説明

発色団基が結合されているポリマー分散剤を含むインクジェットインキ組成物

本発明は、インクジェットインキ組成物であって、液体ビヒクル、顔料及びポリマー分散剤を含むインクジェットインキ組成物に関する。一つの具体的態様において、顔料は式A−(B)xを有する色素を含むか又はカーボンブラック顔料であり、そしてポリマー分散剤はポリマー基及び式−A′−(B)y(C)zを有する少なくとも1個の基を含み、そしてA及びA′は有機発色団基である。第2の具体的態様において、ポリマー分散剤は、ポリマー基及び顔料と相互作用することの可能な有機発色団基を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料と、発色団が結合されているポリマー分散剤とを含むインクジェットインキ組成物に関する。
【0002】
関連技術の記載
インクジェットインキ組成物は、一般的に、担体として機能するビヒクル及び染料又は顔料のような色素から成る。インクジェットインキを調整して所望の総合性能特性を獲得するために、添加剤及び/又は共溶媒も組み込まれ得る。
【0003】
一般的に、顔料は単独では液体ビヒクル中に容易には分散可能でなく、そしてインクジェット印刷のような用途において有用な安定な顔料分散液を提供し得る様々な技法が開発されてきた。たとえば、特定の媒質中における顔料の分散性を改善するために、分散剤が顔料に添加され得る。分散剤の例は、水溶性ポリマー及び界面活性剤を包含する。広く様々なポリマーが分散剤として用いられており、そしてこれらはしばしば分散されるべき顔料のタイプに合わせられる。典型的には、ポリマー分散剤は、溶解性を維持し且つ顔料安定性を与えるために、20,000より小さい分子量を有する。たとえば、特開平10−130554号公報は、置換キノロノキノロンを含むインクジェットインキ組成物であって、更にロジン、樹脂、界面活性剤又は分散剤(メチルメタクリレート、エチルアクリレート及びメタクリル酸で構成された三成分コポリマーのような)を含むインクジェットインキ組成物を記載する。
【0004】
非ポリマー物質もまた、インクジェットインキ用分散剤として用いられ得る。たとえば、米国特許第5,750,323号明細書は、色素と構造的に同様である化合物の比較的少量を用いて分散された色素の固体粒子水性分散液を記載する。この構造的に同様な添加剤は色素から構造的に識別でき、そして色素の総分子量の少なくとも75%を構成する同一構造区域を含有する。該添加剤は、少なくとも1個の置換基(色素の対応する置換基よりも大きい分子量を有する)が該同一構造区域に結合されている。しかしながら、かかる添加剤は、非顔料色素(すなわちフィルター用染料)用に記載されている。
【0005】
加えて、米国特許第5,716,435号明細書は、有機顔料、水溶性無機塩及び水溶性溶媒を含有する混合物が機械的に混練される塩摩砕法により製造された水分散系インクジェット記録液を記載する。顔料残基つまり複素環式環残基の置換誘導体である顔料誘導体、又はポリマー分散剤である樹脂も含められ得る。しかしながら、かかる組成物は、顔料誘導体分散剤及びポリマー分散剤(それらの各々は、インクジェットインキ組成物中の他の成分により影響され得る)の両方の使用を、別個の添加剤として要求する。
【0006】
顔料誘導体がポリマー基に結合されている分散剤もまた記載されてきた。たとえば、独国特許発明第2036779号明細書は、ジアゾ染料と結合ポリアルキレンオキシド基とを含む特記式を有するポリエーテルジアゾ染料を記載する。これらの染料は、合成繊維を染色する及びそれらに印刷するために有用である。また、特開昭63−175080号公報、特開平6−65521号公報、特開平7−41689号公報及び日本国特許第2993088号明細書は各々、顔料と結合キナクリドン誘導体を有するポリマー(塗料又はワニス用の顔料を分散するために用いられ得る)とを含む顔料組成物を記載する。しかしながら、これらの参考文献のいずれも、インクジェットインキ組成物の厳しい要件のためのかかる添加剤の使用を教示しない。
【0007】
様々な種々の結合官能基を備えた顔料を提供し得るところの変性顔料生成物の製造方法もまた開発されてきた。たとえば、米国特許第5,851,280号明細書は、顔料上への有機基の結合のための方法(たとえば、有機基がジアゾニウム塩の一部であるジアゾニウム反応によっての結合を含めて)を開示する。変性顔料(ポリマー基が結合されているものを含めて)を製造するための他の方法もまた記載されてきた。たとえば、国際公開第01/51566号パンフレットは、第1化学基と第2化学基を反応させて第3化学基が結合されている顔料を形成させることにより変性顔料を作る方法を開示する。これらの方法は、諸基が結合されて改善総合性能特性(分散剤の添加を要求しない)を備えている変性顔料及び顔料組成物(インクジェットインキ組成物を含めて)を提供する。しかしながら、顔料変性工程が必要とされる。
【0008】
インクジェット印刷工業はレーザー印刷の印刷物性能と同様な印刷物性能に向かって進んでいるので、改善安定性のような改善性質を有するところの顔料と分散剤とを含むインクジェットインキ組成物(それにより変性顔料分散液の代替品を提供する)に対するニーズが存続している。
【0009】
発明の要約
本発明は、インクジェットインキ組成物であって、a)液体ビヒクル、b)顔料及びc)ポリマー分散剤を含むインクジェットインキ組成物に関する。本発明の一つの具体的態様において、顔料は式A−(B)xを有する色素を含むか又はカーボンブラック顔料であり、そしてポリマー分散剤はポリマー基及び式−A′−(B)y(C)zを有する少なくとも1個の基を含み、そしてA及びA′は有機発色団基であり、Bはx又はy>1であるとき同じ又は異なり得そしてA又はA′における置換基であり、Cはz>1であるとき同じ又は異なり得そしてA′における置換基であり且つBとは異なり、x、y及びzは0、1、2、3又は4である共に、yはxより小さいか又は等しい。第2の具体的態様において、顔料は式A−(B)x(ここで、A、B及びxは上記に記載されたとおりである)を有する色素を含み、そしてポリマー分散剤はポリマー基及び該顔料と相互作用することの可能な有機発色団基を含む。
【0010】
以上の一般的記載及び以下の詳細な記載は両方共例示的及び説明的にすぎず、そして特許請求されるとおりの本発明の更なる説明を提供するよう意図されている、ということが理解されるべきである。
【0011】
発明の詳細な記載
本発明は、ビヒクル、顔料及び分散剤を含むインクジェットインキ組成物及び分散液に関する。
【0012】
本発明のインクジェットインキ組成物のビヒクルは液体ビヒクルであり、そして非水性ビヒクル又は水性ビヒクルのどちらかであり得る。好ましくは、ビヒクルは、50%より多い水を含有するビヒクルである水性ビヒクルである。たとえば、水性ビヒクルは、水、又は水と水混和性溶媒(アルコールのような)との混合物であり得る。好ましくは、水性ビヒクルは水であり、そしてインクジェットインキ組成物は水性インクジェットインキ組成物である。
【0013】
本発明のインクジェットインキ組成物の顔料は、当業者により慣用的に用いられるいずれかのタイプの顔料であり得る。たとえば、顔料は、様々な炭素質顔料を含めて黒色顔料であり得る。好ましい黒色顔料は、チャンネルブラック、ファーネスブラック及びランプブラックのようなカーボンブラック(ピグメントブラック7)を包含する。
【0014】
顔料はまた、青色、黒色、茶色、シアン色、緑色、白色、バイオレット色、マゼンタ色、赤色、橙色又は黄色有機顔料を含めて有機有色顔料であり得る。異なる顔料の混合物もまた用いられ得る。有機有色顔料は色素を含み、そしてそれらの色素タイプにより分類され得る。本発明のインクジェットインキ組成物に有用な有色顔料についての適当な色素クラスは、たとえば、アントラキノン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジアゾ、モノアゾ、ピラントロン、ペリレン、複素環式イエロー、キノロノキノロン、イソインドロン、インダントロン、キナクリドン及び(チオ)インジゴイドを包含する。かかる顔料は、BASF Corporation、Engelhard Corporation及びSun Chemical Corporationを含めて多数の供給業者から、粉末又はプレスケーキのどちらかの形態にて商業的に入手できる。他の適当な有色顔料の例は、Colour Index,第3版(The Society of Dyers and Colourists,1982)に記載されている。
【0015】
好ましくは、本発明のインクジェットインキ組成物に用いられる有機有色顔料は、黄色、マゼンタ色又はシアン色顔料である。好ましい黄色顔料の例は、キノロノキノロン色素、アゾ色素又はイソインドロン色素を含むものを包含する。好ましいマゼンタ色顔料の例は、キナクリドン色素を含むものを包含する。好ましいシアン色顔料の例は、フタロシアニン又はインダントロン色素を含むものを包含する。
【0016】
有機有色顔料の色素は、有機発色団基(様々な置換基で更に置換され得る)を含む。本明細書において用いられる場合、用語「有機発色団基」は、色素の本質的な色を与えるところの色素の化学構造の部分である。用語「置換基」は、更に色素の特定の色及び色相を定めそして同じ色素クラスにおける他の顔料から区別するところの発色団に結合された基特に官能基である。かくして、有機発色団基は、置換基が結合されるところの色素構造の部分であり、そして色素の主鎖又は骨格であると考えられる。
【0017】
たとえば、黄色顔料の一つのクラスは、キノロノキノロン色素を含む。このタイプの顔料の例は、下記に示されるピグメントイエロー218、ピグメントイエロー220及びピグメントイエロー221である。すなわち、
【化1】

このクラスの顔料について、色素の有機発色団基はキノロノキノロニル基であり、そして置換基はハロゲン基である。同様に、ピグメントバイオレット19、ピグメントレッド122及びピグメントレッド202は各々、次のようにキナクリドン色素を含む。すなわち、
【化2】

かくして、このクラスの顔料について、色素の有機発色団基は、キナクリドニル基である。ピグメントレッド122については2個のメチル基の置換基があり、そしてピグメントレッド202については2個の塩素基の置換基がある。ピグメントバイオレット19については置換基はなく、そして色素が有機発色団である。
【0018】
本発明のインクジェットインキ組成物において、顔料は、式A−(B)xを有する色素を含み得る。上記に定義されたように、Aは有機発色団基であり、そしてBはAにおける置換基である。置換基の数はxにより表され、そして0から有機発色団基における利用可能な部位の総数(特定の色素クラスに依存する)の任意の値であり得る。好ましくは、xは0、1、2、3又は4の値を有するけれども、より高い置換レベルもまた可能であり得る。xが1より大きいか又は等しい(すなわち、Aが1個より多い置換基を有する)場合、各Bは同じ又は異なり得る。かくして、好ましくは、Aは4個までの様々なタイプの置換基を有し、あるいは4個までの同じ置換基を有し得る。
【0019】
たとえば、顔料は、式A−(B)x(ここで、Aはキノロノキノロニル基であり、BはAにおける置換基であり、そしてxはBである置換基の数を表す)を有するキノロノキノロン色素を含む黄色顔料であり得る。該色素は対称又は非対称のどちらかのキノロノキノロン色素であり得、そしてBがハロゲン基、メトキシ基又はアルキル基(メチル又はエチル基のような)であるものを包含し得る。この例について、xは好ましくは1又は2である。かくして、好ましいキノロノキノロン色素の特定の例は、2,6−ジフルオロキノロノキノロン色素、並びに上記に示された3−フルオロ−、2−フルオロ−又は3−クロロ−キノロノキノロン色素である。
【0020】
別の例として、顔料は、式A−(B)x(ここで、Aは2−(フェニルアゾ)−N−(フェニル)−3−オキソブタンアミジル基であり、BはAにおける置換基であり、そしてxはBである置換基の数を表す)を有するアゾ色素を含む黄色顔料であり得る。Bの例は、アルコキシ基とりわけメトキシ基及びニトロ基を包含する。たとえば、顔料は、2−((2−メトキシ−4−ニトロフェニル)アゾ)−N−(2−メトキシフェニル)−3−オキソブタンアミド色素を含むピグメントイエロー74であり得る。この色素について、有機発色団基Aは上記に記載されたとおりであり、そして3個の置換基Bすなわち2個のメトキシ基と1個のニトロ基を有する。かくして、xは3である。他のアゾ色素は、当業者に知られているであろう。
【0021】
追加的例として、顔料は、式A−(B)x(ここで、Aは銅フタロシアニニル基のようなフタロシアニニル基である)を有するフタロシアニン色素を含むシアン色顔料であり得る。また、顔料は、式A−(B)x(ここで、Aはキナクリドニル基である)を有するキナクリドン色素を含むマゼンタ色顔料であり得る。
【0022】
顔料は、広範囲のBET表面積(窒素吸着により測定されるような)を有し得る(顔料の所望性質に依存する)。当業者に知られているように、より高い表面積は、より小さい粒子サイズに対応するであろう。より高い表面積が所望用途について容易には入手できない場合、所望されるならば、顔料をより小さい粒子サイズに低減するために、顔料は慣用の粉砕又は微粉砕技法(ボールミリング又はジェットミリングのような)に付され得る、ということも当業者によく認識されている。
【0023】
本発明のインクジェットインキ組成物は、更にポリマー分散剤(ポリマー基を含む分散剤である)を含む。ポリマー基は、液体ビヒクル中のそして好ましくは水性ビヒクル中の安定な顔料分散液をもたらすことの可能な当該技術において知られたもののいずれかであり得る。たとえば、ポリマー基はアニオン性、カチオン性又は非イオン性ホモポリマー又はコポリマー基であり得、そして本発明のインクジェットインキ組成物に用いられ得るところの下記に記載された追加的ポリマー分散剤に由来する任意の基を含み得る。ポリマー基の特定の例は、ポリビニルアルコール基、ポリビニルピロリドン基、ポリウレタン基、アクリレート又はメタクリレートポリマー基(メタクリル酸、アクリル酸又はそれらのエステルから作製されたホモポリマー又はコポリマー基のような)、ポリ(スチレン−アクリレート)又はポリ(スチレン−メタクリレート)基(スチレンとメタクリル酸、アクリル酸又はそれらのエステルとから作製されたコポリマー基のような)、スチレンとマレイン酸又はマレイン酸無水物とから作製されたポリマー基、ビニルアセテートから作製されたポリマー基(ビニルアセテート−エチレンコポリマー基、ビニルアセテート−脂肪酸ビニルエチレンコポリマー基、ビニルアセテート−マレエートエステルコポリマー基、ビニルアセテート−クロトン酸コポリマー基及びビニルアセテート−アクリル酸コポリマー基のような)、及びそれらの塩を包含する。好ましくは、ポリマー基は、少なくとも1個の酸基若しくはその塩又は無水物基(メタクリレート若しくはアクリレートポリマー基又はマレイン酸若しくはマレイン酸無水物ポリマー基のような)、ポリウレタン基、スチレン−アクリル酸ポリマー基、スチレン−メタクリル酸ポリマー基又はそれらの塩を含む。適当な塩は、Na+、K+、Li+、NH4+、NR′4+(ここで、R′は同じ又は異なり得そして水素又は有機基(置換された又は置換されていないアリール及び/又はアルキル基のような)を表す)のような無機又は有機対イオンを含む。
【0024】
ポリマー基は、当該物質が分散剤として機能するのに適した分子量を有する。典型的には、ポリマー基の分子量は、約500より大きく且つ約500,000より小さい。好ましいものは約1,000から100,000一層好ましくは約5,000から約80,000そして最も好ましくは約10,000から約50,000の分子量を有するポリマー基である。
【0025】
本発明のインクジェットインキ組成物の一つの具体的態様において、ポリマー分散剤は、更に式−A′−(B)y(C)zを有する少なくとも1個の基を含む。A′は有機発色団基であり、そして本発明のインクジェットインキ組成物に用いられる顔料の色素に関連して上記に記載されたもののいずれかであり得る。B及びCはA′における置換基であり、そしてy及びzはそれぞれ置換基B及びCの数を表す。y及びzの値は0から有機発色団基における利用可能な部位の総数であり得、そして好ましくは0、1、2、3又は4である。y及び/又はzが1より大きい場合、各B置換基は同じ又は異なり得、そして各C置換基は同じ又は異なり得る。置換基B及びCは、本発明のインクジェットインキ組成物に用いられる顔料の色素の置換基Bに関して上記に記載されたものいずれかであり得る。しかしながら、ポリマー分散剤について、BとCは異なっている。
【0026】
この具体的態様について、好ましくは、有機発色団基は、連結基を通じてポリマー分散剤のポリマー基に結合される。かくして、ポリマー分散剤は、式−LG−A′−(B)y(C)z(ここで、LGは、A′である有機発色団基がポリマー基に結合されるところの基である連結基である)を有する基を含み得る。かくして、LGは、ポリマー基に直接的に結合され得又はポリマー基に結合される基に結合され得る。LGは、結合であり得又はポリマー基の官能基とA′である有機発色団基の反応性基との反応(たとえばエステル基、アミド基、エーテル基、等のような基を形成する反応)により形成される化学基であり得る。たとえば、ポリマー基がメタクリル酸又はアクリル酸から形成される場合、LGである連結基は、ポリマー基の酸官能基とA′である有機発色団基の求核性反応性基との反応により形成され得る。同様に、LGは、ポリマー基の無水物基とA′の求核性基との反応により形成され得る。また、例として、ポリマー基がアルコール又はアミンのような求核性末端基を有する場合、LGである連結基は、この官能基とA′である有機発色団基の求電子性反応性基との反応により形成され得る。ポリマー基の官能基とA′の反応性基の他の組合わせも用いられ得る。
【0027】
特定の例として、LGは、−X−ALK1−(ここで、XはO、NR又はSであり、そしてALKは1〜18個の炭素原子を有するアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基又はアルカリーレン基(たとえばC1〜C6アルキレン基を含めて)である)を有する基を含み得る。この式において、Rは、水素、C1〜C6アルキル基、又はアリール基である。好ましくは、ポリマー分散剤は、式−X−ALK1−A′−(B)y(C)z(ここで、A′、B、C、y及びzは上記に記載されたとおりである)を有する少なくとも1個の基を含む。一層好ましくは、XはNHであり、そしてALK1はCH2である。
【0028】
ポリマー分散剤は、更に有機発色団基に加えて結合ペンダント基を含み得る。かかる基は、その疎水性/親水性を変えることによるように、ポリマー分散剤の性質を最適にするために用いられ得る。たとえば、ポリマー基が複数個の無水物基を含む場合、それらのうちのいくつかは、アミン基のようなA′の求核性基と反応されて上記に記載された式−X−ALK1−A′−(B)y(C)zを有する基を形成し得る。残りの無水物基は、更にアミン及びアルコールのような他の求核性成分と反応されて結合ペンダント基を形成し得る。かくして、ポリマー分散剤は、更に式−X−ALK2(ここで、上記に記載されたとおりにXはO、NR又はSでありそしてRは水素、C1〜C6アルキル基、又はアリール基であり、そしてALK2は1〜18個の炭素を有するアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルカリール基である)を有する少なくとも1個のペンダント基を含み得る。好ましくはペンダント基は式−X−ALK2を有し、そして一層好ましくはXはNHである。
【0029】
この具体的態様の例として、顔料は、上記に記載されたとおりの式A−(B)xを有する色素を含み得る。かくして、この例において、ポリマー分散剤及び顔料の色素は両方共、有機発色団基を含む。この基は同じ有機発色団であり得又は異なり得、すなわちAとA′は同じ又は異なり得る。特定の例として、色素の有機発色団基はキノロノキノロニル基であり得、そしてポリマー分散剤の有機発色団基はキノロノキノロニレン基であり得、すなわち両方の有機発色団基はキノロノキノロン発色団基であり得る。また、色素の有機発色団基は2−(フェニルアゾ)−N−(フェニル)−3−オキソブタンアミジル基であり得、そしてポリマー分散剤の有機発色団基は2−(フェニレンアゾ)−N−(フェニレン)−3−オキソブタンアミド基であり得、しかして両者は同じアゾ発色団である。加えて、A及びA′は、両方共フタロシアニン基(Aはフタロシアニニル基であり、そしてA′はフタロシアニニレン基である)であり得又は両方共キナクリドン基(Aはキナクリドニル基であり、そしてA′はキナクリドニレン基である)であり得る。その代わりに、色素の有機発色団基とポリマー分散剤の有機発色団基は、互いに異なり得る。たとえば、色素の有機発色団基はフタロシアニニル基であり得、そしてポリマー分散剤の有機発色団基はキナクリドニレン基であり得る。顔料色素の有機発色団基とポリマー分散剤の有機発色団基の他の混合組合わせもまた可能である。
【0030】
AとA′が同じである場合、各々における置換基は、同じ又は異なり得る。たとえば、色素及びポリマー分散剤の両方の有機発色団基が同じタイプ及び数の置換基を有する場合には、xはyに等しく、そしてzは0である。どちらも置換基が結合されていない場合には、y及びzは両方共0であり、そしてポリマー分散剤及び色素の両方の有機発色団基は色素それ自体と同じである。また、色素の有機発色団基に及びポリマー分散剤の有機発色団基に結合された置換基は、数、タイプ又は両方について異なり得る。たとえば、ポリマー基の有機発色団基は、色素の有機発色団基と同じタイプの置換基しかしより少数のそれらを含み得る。この場合において、yはxより小さく、そしてzは0である。また、ポリマー基の有機発色団基は、ポリマー基の有機発色団基とは異なる置換基を含み得る。この場合において、yは0であり、そしてzは1、2又は3である。更に、ポリマー分散剤の有機発色団基は、何個かの色素の有機発色団基と同じ置換基しかしより少数のそれら、並びに少なくとも1個の追加的置換基を含み得る。この場合において、yはxより小さく、そしてzは1、2又は3である。
【0031】
この具体的態様の別の例として、顔料は、カーボンブラック顔料であり得る。上記に記載されたもののいずれかが用いられ得る。かくして、この例において、顔料はカーボンブラック顔料であり、そしてポリマー分散剤はポリマー基及び上記に記載された式を有する有機発色団基を含む。特定の例として、有機発色団基はキナクリドニレン基又は2−(フェニレンアゾ)−N−(フェニレン)−3−オキソブタンアミド基のどちらかであり、そして顔料はカーボンブラックである。カーボンブラック顔料は、広範囲のBET表面積(窒素吸着により測定されるような)を有し得る(顔料の所望性質に依存する)。顔料は、好ましくは約10m2/gと約1500m2/gの間一層好ましくは約20m2/gと約600m2/gの間のBET表面積を有する。また、カーボンブラック顔料は、当該技術において知られた広く様々な一次粒子サイズを有し得る。たとえば、顔料は、約10nmから約80nm及び15nmから約50nmを含めて約5nmから約100nmの間の一次粒子サイズを有するカーボンブラックであり得る。加えて、カーボンブラック顔料はまた、広範囲のジブチルフタレート吸収(DBP)値(顔料の構造又は分枝の尺度である)を有し得る。たとえば、顔料は、約30から200mL/100g及び約50から150mL/100gを含めて約25から400mL/100gのDBP値を有するカーボンブラックであり得る。
【0032】
本発明のインクジェットインキ組成物の別の具体的態様において、ポリマー分散剤は、インクジェットインキ組成物に用いられる顔料と相互作用することが可能である少なくとも1個の有機発色団基を含む。この具体的態様について、上記に記載された顔料のいずれかが用いられ得る。しかしながら、顔料が式A−(B)x(ここで、A、B及びxは上記に記載されたとおりである)を有する色素を含む、ということが好ましい。かくして、ポリマー分散剤は、顔料の色素と相互作用することの可能な少なくとも1個の有機発色団基を含む。
【0033】
好ましくは、相互作用する有機発色団基は、連結基(上記に記載されたもののいずれも含めて)を通じてポリマー分散剤のポリマー基に結合される。たとえば、ポリマー分散剤は、式−LG−Q(ここで、LGは連結基であり、そしてQはインクジェットインキ組成物に用いられる顔料と相互作用することが可能である有機発色団基である)を有し得る。Qは、顔料と相互作用する限りA及びA′について上記に記載された有機発色団基のいずれかであり得る。Qと顔料の間の相互作用は強いことが好ましく、そしてそれ故好ましいタイプの相互作用は水素結合及びパイ−パイスタッキングを包含する。また、Qは、当該技術において知られた様々なメカニズムのいずれかによって結晶構造中に挿入することによるように、顔料と共結晶化し得る。ポリマー分散剤のQと顔料との(顔料の色素とのを含めて)間の強い相互作用は、驚くべきことに、顔料の安定な分散液であってしかも熱安定性でもあり且つインクジェットインキ印刷法により印刷されて良好な総合特性を有する画像を形成し得る分散液を形成させると分かった。
【0034】
先に述べられたように、本発明の水性インクジェットインキ組成物は、水性ビヒクル、顔料及びポリマー分散剤を含む。これらの各々は、インクジェットインキの性能に悪影響を及ぼすことなく、望ましい画質(たとえば光学濃度)をもたらすのに有効な量にて存在する。たとえば、典型的には、顔料は、インクジェットインキ組成物の重量を基準として約0.1%から約20%の範囲の量にて存在するであろう。ポリマー分散剤の量は、分子量及びポリマー組成のような因子に依存して変動し得る。典型的には、ポリマー分散剤は、100部の顔料に対して約0.5から約15部のレベルにて用いられる。この範囲外のレベルは、典型的には、大きい顔料粒子サイズのような不良な分散性質を備えたインクジェットインキを生じさせる。たとえば、本発明のインクジェットインキ組成物中の顔料の粒子サイズは、一般的に、約200nm又はそれ以下である。
【0035】
本発明のインクジェットインキ組成物は、最小限の追加的成分(添加剤及び/又は共溶媒)及び加工工程でもって形成され得る。しかしながら、組成物の安定性を維持しながら多数の所望性質を付与するために、適当な添加剤もこれらのインクジェットインキ組成物中に組み込まれ得る。たとえば、界面活性剤(非ポリマー分散剤)が、組成物のコロイド安定性を更に高めるために添加され得る。他の添加剤は当該技術においてよく知られており、そして保湿剤、殺生物剤、バインダー、乾燥促進剤、浸透剤、等を包含する。特定の添加剤の量は様々な因子に依存して変動するであろうが、しかし一般的にインクジェットインキ組成物の重量を基準として0%と40%の間の範囲の量にて存在する。加えて、インクジェットインキ組成物は、ポリマー分散剤の有機発色団基に相当するがしかしポリマー分散剤に結合されていない有機発色団(分散剤の製造の結果として生じ得る)を含有し得る。他の有機発色団もまた用いられ得る。
【0036】
本組成物のコロイド安定性を更に高めるために又はインキと印刷基材(印刷用紙のような)若しくはインクプリントヘッドのどちらかとの相互作用を変化させるために、追加的分散作用剤(上記に記載されたものとは異なる界面活性剤及び/又はポリマー分散剤)が添加され得る。様々なアニオン性、カチオン性及び非イオン性分散作用剤が本発明のインキ組成物に関連して用いられ得、そしてこれらは固体形態に又は水溶液にあり得る。
【0037】
アニオン性分散剤又は界面活性剤の代表的例は、高級脂肪酸塩、高級アルキルジカルボキシレート、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルナフタレンスルホネート、ナフタレンスルホネート(Na、K、Li、Ca、等)、ホルマリン重縮合物、高級脂肪酸とアミノ酸の間の縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホスクシネート、ナフテネート、アルキルエーテルカルボキシレート、アシル化ペプチド、α−オレフィンスルホネート、N−アクリルメチルタウリン、アルキルエーテルスルホネート、第2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート、モノグリシルサルフェート、アルキルエーテルホスフェート及びアルキルホスフェートを包含するが、しかしそれらに限定されない。たとえば、スチレンスルホン酸塩、非置換及び置換ナフタレンスルホン酸塩(たとえば、アルキル又はアルコキシで置換されたナフタレン誘導体)、アルデヒド誘導体(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、等を含めて非置換アルキルアルデヒド誘導体のような)、マレイン酸塩及びそれらの混合物のポリマー及びコポリマーは、アニオン性分散助剤として用いられ得る。塩は、たとえば、Na+、Li+、K+、Cs+、Rb+並びに置換及び非置換アンモニウムカチオンを包含する。特定の例は、Versa(登録商標)4、Versa(登録商標)7及びVersa(登録商標)77(National Starch and Chemical Co.)、Lomar(登録商標)D(Diamond Shamrock Chemicals Co.)、Daxad(登録商標)19及びDaxad(登録商標)K(W.R.Grace Co.)並びにTamol(登録商標)SN(Rohm & Haas)のような市販製品を包含するが、しかしそれらに限定されない。カチオン性界面活性剤の代表的例は、脂肪族アミン、第4級アンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、等を包含する。
【0038】
本発明のインクジェットインキに用いられ得る非イオン性分散剤又は界面活性剤の代表的例は、フッ素誘導体、シリコーン誘導体、アクリル酸コポリマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン第2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンスチロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、アルキルフェノールホルマリン縮合物のエチレンオキシド誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルポリオキシエチレン化合物の脂肪酸エステル、ポリエチレンオキシド縮合物タイプのエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセロールの脂肪酸エステル、プロピレングリコールの脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド及びポリオキシエチレンアルキルアミンオキシドを包含する。たとえば、Igepal(登録商標)CA及びCOシリーズ物質(Rhone-Poulenc Co.)、Briji(登録商標)シリーズ物質(ICI Americas, Inc.)並びにTriton(登録商標)シリーズ物質(Union Carbide Company)のようなエトキシル化モノアルキル又はジアルキルフェノールは用いられ得る。これらの非イオン性界面活性剤又は分散剤は、単独で又は上記に挙げられたアニオン性及びカチオン性分散剤と組み合わせて用いられ得る。
【0039】
分散作用剤はまた、天然ポリマー又は合成ポリマー分散剤であり得る。天然ポリマー分散剤の特定の例は、ニカワ、ゼラチン、カゼイン及びアルブミンのようなタンパク質;アラビアガム及びトラガカントガムのような天然ゴム;サポニンのようなグルコシド;アルギン酸及びアルギン酸誘導体(プロピレングリコールアルギネート、トリエタノールアミンアルギネート及びアンモニウムアルギネートのような);並びにメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びエチルヒドロキシセルロースのようなセルロース誘導体を包含する。合成ポリマー分散剤を含めてポリマー分散剤の特定の例は、ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリ(メト)アクリル酸、アクリル酸−(メト)アクリロニトリルコポリマー、カリウム(メト)アクリレート−(メト)アクリロニトリルコポリマー、ビニルアセテート−(メト)アクリレートエステルコポリマー及び(メト)アクリル酸−(メト)アクリレートエステルコポリマーのような、アクリル酸又はメタクリル酸(しばしば「(メト)アクリル酸」と書かれる)樹脂;スチレン−(メト)アクリル酸コポリマー、スチレン−(メト)アクリル酸−(メト)アクリレートエステルコポリマー、スチレン−−メチルスチレン−(メト)アクリル酸コポリマー、スチレン−−メチルスチレン−(メト)アクリル酸−(メト)アクリレートエステルコポリマーのような、スチレン−アクリル酸又はメタクリル酸樹脂;スチレン−マレイン酸コポリマー;スチレン−マレイン酸無水物コポリマー;ビニルナフタレン−アクリル酸又はメタクリル酸コポリマー;ビニルナフタレン−マレイン酸コポリマー;並びにビニルアセテート−エチレンコポリマー、ビニルアセテート−脂肪酸ビニルエチレンコポリマー、ビニルアセテート−マレエートエステルコポリマー、ビニルアセテート−クロトン酸コポリマー及びビニルアセテート−アクリル酸コポリマーのようなビニルアセテートコポリマー;並びにそれらの塩を包含する。
【0040】
保湿剤及び水溶性有機化合物もまた、特にノズルの閉塞を防止する目的のために並びに紙に浸透性(浸透剤)、改善乾燥性(乾燥促進剤)及びシワ防止性を与えるために、本発明のインクジェットインキ組成物に添加され得る。用いられ得る保湿剤及び他の水溶性化合物の特定の例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びジプロピレングリコールのような低分子量グリコール;1,3−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール)、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ポリ(エチレン−コ−プロピレン)グリコール、等、並びにそれらとアルキレンオキシド(エチレンオキシド(エチレンオキシドとプロピレンオキシドを含めて)を含めて)との反応生成物のような約2から約40個の炭素原子を含有するジオール;グリセリン、トリメチルプロパン、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、等、並びにそれらとアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びそれらの混合物を含めて)との反応生成物を含めて、約3から約40個の炭素原子を含有するトリオール誘導体;ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール)、等、並びにそれらとアルキレンオキシド(広範囲の分子量を備えた物質を形成するように任意の望ましいモル比のエチレンオキシドとプロピレンオキシドを含めて)との反応生成物;チオジグリコール;ペンタエリトリトール、並びにエタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール及びtert−ブチルアルコール、2−プロピン−1−オール(プロパルギルアルコール)、2−ブテン−1−オール、3−ブテン−2−オール、3−ブチン−2−オール並びにシクロプロパノールのような低級アルコール;ジメチルホルムアルデヒド及びジメチルアセトアミドのようなアミド;アセトン及びジアセトンアルコールのようなケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン及びジオキサンのようなエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテル及びエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はモノエチル)エーテルのようなセロソルブ;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル及びジエチレングリコールモノブチルエーテルのようなカルビトール;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン及びε−カプロラクタムのようなラクタム;尿素及び尿素誘導体;ベタイン、等のような分子内塩;1−ブタンチオール、t−ブタンチオール、1−メチル−1−プロパンチオール、2−メチル−1−プロパンチオール、2−メチル−2−プロパンチオール、チオシクロプロパノール、チオエチレングリコール、チオジエチレングリコール、トリチオ−又はジチオ−ジエチレングリコール、等を含めて、上記に挙げられた物質のチオ(硫黄)誘導体;アセチルエタノールアミン、アセチルプロパノールアミン、プロピルカルボキシエタノールアミン、プロピルカルボキシプロパノールアミン、等を含めて、ヒドロキシアミド誘導体;上記に挙げられた物質とアルキレンオキシドとの反応生成物;並びにそれらの混合物を包含する。追加的例は、マルチトール、ソルビトール、グルコノラクトン及びマルトースのようなサッカライド;トリメチロールプロパン及びトリメチロールエタンのような多価アルコール;N−メチル−2−ピロリデン;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン;ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシドのようなジアルキルスルフィド(対称及び非対称スルホキシド)、アルキルフェニルスルホキシド、等を含めて、約2から約40個の炭素原子を含有するスルホキシド誘導体;並びにジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、スルホラン(環状スルホンであるテトラメチレンスルホン)、ジアルキルスルホン、アルキルフェニルスルホン、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、ジエチルスルホン、エチルプロピルスルホン、メチルフェニルスルホン、メチルスルホラン、ジメチルスルホラン、等のような約2から約40個の炭素原子を含有するスルホン誘導体(対称及び非対称スルホン)を包含する。かかる物質は、単独で又は組み合わせて用いられ得る。
【0041】
殺生物剤及び/又は殺真菌剤もまた、本発明のインクジェットインキ組成物に添加され得る。殺生物剤は細菌成育を防止するのに重要であり、何故なら細菌はしばしばインクノズルより大きくそして閉塞及びまた他の印刷問題を引き起こし得るからである。有用な殺生物剤の例は、安息香酸塩又はソルビン酸塩、及びイソチアゾリノンを包含するが、しかしそれらに限定されない。
【0042】
様々なポリマーバインダーもまた、本発明のインクジェットインキ組成物と関連して、該組成物の粘度を調節するために並びに他の望ましい性質を与えるために用いられ得る。適当なポリマーバインダーは、アラビアガム、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピレンセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリジノン、ポリビニルエーテル、デンプン、ポリサッカライド、ポリエチレンイミン(エチレンオキシド及びプロピレンオキシドで誘導体化されている又はされていない)(Discole(登録商標)シリーズ(DKS International)、Jeffamine(登録商標)シリーズ(Texaco)、等を含めて)のような、水溶性のポリマー及びコポリマーを包含するが、しかしそれらに限定されない。水溶性ポリマー化合物の追加的例は、たとえばスチレン−アクリル酸コポリマー、スチレン−アクリル酸−アルキルアクリレートターポリマー、スチレン−メタクリル酸コポリマー、スチレン−マレイン酸コポリマー、スチレン−マレイン酸−アルキルアクリレートターポリマー、スチレン−メタクリル酸−アルキルアクリレートターポリマー、スチレン−マレイン酸半エステルコポリマー、ビニルナフタレン−アクリル酸コポリマー、アルギン酸、ポリアクリル酸又はそれらの塩及びそれらの誘導体を含めて、上記に記載された様々な分散剤又は界面活性剤を包含する。加えて、バインダーは、分散液又はラテックス形態で添加され得又は存在し得る。たとえば、ポリマーバインダーはアクリレート又はメタクリレートコポリマーのラテックスであり得、あるいは水分散性ポリウレタンであり得る。
【0043】
本発明のインクジェットインキ組成物のpHを制御又は調節するための様々な添加剤もまた用いられ得る。適当なpH調節剤の例は、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンのような様々なアミン、並びに様々な水酸化物作用剤を包含する。水酸化物作用剤は、水酸化物対イオンを有する塩のような、OH-イオンを含む任意の作用剤である。その例は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム及び水酸化テトラメチルアンモニウムを包含する。他の水酸化物塩、並びに水酸化物作用剤の混合物もまた用いられ得る。更に、水性媒質中でOH-イオンを発生する他のアルカリ作用剤もまた用いられ得る。それらの例は、炭酸ナトリウムのような炭酸塩、重炭酸ナトリウムのような重炭酸塩、並びにナトリウムメトキシド及びナトリウムエトキシドのようなアルコキシドを包含する。緩衝剤もまた添加され得る。
【0044】
加えて、本発明のインクジェットインキ組成物は、更に、カラーバランスを修正する及び光学濃度を調整するための染料が組み込まれ得る。かかる染料は、食品用染料、FD&C染料、酸性染料、直接染料、反応性染料、フタロシアニンスルホン酸の誘導体(銅フタロシアニン誘導体、ナトリウム塩、アンモニウム塩、カリウム塩、リチウム塩、等を含めて)を包含する。本明細書に記載された顔料と、少なくとも1個の有機基が結合されている顔料を含む変性顔料のような変性顔料との混合物を用いることもまた、本発明の範囲内である。変性顔料は、米国特許第5,554,739号明細書、第5,707,432号明細書、第5,837,045号明細書、第5,851,280号明細書、第5,885,335号明細書、第5,895,522号明細書、第5,900,029号明細書、第5,922,118号明細書及び第6,042,643号明細書並びに国際公開第99/23174号パンフレット(それらの記載は、参照することにより完全に本明細書に組み込まれる)に記載された方法を用いて製造され得る。
【0045】
インクジェットインキ組成物は、たとえばメンブランを用いる限外濾過/ダイアフィルトレーション、逆浸透及びイオン交換、並びに濾過、遠心分離又はこれらの2つの方法の組合わせを含めて、当該技術において知られたいずれかの方法を用いて精製及び/又は分級され得る。このようにして、不所望不純物又は望ましくない大きい粒子は除去されて、良好な総合性質を備えたインクジェットインキ組成物を生じ得る。
【0046】
本発明は、更に、インクジェットインキセットであって、様々なインクジェットインキ組成物を含み且つ少なくとも1種の本発明のインクジェットインキ組成物を含むインクジェットインキセットに関する。このセットの諸インクジェットインキ組成物は、当該技術において知られたいずれかの点で異なり得る。たとえば、インクジェットインキセットは、たとえばシアン色顔料を含むインクジェットインキ組成物、マゼンタ色顔料を含むインクジェットインキ組成物及び/又は黒色顔料を含むインクジェットインキ組成物を含めて、異なるタイプ及び/又は色の顔料を含む諸インクジェットインキ組成物を含み得る。たとえばインクジェットインキ組成物を基材上に固着させるように設計された作用剤を含む組成物を含めて、他のタイプのインクジェットインキ組成物もまた用いられ得る。他の組合わせは、当該技術において知られているであろう。
【0047】
本発明は、事実上例示にすぎないよう意図されている次の例により更に明瞭にされるであろう。
【0048】
実施例
例1〜9
次の例は、本発明のインクジェットインキ組成物に用いられるポリマー分散剤を製造するために用いられ得るところの反応性基を有する有機発色団基の作製を記載する。
【0049】
例1
【化3】

28.4gの2−(4−アミノフェニルスルホニル)エタン硫酸(APSES)、150mLの氷水及び12mLの37%HClの混合物を50mLの水中の6.9gの亜硝酸ナトリウムと一緒にした。5℃にて40minの撹拌後、スルファミン酸の添加によって過剰の亜硝酸を破壊することによりジアゾ化反応を停止した。
【0050】
20.7gのアセトアセト−o−アニシジド(AAOA)、30mLのイソプロピルアルコール及び50mLの2M−NaOH溶液の混合物を70℃に加熱して、AAOAを溶解した。500mLの氷水を添加した後、7mLの100%酢酸の添加により微細分散液としてAAOAが沈殿した。これに90gの酢酸ナトリウムを添加し、そして次いで5℃未満の温度にてジアゾ−APSES溶液を滴加し、その結果明黄色沈殿物(AAOA−APSES)の形成がもたらされた。これを一晩撹拌した。この生成物を遠心分離により分離し、氷水で洗浄し、そして湿潤ペーストとして保管した。
【0051】
【化4】

1Lの水中の30.2gのジエチレントリアミンの混合物に水酸化ナトリウムの4N溶液を添加して、pHを12.5に上げた。これに3Lの水中の30.6gのAAOA−APSESの溶液をゆっくり添加した。黄色沈殿物が形成し、そして添加が完了した後にこの混合物を一晩撹拌し、遠心分離して過剰のジエチレントリアミンを除去しそして水で2回洗浄した。生じた沈殿物(AAOA−APSES−DETA)を濾別し、そして高真空中で周囲温度にて8時間乾燥した。
【0052】
例2
【化5】

12.2gの4−アミノベンジルアミン(ABA,n=1)又は20.9gの2−(4−アミノフェニル)エチルアミンビス塩酸(APEA,n=2)、30mLの37%HCl及び150mLの水の混合物を5℃に冷却し、そして水中の6.9gの亜硝酸ナトリウムの溶液のゆっくりした添加によりジアゾ化した。ジアゾ化中の温度(<5℃)を、反応中100gの砕氷の添加により維持した。20minの撹拌後、スルファミン酸の添加によって過剰の亜硝酸を破壊することによりジアゾ化反応を停止し、そしてこのジアゾ−ABA又はジアゾ−APEA溶液をカップリング反応のために用いられるまで氷上で保管した。
【0053】
20.7gのアセトアセト−o−アニシジド(AAOA)、300mLの水及び4gの水酸化ナトリウムの混合物を、透明溶液が形成するまで音波浴で均質にした。次いで、AAOAを6mLの濃酢酸の添加により再沈殿させ、そして次いで酢酸ナトリウムの60mLの飽和溶液を添加した。この混合物を1Lの氷水で希釈し、そして5℃に冷却した。この混合物にジアゾ−ABA又はジアゾ−APEA溶液を添加し、しかもこの溶液は、少量の酢酸ナトリウムを添加することによりpHを4.9〜5.1に維持しながら、1時間かけて滴加された。この粘稠なカップリング物質を1Lの氷水で希釈し、そして更に1時間撹拌した。この後、2M水酸化ナトリウム溶液の添加によりpHを12に上げた。生じた沈殿物(AAOA−ABA又はAAOA−APEA)を濾別し、10のpHを有する2Lの氷水で洗浄し、そして最後に更に2Lの脱イオン水で洗浄した。この物質を真空オーブンで60℃にて48時間乾燥した。この粗製物質のHPLC分析は不純物がないことを示し、また1H−NMR分析は所望生成物と一致した。
【0054】
例3
【化6】

17gの乾燥キノロノキノンを170gの濃硫酸と共に室温にて、固体物質の完全な溶解が達成されるまで撹拌した。この後、12.5gのN−ヒドロキシメチルフタルイミドを添加した。生じた混合物を60℃にて3時間撹拌し、室温に冷却し、そして2.5Lの氷水中に注いだ。生じた沈殿物(フタルイミドメチルキノロノキノロン)を濾別し、そしておおよそ6のpHになるまで水で洗浄した。この固体フタルイミドメチルキノロノキノロンを真空オーブンで恒量になるまで乾燥した。
【0055】
【化7】

10gのフタルイミドメチルキノロノキノロンと50mLの20%NaOH溶液との混合物を85℃にて3時間撹拌した。次いで、75mLの20%HCl溶液を添加し、そしてこの混合物を85℃にて更に3時間撹拌した。この混合物を室温に冷却し、そして20%NaOH溶液で中和した。生じた沈殿物を濾別し、水で洗浄し、そして乾燥して5.9gの黄色粉末を得た。1H−NMR及び質量スペクトルデータは、この生成物が主として所望モノ−(アミノメチル)−キノロノキノロン(AMQQ)であることを示した。
【0056】
例4
【化8】

ポリリン酸(500g,最小限84%のP25)を110℃に加熱し、そして21gの2−エトキシカルボニル−3−アニリノキノリン−4(1H)−オンを10分の期間かけて添加した。温度を150℃に上げ、そしてこの混合物を3時間撹拌して環化を完了した。次いで、この混合物を50℃に冷却し、そして10.5gのパラホルムアルデヒド及び33.4gの2,2,2−トリクロロアセトアミドを添加した。次いで、温度を85℃に上げ、そしてこの反応混合物をこの温度にて3時間撹拌した。この熱溶融物を2000mLの温脱イオン水中に注いだ。2,8−ビス−(トリクロロアセチルアミドメチル)キノロノキノロンの生じた黄色沈殿物を濾別し、そしてpH>4.0になるまで熱水で洗浄した。収率は97%近くであり、そして更なる精製なしにこの生成物を次工程(加水分解)に用いた。
【0057】
【化9】

粗製2,8−ビス−(トリクロロアセチルアミドメチル)キノロノキノロン(24g)を、400mLの水及び100mLの6M−NaOH溶液と混合することにより加水分解した。この混合物を6時間還流し、室温に冷却し、そして6のpHになるまで4M−HCl溶液で中和した。生じた沈殿物を濾別して、80.5%の2,8−ビス−(アミノメチル)キノロノキノロン(2AMQQ)がもたらされた。
【0058】
例5
【化10】

150gの100%硫酸、10gの銅フタロシアニン、15.25gのフタルイミド、5.5gのパラホルムアルデヒド及び5.0gの五酸化リンの混合物を75℃にて4時間加熱した。この混合物を1000gの氷水中に注いだ。生じた沈殿物を濾別し、そしておおよそ6のpHになるまで洗浄した。この固体(フタルイミドメチル−CuPc)をアセトンでスラリーにし、そして濾過して15g(97%)の暗青色粉末がもたらされた。
【0059】
【化11】

140gの100%硫酸と10gのフタルイミドメチル−CuPcとの混合物を100℃にて4時間加熱した。この混合物を1000gの氷水中に注いだ。生じた沈殿物を濾別し、3のpHになるまで洗浄し、そして乾燥して11.2g(91.8%)の部分加水分解生成物がもたらされた。
【0060】
【化12】

10gの部分加水分解生成物と300mLの0.2M水酸化ナトリウム溶液との混合物を1.5時間還流した。次いで、6M−HCl溶液を90〜95℃にて、pHが1になるまでゆっくり添加した。初期に形成した沈殿物は、徐々に再溶解した。次いで、この混合物を更に6時間還流した。次いで、濃HCl(40mL)を添加しそしてこの混合物を冷却して沈殿物を形成させ、そしてこれを濾別して31g(93.5%)のアミノメチル銅フタロシアニン(AMPc)の塩酸塩がもたらされた。
【0061】
例6
【化13】

28gのキナクリドンを320gの98%硫酸中に溶解した。次いで、16.5gのヒドロキシメチルフタルイミドを添加した。この混合物を56℃にて3時間加熱し、そして次いで2.5kgの氷水中に注いだ。生じた沈殿物(フタルイミドメチルキナクリドン)を濾別し、おおよそ6のpHになるまで水で洗浄し、そして乾燥して46gの粗製2−フタルイミドメチルキナクリドン(アミノ基及びカルボニル基の両方の配向効果に基づいて予期される異性体)がもたらされた。
【0062】
【化14】

30gの粗製フタルイミドメチルキナクリドンと85mLの20%NaOH溶液との混合物を85℃にて3時間加熱した。次いで、120mLの20%HCl溶液を導入し、そして同温度を更に3時間維持した。冷却したこの溶液をおおよそ6のpHになるまで希薄水酸化ナトリウム溶液で中和した。生じた沈殿物を濾別し、水で洗浄し、そして真空下で乾燥して10gの2−アミノメチルキナクリドン(AMQA)がもたらされた。
【0063】
例7
【化15】

オーバーヘッド機械撹拌機及び還流凝縮器を備えたフラスコ中に、ジメチルスクシノイルスクシネート(70.37g,0.308mol)、4−トルイジン(74.1g,0.692mol)、無水エタノール(700mL)及び濃塩酸(1.7mL)を入れた。この混合物を窒素雰囲気下で撹拌しながら還流にて8時間加熱した。次いで、この反応混合物を室温に冷却し、そしてこれに3−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム(76g,0.31mol)及び70mLの水中の43gの水酸化ナトリウムを添加した。次いで、これを還流にて4時間加熱した。水(250mL)を添加し、しかしてこの混合物は透明溶液になり、そしてこの透明溶液を濾過して不溶性物質を除去した。濾液を脱イオン水で2500mLに希釈しそしてpH2になるまで濃硫酸で中和して紫色沈殿物として2,5−ビス−p−トリルアミノテレフタル酸を得、そしてこの沈殿物を濾別し、pH>5になるまで脱イオン水で洗浄しそして真空オーブン(55℃)で2日間乾燥した。収量は、114.0g(97.7%)の紫色固体であった。1H−NMR(DMSO−d6)スペクトルは、所望生成物と一致した。
【0064】
【化16】

ポリリン酸(369g,最小限84%のP25)を機械撹拌下で110℃に温め、そして2,5−ビス−p−トリルアミノテレフタル酸(15.7g,0.042mol)を添加した。生じた混合物を撹拌し、そして160℃にて3時間加熱した。次いで、この混合物を50℃に冷却し、そしてパラホルムアルデヒド(1.9g,0.063mol)及びトリクロロアセトアミド(7.5g,0.046mol)を添加した。加熱を75℃にて3時間続けた。この混合物を1000mLの脱イオン水中に注ぎ、そしてマゼンタ色沈殿物を濾別しそしてpH>4になるまで水で洗浄した。次いで、この沈殿物を濾液が透明になるまでエタノールで洗浄した。(トリクロロアセトアミドメチル)ジメチルキナクリドンである生じた沈殿物を真空オーブン(60℃)で一晩乾燥した。収量は、20.5gのマゼンタ色粉末(95%)であった。元素分析:Cl19.80、N7.70,計算値:Cl20.66、N8.16。
【0065】
【化17】

(トリクロロアセトアミドメチル)ジメチルキナクリドン(10g,0.0194mol)及び100mLのN−メチルピロリジノン(NMP)を120℃にて15分間加熱し、そしてこの時間後にこの溶液を濾過して不溶性物質を除去した。次いで、水酸化ナトリウムの水溶液(6N,13.0mL)を添加し、そして生じた混合物を窒素雰囲気下で120℃にて一晩加熱した。この混合物を600mLの水中に注ぎ、そして室温に冷却した。生じた沈殿物を濾別しそして水で洗浄し、そしてこの生成物を真空オーブン(60℃)で一晩乾燥した。アミノメチルジメチルキナクリドン(AmDMQA)である生じた生成物は0.5%未満のClを含有し、しかしてこれにより加水分解の完全さが指摘された。
【0066】
例8
【化18】

500mLのクロロホルム中の100gの2−(4−メトキシフェニル)エチルアミンに100mLのトリエチルアミン酢酸無水物(72g)を添加し、そしてこれを20℃にて40分間撹拌した。次いで、この混合物をHClの希薄水溶液(0.4N,400mL)で2回そして次いでNaHCO3の飽和水溶液(2×400mL)で抽出した。溶媒を回転蒸発により除去し、そして残渣を真空オーブン(45℃)で乾燥し、その結果N−[2−(4−メトキシフェニル)エチル]アセトアミドであるオフホワイト色粉末(120g,93.9%の収率)がもたらされた。1H−NMR(DMSO−d6)スペクトルは、所望生成物と一致した。
【0067】
【化19】

330mLの酢酸中の70gのN−[2−(4−メトキシフェニル)エチル]アセトアミドの溶液を350mLの70%硝酸中に、温度が30〜35℃の間にあるようにゆっくり導入した。この添加過程は1時間かかった。この混合物を30〜35℃にて更に40分間撹拌し、そして次いで1500mLの氷水中に注いだ。生じたスラリーをクロロホルム(2×400mL)で抽出した。有機相をNaHCO3の飽和水溶液(2×400mL)でそして次いで水(2×400mL)で抽出した。次いで、溶媒を回転蒸発により除去して65gのN−[2−(4−メトキシ−3−ニトロフェニル)エチル]アセトアミドがもたらされ、そしてこれを更にエチルアセテートからの再結晶により精製して48g(55.6%の収率)の黄色結晶がもたらされた。1H−NMR(DMSO−d6)スペクトルは、所望生成物と一致した。
【0068】
【化20】

パー(Parr)振とう機中で、150mLのエタノール中のN−[2−(4−メトキシ−3−ニトロフェニル)エチル]アセトアミド(7.4g)を3.5mLの濃HCl及び0.4gの10%Pd/Cの存在下で30〜40psiにて3時間水素化した。この時間後、触媒を濾別し、そして溶媒を回転蒸発により除去してオフホワイト色固体として7.1gのN−[2−(3−アミノ−4−メトキシフェニル)エチル]アセトアミド塩酸塩(94.0%の収率)がもたらされた。1H−NMR(DMSO−d6)スペクトルは、所望生成物と一致した。
【0069】
【化21】

N−[2−(3−アミノ−4−メトキシフェニル)エチル]アセトアミド塩酸塩(19g)を40mLのN,N−ジメチルホルムアミド及び18gのジケテンと混合し、そして次いで3mLのトリエチルアミンをゆっくり添加した。この混合物を80〜85℃にて30分間撹拌し、そして次いで300mLの水中に注いだ。この水溶液をクロロホルム(2×200mL)で抽出し、そして溶媒を回転蒸発により除去して明黄色油として21.9g(96.5%)のN−[5−(2−アセチルアミノエチル)−2−メトキシフェニル]−3−オキソ−ブチルアミドがもたらされた。1H−NMR(DMSO−d6)スペクトルは、所望生成物と一致した。
【0070】
【化22】

2mLの2N−NaOH溶液の添加により150mLの水中に溶解されたN−[5−(2−アセチルアミノエチル)−2−メトキシフェニル]−3−オキソ−ブチルアミド(6.93g)を氷浴で冷却し(<5℃)、そしてpH5になるまで酢酸をゆっくり添加し、その結果カップラーが微細結晶質形態で再沈殿した。次いで、酢酸ナトリウムを添加して、このカップラー分散液を5.5のpHにもたらした。
【0071】
4−ニトロ−2−アニシジン(4g)を75gの氷水及び71mLの濃HClと混合した。この混合物を5℃未満にて30mLの氷水中の1.64gのNaNO2の溶液でジアゾ化した。スルファミン酸の添加により、過剰の亜硝酸を破壊した。激しく撹拌しながら、このジアゾ化4−ニトロ−2−アニシジン溶液をカップラー分散液に20分かけて添加した。この混合物は、必要に応じて固体酢酸ナトリウムの添加によりpH>5に保たれた。温度は、氷での外部冷却により5℃未満に維持された。
【0072】
ジアゾ化溶液の添加が完了した後、この反応混合物を室温に温め、そして20℃にて一晩そして60℃にて20分間撹拌した。生じた沈殿物を濾別し、そして脱イオン水で洗浄して茶色プレスケーキとしてN−[5−(2−アセトアミドエチル)−2−メトキシフェニル]−2−[(2−メトキシ−4−ニトロフェニル)−ヒドラゾノ]−3−オキソブチルアミド(9.77g,87.4%の収率)がもたらされた。1H−NMR(DMSO−d6)スペクトルは、所望生成物と一致した。
【0073】
【化23】

前工程において記載された生成物すなわちN−[5−(2−アセトアミドエチル)−2−メトキシフェニル]−2−[(2−メトキシ−4−ニトロフェニル)−ヒドラゾノ]−3−オキソブチルアミド(4.6g)を150mLのNMP及び20mLの濃HClと混合し、そして112℃にて6時間加熱した。この反応混合物を1000mLの水中に注ぎ、そして一晩放置した。生じた沈殿物を濾別し、水でそして次いで希薄NaHCO3水溶液で洗浄して中性pHにし、そして最後に真空中で乾燥して黄色粉末として4.0g(95.2%)のN−[5−(2−アミノエチル)−2−メトキシフェニル]−2−[(2−メトキシ−4−ニトロ−フェニル)−ヒドラゾノ]−3−オキソ−ブチルアミド(AePY74)がもたらされた。1H−NMR(DMSO−d6)スペクトルは、所望生成物と一致した。
【0074】
例9
【化24】

例8に記載されたようにして製造されたN−[2−(3−アミノ−4−メトキシフェニル)エチル]アセトアミド塩酸塩(15g)及び175mLの2N−HClを還流にて6時間加熱した。溶媒を回転蒸発により除去し、そして残渣をエタノールで洗浄した。生じた白色沈殿物を濾別し、そして真空中で乾燥して白色結晶として13.7g(94%)の5−(2−アミノエチル)−2−メトキシフェニルアミン(AMMPA)二塩酸塩がもたらされた。1H−NMR(DMSO−d6)スペクトルは、所望生成物と一致した。
【0075】
【化25】

5−(2−アミノエチル)−2−メトキシフェニルアミン(AMMPA)二塩酸塩(4.02g)を55mLの氷水中に5mLの濃HClで溶解し、そしてこの溶液を氷浴で5℃未満に冷却した。このアミンを15mLの水中に溶解された1.17gのNaNO2でジアゾ化した。この混合物を5℃未満にて20分間撹拌し、そしてスルファミン酸の添加により過剰の亜硝酸を破壊した。
【0076】
アセトアセト−o−アニシジド(AAOA,3.48g)を、50mLの水と0.84gのNaOHの混合物中に溶解した。この溶液を5℃に冷却し、そしてpH5になるまで酢酸を添加することによりカップラーを再沈殿させた。次いで、酢酸ナトリウムの飽和水溶液を添加して、pHを5.6に調整した。この混合物にAMMPAのジアゾニウム塩溶液を滴加した。黄色沈殿物がたちまち形成した。この混合物を室温にて3時間撹拌し、そして沈殿物を濾別しそして水で洗浄して黄色固体として6.45g(98%)の2−{[5−(2−アミノエチル)−2−メトキシフェニル]−ヒドラゾノ}−N−(2−メトキシフェニル)−3−オキソ−ブチルアミド(AAOA−AMMPA)がもたらされた。1H−NMR(DMSO−d6)スペクトルは、所望生成物と一致した。
【0077】
例10〜15
次の例は、ポリマー基と、連結基及び有機発色団基を含む少なくとも1個の基とを含むところの、本発明のインクジェットインキ組成物に有用なポリマー分散剤の製造を記載する。
【0078】
例10
【化26】

【化27】

50gのJoncryl(登録商標)683(165の酸価及び7000〜9000のMwを有するところのJohnson Polymersから入手できるスチレン−アクリル酸ポリマー)及び1.925gのN−ヒドロキシスクシンイミド(HOSI)を200mLの乾燥THF中に溶解した。これに50mLのTHF中の3.45gのN,N′−ジシクロヘキシルカルボジイミドの溶液を5〜10minの期間をかけて滴加した。室温における撹拌を5時間続けた。N,N′−ジシクロヘキシル尿素の生じた沈殿物を濾別した。HOSI活性化ポリマーを含有する濾液に6.76gのAAOA−APSES−DETA(例1)を添加し、そしてこの混合物を5時間還流した。生じたポリマー分散剤溶液をロータリーエバポレーターで蒸発させて、THFの大部分を除去した。残渣を125mLの水中の5gのNaOHの溶液で処理し、そしてこの混合物を遠心分離して不溶性物質を除去した。ポリマー基と有機発色団基とを含むポリマー分散剤(AAOA−APSES−DETA−J683)ナトリウム塩の溶液である透明な上澄み液を更なる精製なしに用いた。
【0079】
例11
【化28】

100gのJoncryl(登録商標)683(165の酸価及び7000〜9000のMwを有するところのJohnson Polymersから入手できるスチレン−アクリル酸ポリマー)、8.8gのAAOA−ABA(例3)及び5.36gのN,N′−ジシクロヘキシルカルボジイミドを500mLの乾燥N−メチルピロリジノン中に溶解した。大気湿気に対して保護しながら、この混合物を室温にて48時間撹拌した。生じたN,N′−ジシクロヘキシル尿素沈殿物を濾別し、そして撹拌しながら濾液を4Lの水に滴加した。フレーク状黄色沈殿物が形成した。次いで、pHを2に下げ、そしてポリマー基及び有機発色団基を含む生じたポリマー分散剤(AAOA−ABA−J683)を濾別した。これを4Lの水で洗浄し、そして濾過漏斗上で一晩乾燥した。収率は、ほぼ定量的であった。GPCによる分析により、おおよそ96%のAAOA−ABAがポリマーに共有結合されていることが指摘された。
【0080】
例12
【化29】

AAOA−ABA(例3)の代わりにAMQQ(例4)を用いたこと以外は、例11に記載された手順に従った。ポリマー基及び有機発色団基を含む生じたポリマー分散剤(AMQQ−J683)は、同様な収率で且つ結合発色団基の同様なレベルでもって得られた。
【0081】
例13
【化30】

AAOA−ABA(例3)の代わりにAMQA(例6)を用いたこと以外は、例11に記載された手順に従った。ポリマー基及び有機発色団基を含む生じたポリマー分散剤(AMQA−J683)は、同様な収率で且つ結合発色団基の同様なレベルでもって得られた。
【0082】
例14
【化31】

9.6gのAMPc塩酸塩(例5)、84gのJoncryl(登録商標)683(165の酸価及び7000〜9000のMwを有するところのJohnson Polymersから入手できるスチレン−アクリル酸ポリマー)、2gのトリエチルアミン及び250mLのキシレンの混合物を、還流にて8時間加熱した。ディーン−スターク(Dean-Stark)装置を用いて、反応中に形成された生じた水を除去した。生じたガム状生成物は、室温に冷却されるにつれて固化した。溶媒を固体からデカントし、そしてこの固体を真空オーブンで乾燥して114gの暗青色粗製ポリマーがもたらされた。
【0083】
10gのこの粗製生成物を、120mLの0.2M−NaOH溶液中に70℃にて溶解し、この溶液を濾過しそして最後に2N−HCl溶液で中和することにより精製した。生じた暗青色ポリマー沈殿物を濾別し、水で洗浄し、そして真空オーブンで乾燥してポリマー基及び有機発色団基を含むポリマー分散剤(AMPc−J683)である6.8gの暗青色固体が得られた。
【0084】
例15
AMPc塩酸塩(例5)の代わりに2AMQQ(例4)を用いそしてJoncryl(登録商標)683の代わりにJoncryl(登録商標)690(240の酸価及びおおよそ16000のMwを有するところのJohnson Polymersから入手できるスチレン−アクリル酸ポリマー)を用いたこと以外は例14に記載された手順に従い、その結果ポリマー基及び有機発色団基を含むポリマー分散剤(2AMQQ−J690)の形成がもたらされた。
【0085】
例16
この例は、ポリマーと、有機発色団基でない結合基とを含むポリマー分散剤の製造を記載する。
【化32】

【0086】
AAOA−ABA(例3)の代わりに5−アミノベンゾイミダゾロン(ABI)を用いたこと以外は、例11に記載された手順に従った。ポリマー基及び有機基(水素結合を形成することが可能であるが、しかし発色団基と固有的には関連がない)を含む生じたポリマー分散剤(ABI−J683)は、同様な収率で且つ結合ABI基の同様なレベルでもって得られた。
【0087】
実施例17及び比較例1〜2
次の例は、顔料とポリマー基及び有機発色団基を含むポリマー分散剤とを含む本発明のインクジェットインキ組成物の改善性質を実証する。
【0088】
Silverson(登録商標)回転子−固定子型高剪断混合機を用いて6,500rpmにて2時間、29gのピグメントイエロー74、500mLの水及び分散剤の混合物を混合した。実施例17について、10gの例10のポリマー分散剤(AAOA−APSES−DETA−J683)を用いた。比較例1について、1.35gのAAOA−APSES−DETA(例1)と10gのJoncryl(登録商標)683Na+塩の組合わせを用いた。比較例2について、10gのJoncryl(登録商標)683Na+塩を用いた。各々について、ミソニックス(Misonix)浸漬音波処理装置を用いて30分間、生じた混合物を音波処理した。メンブランフィルターを用いて、10容量部の0.1M−NaOH溶液そして次いで10容量部の脱イオン水を用いてのダイアフィルトレーションにより、過剰の分散剤を除去した。生じた黄色分散液を10〜12%の固体分に濃縮し、そしてUPAミクロトラック(Microtrac)レーザー散乱装置を用いて平均粒子サイズを測定した。結果は、下記の表1に示されている。
【表1】

【0089】
データが示しているように、ポリマー基及び有機発色団基を含むポリマー分散剤を用いて製造された黄色顔料分散液(実施例17)は、同じポリマー及び有機発色団を別個に用いて製造された分散液(比較例1)と比較して、より小さい粒子サイズを有する。実施例17の分散液の粒子サイズは100nmより小さかったのに対して、比較例1のそれは100nmより大きかった。加えて、実施例17の分散液はまた、比較例1のそれよりも熱安定性であると分かった。結合有機発色団基を備えないポリマー分散剤(比較例2)を用いると、安定な分散液はもたらされなかった。かくして、結合有機発色団基を含むポリマー分散剤を用いると、改善性質がもたらされることになる、ということが驚くべきことに分かった。このデータに基づくと、実施例17の分散液は本発明のインクジェットインキ組成物として用いられ得る、ということが予期される。
【0090】
実施例18〜23及び比較例3〜4
次の例は、本発明のインクジェットインキ組成物(実施例18〜23)並びに比較のインクジェットインキ組成物(比較例3及び4)の製造を記載する。
【0091】
アトリッター(オハイオ州アクロンのUnion Processからの型式01STD)に、10gの顔料(乾燥又はプレスケーキ(その量はその固体分含有率により決定された)としてのどちらか)、100mLの水及び500gのケイ酸ジルコニウムビーズ(0.07〜0.125mm)を装填した。次いで、ポリマー基及び有機発色団基を含む5gのポリマー分散剤を添加した。各例について、特定のタイプの顔料及び特定のポリマー分散剤は、下記の表2に示されている。PY74は、アゾ顔料であるピグメントイエロー74である。PR122は、キナクリドン顔料であるピグメントレッド122である。PB15:4は、フタロシアニン顔料(シアン色)であるピグメントブルー15:4である。最後に、PY218及びPY220は、キノロノキノロン顔料であるピグメントイエロー218及び220である。PY218は3−フルオロキノロノキノロンであり、そしてPY220は2−フルオロキノロノキノロンである。
【0092】
実施例18について示されるように、分散剤を25mLのメチルエチルケトン(MEK)中の溶液として添加し、そして次いで適切量の1M−NaOH溶液を添加してポリマー中の酸基のすべてを中和した。実施例19〜23及び比較例3〜4について、ポリマー分散剤を、アトリッターへの添加に先だって、メチルエチルケトンの使用なしに、適切量の1M−NaOH溶液で可溶化した。
【0093】
これらの成分が一緒にされると、600rpmにおける混合を始め、そして更に500gのビーズも添加した。2時間混合した後、粗いフリットフィルターを用いて媒体を濾別し、そしてこの媒体を200mLの水で洗浄した。
【0094】
実施例18について、真空下での蒸発によりMEKを除去した。これらの例のいくつかについては、粒子サイズの50%が100nm未満になるまで(UPAミクロトラック(Microtrac)レーザー散乱装置により測定して)、生じた分散液を1〜3時間音波処理した。これらの例は、下記の表2にて同定される。
【0095】
各分散液を4,500rpmにて40分間遠心分離して痕跡量の媒体及び粗い粒子を除去し、そして次いでメンブランダイアフィルトレーションを用いて濃縮しておおよそ10%固体分の最終濃度にした。UPAミクロトラック(Microtrac)レーザー散乱装置を用いてこれらの分散液の平均粒子サイズを測定し、そして結果が下記の表2に示されている。
【表2】

【0096】
これらのデータが示しているように、実施例18〜23の分散液の粒子サイズは非常に小さく、しかしてこれらの分散液の各々はインクジェットインキ組成物として用いられ得ることを指摘する。かくして、これらのデータはまた、有機発色団基を有する色素を含む顔料がポリマー基と、色素の有機発色団基と同様である有機発色団基とを含むポリマー分散剤と一緒にされるならば、安定なインクジェットインキ組成物がもたらされることになる、ということを示している。特に、実施例21及び22について、両タイプのキノロノキノロン顔料は、キノロノキノロニル基を含む同じポリマー分散剤を用いてよく分散された。理論により縛られたくないが、これらのポリマー分散剤は水素結合によってのような顔料との相互作用により安定な分散液をもたらし得る、ということが信じられる。特定の相互作用が存在しない場合は、より大きい粒子サイズがもたらされることになる。これは、有機発色団基を含まないポリマー分散剤が用いられる比較例3及び4により示される。それらの生じた粒子サイズは、かなりより大きい。また、比較例3においては、ABI基はPY218と水素結合すると予期されるので、それらの結果は、実施例22及び23において用いられたポリマー分散剤の有機発色団基間の相互作用は共結晶化(単独で又は水素結合との組合わせでのどちらかで)によってであり得ることを示唆している。
【0097】
実施例24〜29及び比較例5〜6
次の例は、本発明のインクジェットインキ組成物(実施例24〜29)並びに比較のインクジェットインキ組成物(比較例5及び6)の印刷物性能を実証する。
【0098】
10重量%のグリセロール、5重量%のトリエチレングリコール、1重量%のSurfinol(登録商標)465及び4重量%の顔料(組成物の残余は水である)を用いて、インクジェットインキ組成物を処方した。実施例18〜23の組成物(実施例24〜29について)並びに比較例3及び4の組成物(比較例5及び6について)の各々を用いた。エプソン(Epson)C86プリンターを用いて、生じたインクジェットインキ組成物で印刷した。
【0099】
実施例24〜29について、インキは信頼できるように印刷され、しかして飽和色印刷物をもたらした。次の基材に印刷された場合、筋及び縞は実質的に観察されなかった。すなわち、ゼロックス(Xerox)4024、ゼロックス・リサイクルド(Xerox Recycled)、ハンマーミルコピープラス(Hammermill Copy Plus)、HP・アドヴァンスト(HP Advanced)、グレートホワイト(Great White)、エプソン・インクジェット・フォトクオリティペーパー(Epson Inkjet Photo Quality Paper)、エプソン・プレミアムグロシー・フォトペーパー(Epson Premium Glossy Photo Paper)及びキャノン・PR−101・フォトペーパー(Canon PR-101 Photo Paper)。かくして、本発明のインクジェットインキ組成物は、良好な総合性質を有する画像を生成する。
【0100】
組成物を6週間70℃における加熱老化に付すことにより、実施例24〜29及び比較例5〜6のインクジェットインキ組成物を貯蔵寿命安定性について評価した。UPAミクロトラック(Microtrac)レーザー散乱装置を用いて、粒子サイズ成長を監視した。有機発色団基を含むポリマー分散剤が用いられた本発明のインクジェットインキ組成物(実施例24〜29)について、平均粒子サイズ成長は10%より大でなかったのに対して、異なるポリマー分散剤が用いられた比較のインクジェットインキ組成物(比較例5及び6)については、粒子サイズ成長は50%を超えた。かくして、本発明のインクジェットインキ組成物は、驚くべきことに、比較のインクジェットインキ組成物よりも改善された性質を有すると分かった。
【0101】
例30〜32
【化33】

次の例は、ポリマー基と、連結基及び有機発色団基を含む少なくとも1個の基とを含むところの、本発明のインクジェットインキ組成物に有用なポリマー分散剤の製造を記載する。
【0102】
例30
クライゼンアダプター、乾燥管及び熱電対を備えた300mL丸底フラスコに、N−メチルピロリジノン(NMP,100mL,Fisher Chemicalの保証付きA.C.S.銘柄)、SMA3000 UFP@(Sartomerから入手できるスチレン−マレイン酸無水物ポリマー,x:y=3:1,10g,24.4mmolマレイン酸無水物)、例2からのAAOA−APEA(A′CH2NH2,1g,2.8mmol)及びトリエチルアミン(0.39mL,2.8mmol,Aldrich供給業者のAtofina Chemical Companyの99.5%製品)を添加した。次いで、この溶液を70〜90℃に加熱し、そして2日にわたって撹拌した。この時間後、この反応混合物を室温に冷却し、そしてこの混合物をHCl(15mL)と脱イオン水(750mL)の溶液に添加することにより生成物を沈殿させた。次いで、この粗製ポリマー分散剤を濾過し、そして脱イオン水(2×300mL)で洗浄して湿潤ケーキ(29.4%(重量パーセント)固体分)としてポリマー基及び有機発色団基を含むポリマー分散剤(AAOA−APEA−SMA)がもたらされた。ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)による分析により、AAOA−APEAのおおよそ72%がポリマーに結合されていたことが指摘された。
【0103】
例31
A′CH2NH2がAAOA−APEAの代わりに例7からのAmDMQA(1g,2.9mmol)であること以外は例30に記載された手順を用いてポリマー分散剤を製造し、その結果ポリマー基及び有機発色団基を含むポリマー分散剤(AmDMQA−SMA)の形成がもたらされた。
【0104】
例32
A′CH2NH2がAAOA−APEAの代わりに例7からのAmDMQA(1g,2.9mmol)でありそしてSMA3000の代わりにSMA EF40(Sartomerから入手できるスチレン−マレイン酸無水物ポリマー,x:y=4:1,10g,19.5mmolマレイン酸無水物)を用いたこと以外は例30に記載された手順を用いてポリマー分散剤を製造し、その結果ポリマー基及び有機発色団基を含むポリマー分散剤(AmDMQA−EF)の形成がもたらされた。
【0105】
例33〜34
【化34】

次の例は、ポリマー基と、連結基及び有機発色団基を含む少なくとも1個の基とを含み、且つ更に該ポリマー基に結合された少なくとも1個のペンダント基を含むところの、本発明のインクジェットインキ組成物に有用なポリマー分散剤の製造を記載する。
【0106】
例33
クライゼンアダプター、乾燥管及び熱電対を備えた300mL丸底フラスコに、N−メチルピロリジノン(NMP,100mL,Fisher Chemicalの保証付きA.C.S.銘柄)、SMA EF40(Sartomerから入手できるスチレン−マレイン酸無水物ポリマー,x:y=4:1,25g,48.75mmolマレイン酸無水物)、例2からのAAOA−APEA(A′CH2NH2,2.5g,6.7mmol)及びトリエチルアミン(0.90mL,6.7mmol,Aldrich供給業者のAtofina Chemical Companyの99.5%製品)を添加した。次いで、この溶液を70〜90℃に加熱し、そして一晩撹拌した。次の日に、ヘプチルアミン(NH2−R,5.18g,45mmol)を追加部のトリエチルアミン(6.3mL,45mmol)と共に添加し、そしてこれを一晩撹拌した。次の日に、この反応混合物を室温に冷却し、そしてこの混合物をHCl(15mL)と脱イオン水(750mL)の溶液に添加することにより生成物を沈殿させた。次いで、この粗製ポリマー分散剤を濾過し、脱イオン水(2×300mL)で洗浄し、そして真空下で乾燥してポリマー基、有機発色団基及びペンダントアミン基を含むポリマー分散剤(AAOA−APEA−C7N−EF)がもたらされた。
【0107】
加えて、種々のペンダント基を有する様々なポリマー分散剤が、1から18個の炭素原子を有するアミンを用いて、この手順により製造され得た。
【0108】
例34
A′CH2NH2がAAOA−APEAの代わりにAmDMQA(例7から,2.5g,6.7mmol)でありそしてヘプチルアミンの代わりにノニルアミン(NH2−R,6.45g,45mmol)を用いたこと以外は例32に記載された手順を用いてポリマー分散剤を製造し、その結果ポリマー基、有機発色団基及びペンダントアミン基を含むポリマー分散剤(AmDMQA−C9N−EF)の形成がもたらされた。
【0109】
実施例35〜42及び比較例7〜11
次の例は、顔料とポリマー基及び有機発色団基を含むポリマー分散剤とを含む本発明のインクジェットインキ組成物の改善性質を実証する。
【0110】
次の方法の一つを用いて、顔料分散液を製造した。
【0111】
方法1
ケイ酸ジルコニウムビーズ摩砕媒体(0.07mm〜0.125mm)で半分の容積まで満たされたアトリッターボウル(Szegvari Attritor System)中に、撹拌(600rpm)しながら10gの顔料を添加した。別個のビーカー中で、加熱(おおよそ60℃)しながら、5gの分散剤を水性塩基(1M水酸化ナトリウム,マレイン酸無水物のモル含有量の2.5倍の塩基当量)中に溶解した。次いで、この分散剤水溶液をアトリッターボウルに添加し、そして効率的且つ流動式の摩砕を促進するために、この摩砕される混合物をおおよそ200mLの脱イオン水で希釈した。アトリッターをおおよそ1時間作動させた。この時間後、ケイ酸ジルコニウム媒体を濾別し、そして更なる脱イオン水で数回(3×100mL)すすいだ。これらのすすぎ水を分散液と一緒にし、そして次いでこの全容量の顔料分散液を60Wの最大出力(ミソニックス・ソニケーター(Misonix Sonicator)3000,型式S−3000,Mixonix Inc.)にて音波処理して粒子サイズを<150nmに低減した。次いで、この顔料分散液をダイアフィルトレーションして濃度をおおよそ10〜15%に増加し、そして次いで脱イオン水(5容量部)で更にダイアフィルトレーションした。次いで、温度制御型ソルヴァルストラトス(Sorval Stratos)遠心分離機を用いて、この分散液を5℃において4500rpmにて45分間遠心分離して大きい粒子の量を減じ、しかして最終顔料分散液(10〜15%の固体分)がもたらされた。
【0112】
方法2
ケイ酸ジルコニウムビーズ摩砕媒体(0.07mm〜0.125mm)で半分の容積まで満たされたアトリッターボウル(Szegvari Attritor System)中に、撹拌(600rpm)しながら10gの顔料を添加した。別個のビーカー中で、加熱(おおよそ60℃)しながら、5gの分散剤を有機共溶媒(おおよそ20〜50mLのメチルエチルケトン(MEK)(N−メチルピロリジノン(NMP)及び2−ピロリドン(2P)のような他の共溶媒もまた用いられ得るけれども))中に溶解した。アトリッターボウルに水性塩基(1M水酸化ナトリウム,マレイン酸無水物のモル含有量の2.5倍の塩基当量)をそして次いで分散剤溶液を添加し、そして効率的且つ流動式の摩砕を促進するために、次いでこの摩砕される混合物をおおよそ150〜200mLの脱イオン水で希釈した。アトリッターをおおよそ1時間作動させた。この時間後、ケイ酸ジルコニウム媒体を濾別し、そして更なる脱イオン水で数回(3×100mL)すすいだ。これらのすすぎ水を分散液と一緒にし、そしてこの全容量の顔料分散液をダイアフィルトレーションして濃度をおおよそ10〜15%に増加しそして次いで脱イオン水(5容量部)で更にダイアフィルトレーションして痕跡量の有機共溶媒を除去した。ダイアフィルトレーション後のこの分散液を14〜16%固体分まで濃縮し、そして次いで60Wの最大出力(ミソニックス・ソニケーター(Misonix Sonicator)3000,型式S−3000,Mixonix Inc.)にて音波処理して粒子サイズを<150nmに低減した。次いで、温度制御型ソルヴァルストラトス(Sorval Stratos)遠心分離機を用いて、この分散液を5℃において4500rpmにて45分間遠心分離して大きい粒子の量を減じ、しかして最終顔料分散液(10〜15%の固体分)がもたらされた。
【0113】
方法3
ビーカー中において、加熱(おおよそ60℃)しながら、5gの分散剤と10gの顔料を150gの有機共溶媒(メチルエチルケトン(MEK)(N−メチルピロリジノン(NMP)及び2−ピロリドン(2P)のような他の共溶媒もまた用いられ得るけれども))中で一緒にし、そしてケイ酸ジルコニウムビーズ摩砕媒体(0.07mm〜0.125mm)で半分の容積まで満たされたアトリッターボウル(Szegvari Attritor System)に撹拌(600rpm)しながら添加した。アトリッターミルを600rpmにて30分間作動させ、そして次いで水性塩基(1M水酸化ナトリウム,マレイン酸無水物のモル含有量の2.5倍の塩基当量)を添加した。塩基が添加された後、アトリッターボウルを100〜150mLの脱イオン水で圧倒させ、しかして引き続いて相を有機相から水性相に逆転させた。次いで、アトリッターを更におおよそ1時間作動させた。この時間後、ケイ酸ジルコニウム媒体を濾別し、そして更なる脱イオン水で数回(3×100mL)すすいだ。これらのすすぎ水を分散液と一緒にし、そしてこの全容量の顔料分散液をダイアフィルトレーションして濃度をおおよそ10〜15%に増加しそして次いで脱イオン水(5容量部)で更にダイアフィルトレーションして痕跡量の有機共溶媒を除去した。次いで、この分散液を14〜16%固体分まで濃縮し、そして次いで60Wの最大出力(ミソニックス・ソニケーター(Misonix Sonicator)3000,型式S−3000,Mixonix Inc.)にて音波処理して粒子サイズを<150nmに低減した。次いで、温度制御型ソルヴァルストラトス(Sorval Stratos)遠心分離機を用いて、この分散液を5℃において4500rpmにて45分間遠心分離して大きい粒子の量を減じ、しかして最終顔料分散液(10〜15%の固体分)がもたらされた。
【0114】
方法4
ビーカー中において、加熱(おおよそ60℃)しながら、5gの分散剤と10gの顔料を150gの有機共溶媒(メチルエチルケトン(MEK)(N−メチルピロリジノン(NMP)及び2−ピロリドン(2P)のような他の共溶媒もまた用いられ得るけれども))中で一緒にした。均質になると、これを次いで、ロトステーターブレンダーを備えたところの水性塩基(450g,マレイン酸無水物のモル含有量の2.5倍の塩基当量)のビーカーに、最大撹拌にてゆっくり添加した。完全添加後、ロトステーターを更に100分間作動させた。次いで、ロトステーターを停止し、そして更なる脱イオン水で数回(3×100mL)すすいだ。これらのすすぎ水を分散液と一緒にし、そしてこの全容量の顔料分散液をダイアフィルトレーションして濃度をおおよそ10〜15%に増加しそして次いで脱イオン水(5容量部)で更にダイアフィルトレーションして痕跡量の有機共溶媒を除去した。次いで、この分散液を14〜16%固体分まで濃縮し、そして次いで60Wの最大出力(ミソニックス・ソニケーター(Misonix Sonicator)3000,型式S−3000,Mixonix Inc.)にて音波処理して粒子サイズを<150nmに低減した。次いで、温度制御型ソルヴァルストラトス(Sorval Stratos)遠心分離機を用いて、この分散液を5℃において4500rpmにて45分間遠心分離して大きい粒子の量を減じ、しかして最終顔料分散液(10〜15%の固体分)がもたらされた。
【0115】
各例について用いられた特定の顔料及び分散剤が、生じた粒子サイズ(mv,ミクロンにて)と共に、下記の表3に示されている。
【表3】

【0116】
各例の3種の別個の処方物すなわち4%顔料におけるニート(「純」)分散液、10%の1,2−ヘキサンジオール(1,2−HD)を備えているところの4%顔料における分散液及び10%のテトラエチレングリコールモノブチルエーテル(TEGMBE)を備えているところの4%顔料における分散液について、熱安定性試験を70℃において行った。UPAミクロトラック(Microtrac)レーザー散乱装置を用いて、粒子サイズ成長を監視した。初期粒子サイズと比較して<20%の粒子サイズ増加しか観察されなかった場合には分散液は安定であると考えられ、一方>20%の粒子サイズ増加が観察された場合には分散液は不安定であると考えられた。各分散液についての結果は、下記の表4に示されている。
【表4】

【0117】
これらの結果が示しているように、ポリマー基及び有機発色団基を含むポリマー分散剤を用いて製造された黄色顔料分散液(実施例35、並びに更にペンダントアミン基を含む実施例36)は、純分散液として単独で、10%の1,2−ヘキサンジオール(HD)を備えた分散液として及び10%のトリエチレングリコールモノブチルエーテル(TEGMBE)を備えた分散液として、優秀な加熱老化安定性(70℃)を6週後に示した。比較すると、同じ顔料と、有機発色団基を備えないポリマー分散剤とでもって製造された分散液(比較例7)は、純分散液、10%の1,2−ヘキサンジオール(HD)を備えた分散液及び10%のトリエチレングリコールモノブチルエーテル(TEGMBE)を備えた分散液のいずれかにて、加熱老化試験のたった1週後に不良な加熱老化安定性及び完全な落第(70℃)を示した。更に、ポリマー基及び有機発色団基を含むポリマー分散剤を用いて製造されたマゼンタ色顔料分散液(実施例37)もまた、純分散液として単独で、優秀な加熱老化安定性(70℃)を6週後に示した。10%の1,2−ヘキサンジオール(HD)の場合、この分散液は経時的に有意な成長を示したが、しかし有機発色団基を含む顔料分散剤の不存在(比較例8)で観察されたほど劇的な成長ではなかった。10%のトリエチレングリコールモノブチルエーテル(TEGMBE)の場合、この分散液ははるかにより安定であって、加熱老化の6週後にわずかな粒子サイズ成長にすぎなかったのに対して、比較のサンプルはたった1週後に安定性試験に落第した。加えて、有機発色団基を有するポリマー分散剤を含むシアン色顔料分散液(実施例38)もまた、純分散液として単独で、10%の1,2−ヘキサンジオール(HD)を備えた分散液として及び10%のトリエチレングリコールモノブチルエーテル(TEGMBE)を備えた分散液として、特に有機発色団基を備えないポリマー分散剤を用いて製造された同様な分散液(比較例9)(10%の1,2−ヘキサンジオール(HD)を備えた初期処方物に関して不良な加熱老化安定性を示した)と比較して、優秀な加熱老化安定性(70℃)を6週後に示した。驚くべきことに、有機発色団基が顔料の色素の有機発色団基と同じ(実施例35〜37)であろうとそれらが異なる基(実施例38)であろうと、改善分散安定性が認められた。
【0118】
加えて、カーボンブラック及び有機発色団基を有するポリマー分散剤を含む安定な黒色分散液が形成され得ることも驚くべきことに分かった。これは、実施例39及び実施例40により示される。マゼンタ色又はシアン色のどちらかの有機発色団基を含むこれらの黒色分散液は、純分散液として単独で、10%の1,2−ヘキサンジオール(HD)を備えた分散液として及び10%のトリエチレングリコールモノブチルエーテル(TEGMBE)を備えた分散液として、優秀な加熱老化安定性(70℃)を6週後に示した。優秀な安定性結果はまた、ポリマー分散剤が更にペンダントアミン基を含む場合(実施例41及び実施例42)観察された。比較すると、有機発色団基を有さないポリマー分散剤を備えたところの同じカーボンブラックの分散液(比較例10及び比較例11)は、10%の1,2−ヘキサンジオール(HD)の場合及び10%のトリエチレングリコールモノブチルエーテル(TEGMBE)の場合、たった1週後に非常に不良な加熱老化安定性(70℃)を示した。
【0119】
かくして、結合有機発色団基を含むポリマー分散剤を用いると、改善性質がもたらされることになる、ということが驚くべきことに分かった。このデータに基づくと、実施例35〜42の分散液は本発明のインクジェットインキ組成物として用いられ得る、ということが予期される。
【0120】
例43〜44
次の例は、ポリマー基と、連結基及び有機発色団基を含む少なくとも1個の基とを含むところの、本発明のインクジェットインキ組成物に有用なポリマー分散剤の製造を記載する。
【0121】
例43
凝縮器、窒素導入用アダプター及び熱電対を備えた300mL丸底フラスコに、N−メチルピロリジノン(NMP,100mL,Fisher Chemicalの保証付きA.C.S.銘柄)、Joncryl(登録商標)683(165の酸価及び7000〜9000のMwを有するところのJohnson Polymersから入手できるスチレン−アクリル酸ポリマー,10g)、例2からのAAOA−APEA(1g,2.8mmol)及びジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC,0.39mL,2.8mmol,Aldrichから入手できる)を添加した。次いで、この溶液を85〜95℃に加熱し、そして2日にわたって撹拌した。この時間後、この反応混合物を室温に冷却し、そしてこの混合物をHCl(15mL)と脱イオン水(750mL)の溶液に添加することにより生成物を沈殿させた。次いで、この粗製ポリマー分散剤を濾過し、そして脱イオン水(2×300mL)で洗浄して湿潤ケーキ(29.4%(重量パーセント)固体分)としてポリマー基及び有機発色団基を含むポリマー分散剤(AAOA−APEA−J683)がもたらされた。
【0122】
例44
AAOA−APEAの代わりに例7からのAmDMQA(1g,2.9mmol)を用いたこと以外は例43に記載された手順を用いてポリマー分散剤を製造し、その結果ポリマー基及び有機発色団基を含むポリマー分散剤(AmDMQA−J683)の形成がもたらされた。
【0123】
実施例45〜47及び比較例12〜14
次の例は、顔料とポリマー基及び有機発色団基を含むポリマー分散剤とを含む本発明のインクジェットインキ組成物の改善性質を実証する。
【0124】
上記の方法2を用いて、顔料分散液を製造した。各例について用いられた特定の顔料及び分散剤は、下記の表5に示されている。
【表5】

【0125】
各例の3種の別個の処方物すなわち4%顔料における純分散液、10%の1,2−ヘキサンジオール(1,2−HD)を備えているところの4%顔料における分散液及び10%のテトラエチレングリコールモノブチルエーテル(TEGMBE)を備えているところの4%顔料における分散液について、熱安定性試験を70℃において行った。UPAミクロトラック(Microtrac)レーザー散乱装置を用いて、粒子サイズ成長を監視した。初期粒子サイズと比較して<20%の粒子サイズ増加しか観察されなかった場合には分散液は安定であると考えられ、一方>20%の粒子サイズ増加が観察された場合には分散液は不安定であると考えられた。各分散液についての結果は、下記の表6に示されている。
【表6】

【0126】
これらの結果が示しているように、ポリマー基及び有機発色団基を含むポリマー分散剤を用いて製造された顔料分散液(実施例45〜47)は、同じ顔料と、有機発色団基を備えないポリマー分散剤とを含む顔料分散液(比較例12〜14)と比較して、改善加熱老化安定性(70℃)を示した。驚くべきことに、有機発色団基が顔料の色素の有機発色団基と同じ(実施例45及び実施例46)であろうとそれらが異なる基(実施例47)であろうと、これが認められた。
【0127】
かくして、結合有機発色団基を含むポリマー分散剤を用いると、改善性質がもたらされることになる、ということが驚くべきことに分かった。このデータに基づくと、実施例45〜47の分散液は本発明のインクジェットインキ組成物として用いられ得る、ということが予期される。
【0128】
本発明の好ましい具体的態様の以上の記載は、例示及び説明の目的のために呈されてきた。それは網羅的であるようには、又は開示された精密な形態に本発明を限定するようには意図されていない。改変及び変型が、上記の教示に鑑みて可能であり又は本発明の実施から習得され得る。当業者が本発明を様々な具体的態様にて及び企てられる特定の使用に適合されるような様々な改変でもって利用するのを可能にするように、本発明の原理及び本発明の実用的適用を説明するために、諸具体的態様が選ばれそして記載された。本発明の範囲は添付の請求項及びそれらの等価物により定められる、ということが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットインキ組成物であって、
a)液体ビヒクル、
b)顔料であって、式A−(B)xを有する色素を含む顔料、及び
c)ポリマー分散剤であって、ポリマー基及び式−A′−(B)y(C)zを有する少なくとも1個の基を含むポリマー分散剤
を含み、そして
A及びA′は、有機発色団基であり、
Bは、x又はy>1であるとき同じ又は異なり得そしてA及びA′における置換基であり、
Cは、z>1であるとき同じ又は異なり得そしてA′における置換基であり且つBとは異なり、
x、y及びzは、0、1、2、3又は4であり、しかもyはxより小さいか又は等しい
インクジェットインキ組成物。
【請求項2】
ポリマー分散剤が、式−LG−A′−(B)y(C)z(ここで、LGは連結基である)を有する少なくとも1個の基を含む、請求項1に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項3】
zが0である、請求項1に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項4】
yが0である、請求項1に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項5】
ポリマー基が、少なくとも1個の酸基又はその塩を含む、請求項1に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項6】
ポリマー基が、アクリレート若しくはメタクリレートポリマー基、マレイン酸若しくはマレイン酸無水物ポリマー基、又はポリウレタン基である、請求項1に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項7】
ポリマー基が、スチレン−アクリル酸ポリマー基、スチレン−メタクリル酸ポリマー基、スチレン−マレイン酸無水物ポリマー基又はスチレン−マレイン酸ポリマー基である、請求項1に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項8】
LGが、式−X−ALK1−(ここで、XはO、NR又はSであり、Rは水素、C1〜C6アルキル基、又はアリール基であり、そしてALK1は1〜18個の炭素を有するアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基又はアルカリーレン基である)を有する基を含む、請求項2に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項9】
ポリマー分散剤が、式−X−ALK1−A′−(B)y(C)zを有する少なくとも1個の基を含む、請求項8に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項10】
ポリマー分散剤が、式−NH−CH2−A′−(B)y(C)zを有する少なくとも1個の基を含む、請求項2に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項11】
ポリマー分散剤が、更に、ポリマー基に結合された少なくとも1個のペンダント基を含み、しかも該ペンダント基は式−X−ALK2(ここで、XはO、NR又はSであり、Rは水素、C1〜C6アルキル基、又はアリール基であり、そしてALK2は1〜18個の炭素を有するアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルカリール基である)を有する基を含む、請求項2に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項12】
ペンダント基が、式−X−ALK2を有する、請求項11に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項13】
ペンダント基が、式−NH−ALK2(ここで、ALK2はC1〜C12アルキル基である)を有する、請求項11に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項14】
AとA′が同じである、請求項1に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項15】
AとA′が異なっている、請求項1に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項16】
顔料が、青色顔料、黒色顔料、茶色顔料、シアン色顔料、緑色顔料、白色顔料、バイオレット色顔料、マゼンタ色顔料、赤色顔料、橙色顔料、黄色顔料又はそれらの混合物を含む、請求項1に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項17】
顔料が黄色顔料である、請求項1に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項18】
色素が、対称又は非対称キノロノキノロンである、請求項17に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項19】
Bがハロゲンであり、そしてyが0である、請求項18に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項20】
xが、1又は2である、請求項18に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項21】
色素が、3−フルオロ−キノロノキノロン、2−フルオロ−キノロノキノロン又は3−クロロ−キノロノキノロンである、請求項17に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項22】
Aがキノロノキノロニル基である、請求項17に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項23】
A′がキノロノキノロニレン基である、請求項22に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項24】
色素がアゾ色素である、請求項17に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項25】
Aが2−(フェニルアゾ)−N−(フェニル)−3−オキソブタンアミジル基である、請求項24に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項26】
A′が2−(フェニレンアゾ)−N−(フェニレン)−3−オキソブタンアミド基である、請求項25に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項27】
Bがメトキシ基であり、xが3であり、yが1であり、そしてzが0である、請求項24に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項28】
Bがメトキシ基であり、xが3であり、yが0であり、そしてzが0である、請求項24に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項29】
色素がイソインドロンである、請求項17に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項30】
顔料がシアン色顔料である、請求項1に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項31】
色素がフタロシアニンである、請求項30に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項32】
Aがフタロシアニニル基である、請求項30に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項33】
A′がフタロシアニニレン基である、請求項32に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項34】
A′がキナクリドニレン基である、請求項32に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項35】
色素がインダントロンである、請求項30に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項36】
顔料がマゼンタ色顔料である、請求項1に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項37】
色素がキナクリドンである、請求項36に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項38】
Aがキナクリドニル基である、請求項37に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項39】
A′がキナクリドニレン基である、請求項38に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項40】
インクジェットインキ組成物であって、
a)液体ビヒクル、
b)カーボンブラック顔料、及び
c)ポリマー分散剤であって、ポリマー基及び式−A′−(B)y(C)zを有する基を含むポリマー分散剤
を含み、そして
A′は、有機発色団基であり、
Bは、y>1であるとき同じ又は異なり得そしてA′における置換基であり、
Cは、z>1であるとき同じ又は異なり得そしてA′における置換基であり且つBとは異なり、そして
y及びzは、0、1、2、3又は4である
インクジェットインキ組成物。
【請求項41】
A′がキナクリドニレン基である、請求項40に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項42】
A′が2−(フェニレンアゾ)−N−(フェニレン)−3−オキソブタンアミド基である、請求項40に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項43】
インクジェットインキ組成物であって、
a)液体ビヒクル、
b)顔料であって、式A−(B)xを有する色素を含む顔料、及び
c)ポリマー分散剤であって、ポリマー基及び該顔料と相互作用することの可能な少なくとも1個の有機発色団基を含むポリマー分散剤
を含み、そして
Aは、有機発色団基であり、
Bは、x>1であるとき同じ又は異なり得そしてAにおける置換基であり、そして
xは、0、1、2、3又は4である
インクジェットインキ組成物。
【請求項44】
ポリマー分散剤が、式−LG−Q(ここで、LGは連結基であり、そしてQは顔料と相互作用することの可能な有機発色団基である)を有する少なくとも1個の基を含む、請求項43に記載のインクジェットインキ組成物。
【請求項45】
有機発色団基が、水素結合により、パイ−パイスタッキングにより又は共結晶化により顔料と相互作用する、請求項43に記載のインクジェットインキ組成物。

【公表番号】特表2009−525392(P2009−525392A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553335(P2008−553335)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【国際出願番号】PCT/US2007/002678
【国際公開番号】WO2007/089859
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】