説明

発熱材料

【課題】 1,600℃は勿論のこと1,800℃以上の高温域においても安定した発熱を得ることができる消耗の少ない発熱材料を提供する。
【解決手段】 50〜95重量%の炭素成分と、70重量%前後の二酸化珪素、15重量%前後の酸化アルミニウム、2.2重量%前後の酸化鉄、3.5重量%前後の酸化カルシウム、3.0重量%前後の酸化ナトリウム、2.5重量%前後の酸化カリウム及び1.0重量%前後の酸化マグネシウムを含む天然鉱物を主成分とする鹿児島県鹿児島郡桜島町南岳で採取した火山灰とからなり、電気比抵抗が3,000μΩcm以上であり、且つ、一辺が1cm以上のブロックに形成されている発熱材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元性高温電気炉等で使用できる発熱材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、還元性高温電気炉等では燃焼効率を高めるために炉床部に発熱材料が投入されている。そして、当該発熱材料には一般にコークスを主成分とする発熱材料が使用されている。
【0003】
また、前記コークスを主成分とする発熱材料として、仮焼コークス粉末50〜95重量%及び炭化硼素と窒化珪素との混合粉末からなる炭素材料(特許文献1参照)や木炭、コークス又は石炭の粒体表面にクロム、モリブデン、アルミニウム、マグネシウムの金属被膜を形成してなる焼却装置用発熱体が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−165468号公報
【特許文献2】特開平11−82980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
還元性高温電気炉等で被処理物を加熱処理する場合、より高温下で処理することが処理効率を高める最も有効な手段であるが、前記従来の発熱材料では1,600℃以上の温度で使用すれば、当該発熱材料の消耗が激しく発熱材料を頻繁に交換しなければならないという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、1,600℃は勿論のこと1,800℃以上、更には、2,000℃以上の高温域においても安定した発熱を得ることができる消耗の少ない発熱材料を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって解決できる。
【0008】
即ち、本発明に係る発熱材料は、50〜95重量%の炭素成分とシリカ、アルミナ及びマグネシアを含む天然鉱物を主成分とする残留成分とからなり、電気比抵抗が3,000μΩcm以上であり、且つ、一辺が1cm以上のブロックに形成されているものである。
【0009】
また、本発明は、前記発熱材料において、炭素成分をコークスとし、残留成分を火山灰としたものである。
【0010】
また、本発明は、残留成分が火山灰である前記発熱材料において、鹿児島県鹿児島郡桜島町南岳で採取できる火山灰を用いるものである。
【0011】
また、本発明は、残留成分が火山灰である前記いずれかの発熱材料において、火山灰の成分構成が少なくとも70重量%前後の二酸化珪素、15重量%前後の酸化アルミニウム、2.2重量%前後の酸化鉄、3.5重量%前後の酸化カルシウム、3.0重量%前後の酸化ナトリウム、2.5重量%前後の酸化カリウム及び1.0重量%前後の酸化マグネシウムとなっているものである。
【0012】
さらに、本発明に係る発熱材料は、50〜95重量%の炭素成分と少なくとも70重量%前後の二酸化珪素、15重量%前後の酸化アルミニウム、2.2重量%前後の酸化鉄、3.5重量%前後の酸化カルシウム、3.0重量%前後の酸化ナトリウム、2.5重量%前後の酸化カリウム及び1.0重量%前後の酸化マグネシウムとを含んでなる残留成分とからなり、電気比抵抗が3,000μΩcm以上であり、且つ、一辺が1cm以上のブロックに形成されているものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、50〜95重量%の炭素成分とシリカ、アルミナ及びマグネシアを含む天然鉱物を主成分とする残留成分、又は、50〜95重量%の炭素成分と少なくとも70重量%前後の二酸化珪素、15重量%前後の酸化アルミニウム、2.2重量%前後の酸化鉄、3.5重量%前後の酸化カルシウム、3.0重量%前後の酸化ナトリウム、2.5重量%前後の酸化カリウム及び1.0重量%前後の酸化マグネシウムとを含んでなる残留成分とからなり、電気比抵抗が3,000μΩcm以上、一辺が1cm以上のブロック状発熱材料であるから、投入電力量に対する発熱量を効率的に得ることができ、1,800℃以上の高温域においても安定した発熱が得られ、消耗率を抑えることができる発熱材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
本実施の形態に係る発熱材料は、50〜95重量%の炭素成分とシリカ、アルミナ及びマグネシアを含む天然鉱物を主成分とする残留成分とを構成成分とし、当該発熱材料の電気比抵抗が3,000μΩcm以上であり、且つ、一辺が1cm以上のブロックである。炭素成分は50〜95重量%とすれば、発熱性が高まり、消耗率を抑えることができるので好ましい。炭素成分が50重量%未満では発熱性が低下して燃焼効率が悪化し、95重量%を超えれば発熱効率は良好であるが消耗率が急激に増大して発熱材料の寿命が低下するので好ましくない。
【0016】
残留成分がシリカ、アルミナ及びマグネシアを含む天然鉱物を主成分とするものであれば、炭素成分の発熱性を阻害することなく安定した発熱が得られると同時に1,800℃以上の高温域においても炭素成分の消耗を抑えることができるので好ましい。当該残留成分は1〜50重量%の範囲であれば相乗効果が得られ、更に好ましくは5〜50重量%である。
【0017】
前記炭素成分と前記残留成分とを構成成分とする電気比抵抗が3,000μΩcm以上の発熱材料を各大きさのブロックサイズにカットして試行錯誤を重ね、一辺を1cm以上にブロック化した発熱材料を還元性高温電気炉等に充填・通電使用した場合において投入電力量に対して効率の良い発熱量が得られ、同時に、1,800℃以上の高温域においても安定した発熱と消耗が少ない長寿命が得られることを確認している。なお、一辺が1cmに満たない例えば一辺0.5cmのブロックでは発熱温度が1,800℃以上の高温域に達しないので好ましくなく、電気比抵抗が3,000μΩcm未満では、通電流量が大きくなって発熱量の電気的制御が非常に困難となり、さらに、電流量が大きくなることにより、電源側の導体を大きくする必要があるから電源設備が高価となるので、好ましくない。
【0018】
また、前記炭素成分としては、コークスを使用すれば良く、残留成分としては、シリカ、アルミナ及びマグネシアを含む天然鉱物、具体的には日本各地の火山灰を採取して試行錯誤を重ねた結果による鹿児島県鹿児島郡桜島町南岳で採取した火山灰が最も好ましく、当該火山灰は、少なくとも70重量%前後の二酸化珪素、15重量%前後の酸化アルミニウム、2.2重量%前後の酸化鉄、3.5重量%前後の酸化カルシウム、3.0重量%前後の酸化ナトリウム、2.5重量%前後の酸化カリウム及び1.0重量%前後の酸化マグネシウムを含んでいる。これらの範囲の数値を満足する火山灰を用いて発熱材料を製造して試験に供して1,800℃以上、更には2,000℃以上の高温域においても安定した発熱が得られることを確認している。
【0019】
次に、製造方法について説明する。
【0020】
炭素成分としてコークスを50〜95重量%と、70重量%の二酸化珪素(SiO)、15重量%の酸化アルミニウム(Al2O3)、2.2重量%の酸化鉄(Fe2O3)、3.5重量%の酸化カルシウム(CaO)、3.0重量%の酸化ナトリウム(Na2O)、2.5重量%の酸化カリウム(K2O)及び1.0重量%の酸化マグネシウム(MgO)を成分構成とする鹿児島県鹿児島郡桜島町南岳で採取した火山灰1〜50重量%と、必要に応じて残部として炭化硼素(B4C)等の硼化物や炭化珪素(SiC)等の珪化物の炭化物粉末や酸化アルミニウム(Al2O3)等の酸化物粉末との混合物に所望量のコールタールピッチやフェノール樹脂等を添加して混練し、次いで、得られた混練物を金型に投入して加圧成型し、この後、還元雰囲気中で焼成して電気比抵抗3,000μΩcm以上の発熱材料を得、当該発熱材料を一辺が1cmまでのブロック状にカットした。
【0021】
本実施の形態では、50〜95重量%の炭素成分、シリカ、アルミナ及びマグネシアを含む天然鉱物を主成分とする5〜50重量%の火山灰及び必要に応じて炭化硼素(B4C)等の硼化物や炭化珪素等の珪化物の炭化物粉末や酸化アルミニウム(Al2O3)等の酸化物粉末等の残部を成分構成とし、電気比抵抗3,000μΩcm以上、一辺が1cm以上のブロック状発熱材料であるから、1,800℃以上の高温域においても消耗が少なく、安定した電気特性を得ることができ、減容化効果の高い発熱材料であるから、還元性高温電気炉においてダイオキシン等の有害物質の発生を抑えることができる。
【実施例1】
【0022】
100メッシュアンダーに調整した石油コークス原料粉末80重量%と、鹿児島県鹿児島郡桜島町南岳で採取した70重量%の二酸化珪素(SiO)、15重量%の酸化アルミニウム(Al2O3)、2.2重量%の酸化鉄(Fe2O3)、3.5重量%の酸化カルシウム(CaO)、3.0重量%の酸化ナトリウム(Na2O)、2.5重量%の酸化カリウム(K2O)及び1.0重量%の酸化マグネシウム(MgO)を主成分とする325メッシュアンダーに調整した桜島火山灰粉末10重量%と、325メッシュアンダーに調整した炭化硼素(B4C)原料粉末10重量%とを混合して当該混合物100重量%に対してコールタールピッチ15重量%を添加し、100℃下で1時間加熱混練して混練物を得た。次いで、当該混練物を100メッシュアンダーに粉砕した後に金型に投入して温度100℃、圧力300kg/cm2の環境下にて加圧成型し、この後、1,800℃の還元雰囲気中にて焼成して発熱材料を得た。当該発熱材料の電気比抵抗は3,500μΩcmであった。
【0023】
前記発熱材料を一辺が2cmのブロックに切断して該ブロックを容積6リットル(断面積200cm2×長さ30cm:両端面に黒鉛電極を配置)の空間内に充填し、当該空間を無酸素状態とした後、両端面の黒鉛電極に100Vの交流電圧を印加したところ30Aの電流が流れ、5分後に発熱材料の表面が2,000℃に達した。更に、2,000℃の温度を1時間保持した後、冷却して発熱材料の重量減少率を測定したところ0.5重量%であった。当該発熱材料に対して前記通電・加熱・冷却工程を100回実施したが、電気比抵抗値の変化はほとんど見られず、重量減少率もトータルで2重量%であった。
【実施例2】
【0024】
前記石油コークス原料粉末を60重量%、前記桜島火山灰粉末を20重量%、前記炭化硼素(B4C)原料粉末を10重量%、325メッシュアンダーに調整した酸化アルミニウム(Al2O3)原料粉末を10重量%とした外、前記実施例1と同様にして発熱材料を得た。当該発熱材料の電気比抵抗は4,000μΩcmであった。
【0025】
前記発熱材料を一辺が3cmのブロックに切断して該ブロックを前記容積6リットルの空間内に充填し、当該空間を無酸素状態とした後、両端面の黒鉛電極に100Vの交流電圧を印加したところ25Aの電流が流れ、8分後に発熱材料の表面が2,000℃に達した。2,000℃の温度を1時間保持した後、冷却して発熱材料の重量減少率を測定したところ0.5重量%であった。当該発熱材料に対して前記通電・加熱・冷却工程を100回実施したが、電気比抵抗値の変化はほとんど見られず、重量減少率もトータルで2重量%であった。
【実施例3】
【0026】
50重量%石油コークス原料粉末と50重量%桜島火山灰粉末、95重量%石油コークス原料粉末と5重量%桜島火山灰粉末、95重量%石油コークス原料粉末と1重量%桜島火山灰粉末と4重量%炭化珪素(SiC)粉末と、一辺が1cm、5cm及び15cmのブロックとの組み合わせによって形成した各発熱材料についても前記実施例1及び実施例2と同様の効果が得られた。
【0027】
比較例1.
【0028】
前記石油コークス原料粉末を40重量%、前記桜島火山灰粉末を30重量%、残部として前記炭化硼素(B4C)原料粉末を10重量%、前記酸化アルミニウム(Al2O3)原料粉末を20重量%とした外、前記実施例1と同様にして発熱材料を得た。当該発熱材料の電気比抵抗は8,500μΩcmであった。
【0029】
前記発熱材料を一辺が2cmのブロックに切断して該ブロックを前記容積6リットルの空間内に充填し、実施例1と同様にして両端面の黒鉛電極に100Vの交流電圧を印加したところ5Aの電流が流れ、1時間経過しても発熱材料の表面は600℃であった。
【0030】
比較例2.
【0031】
前記石油コークス原料粉末を98重量%、前記桜島火山灰粉末を2重量%とした外、前記実施例1と同様にして発熱材料を得た。当該発熱材料の電気比抵抗は2.000μΩcmであった。
【0032】
前記発熱材料を一辺が2cmのブロックに切断して該ブロックを前記容積6リットルの空間内に充填し、実施例1と同様にして両端面の黒鉛電極に100Vの交流電圧を印加したところ45Aの電流が流れ、3分後に発熱材料の表面が2,000℃に達した。2,000℃を1時間保持した後、冷却して発熱材料の重量減少率を測定したところ20重量%であった。当該発熱材料に対して前記通電・加熱・冷却工程を50回実施したところ電気比抵抗が上昇して5回目では電流が流れなかった。重量減少率はトータルで85重量%であった。
【0033】
比較例3.
【0034】
前記石油コークス原料粉末を80重量%、前記桜島火山灰粉末を10重量%、残部として前記炭化硼素(B4C)原料粉末を10重量%とした外、前記実施例1と同様にして発熱材料を得た。当該発熱材料の電気比抵抗は3,500μΩcmであった。
【0035】
前記発熱材料を一辺が0.5cmのブロックに切断して該ブロックを前記容積6リットルの空間内に充填し、実施例1と同様にして両端面の黒鉛電極に100Vの交流電圧を印加したところ10Aの電流が流れ、1時間経過しても発熱材料の表面は800℃であった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、1,800℃以上の高温域においても安定した発熱が得られる発熱材料を提供できるから、当該発熱材料を還元性高温電気炉等に用いれば、減容化効果が高まり、ダイオキシン等の有害物質の発生を抑えることができる。
【0037】
従って、本発明の産業上利用性は非常に高いといえる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
50〜95重量%の炭素成分とシリカ、アルミナ及びマグネシアを含む天然鉱物を主成分とする残留成分とからなり、電気比抵抗が3,000μΩcm以上であり、且つ、一辺が1cm以上のブロックに形成されていることを特徴とする発熱材料。
【請求項2】
炭素成分がコークスであり、残留成分が火山灰である請求項1記載の発熱材料。
【請求項3】
火山灰が鹿児島県鹿児島郡桜島町南岳で採取した火山灰である請求項2記載の発熱材料。
【請求項4】
火山灰の成分構成が少なくとも70重量%前後の二酸化珪素、15重量%前後の酸化アルミニウム、2.2重量%前後の酸化鉄、3.5重量%前後の酸化カルシウム、3.0重量%前後の酸化ナトリウム、2.5重量%前後の酸化カリウム及び1.0重量%前後の酸化マグネシウムとなっている請求項2又は請求項3記載の発熱材料。
【請求項5】
50〜95重量%の炭素成分と少なくとも70重量%前後の二酸化珪素、15重量%前後の酸化アルミニウム、2.2重量%前後の酸化鉄、3.5重量%前後の酸化カルシウム、3.0重量%前後の酸化ナトリウム、2.5重量%前後の酸化カリウム及び1.0重量%前後の酸化マグネシウムとを含んでなる残留成分とからなり、電気比抵抗が3,000μΩcm以上であり、且つ、一辺が1cm以上のブロックに形成されていることを特徴とする発熱材料。

【公開番号】特開2006−232589(P2006−232589A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−47004(P2005−47004)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(503341251)
【Fターム(参考)】