説明

発泡樹脂製の容器

【課題】容器本体に対し蓋体を被着するための嵌合部に、アンダーカット形状の係合手段を備える容器において、蓋体の開閉操作、特に開蓋操作を割れや破損の虞なく容易に行えるようにする。
【解決手段】容器本体10の開口端部11と蓋体30の周縁部31とに、全周にわたって連続して互いに嵌合する凸縁12と凹溝32とによる嵌合部を設け、凸縁12の側面と、凹溝32の側面とに、蓋体被着時に抜脱方向に係合するアンダーカット形状の係合手段15,25を設け、係合手段15,35を、凸縁12と凹溝32とによる嵌合部のうち少なくともコーナー部を除いて設け、手掛け部16を有する場合は、手掛け部16に対応する部位も除いて設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてイカ等の魚類を保冷状態で輸送に使用する発泡樹脂製の容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、水揚げされた直後の魚類を港あるいは船上で氷と共に収容して市場に、あるいは市場から店頭に輸送するための魚箱等の容器として、容器本体と蓋体とからなる発泡樹脂製の容器が、適度に強度を保有し、軽量でかつ断熱性があること等から、広く使用されている(特許文献1)。
【0003】
かかる容器は、容器本体と、該容器本体に対し被着自在な蓋体とからなるもので、魚類を収容した状態での取り扱いの際に蓋体が勝手に外れたりすることがないように、蓋体を被着状態に保持できることが望まれており、通常、容器本体の開口端部に対する蓋体の被着構造として、容器本体の開口端部と、これに対応する蓋体の周縁部下面とに、互いに嵌合する凸縁と凹溝とが設けられ、蓋体を嵌合状態で被着できるようになっている。特に、蓋体の被着状態が不安定になるおそれがある場合には、蓋体と容器本体の突き合わせ部を接着テープで止めるようにしていた。
【0004】
しかしながら、収容される魚類等がイカの場合は、比較的変色が速く、迅速に開蓋及び閉蓋操作できることが求められることから、接着テープを使用しなくても、蓋体を容器本体に対して容易に外れないようにするため、前記凸縁と凹溝との嵌合部にアンダーカット形状の凸部と凹部による係合手段を設けておくことが多くなっている。
【0005】
例えば、特許文献1の場合、容器本体の開口端部に設けられた凸縁と、蓋体の周縁部下面に設けられた凹溝とが嵌合する嵌合構造において、抜脱方向に係合する逆テーパの膨出部が、前記凸縁と凹溝による嵌合部の容器周方向の全周に渡って設けられている。
【0006】
ところで、イカ箱等として使用する場合、市場では蓋体を取り外して中身を見ながら「セリ」に掛けるのが普通であり、「セリ」終了後には再び蓋体を被着し、この状態で店頭にまで輸送されて使用されることが多い。輸送中においても中身の確認のために蓋体を開くことがある。このように、イカ等の魚箱としての使用においては、何度か蓋体を開閉操作する必要があり、前記のように蓋体の嵌合部に全周にわたる係合手段を備えて、容易に外れないように強く嵌合する構造の場合には、開閉操作が容易でなく、特に開蓋操作の際に、蓋体が割れたり破損することがあり、以降の使用ができない場合がある。
【0007】
例えば、容器本体の凸縁及び蓋体の凹溝内外の側壁部は、辺部に比してコーナー部のほうが剛性が高くて弾性変形し難くなっているため、コーナー部の凸縁と凹溝による嵌合が強くなり、また凸縁と凹溝による嵌合部に設けられている係合手段の係合も外れ難く、仮に開蓋操作のための手掛け部が前記コーナー部以外の個所に設けられている場合、開蓋操作のために手掛け部の個所で蓋体を上方に持ち上げると、局部的に強い力が作用し、蓋体に割れや破損が生じることがある。また、コーナー部近傍に設けられた手掛け部の個所から、蓋体を上方に持ち上げるようにした場合、蓋体が上方に反るように変形し、遂には割れ等が生じるおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−100069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなしたものであり、容器本体の開口端部に対し蓋体を嵌合構造により被着する構造の発泡樹脂製の容器として、嵌合部に弾力的に嵌合し係合する係合手段を備えることで、蓋体被着状態を安定性よく保持でき、しかも容器本体に対する蓋体の開閉操作を容易に行え、特に開蓋操作の際に蓋体に割れや破損が生じるようなことがなく、以降もそのまま使用することができ、特に、繰り返し開閉操作することがあるイカ箱その他の魚箱として好適に使用することができる発泡樹脂製の容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決する本発明は、上方に開口する平面矩形の容器本体と、該容器本体に対し被着自在な蓋体とからなり、前記容器本体の開口端部と蓋体の周縁部とに、全周にわたって連続して互いに嵌合する凸縁と凹溝とによる嵌合部が設けられるとともに、前記凸縁の側面と、該側面に対応する前記凹溝の側面とに、蓋体被着時に弾力的に嵌合し抜脱方向に係合するアンダーカット形状の係合手段が設けられてなる発泡樹脂製の容器であって、前記係合手段が、前記凸縁と凹溝とによる嵌合部のうち少なくとも容器のコーナー部を除いて辺部に設けられてなることを特徴とする。
【0011】
この容器によれば、凸縁と凹溝との嵌合部のアンダーカット形状の係合手段の係合により嵌合強度が高められているため、輸送等の取り扱い上において勝手に蓋体が外れたりすることがなく、蓋体被着状態を安定性よく保持できる。そればかりか、弾性変形し難いコーナー部では前記の係合手段が除外されているため、凸縁と凹溝との嵌合がコーナー部で過度に強くなり過ぎず、開蓋操作の際に蓋体を持ち上げることで、コーナー部を起点としてそれほど強い力を要さずに係合手段の係合を外し、かつ凸縁と凹溝を嵌合状態から離脱させることができ、容易に開蓋操作できる。
【0012】
前記の発泡樹脂製の容器において、容器本体の一方又は双方の相対向する側壁における開口端部と、これに対応する蓋体の側部との少なくとも一方に、開蓋操作のための手掛け部が設けられており、前記係合手段が、周方向に間隔をおいて断続状をなし、前記手掛け部に対応する部位を除いて設けられてなるものとするのが好ましい。
【0013】
すなわち、前記係止手段が断続状なして設けられているため、コーナー部を含めた全周にわたる係合手段を有する場合に比して、閉蓋時の嵌合操作、及び開蓋時の嵌合離脱操作が容易であり、また、前記手掛け部に対応する部位に係合手段を有さないために、開蓋操作の際に手掛け部の個所から蓋体を持ち上げるようにすることで、この手掛け部に対応する部位を起点として、前記係合手段の係合を周彷徨の係合端の部分から容易に外すことがてき、蓋体の開蓋操作を容易に行うことができる。
【0014】
特に、前記手掛け部が、容器のコーナー部近傍に設けられており、前記係合手段が、コーナー部及び手掛け部に対応する部位を連続して除くように設けられている場合、手掛け部からの開蓋操作によって前記係合手段による係合を容易に外しかつ嵌合を離脱させることができる。
【0015】
前記のように、手掛け部を除いて係合手段が設けられる場合、前記係合手段の手掛け部からのずれ量が50mm以内であるのが好ましい。すなわち、前記手掛け部の個所から蓋体を持ち上げるようにして開蓋操作した場合に、係合手段を有さないコーナー部や手掛け部では嵌合状態からの離脱抵抗が小さくなる一方、前記係合手段を有する部分では離脱抵抗が大きいために、手掛け部から持ち上げられる蓋体が上方に反るよに変形し、その変形が、前記のずれ量が大きくなるほど大きくなるので、前記のようにずれ量を50mm以下に設定するのが好ましい。
【0016】
前記の係合手段は、前記凸縁の外側面と凹溝の外側壁部の溝内側面とに、互いに嵌合し係合するように設けられた凹部と凸部であるものとする。
【0017】
前記の発泡樹脂製の容器において、前記蓋体の凹溝の内側壁部が外側壁部より長く下方に突出しており、該内側壁部の溝内側面における外側壁部の下端面に相当する位置に周方向の凸条が設けられるとともに、前記凸縁の内側面の対応位置に、凸縁が凹溝に嵌合したときに前記凸条と嵌合する周方向の凹条が設けられてなるものが好ましい。すなわち、容器本体に蓋体を被着する際、前記凹溝の内側壁部の下端部を凸縁の内側に前記凸条の位置まで嵌り込ませて水平姿勢に保持し、その後、凸条を弾性変形させるようにして蓋体を下方に押し込むことにより、凹溝を凸縁に対し嵌合できるとともに、前記係合手段を係合させることができ、閉蓋操作を容易に行うことができる。この状態においては、前記凸条が凹条とが嵌合することで、蓋体被着状態が安定性よく保持される。
【0018】
前記の発泡樹脂製の容器において、魚箱に使用する容器であって、底部の上面が長手方向の中央部から両端部に向かって傾斜し、四隅部に排水用穴が設けられてなるものとすることができる。この場合、黒墨を吐くイカ等の容器として、側面が汚れにくく好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の発泡樹脂製の容器によれば、容器本体の開口端部の凸縁と蓋体の周縁部下面の凹溝との嵌合により蓋体を容器本体に被着したとき、前記凸縁と凹溝とに弾力的に係合する係合手段を備えることで、蓋体被着状態を安定性よく保持できるばかりか、特に、前記係合手段が、弾性変形し難いコーナー部を除して設けられているため、凸縁と凹溝との嵌合がコーナー部で過度に強くならず、開蓋操作の際に蓋体を持ち上げることにより、無理やり強い力を加えなくてもコーナー部を起点として係合手段の係合を外すことができ、またそのため、蓋体に過度の反り変形等を生じさせずに凸縁と凹溝の嵌合を離脱でき、容易に開蓋操作することができる。
【0020】
本発明の容器は、前記のように蓋体に過度の反り変形を生じさせることがないため、開閉操作の際の蓋体の割れや破損の発生を防止でき、以降もそのまま問題なく被着使用できる。特に、開蓋操作のための手掛け部が設けられている場合には、その手掛け部に対応する部位を除いて前記係合手段が設けられていることで、前記の効果がさらに顕著になる。
【0021】
従って、本発明の容器は、蓋体の開閉を繰り返すことがあるイカ箱等の魚箱として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明にかかる発泡樹脂製の容器の容器本体と蓋体を分離して蓋体を裏返した状態の斜視図である。
【図2】同上容器の蓋体の上面側の斜視図である。
【図3】同上容器の容器本体の平面図(a)と底面図(b)である。
【図4】蓋体の平面図(a)と底面図(b)である。
【図5】同上容器の容器本体に蓋体を嵌合被着する前の半部縦断正面図である。
【図6】同上容器の容器本体に蓋体を嵌合被着した状態の図3のL1−L1線における断面図である。
【図7】同上容器の容器本体に蓋体を嵌合被着した状態の図3のL2−L2線における断面図である。
【図8】同上容器の容器本体(a)と蓋体下面側(b)の一部の拡大平面図である。
【図9】同上容器の一部の嵌合前の拡大断面図である。
【図10】同上の嵌合後の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【0024】
この実施例の容器は、発泡ポリスチレン等の発泡樹脂を素材として成形された容器であって、上方に開口する平面矩形の容器本体10と、該容器本体10に対し被着自在な蓋体30とよりなる。
【0025】
前記容器において、容器本体10の側壁上端部による開口端部11と、前記蓋体30の周縁部31の下面とに、全周にわたって連続して互いに嵌合する凸縁12と凹溝32とが設けられている。具体的には、図のように、前記容器本体10の開口端部11の外側の約半部が全周にわたって切欠されることにより切欠段部13が形成され、該切欠段部13より内側の約半部が前記凸縁12として形成されている。また、前記蓋体30の周縁部31の下面には、蓋体被着状態において前記凸縁12に嵌合する凹溝32が周方向に連続して形成されており、該凹溝32の外側壁部33が前記切欠段部13に嵌合し、また該凹溝32の内側壁部34が前記凸縁12の内側に嵌合するようになっている。図の場合、前記凹溝32内側壁部34は外側壁部33より長く下方に突出形成されており、容器本体10に蓋体30を被着する際、前記凹溝32の内側壁部34の下端部を凸縁12の内側に嵌り込ませて位置決めしてから蓋体30を下方に押し込むことにより、凹溝32を凸縁12に対し容易に嵌合できるようになっている。図中の符号14aは容器本体10の長辺側の相対向する側壁、符号14bは短辺側の側壁を示している。
【0026】
そして、前記凸縁12の側面、例えば外側面12aと、該側面に対応する前記凹溝32の側面、例えば外側壁部33の溝内側面33aに、蓋体被着時に発泡樹脂素材の弾性変形を利用して弾力的に嵌合して抜脱方向に係合するアンダーカット形状の係合手段15,35が設けられている。特に本発明の場合、前記係合手段15,35は、前記凸縁12と凹溝32とによる嵌合部のうち、少なくとも容器のコーナー部に相当する部位を除いて辺部に設けられている。
【0027】
例えば、図8及び図9に拡大して示すように、前記凸縁12の外側面12aには、前記の係合手段15として、該凸縁12の先端から基部側に向かって内方に傾斜した逆テーパの凹部15aが、また凹溝32の外側壁部33による溝内側面33aには、外側壁部33の下端側に向かって漸次溝内方に張り出すように傾斜した逆テーパの凸部35aが、それぞれコーナー部を除く辺部における対応位置に、主として周方向に所定の間隔をおいて断続状に設けられており、凸縁12と凹溝32との嵌合時に、該凹部15aと凸部35aが素材の持つ弾力性を利用して嵌合でき、かつ抜脱方向に係合するようになっている。前記とは逆に、凸縁12の外側面に凸部、凹溝32の溝内側面に凹部を設けて実施することもできる。いずれにしても、凹部15aの端部と凸部35aの先端端の角部に僅かにアールをつけて、嵌合時の弾性変形を容易にするのが好ましい。もちろん前記の凹部15aと 凸部35a以外のアンダーカット形状の係合可能な凹凸による実施が可能である。
【0028】
また、図示する実施例の場合、前記容器本体10の一方又は双方の相対向する側壁、すなわち長辺側の側壁14a及び/又は14bの開口端部11と、これに対応する蓋体30の側部との少なくとも一方、容器本体10の開口端部11に開蓋操作のための手掛け部16が設けられている。前記係合手段15、35は、周方向に間隔をおいて断続状をなすとともに、前記手掛け部16に対応する部位を除いて設けられており、開蓋操作の際に前記手掛け部16の個所から蓋体30を持ち上げるようにすることで、前記係合手段15,35の係合を周方向の係合端の部分から容易に外せるようになっている。
【0029】
前記手掛け部16は、図示するように、容器のコーナー部近傍に設けられていることが多く、この場合、前記手掛け部16の配置形態にあわせて、前記係合手段15,35を、容器のコーナー部及び手掛け部16に対応する部位を連続して除くようにして辺部において断続状に設けておくのが好ましく、これにより、係合手段15,35の係合離脱操作をさらに容易に行えることになる。
【0030】
前記のように手掛け部16に対応する部位を除いて係合手段15,35が設けられる場合、前記係合手段15,35の手掛け部16からのずれ量aを50mm以下に設定しておくものとする。すなわち、前記手掛け部16の個所から蓋体30を持ち上げるようにして開蓋操作した場合に、係合手段15,35を有さないコーナー部や手掛け部16の部位では嵌合状態からの離脱抵抗が小さくなる一方、前記係合手段15,35を有する部分では離脱抵抗が大きいために、手掛け部16から持ち上げられる蓋体30が上方に反るように変形し、その変形が、前記のずれ量が大きくなるほど大きくなるので、前記のようにずれ量aを50mm以下に設定するのが好ましく、30mm以下に設定するのがさらに好ましい。
【0031】
また、図示する実施例の場合、前記凹溝32の外側壁部33より長く下方に突出形成された内側壁部34の溝内側面34aにおける前記外側壁部23の下端に相当する高さ位置に、断面円弧状の周方向の凸条37が設けられるとともに、前記容器本体10の凸縁12の内側面の嵌合時の対応位置、つまり凸縁12と凹溝32とが嵌合したときに前記凸条37と対応する位置に、前記凸条37が弾力的に嵌合する断面円弧状の周方向の凹条17が設けられている。これにより、容器本体10に蓋体30を被着する際、前記凹溝32の内側壁部34の下端部を凸縁12の内側に前記凸条37の位置まで嵌り込ませて水平姿勢に保持した後、凸条37を弾性変形させるようにして蓋体30を下方に押し込むことにより、凹溝32を凸縁12に対し嵌合できるとともに、前記係合手段15,35を係合させることができ、閉蓋操作を容易に行うことができるようになっている。
【0032】
なお、実施例の容器の場合、イカ箱等の魚箱、特にはイカ箱として好適に使用できるように、容器本体10の底部18の上面18aには、長手方向に延びる凸部19が所要間隔に並列してかつ周縁部を残余させて設けられるとともに、該底部18の上面及び凸部19の上面が長手方向の中央部から両端部に向かって僅かに傾斜した傾斜面として形成され、さらに底部18の上面18aの四隅部に容器外部に通じる排水穴20が設けられている。
【0033】
前記排水穴20は、底部18の上面18aより落とし込んだ凹部21から、容器本体10のコーナー部の個所に設けられた上下方向に貫通する縦孔22に連通しており、容器本体10の底面側に排水できるようになっている。特に、容器本体10に被着される蓋体30の四隅部に、蓋体被着時に前記縦孔22と連通する上下方向の縦孔42が設けられており、蓋体被着状態の複数の容器を段積みした際に、各容器から排出される水を最下層の容器の底部まで連続して排水できるようになっている。これにより、黒墨を吐くイカ等の容器としても、側面が汚れにくく好適に使用することができる。
【0034】
前記蓋体30の周縁部31の上面には、段積みの際に前記容器本体10の底部18の下面周縁部に有する切欠部24と嵌合する段積み用の嵌合凸起44が設けられるとともに、四隅部の前記嵌合凸部44の内側に蓋上に溢れる水を前記縦孔42に導く凹部45が設けられている。図中の符号25は容器を持ち運びする際の手掛け用凹部である。
【0035】
前記容器本体10及び蓋体20の構成材である発泡樹脂としては、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、スチレン−エチレン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等の各種合成樹脂の発泡体を用いることができる。中でも、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂のビーズ発泡体による成形体が好適に用いられる。スチレン改質ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂粒子にスチレン系単量体を含浸重合させて得られるものであり、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂の中でも、スチレン改質ポリエチレン樹脂が好ましく、例えば、スチレン成分の割合は40〜90重量%、好ましくは50〜85重量%、さらに好ましくは55〜75重量%のものが用いられる。また、前記発泡体の発泡倍率は10〜70倍が好ましい。
【0036】
スチレン改質ポリオレフィン系樹脂のビーズ発泡体の成形品は、同じ発泡倍率のポリプロピレン系樹脂ビーズの成形品に比べて強度があり、また、深さが500mmを越える容器を成形した場合の収縮率が低く寸法精度もよい。さらに、スチレン系樹脂ビーズの発泡成形品に比べて擦れによる粉が出難い長所もある。
【0037】
上記した実施例の発泡樹脂製の容器によれば、容器本体10の開口端部11に有する凸縁12と、蓋体30の周縁部31の下面側に有する凹溝22との嵌合により、蓋体30を容器本体10に被着する際、前記凹溝32の内側壁部34の下端部を凸縁12の内側に前記凸条37の位置まで嵌り込ませて図9の鎖線のように位置決めし水平姿勢に保持した後、凸条37を弾性変形させるようにして蓋体30を下方に押し込むことにより、凹溝32を凸縁12に対し容易に嵌合することができるとともに、この嵌合部に有するアンダーカット形状の前記係合手段15,35を容易に且つ確実に係合させることができ(図10)、閉蓋操作を容易に行うことができる。
【0038】
そして、前記蓋体30の被着状態においては、前記凸縁12と凹溝32との嵌合部のアンダーカット形状の係合手段15,35の係合により嵌合強度が高められているため、輸送等の取り扱い上において勝手に蓋体30が外れたりすることがなく、蓋体被着状態を安定性よく保持できる。そればかりか、弾性変形し難いコーナー部では前記の係合手段15,35が除外されているため、凸縁12と凹溝32との嵌合がコーナー部で過度に強くなり過ぎず、開蓋操作の際に蓋体30を例えば手掛け部16の個所から持ち上げることで、係合手段15,35を有さないコーナー部を起点として、さらに手掛け部16に対応部位に係合手段15,35を有さない場合は、該手掛け部16の個所を起点として、それほど強い力を要さずに係合手段15,35の係合を外し、かつ凸縁12と凹溝32を嵌合状態から離脱させることができ、蓋体30に大きな反り変形を試用時させずに、容易に開蓋操作できることになる。
【0039】
そのため、開閉操作の際の蓋体30の割れや破損の発生を防止でき、以降もそのまま問題なく被着使用でき、蓋体の開閉を繰り返すことがあるイカ箱等の魚箱として特に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0040】
10…容器本体、11…開口端部、12…凸縁、12a…外側面、12b…内側面、13…切欠段部、14a…長辺側の側壁、14b…短辺側の側壁、15…係合手段、15a…凹部、16…手掛け部、17…凹条、18…底部、18a…上面、19…凸部、20…排水穴、21…凹部、22…縦孔、24…切欠部、25…手掛け用凹部、30…蓋体、31…周縁部、32…凹溝、33…外側壁部、33a…溝内側面、34…内側壁部、35…係合手段、35a…凸部、37…凸条、42…縦孔、44…嵌合凸部、45…凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口する平面矩形の容器本体と、該容器本体に対し被着自在な蓋体とからなり、前記容器本体の開口端部と蓋体の周縁部とに、全周にわたって連続して互いに嵌合する凸縁と凹溝とによる嵌合部が設けられるとともに、前記凸縁の側面と、該側面に対応する前記凹溝の側面とに、蓋体被着時に弾力的に嵌合し抜脱方向に係合するアンダーカット形状の係合手段が設けられてなる発泡樹脂製の容器であって、
前記係合手段が、前記凸縁と凹溝とによる嵌合部のうち少なくとも容器のコーナー部を除いて辺部に設けられてなることを特徴とする発泡樹脂製の容器。
【請求項2】
容器本体の一方又は双方の相対向する側壁における開口端部と、これに対応する蓋体の側部との少なくとも一方に、開蓋操作のための手掛け部が設けられており、前記係合手段が、周方向に間隔をおいて断続状をなし、前記手掛け部に対応する部位を除いて設けられてなる請求項1に記載の発泡樹脂製の容器。
【請求項3】
前記手掛け部が、容器のコーナー部近傍に設けられており、前記係合手段が、コーナー部及び手掛け部に対応する部位を連続して除くように設けられてなる請求項1又は2に記載の発泡樹脂製の容器。
【請求項4】
前記係合手段の手掛け部からのずれ量が50mm以内である請求項2又は3に記載の発泡樹脂製の容器。
【請求項5】
前記係合手段が、前記凸縁の外側面と凹溝の外側壁部の溝内側面とに、互いに嵌合し係合するように設けられた凹部と凸部である請求項1〜4のいずれか1項に記載の発泡樹脂製の容器。
【請求項6】
前記蓋体の凹溝の内側壁部が外側壁部より長く下方に突出しており、該内側壁部の溝内側面における外側壁部の下端面に相当する位置に周方向の凸条が設けられるとともに、前記凸縁の内側面の対応位置に、凸縁が凹溝に嵌合したときに前記凸条と嵌合する周方向の凹条が設けられてなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の発泡樹脂製の容器。
【請求項7】
魚箱に使用する容器であって、底部の上面が長手方向の中央部から両端部に向かって傾斜し、四隅部に排水用穴が設けられてなる請求項1〜6のいずれか1項に記載の発泡樹脂製の容器。
【請求項8】
イカ箱用として使用する容器である請求項1〜7のいずれか1項に記載の発泡樹脂製の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−10521(P2013−10521A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143016(P2011−143016)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【出願人】(591129014)株式会社積水化成品北海道 (6)
【Fターム(参考)】