、合理的で安全性の高いものが望まれる。
【背景技術】
【0002】
発泡スチロール包材は、低コスト・易加工性・取扱の簡易性が揃った、貴重なプラスチック包材である一方、ベンゼン環を有し、また燃焼するもダイオキシンやスモッグなどの大気汚染の元凶ともなり得る要素もあり、抜本的な解決法が求められている。物理的には、SSエネルギー,レーザーやソーサー処理法,電子消滅法,αやβ線などの光(電磁波)エネルギーを用いて解体する方法、あるいは火力を利用して燃焼や溶解する方法等もあるが,エネルギーコストが上昇しており、二次汚染の弊害の発生が懸念されている。
【0003】
一方、化学的にでも、ソルベントの多くはそれぞれに関わる弊害を有し、二次汚染の発生は病害の危機でもあり、同上の問題になりつつある。いわゆるソルベントハザードの発生による人のDNA,血液,リンパ,神経系への作用による不都合な問題が提起され、PRTR,GHS,REECHなどの法令の制約も大きく存在し、その解決も喫緊の課題である。近頃、シトラスなどのテルペン系化合物は、グレープフルーツフレーバーとして安心なるも、継続的に吸収することで脳神経の異常化や錯乱を、WHOやFDAなどが報じていることから、必ずしも安全とは言えない。
【0004】
更に近年、環境大気汚染物質(微小粉塵(PM)による大気汚染)として、プラスチック包材の焼却による煤塵発生も無視できなくなっている(名古屋信士,化学工業,51,1877〜1880,1998年),(香川順,大気汚染学会誌,42,A1〜A13,2007年)。
【本発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、使用済みの発泡スチロール材の処理法として、1990年初から汎用されてきた、オレンジの果皮から抽出されるイソプレン系炭化水素である、リモネンに代表されるソルベント(化学構造的に(C)を有効なものとして重用されてきた。当初は電気製品の緩衝材や、生鮮食品などのパッケージ(梱包材)に利用されているもので、リサイクルすることで(例として特開平9−40803)、スピードやパワーなどの総合力を利用して、合理的且つ経済的な回収法を工夫したものである。
【0006】
特に、当該処理法として、節電・節水・省エネにして、安全と安心という側面を有することである。また、d−リモネンやβ−ミルセンの液体物を単独で利用するものや、他の希釈物(シンナー)としてアルコール類(C1〜4)、アルデヒドやケトン系、並びに有機塩素系の能力を併用したものでは、それぞれの臭気が異常なほど強烈で、連続しての作業においては、その作業性が懸念される。そればかりか危険度を上げたり、再生するも回収率が落ちることが考えられる。つまりスチロールそのものの対溶解力が高く、構造変化を生じている事である。
【0007】
本発明は、発泡スチロールの性能を考え、2種のソルベント系の組成体が極めて上手く問題点を払拭でき、優れた効率を有することを見出したものである。特に本発明者は平成22年6月14日に、特定の飽和炭化水素と低級アルコールの化合物に、第3成分として本発明の主成分のリモネンに代表されるテルペン系炭化水素を含有する組成体を、ポリブテンやシリコーン系の超疎水性ポリマー物の処理剤として特許出願しているが、この思想の応用から本発明が大きな意味を有することが理解されるべきである。
【0008】
テルペン系炭化水素の広大な応用範囲を詳細に開示した情報としては、1992年10月15日発行の、米国Florida Chemical Companyのものが参考になる。しかし当該物と界面活性剤の多くの組成が開示されているが、本発明の場合は、界面活性剤が不当な成分であり、これらを部分的に置換したことの特異性に注目すべきである。つまり全て炭化水素(CとH)だけの組み合わせである一方、スチレン(Ph−CH=CH)も同じく炭化水素のポリマーであり、相性が符合して好都合な効果を惹起している。本来、後述する様にスチロールポリマーの膨潤スピードが抜群であることが何よりの証明となる。
【0009】
特にポリスチロール廃材が、それ自体、単一の化合物のみであれば良いが、最近の包材は他にPE,PET,PVC,PVB,PP,PAなどを併用(混合,ラミネートなど)している事によって、本発明の選択的作用が著しく効果を向上させ、純度の高い再生物を早急に収穫することができるわけである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は単なる2種のソルベントの組み合わせのようになっているが、この組成比での特徴が大きな効果の有意義として発生する事である。加えて、近年エコロジーや国際条約(協定)にも十分に手当てしたものが必要である事と、元の原料の生産性が高い事も予期して処置することが重要である。
【0011】
本発明の第1成分のテルペン系炭化水素は、現在では「オレンジクリーナー」などの家庭用品にも応用され、人工的に合成することもできる。一般的にはイソプレン系の一種で、(Cを加重させたものであり、n=1〜2が、例えばd−リモネン,α−ピネン,β−ミルセン、あるいは特開平7−278589に記述されたテルペン化合物が応用される事である。
【0012】
この中にポリスチロールの浸入−脆化−析出(ゲル化)のプロセスを生かすために、当該スチロールとの最適な組み合わせとして、第2成分の存在が要で、従来から常用されているものとして、低級アルコール(エタノール,プロパノール,ブタノールなど)やグリコールエーテル(モノエチレングリコール,ジエチレングリコール,プロピレングリコールなど)のアルキル群があるが、かえって不利で、ベストに近い組み合わせとしては相応しくない。また想定外という考えは当該分野では不要であり、成果を得ることのみを狙っている。本発明が特定した、極めて理想的な処方が完成した
【0013】
つまり第2成分は、第1成分のテルペン化合物と沸点,引火点,凝固点が近い混合物として収束できるものがよく、飽和炭化水素系のC2n+2(n=6〜18の正数)の化合物が確認され、本発明の製品としての安全性が担保されるわけである。テルペン系炭化水素が中心となり、30〜90w%(ベストは60〜80w%)を占めることと、その残りの第2成分が10〜40w%(ベストは30〜40w%)を組成することである。
勿論この範囲を超えても当該目的の多くは達成するも、安全性やスピード、溶解力などで不適当であり、ベストを尽くす上では対象外となる。
【0014】
この両者の組み合わせで、比重が約0.80を中心とする、引火点が40〜60℃、沸点が150〜170℃、融点が−45℃以下の様相を得ることができる。他にこの中に低級アルコール(C1〜4),グリコールエーテル(モノエチレングリコール,ジエチレングリコール,プロピレングリコールなど),乳酸アルキル(C1〜4),コハク酸ジアルキル(C1〜4),グルコン酸ジアルキル(C1〜4)などを併用して、より浸透力・溶解力を向上しうる。必要によってはこの中に界面活性剤としてLAS,SAS,AES,AS,高級アルコール(EO付加物),脂肪酸エステル(EO付加物),アルキルアミンオキシド,ポリアルキルグルコシド,ソルビタン酸エステル,アルキルプロピルアミンオキシドなどを適宜0.2〜1.5w%加入しても差し支えない。
【0015】
本発明の理想的な組成はテルペン系炭化水素が60〜80w%、飽和炭化水素(C2n+2,n=6〜18の正数であり、より好ましくはn=8〜10)が20〜40w%であり、更に加えるのであれば、低級アルコール(C1〜4)を15w%以下で併用することが好ましい。即ち、低温での処理スピードを上げるために良とする。勿論、1w%未満の界面活性剤も特筆である。
【本発明の効果】
【0016】
本発明のソルベント組成体は、次の特長を有することが判明した。
(1)処理法が極めて簡易、エネルギーも特殊設備も特殊工法も必要なく、単純に浸漬・浸潤するだけでたり得る。
(2)安全性(LD50で10g/kg以上)の高い成分であり、生分解性も好ましく、未来型のテクノロジーである。
(3)スチロール廃材の溶解減容のスピードが約1000g/hr・Lで、他のスチロール減容剤の500〜800g/hr・Lより早く、しかも危険性(危険作業環境下での危険性)が、ソルベント系のこの種の物の中では極めて低く、絶対とまでは言われずとも、かなり順当な現状である。
(4)当該処理剤は全て使い切る事ができ、また減容力はパラレルに移行するのでベストエコロジー(液の一滴まで再利用できる)、つまり組成液の疲弊がセーブできる。
(5)嵩(L)で処理するので、原価計算した場合、80%位のコストで済むので、コストパフォーマンスに優れる。
(6)本処理液は、そのまま油状汚染物,固形脂状物,タール,ピッチ,スチロール,PVC,PVP,PETなどの分散剤,洗浄剤,粘着除去(ラベルなどのリムーバー),化粧品(油性ファンデーション,クリームなどの油状物)のクリーナーやプリケア剤として利用できる。
(7)トイレ,合板タイル,フローリングなどのデイリーケアクリーナーとして利用できる。
(8)樹脂加工場のローター,ローダー,ギア,ストレーナー,スプリング,ワッシャなどのクリーナーとして利用できる。
(9)電子製品の回路などの非水系パーツなどの清浄剤として流用できる。
(10)セラミック,ゴム,エラストマー,ボード(NWF),墓石材,その他セラミックス類の、水が使えないノンウオータープロセスでのクリーナーとしても利用されるであろう。
(11)シトラスと併せて、虫(蚊やハエなど)の忌避剤として、ビムスロイドなどの成分と合体した忌避性クリーナーとして利用できる。
(12)水を使えない部分(例えば、ベッドルーム,調度品,ピアノ,電気製品(テレビ,パソコンなど))の清浄剤(除菌・消臭)として利用できる。
これらのように、利用範囲は広がりつつある。
【実施例1】
【0017】
次の試作品を作製し、従来品といくつかの項目について比較検討した。
【表1】

【0018】
【表2】

【検証結果】
1,臭気
5人のモニターに各サンプルの臭気を下記の通り判定した。
○:臭気はあるがマイルド
△:臭気はあるが刺激臭はあまりない
×:臭気が強い

コメント:本発明品は外見の臭気においても、同効果のある溶剤群に比しても優れていることが判明した
【0019】
【表3】
2,溶解効果
発泡スチロール(パッキン廃材)を10gの溶解状況を、20℃で60秒と180秒での相対評価をした。

コメント:本発明品は時間当たりの溶解量は、従来品に比べて110〜130%優れている(効率が良い)
【0020】
【表4】
3,スタミナ
同一液、1L当たりでどれだけの廃材が処理できるか、その臨界量を模索した。

コメント:本発明品1Lの処理能は、従来品と比べて大きく有意義を示した(およそ1.5〜2倍)
【0021】
【表5】
4,減容率
60Lの容器にそれぞれのサンプルを20L入れ、そこに発泡スチロール2kg加え、20℃で5分後と10分後での減容率を調べた。減容率[%]=((2−x)/2)×100(xは処理後の重さ、小数点以下切り上げ)とする。

コメント:本発明品の浸漬時間当たりの溶解力の、高機動性で高効率であることが判明した
【実施例2】
【0022】
次の成分からなる、本発明品と特定成分を変えた物の決定的な比較確認のためにテストした。
【表6】

【0023】
【表7】
発泡スチロールの廃材をガラスの容器にそれぞれ100g入れ、上表(表6)サンプルを200ml入れて浸漬した(液温は22±2℃)。そして5分,20分後のガラス容器内を観察し、それぞれの時間での発泡スチロール処理率を測定した。それと共に、当該処理スチロールを水洗してプレス乾燥し、最終的なスチロールの量(回収率)を調べた。

明らかに本発明の組成の物が有利に回収を確保していることを確認した。
【0024】
【表8】
次いで、最終的に残留した、それぞれの液を用いて、再び別なるスチロール廃材を入れて、その状況を観察した。

【実施例3】
【0025】
次のサンプル4種の再生剤の温度依存性を確認した。
【表9】

【0026】
【表10】
上表(表9)について、下記の結果が出た。スチロール廃材の溶解力について、それぞれ1Lのステンレスビーカーにサンプル液を300ml入れてから、微細(米粒ほど)にしたスチロール廃材を250g入れて、1分後,5分後,10分後の残留量調べた。

【0027】
【表11】
液温毎の溶解スピードを比較する。200mlのビーカーに100mlのサンプルを入れ、スチロールの塊状物(約15ml)の各温度においての溶解スピードを5分ごと15分後の減量率で示した。減量率は元の重量−それぞれの経時後重量を元の重量で割った百分率とする。

本発明品の方の温度依存性が小さく、比較的低温(10℃以下)でも、かなり溶解効果があり、これに時間的要素を加えることでほぼ完成に近づく(経時60〜200分)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡スチロール廃材の処理再生用として、次の(1)及び(2)の組み合わせからなる混合組成物。
(1)テルペン系炭化水素(C(n=1〜3の正数)が30〜90w%
(2)飽和脂肪族炭化水素として、C2n+2(n=6〜18の正数)が10〜40w%
【請求項2】
発泡スチロール廃材の処理再生に用いる[請求項1]の組成物に、低級アルコール(C以下)を含ませた、発泡スチロール廃材の混合組成物。

【公開番号】特開2012−251120(P2012−251120A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133687(P2011−133687)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(509036300)株式会社東企 (13)
【Fターム(参考)】