説明

発熱装置及び発熱方法

【課題】石油資源依存から脱却してこれに代替することができる十分な熱効率を備え、しかも環境汚染の問題も生じない安価な暖房・発熱・給熱装置を提供することを目的とする。
【解決手段】仕切り部材10の下縁は燃焼ポイントP近傍に位置することから、コークスの継続燃焼によってセラミック材料よりなる仕切り部材10は常に高温に加熱された状態に維持され、その様に高温に維持されたセラミック材料よりなる仕切り部材10によって排気路8内側は加熱され、排気路8内側を通過して排気口9から排出される加熱されたガスは排気路8内側を通過する過程でも温度低下は少なく、残存する未燃焼成分はこの高温に維持された排気路8内側を通過する過程で再燃焼して、クリーンなガスとして排気口9から排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房・発熱・給熱方法及びこれに適用される暖房・発熱・給熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、筒状の炉体に煙突を備え、この炉体内で薪若しくは石炭などの燃料を燃焼させるタイプのストーブすなわち暖房・発熱・給熱装置がある。
【0003】
このようなタイプの暖房・発熱・給熱装置にあっては、薪若しくは石炭などの燃焼による火力によって暖房効果は得られるものの薪若しくは石炭などの燃焼によって黒煙が多量に発生するという欠点がある。この様な問題に関し特許文献1には薪などの燃料を炉体内で燃焼させる煙突装備タイプのストーブにおいて、黒煙が出にくいストーブを提供するという課題を解決したストーブが開示された。
【0004】
この特許文献1のストーブは、薪などの燃料を投入して燃焼させる図6に示す様な態様のストーブに関する。すなわち、筒状の炉体21内空間を上下に仕切る仕切体23を設け、この仕切体23より上方の上側空間部24にこの上側空間部24内の空気を炉体21外へ排出する排気部25を設ける。さらに、この仕切体23より下方の下側空間部26を燃料投入用の燃焼空間部26Aに形成する。この仕切体23に前記上側空間部24と下側空間部26とを連通する連通部27を形成し、この連通部27に前記下側空間部26で発生する未燃焼ガスを燃焼させる触媒28を配設してなる。
【0005】
この特許文献1のストーブによれば、燃料の燃焼により炉体内の下側空間部に発生する未燃焼ガスが触媒によって二次燃焼し、この二次燃焼により未燃焼ガス中のCO量が大幅に削減され、排気部から黒煙が出にくいものと説明されている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−46334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近時、世界的な過度の石油資源依存により、石油資源の枯渇が叫ばれており、また石油資源に由来する排気ガスによる環境汚染の問題は世界各国共通の問題として、その技術的な解決手段が模索されている。
【0008】
上述した特許文献1のストーブは石油資源に依存しないものとして、有力ではあるが、反面、低熱効率な薪若しくは石炭を燃料とするものであって、石油資源や電力、ガスを利用する暖房・発熱・給熱装置に比して、有効な代替手段たり得るものではなかった。
【0009】
また未燃焼ガスを燃焼させる触媒28としては、例えば自動車両等の排ガス浄化対策に用いられる「排ガス浄化触媒」を用いることはできるが、係る「排ガス浄化触媒」に適用される酸化触媒としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属が一般に用いられ、極めて高価であって特許文献1のストーブを安価に実用的に構成することはできない。
【0010】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑み、石油資源依存から脱却してこれに代替することができる十分な熱効率を備え、しかも環境汚染の問題も生じない安価な暖房・発熱・給熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を達成する本発明の暖房・発熱・給熱方法は以下の各工程よりなることを特徴とする。
(1)コークス供給口からコークスを投入し、蓄熱部材近傍領域の燃焼ポイントに向けて収納する工程。
(2)燃焼ポイントに収納された着火剤に着火してコークスの燃焼を開始する工程。
(3)燃焼ポイントにおける燃焼熱によって高温に維持された排気路内側を通過させて排気口からコークスの燃焼ガスを排出する工程。
(4)排気口から排出する排気ガスによって暖房・発熱・給熱を行う工程。
【0012】
以上の本発明の暖房・発熱・給熱方法によれば燃料として無煙燃焼し、火力が強いコークスを用いることから、クリーンなエネルギー源を用いて高い熱量を極めて効率よく得ることができる。
しかも、排気口から排出される加熱されたガスは燃焼ポイントにおける燃焼熱によって高温に維持された排気路内側を通過して排出されるので、その排出ガスは排気路内側を通過する過程でも温度低下が少なく、未燃焼成分が残存しないクリーンなガスとして排出され、かかるクリーンなガスによって効率よく暖房・発熱・給熱が行われる。
【0013】
さらに以上の本発明の暖房・発熱・給熱方法に適用される本発明の暖房・発熱・給熱装置は、コークス供給路に連通するコークス供給口と、吸気部に連通する吸気口と、排気路に連通する排気口を有し、前記コークス供給路と、前記吸気部と、前記排気路とが相互に連通し、前記排気路は少なくともその一部がセラミック材料部材によって構成されてなることを特徴とする。
【0014】
係る本発明の暖房・発熱・給熱装置によれば、排気路は少なくともその一部がセラミック材料部材によって構成されていることから、排気路を通じて排出されるガスが未燃焼成分を含んでいても、この排気路を構成するセラミック材料部材によって排気路内側は加熱され、排気路内側を通過して排気口から排出される加熱されたガスは排気路内側を通過する過程でも温度低下は少なく、残存する未燃焼成分はこの高温に維持された排気路内側を通過する過程で再燃焼して、未燃焼成分が極めて少ないクリーンなガスが排気口から排出される。
【0015】
以上の本発明の暖房・発熱・給熱装置では排気路を少なくともその一部をセラミック材料部材によって構成する態様として、セラミック材料部材によってコークス供給路と排気路との仕切りが構成される様にすることができる。
【0016】
その様にセラミック材料部材によってコークス供給路と排気路との仕切りが構成される様にすれば、排気路を通じて排出されるガスはセラミック材料部材によって再加熱されるに十分な区間を通過することができ、未燃焼成分はこの排気路を構成するセラミック材料部材によって十分に加熱されて完全に再燃焼せしめられる。
【0017】
前記コークス供給口と前記排気口のそれぞれの重力方向下方において前記コークス供給路と排気路と前記吸気部とが連通し、そのコークス供給路と排気路と前記吸気部との連通部分に蓄熱部材が配置される様にすれば、コークス供給路と排気路と前記吸気部との連通部分をコークスの燃焼領域として蓄熱部材が配置されることによって、蓄熱性を高めてコークスの燃焼開始及び燃焼継続を確実に行う様にすることができる。
【0018】
その場合に前記吸気部の底部平面部がセラミック材料部材によって構成されてなる様にすれば、コークスの燃焼領域の蓄熱性をさらに向上することができる。
【0019】
また前記セラミック材料部材が遠赤外線を放射する能力を有することによって、未燃焼ガスの再燃焼がさらに確実に増進され、コークスの燃焼領域の蓄熱性もさらに向上される。
【0020】
前記蓄熱部材がセラミックである様にすることによって、断熱蓄熱性が高く安価な材料によって燃焼領域の蓄熱性能を高めることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の暖房・発熱・給熱方法及びこれに適用される暖房・発熱・給熱装置は燃料としてコークスを用いることによって高い熱量を得ることができ、極めて効率の良い暖房・発熱・給熱装置を得ることができる。しかも、CO量が大幅に低減したクリーンな排気ガスが排出される極めてクリーンな暖房・発熱・給熱装置を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の暖房・発熱・給熱方法に適用される本発明の実施の形態の暖房・発熱・給熱装置の全体斜視図である。また図2は同じく断面模式図である。
図に示される様に暖房・発熱・給熱装置1は本体2と、その本体2に取り付けられる蓋部3を有してなる。
本体2にはコークス供給路4にコークスを供給するためのコークス供給口5と、吸気部6の外部への開口部である吸気口7と、排気路8の外部への開口部である排気口9を有する。
【0023】
以上のコークス供給路4にコークス供給口5から投入されるコークスは、一般には粘結炭、ピッチ、石油、石油残滓あるいは他の炭素質物質の乾留または分解蒸留によって得られる粘結性、多孔質の固形物である。炭素を主成分とし、無機物質や揮発性物質を含む。
通常は石炭を乾留して揮発分を除いた含炭素の滞灰黒色、金属性光沢のある多孔貿の固体であり、多孔性で点火しにくいが、火をつければ無煙燃焼し、火力が強い。
【0024】
係るコークスは一般的には乾留により石炭をコークスに変換するコークス炉において石炭を分解蒸留し、若しくは原油の重残留缶底液を加熱して低沸点石油生成物と副生物石油コークスに変換するコークス化処理を行って得られる。
【0025】
前記コークス供給路4と、前記排気路8とは仕切り部材10によって仕切られており、かかる仕切り部材10はコークス供給口5と排気口9の境界を構成すると共に、鉛直下方に延びてコークス供給路4と排気路8との境界を構成する。すなわちコークス供給口5と排気口9とは仕切り部材10の下方において連通する。
さらに、コークス供給路4の下方は吸気部6とされており、コークス供給路4と吸気部6とは格子状仕切り部材11によって仕切られる。またその吸気部6の底部平面部には底部部材12が配置される。
【0026】
コークス供給路4と、排気路8との仕切り部材10及び底部部材12は図3に示す様にセラミック材料によって方形にされてなり、かかるセラミック材料としては高温に加熱されることによって遠赤外線を発し、また高い熱容量を有して蓄熱・断熱機能を備える材料が好適に適用される。具体的には強度、耐熱性、耐食性等の観点から、コージェライト(2MgO・2Al23・5SiO2)、アルミナ(Al23)、ムライト(3Al23・2SiO2)、窒化珪素(Si34)、炭化珪素(SiC)、チタン酸アルミニウム(Al2TiO5)、ジルコニア(ZrO2)、又は金属珪素−炭化珪素複合材料(Si−SiC)のうちのいずれかであることが好ましい。
【0027】
以上のセラミック材料を用いてなる仕切り部材10及び底部部材12は、例えば、セラミックからなる骨材粒子、水等を混練することによって坏土とし、その坏土を所要の方形状にプレス成形し、その成型体を焼成することによって得ることができる。
【0028】
また、コークス供給路4と吸気部6との格子状仕切り部材11は図4に示す様に方形の枠11aに複数の梁11bを掛け渡した態様で鋳鉄によって一体に構成される。梁11b相互間は吸気部6からコークス供給路4及び排気路8への自在な気流を可能とする通気部11cとされる。係る格子状仕切り部材11は図2に示す様に本体2内側面に一側縁11dが接し、他側縁11eは蓄熱部材13の下端近傍側面と底部部材12上面とに同時に接して支持される態様で配置される。したがって、格子状仕切り部材11は一側縁11dから他側縁11eに向けた傾斜を備えて配置される。
【0029】
以上の構成から前記コークス供給口5と前記排気口9のそれぞれの重力方向下方であって、さらに格子状仕切り部材11の上方であって仕切り部材10の下方の領域は、前記コークス供給路4と排気路8と前記吸気部6とが相互に連通する連通部14とされる。
【0030】
また以上の構成から格子状仕切り部材11の一側縁11dから他側縁11eに向けた傾斜の最下方位置であって前記排気口9の下方の本体2内側の連通部14に蓄熱部材13が配置された配置関係が可能となる。
セラミックを用いてなる蓄熱部材13は、骨材粒子に水、増孔剤(OZキラハニカム)及び鉄粗粒スティール)を混合し、混練して坏土とし、その坏土を所要の方形状に押出成型し、その成型体を焼成することによって得ることができる。この様にして得られたこの2個の方形の蓄熱部材13が積層されてスティール製の保持部材13aと本体2内側間に保持して配置される。
【0031】
格子状仕切り部材11及び蓄熱部材13と底部部材12の以上の様な配置関係及び蓄熱部材13と底部部材12の断熱蓄熱機能から、蓄熱部材13及び底部部材12に支持された格子状仕切り部材11の側縁11e近傍領域は極めて高い蓄熱性を有する燃焼ポイントPとなる。係る燃焼ポイントPは連通部14における最下方点となる。
【0032】
図5は以上に説明した本発明の実施の形態の暖房・発熱・給熱装置1の吸気部6近傍の拡大断面図である。
図1、図2、図5(a)(b)に示される様に、吸気部6の吸気口7には緊急閉塞機構15が設けられる。係る緊急閉止機構15は吸気口7の一側縁から他側縁に水平方向に掛け渡して固定された丸棒16と、吸気口7の吸気部6内側面に設けられたストッパー17と、丸棒16とストッパー17とによって保持される吸気口部蓋18とにより構成される。吸気口部蓋18にはその一側面の吸気部6内側方端部に突起18aが設けられ、吸気口部蓋18における突起18aとは逆側の側面の吸気部6外側の領域には取り手18bが設けられる。
【0033】
以上の本発明の実施の形態にかかる暖房・発熱・給熱装置の使用態様を以下に説明する。
まず、蓄熱部材13及び底部部材12に支持された格子状仕切り部材11の側縁11e近傍領域であって極めて高い蓄熱性を有する燃焼ポイントPに例えば木炭等の着火剤を収納し、さらに本体2のコークス供給口5から燃料たるコークスを投入する。
図2(b)に示される様に、このコークス供給口5から投入された燃料たるコークスは、格子状仕切り部材11の傾斜に沿ってその自重によりコークス供給路4内を落下して燃焼ポイントPに達し、積層される。換言すると、本体2の連通部14に投入される燃料コークスはその最下方位置を燃焼ポイントPとし格子状仕切り部材11に沿って積層される態様で事前に収納された着火剤上に積層される。
【0034】
次に、燃焼ポイントPに収納された着火剤に着火すれば、木炭等の着火剤は容易に燃焼を開始し、その着火剤の燃焼熱によって着火剤上に積層されたコークスもその着火温度である約550〜650℃まで加熱されることによって燃焼を開始する。その際に前述した様に、燃焼ポイントPは極めて高い蓄熱性を有することから、着火剤の燃焼開始後コークスの燃焼開始温度への加熱は極めて速やかにかつ安定して行われる。
【0035】
また、燃焼ポイントPにおいて燃料コークスが一旦燃焼を開始すると、その発生する熱量は極めて高く、しかも燃焼ポイントPは極めて高い蓄熱性を有することから、爾後格子状仕切り部材11の傾斜に沿ってその自重により燃焼ポイントPに達し、燃焼ポイントPを最下点として積層されたコークスは、最下方の燃焼ポイントPに近いものから逐次燃焼を継続し、失火することはない。
【0036】
一方、連通部14に対しては吸気口7から吸気部6、格子状仕切り部材11を介して常時、給気されており、燃料コークスの燃焼によって加熱されて単位重量が低下したガスは蓋部3が閉止された状態では、常に排気路8を通じ排気口9から外部に流出する。
これによって、吸気口7→吸気部6→格子状仕切り部材11→連通部14→排気路8→排気口9という気流が形成され、この気流によって常に負圧に維持される連通部14に対しては吸気部6、格子状仕切り部材11を介して吸気口7からの給気が常時維持される。
【0037】
なお、燃焼した燃料コークスのガス化しない残留成分は、格子状仕切り部材11から下方に落下して底部部材12上に積層し、これ自体が蓄熱性及び断熱性を有することから燃焼ポイントPにおける燃料コークスの燃焼効率はさらに向上される。ただし、燃料コークスは極めて高純度の炭素原料であり、したがって燃焼残滓はほとんど発生しない。また、偶発的に何らかの夾雑物が混入し、燃焼残滓として底部部材12上に積層した場合であっても、吸気口7から容易に視認して外部に掻き出す等の処理を施すことができる。
【0038】
また、コークス供給口5から投入されてコークス供給路4内に格子状仕切り部材11の傾斜に沿って積層された燃料たるコークスは燃焼ポイントPにおける燃焼の継続に応じて格子状仕切り部材11の傾斜に沿って下方に移動し、コークス供給路4内のコークス供給口5近傍にはこれに伴い燃焼ポイントPにおける燃焼によって消失した燃料たるコークスの分量に応じた空間が形成される。この燃料たるコークスの目減り分は必要に応じて随時蓋部3を解放して補充することができる。
【0039】
さて、以上の様に吸気口7→吸気部6→格子状仕切り部材11→連通部14→排気路8→排気口9という気流が形成されることによって、排気口9から排出される加熱されたガスは常に仕切り部材10によって形成された排気路8を通過する。
一方、前述した様に仕切り部材10の下方の領域は、前記コークス供給路4と排気路8と前記吸気部6とが相互に連通する連通部14となっており、係る連通部14最下方位置に燃焼ポイントPが存在し、仕切り部材10の下縁は燃焼ポイントP近傍に位置することから、コークスの継続燃焼によってセラミック材料よりなる仕切り部材10は常に高温に加熱された状態に維持される。
【0040】
したがってその様に高温に維持されたセラミック材料よりなる仕切り部材10によって排気路8内側は加熱され、排気路8内側を通過して排気口9から排出される加熱されたガスは排気路8内側を通過する過程でも温度低下は少なく、残存する未燃焼成分はこの高温に維持された排気路8内側を通過する過程で再燃焼して、クリーンなガスとして排気口9から排出される。
【0041】
なお、連通部14最下方位置に蓄熱部材13が配置された燃焼ポイントP、すなわち燃焼領域が構成されることから、特に風の強い日などに排気口9から空気が本体2内に逆流しても、燃焼領域である燃焼ポイントPに風が直接吹き込む様なことはなく、本体2から未燃焼の排気が噴き出すようなことはない。
【0042】
さらに、以上の様に暖房・発熱・給熱装置1が正常に運転されて吸気口7を介する吸気部6への吸気が維持される状態では、前記緊急閉塞機構15によれば、吸気口部蓋18の突起18aがストッパー17に係合すると共にその本体部分は丸棒16上に保持されて、脱落が防止され、吸気口7の開放が維持されて、燃焼ポイントPにおける燃焼が維持される。
【0043】
一方、緊急に暖房・発熱・給熱装置1の運転を中止する必要が生じた場合には図5(a)に示す様に吸気口部蓋18の吸気部6外側における端部に吸気口7方向に力を加えることによって、吸気口部蓋18は転回し、図5(b)に示す様に取り手18bの反対側の側面がストッパー17に当接すると共にその反対側面、すなわち取り手18bが設けられた側面が丸棒16に支持された状態で保持され、その結果、吸気口7を介する吸気部6への吸気が停止される。その様に吸気部6への吸気が停止された状態で、これと前後して蓋部3を開放してコークス供給口5から周知の消火用の砂を投入すれば、暖房・発熱・給熱装置1の運転を緊急に中止して消火することができる。
【実施例】
【0044】
以下に図1、図2に示した本発明の実施の形態の暖房・発熱・給熱装置を実際に作成してその内部においてコークスを燃焼して得られた実施例の結果につき説明する。
(5)本発明の実施例の暖房・発熱・給熱装置の製作
(a)スチール製の厚さ6mm×幅250mm×高さ500mmの本体2にスチール製の厚さ6mm×幅250mm×奥行き162mmの蓋部3をスチール製蝶番によって取り付けて、本体2と蓋部3とよりなる外郭を構成した。
(b)コージェライト、アルミナ、ムライト、窒化珪素、炭化珪素、チタン酸アルミニウム、ジルコニア、鉄分、ナトリウム、カリを成分とするセラミックス材料を用いて厚さ16mm×幅230mm×奥行き230mmの仕切り部材10及び底部部材12を製作した。
その製作に当たっては先ずセラミックからなる骨材粒子に水を混合し、混練して坏土とした。その坏土を仕切り部材10及び底部部材12の形状にプレス成型することによって成型体を得た。その成型体を1350℃に昇温した焼成室内で30時間焼成した。
(c)コージェライト、アルミナ、ムライト、窒化珪素、炭化珪素、チタン酸アルミニウム、ジルコニア、OZキラハニカム、鉄分を成分とするセラミックス材料を用いて厚さ30mm×幅208mm×奥行き105mmの蓄熱部材13を2枚製作した。その製作に当たっては骨材粒子に水、増孔剤(OZキラハニカム)及び鉄粗粒スティール)を混合し、混練して坏土とした。その坏土を蓄熱部材13の形状に押出成型することによって成型体を得た。その成型体を1,150℃に昇温した焼成室内で60時間焼成した。
【0045】
また、実施例において使用したコークスにつき以下に説明する。
(a)成分・燃焼温度
使用したコークスの成分・燃焼温度等を表1に示す。
(b)使用したコークスの製造
使用したコークスは周知の製造工程によって石炭原料をコークス炉において分解蒸留しコークス化して得られた。
【0046】
【表1】

【0047】
なお、表1において燃焼温度は通常の雰囲気におけるデータであって、高純度酸素雰囲気においてはさらに燃焼温度は高温となる。
【0048】
(6)暖房・発熱・給熱装置の特性評価
暖房・発熱・給熱装置の特性は、コークスの燃焼によって排気口9から排出されるガスの温度及び成分を測定することによって行った。その結果を表2に示す。
【0049】
【表2】

【0050】
表2に示されるように、排気口9から排出されるガスの温度は平均130℃であり、またガスの成分はほぼ完全にCOであり、未燃焼ガスであるCOがほぼ完全に燃焼した後のガスとなっていた。
【0051】
以上の実施例の結果は、仕切り部材10の下縁は燃焼ポイントP近傍に位置することから、コークスの継続燃焼によってセラミック材料よりなる仕切り部材10は常に高温に加熱された状態に維持され、その様に高温に維持されたセラミック材料よりなる仕切り部材10によって排気路8内側は加熱され、排気路8内側を通過して排気口9から排出される加熱されたガスは排気路8内側を通過する過程でも温度低下は少なく、残存する未燃焼成分はこの高温に維持された排気路8内側を通過する過程で再燃焼して、クリーンなガスとして排気口9から排出されることによる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の暖房・発熱・給熱装置は、室内外用の暖房・発熱・給熱装置として好適に用いることができる。また、例えば家庭菜園や温室の暖房・発熱・給熱装置あるいは体育館等の公共施設用の低コスト大出力暖房・発熱・給熱装置として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施の形態に係る暖房・発熱・給熱装置の斜視図である。
【図2】(a)図1に示す暖房・発熱・給熱装置の断面模式図である。(b)図1に示す暖房・発熱・給熱装置の他の断面模式図である。
【図3】図1に示す暖房・発熱・給熱装置の一部部材の斜視図である。
【図4】図1に示す暖房・発熱・給熱装置の一部部材の平面図である。
【図5】(a)図1に示す暖房・発熱・給熱装置の部分拡大断面図である。(b)図1に示す暖房・発熱・給熱装置の他の部分拡大断面図である。
【図6】従来のストーブの断面図である。
【符号の説明】
【0054】
2・・・本体、4・・・コークス供給路、5・・・コークス供給口、6・・・吸気部、7・・・吸気口、9・・・排気口、11・・・格子状仕切り部材、11d,11e・・・格子状仕切り部材側縁,12・・・底部部材、13・・・蓄熱部材、14・・・連通部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の各工程よりなる暖房・発熱・給熱方法。
(1)コークス供給口からコークスを投入し、蓄熱部材近傍領域の燃焼ポイントに向けて収納する工程。
(2)燃焼ポイントに収納された着火剤に着火してコークスの燃焼を開始する工程。
(3)燃焼ポイントにおける燃焼熱によって高温に維持された排気路内側を通過させて排気口からコークスの燃焼ガスを排出する工程。
(4)排気口から排出する排気ガスによって暖房・発熱・給熱を行う工程。
【請求項2】
請求項1の暖房・発熱・給熱方法に適用される暖房・発熱・給熱装置であって、コークス供給路に連通するコークス供給口と、吸気部に連通する吸気口と、排気路に連通する排気口を有し、前記コークス供給路と、前記吸気部と、前記排気路とが相互に連通し、前記排気路は少なくともその一部がセラミック材料部材によって構成されてなることを特徴とする暖房・発熱・給熱装置。
【請求項3】
前記セラミック材料部材によって前記コークス供給路と前記排気路との仕切りが構成されてなる請求項2に記載の暖房・発熱・給熱装置。
【請求項4】
前記コークス供給口と前記排気口のそれぞれの重力方向下方において前記コークス供給路と排気路と前記吸気部とが連通し、そのコークス供給路と排気路と前記吸気部との連通部分に蓄熱部材が配置される請求項2記載の暖房・発熱・給熱装置。
【請求項5】
前記吸気部の底部平面部がセラミック材料部材によって構成されてなる請求項2記載の暖房・発熱・給熱装置。
【請求項6】
前記セラミック材料部材が加熱されることによって遠赤外線を放射するセラミック材料を用いてなる請求項2記載の暖房・発熱・給熱装置。
【請求項7】
前記蓄熱部材がセラミックである請求項4記載の暖房・発熱・給熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−170760(P2007−170760A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−370761(P2005−370761)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【特許番号】特許第3844137号(P3844137)
【特許公報発行日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(397007859)株式会社亀川組 (1)
【Fターム(参考)】