説明

発泡板材

【課題】 廃棄が可能なうえ難燃性、断熱性及び緩衝性を保持し、軽量で安価な発泡板材を提供する。
【解決手段】 紙、パルプ、天然繊維、再生繊維若しくは無機繊維からなる素材を不織布状若しくはロック状に絡合させたマット基材に、シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を塗着含浸させたうえ300℃以上の高温度で熱処理を施し発泡且ガラス化層を一体的に凝固固着させてなる構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は使用後の廃棄ができ、且施設や建物の内断熱板や熱機器装置等の断熱板、或いは輸送用緩衝材には極めて好適な発泡板材に関するものである。
【産業上の利用分野】
【0002】
今日の産業活動や生活活動には加熱保温や冷凍保冷等に亘り膨大な熱エネルギーが消費されてなるもので、かかる膨大な熱エネルギーの補給源たる電力やガスの生産には極めて莫大量の石炭、石油、天然ガス等の天然資源が燃焼消費され、而も莫大量の煤煙や排気ガスが排出され続けられてきており、天然資源の枯渇の問題はもとより長期に亘って排出され続けられている煤煙や排気ガスにより、大気汚染ばかりか炭酸ガスによる過度の温暖化が招来され、省力化と環境浄化が緊急且最大の課題とされるに至っている。
【0003】
ところで熱エネルギーの利用側面からの省エネルギーの対策として、施設や建物の空間環境を快適に保持するため多大なエネルギーを要する冷暖房機器の配備に際しては、かかる空間内の熱エネルギーの漏出や逸散を防止するために躯体内側や床裏面、天井裏面等に断熱板材を配設させることがなされている。
【0004】
この断熱板材は本来不燃性や耐火性に優れる発泡コンクリート板材やケイ酸カルシウム板材等の無機質断熱板材が望まれるものの、該無機質断熱板材はそのかさ比重も0.7乃至0.8以上と多重なうえ、断熱性の指標とされる熱伝導率(kcal/m・h・℃)も0.08〜0.09と断熱性にも劣るばかりか価格的にも割高であり、且可撓性にも欠けることから長尺状物の施工性が著しく悪い等の問題を抱えている。
【0005】
これがため現状ではポリスチレンやポリエチレン或いはポリウレタンやポリフェノール樹脂等の合成樹脂素材からなる発泡板材が軽量且安価で断熱性にも優れ、而も施工も容易になしえること等から暗黙裏に且多量の使用がなされてきたが、近年における防火防災面の強化に伴い、頻繁に不燃化や難燃化素材への代替指導や指摘がなされるに至っている。
【0006】
加えて加熱加温機器や冷凍保冷機器等の断熱板材としては、耐熱耐寒性と断熱性、及び強靭性も要求されるため、ポリウレタンやポリフェノール樹脂素材の硬質発泡板材が、これら機器の内部に挟着され若しくは注入充填されてなるが、使用後の廃棄に際しては機器の躯体部分より分別し且特段の焼却手段等を施さねばならぬ等、廃棄に際しては多大な労力や経費が強いられる問題を内在している。
【0007】
更に他の使用目的として緩衝材が挙げられるもので、今日では電子回路を内蔵してなる小型精密機器や電子機器等が国内はもとより海外においても多量に生産され消費されてなるため、これら小型精密機器や電子機器が多量に輸出入されている。
そしてこれら小型精密機器や電子機器等の輸出入には、コンテナ等の輸送用器具にダンボール箱内に包装収納させたうえ該輸送器具内にダンボールを積載させているが、輸送時には過酷な衝撃力の付加に加え、輸送器具内が極めて高温多湿な状況におかれる。
【0008】
これがため、従来における小型精密機器や電子機器等の輸出入に際しては、ダンボール箱や紙器等で内包装したうえ更に構造的に強靭なダンボール箱等の中包装箱内に、外部衝撃を緩和させるためのポリエチレンエアーキャップシートや、ポリスチレン若しくはポリウレタン等の発泡緩衝材を該中包装箱内面に若しくは内包装箱相互間に介在させたうえコンテナ等の輸送用器具内に収納積載させていた。
【0009】
然るに近年においては廃棄率の極めて高い包装材においては環境保護の見地より合成樹脂素材の使用禁止や自粛がなされるに至っている。
これがため紙素材を嵩高加工してなる緩衝材や、ポリ乳酸等の生分解性素材を発泡してなる生分解性緩衝材への代替が試みられているものの、輸送時の多湿に伴い紙素材からなる緩衝材は変形や崩形により緩衝性が喪失され、更に生分解性緩衝材においては高温に伴う縮合や変形が発生し緩衝性が減失するばかりか、コスト的にも割高である等実用性には依然として問題を抱えている。
【0010】
かかる経緯に鑑み発明者は紙やパルプ若しくは天然繊維や再生繊維或いは無機繊維等、比較的耐熱性に優れ且自己分解性素材を用いて不織布状若しくはロック状の嵩高に絡合させてマット基材となしたうえ、加熱処理により難燃化と発泡化及びガラス層化されるシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を塗着含浸させ一体的に凝固形成させることにより、前記問題を解決しえることを想到し本発明に至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は廃棄が可能で難燃性、断熱性及び緩衝性を保持するとともに、軽量且安価な発泡板材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の課題を解決するために用いた技術的手段は、比較的耐熱性に優れ且自己分解性を有し而も相互を絡合しえる素材として、紙やパルプ或いは天然繊維、再生繊維若しくは無機繊維等の素材を、不織布状若しくはロック状に嵩高に絡合させて所望の厚さと幅のマット基材となしたるうえ、シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を塗着含浸せしめたうえ、その温度が少なくとも300℃以上で加熱処理を施すことにより、塗着含浸されたシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液の水分蒸散による発泡化とガラス層化を図り一体的に凝固固着させて難燃性と断熱性並びに緩衝性を保持せしめ、而も廃棄の可能な構成からなる発泡板材に存する。
【0013】
更には高い断熱性と緩衝性を保持せしめるうえからは、水分蒸散による均質微細な蒸散孔による発泡化及び加熱凝固に際しても粘性を具備させるうえから、シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液の分子量が、その重量平均において4,000乃至12,000の多分子量からなる請求項1記載の発泡板材の構成に存するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上述の手段を用いてなるもので、マット基材が比較的耐熱性に優れる紙やパルプを初め天然繊維や再生繊維或いは無機繊維素材が用いられるとともに、該素材を不織布状やロック状の如く嵩高に絡合させたものからなり、且このマット基材にシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を塗着含浸させるため、マット基材の素材的被着性とシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液の接着性とが相俟って、更にはマット基材が十分な空隙を有する嵩高な構造のため、シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液が該マット基材内部全体まで均質に浸透し強固に塗着含浸がなされる。
【0015】
而してこのシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液が塗着含漬されたマット基材に、少なくとも300℃以上の高温度による加熱処理を施すことにより、マット基材を形成する基材外表面に強固に塗着含漬されてなるシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液の水分蒸散に伴う微細蒸散孔の生成とともに発泡化がなされ、且高温度によるガラス層化が図られて一体的に凝固固着がなされるため、形成される発泡板材には難燃性の付与はもとより優れた断熱性が発揮され、更にはシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液の粘性に伴う弾性回復作用が働き緩衝性も発揮される。
加えて本発明はマット基材の使用素材及び絡合嵩高度合により、形成される発泡板材のかさ比重も0.01乃至0.1程度の極めてかさ比重の小さな著しく軽量のものが形成されるため、極めて安価な発泡板材の提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
比較的耐熱性が高く自己分解性を有し、而もその相互が絡合しえる紙やパルプ或いは天然繊維、再生繊維若しくは無機繊維からなる素材を不織布状若しくはロック状の嵩高で、且所要の厚さ及び幅に絡合させてマット基材となしたうえ、シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を塗着含浸し、更に300℃以上の温度で加熱処理して発泡化とガラス層化させ一体的に凝固固着させてなる構成。
【実施例1】
【0017】
以下に本発明実施例を図とともに詳細に説明すれば、図1はマット基材1の形成に使用する素材10の説明図であって、該素材10は比較的耐熱性に優れ且自己分解性とともに絡合性を有するものが望ましく、具体的には紙10Aやパルプ10B或いは天然繊維10Cの他に再生繊維や無機繊維等が挙げられる。そしてかかる場合の自己分解性とは、水や空気或いは微生物等により自然崩壊並びに分解がなされる性質をいう。
【0018】
そして図1のAに示す紙10Aは洋紙や和紙或いは使用済の故紙等特段に制約はないが、相互を絡合させて嵩高なロック状となすうえからは、不定形状に破砕のうえエンボスや皺或いは絞り加工等を施したものが好適である。
更に図1のBに示すパルプ10Bは通常繊維素11Bが積層固化されてパルプシートの状態のものであるから、該パルプシートを不定形状に破砕させたもので絡合がなされ十分に使用が可能となる。
【0019】
図1のCには天然繊維10Cが示されてなるもので、当然に天然繊維10Cは綿や麻を初め、パームや棕梠等が通常使用されるもので、且該天然繊維10Cやその他再生繊維或いは無機繊維等は所望の太さに撚製し若しくは集束させたうえ使用されるもので、特に天然繊維10Cや再生繊維或いは無機繊維等繊維状物では、相互を絡合させて嵩高な不織布状として用いることが好適である。
【0020】
図2はマット基材1の説明図であって、該図2のAには素材10をロック状に絡合させてなるマット基材1Aが示されており、この素材10をロック状に絡合させる場合には、前記紙10Aやパルプ10B或いは天然繊維10C若しくは再生繊維や無機繊維等を絡合し易い適宜の不定形状や長さに破砕若しくは切断のうえ、相互を混交絡合させ所要の厚さ及び幅に成形させるものであるが、該成形に際して絡合が不十分な場合には適宜の成形圧力を付加させて成形を安定させる手段が挙げられる。
【0021】
更に成形に際して絡合を高める他手段として接着補助材20を使用することが提案されるもので、幸いに本発明において難燃性を初め断熱性や緩衝性を付与せしめるために塗着含浸させるシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液2は、素材10に対して優れた接着性を有するため、素材10をロック状に絡合成形させる場合に該シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液2を接着補助材20として、絡合成形される素材10に対して略3乃至10%重量割合で混合させてやると絡合成形が著しく容易となる。
【0022】
他方図2のBには不織布状に絡合させて形成されたマット基材1Bが示されてなるもので、該不織布状に絡合させる場合にはその厚さが略5乃至50mm程度の比較的厚いものを連続的に形成させるうえからフェルト法やニードルパンチ法、若しくはステッチ法等の機械的接合が望まれてなることから、使用素材10としては天然繊維10Cや再生繊維若しくは無機繊維等が用いられる。
当然にロック状に絡合形成し若しくは不織布状に絡合形成されるマット基材1の厚さや幅或いは密度等は具体的使用目的により決定される。
【0023】
かくしてなるマット基材1には本発明の特徴的機能である難燃性に加えて優れた断熱性及び緩衝性を保持させるため、シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液2が塗着含浸されるものである。
【0024】
このマット基材1にシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液2を塗着含浸させる手段は多様な方法が考えられるが、塗着含浸されたシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液2は、引続いて300℃以上の高温度の加熱処理を施し発泡化と且ガラス層化を図りつつ一体的に凝固固着させる必要がある。
【0025】
これがためには最も簡便な塗着含浸手段3としては図3に示す方法が提案されるもので、予め所要の素材10を用いて所望の密度並びに厚さ及び幅に絡合形成させたマット基材1を、供給ロール3Aより塗着含浸槽3B内に貯留されてなるシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液2の中を移送させて、マット基材1の内部に十分に塗着含浸させたうえ、絞りロール3Cにより所望の塗着含浸量に調整させたうえ、供出ロール3Dより供出させるものである。
【0026】
そしてマット基材1にシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液2が所望重量に塗着含浸されたうえは、少なくとも300℃以上の高温度によって加熱処理を施す必要上から、供出ロール3Dに連接して、上方及び下方に加熱源31が配位され且この加熱源31、31間を供出されたシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液2が塗着含浸されたマット基材1を挟持移送若しくは載置移送できるスクリーン32に挟持させ或いは載置させつつ加熱処理を施したうえ、排出ロール33より排出させる加熱手段30を設けることにより、本発明発泡板材4の形成がなされる。
【0027】
図4は不織布状に絡合形成されたマット基材1Bによる本発明発泡板材4の説明図であって、該説明図からも明らかな如く絡合形成された素材10の外表面に塗着含浸されたシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液2が、高温度の加熱処理に伴い微細な蒸散孔4Aを膨大数に生成しながら発泡し且ガラス層化した発泡ガラス化層4Bが一体的に凝固固着して、且多数の通孔4Cも生成された発泡板材4が形成される。
【0028】
以下に本発明の試作実験例を述べれば、GD(砕木パルプ)シートを平均50mmの不定形状に破砕のうえ接着補助材として水分率55%、分子量(重量平均)5,200のシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を3%重量割合で混合のうえ厚さ5mmのロック状に絡合成形させてマット基材となしたるうえ、該マット基材に50%重量割合で前記シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を塗着含浸させた後、420℃の温度で15分間加熱処理を施して形成された本発明発泡板材の性能は、かさ比重0.09、断熱性(熱伝導率)0.04kcal/m・h・℃、引張破断強力65kg/cm、及び伸長弾性率が100であった。
【産業上の利用可能性】
【0029】
施設や建物の内断熱板材や加熱加温若しくは冷凍保冷機器の断熱板材はもとより、輸送にかかわる中包装箱内への緩衝材としても適合する寸法に形成するのみで実用使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】 マット基材に用いる素材の説明図である。
【図2】 マット基材の説明図である。
【図3】 塗着含浸及び加熱処理の例示図である。
【図4】 本発明の説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1 マット基材
1A ロック状に絡合形成されたマット基材
1B 不織布状に絡合形成されたマット基材
10 マット基材に用いる素材
10A 紙
10B パルプ
10C 天然繊維
11B 繊維素
2 シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液
20 接着補助材
3 塗着含浸手段
3A 供給ロール
3B 塗着含浸槽
3C 絞りロール
3D 供出ロール
30 加熱手段
31 加熱源
32 スクリーン
33 排出ロール
4 本発明発泡板材
4A 微細蒸散孔
4B 発泡ガラス化層
4C 通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙、パルプ、天然繊維、再生繊維若しくは無機繊維等の自己分解性を有する素材を不織布状若しくはロック状に絡合させてなるマット基材に、シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を塗着含浸させたうえ、少なくとも300℃以上の温度で加熱処理を施し、シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を発泡且ガラス層化させた発泡ガラス化層により一体的に凝固固着せしめ、以って難燃性、断熱性及び緩衝性を保持せしめたことを特徴とする発泡板材。
【請求項2】
シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液の分子量が、重量平均で4,000乃至12,000である請求項1記載の発泡板材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−137916(P2006−137916A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−359079(P2004−359079)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(504384516)
【Fターム(参考)】