説明

発泡用ポリプロピレン系樹脂組成物およびそれからなる発泡成形体

【課題】シルバーストリークが少ない成形体を得ることができる発泡用ポリプロピレン系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】プロピレン単独重合体(A−1)およびプロピレン−エチレン共重合体(A−2)からなる群から選ばれる少なくとも1種のプロピレン重合体(A)40〜95重量%と、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)5〜60重量%とを含有する樹脂組成物(ただし、(A)と(B)の合計を100重量%とする)100重量部と、(C)β晶核剤0.001〜10重量部とを含有する発泡用ポリプロピレン系樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡用ポリプロピレン系樹脂組成物およびそれからなる発泡成形体に関するものである。より詳しくは、シルバーストリークの少ない成形体を得ることができる発泡用ポリプロピレン系樹脂組成物およびそれからなる発泡成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリプロピレン系樹脂は、高剛性で、耐衝撃性に優れることから、自動車用材料などに用いられている。
また、剛性、耐熱性等を改良する目的で、ポリプロピレン系樹脂に対しアミド系化合物(β晶核剤)を配合した樹脂組成物も提案されている(特開平08−100088号公報、特開平08−134290号公報)。
【0003】
【特許文献1】特開平08−100088号公報
【特許文献2】特開平08−134290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の公報等に記載のポリプロピレン系樹脂組成物においても、前記樹脂組成物を成形体に成形したときに発生するシルバーストリークの削減が求められていた。
かかる状況の下、本発明の目的は、シルバーストリークが少ない成形体を得ることができる発泡用ポリプロピレン系樹脂組成物およびそれからなる発泡成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、かかる実情に鑑み、鋭意検討の結果、本発明が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明の一は、プロピレン単独重合体(A−1)およびプロピレン−エチレン共重合体(A−2)からなる群から選ばれる少なくとも1種のプロピレン重合体(A)40〜95重量%と、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)5〜60重量%とを含有する樹脂組成物(ただし、(A)と(B)の合計を100重量%とする)100重量部と、(C)β晶核剤0.001〜10重量部とを含有する発泡用ポリプロピレン系樹脂組成物である。
【0007】
また、本発明の一は、
(C)β晶核剤がγ−キナクリドンである上記発泡用ポリプロピレン系樹脂組成物である。
【0008】
また、本発明の一は、
(B)エチレン−α−オレフィン共重合体の密度が0.85〜0.89g/cmである上記発泡用ポリプロピレン系樹脂組成物である。
【0009】
また、本発明の一は、
上記発泡用ポリプロピレン系樹脂組成物からなる発泡成形体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シルバーストリークが少ない成形体を得ることができる発泡用ポリプロピレン系樹脂組成物およびそれからなる発泡成形体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明では、プロピレン単独重合体(A−1)およびプロピレン−エチレン共重合体(A−2)からなる群から選ばれる少なくとも1種のプロピレン重合体(A)が用いられる。
プロピレン−エチレン共重合体(A−2)としては、プロピレン−エチレンランダム共重合体(A−2−1)または、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)が挙げられる。プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)とは、プロピレン単独重合体成分と、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分とからなる共重合体である。
【0012】
プロピレン重合体(A)として、好ましくは、剛性、耐熱性または硬度を高めるという観点から、プロピレン単独重合体(A−1)または、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)である。
【0013】
プロピレン単独重合体(A−1)の13C−NMRによって測定されるアイソタクチック・ペンタッド分率は0.95以上が好ましく、さらに好ましくは0.98以上である。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)のプロピレン単独重合体成分の、13C−NMRによって測定されるアイソタクチック・ペンタッド分率は0.95以上が好ましく、さらに好ましくは0.98以上である。
【0014】
アイソタクチック・ペンタッド分率とは、プロピレン重合体分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率であり、換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。アイソタクチック・ペンタッド分率の測定方法は、A.ZambelliらによってMacromolecules,6,925(1973)に記載されている方法、すなわち13C−NMRによって測定される方法である。(ただし、NMR吸収ピークの帰属は、その後発刊されたMacromolecules,8,687(1975)に基づいて決定される)。
【0015】
具体的には、13C−NMRスペクトルによって測定されるメチル炭素領域の吸収ピークの面積に対する、mmmmピークの面積の割合が、アイソタクチック・ペンタッド分率である。この方法によって測定された英国 NATIONAL PHYSICAL LABORATORYのNPL標準物質 CRM No.M19−14Polypropylene PP/MWD/2のアイソタクチック・ペンタッド分率は、0.944であった。
【0016】
上記プロピレン単独重合体(A−1)の135℃のテトラリン溶媒中で測定される極限粘度([η]P)、ブロック共重合体(A−2−2)のプロピレン単独重合体成分の135℃のテトラリン溶媒中で測定される極限粘度([η]P)、ランダム共重合体(A−2−1)の135℃のテトラリン溶媒中で測定される極限粘度([η])は、通常、0.7〜5dl/gであり、好ましくは0.8〜4dl/gである。
【0017】
また、プロピレン単独重合体(A−1)、ブロック共重合体(A−2−2)のプロピレン単独重合体成分、ランダム共重合体(A−2−1)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布(Q値、Mw/Mn)として、好ましくは3以上7以下である。
【0018】
上記ブロック共重合体(A−2−2)のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分に含有されるエチレン含有量は20〜65重量%、好ましくは25〜50重量%である(ただし、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分の全量を100重量%とする)。
【0019】
上記ブロック共重合体(A−2−2)のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分の135℃のテトラリン溶媒中で測定される極限粘度([η]EP)は、通常、1.5〜12dl/gであり、好ましくは2〜8dl/gである。
【0020】
上記ブロック共重合体(A−2−2)を構成するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分の含有量は、10〜60重量%であり、好ましくは10〜40重量%である。
【0021】
上記プロピレン単独重合体(A−1)のメルトインデックス(MI)は、通常、0.1〜400g/10分であり、好ましくは1〜300g/10分である。但し、測定温度は230℃で、荷重は2.16kgである。
【0022】
上記プロピレン−エチレン共重合体(A−2)のメルトインデックス(MI)は、通常、0.1〜200g/10分であり、好ましくは5〜150g/10分である。但し、測定温度は230℃で、荷重は2.16kgである。
【0023】
上記プロピレン重合体(A)の製造方法としては、例えば、公知の重合触媒を用いて、公知の重合方法によって製造する方法が挙げられる。
上記プロピレン重合体(A)の製造方法で用いられる公知の重合触媒としては、例えば、(1)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分と、(2)有機アルミニウム化合物と(3)電子供与体成分からなる触媒系が挙げられる。この触媒の製造方法としては、例えば、特開平1−319508号公報、特開平7−216017号公報や特開平10−212319号公報に記載されている製造方法が挙げられる。
【0024】
上記の製造方法で用いられる公知の重合方法としては、例えば、バルク重合法、溶液重合法、スラリー重合法、気相重合法等が挙げられる。これらの重合方法は、バッチ式、連続式のいずれでも良く、また、これらの重合方法を任意に組み合わせても良い。
【0025】
上記のプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)の製造方法として、好ましくは、前記の固体触媒成分(1)と、有機アルミニウム化合物(2)と電子供与体成分(3)からなる触媒系の存在下に少なくとも2槽からなる重合槽を直列に配置し、上記プロピレン−エチレンブロック共重合体のプロピレン単独重合体成分を製造した後、製造された前記成分を次の重合槽に移し、その重合槽でプロピレン−エチレンランダム共重合体成分を連続して製造して、プロピレン−エチレンブロック共重合体を製造する方法である。
上記の製造方法で用いられる固体触媒成分(1)、有機アルミニウム化合物(2)および電子供与体成分(3)の使用量や、各触媒成分を重合槽へ供給する方法は、適宜、決めれば良い。
【0026】
重合温度は、通常、−30〜300℃であり、好ましくは20〜180℃である。重合圧力は、通常、常圧〜10MPaであり、好ましくは0.2〜5MPaである。分子量調整剤として、例えば、水素を用いても良い。
【0027】
上記プロピレン重合体(A)の製造において、本重合を実施する前に、公知の方法によって、予備重合を行っても良い。公知の予備重合の方法としては、例えば、固体触媒成分(1)および有機アルミニウム化合物(2)の存在下、少量のプロピレンを供給して溶媒を用いてスラリー状態で実施する方法が挙げられる。
【0028】
本発明で用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体(B)は、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、または、これらの混合物が挙げられる。
【0029】
共重合体(B)の密度は、0.850〜0.890g/cm3、好ましくは0.850〜0.880g/cm3であり、より好ましくは0.855〜0.875g/cm3である。
【0030】
共重合体(B)に含有されるエチレン含量は、20〜95重量%であり、好ましくは、30〜90重量%であり、α−オレフィン含量は、80〜5重量%であり、好ましくは70〜10重量%である。
【0031】
共重合体(B)のMI(測定温度は190℃、荷重は2.16kg)は、0.5〜100g/10分であり、好ましくは1〜50g/10分である。
【0032】
共重合体(B)に用いられるα−オレフィンとしては、炭素数4〜20のα−オレフィンが挙げられ、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセン等が挙げられる。これらのα−オレフィンは単独で用いても良く、少なくとも2種を併用しても良い。α−オレフィンとして、好ましくは、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の炭素数4〜12のα−オレフィンである。
【0033】
共重合体(B)の製造方法としては、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等によって、所定のモノマーを、メタロセン系触媒を用いて重合する方法が挙げられる。
メタロセン系触媒としては、例えば、特開平3−163088号公報、特開平4−268307号公報、特開平9−12790号公報、特開平9−87313号公報、特開平11−80233号公報、特表平10−508055号公報等に記載されているメタロセン系触媒が挙げられる。
メタロセン系触媒を用いる共重合体(B)の製造方法として、好ましくは、欧州特許出願公開第1211287号明細書に記載されている方法が挙げられる。
【0034】
プロピレン重合体(A)の含有量としては、40〜99重量%、好ましくは、60〜95重量%、さらに好ましくは70〜95重量%である。エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の含有量としては、1〜60重量%、好ましくは、5〜40重量%、さらに好ましくは5〜30重量%である。但し、(A)と(B)の合計量を100重量%とする。
【0035】
本発明で用いられるβ晶核剤(C)は、ポリプロピレンに含有させることにより、限られた熱履歴下でβ晶を多量に生成させる効果を有する低分子化合物である。本発明において用いるβ晶核剤としては、たとえば、特開平9−194650号公報などに開示されているような、γ-キナクリドン、下記(1)〜(3)で示されるアミド系化合物などが挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。特に好ましいものはγ-キナクリドンである。
(1) R−(R)NCO−R−CON(R)−R
(2) R−CONH−R−CONH−R
(3) R10−CONH−R−NHCO−R11
[式中、R1が炭素数1〜28の飽和若しくは不飽和の脂肪族、脂環族、または3,9-ビス(フェニル-4-イル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを除く芳香族のジカルボン酸残基を示す場合、R2およびR4は水素を、R3およびR5は同一または異なって、炭素数3〜18のシクロアルキル基若しくはシクロアルケニル基、フェニル基、炭素数7〜18のアルキルフェニル基、アルケニルフェニル基、シクロアルキルフェニル基、ビフェニル基、アルキルシクロヘキシル基、アルケニルシクロヘキシル基、シクロアルキルシクロヘキシル基若しくはフェニルシクロヘキシル基、または炭素数7〜10のフェニルアルキル基若しくはシクロヘキシルアルキル基をそれぞれ示し、R1が3,9-ビス(フェニル-4-イル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを示す場合、R2〜R5は同一または異なって、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、またはR2およびR3、R4およびR5はそれぞれのω-端で相互に結合し共同してアルキレン基をそれぞれ示し、R6は炭素数1〜28の飽和若しくは不飽和の脂肪族、脂環族または芳香族のアミノ酸残基を、R7およびR8は同一または異なって、炭素数3〜18のシクロアルキル基若しくはシクロアルケニル基、フェニル基、炭素数7〜18のアルキルフェニル基、アルケニルフェニル基、シクロアルキルフェニル基、ビフェニル基、アルキルシクロヘキシル基、アルケニルシクロヘキシル基、シクロアルキルシクロヘキシル基若しくはフェニルシクロヘキシル基、または炭素数7〜10のフェニルアルキル基若しくはシクロヘキシルアルキル基をそれぞれ示し、R9は炭素数1〜24の脂肪族ジアミン残基、脂環族ジアミン残基または芳香族ジアミン残基(ただし、キシリレンジアミン残基を除く)を、R10およびR11は同一または異なって、炭素数3〜14のシクロアルキル基若しくはシクロアルケニル基、フェニル基、炭素数7〜10のアルキルフェニル基若しくはアルケニルフェニル基、または炭素数7〜9のフェニルアルキル基若しくはシクロヘキシルアルキル基をそれぞれ示す。]
【0036】
β晶核剤(C)の添加量としては、(A)と(B)の合計量100重量部に対し0.001〜1重量部、好ましくは0.005〜0.5重量%、さらに好ましくは0.005〜0.3重量部である。但し、(A)と(B)の合計量を100重量%とする。
【0037】
本発明の発泡用ポリプロピレン系樹脂組成物のMI(測定温度は230℃、荷重は2.16kg)は、40〜200g/10分、好ましくは40〜150g/10分、より好ましくは40〜120g/10分である。
【0038】
本発明の発泡用ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法は、各成分を混練する方法が挙げられ、混練に用いられる装置としては、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等が挙げられる。混練の温度は、通常、170〜250℃であり、時間は、通常、1〜20分である。また、各成分の混練は同時に行なってもよく、分割して行なってもよい。
【0039】
本発明の発泡用ポリプロピレン系樹脂組成物には、必要に応じて、添加剤を含有させても良く、例えば、中和剤、酸化防止剤、耐光剤、紫外線吸収剤、銅害防止剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、分散剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、造核剤、難燃剤、発泡剤、気泡防止剤、架橋剤、着色剤、顔料等が挙げられる。
【0040】
本発明の発泡成形体は、本発明の発泡用ポリプロピレン系樹脂組成物に発泡剤を添加し、成形することによって得られるものである。本発明で使用される発泡剤としては、化学発泡剤、物理発泡剤などの公知の発泡剤が挙げられる。
本発明の発泡用ポリプロピレン系樹脂組成物を発泡成形する方法は、具体的には、射出発泡成形法、プレス発泡成形法、押出発泡成形法、スタンパブル発泡成形法などの公知の方法が挙げられる。
【0041】
本発明の発泡成形体は、インサート成形、接着などの方法により表皮材を貼合して加飾発泡成形体とすることもできる。
【0042】
前記の表皮材としては、公知の表皮材を使用できる。具体的な表皮材としては、織布、不織布、編布、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーからなるフィルム、シート等が例示される。さらに、これらの表皮材に、ポリウレタン、ゴム、熱可塑性エラストマー等のシートを積層した複合表皮材を使用してもよい。
表皮材には、さらにクッション層を設けることができる。かかるクッション層を構成する材料は、ポリウレタンフォーム、EVAフォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリエチレンフォーム等が例示される。
【0043】
本発明の成形体の用途としては、例えば、自動車内装部品または外装部品、二輪車部品、家具や電気製品の部品等が挙げられる。
【0044】
自動車内装部品としては、例えば、インストルメンタルパネル、トリム、ドアーパネル、サイドプロテクター、コンソールボックス、コラムカバー等が挙げられ、自動車外装部品としては、例えば、バンパー、フェンダー、ホイールカバー等が挙げられ、二輪車部品としては、例えば、カウリング、マフラーカバー等が挙げられる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例および比較例によって、本発明を説明する。
実施例または比較例では、以下に示した樹脂および添加剤を用いた。
(1)プロピレン−(プロピレン−エチレン)共重合体(A−1)
特開平7−216017記載の固体触媒成分を用いて気相重合法により製造した。
MI:31.7g/10分
プロピレン−(プロピレン−エチレン)共重合体全体の極限粘度[η]T:1.6dl/g
プロピレン単独重合体部分の極限粘度[η]P:0.93dl/g
プロピレン−エチレンランダム共重合体部分の共重合体全体に対する重量比率:20重量%
プロピレン−エチレンランダム共重合体部分の極限粘度[η]EP:4.5dl/g
プロピレン−エチレンランダム共重合体部分のエチレン単位含量:36重量%
【0046】
(2)プロピレン単独重合体(A−2)
住友化学(株)社製 商品名:U501E1
MI:120g/10分
【0047】
(3)プロピレン単独重合体(A−3)
特開平7−216017記載の固体触媒成分を用いて気相重合法により製造した。
MI:300g/10分
【0048】
(4)エチレン−ブテン共重合体ゴム(B)
商品名: CX5505(住友化学社製)
密 度: 0.878(g/cm
MI(190℃、2.16kg荷重):14(g/10分)
【0049】
(5)β晶核剤マスターバッチ(C)
プロピレン単独重合体(A−3)99重量%とβ晶核剤であるキナクリドン(CROMOPHTAL Red 2020(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)社製))1重量%を均一に予備混合した後、シリンダ温度200℃に設定した二軸混錬機(東洋精機製20mm押出機)を用いて、β晶核剤マスターバッチを得た。
[実施例1、比較例1〜2]
表1に示した各成分を所定量、計量し、タンブラーで均一に予備混合した後、二軸混練押出機(日本製鋼所社製TEX44SS 30BW−2V型)を用いて、押出量30〜50kg/hr、スクリュー回転数300rpm、ベント吸引下で混練押出して、プロピレン重合体組成物ペレットを製造した。
このペレットを用い、エンゲル社製ES2550/400HL−MuCell(型締力400トン)射出成形機を用いて、射出発泡成形を行った。
金型として、成形体概略寸法が、図1に示した成形品部寸法が290mm×370mm、高さ45mm、型締めした状態の基本キャビティクリアランス(初期板厚)1.5mmtに、一部1.6mmtの部分を有するの箱型形状(ゲート構造:ダイレクトゲート)のものを用いた。
シリンダ温度250℃、金型温度50℃に設定し、型締め後、発泡剤を含む前記組成物の射出を開始した。前記組成物を、金型キャビティ内に完全に射出充填した後、金型のキャビティ壁面を2.0mm後退させて該キャビティを増加させて組成物を発泡させた。発泡した組成物を更に冷却し、完全に固化させて発泡成形体を得、ゲートから100mmの部位にて発泡成形体の評価を行った。結果を表1に示す。
【0050】
実施例および比較例で用いた樹脂成分及び組成物の物性の測定法を以下に示した。
(1)メルトインデックス(MI、単位:g/10分)
JIS−K−6758に規定された方法に従って測定した。
230℃、2.16kg荷重にて測定した。
【0051】
(2)プロピレン−エチレンブロック共重合体の構造分析
(2−1)プロピレン−エチレンブロック共重合体の固有粘度
(2−1−a)プロピレン単独重合体成分の固有粘度:[η]P
プロピレン−エチレンブロック共重合体のプロピレン単独重合体成分の固有粘度:[η] Pはその製造時に、プロピレン単独重合体の重合後に重合槽内よりプロピレン単独重合体を取り出し、取り出されたプロピレン単独重合体の[η]Pを測定して求めた。
【0052】
(2−1−b)プロピレン−エチレンランダム共重合体成分の固有粘度:[η]EP
プロピレン−エチレンブロック共重合体のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分の固有粘度:[η]EPは、プロピレン単独重合体成分の固有粘度:[η]Pとプロピレン−エチレンブロック共重合体全体の固有粘度:[η]Tをそれぞれ測定し、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分のプロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対する重量比率:Xを用いて次式から計算により求めた。
[η]EP=[η]T/X−(1/X−1)[η]EP
[η]P:プロピレン単独重合体成分の固有粘度(dl/g)
[η]T:プロピレン−エチレンブロック共重合体全体の固有粘度(dl/g)
【0053】
(2−1−c)プロピレン−エチレンランダム共重合体成分のプロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対する重量比率:X
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分のプロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対する重量比率:Xはプロピレン単独重合体成分とプロピレン−エチレンブロック共重合体全体の結晶融解熱量をそれぞれ測定し、次式を用いて計算により求めた。結晶融解熱量は、示差走査型熱分析(DSC)により測定した。
X=1−(ΔHf)T/(ΔHf)P
(ΔHf)T:ブロック共重合体全体の融解熱量(cal/g)
(ΔHf)P:プロピレン単独重合体成分の融解熱量(cal/g)
【0054】
(3)プロピレン−エチレンブロック共重合体中のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分のエチレン含量:(C2')EP
プロピレン−エチレンブロック共重合体のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分のエチレン含量:(C2')EPは、赤外線吸収スペクトル法によりプロピレン−エチレンブロック共重合体全体のエチレン含量(C2')Tを測定し、次式を用いて計算により求めた。
(C2')EP=(C2')T/X
(C2')T:プロピレン−エチレンブロック共重合体全体のエチレン含量(重量%)
(C2')EP:プロピレン−エチレンランダム共重合体成分のエチレン含量(重量%)
X:プロピレン−エチレンランダム共重合体成分のプロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対する重量比率
【0055】
(5)発泡体の外観評価(シルバーストリーク)
発泡成形により得られたポリプロピレン系樹脂組成物発泡成形体のゲ−ト部から100mm離れた部位の図1に示した直径60mmの円の範囲を目視で評価し、以下に示したとおりに判定した。
○:発泡成形体の表面のシルバーストリークが目視では確認できない
△:シルバーストリークがやや目立つ
×:シルバーストリークが目立つ
【0056】
【表1】

【0057】
本発明の要件を満足する実施例1では、シルバーストリークの少ない成形体が得られたことが分かる。これに対して、本発明の要件である(C)β晶核剤を用いなかった比較例1、および(B)エチレン−α−オレフィン共重合体(B)を用いなかった比較例2では、シルバーストリークの目立つ成形体が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施例1で作製したポリプロピレン系樹脂組成物の発泡成形体の斜視図。
【符号の説明】
【0059】
1:ゲート接触部分
2:シルバーストリークを評価した部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン単独重合体(A−1)およびプロピレン−エチレン共重合体(A−2)からなる群から選ばれる少なくとも1種のプロピレン重合体(A)40〜95重量%と、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)5〜60重量%とを含有する樹脂組成物(ただし、(A)と(B)の合計を100重量%とする)100重量部と、(C)β晶核剤0.001〜10重量部とを含有する発泡用ポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項2】
(C)β晶核剤がγ−キナクリドンである請求項1記載の発泡用ポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
(B)エチレン−α−オレフィン共重合体の密度が0.85〜0.89g/cmである請求項1又は2に記載の発泡用ポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項記載の発泡用ポリプロピレン系樹脂組成物からなる発泡成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2008−255191(P2008−255191A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97519(P2007−97519)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】