説明

発熱組成物収容用袋およびそれを用いた温熱用具

【課題】発熱によって発熱体または温熱用具の温度が高くなった場合であっても、シールされた周縁部および温熱用具自体に生じる周縁部を外に向けての反りが低減され、その結果、反りによる不快感が生じず、付着性がよく、温熱用具が衣類または皮膚から剥がれることのない、発熱組成物収容用袋および温熱用具を提供する。
【解決手段】片面が不織布と多孔質フィルムとをラミネートして得られる通気性複層構造物からなり、他方の面が貼付手段を有する貼付面である、水分を含有し空気の存在下で発熱する発熱組成物を収容するための袋であって、前記通気性複層構造物が、20℃での寸法に対する50℃における横方向の寸法変化率が正の値であること、および0.15gfcm/cm2以上の圧縮エネルギーを有することを特徴とする、発熱組成物収容用袋およびそれを用いた温熱用具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱組成物収容用袋およびそれを用いた温熱用具に関する。詳しくは、被着体に対して貼付するための温熱用具に適した発熱組成物収容用袋、およびそれを用いた温熱用具に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる使い捨てカイロ、医療用温湿布等の衣服または皮膚に貼付して使用される温熱用具には、少なくとも一部が通気性シートからなる袋に発熱組成物を収容したものが発熱体として多用されている。このような発熱体は、通気性シートの通気性を調節することにより発熱の温度や時間をコントロールすることができる。しかし、発熱組成物は、発熱すると硬化してゆくので、人体に不快感を与える、温熱用具の人体への付着性が悪化する、および温熱用具が衣類等から剥がれる、という問題があった。このような問題を解決するために、熱可塑性樹脂の連続フィラメントからなる多数の熱圧着部を均一に有するウェブと熱可塑性樹脂フィルムとをラミネートした通気性上被層および非通気層からなる袋(例えば、特許文献1)や、保温袋の周囲が厚さ方向に凹凸模様を有するもの(例えば、特許文献2)等のように風合いの柔軟性に優れたものが提案されてきた。
【0003】
しかし、このような袋を用いても、温熱用具の人体への付着性や衣類等から剥がれるという問題については、未だ充分な効果を得られるには至っていなかった。すなわち、温熱用具を衣類または皮膚に貼り付けて使用する際に、発熱により温度が高くなるにつれてシールされた周縁部および温熱用具自体に周縁部を外に向けた反りが生じ、不快感が生じたり、使用者が動くたびに温熱用具が上衣と接触することによって温熱用具が衣類等から剥がれたりするという問題があった。
【特許文献1】特開平2−297362号公報
【特許文献2】特開平7−67907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、発熱によって発熱体または温熱用具の温度が高くなった場合であっても、シールされた周縁部および温熱用具自体に生じる周縁部を外に向けての反りが低減され、その結果、反りによる不快感が生じず、付着性がよく、温熱用具が衣類または皮膚から剥がれることのない、発熱組成物収容用袋および温熱用具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記問題点を改善すべく鋭意検討した結果、不織布と多孔質フィルムとをラミネートして得られる通気性複層構造物であって、その常温時に対する加熱時における横方向の寸法変化率が正の値であり、かつ、特定の範囲の圧縮エネルギーを有する通気性複層構造物を発熱組成物収容用袋の片面に使用することにより上記問題点のすべてを解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
本発明は、
〔1〕片面が不織布と多孔質フィルムとをラミネートして得られる通気性複層構造物からなり、他方の面が貼付手段を有する貼付面である、水分を含有し空気の存在下で発熱する発熱組成物を収容するための袋であって、前記通気性複層構造物が、20℃での寸法に対する50℃における横方向の寸法変化率が正の値であること、および0.15gfcm/cm2以上の圧縮エネルギーを有することを特徴とする、発熱組成物収容用袋;
〔2〕前記不織布がウォータージェット法で製造されたものである、前記〔1〕記載の発熱組成物収容用袋;
〔3〕前記〔1〕または〔2〕記載の発熱組成物収容用袋に、空気の存在下で発熱する発熱組成物が収容されていることを特徴とする温熱用具;
〔4〕気密性外袋に収容されている、前記〔3〕記載の温熱用具、
を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、発熱組成物による発熱によってもシールされた周縁部および温熱用具自体の周縁部の外側への反りが改良され、反りによる不快感が生じず、付着性がよく、衣類または皮膚から剥がれることがない発熱組成物収容用袋および温熱用具が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の発熱組成物収容用袋は、一方の面が通気性複層構造物であり、他方の面が貼付手段を有する貼付面である。
【0009】
本発明に使用される通気性複層構造物は、不織布と多孔質フィルムとをラミネートして得ることができるものである。そして、通気性複層構造物は、(1)20℃での寸法に対する50℃における横方向の寸法変化率が正の値であること、および(2)0.15gfcm/cm2以上の圧縮エネルギーを有すること、を特徴とする。
【0010】
ここで、「寸法変化率」とは、基準の状態での寸法(もとの寸法)(A)と、それとは異なる状態での寸法(B)とを比較して、その変化した量(B−A)を基準の寸法(A)の値で割って算出した100分率であり、上記異なる状態での寸法が基準の寸法と比較して減少していれば負の値となり、増加していれば正の値となる。例えば、寸法変化率が+0.2%とは、基準の長さを100とした場合に、それが100.2になったことを表す。したがって、「20℃での寸法に対する50℃における寸法変化率」とは、20℃で測定した寸法を基準として、50℃で測定した寸法と比較して算出した値であり、前者が後者より大きければ負の値となり、逆に後者が前者より大きければ正の値となる。
【0011】
具体的には、20℃での寸法に対する50℃における寸法変化率は以下のとおりにして測定することができる。
【0012】
複層構造物を、温度20±2℃、湿度80±5%R.H.で5時間温調した後、200.0mm×200.0mmに切り取り、試験片を用意する。この試験片を、温度50±2℃、湿度5±1%R.H.の乾燥機に入れて、1時間後の横方向の長さa(mm)を測定する。各試験片の寸法変化率は、
(a−200.0)/200.0×100(%)
として計算される。3点(試験片3枚)の平均をその複層構造物の寸法変化率とする。
【0013】
また、「横方向」とは、複層構造物を構成する不織布、および多孔質フィルムの流れ方向(機械方向、MD、または縦方向ともいう)に対して90°の角度で交差する方向(TDともいう)をいう。
【0014】
本発明において使用される複層構造物は、横方向に関して、上記20℃での寸法に対する50℃における寸法変化率が正の値である(すなわちゼロより大きい)ことを要するが、この寸法変化率は、好ましくは+0.2%以上であり、より好ましくは+0.4%以上である。横方向の寸法変化率が正の値でない場合は、その袋体に発熱組成物を充填して温熱用具を作製し、発熱させたときに、シールされた周縁部および温熱用具自体が周縁部を外に向けて反りやすくなり、その結果、反りにより不快感を与えたり、温熱用具が被着体から剥がれやすくなることがある。
【0015】
また、本発明において使用される通気性複層構造物は、0.15gfcm/cm2以上の圧縮エネルギーを有するものであることを要する。ここで、圧縮エネルギーは、1cmあたりの圧縮時に吸収されるエネルギーのことであり、以下のようにして測定することができる。
【0016】
通気性複層構造物を125mm×50mmの大きさに切り取った試験片を用意する。この試験片を、温度20±2℃、湿度40±5%R.H.で5時間温調した後、ハンディー圧縮機KES−G5(カトーテック社製)を用いて、多孔質フィルム側の表面から厚さ方向へ下記の条件で一定速度で圧縮変形させ、その時の荷重を連続測定し、得られたチャートから計算され、装置に表示される圧縮エネルギーの値を読み取る。3回(試験片3枚)測定し、それらの平均をその複層構造物の圧縮エネルギーとする。
【0017】
測定条件:
KES−FB SYSTEM データ計測プログラム
COMPRESSION G5特性 標準条件
SENS:2
DEF OUT 5mm/10V
圧縮変形速度:0.02mm/sec
最大荷重:50g/cm
加圧板面積:2cm
【0018】
圧縮エネルギーは、好ましくは0.15〜0.25gfcm/cmであり、より好ましくは0.18〜0.25gfcm/cmである。圧縮エネルギーが0.15gfcm/cm未満であると、袋体に発熱組成物を充填して温熱用具を作製し、発熱させた時に、シールされた周縁部および温熱用具自体に周縁部を外に向けた反りが生じやすくなり、反りによる不快感を与えたり、温熱用具が被着体から剥がれることがある。また、圧縮エネルギーが0.25gfcm/cm以下であると、不織布と多孔質フィルムとの間に浮きが生じず、発熱組成物収容用袋を作製する際にシール不良が生じにくい。
【0019】
本発明における通気性複層構造物が、横方向に関して正の値の寸法変化率を有し、かつ、所定の圧縮エネルギーを有することにより、周縁部および温熱用具自体の周縁部の外側への反りが改良されるという効果が得られる理由については、以下のように推察される。すなわち、上記の反りは熱収縮によるひずみ(ストレス)と考えられる。発熱組成物が発熱すると、通気性複層構造物の縦方向(流れ方向)は一様に収縮するが、横方向の寸法変化率が正の値である(すなわち、横方向が伸びる)ことにより、そのひずみが吸収される。また、発熱組成物が発熱すると、組成物が硬化し、通気性複層構造物の平面に対して垂直方向にもひずみが発生するが、通気性複層構造物の圧縮エネルギーが大きい(すなわち、柔らかく低反発性である)とこのひずみは吸収される。このように、通気性複層構造物の横方向の寸法変化率が正の値であることと圧縮エネルギーが大きい(0.15gfcm/cm以上)こととによって、熱収縮により発生した水平・垂直方向のあらゆるひずみを吸収することができるので、その結果として通気性複層構造物の反りが低減または防止されることになる。
【0020】
上記のような本発明に使用可能な通気性複層構造物は、公知の任意の不織布および多孔質フィルムを組み合わせてラミネートすることにより製造することができる。
【0021】
複層構造物の寸法変化率は、不織布の平均公定水分率、製法、目付け、膜厚などを制御することによって所望の値にコントロールすることができる。
【0022】
また、複層構造物の圧縮エネルギーを0.15gfcm/cm以上とすることは、不織布の製法、目付け、膜厚等を制御することによって実現することができる。
【0023】
複層構造物において使用される不織布を構成する繊維は、公定水分率が2.0%以下であることが好ましい。さらに好ましくは1.0%以下であり、特に好ましくは0.7%以下である。公定水分率が2.0%以下であると、通気性複層構造物の20℃での寸法に対する50℃における横方向の寸法変化率が正の値になりやすい。
【0024】
ここで、公定水分率とは、二種類以上の繊維からなる不織布の場合においては平均公定水分率(構成する繊維の重量%にその繊維の公定水分率を乗じた値の和)である。例えば、公定水分率0.4%のポリエステル繊維85重量%と公定水分率11.0%のレーヨン15重量%とからなる不織布の平均公定水分率は、(0.4×0.85)+(11.0×0.15)=1.99(%)である。
【0025】
本発明に用いられる不織布の製造法としては、公知の方法のいずれを用いてもよい。例えば、抄紙法、カード法、メルトブロー法、スパンボンド法、およびウォータージェット法等を用いることができるが、柔軟性、収縮性等の観点からウォータージェット法を用いることが好ましい。ウォータージェット法は、孔開きドラムや孔無しローラー上の織ベルトなどの上の繊維ウェブに高圧ウォータージェットを当てて繊維を絡ませる方法であり、スパンレース法、ジェットレース法、ジェットパンチ法などとも呼ばれる。ウォータージェット法により不織布同士を交絡することによって、得られる不織布の通気性を低下させずに繊維を一体化させることができる。
【0026】
ウォータージェット法により製造された不織布は、通気性が良好であり、しかも、硬さが少なく、柔らかな感触となるために、使用時の違和感が軽減される。さらに、繊維間の絡みが強固でないため、圧縮エネルギーが大きくなり、20℃での寸法に対する50℃における横方向の寸法変化率にも有利となり、温熱用具の反り防止に適切であって、本発明に使用される不織布として好ましい。特に好ましくは、ウォータージェット法により得られるポリエステル系繊維を含む不織布である。
【0027】
適度な通気性および反り防止という観点から、不織布の目付け量は、好ましくは20〜100g/mであり、より好ましくは30〜80g/mである。また、膜厚は、好ましくは0.1mm〜1mmである。
【0028】
本発明において使用される不織布に用いられる繊維の種類としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、アクリル系合成繊維等の疎水性合成繊維が挙げられ、これらは単独でも組み合わせても用いることができる。また、上記繊維は短繊維、長繊維のいずれであってもよい。公定水分率が小さいという観点からは、ポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維が好ましく用いられる。収縮性、剛性、耐熱性等の観点からポリエステル系繊維が特に好ましい。
【0029】
上述のとおり、複数種の繊維を組み合わせた場合は、不織布に使用する全繊維の平均公定水分率が2.0%以下であればよく、公定水分率が大きい上記以外の繊維、例えばナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド系繊維およびレーヨンなどの半合成繊維、綿等の天然繊維等と上記の公定水分率が低い疎水性合成繊維とを組み合わせて用いることもできる。
【0030】
繊維の繊度は、不織布の強度および良好な柔軟性という観点から、好ましくは0.5〜10dtexであり、より好ましくは0.8〜8dtexであり、特に好ましくは2〜5dtexである。繊度が0.5〜10dtexであると、不織布の強度、柔軟性が良好となる。
【0031】
本発明において用いられる多孔質フィルムについては、基材として熱可塑性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、低密度(LD)、線状低密度(LLD)、高密度(HD)およびメタロセン系触媒(超低密度;VLD)ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン系、EVAおよびエチレン、プロピレン、ブテン等のポリオレフィン系共重合体系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリ塩化ビニルまたは塩化ビニリデンなどのいずれであってもよく、透湿性を有した微多孔フィルムであってもよい。また、これらを2〜3層組み合わせたものであってもよい。柔軟性、シール性、価格の観点から、ポリエチレンまたはその共重合体系オレフィンフィルムが好ましい。
【0032】
前記多孔質フィルムとしては、延伸多孔質フィルムが好ましい。例えば、熱可塑性樹脂の中に炭酸カルシウム等の充填材を溶融混練により均一に分散させて得た樹脂組成物を、シート加工し、得られたフィルムまたはシートを従来公知の方法で延伸することにより、フィルムまたはシートに小さな空際(ミクロボイド)を多数発生させて微細孔化し、多孔質フィルムを得ることができる。
【0033】
また、前記延伸方向については、通常、一方向のみの延伸(一軸延伸)による多孔質フィルムが用いられるが、多方向に延伸された多孔質フィルム(例えば二軸延伸多孔質フィルム)を用いることもできる。
多孔質フィルムの孔径は、好ましくは0.01〜10μmであり、より好ましくは0.1〜5μmである。
【0034】
本発明に使用される通気性複層構造物は、不織布と多孔質フィルムとをラミネートして得ることができる。ラミネートをする方法は、従来公知の任意の方法を適用することができる。例えば、熱接合あるいはホットメルト接着剤またはアクリル系もしくはウレタン系接着剤等の接着剤で積層する方法でもよく、また、全面接合であっても、柔軟性を保つために部分接合であってもよい。好ましくは、カーテンスプレー法またはドライラミネート法が用いられる。
【0035】
不織布と延伸多孔質フィルムとがラミネートされた通気性複層構造物の通気性は、袋材の収縮性、密着性、および充分な発熱特性を考慮すると、ガーレ法(JIS P−8117)による測定で8,000〜80,000秒/100ccであることが好ましい。
【0036】
また、発熱組成物収容用袋の通気性複層構造物以外の面(すなわち通気性複層構造物からなる面を一方の面とすると他方の面;以下「貼付面」ということがある)には、衣服または皮膚等の被着体に貼付するための貼付手段を設けることができる。貼付手段としては、所望の被着体への貼付という目的が達成される限りにおいて、公知の粘着剤、温湿布剤等からなる層等を任意に選択して用いることができる。このような層は、貼付面の全面に設けてもよく、部分的に設けてもよい。
【0037】
貼付面に使用されるフィルムとしては、公知の非通気性または通気性の熱可塑性樹脂フィルム(単層であっても複層であってもよい)を用いることができる。熱可塑性樹脂としては前記延伸多孔質フィルムに用いられる樹脂と同様のものを使用することができる。膜厚が20μm〜100μmmのフィルムが好ましく使用される。
【0038】
この熱可塑性樹脂フィルムの寸法変化率は、上記通気性複層構造物の寸法変化率と同等またはそれ以上であるのが好ましく、それ以上であるのがより好ましい。熱可塑性樹脂フィルムの寸法変化率が通気性複層構造物の寸法変化率と同等またはそれ以上であると、温熱用具のシールされた周縁部および温熱用具自体が周縁部を外に向けて反りあがりにくくなる。また、この熱可塑性樹脂フィルムに不織布をラミネートした非通気性複層構造物を用いることもできるが、その場合、非通気性側の不織布としては前記繊維の不織布だけでなくその他の公知の任意の不織布も使用できる。
【0039】
上記のような通気性複層構造物および貼付面を構成するフィルムを、通気性複層構造物の多孔質フィルム側を内側にして重ね、公知の任意の方法によって周縁部を接合することによって、本発明の発熱組成物収容用袋を形成することができる。接合方法としては、接着剤による方法、ヒートシールによる方法等が挙げられるが、好ましくはヒートシールである。
【0040】
本発明の発熱組成物収容用袋に、発熱組成物を充填することによって、本発明の発熱体または温熱用具を製造することができる。なお、本発明に関して、「温熱用具」とは、暖を採るためのいわゆる使い捨てカイロ、医療用の温湿布構造物、美容用の温熱用具など、用途や形態を問わず、皮膚に直接または衣服等を介して間接的に、人体に温熱を与えるために使用されるもの一般を指す。
【0041】
本発明において使用することができる発熱組成物は、酸素との反応によって発熱する組成物であり、水分を含有するものであれば特に限定されない。例えば、鉄粉などの金属粉に、NaCl、KCl、MgCl、CaCl等の金属塩化物、KSO、NaSO、MgSO等の金属硫酸塩、または他の反応助剤となり得る化合物(例えば活性炭)、水および水をよく吸収する保水剤(シリカ、バーミキュライト、木粉、リンター、吸水性樹脂などの高分子吸水材等)、ならびに必要に応じてその他の添加剤などを公知の配合比で公知の方法で混合した混合物が一般に用いられる。
【0042】
本発明の発熱組成物収容用袋を使用した温熱用具の製造は、従来公知の任意の方法によって行うことができる。例えば、前記のようにして通気性複層構造物の不織布側を外側にして本発明の袋を作製し、その中に上記のような発熱組成物を収容し、袋体の周縁部を熱融着することによって得られる。熱融着には、例えば加熱バーまたは加熱ロールシーラー、インパルスシーラー、高周波シーラー、超音波シーラー等のヒートシーラーが通常使用される。一般に、貼付面の貼付手段が粘着剤または温湿布剤などである場合、その全面または一部は剥離シートによって覆われる。製造された温熱用具は、実質的に気密性の外袋に収容されて、使用するまで保管される。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0044】
実施例1
ポリエステル短繊維(2.0dtex、53mm長)で形成したカードウエブを用いて、ウォータージェット法により、目付量40g/mのスパンレース不織布を得た。この不織布は、公定水分率が0.4%、縦方向の20℃での寸法に対する50℃における寸法変化率(以下、単に「寸法変化率」という)が−0.5%、横方向の寸法変化率が0%であった。
【0045】
この不織布に、ポリエチレン製多孔質フィルム(50μm、縦方向の寸法変化率:−1.1%、横方向の寸法変化率:0%)をカーテンスプレー方式で接着剤(ポリオレフィン系接着剤MP−841;日本エスエスシー)を介して貼り合わせ、通気性複層構造物を得た。この通気性複層構造物の横方向の寸法変化率は、+0.5%であり、圧縮エネルギーは0.18gfcm/cmであった。この複層構造物と、非通気性ポリエチレン製フィルム(80μm)にアクリル溶剤系の二液硬化型樹脂(主剤:BPS5213KOP、硬化剤:BHS8515;東洋インキ社製)の粘着剤を塗布し、その上を離型紙でカバーしたフィルムとを、それぞれ不織布と離型紙とが外側になるようにして重ね合わせ、その周縁部の3辺を5mm幅でヒートシールして扁平な袋(70mm×200mm)を得た。このようにして得られた袋の内部に、鉄粉61.6wt%、活性炭5.3wt%、バーミキュライト9.5wt%、食塩3.1wt%、水20.5wt%からなる発熱組成物20gを充填し、残りの1辺をヒートシールして発熱体(温熱用具)を作製した。これを非通気性袋の外袋の中に密封し、使用時まで保存した(「貼るカイロA」)。
【0046】
実施例2
実施例1において得られたスパンレース不織布に代えて、ポリエステル短繊維(2.0dtx、53mm長)85重量%およびレーヨン短繊維(1.2dtx、53mm長)15重量%を用いて形成したカードウェブを用いて実施例1と同様に製造した目付量40g/mのスパンレース不織布を使用したこと以外は、実施例1と同様にして「貼るカイロB」を得た。
【0047】
比較例1
実施例1において得られたスパンレース不織布に代えて、ポリプロピレン系スパンボンドの市販品(目付量:40g/m)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして「貼るカイロC」を得た。
【0048】
比較例2
実施例1において得られたスパンレース不織布に代えて、ポリエステル系スパンボンド不織布の市販品(目付量:40g/m)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして「貼るカイロD」を得た。
【0049】
比較例3
実施例1において得られたスパンレース不織布に代えて、目付量40g/mのナイロンスパンボンド不織布を使用したこと以外は、実施例1と同様にして「貼るカイロE」を得た。
【0050】
比較例4
実施例1において得られたポリエステルスパンレース不織布に代えて、目付量40g/mのレーヨンスパンレース不織布を使用した以外は実施例1と同様にして貼るカイロFを得た。
【0051】
試験例
上記実施例1〜2、比較例1〜4で得られた貼るカイロA〜Fについて、以下の方法によって試験した。
<試験1>
カイロ(A〜F)を外袋から出し、34℃の塩化ビニル製の熱盤(熱盤内が温水循環している装置)上にカイロを、通気面を上(空気側)に、裏基材面を下(熱盤側)にして設置し、30分後、反りを測定した。反りの大きさは、下からの反りの最大高さの長さ(cm)として表した。
<試験2>
カイロ(A〜F)を、外袋から出し、人体の腰あたりの背中の衣服に貼り、1時間後のカイロ周縁部の反りを観察した。反りの程度を、○:反らなかった、△:わずかに反った、×:大きく反った、の基準にしたがって評価した。
【0052】
結果を表1に示す。なお、寸法変化率および圧縮エネルギーについては、それぞれ上記した方法で、カイロの作製前に別途測定したものである。また、参考として、これらのカイロに使用した不織布自体の平均公定水分率も示した。
【0053】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面が不織布と多孔質フィルムとをラミネートして得られる通気性複層構造物からなり、他方の面が貼付手段を有する貼付面である、水分を含有し空気の存在下で発熱する発熱組成物を収容するための袋であって、前記通気性複層構造物が、20℃での寸法に対する50℃における横方向の寸法変化率が正の値であること、および0.15gfcm/cm2以上の圧縮エネルギーを有することを特徴とする、発熱組成物収容用袋。
【請求項2】
前記不織布がウォータージェット法で製造されたものである、請求項1記載の発熱組成物収容用袋。
【請求項3】
請求項1または2記載の発熱組成物収容用袋に、空気の存在下で発熱する発熱組成物が収容されていることを特徴とする温熱用具。
【請求項4】
気密性外袋に収容されている、請求項3記載の温熱用具。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面が不織布と延伸多孔質フィルムとをラミネートして得られる通気性複層構造物からなり、他方の面が貼付手段を有する貼付面である、水分を含有し空気の存在下で発熱する発熱組成物を収容するための袋であって、前記通気性複層構造物が、20℃での寸法に対する50℃における横方向の寸法変化率が正の値であること、および20℃での寸法に対する50℃における縦方向の寸法変化率が負の値であることを特徴とする、発熱組成物収容用袋。
【請求項2】
前記通気性複層構造物が、0.15〜0.25gfcm/cm2圧縮エネルギーを有する、請求項1記載の発熱組成物収容用袋。
【請求項3】
前記通気性複層構造物が、ガーレ法による測定で8,000〜80,000秒/100ccの通気性を有する、請求項1または2記載の発熱組成物収容用袋。
【請求項4】
前記不織布がウォータージェット法で製造されたものである、請求項1〜3のいずれか1項記載の発熱組成物収容用袋。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の発熱組成物収容用袋に、空気の存在下で発熱する発熱組成物が収容されていることを特徴とする温熱用具。
【請求項6】
気密性外袋に収容されている、請求項記載の温熱用具。

【公開番号】特開2006−239015(P2006−239015A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−56288(P2005−56288)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【特許番号】特許第3756925号(P3756925)
【特許公報発行日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(595031775)シンワ株式会社 (12)
【出願人】(000112509)フェリック株式会社 (14)
【Fターム(参考)】