説明

発色性ポリマー粒子

【課題】ポリマー粒子作製後に所望の色に発色することができ、発色後は色素の溶出がない発色性ポリマー粒子を提供する。
【解決手段】発色性ポリマー粒子とカップリング可能な化合物とのカップリング反応により発色する部位を有する発色性ポリマー粒子において、発色する部位が、下記一般式(1)で表される構造の残基を有することを特徴とする発色性ポリマー粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップリング反応により発色する機能を有する発色性ポリマー粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
着色したポリマー粒子は、電子写真用トナー、液晶ディスプレイ用スペーサー、化粧品及びインク等、広い分野で使用されている。
【0003】
特許文献1には粒子表面を染色により着色する方法が示されているが、染色物の溶出による汚染が課題である。また、特許文献2には表面染色した粒子をさらに被覆することで溶出を防ぐ方法が示されている。しかし被覆工程が新たに必要な上に、染色物の溶出を完全には押さえることができない。
【0004】
特許文献3には着色顔料をポリマー樹脂に分散させることで着色ポリマー樹脂を得る方法が開示されている。この方法では溶出による汚染は防げるものの、着色顔料は重合以前に分散する必要があり、重合してしまうと別の色が所望された場合には重合前の最初の工程から作り直す必要がある。
【0005】
さらに、特許文献4にはビニルポリマーと芳香族アミン発色性ポリマー粒子とカップリング可能な化合物をカップリングすることで発色させ、着色粒子を作製して、前記粒子を用いて着色微粒子分散物を得る方法が開示されている。しかし、この方法ではビニルポリマー自体が発色母核の前躯体となっているために、カップリング後の色素は重合前に色が決まっており、変更が不可能である。そのため、別の色が所望された場合には、前記の分散法による着色粒子と同様、重合前の最初の工程から粒子を作り直す必要がある。
【0006】
このように、着色ポリマー粒子はさまざまな産業で使用されているが、所望の色のポリマー粒子を容易な方法で作製できる方法は、染色による着色以外には見出されておらず、染色による着色は色素の溶出による汚染を防ぐことができないという問題があった。
【特許文献1】特開昭59−24829号公報
【特許文献2】特開平3−33165号公報
【特許文献3】特開平7−2913号公報
【特許文献4】特開2002−53766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、ポリマー粒子作製後に所望の色に発色することができ、発色後は色素の溶出がない発色性ポリマー粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0009】
1.発色性ポリマー粒子とカップリング可能な化合物とのカップリング反応により発色する部位を有する発色性ポリマー粒子において、該発色性ポリマー粒子は、発色する部位として、下記一般式(1)で表される構造の残基を有することを特徴とする発色性ポリマー粒子。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、R1とR2は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基または複素環基を表す。R3〜R6は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。R3とR4及びR5とR6は互いに結合して環を形成してもよい。また、R1〜R6のいずれか一つがポリマー鎖と結合する部位であり、R3とR4及びR5とR6が互いに結合して環を形成する場合は、該環がポリマー鎖と結合する部位となってもよい。)
2.前記一般式(1)で表される構造の残基を有する発色性ポリマー粒子とカップリング可能な化合物が、下記一般式(2)〜(7)で表される化合物であることを特徴とする前記1に記載の発色性ポリマー粒子。
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、R21とR22はアルキル基を表す。R21とR22は置換基を有してもよい。X2は水素原子または一般式(1)で表される構造の残基のアミン部とカップリング反応を行う際の脱離基を表す。)
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、R31とR32はアルキル基を表す。R31とR32は置換基を有してもよい。X3は水素原子または一般式(1)で表される構造の残基のアミン部とカップリング反応を行う際の脱離基を表す。)
【0016】
【化4】

【0017】
(式中、R41とR42はアルキル基を表す。R41とR42は置換基を有してもよい。X4は水素原子または一般式(1)で表される構造の残基のアミン部とカップリング反応を行う際の脱離基を表す。)
【0018】
【化5】

【0019】
(式中、R51とR52はアルキル基を表す。R51とR52は置換基を有してもよい。X5は水素原子または一般式(1)で表される構造の残基のアミン部とカップリング反応を行う際の脱離基を表す。)
【0020】
【化6】

【0021】
(式中、R61、R62、R63はアルキル基を表す。R61、R62、R63は置換基を有してもよい。R62とR63は互いに結合して環を形成してもよい。X6は水素原子または一般式(1)で表される構造の残基のアミン部とカップリング反応を行う際の脱離基を表す。)
【0022】
【化7】

【0023】
(式中、R71、R72、R73はアルキル基を表す。R71、R72、R73は置換基を有してもよい。X7は水素原子または一般式(1)で表される構造の残基のアミン部とカップリング反応を行う際の脱離基を表す。)
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ポリマー粒子作製後に所望の色に発色することができ、発色後は色素の溶出がない発色性ポリマー粒子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、前記一般式(1)で表される構造の残基を有する発色性ポリマー粒子により、ポリマー粒子作製後に所望の色に発色することができ、発色後は色素の溶出がない発色性ポリマー粒子が得られることを見出し、本発明に至った。発色性ポリマー粒子と、発色性ポリマー粒子とカップリング可能な化合物とのカップリングにより得られた着色粒子の着色部は化学結合で結合しているために溶出しない。
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0027】
本発明において発色とは、発色性ポリマー粒子と、該発色性ポリマー粒子とカップリング可能な化合物とのカップリング反応にて得られる化合物の可視光の反射強度が強くなる現象を指し、変色も発色に含まれる。
【0028】
本発明の、発色性ポリマー粒子とカップリング可能な化合物とのカップリング反応により発色する部位を有する発色性ポリマー粒子は、前記一般式(1)で表される構造の残基を分子内に含む不飽和結合含有分子を、重合あるいは縮合反応によりポリマー化することにより製造することが可能である。また、別途用意したポリマー粒子に対して、グラフト反応等の手法により前記一般式(1)で表される構造の残基を結合させてもよい。
【0029】
次に一般式(1)の詳しい形態について説明する。
【0030】
〔一般式(1)で表される構造〕
前記一般式(1)において、R1とR2は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基または複素環基を表す。
【0031】
前記アルキル基としては、直鎖状、分岐状若しくは環状の置換または無置換のアルキル基が挙げられ、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、環構造が多いトリシクロ構造等が含まれる。
【0032】
前記アルキル基の中でも、炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2−エチルヘキシル基等がより好ましい。前記シクロアルキル基の中でも、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等がより好ましい。前記ビシクロアルキル基の中でも、炭素数5〜30の置換または無置換のビシクロアルキル基、つまり炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基が好ましく、例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル基等がより好ましい。
【0033】
前記アリール基としては、炭素数6〜30の置換または無置換のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基等がより好ましい。
【0034】
前記複素環基としては、5員または6員の、置換または無置換の、芳香族または非芳香族の複素環化合物から、一個の水素原子を取り除いた一価の基が好ましく、炭素数3〜30の、5員または6員の、芳香族の複素環基がより好ましく、例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基が特に好ましい。
【0035】
前記R1及びR2が、アルキル基、アリール基または複素環基である場合、R1及びR2で表される基は、さらに置換基を有してもよい。前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及び複素環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基等が挙げられる。
【0036】
前記ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。
【0037】
前記アルキル基としては、直鎖状、分岐状若しくは環状の置換または無置換のアルキル基が挙げられ、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、環構造が多いトリシクロ構造等が含まれる。
【0038】
前記アルキル基の中でも、炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2−エチルヘキシル基等がより好ましい。前記シクロアルキル基の中でも、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等がより好ましい。前記ビシクロアルキル基の中でも、炭素数5〜30の置換または無置換のビシクロアルキル基、つまり炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基が好ましく、例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル基等がより好ましい。以下に説明する置換基中のアルキル基(例えば、アルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。
【0039】
前記アルケニル基としては、直鎖状、分岐状若しくは環状の置換または無置換のアルケニル基が挙げられ、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基が含まれる。
【0040】
前記アルケニル基の中でも、炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基等が好ましい。前記シクロアルケニル基の中でも、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルケニル基、つまり炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基が好ましく、例えば、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基等がより好ましい。前記ビシクロアルケニル基の中でも、置換または無置換のビシクロアルケニル基が挙げられ、炭素数5〜30の置換または無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基が好ましく、例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル基等がより好ましい。
【0041】
前記アルキニル基の中でも、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基が好ましく、例えば、エチニル基、プロパルギル基、トリメチルシリルエチニル基等がより好ましい。
【0042】
前記アリール基の中でも、炭素数6〜30の置換または無置換のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基等がより好ましい。
【0043】
前記複素環基の中でも、5員または6員の、置換または無置換の、芳香族または非芳香族の複素環化合物から、一個の水素原子を取り除いた一価の基が好ましく、炭素数3〜30の、5員または6員の、芳香族の複素環基がより好ましく、例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基等が特に好ましい。
【0044】
前記アルコキシ基の中でも、炭素数1〜30の置換または無置換のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等がより好ましい。
【0045】
前記アリールオキシ基の中でも、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールオキシ基が好ましく、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基等がより好ましい。
【0046】
前記シリルオキシ基の中でも、炭素数3〜20のシリルオキシ基が好ましく、例えば、トリメチルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基等がより好ましい。
【0047】
前記複素環オキシ基の中でも、炭素数2〜30の置換または無置換の複素環オキシ基が好ましく、1−フェニルテトラゾールー5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基等がより好ましい。
【0048】
前記アシルオキシ基の中でも、ホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールカルボニルオキシ基等が好ましく、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基等がより好ましい。
【0049】
前記カルバモイルオキシ基の中でも、炭素数1〜30の置換または無置換のカルバモイルオキシ基が好ましく、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基等がより好ましい。
【0050】
前記アルコキシカルボニルオキシ基の中でも、炭素数2〜30の置換または無置換のアルコキシカルボニルオキシ基が好ましく、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等がより好ましい。
【0051】
前記アリールオキシカルボニルオキシ基の中でも、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基が好ましく、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基等がより好ましい。
【0052】
前記アミノ基の中でも、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換または無置換のアニリノ基等が好ましく、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチルアニリノ基、ジフェニルアミノ基等が好ましい。
【0053】
前記アシルアミノ基の中でも、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールカルボニルアミノ基等が好ましく、例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基等がより好ましい。
【0054】
前記アミノカルボニルアミノ基の中でも、炭素数1〜30の置換または無置換のアミノカルボニルアミノ基が好ましく、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基等がより好ましい。
【0055】
前記アルコキシカルボニルアミノ基の中でも、炭素数2〜30の置換または無置換アルコキシカルボニルアミノ基が好ましく、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ基等がより好ましい。
【0056】
前記アリールオキシカルボニルアミノ基の中でも、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基が好ましく、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基等がより好ましい。
【0057】
前記スルファモイルアミノ基の中でも、炭素数0〜30の置換または無置換のスルファモイルアミノ基が好ましく、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基等がより好ましい。
【0058】
前記アルキル及びアリールスルホニルアミノ基の中でも、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールスルホニルアミノ基等が好ましく、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基等がより好ましい。
【0059】
前記アルキルチオ基の中でも、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルチオ基が好ましく、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基等がより好ましい。
【0060】
前記アリールチオ基としては、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールチオ基が好ましく、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基等がより好ましい。
【0061】
前記複素環チオ基の中でも、炭素数2〜30の置換または無置換の複素環チオ基が好ましく、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基等がより好ましい。
【0062】
前記スルファモイル基の中でも、炭素数0〜30の置換または無置換のスルファモイル基が好ましく、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N′−フェニルカルバモイル)スルファモイル基等がより好ましい。
【0063】
前記アルキル及びアリールスルフィニル基の中でも、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基等が好ましく、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基等がより好ましい。
【0064】
前記アルキル及びアリールスルホニル基の中でも、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基等が好ましく、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基等がより好ましい。
【0065】
前記アシル基の中でも、ホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールカルボニル基等が好ましく、例えば、アセチル基、ピバロイル基、2−クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル基等がより好ましい。
【0066】
前記アリールオキシカルボニル基の中でも、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールオキシカルボニル基が好ましく、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−t−ブチルフェノキシカルボニル基等がより好ましい。
【0067】
前記アルコキシカルボニル基の中でも、炭素数2〜30の置換または無置換アルコキシカルボニル基が好ましく、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基等がより好ましい。
【0068】
前記カルバモイル基の中でも、炭素数1〜30の置換または無置換のカルバモイル基が好ましく、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基等がより好ましい。
【0069】
前記アリール及び複素環アゾ基の中でも、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換または無置換の複素環アゾ基が好ましく、例えば、フェニルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基等がより好ましい。
【0070】
前記イミド基の中でも、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基等が好ましい。前記ホスフィノ基の中でも、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィノ基が好ましく、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基等がより好ましい。前記ホスフィニル基の中でも、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィニル基が好ましく、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基等がより好ましい。
【0071】
前記ホスフィニルオキシ基の中でも、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィニルオキシ基が好ましく、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基等がより好ましい。前記ホスフィニルアミノ基の中でも、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィニルアミノ基が好ましく、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基等がより好ましい。
【0072】
前記シリル基の中でも、炭素数3〜30の置換または無置換のシリル基が好ましく、例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等がより好ましい。
【0073】
1及びR2としては、各々独立に、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基または置換アリール基が好ましく、水素原子、アルキル基または置換アルキル基がより好ましく、炭素数1〜18のアルキル基または炭素数1〜18の置換アルキル基が特に好ましい。
【0074】
前記一般式(1)において、R3〜R6は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。R3とR4及びR5とR6は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0075】
前記置換基としては、炭素数1〜30の置換基が好ましく、該置換基の具体例は、R1及びR2で表される基の置換基として挙げたものと同様である。
【0076】
4、R5としては、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アシルアミノ基及びウレイド基が好ましく、水素原子及び炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。
【0077】
3、R6としては、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アシルアミノ基及びウレイド基が好ましく、水素原子及び炭素数1〜3のアルキル基がより好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0078】
以下に一般式(1)で表される構造の残基を有する発色性ポリマー粒子の例を挙げるが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0079】
【化8】

【0080】
上記、具体例中のPolはポリマーを示す。ポリマーはスチレンポリマー、アクリルポリマー、ビニルポリマー等の一般的なポリマーが挙げられる。
【0081】
〔発色性ポリマー粒子の合成〕
本発明の発色性ポリマー粒子は、一般式(1)で表される構造に重合性基を有する化合物を、重合あるいは縮合することで合成することができる。この場合、一般式(1)で表される構造に重合性基を有する化合物は、同一でも異なっていてもよい。また、別途用意した重合性基を有するポリマーと、一般式(1)で表される化合物のR1〜R6とをグラフト反応で結合してもよい。
【0082】
重合性基(Q)の例を、以下に示す。
【0083】
【化9】

【0084】
重合性基(Q)としては、不飽和重合性基(Q1〜Q7)、エポキシ基(Q8)またはアジリジニル基(Q9)であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基(Q1〜Q6)であることが最も好ましい。
【0085】
重合性基を有する化合物における重合性基は1〜6が好ましく、より好ましくは1〜4であり、最も好ましくは1または2である。重合性基を有する化合物は、重合性モノマーであってもよく、重合性モノマーが複数重合した重合性オリゴマーであってもよく、また高分子量化した重合性プレポリマーでもよい。
【0086】
重合方法としては、例えば懸濁重合、乳化重合等の既知の重合方法が挙げられる。重合反応において重合開始剤は熱、光等で重合が開始できるものであれば何でもよい。
【0087】
具体的な合成例は実施例に示す。
【0088】
本発明の発色性ポリマー粒子の大きさに特に制限はないが、好ましくは0.05〜500μm、さらに好ましくは0.5〜50μmである。
【0089】
発色性ポリマー粒子の大きさをこの範囲に調製するには、重合開始剤もしくは触媒濃度をコントロールすること、連鎖移動剤もしくは重合停止剤を併用すること、または紫外線、電子、イオン、熱、ラジカルビームまたは放射線の照射エネルギーをコントロールすること等が挙げられる。
【0090】
本発明の発色性ポリマー粒子の粒子径のバラツキは下記式で示されるCV(変動係数)が40以下であることが好ましい。
【0091】
CV=(粒子径の標準偏差)/(粒子径の平均)×100
本発明の発色性ポリマー粒子は、同一組成の均一粒子でも、異なる組成のポリマー粒子が混合した不均一粒子でもよい。
【0092】
また、発色性ポリマー粒子中には銀、鉄、銅等の金属を含有してもよい。
【0093】
〔発色性ポリマー粒子とカップリング可能な化合物〕
次に本発明に係る発色性ポリマー粒子とカップリング可能な化合物について説明する。
【0094】
発色性ポリマー粒子とカップリング可能な化合物は、前記一般式(1)で表される構造の残基にカップリング反応して発色できる化合物である。発色性ポリマー粒子とカップリング可能な化合物としては、前記一般式(2)〜(7)で表される化合物が好ましい。
【0095】
前記一般式(2)〜(7)において、R31とR32、R41とR42、R51とR52、R61とR62、R71、R72、R73はアルキル基を表し、置換基を有してもよい。
【0096】
アルキル基としては、前記一般式(1)において、R1で表されるアルキル基として挙げたものと同様である。
【0097】
置換基としては、前記一般式(1)において、R3〜R6で表される置換基として挙げたものと同様である。
【0098】
前記一般式(2)〜(7)において、X3〜X7は、水素原子または一般式(1)で表される構造の残基のアミン部とカップリング反応を行う際の脱離基を表す。
【0099】
脱離基としては、窒素原子で脱離する基であることが好ましい。窒素原子で離脱する基のうち、好ましいものはヘテロ環基であり、ヘテロ環基としては、例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、セレナゾリル基、スルホラニル基、ピペリジニル基、テトラゾリル基が挙げられる。さらに好ましいものは、環構成原子として窒素原子を1、2、3または4個有する芳香族ヘテロ環基、または下記一般式(A)で表されるヘテロ環基である。
【0100】
【化10】

【0101】
上記一般式(A)において、Lは−NC(=O)−と共に5〜6員環の含窒素ヘテロ環を形成する残基を表す。5〜6員環の含窒素ヘテロ環を形成する残基としては、例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、ピロリル基、ピラジニル基、セレナゾリル基、ピペリジニル基、テトラゾリル基等が挙げられる。なかでも、Lは5員環の含窒素ヘテロ環を形成する残基が好ましい。
【0102】
以下に、一般式(2)〜(7)で表される化合物(発色性ポリマー粒子とカップリング可能な化合物)の例を挙げるが、本発明はこれらに制限されない。
【0103】
【化11】

【0104】
【化12】

【0105】
【化13】

【0106】
これらの発色性ポリマー粒子とカップリング可能な化合物は、写真業界で色素形成カプラーとして知られている化合物で、該業界公知の方法に従って合成することができる。
【0107】
これらの発色性ポリマー粒子とカップリング可能な化合物は、カップリング反応時に、本発明の発色性ポリマー粒子を溶解しない有機溶剤、例えばメタノール、エタノール、酢酸エチル等に溶解して使用することが可能である。また、界面活性剤等でミセルを形成して水中に分散させて使用することも可能である。
【実施例】
【0108】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」を表す。
【0109】
実施例
《発色性ポリマー粒子1の作製》
(モノマー組成物の調製)
下記に示すモノマー(CDM−1)100部に対して、重合開始剤として2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.8部を添加し、モノマー組成物を調製した。
【0110】
(水性媒体の調製)
下記(A)、(B)を混合し、難水溶性無機化合物〔Ca3(PO42〕を含む水性媒体を調製した。
【0111】
(A)
リン酸3ナトリウム12水和物(Na3PO4・12H2O) 25.6部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C122564SO3Na) 0.04部
水 53.4部
(B)
塩化カルシウム(CaCl2) 11.2部
水 102.0部
この難水溶性無機化合物〔Ca3(PO42〕は、下記式で表される反応により生成するものである。
【0112】
2Na3PO4+3CaCl2 → Ca3(PO42+6NaCl
(懸濁液の調製)
上記作製したモノマー組成物を上記水性媒体に投入し、ホモミキサー(特殊機化社製)を用い、10000rpmで30分間にわたり撹拌し、懸濁液を調製した。
【0113】
(重合反応)
この懸濁液を、窒素雰囲気中で、200rpmで撹拌しながら、70℃で5時間にわたり重合を行った。
【0114】
(後処理)
次いで、室温まで冷却し、前記重合液を塩酸水溶液(pH=2)に投入し、難水溶性無機化合物〔Ca3(PO42〕を完全に溶解除去し、その後、水洗、濾過、乾燥し、本発明の発色性ポリマー粒子1を得た。
【0115】
《発色性ポリマー粒子2〜5の作製》
発色性ポリマー粒子1の作製において、CDM−1を下記表1のCDMに変更した以外は同様にして、本発明の発色性ポリマー粒子2〜5を得た。
【0116】
《発色性ポリマー粒子6の作製》
発色性ポリマー粒子1の作製において、CDM−1を下記CDH−1に変更した以外は同様にして、比較例の発色性ポリマー粒子6を得た。
【0117】
《発色性ポリマー粒子7の作製》
発色性ポリマー粒子1の作製において、CDM−1を下記CDH−2に変更した以外は同様にして、比較例の発色性ポリマー粒子7を得た。
【0118】
《現像液Y、M、Cの調製》
発色性ポリマー粒子とカップリング可能な化合物Y−1、M−1、C−1をメタノールに溶解(10g/L)し、それぞれ現像液Y、M、Cを調製した。
【0119】
《現像液Meの調製》
発色性ポリマー粒子とカップリング可能な化合物Y−1の作製において、Y−1を添加しない現像液Meを調製した。
【0120】
《発色性ポリマー粒子の評価》
上記作製した発色性ポリマー粒子について、下記の発色性及びカップリング反応により発色させた発色ポリマー粒子の溶出性の評価を行った。
【0121】
(発色性)
上記作製した発色性ポリマー粒子を、フェリシアン化カリウム溶液(0.1mol/L)に加えて1質量%の分散液を調製し、これに、上記作製した現像液と水酸化ナトリウム水溶液(pH=11)とを1:1:1の比率で混合することでカップリング反応により発色させ、発色ポリマー粒子を得た。発色性の評価は目視により行った。
【0122】
【化14】

【0123】
(溶出性)
発色ポリマー粒子1gを50mlのアセトンに添加し、20℃で7日間放置した後ろ過し、このろ液について可視光領域の最大吸収透過率を測定し、下記基準で評価した。
【0124】
○:アセトンろ液の透過率が97%以上
△:アセトンろ液の透過率が90%以上、97%未満
×:アセトンろ液の透過率が90%未満
【0125】
【表1】

【0126】
本発明の発色性ポリマー粒子は、ポリマー粒子作製後に、カップリング反応に用いる一般式(1)で表される構造の残基を有する発色性ポリマー粒子とカップリング可能な化合物の種類を選ぶことにより、所望の色に発色することができた。また、発色後は色素の溶出がない発色性ポリマー粒子を提供することができた。
【0127】
比較例の発色性ポリマー粒子は、発色しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発色性ポリマー粒子とカップリング可能な化合物とのカップリング反応により発色する部位を有する発色性ポリマー粒子において、該発色性ポリマー粒子は、発色する部位として、下記一般式(1)で表される構造の残基を有することを特徴とする発色性ポリマー粒子。
【化1】

(式中、R1とR2は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基または複素環基を表す。R3〜R6は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。R3とR4及びR5とR6は互いに結合して環を形成してもよい。また、R1〜R6のいずれか一つがポリマー鎖と結合する部位であり、R3とR4及びR5とR6が互いに結合して環を形成する場合は、該環がポリマー鎖と結合する部位となってもよい。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される構造の残基を有する発色性ポリマー粒子とカップリング可能な化合物が、下記一般式(2)〜(7)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の発色性ポリマー粒子。
【化2】

(式中、R21とR22はアルキル基を表す。R21とR22は置換基を有してもよい。X2は水素原子または一般式(1)で表される構造の残基のアミン部とカップリング反応を行う際の脱離基を表す。)
【化3】

(式中、R31とR32はアルキル基を表す。R31とR32は置換基を有してもよい。X3は水素原子または一般式(1)で表される構造の残基のアミン部とカップリング反応を行う際の脱離基を表す。)
【化4】

(式中、R41とR42はアルキル基を表す。R41とR42は置換基を有してもよい。X4は水素原子または一般式(1)で表される構造の残基のアミン部とカップリング反応を行う際の脱離基を表す。)
【化5】

(式中、R51とR52はアルキル基を表す。R51とR52は置換基を有してもよい。X5は水素原子または一般式(1)で表される構造の残基のアミン部とカップリング反応を行う際の脱離基を表す。)
【化6】

(式中、R61、R62、R63はアルキル基を表す。R61、R62、R63は置換基を有してもよい。R62とR63は互いに結合して環を形成してもよい。X6は水素原子または一般式(1)で表される構造の残基のアミン部とカップリング反応を行う際の脱離基を表す。)
【化7】

(式中、R71、R72、R73はアルキル基を表す。R71、R72、R73は置換基を有してもよい。X7は水素原子または一般式(1)で表される構造の残基のアミン部とカップリング反応を行う際の脱離基を表す。)

【公開番号】特開2008−179665(P2008−179665A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−12479(P2007−12479)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】