説明

発泡充填材およびその製造方法

【課題】保管性および低温発泡性に優れ、さらには、形状保持性および貼着性をバランスよく兼ね備える発泡充填材、および、その製造方法を提供すること。
【解決手段】 100〜180℃において発泡し、構造物の空間を充填する、熱発泡剤を含有するアクリル系樹脂組成物からなり、熱発泡剤を除く発泡充填材の、発泡前における酢酸エチルに対する不溶解成分が、10重量%未満であり、熱発泡剤を含む発泡充填材の、発泡後における酢酸エチルに対する不溶解成分が、70重量%以上の発泡充填材を得る。本発明の発泡充填材およびその製造方法によれば、保管性および低温発泡性に優れ、さらには、形状保持性および貼着性を兼ね備える発泡充填材を提供することができる。そのため、本発明の発泡充填材は、自動車、家電製品、産業機械などにおいて、構造体の空間を充填するための発泡充填材として、好適に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡充填材およびその製造方法、詳しくは、各種の部材の間や中空部材の内部空間などを充填するために用いられる発泡充填材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のピラーなどの閉断面として形成される中空部材には、エンジンの振動や騒音、あるいは、風きり音などが車室内に伝達されることを防止するために、充填材として発泡体を充填することが知られている。
このような発泡体としては、各種の樹脂やゴムからなるポリマーの発泡体が用いられており、例えば、中空部材の内部空間に、発泡体を形成するための発泡性材料を固定して、その後、中空部材の電着塗装における乾燥時の加熱などによって、発泡性材料を発泡および架橋させることにより、中空部材の内部空間において発泡体を形成し、この発泡体によって内部空間を隙間なく充填するようにしている。
【0003】
このような発泡性材料は、通常、製造されてから使用されるまでの期間、倉庫などで保管される。しかし、長期間保管された場合、とりわけ、夏場などの高温環境において保管された場合などには、発泡性材料の架橋が進行し、使用時における発泡性材料の発泡性能が低下する場合がある。そのため、このような発泡性材料から得られる発泡体では、目的とする空間を、十分に充填することができない場合がある。
【0004】
これに対し、保管による発泡性能の低下の少ない発泡性材料として、例えば、ゴム系ポリマー、硫黄系加硫剤、加硫促進剤および発泡剤を含有する混和物からなり、加硫促進剤が、少なくとも、ジメチルジチオカルバミン酸鉄および/またはジメチルジチオカルバミン酸銅とチウラム類を含む加硫型高発泡シール材が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−254071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、近年の環境問題から、自動車、家電製品、産業機械などの製造において、各工程でのエネルギー消費量の削減が注目されている。例えば、自動車製造工程においては、電着塗装における乾燥時の加熱温度を、従来よりも下げることが要望されている。そのため、発泡性材料においても、その加熱温度に合わせ、低温条件においても良好な発泡性を発現するための、低温発泡性が求められている。
【0006】
しかしながら、引用文献1に記載の加硫型高発泡シール材は、押出し機で溶融混練により成形するところ、発泡剤が分解してしまうことを回避するため、低温で分解する発泡剤の使用が制限されている。そのため、低温発泡性を得ることが困難である。
本発明の目的は、保管性および低温発泡性に優れ、さらには、形状保持性および貼着性をバランスよく兼ね備える発泡充填材、および、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の発泡充填材は、100〜180℃において発泡し、構造物の空間を充填する、熱発泡剤を含有するアクリル系樹脂組成物からなる発泡充填材であって、熱発泡剤を除く発泡充填材の、発泡前における酢酸エチルに対する不溶解成分が、10重量%未満であり、熱発泡剤を含む発泡充填材の、発泡後における酢酸エチルに対する不溶解成分が、70重量%以上であることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の発泡充填材では、前記アクリル系樹脂組成物は、アクリル系樹脂と、熱発泡剤とを含有し、前記アクリル系樹脂が、ブロックイソシアネート基を有するブロックイソシアネート基含有アクリル樹脂を含むことが好適である。
また、本発明の発泡充填材では、前記ブロックイソシアネート基含有アクリル樹脂が、イソシアネート基と反応する活性水素基を有することが好適である。
【0009】
また、本発明の発泡充填材では、前記アクリル系樹脂が、さらに、イソシアネート基と反応する活性水素基を有する活性水素基含有アクリル樹脂を含むことが好適である。
また、本発明の発泡充填材では、前記熱発泡剤が、化学発泡剤および/または熱膨張性微小球であることが好適である。
また、本発明の発泡充填材では、イソシアネート基と反応する活性水素基を有し、ガラス転移温度(Tg)が40℃以上であり、重量平均分子量が10000未満である粘着付与樹脂を含有することが好適である。
【0010】
また、本発明の発泡充填材の製造方法は、アルキル基の炭素数が1〜20のアルキル(メタ)アクリレート70〜99重量部、および、イソシアネート基と反応する活性水素基を有する不飽和化合物1〜30重量部を含む単量体混合物、ならびに、その一部重合体を含有する重合体−単量体混合物と、ブロックイソシアネート基とアクリロイル基および/またはメタクリロイル基とを併有する不飽和化合物と、熱発泡剤と、光重合開始剤とを配合して、紫外線硬化性組成物を調製する工程と、前記紫外線硬化性組成物に、紫外線を照射して、アクリル系樹脂組成物を得る工程とを備えることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の発泡充填材の製造方法では、前記紫外線硬化性組成物を調製する工程においては、アルキル基の炭素数が1〜20のアルキル(メタ)アクリレート70〜99重量部、および、イソシアネート基と反応する活性水素基を有する不飽和化合物1〜30重量部を含む単量体混合物に、紫外線を照射し、部分的に重合させ、重合体−単量体混合物を調製し、前記重合体−単量体混合物と、イソシアネート基と反応する活性水素基を有する不飽和化合物、ブロックイソシアネート基とアクリロイル基および/またはメタクリロイル基とを併有する不飽和化合物、熱発泡剤および光重合開始剤とを配合することが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発泡充填材およびその製造方法によれば、保管性および低温発泡性に優れ、さらには、形状保持性および貼着性を兼ね備える発泡充填材を提供することができる。そのため、本発明の発泡充填材は、自動車、家電製品、産業機械などにおいて、構造体の空間を充填するための発泡充填材として、好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の発泡充填材は、構造物の空間を充填するために、100〜180℃において発泡するアクリル系樹脂組成物からなる。
本発明において、アクリル系樹脂組成物は、アクリル系樹脂と、熱発泡剤とを含有しており、アクリル系樹脂が、ブロックイソシアネート基を有するブロックイソシアネート基含有アクリル樹脂を含んでいる。
【0014】
ブロックイソシアネート基含有アクリル樹脂は、例えば、ブロックイソシアネート基と、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基(以下、(メタ)アクリロイル基とする。)とを併有する不飽和化合物(以下、イソシアネート−アクリロイル併有不飽和化合物とする。)の単独重合体、あるいは、イソシアネート−アクリロイル併有不飽和化合物と、そのイソシアネート−アクリロイル併有不飽和化合物と共重合可能な不飽和化合物(以下、共重合可能不飽和化合物とする。)との共重合体などとして得ることができる。
【0015】
ブロックイソシアネート基は、イソシアネート基がブロック剤によってブロックされ、イソシアネート基の反応が抑制されている置換基である。そして、ブロックイソシアネート基は、加熱により脱ブロックし、イソシアネート基を再生する。
ブロック剤としては、例えば、置換フェノール類、オキシム類、アセト酢酸アルキルエステル類、マロン酸アルキルエステル類、フタルイミド類、イミダゾール類、塩化水素類、シアン化水素、亜硫酸水素ナトリウムなどが挙げられる。
【0016】
このようなイソシアネート−アクリロイル併有不飽和化合物としては、例えば、メタクリル酸2−([1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボキシアミノ]エチルメタクリレートなどが挙げられる。
また、イソシアネート−アクリロイル併有不飽和化合物としては、一般に市販されている製品を用いることができ、そのような製品としては、例えば、カレンズMOI−BM(メタクリル酸2−([1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、昭和電工社製)、カレンズMOI−BP(2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボキシアミノ]エチルメタクリレート、昭和電工社製)、デュラネートTMブロックイソシアネート(旭化成ケミカルズ社製)などが挙げられる。
【0017】
これらイソシアネート−アクリロイル併有不飽和化合物は、単独または2種以上併用することができる。
イソシアネート−アクリロイル併有不飽和化合物として、好ましくは、2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボキシアミノ]エチルメタクリレートが挙げられる。
共重合可能不飽和化合物としては、特に制限されないが、例えば、イソシアネート基と反応する活性水素基を有する不飽和化合物(以下、活性水素含有不飽和化合物とする。)、アルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0018】
活性水素含有不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、ケイ皮酸などの不飽和カルボン酸、例えば、無水フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸無水物、例えば、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレートなどのカルボキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシへキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラルリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0019】
これら活性水素含有不飽和化合物は、単独または2種以上併用することができる。
活性水素含有不飽和化合物として、好ましくは、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートは、アルキルアクリレートおよび/またはアルキルメタクリレートであって、例えば、炭素数が1〜20のアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0020】
これらアルキル(メタ)アクリレートは、単独または2種以上併用することができる。
アルキル(メタ)アクリレートとして、好ましくは、炭素数4〜18のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、より好ましくは、炭素数8〜10のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
そして、本発明においては、ブロックイソシアネート基含有アクリル樹脂は、好ましくは、イソシアネート基と反応する活性水素基を有している。すなわち、ブロックイソシアネート基含有アクリル樹脂は、好ましくは、イソシアネート−アクリロイル併有不飽和化合物と、活性水素含有不飽和化合物との共重合により得られる、ブロックイソシアネート基と、イソシアネート基と反応する活性水素基とを併有するアクリル樹脂(以下、イソシアネート−活性水素併有アクリル樹脂とする。)が含まれる。
【0021】
また、アクリル系樹脂には、好ましくは、イソシアネート基と反応する活性水素基を有する活性水素基含有アクリル樹脂(以下、活性水素含有アクリル樹脂とする。)が含まれる。
活性水素含有アクリル樹脂は、例えば、上記したヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの単独重合体、あるいは、上記したヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートと、上記したアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体などとして得ることができる。
【0022】
そして、アクリル系樹脂を得るには、例えば、イソシアネート−アクリロイル併有不飽和化合物と、活性水素含有不飽和化合物と、アルキル(メタ)アクリレートとを、適宜の割合で配合して、重合させる。
イソシアネート−アクリロイル併有不飽和化合物と、活性水素含有不飽和化合物と、アルキル(メタ)アクリレートとの配合割合は、例えば、イソシアネート−アクリロイル併有不飽和化合物が、例えば、0.1〜50重量部、好ましくは、1〜30重量部、活性水素含有不飽和化合物が、例えば、1〜30重量部、好ましくは、5〜20重量部、アルキル(メタ)アクリレートが、例えば、70〜99重量部、好ましくは、80〜90重量部である。
【0023】
活性水素含有不飽和化合物が、1重量部よりも少ない場合には、発泡体の耐熱性が低下する場合があり、また、30重量部よりも多い場合には、発泡充填材の弾性率が高くなり、発泡倍率が減少する場合がある。
また、イソシアネート−アクリロイル併有不飽和化合物と、活性水素含有不飽和化合物とは、活性水素含有不飽和化合物の有する活性水素基/イソシアネート−アクリロイル併有不飽和化合物の有するブロックイソシアネート基(当量比)が、例えば、1.0/0.1〜1.0/1.0、好ましくは、1.0/0.4〜1.0/1.0となるように配合される。
【0024】
これにより、発泡充填材の良好な発泡性、および、発泡体の形状保持性を維持することができ、また、優れた充填性を得ることができる。
イソシアネート−アクリロイル併有不飽和化合物の配合量が、上記の範囲よりも少ない場合には、発泡充填材の高温環境における保管性が低下する場合があり、また、上記の範囲よりも多い場合には、発泡後に、再生したイソシアネート基が多量に残存する場合がある。
【0025】
重合は、特に制限されないが、好ましくは、光重合する。光重合によれば、加熱を必要としないため、同時に熱発泡剤を配合しても、その分解を抑制することができる。
アクリル系樹脂を得るには、後で詳述するが、まず、活性水素含有不飽和化合物と、アルキル(メタ)アクリレートとを配合して、重合させ、さらに、活性水素含有不飽和化合物と、イソシアネート−アクリロイル併有不飽和化合物とを配合して、重合させる。
【0026】
好ましくは、上記の重合において、活性水素含有不飽和化合物と、アルキル(メタ)アクリレートとを一部重合させ、一部重合体を含む重合体−単量体混合物を調製し、次いで、その重合体−単量体混合物に、活性水素含有不飽和化合物と、イソシアネート−アクリロイル併有不飽和化合物とを配合し、さらに重合させる。
このように調製すると、イソシアネート−活性水素併有アクリル樹脂、および、活性水素含有アクリル樹脂を含むアクリル系樹脂を得ることができる。
【0027】
熱発泡剤としては、例えば、化学発泡剤、熱膨張性微小球などが挙げられる。
化学発泡剤としては、例えば、無機系発泡剤や有機系発泡剤が挙げられる。
無機系発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、重炭酸ナトリウム、無水硝酸ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、アジド類などが挙げられる。
【0028】
また、有機系発泡剤としては、例えば、N−ニトロソ系化合物(N,N'−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N'−ジメチル−N,N'−ジニトロソテレフタルアミドなど)、アゾ系化合物(例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸アミド(ADCA)、バリウムアゾジカルボキシレートなど)、フッ化アルカン(例えば、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタンなど)、ヒドラジン系化合物(例えば、パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホニルヒドラジド、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)など)、セミカルバジド系化合物(例えば、p−トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4'−オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)など)、トリアゾール系化合物(例えば、5−モルホリル−1,2,3,4−チアトリアゾールなど)などが挙げられる。
【0029】
また、化学発泡剤としては、一般に市販されている製品を用いることができ、そのような製品としては、例えば、ネオセルボンN#5000(4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、永和化成工業社製)、などが挙げられる。
熱膨張性微小球は、加熱によりガス化して膨張する物質を、弾性を有する殻内に内包させた微小球であって、熱膨張性マイクロカプセルとも呼ばれる。
【0030】
加熱によりガス化して膨張する物質(コア材料)としては、例えば、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ネオペンタンなどが挙げられる。
これらコア材料は、単独または2種以上併用することができる。
また、殻を形成する物質(高分子シェル)は、例えば、熱溶融性物質や熱膨張により破壊する物質が用いられ、具体的には、ポリアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート−アクリロニトリル共重合体、(メタ)アクリレート−アクリル酸共重合体、塩化ビニリデン−(メタ)アクリレート共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−塩化ビニリデン−(メタ)アクリロニトリル−メチル(メタ)アクリレート共重合体などが挙げられる。
【0031】
これら高分子シェルは、単独または2種以上併用することができる。
なお、高分子シェルとして、塩化ビニリデン−(メタ)アクリレート共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−塩化ビニリデン−(メタ)アクリロニトリル−メチル(メタ)アクリレート共重合体などの、塩化ビニリデン含有共重合体を用いる場合には、高分子シェル中における塩化ビニリデンの含有量を、例えば、20重量%以下、好ましくは、15重量%以下となるように調整する。これにより、高分子シェルの強度を高く保つことができる。
【0032】
高分子シェルとして、好ましくは、ポリアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート−アクリロニトリル共重合体、(メタ)アクリレート−アクリル酸共重合体などが挙げられる。
熱膨張性微小球は、例えば、コアセルベーション法、界面重合法などの公知のマイクロカプセル化法により製造することができる。
【0033】
また、熱膨張性微小球としては、一般に市販されている製品を用いることができ、そのような製品としては、例えば、エクスパンセル 820DU40(最高膨張温度約115〜125℃、密度≦25kg/m3、アクゾノーベル社製)、エクスパンセル 461DU40(最高膨張温度約137〜145℃、密度≦20kg/m3、アクゾノーベル社製)、マツモトマイクロスフェア F−50(最高膨張倍率約20倍、殻壁軟化点約100〜105℃、松本油脂製薬社製)、マツモトマイクロスフェア F−80S(最高膨張倍率約60倍、殻壁軟化点約135〜140℃、松本油脂製薬社製)などが挙げられる。
【0034】
これら熱発泡剤は、単独または2種以上併用することができる。
熱発泡剤として、好ましくは、有機系発泡剤、熱膨張性微小球が挙げられる。
熱発泡剤の配合割合は、熱発泡剤の種類や、目的とする発泡体の物性などに応じて適宜決定することができる。本発明においては、例えば、発泡充填材の発泡時における発泡倍率が、例えば、5〜30倍、好ましくは、5〜20倍となり、実質的に独立気泡を生じさせるように配合される。
【0035】
熱発泡剤の配合割合は、具体的には、化学発泡剤の場合は、アクリル系樹脂100重量部に対して、例えば、1〜50重量部、好ましくは、10〜40重量部であり、また、熱膨張性微小球の場合は、アクリル系樹脂100重量部に対して、例えば、20〜200重量部、好ましくは、50〜100重量部である。
熱発泡剤の配合割合が、上記の範囲よりも少ない場合には、発泡成形される発泡体が、実質的に発泡体とならない場合があり、また、上記の範囲よりも多い場合には、熱発泡剤により発生するガスが樹脂を透過し、熱発泡剤の利用効率が低下する場合がある。
【0036】
また、熱発泡剤とともに、必要により、発泡助剤を併用することができる。発泡助剤としては、例えば、尿素系化合物、サリチル酸系化合物、安息香酸系化合物、ステアリン酸亜鉛などが挙げられる。
これら発泡助剤は、単独または2種以上併用することができる。
発泡助剤として、好ましくは、尿素系化合物が挙げられる。
【0037】
発泡助剤の配合量は、熱発泡剤との重量比として調整される。例えば、発泡助剤は、熱発泡剤/発泡助剤(重量比)が、例えば、4/1〜1/1となるように配合される。
また、アクリル系樹脂組成物には、必要に応じて、粘着付与樹脂を配合することができる。粘着付与樹脂を、アクリル系樹脂組成物に配合することにより、得られる発泡充填材の粘着性(貼着性)を向上させることができる。また、粘着付与樹脂は、発泡充填材の発泡時には滑剤として有用であると推測され、さらには、発泡後に得られる発泡体の剛性付与に有用であると推測される。
【0038】
粘着付与樹脂は、イソシアネート−アクリロイル併有不飽和化合物、活性水素含有不飽和化合物、および、アルキル(メタ)アクリレートに可溶であり、かつ、それらの光重合を阻害しない樹脂であって、例えば、完全水添処理されたロジンエステル樹脂、石油系樹脂、アクリル酸エステル成分単位を主構成単位とするアクリル樹脂などが挙げられる。好ましくは、アクリル酸エステル成分単位を主構成単位とするアクリル樹脂が挙げられる。
【0039】
粘着付与樹脂は、好ましくは、イソシアネート基と反応する活性水素基を有し、ガラス転移温度(Tg)が、40℃以上、好ましくは、40〜180℃であり、また、重量平均分子量(Mw)が、10000未満、好ましくは、3000〜7000である。
粘着付与樹脂のTgが低すぎる場合には、得られる発泡充填材の貼着性や、発泡体の剛性などが乏しくなる場合がある。また、粘着付与樹脂の重量平均分子量が10000以上である場合には、粘着付与樹脂による発泡充填材への貼着性の付与が、不十分となる場合がある。
【0040】
粘着付与樹脂のTgは、例えば、粘着付与樹脂を構成する単量体の種類および割合により調整することができる。粘着付与樹脂が、アクリル樹脂である場合には、単量体としては、例えば、アクリル酸エステルが挙げられ、具体的には、t−ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これら単量体は、単独または2種以上併用することができる。
【0041】
単量体として、好ましくは、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
そして、これらアクリル酸エステルから誘導される繰り返し単位(アクリル酸エステル成分単位)を、単量体換算で、例えば、50重量%以上、好ましくは、70重量%以上の割合で有するように、アクリル樹脂を合成することによって、粘着付与樹脂のTgを40℃以上とすることができる。
【0042】
イソシアネート基と反応する活性水素基としては、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、メルカプト基などが挙げられる。
イソシアネート基と反応する活性水素基を有する粘着付与樹脂は、例えば、アクリル樹脂の合成において、例えば、イソシアネート基と反応する活性水素基を有する単量体、イソシアネート基と反応する活性水素基を有する連鎖移動剤などを配合することにより得ることができる。
【0043】
イソシアネート基と反応する活性水素基を有する単量体としては、例えば、上記したヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートなどの、活性水素含有不飽和化合物などが挙げられる。
イソシアネート基と反応する活性水素基を有する連鎖移動剤としては、例えば、チオグリコール酸(例えば、メルカプト酢酸、堺化学工業社製)、2−メルカプトエタノール(例えば、GSH、キシダ化学社製)、α−チオグリセロールなどが挙げられる。
【0044】
粘着付与樹脂が、イソシアネート基と反応する活性水素基を有していれば、経時での粘着付与樹脂のブリードを低減することができる。
なお、粘着付与樹脂の重量平均分子量は、公知の手法により求めることができ、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分子量分布を測定し、その測定結果から、標準ポリスチレン換算として重量平均分子量を求めることができる。
【0045】
粘着付与樹脂の配合割合は、アクリル系樹脂組成物100重量部に対して、例えば、5〜40重量部、好ましくは、10〜30重量部である。
粘着付与樹脂の配合量が、上記の範囲より少ない場合には、発泡充填材の発泡性および貼着性を十分に向上させることができない場合があり、上記の範囲より多い場合には、アクリル系樹脂との相溶性が低下し、発泡充填材の発泡が不均一となる場合がある。
【0046】
また、アクリル系樹脂組成物には、得られる発泡充填材の効果を阻害しない範囲において、例えば、充填材や、その他、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料、着色料、防カビ剤、難燃剤、整泡剤(界面活性剤)などの公知の添加剤を、適宜配合することができる。各種の添加剤の配合割合は、その目的および用途により適宜選択される。
充填材としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸やその塩類、クレ−、雲母紛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、亜鉛華、ベントナイン、カーボンブラック、シリカ、アルミナ、アルミニウムシリケート、アセチレンブラック、アルミニウム粉などが挙げられる。なお、炭酸カルシウムは吸湿剤として、亜鉛華は安定剤として、カーボンブラックは補強剤としても有用である。
【0047】
次に、本発明の発泡充填材の製造方法について説明する。
本発明の発泡充填材を得るには、まず、上記のアルキル基の炭素数が1〜20のアルキル(メタ)アクリレートと、上記の活性水素含有不飽和化合物とを含む単量体混合物、および、その一部重合体を含有する重合体−単量体混合物を調製する。
重合体−単量体混合物を調製するには、まず、上記のアルキル基の炭素数が1〜20のアルキル(メタ)アクリレートと、上記の活性水素含有不飽和化合物とを、公知の方法で混合し、単量体混合物を調製する。
【0048】
アルキル(メタ)アクリレートと、活性水素含有不飽和化合物との配合割合は、アルキル(メタ)アクリレートが、例えば、70〜99重量部であり、活性水素含有不飽和化合物が、例えば、1〜30重量部である。
次いで、この方法では、得られた単量体混合物に、例えば、公知の光重合開始剤を配合し、紫外線を照射し、アルキル(メタ)アクリレートと、活性水素含有不飽和化合物とを、部分的に重合させ、それらの一部重合体を含有する重合体−単量体混合物を調製する。
【0049】
光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(例えば、DAROCUR2959、チバ・ジャパン社製)、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン(例えば、DAROCUR1173、チバ・ジャパン社製)、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(例えば、IRGACURE651、チバ・ジャパン社製)、2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン(例えば、IRGACURE184、チバ・ジャパン社製)などのアセトフェノン系光重合剤、ベンジルジメチルケタールなどのケタール系光重合剤、その他のハロゲン化ケトン、アシルフォスフィンオキサイド(例えば、IRGACURE819、チバ・ジャパン社製)、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド(例えば、ルシリンTPO、BASF社製)などが挙げられる。
【0050】
光重合開始剤の配合割合は、単量体混合物100重量部に対して、例えば、0.01〜5重量部、好ましくは、0.05〜3重量部である。
光重合開始剤の配合量が、0.01重量部よりも少ない場合には、重合反応が不十分となる場合があり、また、5重量部よりも多い場合には、得られる一部重合体の低分子量化を招く場合がある。
【0051】
紫外線の照射に用いられる紫外線ランプとしては、波長300〜400nm領域にスペクトル分布を有するランプが挙げられ、例えば、ケミカルランプ、ブラックライト、メタルハライドランプなどが挙げられる。
本発明の発泡充填材を得るには、次いで、上記により得られた重合体−単量体混合物と、上記の活性水素含有不飽和化合物、上記のイソシアネート−アクリロイル併有不飽和化合物、上記の熱発泡剤および上記の光重合開始剤とを配合し、紫外線硬化性組成物を調製する。
【0052】
光重合開始剤としては、例えば、上記した光重合開始剤などが挙げられ、好ましくは、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
紫外線硬化性組成物を調製するには、まず、重合体−単量体混合物と、活性水素含有不飽和化合物とを配合し、さらに、イソシアネート−アクリロイル併有不飽和化合物と、熱発泡剤と、光重合開始剤とを配合する。
【0053】
これらの配合は、例えば、まず、重合体−単量体混合物100重量部に対して、活性水素含有不飽和化合物を、例えば、1〜30重量部、好ましくは、5〜20重量部配合する。次いで、得られた重合体−単量体混合物および活性水素含有不飽和化合物の混合物100重量部に対して、イソシアネート−アクリロイル併有不飽和化合物を、例えば、0.1〜50重量部、好ましくは、1〜30重量部、熱発泡剤を、化学発泡剤の場合は、例えば、1〜50重量部、好ましくは、10〜40重量部、熱膨張性微小球の場合は、例えば、20〜200重量部、好ましくは、50〜100重量部、光重合開始剤を、例えば、0.01〜5重量部、好ましくは、0.05〜3重量部配合する。
【0054】
次いで、この方法では、得られた紫外線硬化性組成物を、剥離処理が施された基材に塗布し、紫外線を照射し、硬化させて、本発明の発泡充填材を得る。
基材としては、特に制限されないが、熱可塑性樹脂のフィルムやシートなどが挙げられ、例えば、ポリエステル、オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックフィルムやシートなどが挙げられる。
【0055】
紫外線硬化性組成物の基材への塗布は、特に制限されないが、例えば、ロールコーター、ダイコーター、ナイフコーターなどが用いられる。
紫外線の照射には、上記した紫外線ランプを用いることができる。また、紫外線の光照度は、紫外線ランプから紫外線被照射物(紫外線硬化性組成物)までの距離や電圧の調節によって、目的の照度に設定される。
【0056】
また、紫外線の照射では、特開2003−13015号公報に開示された方法に従い、紫外線の照射をそれぞれ複数回に分割することにより、粘着性能を精密に調整することができる。
また、紫外線の照射では、重合禁止作用のある酸素が、得られる重合体の重合率、分子量および分子量分布に及ぼす影響を最小限に留めるため、好ましくは、不活性ガス雰囲気下において照射するか、または、基材に塗布した紫外線硬化性組成物に、シリコーンなどの剥離剤をコートしたポリエチレンテレフタレートなど、紫外線を透過し、かつ、酸素を遮断するフィルムを積層する。なお、不活性ガス雰囲気下とは、光照射ゾーン中の酸素を窒素ガスなどの不活性ガスにより置換した雰囲気であることを示す。不活性ガス雰囲気下における酸素濃度は、例えば、5000ppm以下である。
【0057】
なお、発泡充填材は、架橋反応の進行や、熱発泡剤の分解を抑制するため、好ましくは、80℃以下で製造する。
そして、このようにして得られる発泡充填材は、例えば、100〜180℃、好ましくは、100〜160℃において、架橋および発泡し、断熱性、防音性、防振性などに優れる発泡体を形成する。
【0058】
すなわち、加熱によって、熱発泡剤が分解して樹脂が発泡するとともに、ブロックイソシアネート基が脱ブロックして、イソシアネート基が再生されて、再生したイソシアネート基が、活性水素基と反応して、架橋構造を形成する。これにより、発泡体が形成される。
そして、本発明の発泡充填材においては、熱発泡剤を除く発泡充填材の、発泡前における酢酸エチルに対する不溶解成分は、10重量%未満、好ましくは、5重量%未満であり、また、熱発泡剤を含む発泡充填材の、発泡後における酢酸エチルに対する不溶解成分(すなわち、発泡体の酢酸エチルに対する不溶解成分)は、70重量%以上、好ましくは、80重量%以上である。
【0059】
発泡充填材(熱発泡剤を除く。)または発泡体の酢酸エチルに対する不溶解成分は、所定量の発泡充填材(熱発泡剤を除く。)、または、発泡体を、酢酸エチルに投入し、室温で一週間以上放置した後、不溶分を取り出し、乾燥させ、不溶分に含まれる酢酸エチルを除去することによって得ることができる。
そして、得られた不溶解成分の重量を秤量し、不溶解成分の重量/初期重量×100として、発泡充填材(熱発泡剤を除く。)または発泡充填材の初期重量に対する不溶解成分の割合(不溶解成分率、重量%)を算出する。
【0060】
発泡前における発泡充填剤の不溶解成分の重量が、発泡充填材の初期重量の10重量%以上であると、発泡充填剤の発泡性が低下する場合があり、また、発泡体の不溶解成分の重量が、発泡体の初期重量の70重量%未満であると、発泡体の形状保持性が低下する場合がある。
本発明の発泡充填材は、加熱により発泡するとともに、架橋構造を形成するため、発泡体の形状保持性に優れ、発泡体を60℃で7日間保管した後の発泡高さを、保管前の発泡体の発泡高さの80%以上とすることができる。なお、保管後の発泡高さが、保管前の発泡高さの80%未満である場合には、充填において、過剰の発泡充填材が必要となる場合がある。
【0061】
また、本発明の発泡充填材は、イソシアネート基と、イソシアネート基と反応する活性水素基との反応により架橋されているが、加熱前においては、架橋構造を形成するイソシアネート基が、ブロック剤によってブロックされているため、保管性に優れる。そのため、製造後に、長期間保管された場合、とりわけ、夏場などの高温環境において保管された場合などにも、発泡充填材の発泡性能を低下させることなく、良好な発泡を実現することができる。
【0062】
また、本発明の発泡充填材は、実質的に、有機溶剤などの環境負荷物質を含んでいないので、環境性においても優れている。
また、本発明の発泡充填材は、アクリル系樹脂からなるので、耐候性に優れる。また、本発明の発泡充填材は、貼着性にも優れる。
本発明の発泡充填材の製造方法では、発泡充填材が光重合によって重合されるため、熱発泡剤を配合した後に重合することができ、さらに、例えば、照射する紫外線の照射強度、照射時間などを制御することにより、アクリル系樹脂の分子量を、容易に調整することができる。
【0063】
以上のように、本発明の発泡充填材は、保管性および低温発泡性に優れ、さらには、形状保持性および貼着性をバランスよく兼ね備えており、例えば、自動車のピラー内部のような、各種の部材の間や中空部材の内部空間などに貼着され、加熱により発泡および架橋して、断熱性、防振性、防音性に優れた発泡体を形成し、構造体の空間を充填することができる。
【0064】
そのため、本発明の発泡充填材は、自動車、家電製品、産業機械などにおいて、構造体の空間を充填するための発泡充填材として、好適に用いることができる。
【実施例】
【0065】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1)シロップの調製
a)シロップ1の調製
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA、東亜合成社製)60重量部、イソボルニルアクリレート(IBXA、大阪有機化学工業社製)40重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)2重量部を混合し、単量体混合物を調整した。
【0066】
次いで、得られた単量体混合物100重量部、IRGACURE651(光重合開始剤、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、チバ・ジャパン社製)0.05重量部、IRGACURE184(光重合開始剤、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、チバ・ジャパン社製)0.05重量部を配合した溶液を、4つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下において紫外線を照射し、部分的に光重合(重合率5.0%)させることによって、重量平均分子量(Mw)が500万のプレポリマーを含む重合体−単量体混合物を得た。その後、得られた重合体−単量体混合物100重量部に、4HBA7.85重量部を加え、混合撹拌し、シロップ1を得た。
【0067】
b)シロップ2の調製
シロップ1の調製において、2EHAを50重量部とし、IBXAを50重量部とした以外は、シロップ1の調製と同様にしてシロップ2を調製した。
2)粘着付与樹脂の調製
a)粘着付与樹脂1の調製
撹拌機、還流冷却機、温度計および窒素導入管を備えた装置に、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA、三菱ガス化学工業社製)100重量部、チオグリコール酸(東京化成工業社製)3重量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(キシダ化学社製)0.2重量部を仕込み、モノマーベースが60重量%となるよう酢酸エチルを加え、窒素パージしつつ室温で1時間撹拌し、混合物を得た。次いで、得られた混合物を、緩やかに窒素ガスを吹き込みながら撹拌し、60℃に加熱して重合反応を開始させた。
【0068】
重合反応においては、発生する反応熱によって上昇する反応系内の温度を、60〜70℃に保ちつつ、約4時間重合させ、発生熱による反応系内の温度の上昇が緩やかになった後、反応系内の温度が70℃となるまで緩やかに加熱し、約3時間さらに重合させた。重合率が約98%以上になった時点で重合反応を終了させ、ポリマー溶液を得た。
次いで、得られたポリマー溶液を、メタノールを用いて再沈殿処理し、重量平均分子量(Mw)が3500、ガラス転移温度(Tg)が52℃のシクロヘキシルメタクリレートポリマーを得た。
【0069】
なお、得られた粘着付与樹脂の、重量平均分子量およびガラス転移温度は、以下の方法により求めた。
(重量平均分子量)
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めた。
装置:HLC−8220(東ソー社製)
カラム:TSKgel GMHHR−H(20)、TSKgelSuperHZM−M
溶媒:テトラヒドロフラン
標準物質:ポリスチレン
(ガラス転移温度)
得られた粘着付与樹脂10〜12mgを、アルミ製オープン容器にクリンプし、DSC測定装置を用いて、窒素雰囲気下において測定した。
【0070】
装置:200CU(SEIKO社製)
測定温度:−80〜160℃(昇温条件:10℃/min)
b)粘着付与樹脂2の調製
粘着付与樹脂1の調製において、チオグリコール酸3重量部に代えて、1−ドデカンチオール3重量部を配合した以外は、粘着付与樹脂1の調製と同様にして、Mwが3200のシクロヘキシルメタクリレートポリマーを得た。
3)発泡充填材の製造
実施例1
シロップ1 100重量部、カレンズMOI−BP(2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボキシアミノ]エチルメタクリレート、昭和電工社製)3.5重量部、ルシリンTPO(ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド、光重合開始剤、BASF社製)0.5重量部、ネオセルボンN#5000(4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、化学発泡剤、永和化成工業社製)20重量部、セルペーストK5(尿素系発泡助剤、永和化成工業社製)10重量部を配合し、均一に混合撹拌した後、脱泡処理を行い、紫外線硬化性組成物を調製した。
【0071】
得られた紫外線硬化性組成物を、光照射後の厚みが1mmとなるように、剥離処理された基材上に塗布し、さらにその上に、剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを被せ、酸素を遮断した。
その後、紫外線硬化性組成物に、ブラックライト(15W/cm、東芝ライテック社製)を用いて、光照度5mW/cm2(ピーク感度最大波長350nmの、トプコンUVR−T1で測定)の紫外線を、重合率99%に達するまで照射し、紫外線硬化させ、発泡充填材を得た。
【0072】
実施例2〜5および比較例1〜4
表1に示す配合割合にて配合した以外は、実施例1と同様の方法により、実施例2〜5および比較例1〜4の発泡充填材を製造した。
【0073】
【表1】

【0074】
なお、表1中の略号および製品名を下記に示す。
TPO:ルシリンTPO、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド、光重合開始剤、BASF社製
N#5000:ネオセルボンN#5000、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、化学発泡剤、永和化成工業社製
K5:セルペーストK5、尿素系発泡助剤、永和化成工業社製
F−80SD:マツモトマイクロスフェア F−80SD、熱膨張性微小球、松本油脂製薬社製
MOI−BP:カレンズMOI−BP、2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボキシアミノ]エチルメタクリレート、昭和電工社製
MOI:カレンズMOI、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、昭和電工社製
4)不溶解成分の測定
a)発泡前の不溶解成分
3)発泡充填材の製造において、熱発泡剤(ネオセルボンN#5000、マツモトマイクロスフェア F−80SD)を配合せずに紫外線硬化性組成物を製造し、紫外線硬化させて試験片を得た。
【0075】
得られた試験片100mgを、120mm×120mmのフッ素液樹脂膜(ニトフロン、日東電工社製)で包み、室温で7日間、酢酸エチル中に浸漬した後、130℃で2時間乾燥させ、酢酸エチルを除去した。
試験片の酢酸エチル浸漬前後の重量の変化量を測定し、不溶解成分の割合(重量%)を下記の式により求めた。結果を表1に示す。
【0076】
不溶解成分(重量%)=浸漬後の重量/浸漬前の重量×100
b)発泡後の不溶解成分
3)発泡充填材の製造において得られた発泡充填材を、加熱発泡させ、発泡体を得た。
得られた発泡体100mgを、120mm×120mmのフッ素液樹脂膜(ニトフロン、日東電工社製)で包み、室温で7日間、酢酸エチル中に浸漬した後、130℃で2時間乾燥させ、酢酸エチルを除去した。
【0077】
発泡体の酢酸エチル浸漬前後の重量の変化量を測定し、不溶解成分の割合(重量%)をa)発泡前の不溶解成分と同様の式により求めた。結果を表1に示す。
5)評価
各実施例および各比較例について、下記の評価を実施した。
a)貼着力
厚さ0.3mm×幅25mm×長さ100mmの発泡充填材を製造し、プライマー処理したPETセパレータ(厚さ25μm)で裏打ちした後、SUS板に2kgローラーを用いて片道圧着し、室温において30分間放置した。その後、引っ張り試験機により、90°ピール試験(引張速度50mm/min)を実施し、貼着力を測定し、貼着性の評価とした。結果を表1に示す。
【0078】
b)初期発泡高さ
高さ1mm×幅25mm×長さ25mmの発泡充填材を製造し、厚さ0.5mm×幅100mm×長さ100mmのアルミ板に貼り合わせ、24時間以内に130℃の恒温槽に20分間投入し、架橋および発泡させた。その後、加熱処理後の発泡充填材(発泡体)の、厚み方向の高さの最高値を測定し、初期値(高さ1mm)との比から発泡倍率を求めた。結果を表1に示す。
【0079】
c)保管後の発泡体の発泡高さ
b)初期発泡高さと同様に発泡充填材を架橋および発泡させ、さらにこれを60℃の恒温槽において7日間保管し、その後、発泡体の厚み方向の高さの最高値を測定し、b)初期発泡高さとの比から収縮率を求め、形状保持性の評価とした。結果を表1に示す。
d)保管後の発泡充填材の発泡高さ
発泡充填材を、60℃の恒温槽において7日間保管し、その後、b)初期発泡高さと同様に発泡充填材を架橋および発泡させた。その後、加熱処理後の発泡充填材(発泡体)の、厚み方向の高さの最高値を測定し、初期値(高さ1mm)との比から発泡倍率を求め、保管性の評価とした。結果を表1に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
100〜180℃において発泡し、構造物の空間を充填する、熱発泡剤を含有するアクリル系樹脂組成物からなる発泡充填材であって、
熱発泡剤を除く発泡充填材の、発泡前における酢酸エチルに対する不溶解成分が、10重量%未満であり、
熱発泡剤を含む発泡充填材の、発泡後における酢酸エチルに対する不溶解成分が、70重量%以上であることを特徴とする、発泡充填材。
【請求項2】
前記アクリル系樹脂組成物は、アクリル系樹脂と、熱発泡剤とを含有し、
前記アクリル系樹脂が、ブロックイソシアネート基を有するブロックイソシアネート基含有アクリル樹脂を含むことを特徴とする、請求項1に記載の発泡充填材。
【請求項3】
前記ブロックイソシアネート基含有アクリル樹脂が、イソシアネート基と反応する活性水素基を有することを特徴とする、請求項2に記載の発泡充填材。
【請求項4】
前記アクリル系樹脂が、さらに、イソシアネート基と反応する活性水素基を有する活性水素基含有アクリル樹脂を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の発泡充填材。
【請求項5】
前記熱発泡剤が、化学発泡剤および/または熱膨張性微小球であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の発泡充填材。
【請求項6】
イソシアネート基と反応する活性水素基を有し、ガラス転移温度(Tg)が40℃以上であり、重量平均分子量が10000未満である粘着付与樹脂
を含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の発泡充填材。
【請求項7】
アルキル基の炭素数が1〜20のアルキル(メタ)アクリレート70〜99重量部、および、イソシアネート基と反応する活性水素基を有する不飽和化合物1〜30重量部を含む単量体混合物、ならびに、その一部重合体を含有する重合体−単量体混合物と、
ブロックイソシアネート基とアクリロイル基および/またはメタクリロイル基とを併有する不飽和化合物と、
熱発泡剤と、
光重合開始剤と
を配合して、紫外線硬化性組成物を調製する工程と、
前記紫外線硬化性組成物に、紫外線を照射して、アクリル系樹脂組成物を得る工程と
を備えることを特徴とする、発泡充填材の製造方法。
【請求項8】
前記紫外線硬化性組成物を調製する工程では、
アルキル基の炭素数が1〜20のアルキル(メタ)アクリレート70〜99重量部、および、イソシアネート基と反応する活性水素基を有する不飽和化合物1〜30重量部を含む単量体混合物に、紫外線を照射し、部分的に重合させ、重合体−単量体混合物を調製し、
前記重合体−単量体混合物と、イソシアネート基と反応する活性水素基を有する不飽和化合物、ブロックイソシアネート基とアクリロイル基および/またはメタクリロイル基とを併有する不飽和化合物、熱発泡剤および光重合開始剤とを配合することを特徴とする、請求項7に記載の発泡充填材の製造方法。

【公開番号】特開2010−59223(P2010−59223A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223192(P2008−223192)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】