説明

発熱抑制器

【課題】 開閉弁を一気に開いたときのその開閉弁の二次側管路内での熱の発生を抑え、かつ、構造を簡素化させる。
【解決手段】 発熱抑制器108は、ガス容器100へのガスの充填およびガス容器100に蓄えられたガスの消費の際に発生する発熱を抑制する。発熱抑制器108は、開閉弁102に接続されガスが通過するガス通過路130,134と、ガス膨張室132とを備える。ガス通過路130は開閉弁102に接続される。ガス通過路130,134をガスが通過する。ガス膨張室132はガス通過路130,134と連通する。ガス膨張室132でガスが膨張する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱抑制器に関し、特に、開閉弁を一気に開いたときのその開閉弁の二次側管路内での熱の発生を抑え、かつ、構造を簡素化させることができる、発熱抑制器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造に使用されるガスの多くは危険なガスである。危険といわれる理由の例には毒性と可燃性と腐食性とがある。このような背景があるので、半導体製造設備においては、災害発生時に遠隔操作でこれらのガスの供給を緊急遮断する必要がある。そのため、エア式アクチュエータ弁が多く利用されている。エア式アクチュエータ弁はエアの供給と遮断とを行うことで自動的に開閉できる。
【0003】
しかしエア式アクチュエータ弁には、ハンドル付手動弁と異なり、人間の手による「ゆっくり開ける」動作が出来ないという問題点が存在している。すなわち、エア式アクチュエータ弁は一気に開いたり一気に閉じたりする。エア式アクチュエータ弁を一気に開くことによって、その弁の二次側管路(その弁を通過するガスがその弁から出るためのその弁の内部の管路およびその弁の外部にあってその管路の下流にあたる管路のこと。そのガスがその弁の中へ入るための管路およびそれに続くその弁の内部の管路を「一次側管路」と称する。)内で断熱圧縮により大きな熱が発生することがある。二次側管路を流れるガスの種類によっては、その熱がガス自体および半導体製造機器に悪影響を与えることがある。その熱によって二次側管路内のガスケットなどの可燃物が燃焼するという事故に至ることもある。
【0004】
こういった問題は人間の手によりハンドル付手動弁を誤って一気に開く場合にも発生する。また、こういった問題は、半導体製造設備に限らず、様々な設備において生じる。
【0005】
上述した問題を解決するため、特許文献1は、高圧ガス容器弁にかかる発明を開示している。その高圧ガス容器弁は、弁体開閉のためのアクチュエータを備えている。この発明の特徴は、そのアクチュエータへ供給するアクチュエータ駆動用の流体(以下、「駆動用流体」と称する。)の流量をオリフィスで絞っていることである。
【0006】
特許文献1に開示された高圧ガス容器弁によれば、その駆動用流体の流量をオリフィスで絞ることにより弁体をゆっくり開くことができる。弁体をゆっくり開くことができるので、弁体を開いた場合の断熱圧縮によるガス温度上昇を抑制できる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された高圧ガス容器弁には、弁体を開くための所要時間の合計が長すぎるという問題がある。
【0008】
特許文献2に開示された発明は、上述した問題を解決する。特許文献2に開示された発明は、制御器にかかる発明である。その制御器は、ダイヤフラム弁に接続される。その制御器は、ダイヤフラム弁開閉のためのアクチュエータを備えている。この発明の特徴は、そのアクチュエータが流量調整弁に加え補助連通路と緩衝機構とを備えていることである。緩衝機構は調圧ばねなどから構成される。駆動用流体をアクチュエータへ供給し始める際、駆動用流体は流量調整弁からも補助連通路からもアクチュエータ内の圧力室に入る。アクチュエータ内のピストンの移動距離が所定値を越えると補助連通路は閉鎖される。これにより、アクチュエータ内のピストンの移動距離が所定値を越えると、流量調整弁を通過した駆動用流体のみが圧力室に入ることになる。緩衝機構が設けられているので、補助連通路が閉鎖される前のピストンの動きがそのままダイヤフラム弁に伝わることはない。このため、補助連通路は閉鎖される前において、アクチュエータ内のピストンが移動してダイヤフラム弁が開放されてしまうことを防止できる。
【0009】
特許文献2に開示された制御器によれば、駆動用流体の供給開始直後における駆動用流体の流量を多くできる。緩衝機構が設けられているので、この時期はダイヤフラム弁の開閉にほとんど影響がない。そのため、ダイヤフラム弁を一気に開いたことによるガス温度上昇の防止とダイヤフラム弁の開放に要する時間の短縮とを図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−30399号公報
【特許文献2】特開2005−325893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献2に開示された制御器には、次のような問題点が存在する。第1の問題点は、ダイヤフラム弁を開くための時間につき改良の余地があるという問題点である。特許文献2に開示された制御器を用いた場合にもダイヤフラムをゆっくり開けている期間が存在する。つまり、特許文献2に開示された制御器はダイヤフラムを一気に開くことができない。第2の問題点は、特許文献2に開示された制御器を用いた場合、その構造が複雑であるという問題点である。構造が複雑であることは制御器コストの上昇につながる。しかも、特許文献2に開示された制御器は1つのダイヤフラム弁しか制御できない。このため、ダイヤフラム弁の数だけこの制御器を用意する必要がある。ダイヤフラム弁の数だけ制御器を用意する必要があることは、構造の複雑さという問題の影響をさらに大きくしている。
【0012】
本発明は、このような問題点を解消するためになされたものである。その目的とするところは、開閉弁を一気に開いたときのその開閉弁の二次側管路内での熱の発生を抑え、かつ、構造を簡素化させることができる、発熱抑制器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明のある局面に従うと、発熱抑制器108,200,240,270,280,290,300は、管路を開閉する開閉弁102に接続される。発熱抑制器108,200,240,270,280,290,300は、開閉弁102を介したガス容器100へのガスの充填およびガス容器100に蓄えられたガスの消費の際に用いられる。発熱抑制器108,200,240,270,280,290,300は、ガス通過路130,134,220,224,250,254,291と、ガス膨張室132,222,252,350とを備える。ガス通過路130,134,220,224,250,254,291は開閉弁102に接続される。ガス通過路130,134,220,224,250,254,291をガスが通過する。ガス膨張室132,222,252,350はガス通過路130,134,220,224,250,254,291と連通する。ガス膨張室132,222,252,350でガスが膨張する。
【0014】
ガス膨張室132,222,252,350がガス通過路130,134,220,224,250,254,291と連通しているので、ガス通過路130,134,220,224,250,254,291を通過するガスの少なくとも一部はガス膨張室132,222,252,350に入る。ガスがガス膨張室132,222,252,350に入ると、そのガスは膨張する。ガスが膨張することでそのガスの圧力と温度とが低下する。
【0015】
一方、開閉弁102の二次側管路129でのガスの温度上昇は、圧力の高いガスが開閉弁102の二次側管路129内を進むことでその中のガスが急速に圧縮されるために生じる。ガス膨張室132,222,252,350の中でガスが膨張すると、そのガスの圧力と温度とが低下する。ガスの圧力と温度とが低下すると、そのガスの持つエネルギが減少する。エネルギが減少したガスがそこからさらに下流へ流れることで、その下流のガスが急速に圧縮される現象を抑えることができる。ガスが急速に圧縮される現象を抑えることができるので、ガスの温度上昇も抑制される。
【0016】
このとき、ガスの温度上昇を抑制するには、ガス通過路130,134,220,224,250,254,291と、ガス膨張室132,222,252,350とがあればよい。その結果、構造を簡素化させることができる。
【0017】
また、上述したガス通過路130,134,220,224,250,254,291が、ガス膨張室132,222,252,350へガスが流入するためのガス流入路130,220,250,291と、ガス膨張室132,222,252,350内のガスがガス膨張室132,222,252,350から流出するためのガス流出路134,224,254とを有していることが好ましい。
【0018】
ガス通過路130,134,220,224,250,254,291がガス流入路130,220,250,291とガス流出路134,224,254とを有することで、ガス流入路130,220,250,291からガス膨張室132,222,252,350へ入り、ガス流出路134,224,254から出るという、ガスの流れが形成される。このようなガスの流れが形成されることで、ガス流入路130,220,250,291からガス膨張室132,222,252,350へ入って膨張し、温度と流速とが低下したガスの一部は、速やかにガス流出路134,224,254へ流れることとなる。そういったガスは、ガス流出路134,224,254の中で、ガス膨張室132,222,252,350内へいったん拡がった後にガス流出路134,224,254へ流出するガスに対して緩衝作用を及ぼす。そういった緩衝作用があることで、発熱抑制器より下流側の管路内のガスが急速に圧縮される現象を抑えることができる。その結果、ガスの温度上昇を抑制できる。
【0019】
また、上述したガス膨張室132,350が、入口配置面182,362と、出口配置面184,364と、空間包囲部180,360とを有していることが好ましい。入口配置面182,362には、ガス流入路130,291の入口136,293が配置される。出口配置面184,364は、入口配置面182,362に対向する。出口配置面184,364には、ガス流出路134の出口138が配置される。空間包囲部180,360は、入口配置面182,362の外周と出口配置面184,364の外周とに連なる。空間包囲部180,360は、入口配置面182,362と出口配置面184,364との間の内部空間を包囲する。
【0020】
入口配置面182,362にガス流入路130,291の入口136,293が配置され、入口配置面182,362と出口配置面184,364との間の内部空間を空間包囲部180,360が包囲する構造となっているので、入口136,293からガス膨張室132,350内へ入ったガスはさまざまな方向へ向かって膨張することになる。そのようにガスが膨張するので、ガスの膨張方向が所定の限られた方向となるよう規制される場合に比べ、ガスの圧力低下と温度低下とに効果がある。その結果、圧力の高いガスが二次側管路内を進むことを効果的に抑制できる。圧力の高いガスが二次側管路内を進むことを効果的に抑制できるので、ガスの温度上昇を効果的に抑制できる。
【0021】
また、上述した空間包囲部180,360が、入口側曲面310,380と、出口側曲面312,382とを有することが好ましい。入口側曲面310,380は、入口配置面182,362に隣接し、かつ、入口配置面182,362を取囲む。出口側曲面312,382は、出口配置面184,364に隣接し、かつ、出口配置面184,364を取囲む。
【0022】
入口側曲面310,380と出口側曲面312,382とが設けられていることにより、入口配置面182,362と空間包囲部180,360との境界、および、空間包囲部180,360と出口配置面184,364との境界が、丸みを帯びることとなる。これにより、これらの境界が角を形成している場合に比べ、ガスおよびパーティクルが滞留することを防ぐ。
【0023】
また、上述したガス流入路130の入口136が内部空間を挟んで出口配置面184のうち出口138とは異なる箇所に対向していることが好ましい。
【0024】
入口136が内部空間を挟んで出口配置面184のうち出口138とは異なる箇所に対向しているため、ガス膨張室132内に入り一直線に進んだガスは、出口配置面184のうち入口136が対向している箇所に当たることとなる。すなわち出口配置面184に当たるので、ガスの流速は低下する。ガスの流速が低下するので、ガス膨張室132を出たガスの圧力はガス膨張室132に入る前に比べて低下している。ガスの圧力が低下するので、ガス膨張室132内に入ったガスが一直線に進んで出口138から出て行く場合に比べ、圧力の高いガスが発熱抑制器より下流側の管路内を進むことを効果的に抑制できる。圧力の高いガスが発熱抑制器より下流側の管路内を進むことを効果的に抑制できるので、ガスの温度上昇を効果的に抑制できる。
【0025】
また、上述したガス流入路130からガス膨張室132へのガスの流入方向がガス流入路130の入口136からガス流出路134の出口138へ向かう方向に対して傾くようガス流入路130が設けられていることが好ましい。
【0026】
ガス流入路130からガス膨張室132へのガスの流入方向が入口136から出口138へ向かう方向に対して傾いていることで、ガス膨張室132内に入ったガスはまずガス膨張室132の内周面に沿って移動した後、出口138から出て行くこととなる。まずガス膨張室132の内周面に沿って移動するので、既にガス膨張室132内にあったガスから緩衝作用を受け、ガスの圧力と流速とは低下する。ガスの圧力と流速とが低下するので、ガス膨張室132内に入ったガスが一直線に進んで出口138から出て行く場合に比べ、圧力の高いガスが発熱抑制器より下流側の管路内を進むことを効果的に抑制できる。圧力の高いガスが発熱抑制器より下流側の管路内を進むことを効果的に抑制できるので、ガスの温度上昇を効果的に抑制できる。
【0027】
また、上述したガス流入路291の内径が、ガス流入路291の入口293に近づくにつれ広がっていることが好ましい。
【0028】
入口293に近づくにつれガス流入路291の内径が広がっているので、ガス流入路291の内径が一様な場合に比べ、入口293から出口138へまっすぐ向かう供給ガスが少なくなっている。このため、ガス流入路291の内径が一様な場合に比べ、ガス流出路134内における供給ガスの気圧または流速が高くならない。そのため、ガス流入路291の内径が一様な場合に比べ、温度上昇を抑えることができる。
【0029】
また、上述した発熱抑制器108,200,240,270,280,290,300は、開閉弁102と一体となっていることが好ましい。
【0030】
また、上述したガス容器100がガスボンベであることが好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、開閉弁を一気に開いたときのその開閉弁の二次側管路内での熱の発生を抑え、かつ、構造を簡素化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例にかかるガス供給設備の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例にかかる発熱抑制器の斜視図である。
【図3】本発明の実施例にかかる発熱抑制器の断面図である。
【図4】本発明の第1変形例にかかる発熱抑制器の外形とガス膨張室の形状とを示す概念図である。
【図5】本発明の第2変形例にかかる発熱抑制器の外形とガス膨張室の形状とを示す概念図である。
【図6】本発明の第3変形例にかかる発熱抑制器の断面図である。
【図7】本発明の第4変形例にかかる発熱抑制器の断面図である。
【図8】本発明の第5変形例にかかる発熱抑制器の断面図である。
【図9】本発明の第6変形例にかかる発熱抑制器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0034】
[ガス供給設備の構成]
図1は、本実施例にかかるガス供給設備10の構成を示す図である。本実施例において、ガス供給設備10にはガス容器すなわちガスボンベ100が収容されている。ガスボンベ100にダイヤフラム式開閉弁102が装着されている。ダイヤフラム式開閉弁102にエア式アクチュエータ104が接続される。エア式アクチュエータ104に電磁式切換弁106が接続される。電磁式切換弁106を励磁したり消磁したりすることで、エア式アクチュエータ104にエア(エアに限らず、その他の種類の駆動流体であってもよいことは言うまでもない)が流れたり、エア式アクチュエータ104から大気中へエアが放出されたりする。また、ダイヤフラム式開閉弁102の二次側管路129に発熱抑制器108が接続される。発熱抑制器108に周知の配管バルブ110が接続される。図1から明らかなように、これらはシリンダーキャビネット112内に備え付けてある。本実施例の場合、ガスボンベ100の中のガス(以下、本実施例ではこのガスのことを「供給ガス」と称する。)はダイヤフラム式開閉弁102の取付ネジ部120を経由して図示しない半導体製造設備に供給される。すなわち、ダイヤフラム式開閉弁102は、図示しない半導体製造設備に供給ガスを供給するための管路を開閉するものである。
【0035】
[発熱抑制器の構成]
図2は発熱抑制器108の斜視図である。図2に示す発熱抑制器108はその一部が切取られたものである。発熱抑制器108の構成を説明する。本実施例にかかる発熱抑制器108は、図1に示したボルト150とナット152とで2つの部材が一体化されたものである。本実施例にかかる発熱抑制器108は、ガス流入路130と、ガス膨張室132と、ガス流出路134と、入口側接続穴140と、出口側接続穴142と、ガスケット144と、ボルト貫通孔146とを備える。
【0036】
ガス流入路130に上述した供給ガスが流れる。その供給ガスはガス膨張室132に流入する。ガス膨張室132内で供給ガスが膨張する。ガス膨張室132内で膨張した供給ガスはガス流出路134へ流出し、そのまま配管バルブ110へ流れる。入口側接続穴140は図1に示した継手170(本実施例の場合、継手170内における供給ガスの流路の内径はガス流入路130の内径と等しい。もちろん、継手170内における供給ガスの流路の内径がガス流入路130の内径より小さくても良いことは言うまでもない。)がねじ込まれる穴である。出口側接続穴142は配管バルブ110の一端(本実施例の場合、配管バルブ110の一端における供給ガスの流路の内径はガス流出路134の内径と等しい。)がねじ込まれる穴である。ガスケット144はガス膨張室132から供給ガスが漏れるのを防ぐ。ボルト貫通孔146は図1に示したボルト150が貫通する孔である。
【0037】
ガス膨張室132は、空間包囲部180と、入口配置面182と、出口配置面184とを有している。入口配置面182の中心にガス流入路130の入口136が配置される。出口配置面184は入口配置面182に対向する。出口配置面184の中心にガス流出路134の出口138が配置される。本実施例における入口136はガス膨張室132の内部空間を挟んで出口138に対向している。図2から明らかなように、空間包囲部180は、入口配置面182の外周と出口配置面184の外周とに連なっている。空間包囲部180は、入口配置面182と出口配置面184との間にある空間を包囲する。
【0038】
図3に示すように、本実施例にかかる空間包囲部180は、入口側曲面310と、出口側曲面312と、環状面314とを有する。入口側曲面310は、入口配置面182に隣接し、かつ、入口配置面182を取囲む。入口側曲面310が設けられていることで、入口配置面182と空間包囲部180との境界部分は丸みを帯びている。出口側曲面312は、出口配置面184に隣接し、かつ、出口配置面184を取囲む。出口側曲面312が設けられていることで、出口配置面184と空間包囲部180との境界部分も丸みを帯びている。環状面314は、入口側曲面310と出口側曲面312との間の面である。
【0039】
[発熱抑制手順]
半導体製造設備のオペレータがその半導体製造設備に供給ガスを供給する際に本実施例にかかる発熱抑制器108を利用して発熱を抑制するための手順を説明する。
【0040】
まず、オペレータは、電磁式切換弁106を励磁する。これにより供給源20から供給されたエアはただちにエア式アクチュエータ104に入り、その中のピストン160を押上げる。次に、ピストン160は、皿バネ124によるステム122を押下げる力に逆らって、ステム122を引上げる。ステム122が引上げられると、ダイヤフラム126は全開となる。これにより、ダイヤフラム式開閉弁102の一次側管路128から二次側管路129へ供給ガスが一気に流れる。
【0041】
二次側管路129へ流れた供給ガスは、継手170を介して発熱抑制器108のガス流入路130に入る。ガス流入路130に入った供給ガスは入口136を通ってガス膨張室132に入る。入口136付近で供給ガスは断熱膨張に近い状態で膨張する。その膨張によって供給ガスの温度は一気に低下する。しかも、その膨張によって供給ガスの流速は一気に低下する。このようにして温度と流速とが低下した供給ガスの一部は直ちに出口138を通ってガス流出路134内へ流出する。
【0042】
温度と流速とが低下した供給ガスの残りはガス膨張室132内へ拡がる。もともとガス膨張室132内にあった供給ガスはその温度と流速とが低下した供給ガスによって断熱圧縮に近い状態で圧縮される。圧縮されたことにより、もともとガス膨張室132内にあった供給ガスの温度は上昇する。温度が上昇した供給ガスは、入口136から出口138の方へ向かう温度が低く前もって入った供給ガスと混合して順次出口138を通ってガス流出路134内へ流出する。
【0043】
[本実施例にかかる発熱抑制器の効果の説明]
以上のようにして、本実施例にかかる発熱抑制器108は、ガス膨張室132内で膨張することにより温度と流速とが低下した供給ガスの一部が直ちに出口138からガス流出路134へ流れる。このときその供給ガスがガス流出路134より下流側の管路内の供給ガスに与えるエネルギは、ガス膨張室132に入った瞬間の供給ガスのエネルギに比べると小さい。また温度と流速とが低下した供給ガスの一部が直ちにガス流出路134へ流れることで、その供給ガス自身が、ガス膨張室132内へいったん拡がった後にガス流出路134へ流出する高速度で高温な供給ガスに対して緩衝作用を及ぼす。そういった緩衝作用があることで、発熱抑制器108の下流側における発熱を抑制する。
【0044】
[変形例の説明]
今回開示された実施形態はすべての点で例示である。本発明の範囲は上述した実施形態に基づいて制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更をしてもよいのはもちろんである。例えば、上述した発熱抑制器108はダイヤフラム式開閉弁102と一体となっていてもよい。なお、ここでいう「一体」とは、発熱抑制器108の機能を果たす部分とダイヤフラム式開閉弁102本来の機能を果たす部分とが1つの構造物の中に存在しており、かつ、発熱抑制器108の機能を果たす部分がダイヤフラム式開閉弁102本来の機能を果たす部分に接続された状態であることを意味する。また、発熱抑制器108は開閉弁102を介したガス容器100へのガスの充填に用いられてもよい。この場合、発熱抑制器108は、上述した配管バルブ110に代えて、図示しないガス供給装置の開閉弁に接続されている。また、ガス流入路130とガス流出路134とに代え、1本のガス通過路が設けられてもよい。この場合、入口136と出口138に代え、1つの連通孔によってガス膨張室132とガス通過路とが連通していてもよい。その他の様々な変形例も本発明の範囲に含まれる。以下、そのような変形例の一部を説明する。
【0045】
<第1変形例>
図4は、本発明の第1変形例にかかる発熱抑制器200の外形とガス膨張室222の形状とを示す概念図である。本変形例にかかる発熱抑制器200は、複数の部材が図示しないボルトにより一体化することで形成されているが、本発明にかかる発熱抑制器の構造はそういった構造に限定されるものではない。本変形例にかかる発熱抑制器200は、ガス流入路220と、ガス膨張室222と、ガス流出路224とを備える。ガス流入路220に供給ガスが流れる。その供給ガスは入口226を経てガス膨張室222に流入する。ガス膨張室222内で供給ガスが膨張する。図4から明らかなように、ガス膨張室222の形状は円筒形である。ガス膨張室222内で膨張した供給ガスは出口228を経てガス流出路224へ流出する。
【0046】
<第2変形例>
図5は、本発明の第2変形例にかかる発熱抑制器240の外形とガス膨張室252の形状とを示す概念図である。本変形例にかかる発熱抑制器240も、複数の部材が図示しないボルトにより一体化することで形成されているが、本発明にかかる発熱抑制器の構造はそういった構造に限定されるものではない。本変形例にかかる発熱抑制器240は、ガス流入路250と、ガス膨張室252と、ガス流出路254とを備える。ガス流入路250に供給ガスが流れる。その供給ガスは入口256を経てガス膨張室252に流入する。ガス膨張室252内で供給ガスが膨張する。図5から明らかなように、ガス膨張室252の形状は球形である。ガス膨張室252内で膨張した供給ガスは出口258を経てガス流出路254へ流出する。
【0047】
<第3変形例>
図6は、本発明の第3変形例にかかる発熱抑制器300の断面図である。本変形例にかかる発熱抑制器300は、ガス流入路130と、ガス膨張室350と、ガス流出路134と、入口側接続穴140と、出口側接続穴142と、ガスケット144と、ボルト貫通孔146とを備える。図2で示した発熱抑制器108との相違点は、ガス膨張室350の形状である。本変形例にかかるガス膨張室350の形状は扁球形すなわち押し潰された球形である。本変形例にかかるガス膨張室350は、空間包囲部360と、入口配置面362と、出口配置面364とを有している。入口配置面362と、出口配置面364とは、凹んだ曲面であることを除けば、図2で示した発熱抑制器108の入口配置面182および出口配置面184と同一である。本変形例にかかる空間包囲部360は、図2で示した空間包囲部180と同様に、入口配置面362の外周と出口配置面364の外周とに連なり、かつ、入口配置面362と出口配置面364との間の内部空間を包囲する。空間包囲部360は、入口側曲面380と出口側曲面382とが連なったものである。したがって、断面形状は半円形である。その他の点は図2で示した発熱抑制器108と同様である。他の変形例と同様に、入口136の位置が図6で示した位置に限定されないことは言うまでもない。
【0048】
<第4変形例>
図7は、本発明の第4変形例にかかる発熱抑制器270の断面図である。本変形例にかかる発熱抑制器270は、ガス流入路130と、ガス膨張室132と、ガス流出路134と、入口側接続穴140と、出口側接続穴142と、ガスケット144と、ボルト貫通孔146とを備える。ガス膨張室132は、空間包囲部180と、入口配置面182と、出口配置面184とを有している。図2で示した発熱抑制器108との相違点は、本変形例にかかる発熱抑制器270の場合、ガス流入路130と入口136との位置が図2で示した発熱抑制器108と異なるため、入口136がガス膨張室132の内部空間を挟んでガス膨張室132の内周面(すなわち本変形例の場合には出口配置面184)に対向していることのみである。その他の点は図2で示した発熱抑制器108と同様である。ただし入口136の位置が図7で示した位置に限定されないことは言うまでもない。本変形例にかかる発熱抑制器270は、入口136が出口配置面184に対向しているので、入口136を経てガス膨張室132内に入った供給ガスはまず出口配置面184に衝突することとなる。出口配置面184に衝突することで直接出口側接続穴142に流れ込まないので、供給ガスの流速はその分低下する。流速が低下するので、空間包囲部180付近での温度上昇を抑えることができる。
【0049】
<第5変形例>
図8は、本発明の第5変形例にかかる発熱抑制器280の断面図である。図2で示した発熱抑制器108および第4変形例にかかる発熱抑制器270と同様、本変形例にかかる発熱抑制器280も、ガス流入路130と、ガス膨張室132と、ガス流出路134と、入口側接続穴140と、出口側接続穴142と、ガスケット144と、ボルト貫通孔146とを備える。ガス膨張室132は、空間包囲部180と、入口配置面182と、出口配置面184とを有している。図2で示した発熱抑制器108との相違点は、本変形例にかかる発熱抑制器280の場合、ガス流入路130の中心軸がガス流出路134の中心軸に対して5°(π/36ラジアン)傾いているため、入口136がガス膨張室132の内部空間を挟んでガス膨張室132の内周面(すなわち本変形例の場合には出口配置面184)に対向していることのみである。その他の点は図2で示した発熱抑制器108と同様である。ただしガス流出路134の中心軸に対するガス流入路130の中心軸の傾き(ガス流出路134内の流れの方向に対するガス流入路130内の流れの方向の傾き)が上述したものに限定されないことは言うまでもない。この傾きは、5°〜15°(π/36ラジアン〜π/12ラジアン)であることが好ましい。本変形例にかかる発熱抑制器280において入口136が出口配置面184に傾斜対向しているので、入口136を経てガス膨張室132内に入った供給ガスはまず出口配置面184に傾斜衝突することとなる。出口配置面184に衝突するので、供給ガスの流速はその分低下する。流速が低下するので、空間包囲部180付近での温度上昇を抑えることができる。
【0050】
<第6変形例>
図9は、本発明の第6変形例にかかる発熱抑制器290の断面図である。図2で示した発熱抑制器108および第4変形例にかかる発熱抑制器270と同様、本変形例にかかる発熱抑制器290も、ガス流入路291と、ガス膨張室132と、ガス流出路134と、入口側接続穴140と、出口側接続穴142と、ガスケット144と、ボルト貫通孔146とを備える。ガス膨張室132は、空間包囲部180と、入口配置面182と、出口配置面184とを有している。図2で示した発熱抑制器108との相違点は、本変形例にかかるガス流入路291の場合、ガス膨張室132への入口293に近づくにつれ内径が広がっていることである。その他の点は図2で示した発熱抑制器108と同様である。本変形例にかかる発熱抑制器290は、ガス流入路291の内径が入口293に近づくにつれ広がっているので、図2で示した発熱抑制器108に比べ、入口293から出口138へまっすぐ向かう供給ガスが少なくなっている。このため、ガス流出路134内における供給ガスの気圧または流速が高くならない。そのため、温度上昇を抑えることができる。
【符号の説明】
【0051】
10…ガス供給設備
20…供給源
100…ガスボンベ
102…ダイヤフラム式開閉弁
104…エア式アクチュエータ
106…電磁式切換弁
108,200,240,270,280,290,300…発熱抑制器
110…配管バルブ
112…シリンダーキャビネット
120…弁本体
122…ステム
124…皿バネ
126…ダイヤフラム
128…一次側管路
129…二次側管路
130,220,250,291…ガス流入路(ガス通過路)
132,222,252,350…ガス膨張室
134,224,254…ガス流出路(ガス通過路)
136,226,256,293…入口
138,228,258…出口
140…入口側接続穴
142…出口側接続穴
144…ガスケット
146…ボルト貫通孔
150…ボルト
152…ナット
160…ピストン
170…継手
180,360…空間包囲部
182,362…入口配置面
184,364…出口配置面
310,380…入口側曲面
312,382…出口側曲面
314…環状面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路を開閉する開閉弁に接続され、前記開閉弁を介したガス容器へのガスの充填および前記ガス容器に蓄えられた前記ガスの消費の際に用いられる、発熱抑制器であって、
前記開閉弁に接続され前記ガスが通過するガス通過路と、
前記ガス通過路と連通し、前記ガスが膨張するガス膨張室とを備えていることを特徴とする、発熱抑制器。
【請求項2】
前記ガス通過路が、
前記ガスが前記ガス膨張室へ流入するためのガス流入路と、
前記ガス膨張室内の前記ガスが前記ガス膨張室から流出するためのガス流出路とを有していることを特徴とする、請求項1に記載の発熱抑制器。
【請求項3】
前記ガス膨張室が、
前記ガス流入路の入口が配置される入口配置面と、
前記入口配置面に対向し、かつ、前記ガス流出路の出口が配置される出口配置面と、
前記入口配置面の外周と前記出口配置面の外周とに連なり、前記入口配置面と前記出口配置面との間の内部空間を包囲する空間包囲部とを備えることを特徴とする、請求項2に記載の発熱抑制器。
【請求項4】
前記空間包囲部が、
前記入口配置面に隣接し、かつ、前記入口配置面を取囲む、入口側曲面と、
前記出口配置面に隣接し、かつ、前記出口配置面を取囲む、出口側曲面とを有することを特徴とする、請求項3に記載の発熱抑制器。
【請求項5】
前記ガス流入路の入口が前記内部空間を挟んで前記出口配置面のうち前記出口とは異なる箇所に対向していることを特徴とする、請求項3または請求項4に記載の発熱抑制器。
【請求項6】
前記ガス流入路から前記ガス膨張室への前記ガスの流入方向が前記ガス流入路の入口から前記ガス流出路の出口へ向かう方向に対して傾くよう前記ガス流入路が設けられていることを特徴とする、請求項3から請求項5のいずれかに記載の発熱抑制器。
【請求項7】
前記ガス流入路の内径が、前記ガス流入路の入口に近づくにつれ広がっていることを特徴とする、請求項3から請求項6のいずれかに記載の発熱抑制器。
【請求項8】
前記開閉弁と一体となっていることを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれかに記載の発熱抑制器。
【請求項9】
前記ガス容器がガスボンベであることを特徴とする、請求項1から請求項9のいずれかに記載の発熱抑制器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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