発泡合成樹脂成形体
【課題】簡易な構成にて、延出部を主体部側に比較的容易に且つ精度良く屈曲変形させることが可能であり、且つ屈曲変形させた後に、その状態を比較的容易に維持させることが可能な発泡合成樹脂成形体を提供する。
【解決手段】発泡合成樹脂成形体1は、主体部3と、該主体部3から延出した延出部4,5とを有し、発泡合成樹脂が該主体部3から該延出部4,5の延出方向の先端側に向かって膨張することにより、該主体部3及び延出部4,5が該発泡合成樹脂により一体に成形されている。発泡合成樹脂成形体1は、使用時には、延出部5を、その先端側が主体部3に接近するように変形させて使用される。延出部5には易変形部が設けられている。
【解決手段】発泡合成樹脂成形体1は、主体部3と、該主体部3から延出した延出部4,5とを有し、発泡合成樹脂が該主体部3から該延出部4,5の延出方向の先端側に向かって膨張することにより、該主体部3及び延出部4,5が該発泡合成樹脂により一体に成形されている。発泡合成樹脂成形体1は、使用時には、延出部5を、その先端側が主体部3に接近するように変形させて使用される。延出部5には易変形部が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主体部と、該主体部から延出した延出部とが一体に成形された発泡合成樹脂成形体に係り、特に使用時には、延出部を、その先端側が主体部に接近するように変形させて使用される発泡合成樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートや家屋内に設置されるソファー等のシートは、一般的に、軟質ポリウレタンフォーム又は半硬質ポリウレタンフォーム等の発泡合成樹脂よりなるシートパッドと、このシートパッドを支持するシートフレームと、このシートパッドの外面に被着される表皮材とを有している。
【0003】
第6図は、従来例に係るシートパッドの縦断面図であり、第7図は、このシートパッドを成形するための金型の要部縦断面図である。
【0004】
シートパッド100は、着座者に当接する主体部101と、該主体部101の周縁部から該主体部101の裏面側へ延出した第1延出部102と、該第1延出部102の延出方向の先端側から主体部101の裏面の中央側へ延出した第2延出部103とを有し、該主体部101、第1延出部102及び第2延出部103によって囲まれた凹所104にシートフレーム120(第11図参照)を係合させるように構成されている。主体部101、第1延出部102及び第2延出部103は一体的に形成されている。主体部101の裏面、並びに、第1延出部102及び第2延出部103の凹所104側の面に沿って補強布105が配設されている。
【0005】
このシートパッド100を発泡成形するための金型110は、上型111と、下型112と、該上型111にセットされた中型113とを有している。この下型112のキャビティ面によりシートパッド100の正面(着座者側の面)側が成形され、上型111及び中型113のキャビティ面によりシートパッド100の裏面側が成形される。中型113の側面から、前記凹所104を形成するための突出部114が突設されている。この下型112のキャビティ底面と中型113の下面との間のキャビティ空間S101によりシートパッド100の主体部101が成形され、この突出部114の突出方向の先端面と下型112のキャビティ側面との間のキャビティ空間S102により第1延出部102が成形され、該突出部114の上面と上型111のキャビティ天井面との間のキャビティ空間S103により第2延出部103が成形される。
【0006】
シートパッド100を発泡成形する場合、中型113に補強材105を被着させ、下型112内に発泡合成樹脂原料115を注入し、上型111と下型112とを型締めして該発泡合成樹脂原料115を加熱・発泡させる。発泡合成樹脂原料115は、その発泡の進行に伴い、キャビティ空間S101からキャビティ空間S102,S103をこの順に充填していく。これにより、主体部101、第1延出部102及び第2延出部103が一体に形成される。また、これらの裏面(第1延出部102及び第2延出部103においては前記凹所104の内側に臨む面)に補強材105が一体化される。金型110内のガスは、第2延出部103の延出方向の基端側(以下、基端側と略す。)に位置する上型111と下型112とのパーティングライン116、及び、第2延出部103の延出方向の先端側(以下、先端側と略す。)に位置する上型111と中型113との間のパーティングライン117を通って金型110外に排出される。
【0007】
第6図のように、第2延出部103の主体部101と反対側の面が該主体部101から離反方向に凸に湾曲しており、該第2延出部103の延出方向の途中部が、最も主体部101から離反方向に膨らみ出した最大膨出部103aとなっている場合、第7図の通り、キャビティ空間S103に臨む上型111のキャビティ天井面のうちパーティングライン116,117同士の間の部分は、上方へ向かって凹曲した凹形状部111aとなる。この凹形状部111aにおいては、上型111のキャビティ天井面は、パーティングライン116,117よりも高位となる。この場合、凹形状部111aにガスが残留し易くなり、第2延出部103にボイド(製品の欠け)等の成形不良が生じるおそれがある。
【0008】
特許文献1(特開2009−90549号公報)には、第2延出部103が先端側ほど主体部101の裏面から離隔した形状にてシートパッドを発泡成形することにより、第2延出部103にボイド等の成形不良が生じることを防止することが記載されている。第8図は特許文献1のシートパッドの斜視図、第9図は第8図のIX−IX線に沿う断面図、第10図は特許文献1のシートパッドを発泡成形するための金型の要部縦断面図、第11図は特許文献1のシートパッドをシートフレームに取り付けて表皮材を被着させた状態を示す縦断面図である。
【0009】
特許文献1のシートパッド100Aは、第8,9図の通り、第2延出部103に、その第1延出部102からの延出方向と直交方向に間隔をおいて1対のスリット106,106が設けられており、該第2延出部103のうち、これらのスリット106,106同士の間の部分が、他の部分よりも主体部101と反対方向へ引き起こされ、その先端側ほど主体部101の裏面から離隔した形状となっている。
【0010】
このシートパッド100Aを発泡成形するための金型110Aにおいては、第10図の通り、キャビティ空間S103は、第2延出部103が先端側ほど主体部101の裏面から離隔した形状となっている分だけ、全体として該第2延出部103の先端側に向かって上り勾配となっており、第7図の金型110と比べて、パーティングライン117がキャビティ空間S103内の高い位置に配置されているため、キャビティ天井面の凹形状部111aにガスが残留しにくく、比較的スムーズにパーティングライン117から金型110外にガスが排出される。その結果、第2延出部103にボイド等の成形不良が生じることが防止される。
【0011】
このシートパッド100Aを用いてシート130を構成する場合、第11図の通り、シートパッド100Aの裏面側の凹所104にシートフレーム120の端部を係合させて該シートフレーム120の正面側にシートパッド100Aの主体部101を配置する。その後、主体部101から離反方向に引き起こされていた第2延出部103を該主体部101側へ屈曲変形(湾曲変形も含む。以下、同様。)させてシートフレーム120の裏面に当接させ、この状態でシートパッド100Aの外面に表皮材107を被着させる。第2延出部103は、この表皮材107により、シートフレーム120の裏面に当接した状態に拘束される。その結果、第6図のシートパッド100を用いた場合と同様の形状のシートが構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−90549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記特許文献1のシートパッド100Aにおいて、第2延出部103を主体部101側へ屈曲変形させたときに、この屈曲変形に伴って第2延出部103が若干伸長するため、屈曲変形させた後の第2延出部103の先端部が所期の位置からずれた位置に配置されるおそれがある。これを防止するためには、第2延出部103の屈曲変形に伴って該第2延出部103がどの程度伸長するかシミュレーション等により明らかにする必要があり、設計が煩雑なものとなる。
【0014】
また、このシートパッド100Aにあっては、第2延出部103は、その途中部が肉厚となっており、剛性が高いので、第2延出部103を主体部101側へ屈曲変形させにくい。また、第2延出部103を屈曲変形させた後も、この第2延出部103を拘束するために、表皮材107を剛性の高いものとする必要がある。
【0015】
本発明は、上記従来の問題点を解消し、簡易な構成にて、延出部を主体部側に比較的容易に且つ精度良く屈曲変形させることが可能であり、且つ屈曲変形させた後に、その状態を比較的容易に維持させることが可能な発泡合成樹脂成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1の発泡合成樹脂成形体は、主体部と、該主体部から延出した延出部とを有し、発泡合成樹脂が該主体部から該延出部の延出方向の先端側に向かって膨張することにより、該主体部及び延出部が該発泡合成樹脂により一体に成形された発泡合成樹脂成形体であって、該発泡合成樹脂成形体の使用時には、該延出部を、該先端側が該主体部に接近するように変形させて使用される発泡合成樹脂成形体において、該延出部に易変形部が設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項2の発泡合成樹脂成形体は、請求項1において、前記延出部を、その先端側が前記主体部に接近するように変形させた状態において、該延出部の該主体部と反対側の面は、該主体部から離反方向に凸に湾曲しており、該延出部の前記延出方向の途中部が、最も該主体部から離反方向に膨らみ出した最大膨出部となっており、前記易変形部は、少なくとも一部が、該延出部の前記延出方向の基端側から先端側に向かって該最大膨出部と同一距離にあることを特徴とするものである。
【0018】
請求項3の発泡合成樹脂成形体は、請求項1又は2において、前記延出部の外面のうち、該延出部をその先端側が前記主体部に接近するように変形させたときに、該主体部と対向する側の面(以下、主体部との対向面という。)に、該延出部の内部側に凹嵌する凹部が設けられており、該凹部により前記易変形部が構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項4の発泡合成樹脂成形体は、請求項3において、前記凹部は、前記延出部の前記延出方向と直交方向に延在した溝状であることを特徴とするものである。
【0020】
請求項5の発泡合成樹脂成形体は、請求項3又は4において、前記延出部の前記延出方向と平行方向且つ該延出部の前記主体部との対向面と直交方向における前記凹部の断面形状は、該凹部の奥側ほど幅が狭くなる形状となっていることを特徴とするものである。
【0021】
請求項6の発泡合成樹脂成形体は、請求項5において、前記凹部の底面は、前記延出部の内部側に凸に湾曲していることを特徴とするものである。
【0022】
請求項7の発泡合成樹脂成形体は、請求項5において、前記凹部の前記断面形状は台形状であることを特徴とするものである。
【0023】
請求項8の発泡合成樹脂成形体は、請求項1ないし7のいずれか1項において、該発泡合成樹脂成形体はシートパッドであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の発泡合成樹脂成形体にあっては、延出部に易変形部が設けられているので、発泡合成樹脂成形体の使用時には、延出部を比較的容易に主体部に対し接近方向に屈曲変形させることができると共に、比較的容易にこの屈曲変形状態を維持させることができる。また、延出部に易変形部を設けることにより、延出部の屈曲変形に伴う該延出部の延出方向への伸長をこの易変形部で吸収ないし抑制することができるため、屈曲変形させた後の延出部の先端部を比較的精度良く所期の位置に配置することが可能となる。
【0025】
請求項2の通り、易変形部を、少なくとも一部が延出部の基端側から該延出部の最大膨出部と同一距離にあるように設けることにより、延出部の屈曲変形の一層の容易化、及び、屈曲変形後の延出部の先端部の配置精度の一層の向上を図ることができる。
【0026】
請求項3の通り、延出部の主体部との対向面に凹部を形成することにより、簡易な構成にて延出部に易変形部を設けることができる。また、延出部を主体部側へ屈曲変形させたときに、この凹部は、延出部の延出方向における幅が小さくなるように変形するため、延出部の屈曲変形に伴う該延出部の延出方向への伸長がこの凹部の変形により吸収される。これにより、延出部を主体部側へ屈曲変形させた後の該延出部の先端部の配置精度を向上させることができる。
【0027】
請求項4の通り、この凹部は、延出部の延出方向と直交方向(以下、延出部の幅方向という。)に延在した溝状であることが好ましい。このように構成することにより、延出部をその幅方向に均等に屈曲変形させることができる。
【0028】
請求項5の通り、延出部の延出方向と平行方向且つ該延出部の主体部との対向面と直交方向における凹部の断面形状は、該凹部の奥側ほど幅が狭くなる形状となっていることが好ましい。このように構成することにより、発泡合成樹脂成形体の成形時に、発泡合成樹脂がこの凹部をスムーズに乗り越えて延出部の基端側から先端側に膨張することができる。
【0029】
この場合、請求項6の通り、凹部の底面は、延出部の内部側に凸に湾曲した湾曲面となっていることが好ましい。このように構成することにより、発泡合成樹脂成形体の成形時に、発泡合成樹脂がよりスムーズにこの凹部を乗り越えることができる。また、請求項7の通り、この凹部の断面形状を、奥側ほど幅が狭くなる台形状とした場合にも、発泡合成樹脂が比較的スムーズにこの凹部を乗り越えることができる。
【0030】
請求項8の通り、本発明の発泡合成樹脂成形体は、シートパッドに適用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施の形態に係る発泡合成樹脂成形体としてのシートパッドの断面図である。
【図2】図1のシートパッドを製造するための金型の断面図である。
【図3】図1のシートパッドがシートフレームに取り付けられ、該シートパッドの外面に表皮材が被着された状態を示す断面図である。
【図4】易変形部を構成する凹部の他の形状例を示す断面図である。
【図5】易変形部の他の構成例を示す断面図である。
【図6】従来例に係るシートパッドの断面図である。
【図7】図7のシートパッドを製造するための金型の断面図である。
【図8】別の従来例に係るシートパッドの斜視図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿う断面図である。
【図10】図8のシートパッドを製造するための金型の断面図である。
【図11】図8のシートパッドがシートフレームに取り付けられ、該シートパッドの外面に表皮材が被着された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、この実施の形態では、発泡合成樹脂成形体として、車両用シートの背もたれ部を構成するバックパッドを例示しているが、本発明は、これ以外の発泡合成樹脂成形体、例えばシートの腰掛部を構成するクッションパッドなど、種々の発泡合成樹脂成形体に適用可能である。
【0033】
第1図は、実施の形態に係る発泡合成樹脂成形体としてのシートパッドの上端付近の縦断面図であり、第2図は、このシートパッドを製造するための金型の第1図に対応する部分の縦断面図であり、第3図は、このシートパッドがシートフレームに取り付けられ、該シートパッドの外面に表皮材が被着された状態を示す、第1図に対応する部分の縦断面図である。以下、上下方向、左右方向及び前後方向は、このシートパッドを用いて構成されたシートの着座者にとっての上下方向、左右方向及び前後方向と一致するものとする。
【0034】
この実施の形態では、発泡合成樹脂成形体は、車両用シートを構成するシートパッド1である。特に、この実施の形態では、該シートパッド1は、シートの背もたれ部50(第3図)を構成するバックパッドである。このシートパッド1は、ポリウレタンフォーム等の発泡合成樹脂よりなるシートパッド本体2と、該シートパッド本体2の後面に沿って配設された補強材10とを備えている。補強材10は、シートパッド本体2と一体成形により一体化されている。このシートパッド本体2を発泡成形するための金型20の構成、並びにこの金型20を用いたシートパッド1の製造方法については後で詳しく述べる。このシートパッド1は、背もたれ部50のシートフレーム(バックフレーム)30に取り付けられ、表皮材40によって外面が被覆されるものとなっている。
【0035】
第1図の通り、シートパッド本体2は、シートフレーム30の前面側を覆う主体部3と、該主体部3の後面の上辺及び左右の側辺からそれぞれ後方へ延出した第1延出部4と、該第1延出部4の後端から該主体部3の後面の中央側へ延出した第2延出部5とを有している。この実施の形態では、これら一連の第1延出部4及び第2延出部5により、請求項1における延出部が構成されている。なお、第1,3図では、主体部3の上辺から延出した第1延出部4及びこれに連なる第2延出部5のみ図示されている。これらの主体部3、第1延出部4及び第2延出部5は一体的に形成されている。また、第1延出部4及び第2延出部5は、主体部3の後面の上辺及び左右の側辺に沿って連続して形成されている。これらの主体部3、第1延出部4及び第2延出部5によって囲まれた空間は、シートフレーム30の上辺及び左右の側辺がそれぞれ係合する凹所6となっている。この凹所6は、主体部3の後面の中央側に向かって開放している。なお、シートパッド本体2の主要部分の構成はこれに限定されない。主体部3の後面の下辺にも第1延出部4及び第2延出部5が設けられてもよい。
【0036】
このシートパッド1にあっても、前述の第8,9図のシートパッド100Aと同様に、主体部3の上辺に沿う第2延出部5(以下、上側第2延出部5という。)には、左右方向に間隔をおいて1対のスリット(図示略)が設けられており、上側第2延出部5のうち、これらのスリット同士の間の部分が、他の部分よりも後方(主体部3と反対方向)へ引き起こされ、その先端側ほど主体部3の裏面から離隔した形状となっている。以下、単に上側第2延出部5というときには、このスリット同士の間の、後方へ引き起こされた部分を指す。
【0037】
この上側第2延出部5の前面(主体部3との対向面)に、易変形部を構成する凹部7が設けられている。この実施の形態では、該凹部7は、左右方向に延在した溝状となっている。この溝状の凹部7は、上側第2延出部5の全幅にわたって連続して形成されており、凹部7の左右両端側は、それぞれ前記スリットに達している。上側第2延出部5の延出方向と平行方向且つ該上側第2延出部5の前面と直交方向における凹部7の断面形状は、該凹部7の奥側ほど幅が狭くなる形状となっていることが好ましい。この実施の形態では、第1図の通り、凹部7は、底面が上側第2延出部5の内部側に凸に湾曲した、いわゆる山形の断面形状となっている。また、凹部7の上側の側面と上側第2延出部5の前面とが交わる角部、並びに、凹部7の下側の側面と上側第2延出部5の前面とが交わる角部は、それぞれ、これらの面同士が滑らかに連なるように湾曲した(Rの付いた)形状となっている。なお、凹部7の断面形状はこれに限定されない。
【0038】
この実施の形態では、第1図の通り、上側第2延出部5は、この凹部7よりも先端側の部分が後方へ引き起こされた形状となっている。第1図の二点鎖線は、この上側第2延出部5の先端側を前方(主体部3側)に屈曲変形させてシートフレーム30の後面に当接させたときの該上側第2延出部5の先端側の位置を示している。上側第2延出部5が後方へ引き起こされた状態における該上側第2延出部5の先端部の前面と、該上側第2延出部5が前方へ屈曲変形された状態における該上側第2延出部5の先端部の前面とのなす角θ(第1図)は20°以下特に5〜15°程度であることが好ましい。なお、このθの好適範囲は、本実施の形態のように、予め第1延出部4が主体部3の後方に向かって延出し、第2延出部5が該第1延出部4の先端から主体部3の後面の中央側に向かって延出した形状に延出部が成形されている場合のものであり、例えば延出部が主体部3から上方や側方(主体部3の座面の延長方向)へ一直線状に延出するように成形され、この延出部を主体部3の後面へ回り込ませるように大きく屈曲変形させる場合には、この限りではない。
【0039】
この実施の形態では、上側第2延出部5の後面(主体部3と反対側の面)は、後方に凸の湾曲面となっている。以下、上側第2延出部5のうち、該上側第2延出部5の先端側を主体部3側に屈曲変形させてシートフレーム30の後面に当接させた状態において、その後面が最も後方へ膨らみ出した部分を最大膨出部5aという。第3図の通り、この最大膨出部5aは、上側第2延出部5の上下方向の途中部に位置している。凹部7は、この最大膨出部5aと重なるように(少なくとも一部が最大膨出部5aと同じ高さに位置するように)配置されていることが好ましく、特に凹部7の最深部が最大膨出部5aと同じ高さに位置するように配置されていることが最も好ましいが、凹部7の配置はこれに限定されない。凹部7は、最大膨出部5aよりも上側第2延出部5の先端側又は後端側にずれて配置されていてもよい。この場合、上側第2延出部5の先端から最大膨出部5aまでの距離をLとすると、凹部7は、上側第2延出部5の先端からこのLの50〜150%、特に75〜125%離隔していることが好ましい。なお、凹部7は、上側第2延出部5の先端側をシートフレーム30の後面に当接させたときに、該シートフレーム30と干渉しない位置に配置されていることが好ましい。
【0040】
凹部7の深さは、発泡合成樹脂の発泡倍率、第2延出部5の形状、最大膨出部5aの厚み等に応じて適宜選択可能であるが、最大膨出部5aから凹部7の底面までの高さHが5〜25mm、特に10〜20mmであることが好ましい。なお、発泡倍率を高く設定する場合、キャビティ空間に充填される際の発泡合成樹脂の体積が大きくなるため、上記高さHを高く設定することが好ましい。これにより、金型20内において、この凹部7を形成するための凸部25の上側のキャビティ空間が十分に確保され、樹脂破断等の不良を防ぐことができる。
【0041】
このシートパッド1の基本的な構成は、上側第2延出部5の主体部3との対向面に、易変形部を構成する凹部7が設けられていることを除いて、実質的に、前述の第8,9図のシートパッド100Aと同様である。
【0042】
次に、シートパッド1を成形するための金型20について説明する。第2図の通り、この実施の形態では、金型20は、上型21と、下型22と、該上型21にセットされた中型23とを有している。この実施の形態でも、前述の第10図の金型110Aと同様に、下型22のキャビティ面によりシートパッド本体2の前面側が成形され、上型21及び中型23のキャビティ面によりシートパッド本体2の後面側が成形される。以下、便宜上、金型20の各部の方向をシートパッド本体2の上下方向、左右方向及び前後方向に対応させて該金型20の各部の構成について説明する(即ち、以下、第2図における左右方向を上下方向とし、第2図における下方を前方とし、第2図における上方を後方とし、第2図の紙面と垂直方向を左右方向として金型20の各部の構成について説明する。)。
【0043】
中型23の上端面及び左右の側面からは、前記凹所6を形成するための突出部24が突設されている。この突出部24は、中型23の上端面から左右の側面にかけて連続して形成されている。下型22のキャビティ底面と中型23の前面との間のキャビティ空間S1によりシートパッド本体2の主体部3が成形され、突出部24の突出方向の先端面と下型22のキャビティ側面との間のキャビティ空間S2により第1延出部4が成形され、該突出部24の後面と上型21のキャビティ天井面との間のキャビティ空間S3により第2延出部5が成形される。キャビティ空間S3に臨む上型21のキャビティ天井面は、突出部24の後面から離反方向に凹曲した凹形状部21aとなっている。
【0044】
上型21と下型22との間のパーティングライン26は、上側第2延出部5の基端付近に位置し、上型21と中型23との間のパーティングライン27は、上側第2延出部5の先端付近に位置している。
【0045】
キャビティ空間S3に臨む突出部24の後面からは、凹部7を形成するための凸部25が突設されている。この実施の形態では、該凸部25は、左右方向に延在した凸条よりなる。この凸部25の外面は、突出部24の後面から緩やかに立ち上がり、且つ先端側はキャビティ空間S1の内方に凸に湾曲した湾曲面となっている。この凸部25の外面形状は、凹部7の内面形状と実質的に合致するものであり、突出部24の後面からの凸部25の突出高さは、凹部7の深さと実質的に同等であり、凸部25の幅及び延在長さも、それぞれ、凹部7の幅及び延在長さと実質的に同等である。
【0046】
後述の通り、この凸部25は、キャビティ空間S3内を上側第2延出部5の先端側に向かって膨張する発泡合成樹脂原料を上型21のキャビティ天井面まで十分に充填させる作用を奏する。その際、キャビティ空間S3内において発泡合成樹脂原料が全体として上側第2延出部5の先端側に向かって均等に流れるようにするために、突出部24の後面からの凸部25の突出高さは、該凸部25の延在方向の一端側から他端側まで一定となっていることが好ましい。なお、凸部25の形状はこれに限定されない。
【0047】
第2図の通り、キャビティ空間S3内に臨む突出部24の後面のうち凸部25よりも上側第2延出部5の先端側の領域は、該先端側ほど高位となるように傾斜している。また、キャビティ空間S3に臨む上型21のキャビティ天井面(凹形状部21a)も、全体として上側第2延出部5の先端側ほど高位となるように傾いている。なお、上側第2延出部5の先端側のパーティングライン27は、キャビティ空間S3内において最も高い位置に配置されていることが望ましいが、それよりも若干(例えば5〜10mm程度)低い位置に配置されていてもよい。
【0048】
この金型20の基本的な構成も、キャビティ空間S3に臨む突出部24の後面に凸部25が設けられていることを除いて、実質的に、前述の第10図の金型110Aと同様である。
【0049】
この金型20を用いてシートパッド1を製造する場合、まず、上型21と下型22とを型開きし、中型23に補強材10を被着させる。この際、補強材10を中型23に密着させ、この補強材10のうち凸部25に重なった部分を、該凸部25の外面に沿ってキャビティ空間S3内に突出した形状とする。
【0050】
次に、下型22内に発泡合成樹脂原料を注入し、上型21と下型22とを型締めして該発泡合成樹脂原料を加熱・発泡させる。この発泡合成樹脂原料は、キャビティ空間S1,S2,S3をこの順に充填していく。これにより、シートパッド本体2の主体部3、第1延出部4及び第2延出部5が一体に形成される。また、これらの裏面(第1延出部4及び第2延出部5においては前記凹所6の内側に臨む面)に補強材10が一体化される。
【0051】
この金型20にあっても、前述の第10図の金型110Aにおけるキャビティ空間S103と同様に、キャビティ空間S3は、上側第2延出部5が先端側ほど主体部3の後面から離隔した形状となっている分だけ、全体として該上側第2延出部5の先端側に向かって上り勾配となっており、パーティングライン27がキャビティ空間S3内の高い位置に配置されているため、キャビティ天井面の凹形状部21aにガスが残留しにくく、比較的スムーズにパーティングライン27から金型20外にガスが排出される。その結果、上側第2延出部3にボイド等の成形不良が生じることが防止される。
【0052】
この金型20にあっては、キャビティ空間S3内で膨張する発泡合成樹脂原料は、第2図の通り、突出部24の後面からキャビティ空間S3内に突出した凸部25を乗り越えて上側第2延出部5の先端側へ流れる。この凸部25を乗り越えるときに、発泡合成樹脂原料の流れは、上型21のキャビティ天井面を指向するようになる。これにより、発泡合成樹脂原料がキャビティ空間S3内を上型21のキャビティ天井面まで十分に充填するようになり、上側第2延出部5に、一層、ボイド等の成形不良が発生しにくくなる。
【0053】
キャビティ空間S1〜S3を充填した発泡合成樹脂が硬化した後、上型21と下型22とを型開きしてシートパッド1を脱型する。その後、必要に応じバリ取り等の仕上げ作業を行うことにより、シートパッド1が完成する。
【0054】
このシートパッド1を用いてシートの背もたれ部50を構成する場合、このシートパッド1をシートフレーム30に取り付け、このシートパッド1の外面に表皮材40を被着させる。この際、第3図の通り、まず、シートパッド1の後面の上側及び左右両側の凹所6にシートフレーム30の上端部及び左右両端部をそれぞれ係合させて該シートフレーム30の前面側にシートパッド1の主体部3を配置する。その後、後方に引き起こされていた上側第2延出部5を前方へ屈曲変形させてシートフレーム30の後面に当接させる。そして、この状態でシートパッド1の外面に表皮材40を被着させる。上側第2延出部5は、この表皮材40により、シートフレーム30の後面に当接した状態に拘束される。これにより、背もたれ部50が構成される。
【0055】
このシートパッド1にあっては、上側第2延出部5の前面に凹部7が設けられており、この凹部7により、該上側第2延出部5の上下方向の途中部に、前方への屈曲変形が容易な易変形部が形成されている。これにより、シートパッド1をシートフレーム30に取り付けた後、上側第2延出部5を比較的容易に前方へ屈曲変形させてシートフレーム30の後面に当接させることができる。また、上側第2延出部5がシートフレーム30の後面から離反して元の位置に戻ろうとする力も比較的弱いので、表皮材40として比較的剛性の低いものを用いても、比較的容易に、上側第2延出部5をシートフレーム30の後面に当接した状態に維持することができる。また、このように上側第2延出部5に易変形部を設けたことにより、上側第2延出部5の前方への屈曲変形に伴う該上側第2延出部5の延出方向への伸長をこの易変形部で吸収ないし抑制することができるため、上側第2延出部5を前方へ屈曲変形させた後の該上側第2延出部5の先端部を比較的精度良くシートフレーム30の後面の所定位置に配置することができる。
【0056】
特に、この実施の形態では、該易変形部は、上側第2延出部5の前面に設けられた凹部7よりなり、上側第2延出部5を前方へ屈曲変形させたときに、この凹部7は、該上側第2延出部5の延出方向における幅が小さくなるように変形するため、上側第2延出部5の屈曲変形に伴う該上側第2延出部5の延出方向への伸長がこの凹部7の変形により吸収される。これにより、上側第2延出部5を前方へ屈曲変形させた後の該上側第2延出部5の先端部の配置精度を一層、向上させることができる。
【0057】
<易変形部を構成する凹部のその他の構成>
第4図(a),(b)は、それぞれ、易変形部を構成する凹部の別の形状例を示す断面図であり、第5図は、凹部を用いた易変形部の別の構成例を示す断面図である。
【0058】
前述の実施の形態では、凹部7は、底面が上側第2延出部5の内部側に凸に湾曲した、いわゆる山形の断面形状となっているが、易変形部を構成する凹部の断面形状はこれに限定されない。例えば、第4図(a)の凹部7aのように、奥側ほど幅が狭くなる台形状の断面形状であってもよく、第4図(b)の凹部7bのように、奥側ほど幅が狭くなる三角形状の断面形状であってもよい。易変形部を構成する凹部の断面形状は、図示以外の多角形状であってもよい。なお、台形状の断面形状と、三角形状の断面形状とでは、台形状の断面形状のほうが好ましい。これは、キャビティ空間S3内に徐々に充填される発泡合成樹脂が上側第2延出部5の先端側に向かって進行する際に、凹部を形成する金型20の凸部25の断面形状が台形状である方が、この発泡合成樹脂が該凸部25を乗り越える際にエアを巻き込みにくくなり、欠肉等の不良が生じにくくなるためである。この場合、第1の実施の形態における凹部7と同様に、凹部7aの上側の側面と上側第2延出部5の前面とが交わる角部、凹部7aの下側の側面と上側第2延出部5の前面とが交わる角部、並びに、該凹部7aの上下の側面と底面とが交わる隅部は、それぞれ、これらの面同士が滑らかに連なるように湾曲した(Rの付いた)形状となっていることが好ましい。このように構成することにより、この凹部7aを形成する金型20の凸部25も、中型23の突出部24から緩やかに立ち上がり、その先端側の角が丸まった形状となるため、発泡合成樹脂が凸部25を乗り越える際にエアを巻き込む確率を一層低下させることができる。
【0059】
前述の実施の形態では、易変形部を構成する凹部7は、上側第2延出部5の前面に1個(1条)だけ設けられているが、第5図のように、上側第2延出部5の延出方向に間隔をおいて2個(2条)以上の凹部7が設けられてもよい。このように構成することにより、上側第2延出部5をより柔軟に屈曲ないし湾曲変形させることが可能となる。
【0060】
上記実施の形態はいずれも本発明の一例であり、本発明は図示以外の態様とされてもよい。
【0061】
例えば、上記の実施の形態では、シートパッド本体2の上側第2延出部5のみが後方へ引き起こされた形状となっているが、左右両側の第2延出部5も、後方へ引き起こされた形状とされてもよい。シートパッド本体2の下辺にも第1延出部4及び第2延出部5が設けられ、この下側第2延出部5も後方へ引き起こされた形状とされてもよい。
【0062】
上記の実施の形態では、凹部7は、第2延出部5の幅方向に連続して延在した溝状となっているが、凹部7の形状はこれに限定されない。例えば、複数個の凹部7を第2延出部5の幅方向にミシン目状に断続的に形成してもよい。
【0063】
上記の実施の形態は、シートパッドへの本発明の適用例を示しているが、本発明は、シートパッド以外の発泡合成樹脂成形体にも適用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 シートパッド(発泡合成樹脂成形体)
2 シートパッド本体
3 主体部
4 第1延出部
5 第2延出部
6 凹所
7 凹部
10 補強材
20 金型
21 上型
22 下型
23 中型
24 突出部
25 凸部
30 シートフレーム
40 表皮材
【技術分野】
【0001】
本発明は、主体部と、該主体部から延出した延出部とが一体に成形された発泡合成樹脂成形体に係り、特に使用時には、延出部を、その先端側が主体部に接近するように変形させて使用される発泡合成樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートや家屋内に設置されるソファー等のシートは、一般的に、軟質ポリウレタンフォーム又は半硬質ポリウレタンフォーム等の発泡合成樹脂よりなるシートパッドと、このシートパッドを支持するシートフレームと、このシートパッドの外面に被着される表皮材とを有している。
【0003】
第6図は、従来例に係るシートパッドの縦断面図であり、第7図は、このシートパッドを成形するための金型の要部縦断面図である。
【0004】
シートパッド100は、着座者に当接する主体部101と、該主体部101の周縁部から該主体部101の裏面側へ延出した第1延出部102と、該第1延出部102の延出方向の先端側から主体部101の裏面の中央側へ延出した第2延出部103とを有し、該主体部101、第1延出部102及び第2延出部103によって囲まれた凹所104にシートフレーム120(第11図参照)を係合させるように構成されている。主体部101、第1延出部102及び第2延出部103は一体的に形成されている。主体部101の裏面、並びに、第1延出部102及び第2延出部103の凹所104側の面に沿って補強布105が配設されている。
【0005】
このシートパッド100を発泡成形するための金型110は、上型111と、下型112と、該上型111にセットされた中型113とを有している。この下型112のキャビティ面によりシートパッド100の正面(着座者側の面)側が成形され、上型111及び中型113のキャビティ面によりシートパッド100の裏面側が成形される。中型113の側面から、前記凹所104を形成するための突出部114が突設されている。この下型112のキャビティ底面と中型113の下面との間のキャビティ空間S101によりシートパッド100の主体部101が成形され、この突出部114の突出方向の先端面と下型112のキャビティ側面との間のキャビティ空間S102により第1延出部102が成形され、該突出部114の上面と上型111のキャビティ天井面との間のキャビティ空間S103により第2延出部103が成形される。
【0006】
シートパッド100を発泡成形する場合、中型113に補強材105を被着させ、下型112内に発泡合成樹脂原料115を注入し、上型111と下型112とを型締めして該発泡合成樹脂原料115を加熱・発泡させる。発泡合成樹脂原料115は、その発泡の進行に伴い、キャビティ空間S101からキャビティ空間S102,S103をこの順に充填していく。これにより、主体部101、第1延出部102及び第2延出部103が一体に形成される。また、これらの裏面(第1延出部102及び第2延出部103においては前記凹所104の内側に臨む面)に補強材105が一体化される。金型110内のガスは、第2延出部103の延出方向の基端側(以下、基端側と略す。)に位置する上型111と下型112とのパーティングライン116、及び、第2延出部103の延出方向の先端側(以下、先端側と略す。)に位置する上型111と中型113との間のパーティングライン117を通って金型110外に排出される。
【0007】
第6図のように、第2延出部103の主体部101と反対側の面が該主体部101から離反方向に凸に湾曲しており、該第2延出部103の延出方向の途中部が、最も主体部101から離反方向に膨らみ出した最大膨出部103aとなっている場合、第7図の通り、キャビティ空間S103に臨む上型111のキャビティ天井面のうちパーティングライン116,117同士の間の部分は、上方へ向かって凹曲した凹形状部111aとなる。この凹形状部111aにおいては、上型111のキャビティ天井面は、パーティングライン116,117よりも高位となる。この場合、凹形状部111aにガスが残留し易くなり、第2延出部103にボイド(製品の欠け)等の成形不良が生じるおそれがある。
【0008】
特許文献1(特開2009−90549号公報)には、第2延出部103が先端側ほど主体部101の裏面から離隔した形状にてシートパッドを発泡成形することにより、第2延出部103にボイド等の成形不良が生じることを防止することが記載されている。第8図は特許文献1のシートパッドの斜視図、第9図は第8図のIX−IX線に沿う断面図、第10図は特許文献1のシートパッドを発泡成形するための金型の要部縦断面図、第11図は特許文献1のシートパッドをシートフレームに取り付けて表皮材を被着させた状態を示す縦断面図である。
【0009】
特許文献1のシートパッド100Aは、第8,9図の通り、第2延出部103に、その第1延出部102からの延出方向と直交方向に間隔をおいて1対のスリット106,106が設けられており、該第2延出部103のうち、これらのスリット106,106同士の間の部分が、他の部分よりも主体部101と反対方向へ引き起こされ、その先端側ほど主体部101の裏面から離隔した形状となっている。
【0010】
このシートパッド100Aを発泡成形するための金型110Aにおいては、第10図の通り、キャビティ空間S103は、第2延出部103が先端側ほど主体部101の裏面から離隔した形状となっている分だけ、全体として該第2延出部103の先端側に向かって上り勾配となっており、第7図の金型110と比べて、パーティングライン117がキャビティ空間S103内の高い位置に配置されているため、キャビティ天井面の凹形状部111aにガスが残留しにくく、比較的スムーズにパーティングライン117から金型110外にガスが排出される。その結果、第2延出部103にボイド等の成形不良が生じることが防止される。
【0011】
このシートパッド100Aを用いてシート130を構成する場合、第11図の通り、シートパッド100Aの裏面側の凹所104にシートフレーム120の端部を係合させて該シートフレーム120の正面側にシートパッド100Aの主体部101を配置する。その後、主体部101から離反方向に引き起こされていた第2延出部103を該主体部101側へ屈曲変形(湾曲変形も含む。以下、同様。)させてシートフレーム120の裏面に当接させ、この状態でシートパッド100Aの外面に表皮材107を被着させる。第2延出部103は、この表皮材107により、シートフレーム120の裏面に当接した状態に拘束される。その結果、第6図のシートパッド100を用いた場合と同様の形状のシートが構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−90549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記特許文献1のシートパッド100Aにおいて、第2延出部103を主体部101側へ屈曲変形させたときに、この屈曲変形に伴って第2延出部103が若干伸長するため、屈曲変形させた後の第2延出部103の先端部が所期の位置からずれた位置に配置されるおそれがある。これを防止するためには、第2延出部103の屈曲変形に伴って該第2延出部103がどの程度伸長するかシミュレーション等により明らかにする必要があり、設計が煩雑なものとなる。
【0014】
また、このシートパッド100Aにあっては、第2延出部103は、その途中部が肉厚となっており、剛性が高いので、第2延出部103を主体部101側へ屈曲変形させにくい。また、第2延出部103を屈曲変形させた後も、この第2延出部103を拘束するために、表皮材107を剛性の高いものとする必要がある。
【0015】
本発明は、上記従来の問題点を解消し、簡易な構成にて、延出部を主体部側に比較的容易に且つ精度良く屈曲変形させることが可能であり、且つ屈曲変形させた後に、その状態を比較的容易に維持させることが可能な発泡合成樹脂成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1の発泡合成樹脂成形体は、主体部と、該主体部から延出した延出部とを有し、発泡合成樹脂が該主体部から該延出部の延出方向の先端側に向かって膨張することにより、該主体部及び延出部が該発泡合成樹脂により一体に成形された発泡合成樹脂成形体であって、該発泡合成樹脂成形体の使用時には、該延出部を、該先端側が該主体部に接近するように変形させて使用される発泡合成樹脂成形体において、該延出部に易変形部が設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項2の発泡合成樹脂成形体は、請求項1において、前記延出部を、その先端側が前記主体部に接近するように変形させた状態において、該延出部の該主体部と反対側の面は、該主体部から離反方向に凸に湾曲しており、該延出部の前記延出方向の途中部が、最も該主体部から離反方向に膨らみ出した最大膨出部となっており、前記易変形部は、少なくとも一部が、該延出部の前記延出方向の基端側から先端側に向かって該最大膨出部と同一距離にあることを特徴とするものである。
【0018】
請求項3の発泡合成樹脂成形体は、請求項1又は2において、前記延出部の外面のうち、該延出部をその先端側が前記主体部に接近するように変形させたときに、該主体部と対向する側の面(以下、主体部との対向面という。)に、該延出部の内部側に凹嵌する凹部が設けられており、該凹部により前記易変形部が構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項4の発泡合成樹脂成形体は、請求項3において、前記凹部は、前記延出部の前記延出方向と直交方向に延在した溝状であることを特徴とするものである。
【0020】
請求項5の発泡合成樹脂成形体は、請求項3又は4において、前記延出部の前記延出方向と平行方向且つ該延出部の前記主体部との対向面と直交方向における前記凹部の断面形状は、該凹部の奥側ほど幅が狭くなる形状となっていることを特徴とするものである。
【0021】
請求項6の発泡合成樹脂成形体は、請求項5において、前記凹部の底面は、前記延出部の内部側に凸に湾曲していることを特徴とするものである。
【0022】
請求項7の発泡合成樹脂成形体は、請求項5において、前記凹部の前記断面形状は台形状であることを特徴とするものである。
【0023】
請求項8の発泡合成樹脂成形体は、請求項1ないし7のいずれか1項において、該発泡合成樹脂成形体はシートパッドであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の発泡合成樹脂成形体にあっては、延出部に易変形部が設けられているので、発泡合成樹脂成形体の使用時には、延出部を比較的容易に主体部に対し接近方向に屈曲変形させることができると共に、比較的容易にこの屈曲変形状態を維持させることができる。また、延出部に易変形部を設けることにより、延出部の屈曲変形に伴う該延出部の延出方向への伸長をこの易変形部で吸収ないし抑制することができるため、屈曲変形させた後の延出部の先端部を比較的精度良く所期の位置に配置することが可能となる。
【0025】
請求項2の通り、易変形部を、少なくとも一部が延出部の基端側から該延出部の最大膨出部と同一距離にあるように設けることにより、延出部の屈曲変形の一層の容易化、及び、屈曲変形後の延出部の先端部の配置精度の一層の向上を図ることができる。
【0026】
請求項3の通り、延出部の主体部との対向面に凹部を形成することにより、簡易な構成にて延出部に易変形部を設けることができる。また、延出部を主体部側へ屈曲変形させたときに、この凹部は、延出部の延出方向における幅が小さくなるように変形するため、延出部の屈曲変形に伴う該延出部の延出方向への伸長がこの凹部の変形により吸収される。これにより、延出部を主体部側へ屈曲変形させた後の該延出部の先端部の配置精度を向上させることができる。
【0027】
請求項4の通り、この凹部は、延出部の延出方向と直交方向(以下、延出部の幅方向という。)に延在した溝状であることが好ましい。このように構成することにより、延出部をその幅方向に均等に屈曲変形させることができる。
【0028】
請求項5の通り、延出部の延出方向と平行方向且つ該延出部の主体部との対向面と直交方向における凹部の断面形状は、該凹部の奥側ほど幅が狭くなる形状となっていることが好ましい。このように構成することにより、発泡合成樹脂成形体の成形時に、発泡合成樹脂がこの凹部をスムーズに乗り越えて延出部の基端側から先端側に膨張することができる。
【0029】
この場合、請求項6の通り、凹部の底面は、延出部の内部側に凸に湾曲した湾曲面となっていることが好ましい。このように構成することにより、発泡合成樹脂成形体の成形時に、発泡合成樹脂がよりスムーズにこの凹部を乗り越えることができる。また、請求項7の通り、この凹部の断面形状を、奥側ほど幅が狭くなる台形状とした場合にも、発泡合成樹脂が比較的スムーズにこの凹部を乗り越えることができる。
【0030】
請求項8の通り、本発明の発泡合成樹脂成形体は、シートパッドに適用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施の形態に係る発泡合成樹脂成形体としてのシートパッドの断面図である。
【図2】図1のシートパッドを製造するための金型の断面図である。
【図3】図1のシートパッドがシートフレームに取り付けられ、該シートパッドの外面に表皮材が被着された状態を示す断面図である。
【図4】易変形部を構成する凹部の他の形状例を示す断面図である。
【図5】易変形部の他の構成例を示す断面図である。
【図6】従来例に係るシートパッドの断面図である。
【図7】図7のシートパッドを製造するための金型の断面図である。
【図8】別の従来例に係るシートパッドの斜視図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿う断面図である。
【図10】図8のシートパッドを製造するための金型の断面図である。
【図11】図8のシートパッドがシートフレームに取り付けられ、該シートパッドの外面に表皮材が被着された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、この実施の形態では、発泡合成樹脂成形体として、車両用シートの背もたれ部を構成するバックパッドを例示しているが、本発明は、これ以外の発泡合成樹脂成形体、例えばシートの腰掛部を構成するクッションパッドなど、種々の発泡合成樹脂成形体に適用可能である。
【0033】
第1図は、実施の形態に係る発泡合成樹脂成形体としてのシートパッドの上端付近の縦断面図であり、第2図は、このシートパッドを製造するための金型の第1図に対応する部分の縦断面図であり、第3図は、このシートパッドがシートフレームに取り付けられ、該シートパッドの外面に表皮材が被着された状態を示す、第1図に対応する部分の縦断面図である。以下、上下方向、左右方向及び前後方向は、このシートパッドを用いて構成されたシートの着座者にとっての上下方向、左右方向及び前後方向と一致するものとする。
【0034】
この実施の形態では、発泡合成樹脂成形体は、車両用シートを構成するシートパッド1である。特に、この実施の形態では、該シートパッド1は、シートの背もたれ部50(第3図)を構成するバックパッドである。このシートパッド1は、ポリウレタンフォーム等の発泡合成樹脂よりなるシートパッド本体2と、該シートパッド本体2の後面に沿って配設された補強材10とを備えている。補強材10は、シートパッド本体2と一体成形により一体化されている。このシートパッド本体2を発泡成形するための金型20の構成、並びにこの金型20を用いたシートパッド1の製造方法については後で詳しく述べる。このシートパッド1は、背もたれ部50のシートフレーム(バックフレーム)30に取り付けられ、表皮材40によって外面が被覆されるものとなっている。
【0035】
第1図の通り、シートパッド本体2は、シートフレーム30の前面側を覆う主体部3と、該主体部3の後面の上辺及び左右の側辺からそれぞれ後方へ延出した第1延出部4と、該第1延出部4の後端から該主体部3の後面の中央側へ延出した第2延出部5とを有している。この実施の形態では、これら一連の第1延出部4及び第2延出部5により、請求項1における延出部が構成されている。なお、第1,3図では、主体部3の上辺から延出した第1延出部4及びこれに連なる第2延出部5のみ図示されている。これらの主体部3、第1延出部4及び第2延出部5は一体的に形成されている。また、第1延出部4及び第2延出部5は、主体部3の後面の上辺及び左右の側辺に沿って連続して形成されている。これらの主体部3、第1延出部4及び第2延出部5によって囲まれた空間は、シートフレーム30の上辺及び左右の側辺がそれぞれ係合する凹所6となっている。この凹所6は、主体部3の後面の中央側に向かって開放している。なお、シートパッド本体2の主要部分の構成はこれに限定されない。主体部3の後面の下辺にも第1延出部4及び第2延出部5が設けられてもよい。
【0036】
このシートパッド1にあっても、前述の第8,9図のシートパッド100Aと同様に、主体部3の上辺に沿う第2延出部5(以下、上側第2延出部5という。)には、左右方向に間隔をおいて1対のスリット(図示略)が設けられており、上側第2延出部5のうち、これらのスリット同士の間の部分が、他の部分よりも後方(主体部3と反対方向)へ引き起こされ、その先端側ほど主体部3の裏面から離隔した形状となっている。以下、単に上側第2延出部5というときには、このスリット同士の間の、後方へ引き起こされた部分を指す。
【0037】
この上側第2延出部5の前面(主体部3との対向面)に、易変形部を構成する凹部7が設けられている。この実施の形態では、該凹部7は、左右方向に延在した溝状となっている。この溝状の凹部7は、上側第2延出部5の全幅にわたって連続して形成されており、凹部7の左右両端側は、それぞれ前記スリットに達している。上側第2延出部5の延出方向と平行方向且つ該上側第2延出部5の前面と直交方向における凹部7の断面形状は、該凹部7の奥側ほど幅が狭くなる形状となっていることが好ましい。この実施の形態では、第1図の通り、凹部7は、底面が上側第2延出部5の内部側に凸に湾曲した、いわゆる山形の断面形状となっている。また、凹部7の上側の側面と上側第2延出部5の前面とが交わる角部、並びに、凹部7の下側の側面と上側第2延出部5の前面とが交わる角部は、それぞれ、これらの面同士が滑らかに連なるように湾曲した(Rの付いた)形状となっている。なお、凹部7の断面形状はこれに限定されない。
【0038】
この実施の形態では、第1図の通り、上側第2延出部5は、この凹部7よりも先端側の部分が後方へ引き起こされた形状となっている。第1図の二点鎖線は、この上側第2延出部5の先端側を前方(主体部3側)に屈曲変形させてシートフレーム30の後面に当接させたときの該上側第2延出部5の先端側の位置を示している。上側第2延出部5が後方へ引き起こされた状態における該上側第2延出部5の先端部の前面と、該上側第2延出部5が前方へ屈曲変形された状態における該上側第2延出部5の先端部の前面とのなす角θ(第1図)は20°以下特に5〜15°程度であることが好ましい。なお、このθの好適範囲は、本実施の形態のように、予め第1延出部4が主体部3の後方に向かって延出し、第2延出部5が該第1延出部4の先端から主体部3の後面の中央側に向かって延出した形状に延出部が成形されている場合のものであり、例えば延出部が主体部3から上方や側方(主体部3の座面の延長方向)へ一直線状に延出するように成形され、この延出部を主体部3の後面へ回り込ませるように大きく屈曲変形させる場合には、この限りではない。
【0039】
この実施の形態では、上側第2延出部5の後面(主体部3と反対側の面)は、後方に凸の湾曲面となっている。以下、上側第2延出部5のうち、該上側第2延出部5の先端側を主体部3側に屈曲変形させてシートフレーム30の後面に当接させた状態において、その後面が最も後方へ膨らみ出した部分を最大膨出部5aという。第3図の通り、この最大膨出部5aは、上側第2延出部5の上下方向の途中部に位置している。凹部7は、この最大膨出部5aと重なるように(少なくとも一部が最大膨出部5aと同じ高さに位置するように)配置されていることが好ましく、特に凹部7の最深部が最大膨出部5aと同じ高さに位置するように配置されていることが最も好ましいが、凹部7の配置はこれに限定されない。凹部7は、最大膨出部5aよりも上側第2延出部5の先端側又は後端側にずれて配置されていてもよい。この場合、上側第2延出部5の先端から最大膨出部5aまでの距離をLとすると、凹部7は、上側第2延出部5の先端からこのLの50〜150%、特に75〜125%離隔していることが好ましい。なお、凹部7は、上側第2延出部5の先端側をシートフレーム30の後面に当接させたときに、該シートフレーム30と干渉しない位置に配置されていることが好ましい。
【0040】
凹部7の深さは、発泡合成樹脂の発泡倍率、第2延出部5の形状、最大膨出部5aの厚み等に応じて適宜選択可能であるが、最大膨出部5aから凹部7の底面までの高さHが5〜25mm、特に10〜20mmであることが好ましい。なお、発泡倍率を高く設定する場合、キャビティ空間に充填される際の発泡合成樹脂の体積が大きくなるため、上記高さHを高く設定することが好ましい。これにより、金型20内において、この凹部7を形成するための凸部25の上側のキャビティ空間が十分に確保され、樹脂破断等の不良を防ぐことができる。
【0041】
このシートパッド1の基本的な構成は、上側第2延出部5の主体部3との対向面に、易変形部を構成する凹部7が設けられていることを除いて、実質的に、前述の第8,9図のシートパッド100Aと同様である。
【0042】
次に、シートパッド1を成形するための金型20について説明する。第2図の通り、この実施の形態では、金型20は、上型21と、下型22と、該上型21にセットされた中型23とを有している。この実施の形態でも、前述の第10図の金型110Aと同様に、下型22のキャビティ面によりシートパッド本体2の前面側が成形され、上型21及び中型23のキャビティ面によりシートパッド本体2の後面側が成形される。以下、便宜上、金型20の各部の方向をシートパッド本体2の上下方向、左右方向及び前後方向に対応させて該金型20の各部の構成について説明する(即ち、以下、第2図における左右方向を上下方向とし、第2図における下方を前方とし、第2図における上方を後方とし、第2図の紙面と垂直方向を左右方向として金型20の各部の構成について説明する。)。
【0043】
中型23の上端面及び左右の側面からは、前記凹所6を形成するための突出部24が突設されている。この突出部24は、中型23の上端面から左右の側面にかけて連続して形成されている。下型22のキャビティ底面と中型23の前面との間のキャビティ空間S1によりシートパッド本体2の主体部3が成形され、突出部24の突出方向の先端面と下型22のキャビティ側面との間のキャビティ空間S2により第1延出部4が成形され、該突出部24の後面と上型21のキャビティ天井面との間のキャビティ空間S3により第2延出部5が成形される。キャビティ空間S3に臨む上型21のキャビティ天井面は、突出部24の後面から離反方向に凹曲した凹形状部21aとなっている。
【0044】
上型21と下型22との間のパーティングライン26は、上側第2延出部5の基端付近に位置し、上型21と中型23との間のパーティングライン27は、上側第2延出部5の先端付近に位置している。
【0045】
キャビティ空間S3に臨む突出部24の後面からは、凹部7を形成するための凸部25が突設されている。この実施の形態では、該凸部25は、左右方向に延在した凸条よりなる。この凸部25の外面は、突出部24の後面から緩やかに立ち上がり、且つ先端側はキャビティ空間S1の内方に凸に湾曲した湾曲面となっている。この凸部25の外面形状は、凹部7の内面形状と実質的に合致するものであり、突出部24の後面からの凸部25の突出高さは、凹部7の深さと実質的に同等であり、凸部25の幅及び延在長さも、それぞれ、凹部7の幅及び延在長さと実質的に同等である。
【0046】
後述の通り、この凸部25は、キャビティ空間S3内を上側第2延出部5の先端側に向かって膨張する発泡合成樹脂原料を上型21のキャビティ天井面まで十分に充填させる作用を奏する。その際、キャビティ空間S3内において発泡合成樹脂原料が全体として上側第2延出部5の先端側に向かって均等に流れるようにするために、突出部24の後面からの凸部25の突出高さは、該凸部25の延在方向の一端側から他端側まで一定となっていることが好ましい。なお、凸部25の形状はこれに限定されない。
【0047】
第2図の通り、キャビティ空間S3内に臨む突出部24の後面のうち凸部25よりも上側第2延出部5の先端側の領域は、該先端側ほど高位となるように傾斜している。また、キャビティ空間S3に臨む上型21のキャビティ天井面(凹形状部21a)も、全体として上側第2延出部5の先端側ほど高位となるように傾いている。なお、上側第2延出部5の先端側のパーティングライン27は、キャビティ空間S3内において最も高い位置に配置されていることが望ましいが、それよりも若干(例えば5〜10mm程度)低い位置に配置されていてもよい。
【0048】
この金型20の基本的な構成も、キャビティ空間S3に臨む突出部24の後面に凸部25が設けられていることを除いて、実質的に、前述の第10図の金型110Aと同様である。
【0049】
この金型20を用いてシートパッド1を製造する場合、まず、上型21と下型22とを型開きし、中型23に補強材10を被着させる。この際、補強材10を中型23に密着させ、この補強材10のうち凸部25に重なった部分を、該凸部25の外面に沿ってキャビティ空間S3内に突出した形状とする。
【0050】
次に、下型22内に発泡合成樹脂原料を注入し、上型21と下型22とを型締めして該発泡合成樹脂原料を加熱・発泡させる。この発泡合成樹脂原料は、キャビティ空間S1,S2,S3をこの順に充填していく。これにより、シートパッド本体2の主体部3、第1延出部4及び第2延出部5が一体に形成される。また、これらの裏面(第1延出部4及び第2延出部5においては前記凹所6の内側に臨む面)に補強材10が一体化される。
【0051】
この金型20にあっても、前述の第10図の金型110Aにおけるキャビティ空間S103と同様に、キャビティ空間S3は、上側第2延出部5が先端側ほど主体部3の後面から離隔した形状となっている分だけ、全体として該上側第2延出部5の先端側に向かって上り勾配となっており、パーティングライン27がキャビティ空間S3内の高い位置に配置されているため、キャビティ天井面の凹形状部21aにガスが残留しにくく、比較的スムーズにパーティングライン27から金型20外にガスが排出される。その結果、上側第2延出部3にボイド等の成形不良が生じることが防止される。
【0052】
この金型20にあっては、キャビティ空間S3内で膨張する発泡合成樹脂原料は、第2図の通り、突出部24の後面からキャビティ空間S3内に突出した凸部25を乗り越えて上側第2延出部5の先端側へ流れる。この凸部25を乗り越えるときに、発泡合成樹脂原料の流れは、上型21のキャビティ天井面を指向するようになる。これにより、発泡合成樹脂原料がキャビティ空間S3内を上型21のキャビティ天井面まで十分に充填するようになり、上側第2延出部5に、一層、ボイド等の成形不良が発生しにくくなる。
【0053】
キャビティ空間S1〜S3を充填した発泡合成樹脂が硬化した後、上型21と下型22とを型開きしてシートパッド1を脱型する。その後、必要に応じバリ取り等の仕上げ作業を行うことにより、シートパッド1が完成する。
【0054】
このシートパッド1を用いてシートの背もたれ部50を構成する場合、このシートパッド1をシートフレーム30に取り付け、このシートパッド1の外面に表皮材40を被着させる。この際、第3図の通り、まず、シートパッド1の後面の上側及び左右両側の凹所6にシートフレーム30の上端部及び左右両端部をそれぞれ係合させて該シートフレーム30の前面側にシートパッド1の主体部3を配置する。その後、後方に引き起こされていた上側第2延出部5を前方へ屈曲変形させてシートフレーム30の後面に当接させる。そして、この状態でシートパッド1の外面に表皮材40を被着させる。上側第2延出部5は、この表皮材40により、シートフレーム30の後面に当接した状態に拘束される。これにより、背もたれ部50が構成される。
【0055】
このシートパッド1にあっては、上側第2延出部5の前面に凹部7が設けられており、この凹部7により、該上側第2延出部5の上下方向の途中部に、前方への屈曲変形が容易な易変形部が形成されている。これにより、シートパッド1をシートフレーム30に取り付けた後、上側第2延出部5を比較的容易に前方へ屈曲変形させてシートフレーム30の後面に当接させることができる。また、上側第2延出部5がシートフレーム30の後面から離反して元の位置に戻ろうとする力も比較的弱いので、表皮材40として比較的剛性の低いものを用いても、比較的容易に、上側第2延出部5をシートフレーム30の後面に当接した状態に維持することができる。また、このように上側第2延出部5に易変形部を設けたことにより、上側第2延出部5の前方への屈曲変形に伴う該上側第2延出部5の延出方向への伸長をこの易変形部で吸収ないし抑制することができるため、上側第2延出部5を前方へ屈曲変形させた後の該上側第2延出部5の先端部を比較的精度良くシートフレーム30の後面の所定位置に配置することができる。
【0056】
特に、この実施の形態では、該易変形部は、上側第2延出部5の前面に設けられた凹部7よりなり、上側第2延出部5を前方へ屈曲変形させたときに、この凹部7は、該上側第2延出部5の延出方向における幅が小さくなるように変形するため、上側第2延出部5の屈曲変形に伴う該上側第2延出部5の延出方向への伸長がこの凹部7の変形により吸収される。これにより、上側第2延出部5を前方へ屈曲変形させた後の該上側第2延出部5の先端部の配置精度を一層、向上させることができる。
【0057】
<易変形部を構成する凹部のその他の構成>
第4図(a),(b)は、それぞれ、易変形部を構成する凹部の別の形状例を示す断面図であり、第5図は、凹部を用いた易変形部の別の構成例を示す断面図である。
【0058】
前述の実施の形態では、凹部7は、底面が上側第2延出部5の内部側に凸に湾曲した、いわゆる山形の断面形状となっているが、易変形部を構成する凹部の断面形状はこれに限定されない。例えば、第4図(a)の凹部7aのように、奥側ほど幅が狭くなる台形状の断面形状であってもよく、第4図(b)の凹部7bのように、奥側ほど幅が狭くなる三角形状の断面形状であってもよい。易変形部を構成する凹部の断面形状は、図示以外の多角形状であってもよい。なお、台形状の断面形状と、三角形状の断面形状とでは、台形状の断面形状のほうが好ましい。これは、キャビティ空間S3内に徐々に充填される発泡合成樹脂が上側第2延出部5の先端側に向かって進行する際に、凹部を形成する金型20の凸部25の断面形状が台形状である方が、この発泡合成樹脂が該凸部25を乗り越える際にエアを巻き込みにくくなり、欠肉等の不良が生じにくくなるためである。この場合、第1の実施の形態における凹部7と同様に、凹部7aの上側の側面と上側第2延出部5の前面とが交わる角部、凹部7aの下側の側面と上側第2延出部5の前面とが交わる角部、並びに、該凹部7aの上下の側面と底面とが交わる隅部は、それぞれ、これらの面同士が滑らかに連なるように湾曲した(Rの付いた)形状となっていることが好ましい。このように構成することにより、この凹部7aを形成する金型20の凸部25も、中型23の突出部24から緩やかに立ち上がり、その先端側の角が丸まった形状となるため、発泡合成樹脂が凸部25を乗り越える際にエアを巻き込む確率を一層低下させることができる。
【0059】
前述の実施の形態では、易変形部を構成する凹部7は、上側第2延出部5の前面に1個(1条)だけ設けられているが、第5図のように、上側第2延出部5の延出方向に間隔をおいて2個(2条)以上の凹部7が設けられてもよい。このように構成することにより、上側第2延出部5をより柔軟に屈曲ないし湾曲変形させることが可能となる。
【0060】
上記実施の形態はいずれも本発明の一例であり、本発明は図示以外の態様とされてもよい。
【0061】
例えば、上記の実施の形態では、シートパッド本体2の上側第2延出部5のみが後方へ引き起こされた形状となっているが、左右両側の第2延出部5も、後方へ引き起こされた形状とされてもよい。シートパッド本体2の下辺にも第1延出部4及び第2延出部5が設けられ、この下側第2延出部5も後方へ引き起こされた形状とされてもよい。
【0062】
上記の実施の形態では、凹部7は、第2延出部5の幅方向に連続して延在した溝状となっているが、凹部7の形状はこれに限定されない。例えば、複数個の凹部7を第2延出部5の幅方向にミシン目状に断続的に形成してもよい。
【0063】
上記の実施の形態は、シートパッドへの本発明の適用例を示しているが、本発明は、シートパッド以外の発泡合成樹脂成形体にも適用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 シートパッド(発泡合成樹脂成形体)
2 シートパッド本体
3 主体部
4 第1延出部
5 第2延出部
6 凹所
7 凹部
10 補強材
20 金型
21 上型
22 下型
23 中型
24 突出部
25 凸部
30 シートフレーム
40 表皮材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主体部と、
該主体部から延出した延出部と
を有し、
発泡合成樹脂が該主体部から該延出部の延出方向の先端側に向かって膨張することにより、該主体部及び延出部が該発泡合成樹脂により一体に成形された発泡合成樹脂成形体であって、
該発泡合成樹脂成形体の使用時には、該延出部を、該先端側が該主体部に接近するように変形させて使用される発泡合成樹脂成形体において、
該延出部に易変形部が設けられていることを特徴とする発泡合成樹脂成形体。
【請求項2】
請求項1において、前記延出部を、その先端側が前記主体部に接近するように変形させた状態において、該延出部の該主体部と反対側の面は、該主体部から離反方向に凸に湾曲しており、該延出部の前記延出方向の途中部が、最も該主体部から離反方向に膨らみ出した最大膨出部となっており、
前記易変形部は、少なくとも一部が、該延出部の前記延出方向の基端側から先端側に向かって該最大膨出部と同一距離にあることを特徴とする発泡合成樹脂成形体。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記延出部の外面のうち、該延出部をその先端側が前記主体部に接近するように変形させたときに、該主体部と対向する側の面(以下、主体部との対向面という。)に、該延出部の内部側に凹嵌する凹部が設けられており、該凹部により前記易変形部が構成されていることを特徴とする発泡合成樹脂成形体。
【請求項4】
請求項3において、前記凹部は、前記延出部の前記延出方向と直交方向に延在した溝状であることを特徴とする発泡合成樹脂成形体。
【請求項5】
請求項3又は4において、前記延出部の前記延出方向と平行方向且つ該延出部の前記主体部との対向面と直交方向における前記凹部の断面形状は、該凹部の奥側ほど幅が狭くなる形状となっていることを特徴とする発泡合成樹脂成形体。
【請求項6】
請求項5において、前記凹部の底面は、前記延出部の内部側に凸に湾曲していることを特徴とする発泡合成樹脂成形体。
【請求項7】
請求項5において、前記凹部の前記断面形状は台形状であることを特徴とする発泡合成樹脂成形体。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項において、該発泡合成樹脂成形体はシートパッドであることを特徴とする発泡合成樹脂成形体。
【請求項1】
主体部と、
該主体部から延出した延出部と
を有し、
発泡合成樹脂が該主体部から該延出部の延出方向の先端側に向かって膨張することにより、該主体部及び延出部が該発泡合成樹脂により一体に成形された発泡合成樹脂成形体であって、
該発泡合成樹脂成形体の使用時には、該延出部を、該先端側が該主体部に接近するように変形させて使用される発泡合成樹脂成形体において、
該延出部に易変形部が設けられていることを特徴とする発泡合成樹脂成形体。
【請求項2】
請求項1において、前記延出部を、その先端側が前記主体部に接近するように変形させた状態において、該延出部の該主体部と反対側の面は、該主体部から離反方向に凸に湾曲しており、該延出部の前記延出方向の途中部が、最も該主体部から離反方向に膨らみ出した最大膨出部となっており、
前記易変形部は、少なくとも一部が、該延出部の前記延出方向の基端側から先端側に向かって該最大膨出部と同一距離にあることを特徴とする発泡合成樹脂成形体。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記延出部の外面のうち、該延出部をその先端側が前記主体部に接近するように変形させたときに、該主体部と対向する側の面(以下、主体部との対向面という。)に、該延出部の内部側に凹嵌する凹部が設けられており、該凹部により前記易変形部が構成されていることを特徴とする発泡合成樹脂成形体。
【請求項4】
請求項3において、前記凹部は、前記延出部の前記延出方向と直交方向に延在した溝状であることを特徴とする発泡合成樹脂成形体。
【請求項5】
請求項3又は4において、前記延出部の前記延出方向と平行方向且つ該延出部の前記主体部との対向面と直交方向における前記凹部の断面形状は、該凹部の奥側ほど幅が狭くなる形状となっていることを特徴とする発泡合成樹脂成形体。
【請求項6】
請求項5において、前記凹部の底面は、前記延出部の内部側に凸に湾曲していることを特徴とする発泡合成樹脂成形体。
【請求項7】
請求項5において、前記凹部の前記断面形状は台形状であることを特徴とする発泡合成樹脂成形体。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項において、該発泡合成樹脂成形体はシートパッドであることを特徴とする発泡合成樹脂成形体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−206310(P2012−206310A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72160(P2011−72160)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
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