説明

発現プロファイリングのためのcDNA増幅

本発明は新規なcDNA増幅方法に関する。RNAをまずcDNAに変換する。このcDNAの合成はプロモーター付加されたオリゴヌクレオチドを含み、次いでこのcDNAを連結して環状構造(又は場合によりコンカテマー構造を)形成する。次いでこれを、ローリングサークル増幅及び鎖置換増幅に基づくPhi29 DNAポリメラーゼを用いて増幅する。本発明は、RNAプロモーター配列をcDNAに連結させ、この増幅されたcDNAからのRNAの生成を介した付加的な増幅を手助けする。得られる生成物は次いで遺伝子発現の研究用、又はその他のRNA分析手法用の材料作製に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して核酸増幅及び発現プロファイリングの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸の指数関数的増幅のための多数の方法が開発されている。これらには、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、自立性塩基配列複製(3SR)、核酸配列性増幅(NASBA)、鎖置換増幅(SDA)、複数置換増幅(MDA、米国特許第6124120号)、及びローリングサークル増幅(RCA、米国特許第6143495号)が含まれる。
【0003】
現在のPCR増幅方法は、プライマーの位置で開始するDNA複製が対象の核酸配列を複製し得るように、対象の核酸配列に隣接する領域にハイブリダイズする2つのプライマーの使用を伴う。
【0004】
変性ステップとともにテンプレート鎖から複製鎖を分離することにより、同じプライマーを使用する複製をもう1サイクル行うことで、対象の核酸の幾何学的増幅をもたらすことができる。PCR増幅は、増幅反応が連続的に進行しない、また核酸サンプルを一連の反応条件のもとで複数サイクルに供して行わねばならないという欠点を有する。
【0005】
全ゲノムPCRと呼ばれるPCR増幅変法は、同一のPCR反応において生物の全ゲノムを増幅するために、ランダム又は部分的ランダムプライマーの使用を伴う。この技法は、ゲノムDNA全体にわたり、中程度の間隔でプライマー対がハイブリダイズし得るように、十分な数のランダム又は部分的ランダム配列のプライマーが存在することに依存する。プライマーの位置で開始した複製は、次いで、もう一方のプライマーがハイブリダイズし得るオーバーラップ部位(重なり合う部分)の複製鎖を生じ得る。ゲノムサンプルを増幅サイクルに供することにより、ゲノム配列は増幅され得る。全ゲノムPCRは、他の形態のPCRと同様の欠点を有する。
【0006】
増幅が特に関係する分野は、生物サンプル中の多くの異なるRNA分子種の相対濃度の測定を目的とするRNA発現プロファイリングである。対象のRNAのいくつかは相対的に低濃度で存在し、分析に先立ちそれらを増幅することが望ましい。該mRNA混合物は複雑である(一般的に、5000〜20000の異なる分子種からなる)ことから、それらを増幅するためにポリメラーゼ連鎖反応を使用することは不可能である。ポリメラーゼ連鎖反応は、異なる分子種が異なる割合で増幅され、mRNAの相対濃度を歪曲するという欠点を有する。
【0007】
サンプル中の全RNAを同時に穏やかに増幅させることを可能にするいくつかの方法が記載されている。例えば、Lockhartら、Nature Biotechnology 14: 1675−1680 (1996)において、強力なRNAポリメラーゼプロモーターを各cDNA末端に取り込ませるようにして2本鎖cDNAが合成された。次に、このプロモーター配列を用いてcDNAを転写し、各cDNA分子あたり約100〜150のRNAコピーを生成した。この弱い増幅系は、最低1000個の細胞を含む生物学的サンプルのRNAプロファイリングを可能にした。しかしながら、非常に数が少ない細胞を含むサンプルのプロファイリング分析を可能にし得る、より強力な増幅方法が必要とされている。また、多数の方法では、cDNA合成中に第1鎖を生成するために使用されるプライマーの5’末端に結合するRNAポリメラーゼプロモーターを使用する。次いで、第2鎖が生成され、得られた2本鎖cDNAが転写されて、発現試験のために使用し得るアンチセンスRNA転写物を生成する。しかし、増幅のレベルは非常に限られている。
【0008】
従って、より信頼性が高く、短時間でより多量の増幅を行える増幅方法が求められている。この懸案事項に関しては、以下に詳細に取り扱う。
【特許文献1】米国特許第6124120号明細書
【特許文献2】米国特許第6143495号明細書
【非特許文献1】Lockhart et. al, Nature Biotechnology 14: 1675−1680 (1996)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、RNA配列の増幅レベルを顕著に増大させ得る新規なcDNA増幅方法に関する。mRNAをまずcDNAに変換する。このcDNAの合成はプロモーター付加されたオリゴヌクレオチドを含み、次いでこのcDNAを平滑末端にて連結して環状構造(又は場合によりコンカテマー構造を)形成する。次いでこれを、Phi29 DNAポリメラーゼにもとづくランダムプライムド鎖置換増幅方法(図1参照)を用いて増幅する(米国特許第6323009、当該文献は参照により本明細書中に組み入れるものとする)。得られる生成物は次いで遺伝子発現試験の材料作製に使用できる。
【0010】
この方法は少数の細胞からの遺伝子発現分析を可能にするよう設計されている。このタイプのサンプルから調整されるcDNAは非常に低濃度で、コンカテマー化が最も起こりにくく、その代わりにほとんどの部分でcDNAは環状化することになる。この環状化したcDNAを増殖に使用するテンプレートとする。実際、連結して環形成(モノマーサイズ)したcDNAは、コンカテマー化してもしなくても、ローリングサークル増幅及び/又は鎖置換増幅によって増幅可能である。これら両増幅方法は、鎖置換DNA合成による増幅(ASD)に依存し、この間に2本鎖テンプレートが、鎖を置換するポリメラーゼによって複製され、2本鎖テンプレートを変性させる温度サイクリングなしに、ポリマー化された材料を純量得ることができる。この方法論はランダムプライミング及び特異的プライミングされた増幅方法に対して適用できる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1つの実施形態においては、mRNAを複製しcDNA: mRNAハイブリッドを作成する(第1cDNA鎖合成)。このcDNA鎖を次いで連結し、コンカテマーを伴う、又は伴わない環(モノマーサイズ)を形成する。この連結はcDNA合成の開始に使用するプライマーの5’末端に相補的なオリゴヌクレオチドの添加により促進される(図5参照)。この連結された材料を次いでASD(ローリングサークル増幅もしくは鎖置換増幅)により増幅することができる。この方法論はランダムプライミング及び特異的プライミングされた増幅方法に対して適用できる。
【0012】
さらに、従来の方法論と異なり、本発明の方法では、プロモータータグを有するcDNAを、cDNA連結のためのテンプレートに用い、連結を行って環もしくはコンカテマーのいずれか、あるいはそれらの混合物を形成し、これらを次いでローリングサークル増幅もしくは鎖置換増幅により増幅する(図2参照)。この増幅された材料は、次いで定量的研究に使用するため転写され、それによって現在入手できるものより多量の増幅を提供することができる。さらに、第1のcDNA鎖合成の開始に用いるオリゴヌクレオチドがプロモータータグを付与されている場合、得られるRNAはアンチセンスとなり、ある種の応用において有利である。
【0013】
プロモータータグを有するcDNA又はプロモータータグを有しないcDNAを作製するために用いるプライマーは、RNAのポリA尾部(ポリA尾部をアニ−ルするために)、又はRNA集団内の特異的配列に対し相補的になるよう設計される。これは第1又は第2のcDNA鎖合成を開始するために使用することもできる。
【0014】
さらに、この環状化もしくはコンカテマー化したcDNAの鎖置換増幅は、用いるテンプレートcDNA単位の、端と端を接したコンカテマーを生じる。これらの単位はそれぞれ別々のRNAポリメラーゼプロモーターを有する。これらのコンカテマー化された単位からのオーバーラップ転写を防ぐため、RNAポリメラーゼの終止配列又はそれにかわる制限酵素認識配列が、第1cDNA鎖合成に用いるプライマー中で使用されるプロモーター配列の上流に含めることができる(図3及び図4参照)。このターミネーターは、上流のプロモーターからの読み合わせ転写による繰り返し転写によりcDNAに結果として起こる過剰な増幅を防ぎ得る。
【0015】
さらに別の本方法の好ましい態様において、コンカテマー化cDNAの鎖置換増幅(MSDA−CD)にならい、cDNAの断片をまず、場合によりリンカーと共にコンカテマー化又は環状化する。このコンカテマー化又は環状化したDNAを、次いで適切なプライマーを用いて鎖置換合成により増幅する。プライマーのランダムなセットが、全ゲノム増幅と類似の方法で、DNAコンカテマーのランダムプライム合成に使用できる。全ゲノム増幅においては、ランダム又は部分的にランダムな配列の、十分に大きなプライマーセットを選択することにより、このセットの中のプライマーは共同的かつランダムに、コンカテマー化DNAを通じて転写される核酸配列と相補的となるだろう。もしDNA断片をコンカテマー化するためにリンカーを使用すれば、リンカー配列に相補的な配列を、コンカテマーを増幅するために用いることができる。リンカーからの合成は、次のリンカーに対するコンカテマー化DNA部分を通じて進行し、さらに継続する。リンカー領域を複製する時には、DNA合成用の新たなプライミング部位が創り出される。このようにして、全コンカテマー化DNAサンプルの複数のオーバーラップするコピーを短時間で合成し得る。
【0016】
環状標的DNA分子を増幅する方法には価値がある。なぜなら、このような増幅されたDNAは、DNA配列解析、クローニング、マッピング、ジェノタイピング、プローブ作製及び診断的同定を含む次なる方法によく用いられるからである。
【0017】
従来、核酸を増幅させ得るいくつかの有益な方法が開発されている。ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction、PCR)、リガーゼ連鎖反応(ligase chain reaction、LCR)、自立性塩基配列複製(self−sustained sequence replication、3SR)、核酸配列性増幅(nucleic acid sequence based amplification、NASBA)、鎖置換増幅 (strand displacement amplification、SDA)、及びQベータレプリカ−ゼによる増幅(Birkenmeyer 及び Mushahwar, J. Virological Methods, 35: 117−126(1991); Landegren, Trends Genetics, 9: 199−202 (1993))を含むそのほとんどが、選択されたDNA標的及び/又はプローブの増幅を行い得るように設定されている。
【0018】
加えて、プラスミドや、M13などのバクテリオファージからのDNAのような環状DNA分子を増幅させるためのいくつかの方法が採用されている。ひとつはE.coliの好適な宿主株にこれらの分子を増殖させ、次いでこのDNAを良く確立されたプロトコル (Sambrook, J., Fritsch, E. F., 及びManiatis, T. Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.)に従って単離する方法である。プラスミドや、M13などのバクテリオファージからのDNAのようなDNA標的中の、決められた配列を増幅するためには、PCRもしばしば用いられる(PCR Protocols, 1990, Ed. M. A. Innis, D. H.Gelfand, J.J. Sninsky, Academic Press, San Diego.)これらの方法のいくつかは困難であり、高価であり、時間を要し、不十分で、感度に乏しいことが難点となっている。
【0019】
これらの方法の改善として、直鎖ローリングサークル増幅(LRCA)は、環状標的DNA分子に対しアニ−ルされたプライマーを用い、またDNAポリメラーゼを添加する。この増幅標的(amplified target circle、ATC)は、新たなDNAが作られるためのテンプレートを形成し、これによりプライマー配列を環に対し相補的な繰り返し配列の連続配列の形で延長させるが、1時間あたり数千コピーのみを生じる。LRCAの改善は、指数関数的RCA(ERCA)の使用であり、複製された相補的配列にアニ−ルする付加的なプライマーを伴って新たな増殖中心を提供し、それにより指数関数的反応速度論及び増幅の増大をもたらす。
【0020】
指数関数的ローリングサークル増幅(ERCA)は、HRCA(Lizardi, P. M.ら、 Nature Genetics, 19,225−231 (1998) )にならって鎖置換反応のカスケードを採用する。しかし、ERCAは、プライマーP1に対し特異的なDNA配列を知る必要がある場合、環状DNA標的分子が1本鎖DNAである必要性により、環状DNA標的分子に対してアニ−ルさせたシングルプライマーP1のみを使用するという制限を有する。
【0021】
本発明の方法(多重プライムドローリングサークル増幅、MPRCA)は、個々の標的環増幅のために複数のプライマーを用いることで直鎖ローリングサークル増幅の感度を向上させる方法を採用することにより、このような不都合を解消する。本発明は各環状標的DNA分子から複数のタンデム配列DNA(TS−DNA)のコピーを生じるという優位性を有する。加えてMPRCAは、環状標的DNA分子の配列が未知であり、さらに環状標的DNA分子が1本鎖(ssDNA)又は2本鎖(dsDNA)である可能性があるいくつかの実施形態において優位性を有する。いくつかの実施形態における本発明のその他の優位性は、1本鎖又は2本鎖の環状標的DNA分子の増幅が恒温的及び/又は室温で実施できるということである。
【0022】
その他の有利な点としては、ローリングサークル増幅の新たな応用法として非常に有用であり、低価格で、標的の環が低濃度でも感度が良く、特に検出試薬の使用における柔軟性を有し、またコンタミネーションの危険が低いことが挙げられる。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態において、反応中に存在し得るエキソヌクレアーゼ活性による分解に対し耐性を有するプライマーを使用することにより、増幅DNAの収率を向上させる方法が採用される。例えば、プライマーは、その3’末端において1、2、3又は4個のホスホロチオエート連結を保持することができる。すなわち、いくつかの実施形態において、本発明は酵素による分解、特にエキソヌクレアーゼ、最も特別には3’−5’−エキソヌクレアーゼ活性による分解に対し耐性を有するプライマーを作製する少なくとも1つのヌクレオチドをプライマーに含有させる方法に関する。このような実施形態において、少なくとも1つのヌクレオチドはホスホロチオエートヌクレオチドであるか、又はなんらかの修飾ヌクレオチドであり得る。このようなヌクレオチドは共通的であるが、本発明の方法はまた、このようなヌクレオチドが3’−末端部位以外の部位に配置され、上記プライマーの3’−末端ヌクレオチドが3’−5’−エキソヌクレアーゼ活性により除去され得るような実施形態にも関する。このことは−エキソヌクレアーゼ活性を含み、長時間のインキュベーション時間をかけて行われ得る反応において、プライマーを残しつづけさせることができるという優位性を有する。このプライマーの維持は、ERCAの特徴のひとつである反応の全体時間の延長に次いで起こる新たなプライミング事象を可能にし、増幅DNAの収率を向上させるという優位性を有する。
【0024】
ランダムプライマーRCAはまた、2本鎖生成物を生じるという優位性を有する。これは、環状のテンプレートによるコピー作製により生じる1本鎖DNA自身が、DNA合成のランダムプライミングにより変換され、2重鎖型となるであろうからである。2本鎖DNA生成物は、いずれかの鎖のDNA配列解析、制限エンドヌクレアーゼ消化、及び、クローニングや標識及び検出に使用するその他の方法を可能にすることにおいて優れている。2本鎖DNA生成物はまた、RNAポリメラーゼを用いたin vitro転写を可能にさせることにおいて優れている。
【0025】
鎖置換DNA合成がランダムプライミングRCA中に起こり、指数関数的増殖をもたらし得るということも期待される。
【0026】
増幅に続き、増幅された配列はPCR増幅配列に関し既知の確立されたあらゆる目的に関しても使用することができる。例えば、増幅された配列は蛍光標識、酵素に連関した検出系、抗体が介在する標識検出、及び放射活性標識などのあらゆる従来の核酸検出系を用いて検出可能である。開示された方法の鍵となる特徴は、増幅がサイクルの中において起こるのではなく、連続的な恒温的な複製により起こることである。このことが増幅を複雑なものでなくし、より一貫性のある増幅を可能にする。鎖置換によって、単一の、連続的、恒温的な反応において、核酸配列又はサンプルの複数のコピーが迅速に発生可能となる。開示された方法を用いて生産されるDNAは、次いであらゆる目的、又はあらゆる所望の他の方法に関して使用できる。例えば、全ゲノム鎖置換法により予め増幅した特定のDNA配列をさらに増幅させるためにPCRを使用することができる。
【0027】
本発明の目的及び特徴は、添付の図面を伴って、以下の本発明の詳細な記述の概説によって、より十分に明確化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の方法は、標的核酸配列及び全ゲノム又は他の高度に複雑な核酸サンプルの増幅を可能にする特定の1)材料及び2)方法を利用する。これらの材料及び方法について以下に詳細に記載する。
【0029】
1.材料
標的配列
本発明の方法の増幅対象である標的配列は環状又はコンカテマー化cDNAである。標的配列を含む核酸サンプルは単一細胞からの核酸サンプルであることができる。
【0030】
アドレスタグ
プライマーの非相補的部分に含まれ得る配列のその他の例がアドレスタグである。アドレスタグはアドレスプローブに相補的な配列を有する。アドレスタグは、増幅される鎖の末端に取り込まれることになる。結果として得られる物は、アドレスプローブの相補的部分に相補的であるアドレスタグ配列を有する増幅されたDNAである。プライマー上に存在する場合には、1以上のアドレスタグが存在し得る。好ましくは、プライマーは1又は2のアドレスタグを含む。最も好ましくは、プライマーは1のアドレスタグを含む。
【0031】
一般的に、プライマーは10以下のアドレスタグを含むことが好ましい。プライマーの大きさを除き、プライマー上に存在し得るアドレスタグの数には根本的な制限は存在しない。複数のアドレスタグが存在する場合、それらは同じ配列であってもよく、又は、それらは異なる配列であってもよく、異なるアドレスプローブに対して相補的なそれぞれ異なる配列を伴う。単一のアドレスプローブに対して全て相補的である同一の配列を有するアドレスタグをプライマーが含むことが好ましい。アドレスタグ部分は、アドレスタグとアドレスプローブとの間の特異的かつ安定したハイブリダイゼーションを支持する任意の長さであることができる。この目的のために、10〜35のヌクレオチド長が好ましく、15〜20ヌクレオチド長のアドレスタグ部分が最も好ましい。
【0032】
リンカー
DNAを連結させるために本発明において使用する場合、リンカーは小さな2本鎖DNA分子である。SDA−CDのために、リンカーは2つの主要な目的を果たす:DNA断片連結の容易化及び増幅の容易化である。第1の目的のために、リンカーは通常、連結させようとするDNA断片の末端と適合し得る末端を有するように設計される。例えば、DNA断片が平滑末端を有する場合(又は平滑末端となるように作製された場合)、平滑末端化されたリンカーが使用される。1以上のヌクレオチドからなる尾部を有するDNA断片に対しては、リンカーは相補的な尾部を有する必要がある。かかる尾部形成の例は、cDNAの3’末端への単一のアデノシン残基の付加である。増幅を容易にするために、リンカーは、MSDA−CDで使用されるプライマーに相補的な1以上の配列を有する必要がある。かかる配列はリンカーのプライマー相補的部分と呼ばれる。リンカーのプライマー相補的部分は、プライマーの相補的部分に相補的である。プライマー相補的部分は、それが意図されたプライマーの部分に相補的であるかぎり、任意の配列を有することができる。プライマー相補的部分がリンカーの逆鎖上にある場合、それらは重なり合うべきではない。該プライマーは1以上の制限酵素切断部位を有することもできる。かかる制限部位は、増幅されたDNAが切断されて断片化されることを可能にし、好ましくは、元々コンカテマー化されているDNA断片が断片化されることを可能にする。この目的のために、希少な制限部位(例えば、8塩基認識部位)が使用されるのが好ましい。このタイプのリンカーの構造例を以下に示す。
【0033】
【化1】

【0034】
リンカーは1以上のプロモーター配列を含むこともできる。かかるプロモーター配列は、増幅されたDNAがMSDA−CD後の転写によるさらなる増幅を可能にする。2つのプロモーターがリンカー内に組み込まれる場合、それらは好ましくはリンカーの異なる鎖に位置する。両方の3’末端に単一の突出するチミジン残基を有し、両方の5’末端にリン酸基を有するリンカーの例を以下に示す(Pはリン酸エステルを示す)。
【0035】
【化2】

【0036】
プロモーター及びプライマー配列は任意の順序で並ばせることができるが、上記した並び方が好ましい。任意の数のプロモーター及びプライマーを使用することができる。しかしながら、コンカテマー化させるDNAがcDNAであり、cDNA合成のために使用されるプライマーの部分としてのcDNAにプロモータが組み込まれる場合が好ましい(Lockhartら)。
【0037】
検出標識
本発明の方法を用いて増幅された核酸の検出及び定量を補助するために、検出標識を増幅される核酸に直接取り込ませるか、又は検出分子と結合させることができる。本明細書中で使用する場合、検出標識とは、増幅される核酸と直接的又は間接的に結合させることができ、それにより直接的又は間接的に測定可能・検出可能なシグナルを生じ得る任意の分子である。
【0038】
核酸分子に取り込ませるための、又は核酸プローブと結合させるためのかかる標識の多くが当業者に公知である。本発明の方法で使用するのに適切な検出標識の例は、放射性同位体、蛍光性分子、リン光発生分子、酵素、抗体、及びリガンドである。
【0039】
好適な蛍光標識の例としては、フルオレセイン(FITC)、5,6−カルボキシメチルフルオレセイン、テキサスレッド、ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル(NBD)、クマリン、ダンシルクロライド、ローダミン、4’−6−ジアミジノ−2−フェニリノドール(DAPI)、及びシアニン色素Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5及びCy7を挙げることができる。好ましい蛍光標識は、フルオレセイン(5−カルボキシフルオレセイン−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)及びローダミン(5,6−テトラメチルローダミン)である。好ましい蛍光標識は、FITC及びシアニン色素Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5及びCy7である。これらの蛍光物質についての吸収及びエミッションの最大(波長)はそれぞれ: FITC (490 nm; 520 nm)、Cy3 (554 nm; 568 nm)、Cy3.5 (581 nm; 588nm)、 Cy5 (652 nm: 672 nm)、Cy5.5 (682 nm: 703 nm)、及び Cy7 (755nm; 778nm)であり、したがってそれらの同時検出が可能となる。蛍光標識は様々な商業的供給源から入手することができ、かかる供給源の例として、Molecular Probes, Eugene, OR及びResearch Organics, Cleveland, Ohioを挙げることができる。
【0040】
標識したヌクレオチドは、合成中に増幅産物中に直接取り込ませることができることから、好ましい形態の検出標識である。増幅されるDNA又はRNAへ取り込ませることができる検出標識の例として、BrdUrd(Hoy及びSchimke, Mutation Research 290: 217−230 (1993))、BrUTP(Wansickら, J. Cell Biology 122: 283−293(1993))などのヌクレオチドアナログ、及びビオチンで修飾されたヌクレオチド(Langerら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78: 6633 (1981))又はジゴキシゲニンなどの適当なハプテンで修飾されたヌクレオチド(Kerkhof, Anal. Biochem. 205: 359−364 (1992))を挙げることができる。好適な蛍光標識ヌクレオチドは、フルオレセインイソチオシアネート−dUTP、シアニン−3−dUTP及びシアニン−5−dUTP(Yuら, Nucleic Acids Res., 22: 3226−3232 (1994))である。DNAに対する好ましいヌクレオチドアナログ検出標識はBrdUrd(BUDR トリホスフェート, Sigma)であり、RNAに対する好ましいヌクレオチドアナログ検出標識はビオチン−16−ウリジン−5’−トリホスフェート(ビオチン−16−dUTP, Boehringher Mannheim)である。フルオレセイン、Cy3、及びCy5は直接標識のためにdUTPに結合させることができる。Cy3.5及びCy7は、ビオチン又はジゴキシゲニン標識したプローブの2次検出のためのアビジン又は抗ジゴキシゲニンコンジュゲートとして利用することができる。
【0041】
増幅される核酸に取り込まれる検出標識(例えばビオチン)は、当技術分野で周知の感知方法を用いて、続いて検出することができる。
【0042】
例えば、ビオチンは、ストレプトアビジン−アルカリホスファターゼコンジュゲート(Tropix社)を用いて検出することができる。該コンジュゲートは、ビオチンと結合し、次いで、適正基質(例えば、化学発光基質CSPD: 2ナトリウム, 3−(4−メトキシスピロ−[1,2,ジオキセタン−3−2’−(5’−クロロ) トリシクロ [3.3. 1.1. sup. 37] デカン]−4−イル) フェニル ホスフェート、 Tropix社)の化学発光により検出される。
【0043】
増幅RNAの検出に使用するための好ましい検出標識は、アクリジニウム−エステル−標識DNAプローブ(GenProbe社、Arnoldら, Clinical Chemistry 35: 1588−1594 (1989)に記載されているようなもの)である。ハイブリダイズしていないプローブをアルカリで破壊することができることからアクリジニウム−エステル−標識検出プローブにより、洗浄することなく、増幅されたRNAの検出が可能になる(Arnoldら (1989))。
【0044】
2以上のこれらの検出標識を組み合わせた分子も検出標識として考えられる。本発明の方法を用いて増幅される核酸を標識及び検出するために、本発明のプローブ、タグ、及び方法とともに公知の検出標識のいずれも使用することができる。検出標識によって生成されるシグナルを検出及び測定するための方法も当業者には公知である。例えば、放射性同位体はシンチレーション計測又は直接的視覚化により検出することができ;蛍光分子は蛍光分光光度計により検出することができ;リン光分子は、分光光度計を用いて検出するか、又はカメラを用いて直接視覚化することができ;酵素は、酵素によって触媒される反応の生成物を検出又は視覚化することにより検出することができ;抗体は、抗体と結合した2次検出標識を検出することにより、検出することができる。本明細書中で使用する場合、検出分子とは、増幅される核酸分子と相互作用し、かつ、1以上の検出標識と結合する分子である。
【0045】
検出プローブ
検出プローブは、増幅される核酸分子上の検出タグに相補的な配列を有する、標識されたオリゴヌクレオチドである。検出プローブの相補的部分は、検出プローブと検出タグとの間の特異的かつ安定したハイブリダイゼーションを支持する任意の長さであることができる。この目的のためには、10〜35個のヌクレオチド長が好ましく、検出プローブの相補的部分が16〜20個のヌクレオチド長であるのが最も好ましい。検出プローブは上記検出標識のいずれも含むことができる。好ましい標識はビオチン及び蛍光分子である。特に好ましい検出プローブは分子ビーコンである。
【0046】
分子ビーコンは、検出プローブがハイブリダイズする時のみ蛍光部分が蛍光を発する該蛍光部分を用いて標識された検出プローブである(Tyagi及びKramer Nature Biotechnol. 14 : 303−309 (1995))。ハイブリダイズしていない検出プローブはシグナルを生成しないことから、標識検出に先立つハイブリダイズしていないプローブの除去が、かかるプローブの使用により必要でなくなる。このことは、複合アッセイにおいて特に有用である。
【0047】
アドレスプローブ
アドレスプローブは、プライマー上のアドレスタグに相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドである。アドレスプローブの相補的部分は、アドレスプローブとアドレスタグとの間の特異的かつ安定したハイブリダイゼーションを支持する任意の長さであることができる。この目的のためには、10〜35個のヌクレオチド長が好ましく、アドレスプローブの相補的部分が12〜18個のヌクレオチド長であるのが最も好ましい。アドレスプローブは、単一の相補的部分又は複数の相補的部分を含むことができる。好ましくは、アドレスプローブは、固相支持体に直接的に又はスペーサー分子を介して結合している。アドレスプローブと固相支持体のかかる組み合わせは好ましい形態の固相検出装置である。
【0048】
オリゴヌクレオチド
プライマー、検出プローブ、アドレスプローブ、及びいずれの他のオリゴヌクレオチドも、確立されたオリゴヌクレオチド合成方法を用いて合成することができる。オリゴヌクレオチドを生成又は合成するための方法は当技術分野において周知である。かかる方法は、標準的な酵素による消化に次ぐヌクレオチド断片の単離(例えば、Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版 (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989)第5章、第6章を参照されたい)から、例えば、Milligen又はBeckman System 1 Plus DNA 合成装置(例えば、Milligen−Biosearch, Burlington, MAの自動合成装置 Model 8700又はABI Model 380B)を用いるシアノエチルホスホルアミダイト法による純粋な合成方法に及ぶ。また、オリゴヌクレオチドを作製するのに有用な合成方法が、Ikutaら, Ann. Rev. Biochem. 53: 323−356 (1984) (ホスホトリエステル及びホスファイト−トリエステル法)及びNarangら, Methods Enzymol., 65: 610−620(1980) (ホスホトリエステル法)により記載されている。蛋白核酸分子は、Nielsenら, Bioconjug. Chem. 5: 3−7(1994)に記載されているような公知の方法を用いて作製することができる。
【0049】
本明細書中に記載されるオリゴヌクレオチドの多くが、安定したハイブリッドがそれらの間で形成され得るように、他のオリゴヌクレオチド又は核酸分子の特定の部分と相補的となるように設計される。これらのハイブリッドの安定性は、LesnickとFreier, Biochemistry 34: 10807−10815 (1995)、McGrawら, Biotechniques 8: 674−678 (1990)、及びRychlikら, Nucleic Acids Res. 18: 6409−6412 (1990)に記載されているもののような公知の方法を用いて計算することができる。
【0050】
固相検出装置
固相検出装置は、アドレスプローブ又は検出分子が結合している固体の担体又は支持体である。好ましい形態の固相検出装置はアレイ検出装置である。アレイ検出装置は、複数の異なるアドレスプローブ又は検出分子がアレイ状、グリッド状、又は他の系統立ったパターンで結合している固相検出装置である。
【0051】
固相検出装置において使用するための固相担体は、オリゴヌクレオチドが結合し得るいずれの固相担体も含むことができる。これには、アクリルアミド、セルロース、ニトロセルロース、ガラス、ポリスチレン、酢酸ポリエチレンビニル、ポリプロピレン、ポリメタクリレート、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、ガラス、ポリシリケート、ポリカーボネート、テフロン(商標)、フルオロカーボン、ナイロン、シリコンゴム、ポリ無水物、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリオルトエステル、ポリプロピルフメレート、コラーゲン、グリコサミノグリカン、及びポリアミノ酸などの物質が含まれる。固相担体は、薄膜もしくは膜、ビーズ、ボトル、ディッシュ、ファイバー、ウーブン・ファイバー、成形ポリマー、粒子及び微粒子などのいずれの有用な形態を示し得る。固相担体のための好ましい形態はマイクロタイターディッシュである。最も好ましい形態のマイクロタイターディッシュは標準的96ウェル型である。
【0052】
固相担体上に固定化されたアドレスプローブによって、固相検出装置上で本発明の増幅方法による生成物の捕捉が可能になる。かかる捕捉によって、続く検出ステップを妨害し得る反応成分の簡便な洗浄手段が提供される。固相検出装置の異なる領域に異なるアドレスプローブを結合させることにより、固相検出装置上の異なる位置に、したがって診断的位置に、異なる増幅生成物が捕捉され得る。
【0053】
例えば、マイクロタイタープレート複合アッセイにおいて、増幅される96種類までの異なる核酸(それぞれが、異なるプライマーセットを介して増幅される、異なる標的配列を表す)のための特異的なアドレスプローブは、マイクロタイタープレート上(各々異なるウェル中)に固定化することができる。対応する標的配列がサンプル中に存在した場合の、増幅された核酸が対応するウェル中にのみ捕捉と検出が行われる。
【0054】
固相担体へのオリゴヌクレオチドの固定化方法は十分に確立されている。オリゴヌクレオチド(アドレスプローブ及び検出プローブを含む)は、確立された結合方法を用いて、担体に結合させることができる。例えば、好適な結合方法は、Peaseら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91 (11): 5022−5026 (1994)、及びKhrapkoら, Mol Biol (Mosk) (USSR) 25: 718−730 (1991)によって記載されている。カゼイン被覆したスライド上で3’−アミンオリゴヌクレオチドを固定化するための方法は、Stimpsonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 6379−6383 (1995)によって記載されている。オリゴヌクレオチドを固相担体へ結合させる好ましい方法は、Guoら, Nucleic Acids Res. 22: 5456−5465 (1994)によって記載されている。
【0055】
固相サンプル
固相サンプルは、標的配列が結合又は付着している固相担体又は支持体である。標的配列は、好ましくは、標的サンプル又はアッセイサンプル中に送達される。好ましい形態の固相サンプルはアレイサンプルである。アレイサンプルは、複数の異なる標的配列がアレイ状、グリッド状、又は他の規則的なパターンで結合又は付着している固相サンプルである。
【0056】
固相サンプル中で使用するための固相担体は、標的配列が結合又は付着し得るいずれの固相担体も含むことができる。これには、アクリルアミド、セルロース、ニトロセルロース、ガラス、ポリスチレン、酢酸ポリエチレンビニル、ポリプロピレン、ポリメタクリレート、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、ガラス、ポリシリケート、ポリカーボネート、テフロン(商標)、フルオロカーボン、ナイロン、シリコンゴム、ポリ無水物、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリオルトエステル、ポリプロピルフメレート、コラーゲン、グリコサミノグリカン、及びポリアミノ酸などの物質が含まれる。固相担体は、薄膜もしくは膜、ビーズ、ボトル、ディッシュ、スライド、ファイバー、ウーブン・ファイバー、成形ポリマー、粒子及び微粒子などのいずれの有用な形態を示し得る。固相担体のための好ましい形態はマイクロタイターディッシュ及びガラススライドである。最も好ましい形態のマイクロタイターディッシュは標準的96ウェル型である。
【0057】
固相担体上に固定化された標的配列によって、固相担体上に局在する標的特異的な増幅核酸の形成が可能になる。かかる局在化によって、続く検出ステップを妨害し得る反応成分の簡便な洗浄手段と、複数の異なるサンプルを同時にアッセイする簡便な方法、が提供される。増幅された核酸は、異なるサンプルが付着しているそれぞれの部位で独立して形成され得る。固相サンプルを作製するため標的配列又は他のオリゴヌクレオチド分子を固定化するために、上記方法を使用することができる。
【0058】
好ましい形態の固相担体は、最大256の別々の標的サンプルが小さなドットのアレイとして付着しているガラススライドである。各ドットは、好ましくは直径0.1〜2.5 mmであり、最も好ましくは直径約2.5 mmである。かかるマイクロアレイは、例えば、Schenaら, Science 270: 487−470 (1995)によって記載されている方法を用いて、製造することができる。簡潔に言うならば、マイクロアレイは、ポリ−L−リジンがコーティングされた顕微鏡スライド(Sigma)上に、印刷用チップを1つ備えたアレイ作製装置を用いて作製することができる。1μlのDNAサンプル(0.5 mg/ml)を、例えば、96ウェルマイクロタイタープレートから、チップに充填し、所望の間隔で複数のスライド上に、スライドあたり約0.005μl沈着させる。次いで、印刷されたスライドは、湿潤チャンバ内で2時間再水和させ、100℃にて1分間素早く乾燥させ、0.1% SDS中ですすぎ、かつ、50% 1−メチル−2−ピロリジンオンと50%ホウ酸からなるバッファー中で調製した0.05%無水コハク酸を用いて処理した。次いで、スライド上のDNAは、例えば、使用する直前に、90℃にて2分間蒸留水中で変性させることができる。マイクロアレイ固相サンプルは、例えば、コンピュータ制御されたXYステージ及び顕微鏡対物を備えたレーザー蛍光スキャナーを用いてスキャンすることができる。混合ガス・マルチラインレーザーが複数の発色団の逐次的励起を可能にする。
【0059】
DNAポリメラーゼ
複数置換増幅において有用なDNAポリメラーゼは、単独で、又は適合する鎖置換因子と組み合わせて、複製中に現れるハイブリダイズ鎖を置換できなければならない。かかるポリメラーゼを本明細書中では鎖置換DNAポリメラーゼと呼ぶ。鎖置換DNAポリメラーゼは5’から3’方向へのエキソヌクレアーゼ活性を有しないことが好ましい。鎖置換は、標的配列の複数のコピーが合成されるために必要である。5’から3’方向へのエキソヌクレアーゼ活性が存在する場合、それは合成された鎖の分解をもたらし得る。本発明の方法で使用するためのDNAポリメラーゼは反応性が高いことも好ましい。本発明の方法で使用するためのDNAポリメラーゼの適合性は、鎖置換複製を実行するその能力を評価することにより容易に測定することができる。好ましい鎖置換DNAポリメラーゼは、BstラージフラグメントDNAポリメラーゼ (Exo(−)Bst; Aliottaら, Genet. Anal. (Netherlands) 12: 185−195 (1996))及びexo(−)BcaDNAポリメラーゼ (Walker及びLinn, Clinical Chemistry 42: 1604−1608 (1996))である。他の有用なポリメラーゼの例としては、バクテリオファージ phi. 29 DNAポリメラーゼ(Blancoらによる米国特許第5198543号及び同第5001050号)、ファージ M2 DNAポリメラーゼ(Matsumotoら, Gene 84: 247 (1989))、ファージ phi. PRD1 DNAポリメラーゼ(Jungら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 8287 (1987))、exo(−)VENT.RTM.DNAポリメラーゼ (Kongら, J. Biol. Chem. 268: 1965−1975 (1993))、DNAポリメラーゼIのクレノー断片(Jacobsenら, Eur. J. Biochem. 45: 623−627 (1974))、T5 DNAポリメラーゼ (Chatterjeeら, Gene 97: 13−19 (1991))、シーケナーゼ(U.S. Biochemicals)、PRD1 DNAポリメラーゼ(ZhuとIto, Biochim. Biophys. Acta. 1219: 267−276 (1994))、及びT4 DNAポリメラーゼホロ酵素 (KaboordとBenkovic, Curr. Biol. 5: 149−157 (1995))を挙げることができる。
【0060】
鎖置換は、ヘリカーゼなどの鎖置換因子を使用することによって容易にすることができる。鎖置換因子の存在下で鎖置換複製を実行し得るいずれのDNAポリメラーゼも、たとえDNAポリメラーゼがかかる因子の非存在下では鎖置換複製を実行しなくても、本発明の方法で使用するのに適している、と考えられる。鎖置換複製において有用な鎖置換因子としては、例えば、BMRF1 ポリメラーゼアクセサリーサブユニット (Tsurumiら, J. Virology 67 (12): 7648−7653 (1993))、アデノウイルスDNA結合タンパク質 (Zijderveld 及び van der Vliet, J. Virology 68 (2): 1158−1164 (1994))、単純ヘルペスウルスタンパク質ICP8 (Boehmer 及び Lehman, J. Virology 67 (2): 711−715 (1993); Skaliter 及び Lehman, Proc. Natl, Acad. Sci. USA 91 (22): 10665−10669 (1994))、1本鎖DNA結合タンパク質 (SSB ; Rigler 及び Romano, J. Biol. Chem. 270: 8910−8919 (1995))、ファージT4 遺伝子32タンパク質 (Villemain及びGiedroc, Biochemistry 35:14395−14404 (1996))、ならびにウシ胸腺ヘリカーゼ(Siegelら, J. Biol Chem. 267: 13629−13635 (1992))を挙げることができる。
【0061】
鎖置換複製を実行するためのポリメラーゼの能力は、鎖置換複製アッセイにおけるポリメラーゼを使用することにより測定することができる。かかるアッセイは、使用する酵素が至適活性となる温度にて実行する必要があり、例えば、phi. 29 DNAポリメラーゼについては32℃、exo(−)Bst DNAポリメラーゼについては46℃〜64℃、又は、好高温性生物からの酵素については約60℃〜70℃にて実行する必要がある。60℃〜70℃の範囲で行うアッセイのためには、プライマーの長さは、ランダムプライマーについては20塩基まで、又は特異的プライマーについては22塩基まで増加させることができる。ポリメラーゼを選択するための別の有用なアッセイは、Kongら, J. Biol. Chem.268 : 1965−1975 (1993)によって記載されているプライマーブロックアッセイである。該アッセイは、伸長するプライマーの上流に、プライマー伸長の進行をブロックするようにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドが存在又は非存在する中でM13 ssDNA テンプレートを用いる、プライマー伸長アッセイからなる。本アッセイにおけるブロッキングプライマーを置換し得る酵素は、本発明の方法に対して有用である。
【0062】
上記材料は、本発明の方法を実行するための有用なキットとして、いずれか好適に組み合わせた状態で一緒に梱包することができる。
【0063】
2.方法
本発明の方法は、複数のプライマーによる核酸配列の鎖置換複製に基づく。該方法は、1以上の特定の配列(鎖置換増幅)、又は高度に複雑な他のcDNA、又はコンカテマー化もしくは環状化されているcDNAを増幅するために使用することができる。本発明の方法は、概して、標的核酸配列へのプライマーのハイブリダイゼーションと、標的配列の複製が標的配列に相補的な複製鎖を生じ得るような、ハイブリダイズしたプライマーによってプライミングされた標的配列の複製とを伴う。
【0064】
複製中、成長する複製鎖が、別の複製鎖と標的配列とを(又は別の複製鎖とを)鎖置換複製により置換する。かかる複製鎖置換の例は、米国特許第6323009号中に記載されている。本明細書中で使用する場合、複製鎖とは、標的配列又は別の複製鎖にハイブリダイズしたプライマーの伸長から生じる核酸鎖のことである。鎖置換複製とは、複製鎖の成長する末端がテンプレート鎖(もしくはその他の複製鎖)に由来する別の鎖と遭遇し、置き換わるDNA複製を意味する。他の複製鎖による複製鎖の置換は、単一の恒温反応において標的配列の複数のコピーを生成させ得る本発明の方法の顕著な特徴である。
【0065】
増幅に続いて、増幅された配列は、いかなる目的(例えば、PCR増幅配列のための公知の確立されたいずれかの用途)のためにも使用することができる。例えば、増幅された配列は、従来の核酸検出系(例えば、蛍光標識の検出、酵素に連関した検出系、抗体介在性標識検出、及び放射活性標識の検出)のいずれかを用いることにより検出することができる。本発明の方法の鍵となる特徴は、増幅がサイクルで行われるのでなく連続的に恒温状態で行われるということである。このことにより、増幅の複雑さは減少し、生成量はより一貫したものとなる。鎖置換は、単一の連続的恒温反応状態において、複数コピーの核酸配列又はサンプルの迅速な生成を可能にする。さらに、増幅された配列は、遺伝子発現分析に適した材料を作製するために使用することができる。これには、遺伝子発現分析を行うために使用されるマイクロアレイ分析及び他の定量的方法が含まれる。増幅産物は、選択的スプライシング転写産物、編集後RNA配列を調べるために、及び遺伝子クローニング実験のために使用することができる。
【0066】
SDAに使用されるプライマー対は、プライマーが核酸サンプル内で所望の間隔でハイブリダイズすることが可能な配列組成を有し、かつ、かかる濃度で使用されるのが好ましい。例えば、プライマー対がハイブリダイズすることができるような濃度(平均して4000〜8000塩基ごと)でプライマー対を使用することにより、これらの部位で開始されるDNA複製は隣接する部位に伸長し、該部位から複製される鎖と置換する。該プライマーは標準的間隔で標的配列にハイブリダイズすることは予想されないことに留意すべきである。むしろ、平均間隔がプライマー濃度の一般的機能となり得る。
【0067】
鎖置換増幅の場合と同様に、隣接鎖の置換により、別のプライマーとのハイブリダイゼーション及び続くさらなる1ラウンドの複製の開始が可能となる。プライマー対が標的配列にハイブリダイズする場合、プライマーの間隔が増幅レベルを決定する。例えば、平均間隔が短い場合、隣接鎖は迅速かつ高頻度で置換される。平均間隔が長い場合、隣接鎖は、複製の実施が長かったときのみ置換される。
【0068】
本発明の方法においてDNAポリメラーゼは、プライマーの伸長と、60000ヌクレオチド長以上の分子が生成されるように所望の限り長く進行させる進行性鎖置換重合反応における鎖置換を触媒する。好ましい鎖置換DNAポリメラーゼは、Bst DNAポリメラーゼ (Exo(−)Bst)、exo(−)Bca DNAポリメラーゼの大きな断片、バクテリオファージ phi. 29のDNAポリメラーゼ、及びシーケナーゼ(Sequenase)である。鎖置換複製中、反応で生成されるDNAを標識するために、ブロモデオキシウリジントリホスフェートなどの放射性の、又は修飾されたヌクレオチドをさらに含ませてもよい。あるいは、ビオチン化ヌクレオチドなどの結合部分を提供する適切な前駆物質を含ませてもよい(Langerら(1981))。
【0069】
連結DNAの鎖置換増幅
本発明の方法の別の好ましい形態(コンカテマー化されたDNAの鎖置換増幅(MSDA−CD)と呼ばれる)において、コンカテマー化されたDNAが増幅される。好ましい形態のコンカテマー化されたDNAはコンカテマー化されたcDNAである。. コンカテマー化されたDNAは、全ゲノム鎖置換増幅(WGSDA)の場合と同様にランダム又は部分的ランダムなプライマー対を用いて、又は、コンカテマー化されたDNAの状態の特異的ハイブリダイゼーション標的に相補的な特異的プライマーを用いて、増幅することができる。MSDA−CDは、比較的短い核酸サンプル(すなわち、一般的に100〜6000ヌクレオチドの範囲の断片)の複雑な混合物又はサンプルの増幅のために好ましい。メッセンジャーRNAは、かかる複雑な混合物の最も重要な例である。MSDA−CDは、細胞中の全てのcDNAを同様に増幅させる手段を提供する。コンカテマー化されたcDNAを100倍以上に増幅させることができることから、MSDA−CDは、わずか数個の細胞に基づいてRNAプロファイリング分析を可能にする。MSDA−CDを実施するために、DNAを最初にコンカテマー化ステップに供する必要がある。RNAサンプル(例えばmRNA)を増幅する場合、標準的方法を用いてRNAを最初に2本鎖cDNAに変換する。該cDNA、又は増幅しようとするいずれかのDNA断片のセットを、次に、潜在的にリンカーが取り込まれるDNAコンカテマーに変換する。
【0070】
DNA断片は標準的条件を用いて連結させることによりコンカテマー化させることができる。DNAをコンカテマー化する場合、DNA断片の末端の状態(例えば、平滑型、ねじれ型、又は不規則型)を考慮する必要がある。例えば、制限酵素による消化によって生成されるもののようなねじれ型末端は、突出配列と適合性を有する場合に、コンカテマー化を仲介するために使用することができる。ねじれ型又は不規則型末端を有するDNAは、連結させる前に平滑末端化することができる。これらの操作の全てが周知なものでありかつ一般的に使用されるものである。リンカーを使用する場合、リンカーは平滑末端DNAに連結させるか(平滑末端リンカーを使用する)、突出末端に適合性を有するDNAに連結させることができ、この場合、リンカーはアダプターの形態をとることができる。
【0071】
RCAのローリングサークル複製ステップにおいて有用なDNAポリメラーゼは、プライミングされた1本鎖環(又は2重鎖基質の各鎖)のローリングサークル複製を行う必要がある。かかるポリメラーゼは本明細書中においてローリングサークルDNAポリメラーゼと呼ぶ。ローリングサークル複製のためには、DNAポリメラーゼが、テンプレート鎖と相補的な鎖を置換(鎖置換と呼ばれる)することができ、かつ、5’から3’方向へのエキソヌクレアーゼ活性を有しないことが好ましい。増幅標的環(ATC)の複数タンデムコピーを合成するために鎖置換が必要である。5’から3’方向へのエキソヌクレアーゼ活性が存在する場合には、合成された鎖の分解が生じ得る。本発明の方法で使用するためのDNAポリメラーゼは反応性が高いことも好ましい。本発明の方法で使用するためのDNAポリメラーゼの適合性は、ローリングサークル複製を実行するその能力を評価することにより容易に測定することができる。好ましいローリングサークルDNAポリメラーゼ(これらの全てが3’,5’−エキソヌクレアーゼ活性を有する)の例としては、バクテリオファージ phi. 29 DNAポリメラーゼ (Blancoらによる米国特許第5198543号及び同第5001050号)、ファージ M2 DNAポリメラーゼ (Matsumotoら, Gene 84: 247 (1989))、ファージ PRD1 DNAポリメラーゼ (Jungら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 8287 (1987)、ならびにZhu及びIto, Biochim. Biophys. Acta. 1219: 267−276 (1994))、VENT. TM. DNAポリメラーゼ (Kongら, J. Biol. Chem. 268: 1965−1975 (1993))、DNAポリメラーゼIのクレノー断片(Jacobsenら, Eur. J. Biochem. 45: 623−627(1974))、T5 DNAポリメラーゼ (Chatterjeeら, Gene 97 : 13−19 (1991))、ならびにT4 DNAポリメラーゼホロ酵素(Kaboord及び Benkovic, Curr. Biol. 5: 149−157(1995))を挙げることができる。phi. 29 DNAポリメラーゼが最も好ましい。同様に好ましいポリメラーゼとしては、例えば、T7 native ポリメラーゼ、Bacillus stearothermophilus (Bst) DNAポリメラーゼ、Thermoanaerobacter thermohydrosulfuricus (Tts) DNAポリメラーゼ (米国特許第5744312号)、及び、Thermus aquaticus、Thermus flavus又はThermus thermophilusのDNAポリメラーゼを挙げることができる。同様に好ましいphi. 29型DNAポリメラーゼは、以下に示すファージのDNAポリメラーゼから選択される: phi. 29、Cp−1、PRD1、phi.15、phi.21、PZE、PZA、Nf、M2Y、B103、SF5、GA−1、Cp−5、Cp−7、PR4、PR5、PR722、及びL17。特定の実施形態において、DNAポリメラーゼはバクテリオファージ phi. 29 DNAポリメラーゼであり、この場合、複数のプライマーがエキソヌクレアーゼ活性に対して耐性を示し、かつ、標的DNAが直鎖DNA、特に高分子量かつ/又は複雑な直鎖状cDNAである。
【0072】
RCA中の鎖置換は、特にテンプレートとして2重鎖ATCが利用できる場合、ヘリカーゼなどの鎖置換因子を使用することによって容易にすることができる。通常、鎖置換因子の存在下でローリングサークル複製を実行し得るいずれのDNAポリメラーゼも、たとえDNAポリメラーゼがかかる因子の非存在下ではローリングサークル複製を実行しなくても、本発明の方法で使用するのに適している。RCAに有用な鎖置換因子としては、例えば、BMRF1 ポリメラーゼアクセサリーサブユニット (Tsurumiら, J. Virology 67 (12): 7648−7653 (1993))、アデノウイルスDNA結合タンパク質 (Zijderveld 及び van der Vliet, J. Virology 68 (2): 1158−1164 (1994))、単純ヘルペスウィルスタンパク質ICP8 (Boehmer 及び Lehman, J. Virology 67 (2): 711−715 (1993); Skaliter 及び Lehman, Proc. Natl, Acad. Sci. USA 91 (22): 10665−10669 (1994))、1本鎖DNA結合タンパク質 (SSB ; Rigler 及び Romano, J. Biol. Chem. 270: 8910−8919 (1995))、ならびにウシ胸腺ヘリカーゼ(Siegelら, J. Biol Chem. 267: 13629−13635 (1992))を挙げることができる。
【0073】
ローリングサークル複製を行うためのポリメラーゼの能力は、Fire 及び Xu, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 4641−4645 (1995)中及びLizardi (米国特許第5854033号、例えば、当該特許文献中の実施例1)中に記載されているもののようなローリングサークル複製アッセイ中でポリメラーゼを試験することにより測定することができる。
【0074】
3.修飾及び付加的な操作
増幅生成物の検出
増幅生成物は直接的に、例えば1次標識又は2次標識により、以下に記載するように検出することができる。
【0075】
A.1次標識
1次標識は蛍光性ヌクレオチド、ビオチン化ヌクレオチド、ジゴキシゲニン含有ヌクレオチド、又はブロモデオキシウリジンなどの標識分子の、鎖置換複製の間における取り込みからなる。例えば、100ヌクレオチドごとに4アナログという頻度で、シアニン色素UTPアナログを取り込ませることができる(Yuら(1994))。in situ における、増幅された核酸の好適な検出方法は、増幅中にDNAをBrdUrdで標識し、次いで、取り込まれたBUDRをビオチン化抗−BUDR抗体(Zymed Labs, San Francisco, Calif.)と結合させ、このビオチン分子とストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ (Life Sciences, Inc.)とを結合させて、最終的にフルオレセイン−チラミド(DuPont de Nemours & Co., Medical Products Dept.)を用いて蛍光を生じさせる方法である。
【0076】
B.検出用プローブによる2次標識
増幅されたDNA又はRNAを検出するために、2次標識は、検出用プローブとして参照される好適な分子プローブの使用を含む。例えば、プライマーは、非相補的部分において、検出タグを参考にして既知の任意の配列を含むように設計することができる。2次ハイブリダイゼーションのステップは、これらの検出タグに対して検出用プローブを結合させるために用いられる。この検出用プローブは上記される、例えば酵素、蛍光性分子、又は放射活性同位体などで標識しうる。1つのプライマーあたり3つの検出タグを用い、各検出プローブあたり4つの蛍光性分子を用いることで、各複製鎖に対し合計12の蛍光シグナルを得ることができる。
【0077】
C.多重化及びハイブリダイゼーションアレイ検出
増幅した核酸の検出は、各セットが異なる標的配列を増幅するため設計された、異なるプライマーの複数セットを用いて多重化することができる。標的を見つけることができるそれらのプライマーのみが増幅生成物を生じさせ得る。
【0078】
固相検出装置における固定化された位置に対する、任意の増幅された核酸を捕捉するために2つの異なる方法がある。1つは、これらのプライマーにおける非相補的部位の内部に、特有のプライマーセットの各々に特有のアドレスタグ配列を組み込むことである。任意のプライマーセットを用いて増幅された核酸は、すなわち特異的なアドレスタグ配列に相当する配列を含むことになる。第2の好ましい別の方法は、標識配列内に存在する配列をアドレスタグとして使用する方法である。
【0079】
D.酵素と連関した検出
標識されたヌクレオチドの取り込みにより標識された増幅配列は、すでに確立された酵素と連関した検出系により検出することができる。例えば、ビオチン−16−UTP(Boehringher Mannheim)の取り込みにより標識された増幅核酸は以下のように検出可能である。増幅核酸中に存在する標的配列(又はその相補体)に対し相補的な、相補的DNAオリゴヌクレオチド(アドレスプローブ)とのハイブリダイゼーションによって、この核酸を硬いガラス表面に固定化する。ハイブリダイゼーション後、このガラス製スライドを洗浄し、アルカリホスファターゼ−ストレプトアビジンコンジュゲート(Tropix社, Bedford, Mass)と接触させる。この酵素−ストレプトアビジンコンジュゲートは、増幅された核酸上のビオチン分子と結合する。このスライドを再洗浄し、過剰の酵素コンジュゲートを除去し、化学発光基質CSPD(Tropix社)を添加してガラス製カバースリップでカバーする。次いでこのスライドをBiorad Fluorimagerにおいてイメージ化する。
【0080】
直鎖置換増幅
標識配列の直線的増幅をもたらす改変型の鎖置換増幅を実施することができる。この改変法は直鎖置換増幅(LSDA)を参考にし、全てのプライマーが標的配列の同鎖に対して相補的であるプライマーセットを用いることで実現される。LSDAにおいては、MSDAにおける場合と同様、プライマーセットは標的配列とハイブリダイズし、鎖置換増幅が起こる。しかし、標的配列の一方の鎖しか複製されない。LSDAは複製の各ラウンドの間に、新たなプライマーセットを標的配列にハイブリダイズさせるための温度サイクリングを必要とする。このような温度サイクリングは PCRにおいて使用されるものと類似する。しかし、直鎖、又はシングルプライマー、PCRに似ず、LSDAにおける複製の各サイクルは、標的配列の複数のコピーを生じる。用いるプライマーに対し、1コピーが作られる。従って、もし20のプライマーをLSDAで使用すれば、複製の各サイクルにおいて20コピーの標的配列が作られる。
【0081】
MSDA及びWGSDAを用いて増幅されたDNAは、さらに転写により増幅され得る。この目的に関し、鎖置換増幅に用いられるプライマーの非相補的部分中に、又はMSDA−CDのためにDNAをコンカテマー化するのに用いられるリンカー配列中に、プロモーター配列を含み得る。
【0082】
本発明を以下の実施例を参照してさらに記載する。
【実施例】
【0083】
以下の実施例は本発明の一部の好ましい実施形態を説明するものであるが、全ての実施形態を説明することを意図するものではなく、これらの実施例が添付の請求項及び/又は本発明の適用範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0084】
Phi29DNAポリメラーゼを使用したcDNAの増幅
手順
I−2本鎖cDNAの合成
1.全RNAサンプル(l00ng−10μg)を使用し、Timesaver cDNA合成キット(Amersham Biosciences)の手順に従い、2本鎖cDNAを作製する。5’−リン酸化されたNotI/P−T7/oligo(dT)24 プライマーを使用するよう留意する(配列5’リン酸GCGGCCGCGTAATACGACTCACTATAGGGTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT3’) (配列番号1)。
2.Phi29DNAポリメラーゼにもとづく増幅のためのサンプルを調製するため、エタノール沈殿(1/l0量の1.5M NaOAc/250mM EDTA、及び3倍量の100% ETOHを添加し、小型遠心管中、30分間遠心分離する)により、cDNAを精製した。
3.10μlの蒸留水中に再懸濁する。
4.所望によりcDNAの回収率を調べてもよい(ピコグリーン又はアガロースゲル電気泳動、これは任意の操作である)。
【0085】
II−連結(ライゲーション)
1.2本鎖cDNAの末端を連結して環状化する。
【0086】
成分 1rx
cDNA(< 1g) 7μl
10×リガーゼ緩衝液 1μl
50% PEG−8000 1μl
400単位 T4 DNAリガーゼ 1μl
合計 10μl
2.16℃にて1晩インキュベートする。
3.サンプルを移し、−20℃又は−80℃で保存する。
III−cDNA増幅
1.連結したサンプルを沈殿させる(1/l0量の1.5M NaOAc/250mM EDTA、及び3倍量の100% ETOHを添加し、小型遠心管中、30分間遠心分離する)。20μlの標準反応液を以下のように調製する。
【0087】
成分 1rx
連結したcDNAペレット(< 1g) 0μl
サンプル緩衝液(プライマーを含む) 10μl
合計 10μl
2.95℃、3分間変性させる。
3.氷中で急冷する。
4.9μlの反応緩衝液(ヌクレオチドと緩衝液を含む)及び1μlのPhi29 DNAポリメラーゼ/ランダムプライマー混合液を合わせて基準混合物を調製し、別のチューブに入れて氷中に保存する。
5.上記基準混合物(反応緩衝液+酵素)10μlを変性させたサンプルに加える。
6.穏やかに攪拌し、短時間の遠心分離を行う。
7.反応液の総容量は20μlである。
8.30℃、12−16時間インキュベートし、cDNA増幅を行う。
9.サンプルを65℃、10分間インキュベートし、Phi29 DNAポリメラーゼを不活化する。
10.100単位のNotI(New England Biolabs)を添加し、37℃、1時間インキュベートする。
11.ピコグリーン分析又はゲル電気泳動により、増幅生成物の定量を行う。
【0088】
IV−標識アンチセンスRNAを作製するためのin vitro転写
1.マイクロアッセイスライド上でハイブリダイズさせるための標識RNAプローブを作製する(増幅され、制限酵素消化されたDNAを使用する)。
注意:直接光に曝すことをさける。RNAseの混入に注意する。
2.各色素の各テンプレートとの複合反応を準備する。MAXIscript in vitro 転写キット(Ambion)を使用する。
【0089】
成分 1rx 4.5rx 終濃度
DNAテンプレート 5 22.5 1μg
10×転写緩衝液 2 9 1×
10mM rATP 1 4.5 50μM
10mM rCTP 1 4.5 50μM
10mM rGTP 1 4.5 50μM
10mM rUTP 0.6 2.7 50μM
Cy3rUTP又はCy5rUTP 0.4 1.8 50μM
(Amersham Biosciences)
RNaseインヒビター 1 4.5 20U
T7 RNA polミックス 2 9 30U
DEPC dHO 6 27
合計 20 90
3.37℃、2−4時間インキュベートする。
4.1μlの0.5M EDTAを添加して反応を停止する。
DNAサンプル量は反応液ごとに変え、DEPC及びdHOを添加して最終容量を20μlとする。
【0090】
VI−精製
RNeasyミニキット(Qiagen)を使用した精製
1.手順説明書に従いRNAをきれいにした。
2.洗浄ステップ後、最初の50μlDEPC dHOによる溶出、及び2度目の30μlDEPC dHOによる溶出によってサンプルを回収し、合計80μlの容量とした。
3.各色素による複合反応が起きた場合には、反応液をひとつのチューブに集めることができる。
4.分光光度計測定により1:5に希釈したプローブを定量し(Cy5 O.D@650nm、Cy3 O.D@550nm)、所望によりエタノール沈殿により、10−15%ポリアクリルアミドゲル電気泳動用サンプルを精製した。
【0091】
VII−標識RNAの断片化(所望による)
1.3−4μgの標識されたRNAを5%の断片化緩衝液で処理した。
5×断片化緩衝液
Tris base 6.06g
DEPC dHO 175ml
完全に溶解しpHを8.1に合わせる(氷酢酸にて)。
以下を添加する:
酢酸カリウム 12.3g
酢酸マグネシウム 8.04g
溶解し容量を250mlに合わせる。
最終pH 〜8.4
濾過滅菌を行う
小分けして−20℃にて保存する。
【0092】
成分 1rx 終濃度
プローブ(標識RNA) Xμl 3−4μg
5×断片化緩衝液 10μl 0.5×
DEPC dHO Xμl
合計 100μl
2.95℃、35分間インキュベートする。
3.ゆっくりと室温にさまし、氷上に置く。
4.迅速にエタノール沈殿を行う。
5.10μlの5M酢酸アンモニウム(DEPC)を加える。
6.300μlの冷エタノールを添加する。
7.−80℃、30分間置く。
8.冷却遠心機にて、高速で20分間遠心分離する。
9.上清を捨てる。
10.70%(DEPC)エタノールで洗浄する。
11.ペレットを迅速に風乾する。
12.6μlのDEPC dHOに再懸濁する。
13.断片化されたプローブは−80℃で保存できる。
【0093】
VIII−マイクロアレイスライド上でのハイブリダイゼーション
1.手動−ハイブリダイゼーション混合液の調製
成分 1rx
断片化されたRNAプローブ 6μl
50% ホルムアミド 15μl
4×ハイブリダイゼーション緩衝液 7.5μl
80 1.5μl
合計 10μl
2.穏やかに攪拌する。
3.95℃、2分間、プローブを変性させる。
4.高速で2分間遠心分離する。
5.Corning Mirrorスライド又はAlice reflective スライド上でハイブリダイズする。
6.ハイブリダイゼーションは42℃、18時間、オーブン中で行う。
【0094】
自動化されたスライド処理装置(ASP)におけるハイブリダイゼーション
1.ハイブリダイゼーション混合液を調製する。
【0095】
成分 1rx
断片化されたRNAプローブ 22.5μl
50% ホルムアミド 115 μl
4×ハイブリダイゼーション緩衝液 58 μl
80 11.5μl
8M 尿素 23 μl
合計 10μl
2.穏やかに攪拌する。
3.95℃、2分間プローブを変性させる。
4.高速で2分間遠心分離する。
5.Corning Mirrorスライド又はAlice reflective スライド上でハイブリダイズする。
6.ハイブリダイゼーションは42℃、18時間、オーブン中で行う。
【0096】
IX−洗浄緩衝液及び条件
1.2×SSC/0.2% SDS 55℃予備加温
(カバースリップを除くため) <2分間
2.1×SSC/0.2% SDS 室温スライドチャンバー 2分間
3.0.1×SSC/0.2%SDS 室温スライドチャンバー 2分間
4.0.1×SSC 3回浸す
5.DEPC dHO 1回浸す
6.窒素の緩やかな流れにより、迅速にスライドを乾燥させる。
7.Cy3@550pmt/Cy5@600pmtをスキャンする。
【0097】
X−定量的リアルタイムPCR分析
1.ヒト肺mRNAサンプルを使用し、第1cDNA鎖、2本鎖cDNA及び増幅 cDNAを作製し、発現レベルを定量するためにサンプルの連続的10倍希釈系列を調製した。
2.サンプル中の検出及び発現レベルの定量のために、ベータ−アクチン(cDNA)に対するMGB EclipseTM プローブシステムを用いる。Forward プライマー(5’GCG TGA TGG TGG GCA T(センス))(配列番号2)、Reverseプライマー(5’GAT GGG GTA CTT CAG GGT(アンチセンス))(配列番号3)をFAM標識プローブ(5’MGB−EDQ−GGA TTC CTA TGT GGG CGA(センス)(配列番号4)と共に、ベータ−アクチン転写物に特異的なDNAプローブを作製した(89塩基対の増幅物サイズ)。
3.定量的リアルタイムPCRを以下のように準備した。
【0098】
成分 1rx
RNase非含有の水 X μl
ハイブリダイゼーション緩衝液 2.5 μl
10mM dNTP’s 1 μl
20×プライマー混合液 1.25μl
20×プローブ 1.25μl
活性化Taq 0.4 μl
テンプレート X μl
合計 25 μl
テンプレートの量は反応液ごとに変え、DEPC及びdHOを添加して最終容量を25μlとする。
4.PCRの条件:95℃で2分間、次いで95℃10秒、56℃30秒、76℃30秒にて50サイクル。
【0099】
上記に説明されたような本発明が教示する利益を有する当業者は、これらに多くの改変を施し得る。それらの改変は、添付の請求項において上記に説明されるように、本発明の適用範囲内に包含されるものと解釈される。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】増幅方法論の手順を模式的に表した図である。
【図2】プロモーターを含む増幅方法論を模式的に表した図である。
【図3】プロモーター/ターミネーター配列を含む方法論を模式的に表した図である。
【図4】プロモーター/制限酵素認識配列を含む方法論を模式的に表した図である。
【図5】第1の鎖cDNAの増幅に対する方法論を模式的に表した図である。
【図6】増幅したcDNAの標識、及び直接的な第1鎖cDNAの標識を比較したマイクロアレイ分析の結果を表す図である。
【図7】増幅しないcDNAサンプル及び増幅したcDNAサンプルにおける、ベータアクチンcDNAの定量的PCR分析の結果を表す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)RNAからcDNAへの逆転写、b)前記cDNAからコンカテマー又は環状cDNA生成物を生成するcDNAの自己連結、およびc)ランダム配列プライマー及びDNAポリメラーゼを用いた、連結された前記cDNA生成物の増幅を含んでなるRNA配列の増幅方法。
【請求項2】
DNAポリメラーゼが鎖置換活性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
DNAポリメラーゼが、Thermoanaerobacter thermohydrosulfuricus DNAポリメラーゼ、Thermococcus litoralis DNAポリメラーゼI、E. coli DNAポリメラーゼI、Taq DNAポリメラーゼ I、Tth DNAポリメラーゼI、Bacillus stearothermophilus (Bst) DNAポリメラーゼI、E. coli DNAポリメラーゼ III、バクテリオファージ T5 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ M2 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ T4 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ T7 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ phi29 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージPRD I DNAポリメラーゼ、バクテリオファージphi 15 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージphi21 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ PZE DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ PZA DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ Nf DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ M2Y DNAポリメラーゼ、バクテリオファージB103 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ SF5 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ GA−1 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ Cp−5 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ Cp−7 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ PR4 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ PR5 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ PR722 DNAポリメラーゼ、及び バクテリオファージ L17 DNAポリメラーゼからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
cDNAが自己連結ステップに先立ち2本鎖cDNAに変換される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ランダム配列プライマーがヌクレア−ゼに耐性を有するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
a)RNAポリメラーゼプロモーター配列を含むプライマーを使用して、RNAからcDNAを生成する逆転写、b)前記cDNAからコンカテマー又は環状cDNA生成物を生成するcDNAの自己連結、c)得られた連結cDNAの、ランダム配列プライマー及びDNAポリメラーゼを用いた増幅、及びd)得られた増幅されたプロモーター含有DNAの、RNAポリメラーゼを用いた転写を含んでなるRNA配列の増幅方法。
【請求項7】
DNAポリメラーゼが鎖置換活性を有するものである 、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
RNAポリメラーゼが、T7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼ又はSP6 RNAポリメラーゼである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
DNAポリメラーゼが、Thermoanaerobacter thermohydrosulfuricus DNAポリメラーゼ、Thermococcus litoralis DNAポリメラーゼI、E. coli DNAポリメラーゼI、Taq DNAポリメラーゼ I、Tth DNAポリメラーゼI、Bacillus stearothermophilus (Bst) DNAポリメラーゼI、E. coli DNAポリメラーゼ III、バクテリオファージ T5 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ M2 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ T4 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ T7 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ phi29 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージPRD I DNAポリメラーゼ、バクテリオファージphi 15 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージphi21 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ PZE DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ PZA DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ Nf DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ M2Y DNAポリメラーゼ、バクテリオファージB103 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ SF5 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ GA−1 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ Cp−5 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ Cp−7 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ PR4 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ PR5 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ PR722 DNAポリメラーゼ、及び バクテリオファージ L17 DNAポリメラーゼからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
cDNAが自己連結ステップに先立ち2本鎖cDNAに変換される、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
ランダム配列プライマーがヌクレア−ゼに耐性を有するものである、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記プライマーがさらに制限酵素認識配列を含み、そこにおいて増幅されたプロモーター含有DNAを転写に先立ち制限酵素処理することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記プライマーがRNAポリメラーゼの終止配列を含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
a)RNAからcDNAへの逆転写、b)前記cDNAからコンカテマー又は環状cDNA生成物を生成するcDNAの自己連結、及びc)1種以上の特異的配列プライマーを使用し、恒温で行う特異的配列プライマーに基づくDNA増幅により得られる自己連結cDNA生成物の増幅を含んでなるRNA配列の増幅方法。
【請求項15】
1から50の上記特異的配列プライマーを使用する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
上記1種以上の特異的配列プライマーが、それぞれ独立して7〜50ヌクレオチドの長さである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
上記1種以上の特異的配列プライマーが、それぞれ独立して12〜25ヌクレオチドの長さである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
DNAポリメラーゼが鎖置換活性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
DNAポリメラーゼが、Thermoanaerobacter thermohydrosulfuricus DNAポリメラーゼ、Thermococcus litoralis DNAポリメラーゼI、E. coli DNAポリメラーゼI、Taq DNAポリメラーゼ I、Tth DNAポリメラーゼI、Bacillus stearothermophilus (Bst) DNAポリメラーゼI、E. coli DNAポリメラーゼ III、バクテリオファージ T5 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ M2 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ T4 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ T7 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ phi29 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージPRD I DNAポリメラーゼ、バクテリオファージphi 15 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージphi21 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ PZE DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ PZA DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ Nf DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ M2Y DNAポリメラーゼ、バクテリオファージB103 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ SF5 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ GA−1 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ Cp−5 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ Cp−7 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ PR4 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ PR5 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージ PR722 DNAポリメラーゼ、及び バクテリオファージ L17 DNAポリメラーゼからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
cDNAが自己連結ステップに先立ち2本鎖cDNAに変換される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記1種以上の特異的配列プライマーがヌクレア−ゼに耐性を有するものである、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
請求項1又は14に記載の方法に従ってDNAを増幅することを含んでなる標識DNAの生産方法であって、その方法において前記増幅ステップがさらに1種以上の検出可能な標識ヌクレオチドアナログ、又は検出標識の直接的あるいは間接的な連結手段を提供する1種以上のヌクレオチドアナログを含んでなる、標識DNAの生産方法。
【請求項23】
標識DNAをハイブリダイゼーション分析に使用することを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ハイブリダイゼーション分析がマイクロアレイを使用して行われる発現分析であることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項6に記載の方法に従ってRNAを増幅することを含んでなる標識DNAの生産方法であって、その方法において前記転写ステップがd)さらに1種以上の検出可能な標識ヌクレオチドアナログ、又は検出標識の直接的あるいは間接的な連結手段を提供する1種以上のヌクレオチドアナログを含んでなる、標識RNAの生産方法。
【請求項26】
標識RNAをハイブリダイゼーション分析に使用することを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ハイブリダイゼーション分析がマイクロアレイを使用して行われる発現分析であることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
RNA配列の同定方法であって、請求項1、6、又は13のいずれか1項に記載の方法に従ってRNAを増幅し、得られる増幅RNAを配列依存的な検出方法により同定することを含む、同定方法。
【請求項29】
逆転写酵素、phi29 DNAポリメラーゼ、及びRNAポリメラーゼを含んでなるRNA増幅キット。
【請求項30】
ランダム配列増幅プライマーをさらに含んでなる、請求項29に記載のRNA増幅キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−516410(P2006−516410A)
【公表日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503272(P2006−503272)
【出願日】平成16年2月3日(2004.2.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/003005
【国際公開番号】WO2004/070053
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(598041463)ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・コーポレイション (43)
【住所又は居所原語表記】800 Centennial Avenue, P.O.Box 1327,Piscataway,New Jersey 08855−1327,United States of America
【Fターム(参考)】