説明

発破工法

【課題】特に切羽最外周部の発破工法に係り、スムースブラスティング工法を採用することなく、ガイドホール(空孔)を活用して岩盤の破砕形態を制御することにより、余掘の低減と周辺岩盤の損傷防止を図りながら、爆薬量の削減によって火薬コストの低減を図る。
【解決手段】トンネル切羽に形成した装薬孔に充填した爆薬によって掘削を行う発破工法において、切羽1の最外周発破は、所定の周方向区間において、周方向に沿って所定の間隔で装薬孔2,2…を穿孔するとともに、これら各装薬孔2,2の中間に装薬を行わない空孔3を穿孔し、前記装薬孔2,2…に爆薬を設置し、発破を行うようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に切羽最外周部分の発破工法に係り、詳しくはガイドホール(空孔)を活用した制御発破工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より山岳トンネルの掘削に当たっては、爆薬を用いた発破工法が効率性及び経済性の点で最も優れていることから広く採用されている。発破工法では、発破効果を増大させるために、自由面の数を多くする程良好な結果が得られるが、トンネル内においては、切羽面が唯一の自由面を形成した状態にある。従って、一般的には、先ず芯抜き発破により自由面を形成させ、次に芯抜きによって形成された自由面に対して払い発破をかけ、順次周囲に拡大していく発破手順が採られる。そして最後に切羽最外周の近傍に残った岩石を斉発させるようにしている。
【0003】
しかしながら、切羽最外周部を最後に斉発させる方法の場合は、掘削部分が多くなって余掘が多くなる、周辺岩盤の損傷が大きくなる、掘削面が粗く仕上げられるといった問題が発生していた。
【0004】
そこで、上記欠点を解消するために、従来よりスムースブラスティング工法(以下、SB工法ともいう。)が採用されている。この工法は、図3に示されるように、最外周孔に通常よりも密に配置した装薬孔5,5…を配置し、小孔径の爆薬(SB爆薬)を装填する弱装薬によって、発破孔内壁と爆薬包間に空間を設け、岩盤に作用する衝撃や圧力を緩和することにより、爆発による岩盤への圧縮破壊を抑制して引張破壊を主体に掘削するというものである。前記SB工法による装薬では、一般的には比較的比重が高く高感度の爆薬を15〜20mmの細い爆薬包径にして、デカップリング係数(発破孔径/爆薬包径)2以上で使用するようにしている。
【0005】
また近年は、スムースブラスティング効果を確実に得るために、下記特許文献1に示されるように、SB孔の起爆に通常のDS雷管に代わって爆破秒時精度に優れる電子遅延式電気雷管(EDD雷管)が採用されることもある。
【特許文献1】特開平6−323797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したスムースブラスティング工法は、岩盤の破壊形態の制御と、損傷防止に必要な爆破エネルギーの抑制のために、爆速の調整された専用の小口径SB爆薬を使用する。従って、高価なSB爆薬を必要とすることで火薬費が増加する、爆破エネルギーを抑制するものの引張り破壊による亀裂方向制御が不安定であり、特に亀裂質の岩盤では壁面の平滑化に効果が上がらないなどの問題があった。この解決策として、爆破斉発性(爆破秒時のバラツキを抑制)を向上させるために、前記EDD雷管を使用する場合は、さらに雷管費用が増大するといった問題が生じていた。
【0007】
そこで本発明の主たる課題は、特に切羽最外周部の発破工法に係り、スムースブラスティング工法を採用することなく、ガイドホール(空孔)を活用して岩盤の破砕形態を制御することにより、余掘の低減と周辺岩盤の損傷防止を図りながら、爆薬量の削減によって火薬コストの低減を図った発破工法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、トンネル切羽に装薬孔を穿孔し、この装薬孔内に装填した爆薬によって掘削を行う発破工法において、
切羽の最外周発破は、所定の周方向区間において、周方向に沿って所定の間隔で装薬孔を穿孔するとともに、これら各装薬孔の中間に装薬を行わない空孔を穿孔し、前記装薬孔に爆薬を設置し発破を行うようにすることを特徴とする発破工法が提供される。
【0009】
上記請求項1記載の発明では、切羽の最外周に沿って形成される穿孔は、周方向に沿って所定の間隔で形成される装薬孔と、これら各装薬孔の中間に形成される装薬を行わない空孔とするものである。そして、前記装薬孔に爆薬を設置し発破を行うようにする。
【0010】
装薬孔の中間に空孔を形成した場合の破断面プロセスは、発破孔からの応力波により空孔周囲に応力集中が生じて空孔壁から亀裂が進展し、これが発破孔から進展した亀裂と連結して破断面が形成される。つまり、装薬孔と空孔とを結んだ線に沿って亀裂が発生するため、余掘が低減されるとともに、亀裂が周方向に伝達するため、周辺岩盤の損傷を防止することができる、また、平滑な破断面が形成されるようになる。更には、SB爆薬以外の通常使用されているダイナマイト、AN−FO、スラリー爆薬(別名:含水爆薬)などの使用で十分であるとともに、爆薬装填数が少なくなるため、火薬コストを低減し得るようになる。
【0011】
請求項2に係る本発明として、前記装薬孔は35〜50mmφの孔径とし、前記空孔は100〜120mmφの孔径に設定してある請求項1記載の発破工法が提供される。
【0012】
上記請求項2記載の発明は、装薬孔と空孔の孔径を規定したものである。装薬孔については、一般的に採用されている35〜50mmφの孔径とし、空孔については、発破孔(装薬孔)からの応力波によって空孔周囲に応力集中が生じ亀裂を発生し易くするため、装薬孔よりも大径とし100〜120mmφの孔径とするものである。
【0013】
請求項3に係る本発明として、前記装薬孔と前記空孔との間隔は400〜500mmに設定してある請求項1,2いずれかに記載の発破工法が提供される。
【0014】
上記請求項3記載の発明は、装薬孔と空孔との間隔を規定したものである。従来のスムースブラスティング工法では、装薬孔間隔は一般的に700〜800mm程度とされるが、本方法では発破孔(装薬孔)から進展した亀裂と、空孔から進展した亀裂とが結合し易くするために、比較的小間隔とし400〜500mmの間隔に設定するものである。
【発明の効果】
【0015】
以上詳説のとおり本発明によれば、特に切羽最外周部の発破工法に係り、スムースブラスティング工法を採用することなく、ガイドホール(空孔)を活用して岩盤の破砕形態を制御することにより、余掘の低減と周辺岩盤の損傷防止を図りながら、爆薬量の削減によって火薬コストを低減し得るようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0017】
図1は本発明に係る空孔及び装薬孔配置パターンを示す切羽正面図であり、図2は本発明による破断面形成プロセスを示す図である。
【0018】
図1に示されるように、本発明では、穿孔パターンとして、切羽1の最外周の穿孔群の内、本発明適用範囲と示された所定の周方向区間においては、周方向に沿って所定の間隔で装薬孔2,2…を穿孔するとともに、これら各装薬孔2,2の中間に装薬を行わない空孔3を穿孔する。
【0019】
また、最外周穿孔よりも内側領域においては、発破パターンで○付数字の1〜10で記された箇所にそれぞれ、所定のパターンで装薬孔2,2…を穿孔する。
【0020】
前記最外周部においては、前記装薬孔2,2…は35〜50mmφの孔径とし、前記空孔3,3…は100〜120mmφの孔径に設定するのが望ましい。すなわち、装薬孔2は通常使用されているダイナマイト、粒状の硝安を主体としたAN−FO、更には硝安のような硝酸塩を主体とし、金属粉などのほか10%の水分と、無数の気泡を含むスラリー爆薬(別名:含水爆薬)などの爆薬を装填する孔として穿孔し、前記空孔3については、発破孔(装薬孔2)からの応力波によって空孔周囲に応力集中が生じ亀裂を発生し易くするため、相対的に大径とし、装薬孔2の孔径に対して2〜3倍程度に大きい100〜120mmφの孔径で穿孔する。前記空孔3は、発破孔(装薬孔2)から進展する亀裂の誘導制御孔として穿孔するものである。
【0021】
一方、前記装薬孔2と前記空孔3との間隔Pは400〜500mmに設定するのが望ましい。すなわち、岩盤強度にもよるが、従来のSB工法の場合と比較すると、相対的に小さい間隔設定とするのがよい。また、最外周部の内側に隣接する内側発破孔との離間距離S(抵抗線長)についても500〜700mm程度とし、従来のSB工法よりも小さい間隔設定とするのが望ましい。すなわち、本方法では発破孔(装薬孔2)から進展した亀裂と、空孔3から進展した亀裂とが結合し易くするために、SB工法よりも相対的に小間隔で形成するのが望ましい。
【0022】
前記最外周よりも内側領域の装薬孔2も、通常の爆薬装填孔であり、35〜50mmφ程度の孔径で形成される。装薬孔2に装填される爆薬は、最外周の装薬孔2と同様に、ダイナマイト、粒状の硝安を主体としたAN−FO、更には硝安のような硝酸塩を主体とし、金属粉などのほか10%の水分と、無数の気泡を含むスラリー爆薬(別名:含水爆薬)などが使用される。
【0023】
雷管については、一般的に使用されている雷管を使用することができる。具体的には、遅発時間の間隔を0.1〜1.0秒(デシセコンド)間隔とした普通段発電気雷管(DS雷管)や、0.01〜0.1秒(ミリセコンド)間隔のミリセコンド段発電気雷管(MS雷管)などを使用し、特にSB工法で用いられている電子遅延式電気雷管(EDD雷管)などは使用する必要がない。
【0024】
発破手順は、例えば上部半断面に述べると、先ずパターン番号1〜2の発破によって、芯抜きが行われ、自由面を形成した後、両側に向けてパターン番号3〜6の順で段発させ、更にパターン番号7、8の順で段発させ、最後に最外周部のパターン番号9の発破の順で行われる。
【0025】
特に最外周の発破では、本発明に従って、周方向に沿って所定の間隔で形成される装薬孔と、これら各装薬孔の中間に形成される装薬を行わない空孔とが形成されているため、図2(A)(B)に示されるように、先ず発破孔(装薬孔2)からの衝撃によって亀裂が周囲に進展する。次いで、前記発破孔(装薬孔2)での爆発に若干遅れて、図2(C)に示されるように、発破孔(装薬孔2)からの応力波により空孔3の周囲(発破孔2と空孔3とを結んだ線上)に応力集中が生じて空孔3の内壁から亀裂が進展する。そして、図2(D)に示されるように、発破孔(装薬孔2)から進展した亀裂と連結して破断面が形成される。
【0026】
従って、破断面が周方向に沿って形成されることにより余掘が低減されるとともに、発破孔(装薬孔2)が地山方向に進展しないため周辺岩盤の損傷を防止することができるようになる。さらに、発破孔(装薬孔2)から進展した亀裂と空孔3から進展した亀裂とが結合するように破断されることにより平滑な破断面が形成され易くなる。
【0027】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、切羽の最外周の穿孔群の内、図1に本発明適用範囲として示された範囲に本方法を適用したが、最外周のほぼ全周に亘って適用しても良いし、図示された範囲よりも狭めた範囲に限定して適用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る空孔及び装薬孔配置パターン例を示す切羽正面図である。
【図2】(A)〜(D)は本発明による破断面形成プロセスを説明するための図である。
【図3】従来のSB工法における装薬孔配置パターン例を示す切羽正面図である。
【符号の説明】
【0029】
1…切羽、2…装薬孔、3…空孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル切羽に装薬孔を穿孔し、この装薬孔内に装填した爆薬によって掘削を行う発破工法において、
切羽の最外周発破は、所定の周方向区間において、周方向に沿って所定の間隔で装薬孔を穿孔するとともに、これら各装薬孔の中間に装薬を行わない空孔を穿孔し、前記装薬孔に爆薬を設置し発破を行うようにすることを特徴とする発破工法。
【請求項2】
前記装薬孔は35〜50mmφの孔径とし、前記空孔は100〜120mmφの孔径に設定してある請求項1記載の発破工法。
【請求項3】
前記装薬孔と前記空孔との間隔は400〜500mmに設定してある請求項1,2いずれかに記載の発破工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−228977(P2009−228977A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74854(P2008−74854)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【Fターム(参考)】