説明

発泡可能な微生物分解性コポリエステル組成物

【課題】発泡に適し、溶融強度及び溶融粘度が高く、微生物分解性のポリエステルの提供。
【解決手段】押出成形時に高い溶融粘度と溶融強度とを有しており、且つ次の繰返し単位:
[-{(O-R1-O)a-(CO-R2-CO)b}-{(O-R3-O)c-(CO-Ar-CO)d}-](BA)x
を含む発泡に適した脂肪族−芳香族分岐ランダムコポリエステル(式中、酸成分とジオール成分のモル%は、それぞれ 100モル%に基づき、脂肪族酸残基−CO−R2 −CO−は、bの量として30〜95%の範囲で存在し、且つ芳香族酸残基−CO−Ar−CO−は、dの量として5〜70%の範囲で存在し、ジオール残基−O−R1 −O−及び−O−R3 −O−は、それぞれ、aの量として0〜 100モル%及びcの量として 100〜0モル%の量で存在し、分岐剤BAは、酸残基、ジオール残基及び分岐剤の合計重量に基づいて、xの量として0.01〜10重量%存在する)並びに脂肪族−芳香族分岐ランダムコポリエステルの発泡物品を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡可能なコポリエステル組成物に関し、更に詳しくは、微生物分解性のそのような組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム、カップ、食品トレイ、装飾用リボン及び家具の部品のような低密度物品を得るために、多くの高分子材料が発泡されている。例えば、ペンタンなどの低沸点炭化水素を含むポリスチレンビーズを発泡して、コーヒー、紅茶、ホットチョコレートなどのホットドリンク用の軽量発泡カップを作っている。ポリプロピレンは、包装用の装飾用フィルムやリボンを得るために、窒素ガスや二酸化炭素ガス等の発泡剤の存在下に押出成形することができる。ポリプロピレンは、また、発泡剤の存在下に射出成形して、軽量のいすやテーブルの脚などの軽量家具を成形することができる。
【0003】
ポリエステルやコポリエステルは、他のポリマーに比べて、典型的に遙かに高い密度(例えば、約 1.3g/cc)を有している。従って、ポリエステル材料の発泡は、成形部品、フィルム、シート、食品トレイなどの製造に使用する際に重量を減らすのに望ましい。そのような発泡物品は、また、非発泡部品より高い断熱性を有している。しかしながら、ポリエステルを発泡することは困難である。典型的なポリ(エチレンテレフタレート)及び関連するコポリエステルは、溶融粘度が低く溶融強度が低いので、成形操作又は押出操作の間に膨張ガスの泡を適切に保持しないようなポリマー溶融物を作る。従って、従来の発泡系で発泡できるようなポリエステルを提供できれば望ましい。その上、微生物分解性又は環境的に分解され難くないような発泡可能なポリエステルを提供することは、特に一回使用品には、さらに好ましい。
【0004】
発泡時に耐えられる溶融強度及び溶融粘度を有するポリエステルは、予め形成されている線状ポリエステルを、多官能性カルボン酸、その酸無水物、又はポリオールのような単量体状の分岐剤で処理して分岐ポリエステルとすることにより調製されてきた。これらポリエステル組成物は、特許文献1〜11に開示されている。
【0005】
従来技術において数種類の微生物分解性ポリマーが知られている。例えば、セルロース及び置換の度合いが低い(即ち1未満)セルロース誘導体は微生物分解性である。ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリカプロラクトン(PCL)又はポリヒドロキシブチレートとポリヒドロキシバレレート(PHBV)とのコポリマーのようなポリヒドロキシアルカノエート(PHA)が微生物分解性であることもまた報告されている。
【0006】
微生物分解性ポリエステルには、脂肪族ジ酸又は対応する低級アルコールカルボン酸エステルとジオールとから調製されるものが含まれる。脂肪族ポリエステルは、主としてそれらの溶融温度及びガラス転移温度が低く、一般にそれぞれ65℃未満及び−30℃未満であるという理由から、極く僅かな用途にしか利用されていなかった。室温において、多くの脂肪族ポリエステルの物理的形態は、濃く粘稠な液体である。従って、脂肪族ポリエステルは一般的には有用ではなかった。これに対して、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(シクロヘキサンジメタノールテレフタレート)及びポリ(エチレンテレフタレート−co−イソフタレート)のような芳香族ポリエステルは、一般に用いられている材料ではあるが、典型的に微生物の分解に対して非常に抵抗性が強い。
【0007】
特許文献12及び13には、微生物分解性である脂肪族と芳香族の両方の構造を含む、ブロック及びランダム線状コポリエステルが開示されている。しかしながらこれらのポリマーは、その溶融粘度及び溶融強度が低いため発泡が困難である。これまでのところ、脂肪族−芳香族コポリエステルは、その発泡性に関しては研究されていなかった。
【0008】
【特許文献1】米国特許第 3,553,157号
【特許文献2】米国特許第 4,132,707号
【特許文献3】米国特許第 4,145,466号
【特許文献4】米国特許第 4,999,388号
【特許文献5】米国特許第 5,000,991号
【特許文献6】米国特許第 5,110,844号
【特許文献7】米国特許第 5,128,383号
【特許文献8】米国特許第 5,134,028号
【特許文献9】米国特許第 5,288,764号
【特許文献10】米国特許第 5,399,595号
【特許文献11】米国特許第 5,519,066号
【特許文献12】米国特許第 5,292,783号
【特許文献13】米国特許第 5,446,079号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、当該技術分野において、発泡するのに適した、溶融強度及び溶融粘度が高く、さらに使い捨て用途に有用な微生物分解性のポリエステル組成物に対するニーズが存在する。従って、本発明が主として目的とすることは、このような改良された発泡可能なポリエステルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発泡するのに適した脂肪族−芳香族分岐ランダムコポリエステルは、押出成形時に高い溶融粘度と溶融強度とを有しており、且つ繰返し単位:
[-{(O-R1-O)a-(CO-R2-CO)b}-{(O-R3-O)c-(CO-Ar-CO)d}-](BA)x
を含む。脂肪族酸残基−CO−R2 −CO−は、bの量として30〜95%の範囲で存在し、炭素原子3〜40を含む。芳香族酸残基−CO−Ar−CO−は、dの量として5〜70%の範囲で存在し、炭素原子8〜40を含む。ジオール残基−O−R1 −O−及び−O−R3 −O−は、それぞれ、aの量として0〜 100モル%及びcの量として 100〜0モル%存在し、炭素原子2〜20を含む。酸成分とジオール成分のモル%は、それぞれ 100モル%に基づく。分岐剤BAは、酸残基、ジオール残基及び分岐剤の合計重量に基づいて、xの量として0.01〜10重量%存在する。脂肪族−芳香族分岐ランダムコポリエステルの発泡物品が開示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、トリメリット酸及びピロメリット酸等の多官能性分岐剤が、脂肪族−芳香族分岐ランダムコポリエステルを製造するためのコモノマーとして用いられる。これら分岐コポリエステルは、溶融強度と溶融粘度が高く、押出機の中に気体を注入することにより発泡することができる。そのレオロジー的性質は、セルの成核剤によって開示されるセル形成、及び密度を低下させるために必要な膨張を助けるのに適している。
【0012】
本発明の脂肪族−芳香族分岐ランダムコポリエステルは、繰返し単位:
[-{(O-R1-O)a-(CO-R2-CO)b}-{(O-R3-O)c-(CO-Ar-CO)d}-](BA)x
を含む。脂肪族酸残基−CO−R2 −CO−は、bの量として30〜95モル%、好ましくは55〜60モル%の範囲で存在し、炭素原子3〜40、好ましくは3〜12を含む。芳香族酸残基−CO−Ar−CO−は、dの量として5〜70モル%、好ましくは40〜45モル%存在し、炭素原子8〜40、好ましくは8〜14を含む。ジオール残基−O−R1 −O−及び−O−R3 −O−は、炭素原子2〜20を含み、aの量として0〜 100モル%及びcの量として 100〜0モル%で存在する。酸成分とジオール成分のモル%は、それぞれ、 100モル%に基づくものである。
【0013】
脂肪酸成分は、好ましくは、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸及び2,5−ノルボルナンジカルボン酸からなる群から選ばれる。4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボン酸、ヒドロキシピバリン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、グリコール酸、乳酸、及びそれらのエステル形成性誘導体のようなヒドロキシ酸もまた、これらのコポリエステルを製造するための脂肪酸成分として使用できる。
【0014】
芳香族酸成分は、好ましくは、1,4−テレフタル酸、1,3−テレフタル酸、2,6−ナフトエ酸、1,5−ナフトエ酸、それらのエステル形成性誘導体及びそれらの組合せからなる群から選ばれる。
【0015】
ジオール成分は、好ましくは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びそれらの組合せからなる群から選ばれる。ジオール成分は同じでも異なっていてもよい。
【0016】
分岐剤は“(BA)x ”で表され、ここで“x”は分岐剤の重量%である。この重量%は、0.01〜10重量%、好ましくは 0.1〜 1.0重量%の範囲である。
【0017】
分岐剤は、好ましくは約50〜5000、より好ましくは92〜3000の重量平均分子量を有し、約3〜6個の官能価を有する。分岐剤は、3〜6のヒドロキシ基を有するポリオール、3若しくは4個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸又は水酸基とカルボキシル基とを合計で3〜6個有するヒドロキシ酸であってよい。
【0018】
分岐剤として作用する代表的な低分子量ポリオールには、グリセロール、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール、1,2,6−ヘキサントリオール、ソルビトール、1,1,4,4−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート及びジペンタエリスリトールが含まれる。高分子量ポリオール(Mw 400〜3000)分岐剤の具体例は、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのような炭素数2〜3のアルキレンオキシドをポリオール開始剤で縮合することにより誘導されたトリオールである。
【0019】
分岐剤として使用しうる代表的なポリカルボン酸には、ヘミメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ベンゼンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、1,1,2,2−エタンテトラカルボン酸、1,1,2−エタントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸、及び1,2,3,4,−シクロペンタンテトラカルボン酸が含まれる。このように酸は使用してもよいが、好ましくは、それらの低級アルキルエステル又は環状無水物が形成しうる場合にはそれらの環状無水物の形態で用いられる。
【0020】
分岐剤としての代表的なヒドロキシ酸には、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、3−ヒドロキシグルタル酸、ムチン酸(又は粘液酸)、トリヒドロキシグルタル酸及び4−(β−ヒドロキシエチル)フタル酸が含まれる。このようなヒドロキシ酸は、ヒドロキシル基とカルボキシル基とを3つまたはそれ以上組み合わせて含む。
【0021】
特に好ましい分岐剤には、トリメリット酸、トリメシン酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン及び1,2,4−ブタントリオールが含まれる。
【0022】
ポリエステル及びコポリエステルの調製は、米国特許第 2,012,267号に開示されているように、当該技術分野で公知である。このような反応は、典型的には、チタンイソプロポキシド、二酢酸マンガン、酸化アンチモン、二酢酸ジブチル錫、塩化亜鉛、又はそれらの組合せのように重縮合触媒の存在下に、 150℃〜 300℃の温度で操作される。この触媒は、典型的に反応物の合計重量に基づいて10〜1000ppm の量で用いられる。
【0023】
本発明の脂肪族−芳香族分岐ランダムコポリエステルの1つは、 0.5重量%のペンタエリスリトールで分岐され、43モル%のテレフタレートを含有するポリ(テトラメチレンアジペート−co−テレフタレート)である。このコポリエステルは、ジメチルアジペート、ジメチルテレフタレート、ペンタエリスリトール及び1,4−ブタンジオールが、始めはTi(Oi-Pr)4として Ti 100ppmの存在下に、真空下に 190℃で1時間、 200℃で2時間、 210℃で1時間、次いで 250℃で 1.5時間加熱されるときに製造される。このコポリエステルは、典型的には生成後、押出発泡成形に用いるためにペレット化される。
【0024】
本発明の他の脂肪族−芳香族分岐ランダムコポリエステルは、 0.3重量%の二無水ピロメリット酸で分岐され、43モル%のテレフタレートを含有するポリ(テトラメチレンアジペート−co−テレフタレート)である。このコポリエステルは、線状ポリ(テトラメチレンアジペート−co−テレフタレート)を二無水ピロメリット酸と共に、押出機を用いて反応押出することにより製造される。このコポリエステルはこの押出の間に直接発泡することが可能でありまた後で発泡させるためにペレット化してもよい。
【0025】
脂肪族−芳香族分岐コポリエステルのペレットは、通常のオーブン又は真空オーブンで乾燥され、従来技術によって押出成形又は金型成形される。これらの分岐コポリエステルは、フィルム、管、発泡体、吹込成形物、押出被覆物、食品包装容器、射出成形部品等の製造に有用である。これらの分岐コポリエステルは、非発泡製品を成形するために、射出成形、射出吹込成形、押出成形、押出吹込成形などの多くの金型成形又は押出成形用途に用いることができるが、これらの分岐コポリエステルは、食品包装業、建設業、自動車工業又はグラフィックアート産業において使用するような発泡物品の調製に好適に用いられる。
【0026】
ポリマーの発泡は、当該技術分野で公知の方法である。従来の押出技術が、本発明の分岐コポリエステルを、好ましくは密度 1.1g/cc未満、より好ましくは 0.2g/cc未満となるまで発泡させるのに使用することができる。発泡押出方法のための典型的な装置の構成は、単軸押出機、液体又は気体発泡剤注入システム、発泡体を成形するダイ、マンドレルのような冷却ユニット及び押出成形された発泡物を捕集する取り出し装置からなる。押出機は、一般的なL/Dが30:1であるように、好ましくは直径に対する長さの比率が大きいものがよい。発泡剤注入システムは、一般にポンプ又は注入バルブを有するガスシリンダーを含む。このような工程では、典型的に二段スクリューが用いられる。
【0027】
分岐コポリエステル及びセルの成核剤は押出機の(1つ又は複数の)供給ホッパーに投入し、スクリューの供給部に供給する。分岐コポリエステル及び成核剤は溶融して、スクリューの移動部で配合する。
【0028】
成核剤が核形成の場を提供することができる限り、任意の成核剤を使用することができる。好適な成核剤には、例えば、二酸化チタン、タルク、チョップドガラス繊維、アルミナ、クレイ及びヒュームドシリカが含まれる。成核剤は組合せて添加することもできる。
【0029】
発泡剤は、スクリューの移動部に注入される。発泡剤は、所望の高膨張率を得るため、分岐コポリエステル及び発泡剤の合計重量に基づいて約0.01〜約20重量%の量で使用される。典型的には約 0.1〜約5重量%の濃度である。
【0030】
好適な発泡剤には、窒素及び二酸化炭素のような不活性ガス;プロパン、ブタン及びペンタンのような約−40℃〜約45℃で沸騰する炭化水素;1,1−ジフルオロエタン及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンのようなフッ化炭化水素;ヒドロクロロフルオロカーボン;並びに重炭酸ナトリウム、クエン酸と重炭酸ナトリウムの組合せ、クエン酸と炭酸ナトリウムの組合せ、アゾジカルボンアミド、CO2 及び/又はN2 を放出する吸熱性の様々な発泡剤のような気体放出性化学発泡剤;が含まれる。発泡剤の混合物もまた使用可能である。
【0031】
分岐コポリエステルの溶融物には、特有の混合比率で発泡剤が溶解若しくは分解しており、その量は、発泡剤のタイプ、温度、圧力及び他のその時の押出成形条件に依存するが、このような溶融物は次いでダイを通して押し出されてそこで膨張し、任意に成形し、冷却して捕集する。押出機の温度プロフィールは、分岐ポリエステルが発泡剤注入に先立って溶融状態となるように選択される。ガス注入口、任意の静止ミキサー部及びダイより先の押出機のゾーンの温度は、通常より低い温度になっており、これによって空気を含んだ溶融物がダイを出ると直ぐに、セルの癒着を引き起こさないように適度に冷却する。
【0032】
二番目の、より一般的に用いられる発泡押出方法では、二台の押出機を縦列にして操作する方法を採用している。分岐コポリエステル及び成核剤は、典型的に、高剪断混合スクリューを備えた第一の押出機で溶融混合する。気体又は液体の発泡剤は、通常第一押出機の終端の近くから注入する。溶融物/発泡剤組成物は、次いで加熱された静止管、すなわち連接部によって第二の押出機の供給部に移送する。第二押出機の主な目的は、空気を含んだ溶融物を環状のダイに移送する間に、ダイを出る時セルの癒着を引き起こさないような泡を形成するための最適の溶融温度及び圧力にまで冷却することである。このために第二押出機は、一般に第一押出機より相当大きな直径を有している。縦列押出形態は、通常多様な工程に卓越した制御性を与える。
【0033】
様々な構成とデザインのスクリューを、発泡分岐コポリエステルの調製に使用することができる。ミキサーが成核剤や発泡剤などの添加物を分散させるために、スクリューに又は独立した構成体として取り付けることができる。二軸スクリュー押出機又はサテライト押出機もまた使用可能である。サテライト押出機は、発泡ポリエステルシートの上に、薄く固い発泡されていないポリマー層を共押出するために使用可能である。さらに、薄い発泡されていないポリマー層が、別の工程で発泡シートの上に積層されてもよい。
【0034】
微生物分解性ポリマーは、微生物触媒による分解によってフィルム若しくは繊維の強度が低下する成分を含有する。微生物分解性ポリマーは、モノマー若しくは短い鎖長体まで切断され微生物に吸収される。好気性細菌の存在する環境では、これらのモノマー若しくは短い鎖長体は、最終的にCO2, H2O及び新しいセルバイオマスにまで酸化される。嫌気性細菌の存在する環境では、最終的に CO2, H2、アセトン、メタン及びセルバイオマスにまで酸化される。微生物分解を成功裏に行うためには、微生物分解性ポリマーと、活性な微生物の固体群若しくはこれにより生産される酵素とを直接、物理的に接触させることが必要である。その上、好適なpH、温度、酵素濃度、適切な栄養分及び湿度レベルのようなある種の最小限の物質的及び化学的必要条件が適合しなければなせない。
【0035】
本発明において記載された多くの分岐コポリエステルは、堆肥作成の環境で分解されるので、環境により分解され易い発泡材料として有用である。ペンタエリスリトール 0.1重量%及び 0.5重量%で分岐化されたポリ(テトラメチレンアジベート−co−テレフタレート)の薄いフィルム(およそ2ミルの厚さ)は、クラックや切断の状態によって示される微生物分解性を評価した。それらのフィルムは、ペトリ皿の中の、親株(grass)から単離し適切な栄養分を用いてpH調整のもとで育成した口カビの「芝生」の上に置いた。ペトリ皿は、室温で比較的高い湿度及びCO2 濃度を伴った好気性の環境を提供した。対照として、線状非分岐のポリ(テトラメチレン(43:57)アジベート−co−テレフタレート)の2ミルのフィルムが同じ「芝生」に並べて置いた。対照フィルムは、ミル当たりの基準に換算して、2.56日でクラック及び切断が生じた。ペンタエリスリトールを 0.1重量%及び 0.5重量%含んだ分岐コポリエステルのフィルムは、それぞれ2.69日及び3.68日で同じ程度に分解されていた。これらの分岐コポリエステルの調製方法は、以下の実施例に示した。
【0036】
任意に、(1)より堅くし、金型キャビティーへの付着を抑えて気泡を熱成形しやすくするため、及び(2)最終発泡製品の微生物分解性を高めるために、これらの発泡可能な分岐コポリエステルに気泡形成段階で、澱粉、木粉及び有機繊維(例えば、黄麻又は麻)を加えてもよい。このような材料をこの目的のために使用することは公知である。
【0037】
本発明を具体的に示そうとする以下の実施例を斟酌することにより、本発明は一層明らかにされるであろう。実施例における全ての部及び%は、特にことわらない限りモル%に基づくものである。
【0038】
実施例
実施例において、ここに示された結果を得るために用いられた材料及び試験方法は、次のとおりである。
【0039】
1.インヘレント粘度(I.V.)は、60重量%のフェノール及び40重量%のテトラクロロエタンからなる溶媒 100mL当たりポリマー0.50gを用い、25℃で測定した。
【0040】
2.溶融強度及びダイ膨張は、ASTM D3835に従い 280℃で測定して求めた。溶融した分岐コポリエステルは、インストロン・レオメーターを用い、直径0.254cm (0.1インチ)、長さ0.635cm(0.25インチ)のダイを通して、20sec1の剪断速度で下向きに押し出した。押出物は自由に落下するに任した。ダイ膨張はオリフィスの直ぐ外側の押出物の直径を測定し、その直径の測定値をオリフィスの直径で除することにより求めた。ダイ膨張は、%ダイ膨張として報告した。ダイのオリフィスから測って15.24cm(6インチ)の押出物の先端の直径を測定した。溶融強度%は次式:
D−0.254
────── × 100
0.254
(式中、Dは長さ15.24cm(6インチ)の押出物を支える押出物のcmで表した直径である)
により求めたDが0.254cm (0.1インチ)未満の場合、押出物の直径が増加していないので、溶融強度はマイナスの数値になる。Dが 0.254cmを超えている場合、溶融強度はプラスの数値になる。
【0041】
3.溶融粘度はASTM D4440に従い、剪断0で且つ 280℃で測定した。
【0042】
4.ジオールと酸残基のモル%はガスクロマトグラフィ又は NMRにより測定した。
【0043】
5.重量平均分子量はゲルパーミユーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。
【0044】
6.溶融温度は、示差走査熱量計(DSC)により窒素雰囲気下、走査速度20℃/分で測定した。
【0045】
実施例1
この実施例では、ペンタエリスリトール0.35重量%(wt%)で分岐化されたランダムポリ(テトラメチレン(40:60)グルタレート−co−テレフタレート)の合成及び物理的性質を説明する。
【0046】
ポリマー合成容器に、ジメチルテレフタレート60モル%、ジメチルグルタレート40モル%、1,4−ブタンジオール 100モル%及びペンタエリスリトール分岐剤0.35重量%を装填した。そこにチタンイソプロポキシド触媒(ブタノール溶液)100ppmを加えた。混合物を激しい攪拌下に窒素置換し、初めに 190℃まで加熱した。1時間後に温度は 200℃まで上昇し、エステル交換/エステル化をさらに1時間継続した。さらに 210℃で2時間保持し、エステル交換/エステル化工程は完結した。重縮合をそれから約0.0133kPa (0.1mmHg)の減圧下、 250℃で行なった。最後の1時間の重縮合で、ポリマーは I.V. 0.96dL/gであった。半結晶状の白色ポリマーは、 DSC融点 148℃、並びに結晶化温度82.6℃(ガラス領域から)及び75.1℃(溶融領域から)であった。ポリマーは、 170℃において%溶融強度+23%及び%ダイ膨張+ 116%であった。比較のために、非分岐の同様のポリマー、ポリ(テトラメチレン(40:60)グルタレート−co−テレフタレート)の試料(I.V. 1.1dL/g)は、 170℃において%溶融強度−64%及び%ダイ膨張−4%であった。
【0047】
実施例2
この実施例では、ペンタエリスリトール 0.5重量%で分岐化されたランダムポリ(テトラメチレン(43:57)アジペート−co−テレフタレート)の合成及び物理的性質を説明する。
【0048】
ポリマー合成容器に、ジメチルテレフタレート57モル%、ジメチルアジペート43モル%、1,4−ブタンジオール 100モル%及びペンタエリスリトール分岐剤 0.5重量%を装填した。そこにチタンイソプロポキシド触媒(ブタノール溶液)100ppmを加えた。混合物を激しい攪拌下に窒素置換し、初めに 190℃まで加熱した。1時間後温度は 200℃まで上昇し、エステル交換/エステル化をさらに2時間継続した。さらに 210℃で1時間保持し、エステル交換/エステル化工程を完結させた。重縮合はそれから約0.0133kPa (0.1mmHg)の減圧下、 250℃で行なった。最後の 1.5時間の重縮合で、ポリマーは I.V. 0.98dL/gを有するようになった。半結晶状の白色ポリマーは、 DSC融点 109℃、並びに結晶化温度45.6℃(ガラス領域から)及び34.4℃(溶融領域から)であった。ポリマーは、 130℃において%溶融強度+40%及び%ダイ膨張+ 149%であった。この分岐コポリエステルは、 GPC重量平均分子量 84021、多分散性(polydispersity)4.78,Mz/Mn比 17.75、及び 130℃における剪断0の溶融粘度3.27×105 ポアズであった。比較のために、非分岐の同様のポリマー、ポリ(テトラメチレン(43:57)アジペート−co−テレフタレート)の試料(I.V. 1.11dL/g)は、%溶融強度−25%、%ダイ膨張+34%、及び 130℃における剪断0の溶融粘度5.71×104 ポアズであった。
【0049】
上記の方法を用いて、上記分岐コポリエステル 100ポンドを押出発泡試験のため1/8”ペレットの形態に調製した。ポリマーを除湿乾燥機中、60℃で乾燥し、次いで溶融温度 120℃の単軸スクリュー押出機で押出成形した。粉末タルク〔ポーラー・ミネラルズ社(Polar Minerals Inc.)、製品番号#9102、中間粒径2〜3μ〕を、溶融物押出量に基づいて0.35重量%の供給速度で粉体供給付属装置を用いて押出機の供給口に供給した。スクリューの直径は40mm、L/D比は30、そして押出機の端部におけるノズルダイは5mm径の穴を有していた。溶融物押出量に基づいて 1.5重量%の窒素発泡剤を、押出機の中央の位置から注入した。発泡された棒状物をダイのノズルを通って製造した。発泡したロッドは、表面が滑らかで、且つ全てのセルが閉鎖されている均一のセル構造を有していた。発泡された棒状物の密度は0.75g/ccであった。
【0050】
比較として、これらの発泡試験を非分岐ポリ(テトラメチレン(43:57)アジペート−co−テレフタレート)(I.V. 1.11dL/g)を用いて試みた。発泡された棒状物の表面は全くざらざらしたものであり、且つ肉眼で分かるほど大きな開いた開口セルのある全く不均一なセル構造を有していた。このような結果は、この非分岐ポリエステルの溶融強度及び溶融粘度が非常に低いということに由来していた。
【0051】
実施例3
この実施例では、ペンタエリスリトール 0.1重量%で分岐化されたランダムポリ(テトラメチレン(43:57)アジペート−co−テレフタレート)の合成及び物理的性質を説明する。
【0052】
ポリマー合成容器に、ジメチルテレフタレート57モル%、ジメチルアジペート43モル%、1,4−ブタンジオール 100モル%及びペンタエリスリトール分岐剤 0.1重量%を装填した。そこにチタンイソプロポキシド触媒(ブタノール溶液)30ppmを加えた。混合物を厳しい攪拌下に窒素置換し、初めに 190℃まで加熱した。1時間後温度は 200℃まで上昇し、エステル交換/エステル化をさらに2時間継続した。さらに 210℃で 2.5時間保持し、エステル交換/エステル化工程を完結した。重縮合はそれから約0.0133kPa (0.1mmHg)の減圧下、 250℃で行なった。最後の1時間の重縮合で、ポリマーは I.V. 0.85dL/gを有するようになった。半結晶状の白色のポリマーは、 DSC融点 113.6℃、並びに結晶化温度42.5℃(ガラス領域から)及び47.6℃(溶融領域から)であった。ポリマーは、 130℃において%溶融強度+48%及び%ダイ膨張+3%であった。この分岐コポリエステルは、 GPC重量平均分子量 48108、多分散性2.33,Mz/Mn比4.47を有していた。比較のために、非分岐の同様のポリマー、ポリ(テトラメチレン(43:57)アジペート−co−テレフタレート)の試料(I.V. 1.11dL/g)は、130 ℃において%溶融強度−25%、%ダイ膨張+34%であった。
【0053】
本発明は、発泡に適した脂肪族−芳香族分岐ランダムコポリエステルをここに提供した。同種の非分岐コポリエステルと比較したとき、分岐コポリエステルによって溶融粘度及び溶融強度の顕著な改良が達成された。
【0054】
本発明は、その好適な実施形態を特に参照しながら詳細に記述したが、本発明の精神及び範囲ににおいてその変形や修正が可能なことはいうまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形時に高い溶融粘度と溶融強度とを有し、発泡に適しており、且つ次の繰返し単位:
[-{(O-R1-O)a-(CO-R2-CO)b}-{(O-R3-O)c-(CO-Ar-CO)d}-](BA)x
( ここで、
(1)酸成分が(a)−CO−R2 −CO−、bの量として30〜95モル%存在する炭素原子3〜40を含む脂肪族酸残基及び(b)−CO−Ar−CO−、dの量として5〜70モル%存在する炭素原子8〜40を含む芳香族酸残基を含む 100モル%の量で存在し;
(2)ジオール成分が(a)−O−R1 −O−、aの量として0〜 100モル%及び(b)−O−R3 −O−、cの量として 100〜0モル%を含んで 100モル%の量で存在し(a)及び(b)は共に炭素原子2〜20を含み;且つ(3)BAは分岐剤であり、xの量として(1),(2)及び(3)の合計重量に基づいて0.01〜10重重量%存在する)
を含んでなる脂肪族−芳香族分岐ランダムコポリエステル。
【請求項2】
bが55〜60モル%で、且つdが40〜45モル%である請求の範囲第1項に記載の脂肪族−芳香族分岐ランダムコポリエステル。
【請求項3】
酸成分が、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、1,4−テレフタル酸、1,3−テレフタル酸、2,6−ナフトエ酸、1,5−ナフトエ酸、それらのエステル形成性誘導体、及びそれら組合せからなる群から選ばれるジカンボル酸である請求の範囲第1項に記載の脂肪族−芳香族分岐ランダムコポリエステル。
【請求項4】
酸成分が4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボン酸、ヒドロキシピバリン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、グリコール酸、乳酸、及びそれらのエステル形成性誘導体からなる群から選ばれるヒドロキシ酸である請求の範囲第1項に記載の脂肪族−芳香族分岐ランダムコポリエステル。
【請求項5】
ジオール成分が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる請求の範囲第1項に記載の脂肪族−芳香族分岐ランダムコポリエステル。
【請求項6】
分岐剤が 0.1〜1.0 重量%の量で存在する請求の範囲第1項に記載の脂肪族−芳香族分岐ランダムコポリエステル。
【請求項7】
分岐剤が50〜5000の重量平均分子量を有する請求の範囲第1項に記載の脂肪族−芳香族分岐ランダムコポリエステル。
【請求項8】
分岐剤の重量平均分子量が92〜3000であり、分岐剤が3〜6官能性である請求の範囲第7項に記載の脂肪族−芳香族分岐ランダムコポリエステル。
【請求項9】
分岐剤が、3〜6個のヒドロキシ基を有するポリオール、3若しくは4個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸、該ポリカルボン酸のエステル若しくは酸無水物、及び水酸基とカルボキシル基とを合計で3〜6個有するヒドロキシ酸からなる群から選ばれる請求の範囲第1項に記載の脂肪族−芳香族分岐ランダムコポリエステル。
【請求項10】
ポリオールが、グリセロール、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール、1,2,6−ヘキサントリオール、ソルビトール、1,1,4,4−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、及びジペンタエリスリトールからなる群から選ばれる請求の範囲第9項に記載の脂肪族−芳香族分岐ランダムコポリエステル。
【請求項11】
ポリカルボン酸が、ヘミメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ベンゼンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、1,1,2,2−エタンテトラカルボン酸、1,1,2−エタントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸、及び1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸からなる群から選ばれる請求の範囲第9項に記載の脂肪族−芳香族分岐ランダムコポリエステル。
【請求項12】
ヒドロキシ酸が、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、3−ヒドロキシグルタル酸、ムチン酸、トリヒドロキシグルタル酸、及び4−(β−ヒドロキシエチル)フタル酸からなる群から選ばれる請求の範囲第9項に記載の脂肪族−芳香族分岐ランダムコポリエステル。
【請求項13】
分岐剤が、トリメリット酸、トリメシン酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、及び1,2,4−ブタントリオールからなる群から選ばれる請求の範囲第9項に記載の脂肪族−芳香族分岐ランダムコポリエステル。
【請求項14】
請求の範囲第1項の脂肪族−芳香族分岐ランダムコポリエステルから製造される発泡物品。

【公開番号】特開2007−146193(P2007−146193A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−71566(P2007−71566)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【分割の表示】特願平9−541045の分割
【原出願日】平成9年5月8日(1997.5.8)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】