説明

発泡積層シートの製造方法

【課題】意匠性を損なわず、通気性に優れた発泡積層シートの製造方法を提供する。
【解決手段】以下の工程1〜4を順に含む、発泡積層シートの製造方法:
(1)発泡剤含有樹脂層を有する樹脂層を用意する工程1、
(2)基材に前記樹脂層を積層し、積層シートを形成する工程2、
(3)熱的方法により、前記樹脂層に孔を形成する工程3、及び
(4)前記発泡剤含有樹脂層を加熱発泡させる工程4。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡積層シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡壁紙として、基材に発泡樹脂層を形成させたものが知られている。そして、近年では、発泡樹脂層に穴をあけて通気性を持たせた発泡壁紙が開発されている。例えば、発泡樹脂層の上から針ロールで多数の細孔を機械的に設ける方法が知られているが、発泡後に壁紙のおもて側から穿孔加工を施すため、基材側の穿孔口付近にササクレ(さかむけ)を生じ、接着剤の均一な塗工性を損なうといった問題があった。
【0003】
また、針エンボスによる穿孔後のエンボス加工(特許文献1)や発泡前の穿孔では、押針によって一次的に樹脂が塑性変形しているだけであるため、発泡によって穴が消失しやすい(穴が塞がる)傾向にあった。
【0004】
一方で、レーザー等を用いて熱により発泡樹脂層に穴をあける穿孔方法も知られているが、穿孔時に発生する熱により孔内面の樹脂が焼けて、壁紙の意匠性を低下させてしまうといった課題があった。
【0005】
従って、意匠性を損なわず、通気性に優れた発泡壁紙の製造方法の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭60−25262
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、意匠性を損なわず、通気性に優れた発泡積層シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、特定の製造工程を含む製造方法によって発泡積層シートを製造することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記の発泡積層シートの製造方法に関する。
1. 以下の工程1〜4を順に含む、発泡積層シートの製造方法:
(1)発泡剤含有樹脂層を有する樹脂層を用意する工程1、
(2)基材に前記樹脂層を積層し、積層シートを形成する工程2、
(3)熱的方法により、前記樹脂層に孔を形成する工程3、及び
(4)前記発泡剤含有樹脂層を加熱発泡させる工程4。
2. 前記孔は、基材を貫通して形成される、上記項1に記載の発泡積層シートの製造方法。
3. 前記孔は、レーザー照射により形成される、上記項1又は2に記載の発泡積層シートの製造方法。
4. 前記樹脂層として、非発泡樹脂層A、前記発泡剤含有樹脂層及び非発泡樹脂層Bからなる樹脂層を用意し、前記樹脂層の前記非発泡樹脂層Bを前記基材に接着させる、上記項1〜3のいずれかに記載の発泡積層シートの製造方法。
5. 前記工程4の前において、前記発泡剤含有樹脂層を有する樹脂層に対して電子線を照射する工程を含む、上記項1〜4のいずれかに記載の発泡積層シートの製造方法。
6. 前記工程4の後において、発泡後の樹脂層にエンボス加工を施す工程を含む、上記項1〜5のいずれかに記載の発泡積層シートの製造方法。
7. 以下の工程1〜4を順に含む、発泡積層シートの製造方法:
(1)発泡剤含有樹脂層を有する樹脂層を用意する工程1、
(2)熱的方法により、前記発泡剤含有樹脂層を有する樹脂層に、孔を形成する工程2、
(3)基材に前記孔を有する樹脂層を積層し、積層シートを形成する工程3、及び
(4)前記発泡剤含有樹脂層を加熱発泡させる工程4。
8. 前記孔は、レーザー照射により形成される、上記項7に記載の発泡積層シートの製造方法。
9. 前記樹脂層として、非発泡樹脂層A、前記発泡剤含有樹脂層及び非発泡樹脂層Bからなる樹脂層を用意し、前記樹脂層の前記非発泡樹脂層Bを前記基材に接着させる、上記項7又は8に記載の発泡積層シートの製造方法。
10. 前記工程4の前において、前記発泡剤含有樹脂層を有する樹脂層に対して電子線を照射する工程を含む、上記項7〜9のいずれかに記載の発泡積層シートの製造方法。
11. 前記工程4の後において、発泡後の樹脂層にエンボス加工を施す工程を含む、上記項7〜10のいずれかに記載の発泡積層シートの製造方法。
【0010】
以下、本発明の発泡積層シートの製造方法について詳細に説明する。
【0011】
本発明の実施形態1の発泡積層シートの製造方法は、以下の工程1〜4:
(1)発泡剤含有樹脂層を有する樹脂層を用意する工程1、
(2)基材に前記樹脂層を積層し、積層シートを形成する工程2、
(3)熱的方法により、前記樹脂層に孔を形成する工程3、及び
(4)前記発泡剤含有樹脂層を加熱発泡させる工程4
を順に含む。
【0012】
また、本発明の実施形態2の発泡積層シートの製造方法は、以下の工程1〜4:
(1)発泡剤含有樹脂層を有する樹脂層を用意する工程1、
(2)熱的方法により、前記発泡剤含有樹脂層を有する樹脂層に、孔を形成する工程2、
(3)基材に前記孔を有する樹脂層を積層し、積層シートを形成する工程3、及び
(4)前記発泡剤含有樹脂層を加熱発泡させる工程4
を順に含む。
【0013】
上記実施形態1及び2の発泡積層シートの製造方法は、発泡剤含有樹脂層を加熱発泡する前に、熱的方法により、発泡剤含有樹脂層を有する樹脂層に孔を形成するため、穿孔部の樹脂が除去されているため加熱発泡後に孔が完全に塞がることはなく、発泡積層シートに通気性を付与することができる。また、穿孔時の熱によって孔内面の樹脂が焼けても、その後の発泡で樹脂が変形するため樹脂焼けが目立たなくなる。また、この方法によれば、発泡積層シートの基材側(発泡積層シート裏側)に穿孔によるササクレができないため、基材に接着剤を均一に塗工することが可能である。また、押針により発泡体としての製品厚みを低下させることがないため、意匠性や不陸性(下地の凹凸をカバーする性能)の低下がない。
【0014】
この様に、本発明の発泡積層シートの製造方法によれば、意匠性を損なわず、通気性に優れた発泡積層シートを得ることができる。
【0015】
以下、本発明の実施形態1及び2の製造方法について詳細に説明する。
【0016】
(1) 実施形態1
工程1
実施形態1の工程1では、発泡剤含有樹脂層を有する樹脂層を用意する。つまり、工程1では発泡剤含有樹脂層を単層で形成してもよく、あるいは発泡剤含有樹脂層を有する複数層からなる樹脂層(例えば、非発泡樹脂層A、前記発泡剤含有樹脂層及び非発泡樹脂層Bからなる樹脂層)を形成してもよい。以下の説明では、便宜的にこれらを「樹脂層」と総称し、樹脂層には発泡剤含有樹脂層単層の場合も含むものとして説明する。
【0017】
(i)発泡剤含有樹脂層
発泡剤含有樹脂層を製膜後、発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより、発泡樹脂層が形成される。
【0018】
本発明で用いる発泡剤含有樹脂層は、樹脂成分としてオレフィン系樹脂を含有することが好ましく、1)ポリエチレン(PE)及び2)エチレンとエチレン以外の成分とをモノマーとするエチレン共重合体(以下、「エチレン共重合体」と略記する)の少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0019】
ポリエチレンは、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が広く使用できる。
【0020】
エチレン共重合体は融点及びMFRの観点で押出し製膜に適している。エチレン共重合体としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)及びエチレン−αオレフィン共重合体等が挙げられる。
【0021】
これらのエチレン共重合体は単独又は2種以上を混合して使用できる。これらのエチレン共重合体の中でも特にエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体及びエチレン−メタクリル酸共重合体の少なくとも1種が好ましく、これらと他の樹脂とを併用する場合には、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体及びエチレン−メタクリル酸共重合体の少なくとも1種の含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
【0022】
また、エチレン共重合体は、エチレン以外のモノマーの含有量としては、5〜25質量%が好ましく、9〜20質量%がより好ましい。このような共重合比率を採用することにより、押出し製膜性がより高まる。具体例としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニルの共重合比率(VA量)としては9〜25質量%が好ましく、9〜20質量%がより好ましい。エチレン−メチルメタクリレート共重合体は、メチルメタクリレートの共重合比率(MMA量)としては5〜25質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましい。また、エチレン−メタクリル酸共重合体は、メタクリル酸の共重合比率(MAA量)としては2〜15質量%が好ましく、5〜11質量%がより好ましい。
【0023】
本発明では、発泡剤含有樹脂層に含まれる樹脂成分は、JIS K 6922に記載の190℃、荷重21.18Nの条件で測定したMFR(メルトフローレート)が10〜100g/10分であることが好ましい。MFRが上記範囲内の場合には、発泡剤含有樹脂層を押出し製膜により形成する際のせん断発熱等による温度上昇が少なく、非発泡状態で製膜できるため、後に絵柄模様層を形成する場合には、平滑な面に印刷処理をすることができて柄抜け等が少ない。MFRが大きすぎる場合は、樹脂が軟らかすぎることにより、製膜に適した溶融張力が十分に得られず、形成される発泡樹脂層の耐傷性が不十分となるおそれがある。
【0024】
発泡剤含有樹脂層を形成する樹脂組成物としては、例えば、上記樹脂成分、無機充填剤、顔料、熱分解型発泡剤、発泡助剤、架橋助剤等を含む樹脂組成物を好適に使用できる。その他にも、安定剤、滑剤等を添加剤として使用できる。
【0025】
熱分解型発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスホルムアミド等のアゾ系;オキシベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジド系などが挙げられる。熱分解型発泡剤の含有量は、発泡剤の種類、発泡倍率等に応じて適宜設定できる。発泡倍率の観点からは、7倍以上、好ましくは7〜10倍程度であり、熱分解型発泡剤は、樹脂成分100質量部に対して、1〜20質量部程度とすることが好ましい。
【0026】
発泡助剤は、使用する樹脂により適宜選定されるが、一般的には金属酸化物及び/又は脂肪酸金属塩が好ましく、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、オクチル酸亜鉛、オクチル酸カルシウム、オクチル酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等を使用することができる。これらの発泡助剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、0.3〜10質量部程度が好ましく、1〜5質量部程度がより好ましい。
【0027】
なお、使用樹脂がEMAA及び/又はEAAのとき、ADCA発泡剤と組み合わせて用いる場合には、発泡工程おいて、EMAA及び/又はEAAのアクリル酸部と金属系発泡助剤反応により発泡助剤としての効果が損なわれるという問題がある。そのため、EMAA及び/又はEAAとADCA発泡剤とを組み合わせて用いる場合には、特開2009-197219号公報に説明されている通り、発泡助剤としてカルボン酸ヒドラジド化合物又はアジピン酸ジヒドラジド(ADHS)を用いることが好ましい。このとき、カルボン酸ヒドラジド化合物又はアジピン酸ジヒドラジドはADCA発泡剤1質量部に対して0.2〜1質量部程度用いることが好ましい。
【0028】
無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物等が挙げられる。無機充填剤を含むことにより、目透き抑制効果、表面特性向上効果等が得られる。無機充填剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して0〜100質量部程度が好ましく、20〜70質量部程度がより好ましい。
【0029】
顔料については、無機顔料として、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムイエロー、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン、硫化亜鉛等が挙げられる。また、有機顔料として、例えば、アニリンブラック、ペリレンブラック、アゾ系(アゾレーキ、不溶性アゾ、縮合アゾ)、多環式(イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ペリノン、フラバントロン、アントラピリミジン、アントラキノン、キナクリドン、ペリレン、ジケトピロロピロール、ジブロムアンザントロン、ジオキサジン、チオインジゴ、フタロシアニン、インダントロン、ハロゲン化フタロシアニン)等が挙げられる。顔料の含有量は、樹脂成分100質量部に対して10〜50質量部程度が好ましく、15〜30質量部程度がより好ましい。
【0030】
本発明では、発泡剤含有樹脂層は電子線照射により樹脂架橋されていてもよい。発泡剤含有樹脂層に電子線を照射する方法及び発泡させる方法としては、後記の製造方法に記載された方法に従って実施すればよい。なお、発泡剤含有樹脂層の厚さは40〜100μm程度が好ましく、発泡後の発泡樹脂層の厚さは300〜700μm程度が好ましい。
【0031】
(ii)非発泡樹脂層A及びB
発泡剤含有樹脂層は、その片面又は両面に非発泡樹脂層を有していてもよい。例えば、発泡剤含有樹脂層を有する樹脂層が、非発泡樹脂層A、前記発泡剤含有樹脂層及び非発泡樹脂層Bからなる樹脂層であることが好ましい。
【0032】
発泡剤含有樹脂層の裏面(基材が積層される面)には、基材との接着力を向上させる目的で非発泡樹脂層B(接着樹脂層)を有してもよい。
【0033】
非発泡樹脂層B(接着樹脂層)の樹脂成分としては、特に限定はないが、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が好ましい。EVAは公知又は市販のものを使用することができる。特に、酢酸ビニル成分(VA成分)が10〜46質量%であるものが好ましく、15〜41質量%であるものがより好ましい。
【0034】
非発泡樹脂層B(接着樹脂層)の厚さは限定的ではないが、3〜50μm程度、好ましくは3〜20μm程度とすることができる。
【0035】
発泡剤含有樹脂層の上面には、絵柄模様層を形成する際の絵柄模様を鮮明にしたり発泡樹脂層の耐傷性を向上させたりする目的で非発泡樹脂層Aを有してもよい。
【0036】
非発泡樹脂層Aの樹脂成分としては、ポリオレフィン系樹脂、メタクリル系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられ、その中でもポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0037】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の樹脂単体、炭素数が4以上のαオレフィンの共重合体(線状低密度ポリエチレン)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂ケン化物、アイオノマー等の少なくとも1種が挙げられる。これらの樹脂成分は単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0038】
また、特に優れた耐スクラッチ性、耐摩耗性を得るためには、前記樹脂成分として、アクリル酸(CH=CHCOOH)及びメタクリル酸(CH=C(CH)COOH)の少なくとも1種のモノマーとエチレンとの組み合わせにより得られる共重合体を樹脂成分として好適に用いることができる。より具体的には、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体及びアイオノマー樹脂の少なくとも1種を用いることが望ましい。アイオノマー樹脂としては、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の分子間をナトリウム、亜鉛等の金属のイオンで分子間結合した構造を有する樹脂が使用できる。このような樹脂成分を用いる場合には、特に樹脂中の水素結合等に起因する強固な層を形成することができる。前記共重合体におけるアクリル酸又はメタクリル酸の含有量は限定的ではないが、15質量%以下が好ましく、4〜15質量%程度がより好ましい。これらの樹脂としては、市販品を使用することができる。
【0039】
前記樹脂組成物には、公知の添加剤を配合することもできる。その場合、樹脂組成物中の前記樹脂成分の含有量は限定的ではないが、通常70〜100質量%の範囲内で適宜設定することが好ましい。
【0040】
非発泡樹脂層Aの厚さは限定的ではないが、3〜50μm程度、好ましくは3〜20μm程度とすることができる。
【0041】
本発明では、後記製造上の観点からも、基材上に非発泡樹脂層B、発泡剤含有樹脂層及非泡樹脂層Aが順に形成された態様が好ましい。
【0042】
非発泡樹脂層Aの樹脂成分のメルトフローレート値は、用いる樹脂成分の種類等によるが、一般に10g/10分以上の範囲内で適宜設定すれば良い。通常は10〜100g/10分、特に10〜95g/10分、さらに20〜80g/10分の範囲にあることが好ましい。このような数値範囲のものを使用することにより、より優れた耐スクラッチ性、耐摩耗性等を得ることができる。
【0043】
(iii)各層の積層
樹脂層を用意する方法としては、特に限定されず、例えば、Tダイ押出し機による単層押出し又は多層同時押出し等が挙げられる。発泡剤含有樹脂層がその片面又は両面に非発泡樹脂層を有する場合には、Tダイ押出し機による同時押出し製膜が好適である。例えば、両面に非発泡樹脂層を有する場合には、3つの層に対応する溶融樹脂を同時に押出すことにより3層の同時成膜が可能なフィードブロック方式やマルチマニホールドタイプのTダイを用いることができる。
【0044】
なお、発泡剤含有樹脂層を形成する樹脂組成物に無機充填剤が含まれる場合であって、発泡剤含有樹脂層を押出し製膜により形成する場合には、押出し機の押出し口(いわゆるダイスリップ)に無機充填剤の残渣(いわゆる目やに)が発生し易く、これが発泡剤含有樹脂層表面の異物となり易い。そのため、発泡剤含有樹脂層を形成する樹脂組成物に無機充填剤が含まれる場合には、上記のように3層同時押出し製膜することが好ましい。その場合には、非発泡樹脂層A及び非発泡樹脂層Bを、無機充填剤を含まない層として、発泡剤含有樹脂層とともに同時押出し成形することが好ましい。即ち、発泡剤含有樹脂層を非発泡樹脂層によって挟み込んだ態様で同時押出し製膜することにより、前記目やにの発生を抑制することができる。
【0045】
工程2
実施形態1の工程2では、基材に前記発泡剤含有樹脂層を有する樹脂層を積層し、積層シートを形成する。例えば、前記樹脂層が発泡剤含有樹脂層及び非発泡樹脂層Aを溶融押し出しにより積層したものである場合、前記樹脂層の発泡剤含有樹脂層側に基材を積層する。また、前記樹脂層が非発泡樹脂層B、発泡剤含有樹脂層及び非発泡樹脂層Aの順となるように溶融押し出しにより積層したものである場合、前記樹脂層の非発泡樹脂層B側を基材に接着させる。なお、本発明において、少なくとも樹脂層を、基材に積層したものを積層シートという。
【0046】
基材としては限定されず、公知の繊維質基材(裏打紙)などが利用できる。
【0047】
具体的には、壁紙用一般紙(パルプ主体のシートを既知のサイズ剤でサイズ処理したもの);難燃紙(パルプ主体のシートをスルファミン酸グアニジン、リン酸グアジニン等の難燃剤で処理したもの);水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機添加剤を含む無機質紙;上質紙;薄用紙;繊維混抄紙(パルプと合成繊維を混合して抄紙したもの)などが挙げられる。
【0048】
繊維質基材の坪量は限定的ではないが、50〜300g/m程度が好ましく、50〜120g/m程度がより好ましい。
【0049】
基材に前記樹脂層を積層する方法としては限定的ではない。例えば、基材と前記樹脂層とを加圧・積層するのが好ましい。特に、加圧・積層する前に、基材表面に加熱を行うことが好ましい。加熱温度は限定的ではないが、80〜160℃が好ましい。加熱時間は、加熱温度等に応じて適宜設定すればよい。
【0050】
工程3
実施形態1の工程3では、熱的方法により、積層シートの樹脂層に孔を形成する。
【0051】
孔の形成は、積層シートのおもて面(樹脂側)からでも良いが、裏面(基材側)から行っても良い。なお、基材の通気性が低い場合は、樹脂層と基材を貫通する孔を形成することが好ましい。
【0052】
積層シートに孔を形成することにより発泡積層シートとした場合の通気性を向上させることができ、透湿度を調節することができる。また、熱的方法により孔を形成するので、穿孔部分の樹脂が除去されるため、発泡時に孔が塞がることはない。更に、発泡工程の前に、孔を形成するので、孔内面の樹脂焼けを目立たなくすることができる。
【0053】
本発明の熱的方法とは、熱エネルギーにより樹脂に孔を形成する方法であれば限定されず、各種レーザーを照射する方法が挙げられる。例えば、炭酸ガスレーザーやエキシマレーザーといったガスレーザ−のほか、YAGレーザーといった固体レーザーがある。熱的方法による穿孔加工の中でも、より確実に効率よく貫通孔を形成することができ、穿孔部に被穿孔層が残らないという理由から、炭酸ガスによるレーザー照射が好ましく、公知のレーザー照射穿孔機により加工すればよい。
【0054】
レーザー照射による焼き抜き加工を行うことで、樹脂を除去でき、針ロールによるエンボス加工で見られる様な発泡後の孔の塞ぎを抑えることができる。
【0055】
樹脂層に孔を形成するとき、穿孔加工を施すパターンとしては、樹脂層に対して格子状、千鳥状及び不規則状等、必要に応じて選定できる。
【0056】
格子状の穿孔加工を施して、孔を形成するときは、好ましくは1〜20mmピッチ、より好ましくは2〜10mmピッチである。前記「ピッチ」とは、隣接する孔の間隔である。
【0057】
また、孔の大きさとしては、目立ち難さという理由から、40〜250μm径の孔が好ましく、45〜200μm径の孔がより好ましく、50〜150μm径の孔が更に好ましい。
【0058】
工程4
実施形態1の工程4では、発泡剤含有樹脂層を加熱発泡させて、発泡樹脂層を形成する。
【0059】
加熱条件は、熱分解型発泡剤の分解により発泡樹脂層が形成される条件ならば限定されない。加熱温度は210〜250℃程度が好ましく220〜240℃程度がより好ましい。加熱時間は15〜50秒程度が好ましく、20〜45秒程度がより好ましい。
【0060】
その他の工程
(i)電子線の照射
本発明では、実施形態1の前記工程4の前、すなわち発泡剤含有樹脂層を加熱発泡させる前の工程において、前記発泡剤含有樹脂層を有する樹脂層に対して電子線を照射することができる。
【0061】
前記発泡剤含有樹脂層を有する樹脂層に対して電子線照射することにより、樹脂成分を架橋して、発泡樹脂層の表面強度、発泡特性(発泡ガスの保持力を向上させる効果)等を調整することができる。電子線のエネルギーは、150〜250kV程度が好ましく、175〜200kV程度がより好ましい。照射量は、10〜100kGy程度が好ましく、10〜60kGy程度がより好ましい。電子線源としては、公知の電子線照射装置が使用できる。
【0062】
この電子線照射は、後述する絵柄模様層や表面保護層を形成した後でもよい。発泡剤含有樹脂層の表面(又は非発泡樹脂層Aの表面)に電離放射線硬化型樹脂を含む表面保護層を積層した後に、電子線を照射する場合は、電子線照射によって発泡剤含有樹脂層及び表面保護層を同時に樹脂架橋させることができる。
【0063】
電子線は、樹脂層のおもて面側から裏面側に向けて照射してもよく、また裏面側からおもて面側に向けて照射してもよい。なお、本明細書において、おもて面側とは樹脂層側をいい、裏面側とは基材側をいう。後述する図1では、上側がおもて面側であり、下側が裏面側である。
【0064】
(ii)絵柄模様層の形成
実施形態1では、発泡剤含有樹脂層の表面(又は非発泡樹脂層Aの表面)には、必要に応じて絵柄模様層を形成してもよい。
【0065】
絵柄模様層は、樹脂層に意匠性を付与する。絵柄模様としては、例えば木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。絵柄模様は、発泡壁紙の種類に応じて選択できる。
【0066】
絵柄模様層は、例えば、非発泡樹脂層Aのおもて面に絵柄模様を印刷することで形成できる。印刷手法としては、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等が挙げられる。印刷インキとしては、着色剤、結着材樹脂、溶剤を含む印刷インキが使用できる。これらのインキは公知又は市販のものを使用してもよい。
【0067】
着色剤としては、例えば、前記の発泡剤含有樹脂層で使用されるような顔料を適宜使用することができる。
【0068】
結着材樹脂は、樹脂層の種類に応じて設定できる。例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。
【0069】
溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水などが挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、単独又は混合物の状態で使用できる。
【0070】
絵柄模様層の厚みは、絵柄模様の種類より異なるが、一般には0.1〜10μm程度とすることが好ましい。
【0071】
発泡剤含有樹脂層又は非発泡樹脂層Aに対して、絵柄模様層が密着し難い場合には、必要に応じて、層と層の間にプライマー層を介してもよい。
【0072】
形成された孔に印刷インキの滲み又は染込みを防ぐことができるという理由から、樹脂層又は積層シートに孔を形成する前に、発泡剤含有樹脂層の表面(又は非発泡樹脂層Aの表面)に、絵柄模様層を形成することが好ましい。例えば、実施形態1では、工程1又は2において絵柄模様層を形成することが好まし。また、後述する実施形態2では、工程1において絵柄模様層を形成することが好ましい。
【0073】
(iii)表面保護層の形成
実施形態1では、発泡剤含有樹脂層又は絵柄模様層の表面には艶調整及び/又は表面の保護を目的として表面保護層を更に設けることができる。
【0074】
表面保護層の種類は限定的ではない。オレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂やアクリル系樹脂やウレタン系樹脂など絵柄模様層と同等な結着剤樹脂や溶剤を使用した1液硬化型または2液硬化型樹脂などが使用できる。
【0075】
また、発泡壁紙の表面強度(耐スクラッチ性など)、耐汚染性及び絵柄模様層の保護等を目的として表面保護層を形成する場合には、電離放射線硬化型樹脂を樹脂成分として含有するものが好適である。電離放射線硬化型樹脂としては、電子線照射によってラジカル重合(硬化)するものが好ましい。
【0076】
電離放射線硬化型樹脂としては特に限定されず、電子線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に含むプレポリマー(オリゴマーを含む)及び/又はモノマーを主成分とする透明性樹脂を使用できる。これらのプレポリマー又はモノマーは、単体又は複数を混合して使用できる。硬化反応は、通常、架橋硬化反応である。具体的には、前記プレポリマー又はモノマーとしては、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物が挙げられる。また、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによるポリエン/チオール系のプレポリマーも好ましい。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。
【0077】
また、艶調整のためには、シリカなどの既知フィラーを含有する表面保護層の形成が望ましい。また、滑り性や汚れの拭取り易さを付与するために、シリコーンなどの添加剤も加えることができる。なお、必要に応じて、消臭剤や抗菌剤などの機能性材料を添加しても良い。
【0078】
表面保護層の形成方法としては、グラビア印刷や溶融成型などの公知の方法が採用できる。なお、絵柄模様層と表面保護層との密着性が十分に得られない場合には、絵柄模様層の表面を易接着処理(プライマー処理)した後に表面保護層を設けることもできる。
【0079】
表面保護層の厚みは限定的ではないが、0.1〜15μm程度が好ましい。表面保護層は、単層からなるものでもよく、2層以上の層が積層されているものでもよい。例えば、最表面に硬化樹脂層が形成され、その下に熱可塑性樹脂が積層されている構造であってもよい。
【0080】
上記絵柄模様層の形成及び表面保護層の形成は、工程1、もしくは工程2〜4のいずれかの後に行えばよい。
【0081】
(iv)エンボス加工
本発明では、実施形態1の前記工程4の後において、発泡後の樹脂層の表面(おもて面)にエンボス加工を施すことが好ましい。エンボス加工によりエンボス模様を付すことができる。
【0082】
エンボス加工は、エンボス版の押圧等、公知の手段により実施することができる。発泡樹脂層を加熱軟化後、エンボス版を押圧することにより所望のエンボス模様を賦型できる。エンボス模様としては、例えば木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。
【0083】
(2) 実施形態2
実施形態2の工程1及び工程4は、前述の実施形態1と同様に行うことができる。そのため、重複する内容については説明を省略する。
【0084】
工程2
実施形態2の工程2では、熱的方法により、発泡剤含有樹脂層を有する樹脂層に、孔を形成する。
【0085】
孔の形成は、発泡剤含有樹脂層を有する樹脂層が、例えば、非発泡樹脂層A/発泡剤含有樹脂層/非発泡樹脂層B(接着剤層)からなる樹脂層である場合に、非発泡樹脂層A側から孔を形成してもよく、非発泡樹脂層B側から孔を形成しても良い。
【0086】
実施形態2では、樹脂層に対して孔を形成することにより、発泡壁紙とした場合の通気性を向上させることができ、透湿度を調節することができる。また、熱的方法により孔を形成するので、孔が塞がることはなく、発泡積層シートの基材側(発泡積層シート裏側)にササクレを生じることがない。更に、加熱発泡工程の前に、孔を形成するので、孔内面及び孔周辺の樹脂焼けを防ぐことができる。
【0087】
また、この方法によれば、後述の工程3において基材に樹脂層を積層する前に、樹脂層に孔を形成するので、通気性のある繊維質基材を用いた場合でも、基材に孔を形成する必要がなく、発泡積層シートとしての引張強度を維持することができる。また、基材に樹脂層を積層した後の穿孔底面部に樹脂が残ることはない。更に、その貫通孔は、下地の基材まで貫通する様な全層貫通ではないため、発泡壁紙を貼り付ける際の接着剤塗布時においても、穿孔部からの接着剤の染み出しも無く好ましい。
【0088】
樹脂層に孔を形成する穿孔加工は、熱的方法による穿孔加工である。穿孔加工の詳細は前述した通りである。
【0089】
工程3
実施形態2の工程3では、基材に、前記孔を有する樹脂層を積層し、積層シートを形成する。基材に樹脂層を積層する方法及び基材の詳細は、前述した通りである。
【0090】
その他の工程
前述の実施形態1と同様に行うことができる。
【0091】
なお、発泡積層シートの通気性を示す指標として透気度がある。透気度は、紙の一方の面から他方の面に空気が抜ける速さ(空気の透過速度)によって決まる圧力により、以下の式を用いて、ISO透気度 P[μm/(Pa・s)]により測定することができる。
【0092】
P=127/tk
k:王研式透気度試験機による透気抵抗度指示値の平均値(s)である。測定装置としては、JIS P 8117:2009 紙及び板紙−透気度及び透気抵抗度試験方法(中間領域)−ガーレー法 6 王研式試験機法 を使用することができる。
【0093】
本発明の発泡積層シートのISO透気度は、0.1以上であることが好ましい。
【0094】
図1は、本発明の実施形態1の発泡積層シートの製造方法を表す概念図である。図1の発泡積層シートの製造方法は、(1)発泡剤含有樹脂層を有する樹脂層を用意する工程1、(2)基材に前記樹脂層を積層し、積層シートを形成する工程2、(3)熱的方法により、前記積層シートに、前記樹脂層に孔を形成する工程3、及び(4)前記発泡剤含有樹脂層を加熱発泡させる工程4を順に示している。なお、図1では、前記孔が、前記樹脂層のおもて面から基材を貫通して形成される態様を示している。
【0095】
図2は、本発明の実施形態2の発泡積層シートの製造方法を表す概念図である。図2の発泡積層シートの製造方法は、(1)発泡剤含有樹脂層を有する樹脂層を用意する工程1、(2)熱的方法により、前記発泡剤含有樹脂層を有する樹脂層に、孔を形成する工程2、(3)基材に前記孔を有する樹脂層を積層し、積層シートを形成する工程3、及び(4)前記発泡剤含有樹脂層を加熱発泡させる工程4を順に示している。
【0096】
また、図1及び2では、前記発泡剤含有樹脂層を有する樹脂層として、4.非発泡樹脂層A、3.発泡剤含有樹脂層及び2.非発泡樹脂層Bからなる樹脂層を示しており、前記樹脂層の2.非発泡樹脂層Bを1.基材に接着(積層)させる態様を示している。
【0097】
また、発泡剤含有樹脂層を加熱発泡させる前に、前記発泡剤含有樹脂層を有する樹脂層に対して電子線を照射する工程を含んでもよく、前記工程4の後において、発泡後の樹脂層にエンボス加工を施す工程を含んでもよい。
【発明の効果】
【0098】
本発明の発泡積層シートの製造方法は、発泡剤含有樹脂層を加熱発泡する前に、熱的方法により、発泡剤含有樹脂層を有する樹脂層に孔を形成するため、穿孔部の樹脂が除去されているため加熱発泡後に孔が完全に塞がることはなく、発泡積層シートに通気性を付与することができる。また、穿孔時の熱によって孔内面の樹脂が焼けても、その後の発泡で樹脂が変形するため樹脂焼けが目立たなくなる。また、この方法によれば、発泡積層シートの基材側(発泡積層シート裏側)に穿孔によるササクレができないため、基材に接着剤を均一に塗工することが可能である。また、押針により発泡体としての製品厚みを低下させることがないため、意匠性や不陸性(下地の凹凸をカバーする性能)の低下がない。
【0099】
この様に、本発明の発泡積層シートの製造方法によれば、意匠性を損なわず、通気性に優れた発泡積層シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の実施形態1の発泡積層シートの製造方法を表す概念図である。
【図2】本発明の実施形態2の発泡積層シートの製造方法を表す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0101】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0102】
実施例1
3種3層マルチマニホールドTダイ押出し機を用いて、非発泡樹脂層A/発泡剤含有樹脂層/非発泡樹脂層B(接着樹脂層)の順に厚み5μm/70μm/5μmになるように押出し製膜した。これにより、非発泡樹脂層A/発泡剤含有樹脂層/非発泡樹脂層Bからなる樹脂層を得た。
【0103】
押出し条件は、非発泡樹脂層Aを形成するための樹脂を収容したシリンダー温度は130℃とし、発泡剤含有樹脂層を形成するための樹脂組成物を収容したシリンダー温度は120℃とし、非発泡樹脂層Bを形成するための樹脂を収容したシリンダー温度は100℃とした。また、ダイス温度はいずれも120℃とした。
【0104】
次に、繊維質基材(裏打紙)(壁紙用紙WK―665 興人製)を用意し、前記樹脂層の非発泡樹脂層B側が前記繊維質基材に合うように重ね、この繊維質基材から120℃に加熱した後、ラミネートロールを通して、前記繊維質基材に前記樹脂層を接着させた。
【0105】
次に、前記樹脂面に対して電子線(195KV、30KGy)を照射して、前記樹脂層を樹脂架橋させた。
【0106】
次に、非発泡樹脂層A上に、コロナ放電処理を行った後、非発泡樹脂層A上に、グラビア印刷機により、水性インキ「ハイドリック(大日精化工業(株)製)」を用いて織物絵柄を印刷し、更に同装置においてオーバープリントコートとして水性インキ「ALTOP(大日精化工業製)」をコートして、表面保護層を形成した。この様にして、表面保護層/絵柄模様層/非発泡樹脂層A/発泡剤含有樹脂層/非発泡樹脂層B/基材からなる積層シートを得た。
【0107】
次にレーザー穿孔加工機(MCT−600型 ロフィン・バーゼルジャパン製 スキャン型)を用いて(COレーザー使用、出力100W)、前記樹脂層に対して5mmピッチの格子状に、穿孔加工を施し、200μm径の孔を形成した。
【0108】
次に、上記積層シートを220℃30秒加熱して、発泡剤含有樹脂層を発泡させて発泡積層シートを得た。
【0109】
各層は、それぞれ以下の成分を用いて形成した。
【0110】
【表1】

【0111】
比較例1
表面保護層/絵柄模様層/非発泡樹脂層A/発泡剤含有樹脂層/非発泡樹脂層B/基材からなる積層シートを得、次いで当該積層シートを220℃30秒加熱して、発泡剤含有樹脂層を発泡させた後に、レーザー穿孔加工機を用いて、前記樹脂層に対して穿孔加工を施し、孔を形成させた以外は、実施例1と同様にして発泡積層シートを得た。
【0112】
意匠性の評価
実施例1及び比較例1で作製した発泡積層シートについて、意匠性を観察した。意匠性の試験方法及び評価基準は次の通りである。
【0113】
光学顕微鏡にて、ランダムに選定した穿孔5点を発泡積層シートのおもて面から200倍で観察し、穿孔付近の樹脂焼けが確認できる個数を評価した。
○:1点以下
△:2〜3点
×:4点以上
その結果を下記表1に示す。
【0114】
【表2】

【符号の説明】
【0115】
1. 基材
2. 非発泡樹脂層B
3. 発泡剤含有樹脂層
3’. 発泡樹脂層
4. 非発泡樹脂層A

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程1〜4を順に含む、発泡積層シートの製造方法:
(1)発泡剤含有樹脂層を有する樹脂層を用意する工程1、
(2)基材に前記樹脂層を積層し、積層シートを形成する工程2、
(3)熱的方法により、前記樹脂層に孔を形成する工程3、及び
(4)前記発泡剤含有樹脂層を加熱発泡させる工程4。
【請求項2】
前記孔は、基材を貫通して形成される、請求項1に記載の発泡積層シートの製造方法。
【請求項3】
前記孔は、レーザー照射により形成される、請求項1又は2に記載の発泡積層シートの製造方法。
【請求項4】
前記樹脂層として、非発泡樹脂層A、前記発泡剤含有樹脂層及び非発泡樹脂層Bからなる樹脂層を用意し、前記樹脂層の前記非発泡樹脂層Bを前記基材に接着させる、請求項1〜3のいずれかに記載の発泡積層シートの製造方法。
【請求項5】
前記工程4の前において、前記発泡剤含有樹脂層を有する樹脂層に対して電子線を照射する工程を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の発泡積層シートの製造方法。
【請求項6】
前記工程4の後において、発泡後の樹脂層にエンボス加工を施す工程を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の発泡積層シートの製造方法。
【請求項7】
以下の工程1〜4を順に含む、発泡積層シートの製造方法:
(1)発泡剤含有樹脂層を有する樹脂層を用意する工程1、
(2)熱的方法により、前記発泡剤含有樹脂層を有する樹脂層に、孔を形成する工程2、
(3)基材に前記孔を有する樹脂層を積層し、積層シートを形成する工程3、及び
(4)前記発泡剤含有樹脂層を加熱発泡させる工程4。
【請求項8】
前記孔は、レーザー照射により形成される、請求項7に記載の発泡積層シートの製造方法。
【請求項9】
前記樹脂層として、非発泡樹脂層A、前記発泡剤含有樹脂層及び非発泡樹脂層Bからなる樹脂層を用意し、前記樹脂層の前記非発泡樹脂層Bを前記基材に接着させる、請求項7又は8に記載の発泡積層シートの製造方法。
【請求項10】
前記工程4の前において、前記発泡剤含有樹脂層を有する樹脂層に対して電子線を照射する工程を含む、請求項7〜9のいずれかに記載の発泡積層シートの製造方法。
【請求項11】
前記工程4の後において、発泡後の樹脂層にエンボス加工を施す工程を含む、請求項7〜10のいずれかに記載の発泡積層シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−72159(P2013−72159A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213215(P2011−213215)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】