説明

発泡成形体

【課題】クッション性、及び、繰り返し圧縮に対する耐疲労性に優れた発泡成形体を提供する。
【解決手段】基材樹脂中に気泡が分散した発泡成形体であって、前記気泡は、ポリマーを含有するシェルにコア剤として揮発性液体を内包する熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することにより形成されるものであり、平均直径が90〜300μm、直径のCV値が50%以下である発泡成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッション性、及び、繰り返し圧縮に対する耐疲労性に優れた発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用部材、又は、自動車、鉄道、線路、橋梁、建物等に用いられる部材として、従来から、ゴム、熱可塑性エラストマー等の基材樹脂を板状等に成形した、クッション性、制振性等の性能に優れた成形体が用いられている。また、クッション性、制振性等の性能を更に向上させるために、基材樹脂を発泡成形することが検討されている。
【0003】
基材樹脂を発泡成形する方法として、例えば、基材樹脂に、加熱すると分解してガスが発生するアゾジカルボンアミド等の化学発泡剤を加えて発泡成形する方法、炭酸ガス等のガスの溶解性を高めて基材樹脂に溶解させ、その後にガスの溶解性を下げることでガスを発生させる方法等が挙げられる。これらの方法によれば、例えば、直径が500μmを超えるような比較的大きな気泡を有する発泡成形体が得られる。
しかしながら、これらの方法で得られる発泡成形体には、クッション性は良好であるが繰り返し圧縮に対する耐疲労性が充分に得られないという問題があり、また、成形体としての強度が低く、使用時に成形体表面が膨れたり、引き裂かれたり、剥がれたりすることもある。
【0004】
また、基材樹脂を発泡成形する方法として、基材樹脂に、ポリマーを含有するシェルにコア剤として揮発性液体を内包する熱膨張性マイクロカプセルを加えて発泡成形する方法も提案されている。例えば、特許文献1には、ゴム質材料(A)からなるマトリックス中に、平均直径が200μm以下のミクロの大きさの球殻状の膨張中空微小球(B)が三次元的に均一に分散配置した複合構造の成形物からなり、かつゴム質材料(A)100重量部に対する膨張中空微小球(B)の割合が0.3〜5重量部である防振材が記載されている。
しかしながら、特許文献1に記載の防振材には、繰り返し圧縮に対する耐疲労性が改善される一方で、クッション性が不充分となるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−303524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、クッション性、及び、繰り返し圧縮に対する耐疲労性に優れた発泡成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基材樹脂中に気泡が分散した発泡成形体であって、前記気泡は、ポリマーを含有するシェルにコア剤として揮発性液体を内包する熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することにより形成されるものであり、平均直径が90〜300μm、直径のCV値が50%以下である発泡成形体である。
以下、本発明を詳述する。
【0008】
熱膨張性マイクロカプセルを用いた場合、得られる発泡成形体には熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することにより形成された気泡が分散することとなり、このような気泡は、熱膨張性マイクロカプセルのシェルにより形成されている。そのため、加熱すると分解してガスが発生する化学発泡剤を用いた場合等と比べて、熱膨張性マイクロカプセルを用いた場合には繰り返し圧縮に対する耐疲労性が改善され、一方で、クッション性が不充分となる。
【0009】
例えば、特許文献1の実施例においては、防振材中の膨張中空微小球の平均直径は70μm以下である。本発明者は、このように気泡の直径が小さく、更に、直径分布が広いという点に、クッション性が不充分となる原因があることを見出した。
本発明者は、基材樹脂中に、ポリマーを含有するシェルにコア剤として揮発性液体を内包する熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することにより形成された気泡が分散した発泡成形体において、気泡の直径を適度に大きい所定の範囲内とし、かつ、気泡の直径の分布を狭くすることにより、繰り返し圧縮に対する耐疲労性を改善しながらクッション性をも向上させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の発泡成形体は、基材樹脂中に気泡が分散した発泡成形体である。本明細書中、気泡とは、基材樹脂中に分散した空孔部分を意味する。
上記基材樹脂は、発泡成形に通常用いられる基材樹脂であれば特に限定されないが、ゴム又は熱可塑性エラストマーが好ましい。
本明細書中、ゴムとは、室温において弾性を示す高分子物質を意味する。上記ゴムは特に限定されず、天然ゴム(NR)であってもよく、合成ゴムであってもよい。上記合成ゴムとして、例えば、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンアクリロゴム(CR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロロヒドリンゴム(CO、ECO)、多硫化ゴム(T)等が挙げられる。これらのなかでは、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンアクリロゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)が好ましい。
【0011】
本明細書中、熱可塑性エラストマーとは、常温ではエラストマー、即ち、加硫ゴムの性質を示し、高温では熱可塑性を示す物質を意味する。
上記熱可塑性エラストマーは特に限定されず、例えば、スチレン系エラストマー(TPS)、オレフィン系エラストマー(TPO)、エステル系エラストマー(TPEE)、ウレタン系エラストマー(TPU)、アミド系エラストマー(TPAE)、塩ビ系エラストマー(TPVC)等が挙げられる。これらのなかでは、スチレン系エラストマー(TPS)、オレフィン系エラストマー(TPO)、エステル系エラストマー(TPEE)が好ましい。
【0012】
上記気泡は、平均直径の下限が90μm、上限が300μmである。上記気泡の平均直径が90μm未満であると、発泡成形体はクッション性が低下し、特に静剛度、即ち、静的なばね性が高くなって硬くなる。上記気泡の平均直径が300μmを超えると、発泡成形体は成形体としての強度が低下し、使用時に成形体表面が膨れる、引き裂かれる、剥がれる等の問題が発生しやすくなる。
上記気泡の平均直径の好ましい下限は100μm、好ましい上限は250μmであり、より好ましい下限は110μm、より好ましい上限は200μmである。
【0013】
上記気泡は、直径のCV値の上限が50%である。上記気泡の直径のCV値が50%を超えると、発泡成形体はクッション性が低下し、特に動剛度、即ち、動的なばね性が高くなって素早い圧縮に対して硬くなる。
上記気泡の直径のCV値の好ましい上限は45%であり、より好ましい上限は40%である。
【0014】
本明細書中、気泡の平均直径、及び、気泡の直径のCV値とは、発泡成形体をカミソリ等の鋭利な刃物、マイクロトーム、集束イオンビーム等を用いて切断し、得られた断面を白金、金等でスパッタリングした後、電子顕微鏡にて150倍等の倍率で観察し、ノギスを用いて任意の50個(n=50)の気泡の直径diをそれぞれ計測したとき、下記式(1)及び(2)により算出される値を意味する。なお、気泡が球状ではない場合、気泡の直径とは、気泡の最長径を意味する。
平均直径=(Σdi)/n (1)
直径のCV値(%)=(直径の標準偏差/平均直径)×100 (2)
【0015】
上記気泡は、ポリマーを含有するシェルにコア剤として揮発性液体を内包する熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することにより形成されるものである。
上記熱膨張性マイクロカプセルは、加熱により、上記シェルが可塑化するとともに上記コア剤が気化して蒸気圧が高くなり、膨張する。そのため、上記基材樹脂に上記熱膨張性マイクロカプセルを加えて発泡成形することにより、得られる発泡成形体には、上記熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することによって形成された気泡が分散することとなる。このような気泡は上記熱膨張性マイクロカプセルのシェルにより形成されており、これにより、本発明の発泡成形体は、繰り返し圧縮に対する耐疲労性に優れる。
【0016】
上記ポリマーは特に限定されないが、例えば、ニトリル系モノマーに由来する成分を有することが好ましい。上記ポリマーが上記ニトリル系モノマーに由来する成分を含有することにより、上記シェルは、高い耐熱性とガスバリア性とを有する。
上記ニトリル系モノマーは特に限定されず、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、フマルニトリル、又は、これらの混合物等が挙げられる。これらのなかでは、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルが特に好ましい。
【0017】
上記ポリマーは、カルボキシル基を有するモノマーに由来する成分を有することが好ましい。
上記カルボキシル基を有するモノマーは特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸が挙げられる。これらのなかでは、アクリル酸、及び、ガラス転移温度の高いポリマーを得ることのできるメタクリル酸が好ましい。
【0018】
なかでも、上記ポリマーは、アクリロニトリルに由来する成分とアクリル酸に由来する成分とを有するか、又は、メタクリロニトリルに由来する成分とメタクリル酸に由来する成分とを有することが好ましい。
これらの場合、成形時の加熱によってアクリロニトリル又はメタクリロニトリルに含まれるニトリル基と、アクリル酸又はメタクリル酸に含まれるカルボキシル基との環化反応が進行し、ポリアクリルイミド構造又はポリメタクリルイミド構造が形成されるため、上記シェルは、高い耐熱性と耐久性とを有する。
また、これらの場合には、ニトリル基を有する成分とカルボキシル基を有する成分との他の組み合わせの場合と比べて、上記ポリマーを得る際の共重合反応の反応性、及び、環化反応の反応性が高く、ポリアクリルイミド構造又はポリメタクリルイミド構造が形成されやすいと推測される。
【0019】
上記ポリマー中の上記カルボキシル基を有するモノマーに由来する成分の含有量は特に限定されないが、上記ポリマーを得る際、上記ニトリル系モノマーの配合量100重量部に対する上記カルボキシル基を有するモノマーの配合量の好ましい下限が5重量部、好ましい上限が100重量部である。上記カルボキシル基を有するモノマーの配合量が5重量部未満であると、上記カルボキシル基を有するモノマーを配合する効果を充分に得ることができず、上記シェルの耐熱性、耐久性等が低下することがある。上記カルボキシル基を有するモノマーの配合量が100重量部を超えると、上記シェルのガスバリア性が低下することがある。
上記ニトリル系モノマーの配合量100重量部に対する上記カルボキシル基を有するモノマーの配合量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は70重量部である。
【0020】
また、上記ポリマーは、上記カルボキシル基を有するモノマーに由来する成分を有する場合、更に、カルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマーに由来する成分を有することが好ましい。
この場合、成形時の加熱によってカルボキシル基と、カルボキシル基と反応可能な官能基との反応が進行し、上記シェルが高度に架橋されるため、上記シェルは、高い耐熱性と耐久性とを有する。
【0021】
上記カルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマーは特に限定されず、例えば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、マグネシウムモノアクリレート、ジンクモノアクリレート等が挙げられる。これらのなかでは、グリシジル(メタ)アクリレート、ジンクモノアクリレートが好ましい。なお、本明細書中、(メタ)アクリレートとは、メタクリレートとアクリレートとの両方を意味する。
【0022】
上記ポリマー中の上記カルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマーに由来する成分の含有量は特に限定されないが、上記ポリマーを得る際、上記ニトリル系モノマーの配合量100重量部に対する上記カルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマーの配合量の好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が30重量部である。上記カルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマーの配合量が0.01重量部未満であると、成形時の上記シェルの架橋度が低下することがある。上記カルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマーの配合量が30重量部を超えると、上記シェルのガスバリア性が低下することがある。
上記ニトリル系モノマーの配合量100重量部に対する上記カルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマーの配合量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は10重量部である。
【0023】
また、上記ポリマーは、上記ニトリル系モノマー、上記カルボキシル基を有するモノマー、上記カルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマー等と共重合することのできる他のモノマーに由来する成分を有していてもよい。
上記他のモノマーとして、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、分子量が200〜600のポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアリルホルマールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、上記他のモノマーとして、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、ジシクロペンテニルアクリレート等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、イソボルニルメタクリレート等のメタクリル酸エステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、スチレン等のビニルモノマー等も挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0024】
上記ポリマー中の上記他のモノマーに由来する成分の含有量は特に限定されないが、上記ポリマーを得る際、上記ニトリル系モノマーの配合量100重量部に対する上記他のモノマーの配合量の好ましい上限が40重量部である。上記他のモノマーの配合量が40重量部を超えると、上記シェルの耐熱性、耐久性、ガスバリア性等が低下することがある。
上記ニトリル系モノマーの配合量100重量部に対する上記他のモノマーの配合量のより好ましい上限は30重量部である。
【0025】
上記シェルは、例えば上記ポリマーの構成成分を調整すること等により、成形時に高度に架橋されたり、高い弾性率、ガスバリア性、耐久性等を有していたりすることが好ましい。これにより、上記熱膨張性マイクロカプセルは潰れにくくなり、即ち、成形時の熱及び剪断を受けても収縮しにくく、かつ、成形後には繰り返し圧縮を受けても破壊しにくくなり、発泡成形体の繰り返し圧縮に対する耐疲労性が向上する。
上記シェルは、上記ポリマーが上記カルボキシル基を有するモノマーに由来する成分を有する場合には、熱硬化性樹脂を含有することが好ましい。
この場合、成形時の加熱によってカルボキシル基と、熱硬化性樹脂との反応が進行し、上記シェルが高度に架橋されるため、上記シェルは、高い耐熱性と耐久性とを有する。
【0026】
上記熱硬化性樹脂は、カルボキシル基と反応することができれば特に限定されないが、カルボキシル基と反応可能な官能基を分子中に2つ以上有することが好ましい。上記熱硬化性樹脂として、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂等が挙げられる。これらのなかでは、エポキシ樹脂、フェノール樹脂が好ましい。
上記エポキシ樹脂は特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0027】
上記フェノール樹脂は特に限定されず、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂等が挙げられる。これらのなかでは、ノボラック型フェノール樹脂が好ましい。
【0028】
上記シェル中の上記熱硬化性樹脂の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は0.01重量%、好ましい上限は30重量%である。上記熱硬化性樹脂の含有量が0.01重量%未満であると、成形時に上記シェルに熱硬化特性が現れないことがある。上記熱硬化性樹脂の含有量が30重量%を超えると、上記シェルのガスバリア性が低下することがある。
上記シェル中の上記熱硬化性樹脂の含有量のより好ましい下限は0.1重量%、より好ましい上限は10重量%である。
【0029】
なお、上記ポリマーが上記カルボキシル基を有するモノマーに由来する成分を有する場合には、上記ポリマーが上記カルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマーに由来する成分を有することによっても、上記シェルが上記熱硬化性樹脂を含有することによっても、いずれの場合にも成形時に上記シェルが高度に架橋され、上記シェルは、高い耐熱性と耐久性とを有する。
ただし、上記ポリマーを得る際にカルボキシル基と、カルボキシル基と反応可能な官能基との反応が進行してしまうことによってその後の熱膨張が阻害されることを避けるためには、上記ポリマーが上記カルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマーに由来する成分を有するよりも、上記シェルが上記熱硬化性樹脂を含有することがより好ましい。
【0030】
上記揮発性液体は特に限定されず、例えば、エタン、エチレン、プロパン、プロペン、n−ブタン、イソブタン、ブテン、イソブテン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n−へキサン、ヘプタン、石油エーテル等の低分子量炭化水素、CClF、CCl、CClF、CClF−CClF等のクロロフルオロカーボン、テトラメチルシラン、トリメチルエチルシラン、トリメチルイソプロピルシラン、トリメチル−n−プロピルシラン等のテトラアルキルシラン等が挙げられる。これらのなかでは、イソブタン、n−ブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−へキサン、石油エーテル、及び、これらの混合物が好ましい。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0031】
上記熱膨張性マイクロカプセルは、上記気泡が後述する範囲の平均直径及び直径のCV値を満たすために、加熱により大きく膨張すること、即ち、熱膨張した後の粒子径が大きく、かつ、熱膨張する前の粒子径に対する膨張倍率が高いことが好ましい。
【0032】
上記熱膨張性マイクロカプセルは、熱膨張する前の平均粒子径の好ましい下限が20μm、好ましい上限が80μmである。熱膨張する前の平均粒子径が20μm未満であると、上記気泡が後述する範囲の平均直径より小さくなり、発泡成形体のクッション性が低下することがある。熱膨張する前の平均粒子径が80μmを超えると、上記気泡が後述する範囲の平均直径より大きくなり、発泡成形体の成形体としての強度が低下することがある。
上記熱膨張性マイクロカプセルは、熱膨張する前の平均粒子径のより好ましい下限が25μm、より好ましい上限が70μmである。
【0033】
上記熱膨張性マイクロカプセルは、単独で熱膨張した後の平均粒子径の好ましい下限が90μm、好ましい上限が300μmである。単独で熱膨張した後の平均粒子径が90μm未満であると、上記気泡が後述する範囲の平均直径より小さくなり、発泡成形体のクッション性が低下することがある。単独で熱膨張した後の平均粒子径が300μmを超えると、上記気泡が後述する範囲の平均直径より大きくなり、発泡成形体の成形体としての強度が低下することがある。
上記熱膨張性マイクロカプセルは、単独で熱膨張した後の平均粒子径のより好ましい下限が100μm、より好ましい上限が250μmである。
本明細書中、熱膨張性マイクロカプセルが単独で熱膨張するとは、基材樹脂に加えられることなく、熱膨張性マイクロカプセルのみで熱膨張することを意味する。
【0034】
また、上記熱膨張性マイクロカプセルは、熱膨張する前、及び、単独で熱膨張した後の粒子径のCV値の好ましい上限が50%である。熱膨張する前、及び、単独で熱膨張した後の粒子径のCV値が50%を超えると、上記気泡が後述する範囲の直径のCV値を満たすことができず、発泡成形体のクッション性が低下することがある。
上記熱膨張性マイクロカプセルは、熱膨張する前、及び、単独で熱膨張した後の粒子径のCV値のより好ましい上限が45%である。
【0035】
本明細書中、熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張する前の平均粒子径、及び、粒子径のCV値とは、堀場製作所社製「LA−920」等の粒度分布計を用いて得られる、体積平均粒子径、及び、粒子径のCV値を意味する。
本明細書中、熱膨張性マイクロカプセルの単独で熱膨張した後の平均粒子径、及び、粒子径のCV値とは、熱膨張性マイクロカプセルをアルミカップに採取し、180℃に調整したオーブン内に15分投入し、取り出して放冷後、堀場製作所社製「LA−920」等の粒度分布計を用いて得られる、体積平均粒子径、及び、粒子径のCV値を意味する。
【0036】
上記熱膨張性マイクロカプセルは、熱耐久性の好ましい下限が50℃である。熱耐久性が50℃未満であると、上記気泡が後述する範囲の平均直径より小さくなり、発泡成形体のクッション性が低下することがある。
上記熱膨張性マイクロカプセルの熱耐久性のより好ましい下限は55℃である。
【0037】
上記熱膨張性マイクロカプセルは、最大発泡変位の好ましい下限が500μmである。最大発泡変位が500μm未満であると、上記気泡が後述する範囲の平均直径より小さくなり、発泡成形体のクッション性が低下することがある。
上記熱膨張性マイクロカプセルの最大発泡変位のより好ましい下限は800μmである。
【0038】
本明細書中、熱膨張性マイクロカプセルの最大発泡変位、及び、熱耐久性とは、TAinstruments社製「TMA2940」等の熱機械分析装置(TMA)を用いて得られる、最大発泡変位(Dmax)、及び、最大発泡変位(Dmax)の1/2の変位を得られる温度幅(ΔT1/2)を意味する。
【0039】
上記熱膨張性マイクロカプセルは、上記基材樹脂との親和性が高いこと、即ち、上記基材樹脂と相溶しやすいこと(溶解度パラメータが近いこと)が好ましい。例えば、上記基材樹脂としてエステル系エラストマーを用いる場合には、エステル系エラストマーとメタクリル酸とは溶解度パラメータが近く、親和性が高いことから、上記シェルに含まれるポリマーがメタクリル酸に由来する成分を有することが好ましい。
更に、上記熱膨張性マイクロカプセルは、上記基材樹脂に対して化学反応性を有していることが好ましい。例えば、上記基材樹脂として、カルボキシル基を有するエステル系エラストマー又はアミド基を有するアミド系エラストマーを用いる場合には、上記シェルに含まれるポリマーが、カルボキシル基又はアミド基と化学反応性を有する、エポキシ樹脂又はフェノール樹脂、或いは、グリシジル(メタ)アクリレートに由来する成分を含むことが好ましい。
【0040】
本発明の発泡成形体は、静剛度、即ち、静的なばね性の好ましい上限が35N/mmである。静剛度が35N/mmを超えると、発泡成形体は硬くなり、クッション性が低下することがある。
本発明の発泡成形体の静剛度のより好ましい上限は30N/mmである。
【0041】
本発明の発泡成形体は、動剛度、即ち、動的なばね性の好ましい上限が45N/mmである。動剛度が45N/mmを超えると、発泡成形体は素早い圧縮に対して硬くなり、クッション性が低下することがある。
本発明の発泡成形体の動剛度のより好ましい上限は40N/mmである。
【0042】
本発明の発泡成形体は、動静比、即ち、動剛度を静剛度で除した値の好ましい上限が1.40である。動静比が1.40を超えると、発泡成形体は動的な圧縮、即ち、繰り返し圧縮等に対してダンパー効果が低くなることがある。
本発明の発泡成形体の動静比のより好ましい上限は1.35である。
【0043】
本発明の発泡成形体を製造する方法は特に限定されず、例えば、上記基材樹脂に上記熱膨張性マイクロカプセルを加えて混合し、成形機等に投入して発泡成形する方法、上記熱膨張性マイクロカプセルをポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のマスターバッチ用基材樹脂と熱混練してペレット状のマスターバッチを作製した後、上記基材樹脂にマスターバッチを加えて混合し、成形機等に投入して発泡成形する方法等が挙げられる。
発泡成形する際の成形方法は特に限定されず、例えば、押出成形、射出成形、プレス成形等が挙げられる。また、発泡成形する際のスクリューの形状及び回転数は特に限定されず、スクリューの回転による剪断力と滞留時間とを考慮して適宜設計すればよい。
【0044】
また、発泡成形する際には、上記熱膨張性マイクロカプセルが潰れないように、かつ、大きく膨張するように、低負荷で発泡成形を行うことが好ましく、より具体的には、押出成形時又は射出成形時の上記基材樹脂の溶融粘度は低いことが好ましいため、低粘度の基材樹脂を用いるか、成形温度を上げて上記基材樹脂の粘度を下げることが好ましい。
【0045】
本発明の発泡成形体を製造する際、上記熱膨張性マイクロカプセルの配合量は特に限定されないが、上記基材樹脂100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限が10重量部である。上記熱膨張性マイクロカプセルの配合量が1重量部未満であると、上記気泡の数が減少し、発泡成形体のクッション性が低下して硬くなることがある。上記熱膨張性マイクロカプセルの配合量が10重量部を超えると、上記気泡の数が増加し、発泡成形体は成形体としての強度が低下し、使用時に成形体表面が膨れる、引き裂かれる、剥がれる等の問題が発生しやすくなることがある。
上記熱膨張性マイクロカプセルの配合量は、上記基材樹脂100重量部に対するより好ましい下限が1.5重量部、より好ましい上限が8重量部である。
【0046】
本発明の発泡成形体を製造する際には、本発明の効果を損なわない範囲内で、上記熱膨張性マイクロカプセルに加えて、加熱すると分解してガスが発生するアゾジカルボンアミド等の化学発泡剤を配合してもよい。
上記化学発泡剤の配合量は、発泡成形体の繰り返し圧縮に対する耐疲労性を損なわないためには、上記熱膨張性マイクロカプセル100重量部に対する好ましい上限が50重量部である。
【0047】
本発明の発泡成形体は、クッション性、及び、繰り返し圧縮に対する耐疲労性に優れるため、例えば、医療用部材、又は、自動車、鉄道、線路、橋梁、建物等に用いられる部材として有用である。より具体的には、本発明の発泡成形体は、医療用チューブ、自動車のインパネ表示、グリップ、グラスランチャネル、ブーツ、ホース及びタイヤ、鉄道、線路及び橋梁の鉄道制振板及びレールパッド、建物の制振材、靴底、電線ケーブル等に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、クッション性、及び、繰り返し圧縮に対する耐疲労性に優れた発泡成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0050】
(製造例1)
重合反応容器に、水250重量部と、分散安定剤としてコロイダルシリカ(旭電化社製、20重量%)25重量部及びポリビニルピロリドン(BASF社製)0.8重量部と、塩化ナトリウム90重量部とを投入し、水性分散媒体を調製した。
次いで、アクリロニトリル(AN)30重量部、メタクリロニトリル(MAN)50重量部及びメタクリル酸(MAA)20重量部と、熱硬化性樹脂としてN,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)−4−(2,3−エポキシプロポキシ)アニリン0.2重量部及び4,4’−イソプロピリデンジフェノールと1−クロロ−2,3−エポキシプロパンとの重縮合物1重量部と、水酸化亜鉛0.3重量部と、揮発性液体としてペンタン27重量部及びイソオクタン5重量部と、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.8重量部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.6重量部とからなる油性混合物を水性分散媒体に添加し、懸濁させて、分散液を調製した。
得られた分散液をホモジナイザーで攪拌混合し、窒素置換した加圧重合器内へ仕込み、加圧(0.5MPa)しながら60℃で6時間、80℃で5時間反応させることにより、反応生成物を得た。得られた反応生成物について、ろ過と水洗を繰り返した後、乾燥することにより、熱膨張性マイクロカプセルAを得た。
【0051】
(製造例2)
重合反応容器に、水250重量部と、分散安定剤としてコロイダルシリカ(旭電化社製、20重量%)25重量部及びポリビニルピロリドン(BASF社製)0.8重量部と、塩化ナトリウム90重量部とを投入し、水性分散媒体を調製した。
次いで、アクリロニトリル(AN)50重量部、メタクリロニトリル(MAN)30重量部及びアクリル酸(AA)20重量部と、揮発性液体としてペンタン27重量部及びイソオクタン5重量部と、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.8重量部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.6重量部とからなる油性混合物を水性分散媒体に添加し、懸濁させて、分散液を調製した。
得られた分散液をホモジナイザーで攪拌混合し、窒素置換した加圧重合器内へ仕込み、加圧(0.5MPa)しながら60℃で6時間、80℃で5時間反応させることにより、反応生成物を得た。得られた反応生成物について、ろ過と水洗を繰り返した後、乾燥することにより、熱膨張性マイクロカプセルBを得た。
【0052】
(製造例3)
重合反応容器に、水250重量部と、分散安定剤としてコロイダルシリカ(旭電化社製、20重量%)25重量部及びポリビニルピロリドン(BASF社製)0.8重量部と、塩化ナトリウム90重量部とを投入し、水性分散媒体を調製した。
次いで、アクリロニトリル(AN)60重量部及びメタクリロニトリル(MAN)40重量部と、揮発性液体としてペンタン27重量部及びイソオクタン5重量部と、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.8重量部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.6重量部とからなる油性混合物を水性分散媒体に添加し、懸濁させて、分散液を調製した。
得られた分散液をホモジナイザーで攪拌混合し、窒素置換した加圧重合器内へ仕込み、加圧(0.5MPa)しながら60℃で6時間、80℃で5時間反応させることにより、反応生成物を得た。得られた反応生成物について、ろ過と水洗を繰り返した後、乾燥することにより、熱膨張性マイクロカプセルCを得た。
【0053】
(製造例4)
重合反応容器に、水250重量部と、分散安定剤としてコロイダルシリカ(旭電化社製、20重量%)25重量部及びポリビニルピロリドン(BASF社製)0.8重量部と、塩化ナトリウム90重量部とを投入し、水性分散媒体を調製した。
次いで、アクリロニトリル(AN)20重量部、メタクリロニトリル(MAN)30重量部、メタクリル酸メチル(MMA)40重量部及びメタクリル酸(MAA)10重量部と、揮発性液体としてペンタン27重量部及びイソオクタン5重量部と、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.8重量部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.6重量部とからなる油性混合物を水性分散媒体に添加し、懸濁させて、分散液を調製した。
得られた分散液をホモジナイザーで攪拌混合し、窒素置換した加圧重合器内へ仕込み、加圧(0.5MPa)しながら60℃で6時間、80℃で5時間反応させることにより、反応生成物を得た。得られた反応生成物について、ろ過と水洗を繰り返した後、乾燥することにより、熱膨張性マイクロカプセルDを得た。
【0054】
(製造例5)
コロイダルシリカの使用量を22重量部に変更したこと以外は熱膨張性マイクロカプセルAと同様にして、熱膨張性マイクロカプセルEを得た。
【0055】
(製造例6)
コロイダルシリカの使用量を18重量部に変更したこと以外は熱膨張性マイクロカプセルAと同様にして、熱膨張性マイクロカプセルFを得た。
【0056】
<熱膨張性マイクロカプセルの評価>
製造例で得られた熱膨張性マイクロカプセルについて以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0057】
(1)熱膨張する前の平均粒子径、及び、粒子径のCV値
粒度分布計(堀場製作所社製「LA−920」)を用いて、熱膨張性マイクロカプセルの体積平均粒子径、及び、粒子径のCV値を測定した。
【0058】
(2)単独で熱膨張した後の平均粒子径、及び、粒子径のCV値
熱膨張性マイクロカプセル約0.1gをアルミカップに採取し、180℃に調整したオーブン内に15分投入し、取り出して放冷後、粒度分布計(堀場製作所社製「LA−920」)を用いて、熱膨張性マイクロカプセルの体積平均粒子径、及び、粒子径のCV値を測定した。
【0059】
(3)最大発泡変位、及び、熱耐久性
熱機械分析装置(TMA)(TAinstruments社製「TMA2940」)を用いて、熱膨張性マイクロカプセルの最大発泡変位(Dmax)、及び、熱耐久性(最大発泡変位(Dmax)の1/2の変位を得られる温度幅、ΔT1/2)を測定した。
具体的には、熱膨張性マイクロカプセル25μgを直径7mm、深さ1mmのアルミ製容器に入れ、上から0.1Nの力を加えた状態で、5℃/分の昇温速度で80℃から300℃まで加熱し、測定端子の垂直方向における変位を測定した。変位が上がりはじめ、最大発泡変位の1/2に到達する温度をT1/2、その後、最大発泡変位(Dmax)をむかえ、変位が下がりはじめ、再び最大発泡変位の1/2に到達する温度をT1/2*とする。このとき、下記式(3)により、熱耐久性(最大発泡変位(Dmax)の1/2の変位を得られる温度幅、ΔT1/2)を算出した。
ΔT1/2=T1/2*−T1/2 (3)
【0060】
(実施例1〜8及び比較例1〜4)
表2又は3に示す粉体状又はペレット状のマスターバッチ用基材樹脂100重量部と、滑剤としてステアリン酸10重量部とをコニカル二軸押出機(永田製作所製「OSC−30」)で混練し、約100℃になったところで表2又は3に示す発泡剤100重量部を添加し、更に30秒間混練した後、押し出すと同時にペレット化し、マスターバッチペレットを得た。
なお、表2又は3において、PEとは低密度ポリエチレン樹脂(旭化成社製「サンファインPAK00720」)を意味し、EMMAとはエチレン−メタクリル酸メチル共重合体を意味し、EVAとはエチレン−酢酸ビニル共重合体を意味する。
【0061】
ペレット状のエステル系エラストマー(東レデュポン社製「ハイトレル#3078」)100重量部と、表2又は3に示す配合量のマスターバッチと、顔料マスターバッチ(東京インキ社製「カラーMB」)3重量部とを成形機(ユニオンプラスチックス社製「USV30−20 EXTORUDER」)で混合し、金型温度165℃、滞留時間1分、スクリュー回転数30rpmの条件で押出成形を行い、厚み10〜12mmの発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体を片刃カミソリ(フェザー社製)を用いて切断し、得られた断面を金でスパッタリングした後、電子顕微鏡にて150倍で観察し、ノギスを用いて任意の50個(n=50)の気泡の直径diをそれぞれ計測し、上述した式(1)及び(2)により、気泡の平均直径、及び、気泡の直径のCV値を算出した。
【0062】
<発泡成形体の評価>
実施例及び比較例で得られた発泡成形体について以下の評価を行った。結果を表2又は3に示した。
【0063】
(1)クッション性
以下のように発泡成形体の静剛度、動剛度及び動静比を求めることにより、クッション性を評価した。
(1−1)静剛度の測定
発泡成形体の表面に圧子(ステンレス製、Φ15mm×10mmの円柱状)を置き、このときの圧子の高さを0とした。静的材料試験機(「EZGraph」、島津製作所社製)を用いて、圧子に91.5Nの加重を60秒与えたときの圧子の変位(S1)を測定し、その後、圧子に320Nの加重を60秒与えたときの変位(S2)を測定し、下記式(4)から静剛度を算出した。
静剛度(N/mm)=(320−91.5)/(S2−S1) (4)
【0064】
(1−2)動剛度の測定
発泡成形体の表面に圧子(ステンレス製、Φ15mm×10mmの円柱状)を置き、このときの圧子の高さを0とした。テンシロン万能材料試験(「UTA−500」、エーアンドディー社製)を用いて、圧子に下限設定91.5N、上限設定320Nのサイクル加重を1000サイクルかけ、900サイクルから1000サイクルまでの上限加重での平均加重(FU)と圧子の平均変位(SU)、及び、下限加重での平均加重(FD)と圧子の平均変位(SD)を測定し、下記式(5)から動剛度を算出した。
動剛度(N/mm)=(FU−FD)/(SU−SD) (5)
【0065】
(1−3)動静比の測定
得られた静剛度と動剛度とを用いて、下記式(6)から動静比を算出した。
動静比=動剛度/静剛度 (6)
【0066】
(2)繰り返し圧縮に対する耐疲労性
発泡成形体の表面に圧子(Φ20mm)を置き、繰り返し疲労性試験機(サーボパルサー、島津製作所社製)を用いて、圧子に下限設定165N、上限設定661Nのサイクル加重を300万サイクルかけた。その後、300万サイクル後の発泡成形体の静剛度(以下疲労後静剛度)を測定した。
300万サイクルを行う前の静的なばね性(静剛度)に対する、300万サイクルを行った後の静的なばね性(疲労後静剛度)の変化率を下記式(7)から算出した。
耐疲労性(%)=(疲労後静剛度−静剛度)/静剛度×100 (7)
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、クッション性、及び、繰り返し圧縮に対する耐疲労性に優れた発泡成形体を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材樹脂中に気泡が分散した発泡成形体であって、
前記気泡は、ポリマーを含有するシェルにコア剤として揮発性液体を内包する熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することにより形成されるものであり、平均直径が90〜300μm、直径のCV値が50%以下である
ことを特徴とする発泡成形体。
【請求項2】
静剛度が35N/mm以下、動剛度が45N/mm以下、動静比が1.40以下であることを特徴とする請求項1記載の発泡成形体。
【請求項3】
熱膨張性マイクロカプセルは、熱膨張する前の平均粒子径が20〜80μm、熱膨張する前の粒子径のCV値が50%以下、熱耐久性が50℃以上、最大発泡変位が500μm以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の発泡成形体。
【請求項4】
熱膨張性マイクロカプセルは、単独で熱膨張した後の平均粒子径が90〜300μm、単独で熱膨張した後の粒子径のCV値が50%以下であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の発泡成形体。
【請求項5】
熱膨張性マイクロカプセルは、シェルに含まれるポリマーが、アクリル酸に由来する成分又はメタクリル酸に由来する成分を有することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の発泡成形体。
【請求項6】
熱膨張性マイクロカプセルは、シェルに含まれるポリマーが、アクリロニトリルに由来する成分とアクリル酸に由来する成分とを有することを特徴とする請求項5記載の発泡成形体。
【請求項7】
熱膨張性マイクロカプセルは、シェルに含まれるポリマーが、メタクリロニトリルに由来する成分とメタクリル酸に由来する成分とを有することを特徴とする請求項5記載の発泡成形体。
【請求項8】
熱膨張性マイクロカプセルは、シェルに含まれるポリマーが、更に、カルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマーに由来する成分を有することを特徴とする請求項5記載の発泡成形体。
【請求項9】
熱膨張性マイクロカプセルは、シェルが熱硬化性樹脂を含有することを特徴とする請求項5記載の発泡成形体。
【請求項10】
熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項9記載の発泡成形体。

【公開番号】特開2012−158618(P2012−158618A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16972(P2011−16972)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】