説明

発色構造体及びその製造方法

【課題】周期的な微細構造を損なうことなく、所望のサイズに調整することができ、光の回折現象に基づく優れた意匠性を発揮する発色構造体と、その製造方法、さらにはこのような発色構造体を含む塗料や、これによる塗膜、塗装物を提供する。
【解決手段】可溶性材料から成り、周期的に配置された複数の微細凹凸3を備えた基材Bの微細凹凸表面上に、真空プロセスにより柱状体2を形成した後、基材Bを溶解して除去することにより、両端面の一方に凹凸形状2rを備えた複数の柱状体2を周期的に配して成る発色構造体1を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の回折現象によって、特定の色を発色する発色構造体と、当該発色構造体の製造方法、さらにはこのような構造発色体を含有することによって、意匠性に優れた塗膜や塗装物を得ることができる構造発色塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、回折格子は特定の波長の光を設計した角度に反射することができるため、これを粉砕して塗料などに構造発色体として混ぜることにより、従来の顔料や染料などによる発色とは異なる意匠性を備えた塗膜や塗装構造を得ることができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−172779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような回折格子をそのまま粉砕した場合には、回折格子が微細に砕かれる過程で、回折格子の周期的な微細構造が破壊されてしまうため、光の回折による特有の発色性を失ってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、粉砕した回折格子を発色構造体として用いた従来の塗料における上記課題を解決すべくなされたものである。そして、その目的とするところは、周期的な微細構造を損なうことなく、所望のサイズに調整することができ、光の回折現象に基づく優れた意匠性を発揮する発色構造体と、その製造方法、さらにはこのような発色構造体を含む塗料や、これによる塗膜、塗装物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、両端面の一方又は両方に凹凸を有する同一形状をなす複数の微細柱状体から成る周期的な集合体を発色構造体として用いることによって、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0007】
本発明は上記知見に基づくものであって、本発明の発色構造体は、互いに同一形状をなす複数個の柱状体を周期的に並設して成り、柱状体の高さ方向両端面の少なくとも一方に所定の凹凸形状を備えたことを特徴とする。
また、本発明の発色構造体の製造方法においては、周期的に配置された複数の微細凹凸を備え、可溶性材料から成る基材を用い、当該基材の微細凹凸表面上に、柱状体を真空プロセスにより形成した後、基材を溶解して除去するようにすることを特徴としている。
【0008】
そして、本発明の構造発色塗料は、上記発色構造体を含有していることを特徴とし、本発明の塗装物は、本発明の上記構造発色塗料を塗布して成るものであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、互いに同一形状をなす複数個の柱状体を周期的に並設して成り、柱状体の高さ方向両端面の少なくとも一方に所定の凹凸形状を備えたものを発色構造体としたから、これによって、粉砕により周期的な微細構造が損なわれるようなことなく、光の回折による優れた意匠性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の発色構造体の形状例を示す概略図である。
【図2】本発明の発色構造体の製造方法について示す説明図である。
【図3】本発明の発色構造体の発色原理を示す説明図である。
【図4】本発明の発色構造体における凹凸形状の形状例として断面矩形状(a)及び断面正弦波状(b)の凹部を示す断面図である。
【図5】本発明の発色構造体における凹凸形状の他の形状例として錐台形状(a)及び錐形状(b)の凹部を示す断面図である。
【図6】本発明の発色構造体による回折光の反射強度に及ぼすDb(凹部の開口幅)/P〈ピッチ)比の影響を示すグラフである。
【図7】本発明の発色構造体による回折光の反射強度に及ぼすDt(凹部の底面幅)/Db(凹部の開口幅)比の影響を示すグラフである。
【図8】本発明の発色構造体による回折光の反射強度に及ぼすH(凹部の深さ)/P〈ピッチ)比の影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の発色構造体について、その好適形態や製造方法等と共に、さらに詳細にに説明する。なお、本明細書において「%」は、特記しない限り、質量百分率を意味するものとする。
【0012】
図1は、本発明の発色構造体の一形状例を示すものであって、図1(a)はその上面図、図1(b)はその縦断面である。
図に示す発色構造体1は、上記したように、柱状(この例では、六角柱)をなし、六角形をなす両端面の一方又は両方(この例では、一方側のみ)に凹凸形状2r(この例では、円錐状凹部)を有する複数の柱状体2から成るものであり、これら複数の柱状体2がピッチPで周期的に配置された構造を有している。
【0013】
このような発色構造体1は、回折現象を発現する周期的微細構造を有する基板の上に、真空プロセスによって無機化合物を成膜することによって製造することができる。
【0014】
すなわち、図2に示すように、まず水や有機溶媒などに可溶な材料により形成され、表面に微細突起3がピッチPの周期で配置的配置された基材Bを用意し、この凹凸表面上に、金属や金属酸化物のような無機物から成る層を成膜することによって、基材B上に、柱状体2を形成する。
このとき、上記無機物材料は、微細突起3の先端から蒸着して成長を開始することから、隣接する突起3から成長した柱状体との間に境界が形成され、互いに密着した微細突起3に等しい数の柱状体2が形成される。
【0015】
そして、この後、上記基材を水や有機溶媒などを用いて溶解することによって、成膜層が柱状体2の境目から適度に分離し、一端面に微細突起3の形状に応じた周期的微細構造を備えた微粒の発色構造体1が得られる。
このとき、基材Bを効率的に溶解させるために、超音波などを照射するが、その照射エネルギや照射時間を調整することによって、柱状体2の境目からの分離の頻度を変えることができ、もって柱状体2の集合体である発色構造体1のサイズ(粒径)を調整することができる。
【0016】
上記柱状体2の形成方法、すなわち無機材料を基材B上に成膜するための真空プロセスとしては、基材Bの表面に形成した微細突起3の先端から蒸着が開始され、柱状体に成長するような方法であれば、特に問題はなく、例えば、真空蒸着、スパッタリング、プラズマCVDなどの手法を用いることが好ましい。
【0017】
一方、微細突起3を表面に備えた基材Bの材料としては、溶媒に可溶な材料で形成されていることが必要であるが、環境負荷を考慮すると水溶性の材料であることが好ましい。 このような水溶性材料としては、特に限定されないが、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース、ポリアクリル酸などの完全ケン化物や部分ケン化物を用いることが好ましい。水溶性材料以外でも、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエチレンなどの有機溶剤に可溶な材料を用いることもできる。
【0018】
このような微細突起3から成る微細凹凸表面を備えた基材Bの作製方法については、特に限定されない。例えば、回折格子形状が作製できる方法、すなわち電子線描画、2光束干渉露光、機械切削などの方法により、上記のような微細凹凸表面を備えた金型を作製し、この金型を用いて、上記のような基材材料に微細凹凸を転写するようになすことができる。
【0019】
また、柱状体2を構成する材料としては、上記した真空プロセスに使用できる材料であれば、特に限定されることはなく、例えば、酸化ケイ素、ケイ素、アルミニウム、酸化アルミニウム、ニオブ、酸化ニオブ、チタン、酸化チタン、ジルコニア、亜鉛、酸化亜鉛、金、銀、プラチナなどを挙げることができる。
特に、塗料に混合した場合に、強い反射光を得たい場合は屈折率が高い酸化チタンや酸化ニオブ、ジルコニアなどを用いることが好ましい。
【0020】
なお、上記柱状体を2種以上の異なる材料毎に1組以上、共通する周期にて成膜し、得られた複数組の柱状体をその高さ方向に積層することによって、屈折率の異なる柱状体を含む多層の発色構造体とすることができる。
そして、このようにして形成された多層の発色構造体を用いることによって、回折光のみならず、干渉光による発色をも利用することができる。
【0021】
このような構造を備えた発色構造体においては、図3に示すように、隣接する柱状体2の間のピッチをP、柱状体2を構成する材料の屈折率をn、入射光(電磁波)の角度をα、回折光の角度をβ、回折光の波長をλ、回折次数をmとするとき、次式(1)の関係を有する。
nP(sinα+sinβ)=mλ ・・・ (1)
【0022】
すなわち、0°入射の可視光線領域の回折光を発生させたい場合は、nPが回折波長に一致することとなる。
【0023】
本発明の発色構造体を構成する柱状体2の端部に形成される凹凸形状としては、回折格子として公知な形状を用いることができる。
例えば、凹凸形状例としては、錐形状、錐台形状、球状、円柱あるいは角柱形状(断面矩形状)、正弦波断面形状などが挙げられ、少なくとも柱状体1本につきこれらの凹凸形状が1つ含まれていればよい。
【0024】
例示した各凹凸形状のうち、その形状が断面矩形状(円柱、角柱状)の凹部である場合、図4(a)に示すように、そのピッチをP、凹部の開口幅をDbとしたとき、0.2≦Db/P≦0.8の関係であることが好ましい。
すなわち、図6は、屈折率n=2.0のアルミニウムから成り、図4(a)に示すように、深さH=300nm、開口径(幅)Dbの円筒状凹部を一端面に備えた柱状体をピッチPで配列した発色構造体における回折特性として、その再帰反射強度をDb/Pで整理した結果を示すものである。この図から明らかなように、Db/Pの値が0.2に満たない場合、0.8より大きい場合には、回折光の強度が目視できる限界である0.5%の値を割り込み、回折光を視認し難い水準となる傾向がある。
【0025】
また、回折現象を効果的に発現させ、可視光の光を効率よく反射させるためには、柱状体を構成する材料の屈折率をn、凹部のピッチをPとしたとき、これらの積nPについて、380nm≦nP≦780nmとなる範囲であることが望ましい。
すなわち、nPの値が380nm未満の場合、又は780nmを超えた場合には、可視光線が反射し難くなることがあるため、意匠性向上のための塗料添加物として好ましくない。ただし、紫外線や赤外線などの光を反射させることを目的とする場合は、上記のnPの範囲以外での制御が必要となる。具体的には、紫外線であれば200nm≦nP<380nm、赤外線であれば780nm<nP≦10μm等とすれば良い。
【0026】
上記凹凸形状が、図5(a)及び(b)に示すように、錐形状又は錐台形状の凹部である場合、nPの数値範囲に関しては、上記した断面矩形状の場合と同じであるが、Db/Pについては、0.2≦Db/P≦1が好ましい。
【0027】
また、錐形状又は錐台形状の凹部の底面幅Dtと、凹部の開口幅Dbの関係としては、0≦Dt/Db≦0.5であることが好ましい。
すなわち、図7は、上記同様の材料(n=2.0)から成り、図5に示すように、深さHを300nmと一定とした円錐又は円錐台状凹部を一端面に備えた柱状体をP=250nmのピッチで配列した発色構造体におけるDt/Db値と再帰反射強度の関係を図示したものである。
【0028】
この図から明かなように、Dt/Db比が0.5より大きくなると反射光が視認し難くなる傾向があることが判る。
なお、このDt/Db値が「0」とは、凹部に底面がないこと、すなわち錐台形状ではなく、底部が尖った錐形状であることを示すことは言うまでもない。
【0029】
なお、凹凸形状を構成する凹部が錐形状や錐台形状、断面矩形状の場合、凹部の開口形状としては、必ずしも円形である必要はなく、三角形や四角形、六角形などの多角形であってもよい。
ただし、凹部の開口部の形状が円形である場合の開口幅Dbがその直径であることは言うまでもないが、多角形である場合の開口幅Dbや底面幅Dtの値としては、多角形の外接円の直径を意味する。
【0030】
柱状体2の端部に形成される凹凸の縦断面が、図4(b)に示すように、正弦波形状の場合、上記nPの値は、上記同様に380nm≦nP≦780nmとなる範囲であることが望ましい。
【0031】
また、凹部間のピッチPと凹部の深さHの比H/Pによっても反射光の強度が変化する。
すなわち、図8は、上記同様の材料(n=2.0)から成り、図5(b)に示すような円錐状凹部を一端面に備えた柱状体を配列した発色構造体におけるH/P値と再帰反射強度の関係を図示したものである。
【0032】
この図から明らかなように、H/P比は、0.2〜3の範囲内にあることが望ましく、この比が0.2より小さい場合、3より大きい場合には、反射光強度が著しく小さくなり、視認し難くなるので好ましくない。
【0033】
本発明の発色構造体を構成する柱状体の高さhについては、50〜2000nmであることが好ましく、さらには100〜800nmであることがより好ましい。
柱状体の高さhが50nmに満たないときは、柱状体に形成される凹凸形状が不完全となることがあって好ましくない。また、高さhが2000nmを超えると、真空プロセスによって基材表面から成長した多数の柱状体が、その境界から分離し難くなり、微粒の発色構造体を得ることが難くなる傾向がある。
【0034】
本発明の発色構造体は、上述のように、端面に凹凸形状を有する複数の柱状体を周期的に配して成るものであるが、このような柱状体の集合体である発色構造体のサイズ、すなわち発色構造体の粒子径としては、1〜100μmの範囲内であることが好ましい。
すなわち、本発明の発色構造体の粒子径が1μmに満たない場合には、反射強度が小さくなることがあるため好ましくない。一方、100μmより大きい場合には、樹脂溶液などの液体中における沈降が激しく、塗料化し難いなどの問題が生じるため好ましくない。
【0035】
本発明の発色構造体は、塗料ベースに光輝顔料として添加することによって、構造発色塗料とすることができる。
そして、この場合の発色構造体の添加量としては、塗料の残体重量に対して、0.1〜10%が好ましい。すなわち、発色構造体の添加量が0.1%より少ない場合には、明確な発色が確認できないことがあり、10%より大きい場合には、塗料中での分散が困難になる傾向があるので好ましくない。
【0036】
本発明の上記発色構造体は、例えば、塗料に混ぜることによって構造発色塗料となし、これによって、新しい意匠性を発現する塗装を行うことができる。
塗装の対象物としては、特に限定されることはないが、例えば携帯電話やモバイルパソコンなどの携帯機器、自動車やバイク、船舶、航空機、電車などの輸送機器、家具、建材、外壁、道路標識など、多岐にわたって新しい意匠性を発現することができる。
【0037】
特に、柱状体の高さhが2000nm以下の発色構造体を使用し、これをクリヤ塗料に混ぜ、5000nm以下の膜厚となるように塗布することによって、塗膜柱における発色構造体の配向を制御することができ、より鮮明な反射光を得ることができ、優れた意匠性の実現が可能となる。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例に基づいて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0039】
〔基材の作製〕
錐形状、錐台形状及び断面矩形状の凹部を形成するための基材については、電子線描画とエッチングによって、上記凹部形状を反転させた種々の大きさ、ピッチの微細突起を備えたシリコン金型を各種作製し、この形状を水溶性のポリビニルアルコールに転写し、柱状体成膜用基材とした。
一方、正弦破形状断面の凹部形成用の基材については、2光束干渉露光を用いて、種々の大きさ、ピッチの正弦破形状凹凸を備えた金型を各種作製し、この形状を水溶性のポリビニルアルコールに同様に転写して柱状体成膜用の基材とした。
【0040】
〔発色構造体の製造〕
上記にて作成した種々の微細凹凸を備えた基材の表面に、各種の材料、すなわち酸化アルミニウム(屈折率n=1.65)、アルミニウム(屈折率n=2)、酸化ニオブ(屈折率n=2.15)及び酸化チタン(屈折率n=2.5)をスパッタリングによってそれぞれ成膜し、各種材料から成り、各種形状、サイズを有する無数の柱状体を形成した。
なお、実施例29においては、屈折率n=2.3の酸化ニオブと、屈折率n=1.45の酸化ケイ素との2層構造とし、実施例30においては、上記酸化ニオブと酸化ケイ素とを交互積層した8層構造とした。
【0041】
次に、凹凸面上に柱状体を形成した状態の上記基材を水中に浸漬し、ポリビニルアルコールから成る当該基材を種々の条件で撹拌しながら溶解させ、互いに密着した柱状体を水中で分離させたのち、この水を濾過し、残渣を採取することによって粒径の異なる種々の発色構造体を得た。ここで、粒子径及び粒子径分布の測定は以下により行った。
粒子径については、デジタルマイクロスコープ(キーエンス製VHX−900)付属の画像処理装置を用い、柱状体の集合体であるチップの細頂部長さを計測し、サンプリング数1000〜2000個の算術平均値(個数平均値)をもって粒子径とした。また、サンプリングした個々の粒子径は、正規分布に従うことが判った。その変動係数Cvは、一般に10〜60%であり、好ましくは20〜40%である。
【0042】
〔構造発色塗料の調整及び塗膜の形成〕
上記により得られた発色構造体をクリヤ塗料中にそれぞれの量で添加し、構造発色塗料を得た。
そして、この塗料を黒色の板に乾燥状態の塗膜厚さが5μmとなるように、スプレー塗装し、下記の方法によって反射率を測定した。
【0043】
〈反射率測定方法〉
村上色彩技術研究所製の三次元変角分光測定システムGCMS−11を用いて、光の入射角度に近い角度で光が反射する場所の反射率を測定した。その結果を各発色構造体の諸元と共に、表1及び表2に示す。
なお、実施例1と同様に作製した柱状体をポリビニルアルコール製基材を溶解することなく、むりやり基材から削り取ることによって得た粒子径10μmの粉体を顔料として1%添加した塗料を用いた結果を比較例とし、本願発明の実施例と比較した。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
これらの表から明らかなように、基材を溶解することなく、基材から強制的に削り取った粉体を用いた比較例においては、柱状体の端面に凹凸形状が形成されておらず、周期構造画得られていないことから、光の回折による再起反射光が全く得られず、光の回折が生じていないことが判った。これに対して、一端面に錐形状や矩形断面などの凹部から成る凹凸形状を備えた複数の状柱体から成る周期構造を備えた本発明の発色構造体を含む構造発色塗料から成る塗膜においては、光の回折による少なくとも1%以上の反射光が確認された。特に、各パラメータを所定の範囲内に調整することによって、より高い反射率が得られる傾向が認められた。
【符号の説明】
【0047】
1 発色構造体
2 柱状体
2r 凹凸形状(凹部)
3 微細突起
B 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに同一形状をなす複数個の柱状体を周期的に並設して成る発色構造体であって、
柱状体の高さ方向両端面の少なくとも一方に所定の凹凸形状を備えたことを特徴とする発色構造体。
【請求項2】
上記凹凸形状が錐形状又は錐台形状であることを特徴とする請求項1に記載の発色構造体。
【請求項3】
上記凹凸形状を構成する凹部の開口幅をDb、隣接する柱状体の凹部とのピッチをPとするとき、0.2≦Db/P≦1であることを特徴とする請求項2に記載の発色構造体。
【請求項4】
上記凹凸形状を構成する凹部の開口幅をDb、底面幅をDtするとき、0≦Dt/Db≦0.5であることを特徴とする請求項2又は3に記載の発色構造体。
【請求項5】
上記凹凸形状の縦断面が矩形形状をなしていることを特徴とする請求項1に記載の発色構造体。
【請求項6】
上記凹凸形状を構成する凹部の開口幅をDb、隣接する柱状体の凹部とのピッチをPとするとき、0.2≦Db/P≦0.8であることを特徴とする請求項5に記載の発色構造体。
【請求項7】
上記凹凸形状の縦断面が正弦波形状をなしていることを特徴とする請求項1に記載の発色構造体。
【請求項8】
上記柱状体を構成する材料の屈折率nと、隣接する柱状体の凹部とのピッチPの関係が380nm≦nP≦780nmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つの項に記載の発色構造体。
【請求項9】
上記柱状体のピッチPと凹部の深さHとの関係が0.2≦H/P≦3であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つの項に記載の発色構造体。
【請求項10】
上記柱状体の高さhが50〜2000nmであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つの項に記載の発色構造体。
【請求項11】
粒径が1〜100μmであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つの項に記載の発色構造体。
【請求項12】
請求項1〜11に記載の柱状体を複数種の材料毎に1組以上、共通する周期にて設け、これら複数組の柱状体をその高さ方向に積層してなることを特徴とする発色構造体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1つの項に記載の発色構造体を製造するに際して、可溶性材料から成り、周期的に配置された複数の微細突起を備えた基材の表面上に真空プロセスにより柱状体を形成したのち、上記基材を溶解して除去することを特徴とする発色構造体の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1つの項に記載の発色構造体を含有していることを特徴とする構造発色塗料。
【請求項15】
請求項14に記載の構造発色塗料を塗布して成ることを特徴とする塗装物。
【請求項16】
自動車の部品であることを特徴とする請求項15に記載の塗装物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−196008(P2010−196008A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45564(P2009−45564)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】