説明

発泡体シート用油中水型エマルションおよびその調製方法、ならびに発泡体シートおよびその製造方法

【課題】乳化剤を含まなくとも、安定性に優れ、発泡体シートへ重合が可能な油中水型エマルションおよびそれを用いた発泡体シートを提供すること。
【解決手段】以下の(a)および(b)の成分を含み、乳化剤を含まない油中水型エマルションを調製する。すなわち、(a)i) エチレン性不飽和モノマーおよび該エチレン性不飽和モノマーと共重合可能な少なくとも1種の極性モノマーを含む重合性単量体組成物、ii)エチレン性不飽和モノマーおよび該エチレン性不飽和モノマーと共重合可能な少なくとも1種の極性モノマーを重合してなる重量平均分子量が10万以上1000万以下の少なくとも1種のポリマーであって、前記i)との合計量に対して5重量%以上となるポリマー、iii)少なくとも1種の重合開始剤、およびiv)少なくとも1種の架橋剤を含む連続油相成分; および(b)該連続油相成分と不混和性の少なくとも1種の共連続または不連続相成分。さらに、このようなエマルションを重合および脱水して、発泡体シートを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乳化剤を含有しない新規な油中水型エマルションおよびその調製方法に関する。本発明はさらに、そのような油中水型エマルションを用いて発泡体シートを製造する方法およびそれによって得られる発泡体シートに関する。得られた発泡体は、油中水型エマルションの微小構造に応じて独立気泡または連続気泡であってもよい。
【背景技術】
【0002】
水相対油相の比率が比較的高い油中水型エマルションは、高不連続相エマルション(High Internal Phase Emulsion(“HIPEs”または”HIPE”エマルション)として当該技術分野で知られている。
【0003】
HIPEエマルションを重合させることによって形成される多孔性のポリマーフォーム材料の性質および特性は、重合性HIPEエマルションを構成する成分の種類およびエマルションを形成するのに用いられる各工程の条件によっても大きく変化することが知られている。例えば、少なくとも水90重量%と、重合性モノマーと界面活性剤および重合触媒を含む油相とを含んでなる高不連続相エマルションから吸収性の多孔性ポリマー(すなわちフォーム)を調製する方法(特許文献1)、あるいは少なくとも水相と重合性モノマーと界面活性剤および重合触媒を含む油相とを含んでなる高不連続相エマルションから洗浄と脱水を繰返し、所望どおりに成形しうる約100mg/cc未満の乾燥密度かつ少なくとも約75の靭性指数を有する乾燥疎水性フォームを調製する方法(特許文献2)などが提案されている。HIPEの供給から重合までを連続して行うことが出来る多孔質架橋重合体の製造方法も開示されている(特許文献3)。さらに、HIPEを光重合してフォームを製造する方法が開示されている(特許文献4)。
【0004】
上記特許文献のように、重合性HIPEエマルションの存在、および合成は当該技術分野で知られてはいるが、重合を行って有用なフォーム材料とするのに好適なHIPEエマルションの調製は全く問題なしに行われるものではない。このようなHIPEエマルション、具体的には水相対油相の比率が極めて高いHIPEエマルションは不安定になり易い。油中水型エマルションの連続相成分であるモノマー/架橋剤の含量、乳化剤種類の選択、エマルション成分濃度および温度、および/または撹拌条件がごく僅か変化するだけでも、これらのエマルションが「壊れ」、それらは明瞭に水および油相へと少なくとも幾分かは分離することがある。なかでも乳化安定なエマルションを得るためには乳化剤の配合は必須であり、親油性乳化剤としてソルビタンモノオレエート、表面疎水化処理を施した無機微粒子および層状粘土鉱物が用いられている。あるいは、界面活性剤を含有せずに、ポリアルキルシラセスキオキサンの微細な固体球状粒子を含有する油中水型エマルションの調製方法が開示されている(特許文献5)。
【0005】
したがって、安定したHIPEの形成には乳化剤または乳化剤代替材料が必須であり、典型的には、反応性相と乳化剤とでなる連続油相中、反応性相100重量部に対して、乳化剤等を30重量部までを構成する必要がある。このため、安定なエマルションが得られたとしても、エマルション組成や処理条件が変化すれば、最終的に得られるポリマー性フォーム材料の特性および特徴に著しく影響することがあり、それによりフォーム材料の物性が目的の物性とは大きく異なったものになる場合もある。
【0006】
これに対し、形成する発泡体中に汚染物質として作用する可能性のある乳化剤および代替材料を、ポリマーフォーム材料を構成する連続相に導入するべく反応性乳化剤の検討もなされている。例えば、乳化剤代替材料として官能化酸化金属ナノ粒子を含む油中水型エマルションからフォームの調製方法が開示されている(特許文献6)。
【0007】
しかしながら、このような従来の方法による油中水型エマルション、特にHIPEエマルションは不安定になりやすい。特に、このようなエマルションからフォーム材料を得る場合には、連続工程によって重合性エマルションを製造して、フォーム材料を商業的に有用な量または開発に必要な量で提供するには、形成したエマルションの安定性が充分ではなく、また乳化剤代替材料の影響によりフォーム材料の物性が目的の物性とは大きく異なったものになる場合がある。
【0008】
また、一般的に乳化剤が含まれる油中水型HIPEエマルションから形成される発泡体の殆どは、気泡壁に開口が多数存在する連続気泡構造であるが、前記乳化剤が存在しない条件または、前記乳化剤代替材料の存在下で独立気泡構造と連続気泡構造の両者を選択的に成形する方法は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公平3−66323号公報
【特許文献2】特表2003−514052号公報
【特許文献3】特表2001−163904号公報
【特許文献4】特表2003−510390号公報
【特許文献5】特許第2656226号公報
【特許文献6】特表2004−504461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、実質的に乳化剤を含まず、発泡体シートへの重合可能な安定性に優れるHIPEエマルションを含む油中水型エマルションおよびその調製方法を提供することを目的とする。
【0011】
本発明はまた、このような油中水型エマルションから発泡体シートを製造する方法およびそれによって得られる発泡体シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記油中水型エマルションを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明は、以下の(a)および(b)の成分を含み、乳化剤を含まない油中水型エマルション:
(a)i) エチレン性不飽和モノマーおよび該エチレン性不飽和モノマーと共重合可能な少なくとも1種の極性モノマーを含む重合性単量体組成物、ii)エチレン性不飽和モノマーおよび該エチレン性不飽和モノマーと共重合可能な少なくとも1種の極性モノマーを重合してなる重量平均分子量が10万以上1000万以下の少なくとも1種のポリマーであって、前記i)との合計量に対して5重量%以上となるポリマー、iii)少なくとも1種の重合開始剤、およびiv)少なくとも1種の架橋剤を含む連続油相成分; および
(b)該連続油相成分と不混和性の少なくとも1種の共連続または不連続相成分、
に関する。
【0014】
上記i) のエチレン性不飽和モノマーと前記ii)のエチレン性不飽和モノマーが、いずれもアルキル基中の炭素数が1〜20個の少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレートであり、i) におけるアルキル基中の炭素数が1〜20個の少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレートと該アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な少なくとも1種の極性モノマーとの比が、70〜98重量部対2〜30重量部であり、
ii)におけるアルキル基中の炭素数が1〜20個の少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレートと該アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な少なくとも1種の極性モノマーとの比が、70〜95重量部対5〜30重量部であることが好ましい。
【0015】
上記油中水型エマルションは、アルキル基中の炭素数が1〜20個の少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレートと該アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な少なくとも1種の極性モノマーとを、70〜95重量部対5〜30重量部で含んでなる重合性組成物を部分重合した後に、未重合のモノマーの割合を、70〜98重量部対2〜30重量部に調整することで得られ得る。
【0016】
上記ii)ポリマーの重量平均分子量は、10万以上50万以下であることが好ましい。
【0017】
前記ii)ポリマーは、前記i)との合計量に対して20重量%以上となることが好ましい。
【0018】
上記連続油相成分中の架橋剤の量は、上記i)およびii)の混合シロップ100重量部に対して、5〜30重量部であることが好ましい。
【0019】
上記共連続または不連続相成分は水であることが好ましい。
【0020】
上記共連続または不連続相成分は、上記エマルション全体の少なくとも74体積パーセントを構成することが好ましい。
【0021】
本発明はまた、油中水型エマルションの調製方法であって、
(a)i)アルキル基中の炭素数が1〜20個の少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレートおよび該アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な少なくとも1種の極性モノマーを、70〜95重量部対5〜30重量部含んでなる重合性組成物を部分重合した後、未重合モノマーの割合を、70〜98重量部対2〜30重量部に調整してプレポリマーシロップを得る工程、
iii)該プレポリマーシロップに、少なくとも1種の重合開始剤および少なくとも1種の架橋剤を混合することにより、連続油相成分を得る工程; および
(b) 乳化剤を添加せずに、該連続油相成分と不混和性の少なくとも1種の共連続または不連続相成分とを混合する工程、
を含む調製方法、に関する。
【0022】
本発明はまた、(a)上記いずれかの油中水型エマルションを調製し成形する工程;
(b) 該油中水型エマルション中の重合開始剤を活性化し得る熱エネルギー、遠赤外線、紫外線、または可視光に前記油中水型エマルションを暴露して、含水架橋重合体を形成する工程;および(c) 前記含水架橋重合体を脱水する工程、を含む発泡体シートの製造方法、に関する。
【0023】
上記発泡体シートの製造方法において、(a)前記油中水型エマルションの調製および成形工程、(b) 前記含水架橋重合体の形成工程、および(c) 前記含水架橋重合体の脱水工程が連続的に行われることが好ましい。
【0024】
本発明はまた、上記の油中水型エマルションから得られ、独立気泡構造および/または気泡間の開口を有する連続気泡構造からなる発泡体シート、に関する。
【0025】
本発明はまた、上記の油中水型エマルションから得られ、平均気泡径が、20μm以下の気泡および気泡間の開口を有する連続気泡構造からなる発泡体シート、に関する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の油中水型エマルションは、乳化剤を含まなくても、安定性に優れ、発泡体シートへ重合が可能である。このような油中水型エマルションは、連続的で商業的に利用できる規模での発泡体シートの安定的製造を可能にする。
【0027】
本発明によれば、発泡体シートの製造において、独立気泡構造または連続気泡構造を選択的に成形することが可能である。
【0028】
さらに、従来の発泡体成形方法では、発泡体厚さをスライスなどの加工処理にて調製する必要があるが、本発明の発泡体シートでは、任意の厚さで単量体組成物をシート状に塗工し、連続して所望の厚みを有する発泡体シートを高精度で製造することができる。
【0029】
本発明の発泡体シートは、架橋により三次元網目構造を有しており、優れた耐熱性や圧縮回復性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1で得られたアクリル系樹脂発泡体の断面SEM写真(800倍)を示す。
【図2】実施例2で得られたアクリル系樹脂発泡体の断面SEM写真(1200倍)を示す
【図3】実施例3で得られたアクリル系樹脂発泡体の断面SEM写真(1200倍)を示す。
【図4】実施例4で得られたアクリル系樹脂発泡体の断面SEM写真(1200倍)を示す。
【図5】実施例5で得られたアクリル系樹脂発泡体の断面SEM写真(1200倍)を示す。
【図6】実施例6で得られたアクリル系樹脂発泡体の断面SEM写真(800倍)を示す。
【図7】実施例7で得られたアクリル系樹脂発泡体の断面SEM写真(800倍)を示す。
【図8】実施例8で得られたアクリル系樹脂発泡体の断面SEM写真(800倍)を示す。
【図9】実施例9で得られたアクリル系樹脂発泡体の断面SEM写真(800倍)を示す。
【図10】実施例10で得られたアクリル系樹脂発泡体の断面SEM写真(800倍)を示す。
【図11】比較例2で得られたアクリル系樹脂発泡体の断面SEM写真(800倍)を示す。
【図12】比較例3で得られたアクリル系樹脂発泡体の断面SEM写真(800倍)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の油中水型エマルションは、以下の成分を含み、乳化剤を含まない。
【0032】
すなわち、(a)i) エチレン性不飽和モノマーおよび該エチレン性不飽和モノマーと共重合可能な少なくとも1種の極性モノマーを含む重合性単量体組成物、ii)エチレン性不飽和モノマーおよび該エチレン性不飽和モノマーと共重合可能な少なくとも1種の極性モノマーを重合してなる重量平均分子量が10万以上1000万以下の少なくとも1種のポリマーであって、前記i)との合計量に対して5重量%以上となるポリマー、iii)少なくとも1種の重合開始剤、およびiv)少なくとも1種の架橋剤を含む連続油相成分; および(b)該連続油相成分と不混和性の少なくとも1種の共連続または不連続相成分を含む。
【0033】
ここで、i)およびii)におけるエチレン性不飽和モノマーとは、限定はされないが、好ましくは、アルキル基中の炭素数が1〜20個の少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレートである。
【0034】
本明細書で、「アルキル基中の炭素数が1〜20個のアルキル(メタ)アクリレート」と言うときは、炭素数が1〜20個の直鎖あるいは分枝鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを指し、芳香環をその構造中に含むものは除外される。前記アルキル基の平均炭素数は2〜18であるのが好ましい。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。
【0035】
アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、ドデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、およびエイコシル基の如き炭素数が1〜20、好ましくは、4〜18の直鎖又は分岐のアルキル基を有するアクリル酸やメタクリル酸のエステルの1種又は2種以上を用いたものがあげられる。より具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどがあげられる。なかでも、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどを例示でき、これらを単独または2種以上の組み合わせで使用できる。アルキル(メタ)アクリレートは、2種以上を組み合わせてもよく、また、同じエマルション中でi)およびii)のアルキル(メタ)アクリレートは同一でもよく、その成分中一部同一でもよく、異なっていてもよい。
【0036】
本発明において「極性モノマー」には、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマーなどが例示され、これらを単独または2種以上の組合せで用いることができる。
【0037】
i)の重合性単量体組成物中に含まれるエチレン性不飽和モノマーとそれに共重合可能な極性モノマーとの重量比は、好ましくは、70〜98重量部対2〜30重量部である。この重量は、より好ましくは、75〜96重量部対4〜25重量部、さらに好ましくは、80〜95重量部対5〜20重量部である。極性モノマーの使用量が、2重量部以上30重量部以下の範囲内であれば、ii)ポリマーの溶解性が保持され、より安定な油中水型エマルションが形成されて好ましい。
【0038】
ii)のポリマー中に含まれるアルキル基中の炭素数が1〜20個のアルキル(メタ)アクリレートとそれに共重合可能な極性モノマーとの成分は、重量比で70〜95重量部対5〜30重量部であることが好ましい。この重量は、より好ましくは、80〜95重量部対5〜20重量部、さらに好ましくは、85〜94重量部対6〜15重量部である。ポリマーを構成する極性モノマーの使用量が、5重量部以上30重量部以下の範囲内であれば、共連続または不連続相成分対連続油相比率が低下することなく、また、乳化工程において良好な状態が保持され、好ましい。
【0039】
また、前記ポリマーの分子量および濃度は、油中水型エマルションの形成において主に、油中水型エマルションを構成する連続油相成分a)や油中水型エマルションの液物性、界面活性作用、液滴の被膜強度、および静置保存安定性、得られる発泡体シートの気泡構造に影響を及ぼすと考えられる。特に、前記ポリマーii)の分子量およびその濃度は、油中水型エマルション中の水滴の被膜強度や大きさと極めて関係が深く、ポリマーiii)の濃度が高くなると水滴の大きさが小さくなることが予想され、得られる発泡体シートの気泡径も小さくなる。また、分子量の低下によって、水滴の被膜強度が小さくなることが予想され、気泡壁に開口を生じることから、ポリマーii)の分子量およびその濃度を適宜選択することにより、所望の気泡径および気泡構造を持った油中水型エマルションおよび、発泡体シートが得られる。ポリマーii)の濃度は、微細な水滴を有する油中水型エマルションおよび、気泡径を有する発泡体を成形するのに充分な界面活性作用、および静置安定性を得るために、i)の重合性単量体組成物と該ポリマーの総量に対して、5重量%以上とする。好ましくは、7重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、最も好ましくは20重量%以上である。上限は特に限定はされないが、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下である。
【0040】
本明細書においては、i)重合性単量体組成物とii)ポリマーとの混合物を、プレポリマーシロップ、あるいは混合シロップと称することもある。
【0041】
ここで、重量%は、i)とii)の混合シロップ約0.5gを精秤し、これを130℃で2時間乾燥した後の重量を精秤して重量減少量(揮発分(未反応モノマー重量))を求め、以下の式によって算出することができる。
【0042】
混合シロップ中のポリマーの重量%=〔1−(重量減少量)/(乾燥前の混合シロップの重量)〕×100
【0043】
また、ポリマーii)の分子量は、安定な静置保存性を有する油中水型エマルションおよび、任意の気泡構造を選択可能な発泡体を成形するのに充分な界面活性作用、および皮膜強度を得るために、重量平均分子量10万〜1000万、好ましくは10万以上700万以下、さらに好ましくは10万以上650万以下、最も好ましくは、10万以上50万以下である。
【0044】
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定できる。より具体的には、GPC測定装置として、商品名「HLC−8020GPC」(東ソー株式会社製)を用いて、ポリスチレン換算値により、次のGPCの測定条件で測定して求めることができる。
GPCの測定条件
・サンプル濃度:0.1重量%(テトラヒドロフラン溶液)
・サンプル注入量:100μl
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・流量(流速):0.5mL/min
・カラム温度(測定温度):40℃
・カラム:商品名「TSKgel GMHHR−H(20)」(東ソー株式会社製)
・検出器:示差屈折計
【0045】
i)およびii)の混合物であるプレポリマーシロップは、限定はされないが、i)の重合性単量体組成物と同じ組成の物を部分重合することによって得ることができる。
【0046】
重合性組成物を部分重合してプレポリマーシロップを製造する方法は、特に限定されず、公知のポリマーシロップ製造方法が適用され得る。このような方法には、限定はされないが、例えば、重合性組成物に、少量の重合開始剤を含有させ、重合開始剤の種類により、熱エネルギー、紫外線、または遠赤外線、可視光などに暴露し、所望の粘度およびベースに調整することが含まれる。プレポリマーシロップにおける粘度は、限定はされないが、好ましくは、1〜50Pa・s、より好ましくは5〜30Pa・s、さらに好ましくは5〜20Pa・sである。ここで、粘度は、B型粘度型にて25℃下測定される。
【0047】
i)およびii)の混合物であるプレポリマーシロップはまた、任意の溶媒中にi)と同じ組成の重合性単量体組成物と連鎖移動剤、重合開始剤などを仕込んで重合し、前記重合性単量体組成物および連鎖移動剤、重合開始剤が溶解し、生成したポリマーが溶解しない貧溶媒にて洗浄する溶液重合法など、上記条件を満足するポリマーを合成するいずれかの任意の方法で作製することが可能である。
【0048】
特に前記ポリマーの重量平均分子量が50万以上である場合には部分重合法、重量平均分子量が50万未満の場合には、溶液重合法を利用するのが望ましい。
【0049】
また、部分重合法では重合後の重合性単量体組成物組成を、部分重合にて得られたポリマーを構成する組成と同様とするか、または、ポリマーii)がポリマーi)と相溶する組成であれば、上記エチレン性不飽和モノマー70〜98重量部に対し、極性モノマー2〜30重量部の範囲を満たす条件で、上記エチレン性不飽和モノマーおよび極性モノマーの種類および組み合わせを調整することが可能である。
【0050】
本発明において、上記のプレポリマーシロップにおける部分重合を達成する際に用いられる重合開始剤、あるいは、プレポリマーシロップと混合され、本発明の連続油相成分を調製するのに使用される上記iii)成分である重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤などの重合開始剤が含まれる。さらにラジカル重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤、レドックス重合開始剤などがあげられる。前記熱重合開始剤としては、例えばアゾ化合物、過酸化物、ペルオキシ炭酸、ペルオキシカルボン酸、過硫酸カリウム、t-ブチルペルオキシイソブチレート、および2,2’-アゾビスイソブチロニトリルが挙げられる。前記光重合開始剤としては、4−(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ−2-プロピル)ケトン(例として、チバジャパン社製、商品名;ダロキュアー2959)、α-ヒドロキシ-α,α’-ジメチルアセトフェノン(例として、チバジャパン社製、商品名;ダロキュアー1173)、メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(例として、チバジャパン社製、商品名;イルガキュアー651)、2-ヒドロキシ-2−シクロヘキシルアセトフェノン(例として、チバジャパン社製、商品名;イルガキュアー184)などのアセトフェノン系光重合開始剤、ベンジルジメチルケタールなどのケタール系光重合開始剤、その他のハロゲン化ケトン、アシルフォスフィンオキサイド(例として、チバジャパン社製、商品名;イルガキュアー819)などを挙げることができる。これら重合開始剤は、単独で用いてもよく、また、2種類以上を併用してもよい。
【0051】
重合開始剤の使用量は、上記のプレポリマーシロップにおける部分重合を達成する際に用いられる重合開始剤の場合、アルキル(メタ)アクリレートと極性モノマーとの混合モノマー100重量部に対して、0.03〜1重量部、好ましくは、0.05−0.5重量部である。
【0052】
プレポリマーシロップと混合される重合開始剤の使用量としては、上記単量体成分および重合開始剤の組み合わせにもよるが、プレポリマーシロップ、または前記プレポリマーシロップと架橋剤からなる連続油相成分全体の重量100重量部に対し、0.05〜5.0重量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.0重量部である。前記重合開始剤の使用量が0.05重量部未満の場合には、未反応の単量体成分が多くなる可能性があり、得られる多孔質材料中の残存単量体量が増加する傾向になる。一方、上記重合開始剤の使用量が5.0重量部を超える場合には、得られる発泡体材料の機械的性質が劣化する場合がある。
【0053】
なお、上記光重合開始剤によるラジカル発生量は、照射する光の種類や強度、時間、モノマー及び溶剤混合物中の溶存酸素量などによっても変化する。溶存酸素が多い場合には、ラジカル発生量が抑制され、重合が十分に進行せず、未反応物が多くなることがある。従って、光照射前に、組成物中に窒素等の不活性ガスを吹き込み、酸素を窒素で置換しておくことが好ましい。
【0054】
重合開始剤として光重合開始剤を用いる場合には、所望により実質的に有機溶剤などの環境負荷物質を含まずに製造することができる。さらに、単量体組成物を重合時に加熱する必要がない。そのため、添加する発泡剤の発泡温度は考慮しなくてもよく、低温発泡型の発泡剤をも使用することが可能となる。光重合開始剤を用いる場合にはまた、光重合途上において所望の分子構造を有する発泡体シートを確実に得ることができるようになる。
【0055】
本発明に用いる架橋剤は、典型的にはポリマー鎖を一緒につないで、より三次元的な分子構造を製造するために存在する。架橋剤の特定のタイプと量の選択は、得られるフォームに所望される構造的、機械的、および流体処理特性に左右される。架橋剤の具体的なタイプおよび量の選択は、構造および機械的性質の望ましい組合せを有した好ましい発泡体の最終的な実現において重要である。このような架橋剤には、メタクリレート類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類およびそれらの混合物がある。これらには、ジ、トリおよびテトラ‐アクリレート類、ジ、トリおよびテトラ‐メタクリレート類、ジ、トリおよびテトラ‐アクリルアミド類、ジ、トリおよびテトラ‐メタクリルアミド類、およびこれら架橋剤の混合物がある。適切なアクリレートおよびメタクリレート架橋剤はジオール類、トリオール類およびテトラオール類から誘導でき、それらには1,10デカンジオール、1,8オクタンジオール、1,6ヘキサンジオール、1,4ブタンジオール、1,3ブタンジオール、1,4ブタ 2エンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトールなどがある(アクリルアミドおよびメタクリルアミド架橋剤は、対応するジアミン類、トリアミン類およびテトラアミン類から誘導しうる)。好ましいジオール類は、少なくとも2、更に好ましくは少なくとも4、最も好ましくは6つの炭素原子を有している。架橋剤の使用量は、連続油相成分を構成する上記アルキル(メタ)アクリレートと極性モノマーの組み合わせにもよるが、前記重合性組成物を部分重合してなる少なくとも1種のプレポリマーシロップ100重量部に対し、5〜30重量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜30重量部である。前記架橋剤の使用量が5重量部未満の場合には、耐熱性の低下に伴い含水架橋重合体を脱水する工程において収縮により気泡構造が崩れる場合がある。一方、上記架橋剤の使用量が30重量部を超える場合には、得られる発泡体材料の機械的性質が劣化する場合がある。
【0056】
本発明の連続油相成分は、このように(a)i) エチレン性不飽和モノマーおよび該エチレン性不飽和モノマーと共重合可能な少なくとも1種の極性モノマーを含む重合性単量体組成物、ii)エチレン性不飽和モノマーおよび該エチレン性不飽和モノマーと共重合可能な少なくとも1種の極性モノマーを重合してなる重量平均分子量が10万以上1000万以下の少なくとも1種のポリマーであって、前記i)との合計量に対して5重量%以上となるポリマー、iii)少なくとも1種の重合開始剤、およびiv)少なくとも1種の架橋剤を均一に混合して得ることができる。
【0057】
本発明に用いる共連続または不連続相成分b)は、実質的に連続油相成分と不混和性のあらゆる流体を使用することができる。最も良く知られている不混和性の流体は水である。不混和性の流体は、光重合開始剤を含んでいても良い。
【0058】
本発明の油中水型エマルションはエマルションを安定化させるために塩などを必要としないが、塩または水溶性高分子化合物を添加しても良い。塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどが例示されるが、これに限定されない。水溶性高分子化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸およびその誘導体、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドンのような合成高分子化合物、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロースエーテルなどがあげられる。このうち、特にはけん化度が97mol%以上で重合度が1000以上のPVAが好ましく用いられ得る。
【0059】
本発明の油中水型エマルションを形成するのに使用される連続油相成分と不混和性の共連続または不連続相成分の相対量は、得られるポリマーフォームの構造的、機械的、および性能的特性を決定する上で重要である。連続油相成分と不混和性の共連続または不連続相成分との容積比は、密度、気泡サイズ、気泡構造、およびフォーム構造を形成する壁体の寸法など発泡体の特徴に影響を与えるので、硬質発泡体フォームを得たい場合には、不連続相成分を少なくし、軟質発泡体フォームを得たい場合には、不連続相成分を多くする。
【0060】
具体的には、本発明においては、不混和性の共連続または不連続相成分の割合が高い状態においても、エマルション全体が安定的に保たれる。この為、エマルション全体に対して、不混和性の共連続または不連続相成分が74体積%以上であってもよく、好ましくは、74体積%以上99体積%以下であり得る。
【0061】
発泡体の密度および微細構造も、エマルションの製造方法の態様、すなわち、連続油相成分に対する不混和性の共連続または不連続相成分の添加速度、撹拌方法、に左右される。従って、微細構造を得る場合には、添加速度を遅くし、高せん断条件で添加することが好ましく、径を大きくする場合には、添加速度を速くし、低せん断条件で添加することが好ましい。
【0062】
エマルションは典型的には低剪断条件下、すなわち連続および分散相の穏やかな混合を提供する、動翼ミキサーまたはピンミキサーなどの乳化機を使用した振盪、および電磁撹拌棒の使用などの方法で調製される。
【0063】
高剪断条件は、ローターステーターミキサー、ホモジナイザー、またはミクロ流動化装置によって達成されても良い。本発明のエマルションは、連続またはバッチ操作によって製造しても良い。
【0064】
連続的にエマルションを製造するのに適切な装置としては、静的ミキサー、ローターステーターミキサー、およびピンミキサーが挙げられる。撹拌速度を上げることで、または混合方法でエマルション中に乳化剤をより微細に分散するようデザインされた装置を使用することで、より激しい撹拌を達成しても良い。バッチ方法エマルションは、組み合わせた成分を手または機械で混合または振盪して製造しても良い。例えば被動動翼ミキサーまたは3枚プロペラ混合羽根を使用して、バッチ方法におけるより激しい撹拌を達成しても良い。
【0065】
また、上記油中水型エマルションには、任意成分として、粘着付与樹脂、タルクや炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸やその塩類、クレー、雲母紛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、亜鉛華、ベントナイン、カーボンブラック、シリカ、アルミナ、アルミニウムシリケート、アセチレンブラック、アルミニウム粉などの充填剤、顔料、染料などの従来公知の各種の添加剤を乳化安定性と重合反応性を阻害しない範囲内で適宜に配合することができる。
【0066】
本発明においては、油中水型エマルションを賦形し重合するには、油中水型エマルションの形成において連続的に連続油相成分と共連続または不連続相成分を乳化機に供給して油中水型エマルションを形成し、得られた油中水型エマルションを重合して含水架橋重合体を得、その後に含水架橋重合体を脱水する工程を連続的に行う「連続法」や、適当な量の水相および油相を乳化機に供給し、乳化機内の油中水型エマルションを用いて含水架橋重合体を得、次いでこれを脱水する「バッチ法」のいずれでも用いることができる。油中水型エマルションを連続的に重合する連続重合法は生産効率が高く、重合時間の短縮効果と重合装置の短縮化とを最も有効に利用できるので好ましい方法である。
【0067】
具体的には、シート状の多孔質重合体の連続重合法として、加熱装置によってベルトコンベアーのベルト表面が加温される構造の、走行するベルト上に本発明の油中水型エマルションを連続的に供給し、ベルトの上で平滑なシート状に賦形しつつ加熱によって重合する方法;あるいは加熱装置に代えて、化学線を照射する装置を用いて同様に、走行するベルト上に本発明の油中水型エマルションを連続的に供給し、ベルトの上で平滑なシート状に賦形しつつ化学光によって重合する方法がある。
【0068】
従って、1つの態様としては、上記重合装置に油中水型エマルションを供給し、加熱することで多孔質重合体を得ることができる。本発明の油中水型エマルションでは、常温〜150℃の範囲で油中水型エマルションを加熱することが好ましく、油中水型エマルションの安定性、重合速度の観点から、より好ましくは60〜150℃の範囲、さらに好ましくは70〜130℃、特に好ましくは80〜100℃の範囲である。重合温度が常温未満では、重合に長時間を要し、工業的生産に好ましくない場合がある。他方、重合温度が150℃を越える場合には、得られる多孔質材料の孔径が不均一となり、また多孔質材料の強度が低下するため好ましくない場合がある。また、重合温度は、重合中に2段階、さらには多段階に変更させてもよく、こうした重合の仕方を排除するものではない。
【0069】
また一方で、生産性を考慮し、油中水型エマルションを形成した後、それらを例えば紫外線および可視光線などの化学線に曝露して、重合および架橋する方法も好ましく用いられる。
【0070】
この時、油中水型エマルションが形成した後、それらを例えば紫外線および可視光線などの化学線に曝露して、重合および架橋しても良い。好ましくは、可視および/または紫外範囲の光(200nm〜800nm)が使用されて、本発明の油中水型エマルションを重合させることとする。油中水型エマルションには光を散乱させる強い傾向があるため、油中水型エマルションをより良く貫通できる、この範囲の長い波長を使用することが好ましい。好ましい波長は、これらの波長で活性化できる光重合開始剤の入手しやすさと、光源の入手しやすさのために、200〜800nm、より好ましくは300〜800nm、最も好ましくは300〜450nmである。使用する光重合開始剤は、使用光源の波長(群)を吸収できなくてはならない。本発明において、光照射に用いられる代表的なものとしては、紫外線照射を行うことができる紫外線ランプとして、波長300〜400nm領域にスペクトル分布を持つものがあり、その例としてはケミカルランプ、ブラックライト(東芝ライテック(株)製の商品名)、メタルハライドランプがあげられる。
【0071】
本発明における紫外線の光照度は、紫外線ランプから紫外線被照射物(油中水型エマルション)までの距離や電圧の調節によって目的の照度に設定されるが、特開2003-13015号公報に開示された方法で、各工程における紫外線照射をそれぞれ複数段階に分割して行い、それにより粘着性能を更に精密に調節することができる。この紫外線照射は、重合禁止作用のある酸素が得られるポリマー重合率、分子量及び分子量分布に及ぼす影響をできるだけ防ぐために、窒素ガス雰囲気下、或いは、不活性ガス雰囲気下で行うか、基材に流延した紫外線重合型単量体組成物に、シリコーン等の剥離剤をコートしたポリエチレンテレフタレート等の紫外線は通過するが酸素を遮断するフィルムを積層させて行うことが好ましい。
【0072】
本発明に係る発泡体シートの製造方法では、例えば、上記油中水型エマルションを熱可塑性樹脂フィルムの一面に塗工し、不活性ガス雰囲気下あるいはシリコーン等の剥離剤をコートした紫外線透過性のフィルムによる被覆で酸素が遮断された状態で光照射する工程を含むこともできる。
【0073】
このような熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックフィルムやシートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
本発明において、上記油中水型エマルションを基材の一面に塗工する方法としては、特に限定されるものではなく、一般に用いられているロールコーター、ダイコーター、ナイフコーターなどを用いて行うことができる。
【0075】
本発明において、光重合に際しての不活性ガス雰囲気とは、光照射ゾーン中の酸素を窒素などの不活性ガスにより置換した雰囲気をいうものとする。従って、不活性ガス雰囲気においては、できるだけ酸素が存在しないことが望ましく、酸素濃度で5000ppm以下であることが好ましい。
【0076】
上記油中水型エマルションを重合させた後に、上記共連続または不連続相成分は典型的には多孔質重合体中になおも存在する。この残留共連続または不連続相成分は、多孔質重合体を乾燥することで除去しても良い。適切な乾燥方法としては、例えば真空乾燥、凍結乾燥、圧搾乾燥、電子レンジ乾燥、熱オーブン内での乾燥、赤外線による乾燥、またはこれらの技術の組み合わせが挙げられる。
【0077】
本発明の上記油中水型エマルションから製造される多くのポリマーフォームは、典型的には独立気泡であるが、連続気泡フォームを製造することもできる。これはほとんどまたは全ての気泡が、隣接した気泡と妨げられない連絡をしていることを意味する。
【0078】
フォーム気泡、特に比較的モノマーを含まない不混和性の共連続または不連続相液滴を囲むモノマー含有連続油相の重合によって形成される気泡は、形が実質的に球状の傾向がある。大多数の用途では気泡サイズは、典型的には1〜200μm、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、最も好ましくは20μm以下の範囲である。
【0079】
本発明の発泡体シートは、クッション材、絶縁、断熱材、防音材、防塵材、および濾過材などをはじめとする無数の用途に適する。
【実施例】
【0080】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部は、重量基準であり、%は容量基準である。実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0081】
(部分重合法による混合シロップの調製)
エチレン性不飽和モノマーとしてアクリル酸2−エチルヘキシル(東亜合成(株)製、以下「2EHA」と略す)90重量部、極性モノマーとしてアクリル酸(東亜合成(株)製、以下、「AA」と略す)10重量部からなる混合モノマー溶液100重量部に対し、2,2 −ジメトキシ−1,2 −ジフェニルエタン−1−オン(チバジャパン(株)製、商品名「イルガキュアー 651」)0.05重量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバジャパン(株)製、商品名「イルガキュアー 184」)0.05重量部を加えた溶液を4つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下および室温雰囲気下、紫外線に曝露して部分的に光重合させることによって、部分重合したポリマー濃度7.2%の混合シロップ1を得た。生成したポリマーの重量平均分子量は600万であった。
【0082】
(部分重合法による混合シロップ2の調製)
混合シロップ1の調製において、重合開始温度を80℃とした以外は混合シロップ1の調製と同様の操作により、部分重合したポリマー濃度25.0%の混合シロップ2を得た。生成したポリマーの重量平均分子量は107万であった。
【0083】
(部分重合法による混合シロップ3の調製)
混合シロップ2の調製において、得られた混合シロップ2 に同組成の2EHAおよび、AAからなる混合モノマー溶液を添加して、ポリマー濃度9.0%の混合シロップ3を得た。
【0084】
(部分重合法による混合シロップ4の調製)
混合シロップ1の調製において、重合開始温度を100℃とした以外はシロップ1の調製と同様の操作により、部分重合したポリマー濃度36.0%の混合シロップ4を得た。生成したポリマーの重量平均分子量は52万であった。
【0085】
(部分重合法による混合シロップ5の調製)
混合シロップ4の調製において、得られた混合シロップ2 に同組成の2EHAおよび、AAからなる混合モノマー溶液を添加して、ポリマー濃度7.3%の混合シロップ5を得た。
【0086】
(溶液重合法による混合シロップ6の調製)
エチレン性不飽和モノマーとして2EHAを90重量部、極性モノマーとしてAAを10重量部からなる混合モノマー溶液100重量部に対し、連鎖移動剤としてチオグリコール酸(堺化学工業(株)製、商品名「メルカプト酢酸」)0.2重量部、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(キシダ化学(株)製、商品名「AIBN」)0.2重量部、溶媒として酢酸エチル67重量部からなる溶液を4つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下、60℃で4時間、さらに70℃で3時間の湯浴加熱によって、ポリマー濃度約60%のポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をメタノールで数回洗浄して、重量平均分子量が18万のポリマーを得た。得られたポリマーを2EHAが90重量部、極性モノマーとしてAAが10重量部からなる混合モノマー溶液に溶解させることによって、ポリマー濃度10.0%の混合シロップ6を得た。
【0087】
(溶液重合法による混合シロップ7の調製)
混合シロップ6の調製において、得られたポリマーを2EHAが90重量部、極性モノマーとしてAAが10重量部からなる混合モノマー溶液に溶解させることによって、ポリマー濃度20.0%の混合シロップ7を得た。
【0088】
(溶液重合法による混合シロップ8の調製)
混合シロップ6の調製において、連鎖移動剤としてチオグリコール酸を0.4重量部とした以外は、混合シロップ6の調製と同様の操作により、重量平均分子量が11万のポリマーを得た。得られたポリマーを2EHAが90重量部、極性モノマーとしてAAが10重量部からなる混合モノマー溶液に溶解させることによって、ポリマー濃度10.0%の混合シロップ8を得た。
【0089】
(溶液重合法による混合シロップ9の調製)
混合シロップ8の調製において、得られたポリマーを2EHAが90重量部、極性モノマーとしてAAが10重量部からなる混合モノマー溶液に溶解させることによって、ポリマー濃度20.0%の混合シロップ7を得た。
【0090】
(溶液重合法による混合シロップ10の調製)
混合シロップ8の調製において、得られたポリマーを2EHAが90重量部、極性モノマーとしてAAが10重量部からなる混合モノマー溶液に溶解させることによって、ポリマー濃度30.0%の混合シロップ7を得た。
【0091】
(溶液重合法による混合シロップ11の調製)
混合シロップ6の調製において、連鎖移動剤としてチオグリコール酸を1.0重量部とした以外は、混合シロップ6の調製と同様の操作により、重量平均分子量が5.5万のポリマーを得た。得られたポリマーを2EHAが90重量部、極性モノマーとしてAAが10重量部からなる混合モノマー溶液に溶解させることによって、ポリマー濃度10.0%の混合シロップ11を得た。
【0092】
(溶液重合法による混合シロップ12の調製)
混合シロップ11の調製において、得られたポリマーを2EHAが90重量部、極性モノマーとしてAAが10重量部からなる混合モノマー溶液に溶解させることによって、ポリマー濃度20.0%の混合シロップ12を得た。
【0093】
(溶液重合法による混合シロップ13の調製)
混合シロップ11の調製において、得られたポリマーを2EHAが90重量部、極性モノマーとしてAAが10重量部からなる混合モノマー溶液に溶解させることによって、ポリマー濃度40.0%の混合シロップ13を得た。
【0094】
(実施例1)混合シロップ1、100重量部に、1,9-ノナンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名;ビスコート#260)30重量部、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名;ルシリンTPO)0.5重量部、2-ヒドロキシ-2-シクロヘキシルアセトフェノン(チバジャパン社製、商品名;イルガキュアー184)0.1重量部を均一混合して連続油相成分(以下、「油相」と称する)とした。一方、前記油相成分100重量部に対して共連続または不連続相成分(以下、「水相」と称する))としてイオン交換水612重量部を常温下、前記油相成分を仕込んだ乳化機である攪拌混合機内に連続的に滴下供給し、安定な油中水型HIPEを形成させた。なお、水相と油相の重量比は86/14であった。
【0095】
得られた油中水型HIPEエマルションを光照射後の厚さが300μmとなるように種々の剥離処理された基材上に塗布し連続的に成形した。更にその上に厚さ38μmの離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを被せた。このシートにブラックライト(15W/cm)を用いて光照度5mW/cm2(ピーク感度最大波350nmのトプコンUVR−T1で測定)の紫外線を照射し、厚さ300μmの高含水架橋重合体を得た。次に上面フィルムを剥離し、前記高含水架橋重合体を130℃にて10分間に亘って加熱することによって厚さ約300μmの独立気泡構造を有する架橋型発泡体シートを得た。
【0096】
(実施例2) 実施例1において、混合シロップ1の代わりに混合シロップ3とした以外は、実施例1と同様の操作により、安定な油中水型HIPEエマルションを形成させた。得られた油中水型HIPEエマルションから、実施例1と同様の操作により、厚さ約300μmの独立気泡構造を有する架橋型発泡体シートを得た。
【0097】
(実施例3) 実施例1において、混合シロップ1の代わりに混合シロップ5とした以外は、実施例1と同様の操作により、安定な油中水型HIPEエマルションを形成させた。得られた油中水型HIPEエマルションから、実施例1と同様の操作により、厚さ約300μmの独立気泡構造を有する架橋型発泡体シートを得た。
【0098】
(実施例4) 実施例1において、混合シロップ1の代わりに混合シロップ2とした以外は、実施例1と同様の操作により、安定な油中水型HIPEエマルションを形成させた。得られた油中水型HIPEエマルションから、実施例1と同様の操作により、厚さ約300μmの独立気泡構造を有する架橋型発泡体シートを得た。
【0099】
(実施例5) 実施例1において、混合シロップ1の代わりに混合シロップ4とした以外は、実施例1と同様の操作により、安定な油中水型HIPEエマルションを形成させた。得られた油中水型HIPEエマルションから、実施例1と同様の操作により、厚さ約300μmの気泡壁に僅かに開口が見られる独立気泡構造を有する架橋型発泡体シートを得た。
【0100】
(実施例6) 実施例1において、混合シロップ1の代わりに混合シロップ6とした以外は、実施例1と同様の操作により、安定な油中水型HIPEエマルションを形成させた。得られた油中水型HIPEエマルションから、実施例1と同様の操作により、厚さ約300μmの連続気泡構造を有する架橋型発泡体シートを得た。
【0101】
(実施例7) 実施例1において、混合シロップ1の代わりに混合シロップ8とした以外は、実施例1と同様の操作により、安定な油中水型HIPEエマルションを形成させた。得られた油中水型HIPEエマルションから、実施例1と同様の操作により、厚さ約300μmの連続気泡構造を有する架橋型発泡体シートを得た。
【0102】
(実施例8) 実施例1において、混合シロップ1の代わりに混合シロップ7とした以外は、実施例1と同様の操作により、安定な油中水型HIPEエマルションを形成させた。得られた油中水型HIPEエマルションから、実施例1と同様の操作により、厚さ約300μmの微細な気泡の気泡壁に多数の開口が見られる連続気泡構造を有する架橋型発泡体シートを得た。
【0103】
(実施例9) 実施例1において、混合シロップ1の代わりに混合シロップ9とした以外は、実施例1と同様の操作により、安定な油中水型HIPEエマルションを形成させた。得られた油中水型HIPEエマルションから、実施例1と同様の操作により、厚さ約300μmの連続気泡構造を有する架橋型発泡体シートを得た。
【0104】
(実施例10) 実施例1において、混合シロップ1の代わりに混合シロップ10とした以外は、実施例1と同様の操作により、安定な油中水型HIPEエマルションを形成させた。得られた油中水型HIPEエマルションから、実施例1と同様の操作により、厚さ約300μmの連続気泡構造を有する架橋型発泡体シートを得た。
【0105】
(比較例1) 実施例1において、混合シロップ1の代わりに混合シロップ11とした以外は、実施例1と同様の操作により、油中水型HIPEエマルションを形成させようとしたが、乳化工程中にW/OからO/Wに相転移し、目的のエマルションを得ることができなかった。
【0106】
(比較例2) 実施例1において、混合シロップ1の代わりに混合シロップ12とした以外は、実施例1と同様の操作により、油中水型HIPEエマルションを形成させたが、静置保存安定性に課題が見られ、部分的に油相と水相が分離する遊離水の発生が確認された。得られた油中水型HIPEエマルションから、実施例1と同様の操作により、厚さ約300μmの半独立半連続気泡構造を有する架橋型発泡体シートを得たが、気泡径にバラツキが生じた。
【0107】
(比較例3) 実施例1において、混合シロップ1の代わりに混合シロップ13とした以外は、実施例1と同様の操作により、油中水型HIPEエマルションを形成させたが、静置保存安定性に課題が見られ、部分的に油相と水相が分離する遊離水の発生が確認された。油中水型HIPEエマルションを形成後、直ちに塗工して油中水型エマルションを成形し、直ちに紫外線を照射し、厚さ200μmの高含水架橋重合体を得た。次に上面フィルムを剥離し、前記高含水架橋重合体を130℃にて10分間に亘って加熱することによって厚さ約200μmの連続気泡構造を有する架橋型発泡体シートを得たが、発泡体シートには多数の貫通孔(ピンホール)が生じた。
【0108】
(比較例4) 実施例1において、混合シロップの代わりに同組成の重合性単量体組成物100重量部とした以外は、実施例1と同様の操作により油中水型HIPEエマルションの形成を試みたが、水相の添加と同時に油相と水相の分離が生じ、目的の油中水型エマルションを得ることができなかった。
【0109】
(試験評価)
上記実施例および比較例で得た試験体について、発泡性の試験を行った。結果を表1に示した。
【0110】
(分子量)重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定できる。より具体的には、GPC測定装置として、商品名「HLC−8020GPC」(東ソー株式会社製)を用いて、ポリスチレン換算値により、次のGPCの測定条件で測定して求めることができる。
GPCの測定条件
・サンプル濃度:0.1重量%(テトラヒドロフラン溶液)
・サンプル注入量:100μl
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・流量(流速):0.5mL/min
・カラム温度(測定温度):40℃
・カラム:商品名「TSKgel GMHHR−H(20)」(東ソー株式会社製)
・検出器:示差屈折計
【0111】
(エマルションの静置保存安定性)乳化工程で調製した油中水型エマルションを容量50mlの容器に約30g秤量し、乳化工程から30分後、1時間後、2時間後、4時間後の遊離水の発生状況を観察して、常温下の静置保存安定性を評価した。◎;4時間後も遊離水なし、○;2時間後にわずかな遊離水が見られる、△;1時間後にわずかな遊離水が見られる、×;30分以内に遊離水が見られる、または油中水型エマルションの形成が不可能
【0112】
(平均気泡径の測定)作製した発泡体シートをミクロトームカッターで厚み方向に切断したものを測定用試料とした。測定用試料の切断面を走査型電子顕微鏡(日立製、S−4800)で800倍または1200倍にて撮影した。そして、撮影した画像を用いて任意範囲の気泡の気泡径を測定し、その測定値から平均気泡径を算出した。
【0113】
上述した評価結果を、下記の表1〜3に併せて示す。
【表1】




【表2】






【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)および(b)の成分を含み、乳化剤を含まない油中水型エマルション:
(a)i) エチレン性不飽和モノマーおよび該エチレン性不飽和モノマーと共重合可能な少なくとも1種の極性モノマーを含む重合性単量体組成物、ii)エチレン性不飽和モノマーおよび該エチレン性不飽和モノマーと共重合可能な少なくとも1種の極性モノマーを重合してなる重量平均分子量が10万以上1000万以下の少なくとも1種のポリマーであって、前記i)との合計量に対して5重量%以上となるポリマー、iii)少なくとも1種の重合開始剤、およびiv)少なくとも1種の架橋剤を含む連続油相成分; および
(b)該連続油相成分と不混和性の少なくとも1種の共連続または不連続相成分。
【請求項2】
前記i) のエチレン性不飽和モノマーと前記ii)のエチレン性不飽和モノマーが、いずれもアルキル基中の炭素数が1〜20個の少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレートであり、
i) におけるアルキル基中の炭素数が1〜20個の少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレートと該アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な少なくとも1種の極性モノマーとの比が、70〜98重量部対2〜30重量部であり、
ii)におけるアルキル基中の炭素数が1〜20個の少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレートと該アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な少なくとも1種の極性モノマーとの比が、70〜95重量部対5〜30重量部である、請求項1記載の油中水型エマルション。
【請求項3】
アルキル基中の炭素数が1〜20個の少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレートと該アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な少なくとも1種の極性モノマーとを、70〜95重量部対5〜30重量部で含んでなる重合性組成物を部分重合した後に、未重合のモノマーの割合を、70〜98重量部対2〜30重量部に調整することで得られる、請求項1または2記載の油中水型エマルション。
【請求項4】
前記ii)ポリマーの重量平均分子量が、10万以上50万以下である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の油中水型エマルション。
【請求項5】
前記ii)ポリマーが、前記i)との合計量に対して20重量%以上となる、請求項1から4までのいずれか1項に記載の油中水型エマルション。
【請求項6】
連続油相成分中の架橋剤の量が、前記i)およびii)の混合シロップ100重量部に対して、5〜30重量部である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の油中水型エマルション。
【請求項7】
前記共連続または不連続相成分が水である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の油中水型エマルション。
【請求項8】
前記共連続または不連続相成分が、前記エマルション全体の少なくとも74体積パーセントを構成する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の油中水型エマルション。
【請求項9】
油中水型エマルションの調製方法であって、
(a)i)アルキル基中の炭素数が1〜20個の少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレートおよび該アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な少なくとも1種の極性モノマーを、70〜95重量部対5〜30重量部含んでなる重合性組成物を部分重合した後、未重合モノマーの割合を、70〜98重量部対2〜30重量部に調整してプレポリマーシロップを得る工程、
iii)該プレポリマーシロップに、少なくとも1種の重合開始剤および少なくとも1種の架橋剤を混合することにより、連続油相成分を得る工程; および
(b) 乳化剤を添加せずに、該連続油相成分と不混和性の少なくとも1種の共連続または不連続相成分とを混合する工程、
を含む調製方法。
【請求項10】
発泡体シートの製造方法であって、
(a)請求項1から8までのいずれか1項に記載の油中水型エマルションを調製し成形する工程;
(b) 該油中水型エマルション中の重合開始剤を活性化し得る熱エネルギー、遠赤外線、紫外線、または可視光に前記油中水型エマルションを暴露して、含水架橋重合体を形成する工程;および
(c) 前記含水架橋重合体を脱水する工程、
を含む発泡体シートの製造方法。
【請求項11】
(a)前記油中水型エマルションの調製および成形工程、(b) 前記含水架橋重合体の形成工程、および(c) 前記含水架橋重合体の脱水工程が連続的に行われる、請求項10に記載の発泡体シートの製造方法。
【請求項12】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の油中水型エマルションから得られ、独立気泡構造および/または気泡間の開口を有する連続気泡構造からなる発泡体シート。
【請求項13】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の油中水型エマルションから得られ、平均気泡径が、20μm以下の気泡および気泡間の開口を有する連続気泡構造からなる発泡体シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−242030(P2010−242030A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95073(P2009−95073)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】