説明

発電システム

【課題】 発電システムにおいて、発電機から発生する熱を効率的に外部に放出する。
【解決手段】本発明の発電システム1は、作動媒体Tを蒸発器2、発電装置3、凝縮器4に循環させつつ発電を行う発電システム1であって、発電装置3が膨張機8と発電機本体10と筐体11とを有しており、筐体11は蒸発器2から蒸気を膨張機駆動部に導入するための導入部22と、膨張機駆動部が収容される第1空間13と回転子9が収容される第2空間14とを隔離状態で画成するための隔壁部12と、作動媒体Tを凝縮器4に排出するための流出部28とを有し、隔壁部12は、第1空間13と第2空間14とを連通すると共に第1空間13で膨張して減温した蒸気を第2空間14に導く蒸気導出部26と、回転軸18を支持する軸受が収容される軸受収容部17とを有しており、蒸気導出部26と流出部28との間に発電機本体10の回転子9が配備されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源から回収される熱を利用して発電を行う発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場の廃熱や地熱のように蒸気タービンを回転できるほどの熱量を持たない低温の熱源から熱を回収して発電を行う発電システムとして、バイナリー発電が行われている。
このバイナリー発電では、低沸点の作動媒体を蒸発させて、この作動媒体の蒸気により発電装置を駆動させ、発電が行われる(図4参照)。
【0003】
このようなバイナリー発電において、発電装置は、タービンやスクリュロータで構成された膨張機と発電機本体とが回転する回転軸で互いに連結されており、膨張機と発電機本体との間にメカニカルシールなどを設けても作動媒体の漏洩を完全に防止することは非常に困難である。
そこで、バイナリー発電を行う発電システムでは、発電装置全体を筐体の内部に密閉状態で収容する方式(密閉式)が採用されることがある。
【0004】
例えば、特許文献1には、膨脹機関に、回転子の周囲に固定子を配してなる発電機を直結させた発電装置において、前記膨脹機関の駆動軸を保持するシール部から発電機側の回転子に至る周囲空間を密閉すると共に、該密閉空間の外周側に固定子を配置し、該固定子と回転子間が、前記密閉空間を形成する隔壁の一部をなすキャンを介して対面配置した密閉型発電装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−98902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の発電システムでは、発電装置が収容される筐体の密閉性が高められているので、作動媒体が大気中へ漏洩する心配はほとんどない。その反面で、発電装置で発生した熱も筐体から放出されにくくなっており、発電装置の作動温度も高くなる傾向がある。
特に、発電装置の発電機本体には、ネオジム磁石やサマリウムコバルト磁石のように温度が上昇すると減磁する永久磁石が用いられており、発電装置の作動温度が高くなると発電効率が大きく低下してしまう虞がある。また、このような作動温度の上昇により永久磁石の温度が一定のレベルを超えると、その永久磁石を構成する小さな磁石は方向性が悪くなり、それぞれ勝手な運動を起こす。この温度をキュリー点と呼ぶ。磁石をキュリー点以上に加熱し、室温まで戻すと完全に磁力を失い、所定の発電効率を達成できなくなり、発電装置自体を取り替えなくてはならなくなる。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、大気中へ作動媒体が漏洩することを確実に抑制できるものでありながら、内部に蓄積された熱により故障したり発電効率が低下したりすることのない発電装置を備えた発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は次の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明の発電システムは、熱源により液状の作動媒体を蒸発させて蒸気を生成する蒸発器と、前記蒸発器で生成された蒸気を利用して発電を行う発電装置と、前記発電装置で発電に利用された蒸気を凝縮させて、前記蒸発器に供給される液状の作動媒体を生成する凝縮器と、を備えていて、前記作動媒体を蒸発器から発電装置及び凝縮器を経由して蒸発器に帰還させつつ発電装置で発電を行う発電システムであって、前記発電装置は、前記蒸気の膨張を伴いつつこの蒸気により回転軸を駆動させる膨張機駆動部を有する膨張機と、前記膨張機駆動部に回転軸を介して連結されて当該回転軸の回転に伴い回転する回転子を有する発電機本体と、前記膨張機駆動部及び回転子を収容する筐体と、を有しており、前記筐体は、前記蒸発器から蒸気を膨張機駆動部に導入するための導入部と、前記
膨張機駆動部が収容される第1空間と前記回転子が収容される第2空間とを隔離状態で画成するための隔壁部と、前記作動媒体を凝縮器に排出するための流出部とを有し、前記隔壁部は、前記第1空間と第2空間とを連通すると共に前記第1空間で膨張して減温した蒸気を前記第2空間に導く蒸気導出部と、前記回転軸を支持する軸受が収容される軸受収容部とを有しており、前記蒸気導出部と流出部との間に、前記発電機本体の回転子が配備されていることを特徴とするものである。
【0009】
なお、前記膨張機駆動部と回転子とは、水平方向に沿って配備された回転軸を介して連結されており、前記流出部は、前記回転軸の軸心の延長線上に位置する前記筐体の壁面に形成されているのが好ましい。
また、前記流出部は、前記第2空間の底部における筐体内壁面を高さ方向で含む位置に開口するように前記筐体の壁面(下部壁面)に形成されているのが好ましい。
【0010】
さらに、前記第2空間の底部における筐体内壁面は、前記流出部へ向けて下る傾斜面となるように形成されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の発電システムによれば、大気中へ作動媒体が漏洩することを抑制できるものでありながら、内部に蓄積された熱により発電効率が低下したり破損したりすることを防止しつつ、確実な発電を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の発電システムの全体構成を示す配管図である。
【図2】第1実施形態の発電装置の断面図である。
【図3】第2実施形態の発電装置の断面図である。
【図4】従来の発電システムの全体構成を示す配管図である。
【図5】本発明の発電システムで発電を行った際に作動媒体がどのように熱力学的に状態変化するかを示した図(モリエル線図)である。
【図6】第3実施形態の発電装置の第2空間の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る発電システム1の第1実施形態を、図面に基づき詳しく説明する。
図1に示すように、本発明の発電システム1は、工場の廃熱や地熱のように低温(例えば150℃以下)の熱源から熱を回収して発電を行うものである。
このような低温の熱源は、水の熱サイクルだけで発電できるほどの熱量は有していないので、例えばR245fa等の水より低沸点の有機媒体(フロン等)などを作動媒体Tとして用いて、この作動媒体Tの熱サイクルを利用し発電を行う必要がある。それゆえ、本発明の発電システム1のように2つの熱サイクルを併用し発電を行うものを、バイナリーサイクル(Binary-Cycle)発電と呼ぶ。
【0014】
以降の発電システム1は、R245fa(1,1,1,3,3-Pentafluoropropaneを主体とする有機冷媒)を作動媒体Tとして用いたものである。
第1実施形態の発電システム1は、熱源により液状の作動媒体Tを蒸発させてガス状の作動媒体Tを生成する蒸発器2と、この蒸発器2で生成された蒸気を利用して発電を行う発電装置3と、この発電装置3で発電に利用された蒸気を凝縮させて、蒸発器2に供給される液状の作動媒体Tを生成する凝縮器4とを備えている。
【0015】
これら蒸発器2、発電装置3、凝縮器4は、作動媒体Tを循環させる循環配管5(循環ライン)により接続されており、この循環配管5の経路上には、作動媒体Tを循環させるポンプ6が配備されている。このポンプ6により作動媒体Tを一方向に向かって送りつつ、作動媒体Tを蒸発器2、発電装置3、凝縮器4の順番に循環させる閉ループ状の構成とされている。
【0016】
以下、第1実施形態の発電システム1を構成する蒸発器2、発電装置3、凝縮器4及びポンプ6について順に精説する。
図1に示す如く、蒸発器2は、循環配管5内を流れる作動媒体Tを気化させる役割を有している。蒸発器2の1次側には、工場からの排水や地下から湧き出る温水などが供給さ
れており、2次側には作動媒体Tが供給されるようになっている。蒸発器2内では、1次側に供給された熱源と2次側に供給された作動媒体Tとの間で熱交換が行われて、ガス状の作動媒体T(蒸気)が生成される。
【0017】
2次側に供給される作動媒体Tは、ポンプ6を介して凝縮器4から送られてくるものであり、上述したR245faを用いた場合であれば20〜50℃の液体となっている。一方、1次側に供給される温水などの加熱媒体は、作動媒体Tの沸点よりも高温(例えば50〜150℃)となっており、作動媒体Tを十分に蒸発させることができる。この蒸発器2で生成した蒸気は発電装置3に送られる。
【0018】
発電装置3は、蒸発器2で生成された蒸気を利用して発電を行うものである。この発電装置3は、膨張を伴う蒸気により回転駆動されるスクリュロータ7(膨張機駆動部)を有する膨張機8と、このスクリュロータ7の回転力を利用して発電を行う回転子9を有する発電機本体10と、を有している。
蒸発器2で生成された蒸気は、循環配管5を通り膨張機8へと送られスクリュロータ7を回転させる。この回転駆動力により回転子9が回転し、発電機本体10で発電が行われる。このようにして発電に用いられた蒸気は、凝縮器4に送られる。
【0019】
なお、この発電装置3の詳細な構成については後述する。
凝縮器4は、発電装置3で発電に利用された蒸気を1次側に供給して、2次側に供給される冷却水との間に熱交換を行って、蒸気を凝縮させることにより液状の作動媒体Tを生成するものである。
この1次側に供給される冷却水は、0〜40℃となっており、作動媒体Tの蒸気を沸点以下の温度に冷却(凝縮)して液状の作動媒体Tを生成することができる。
【0020】
ポンプ6は、凝縮器4で生成された液状の作動媒体Tを圧送して、蒸発器2に送り出すものである。
ところで、上述した発電システム1においては、作動媒体Tとして有機媒体が用いられており、これらは可燃性を有したり環境に有害であったりするため、当該作動媒体Tを大気中へ漏洩するのは好ましくない。それゆえ、従来の発電システム1は密閉方式の発電装置3を備えていることが多かった。
【0021】
この密閉方式を採用することにより、作動媒体Tが大気中へ漏洩する心配はほとんどなくなるが、その反面で発電装置3で発生した熱が筐体11から放出されにくくなり、発電装置3の作動温度も高くなってしまう傾向がある。
この問題に対応するために、本発明の発電システム1、特に発電装置3は、作動媒体Tの蒸気を膨張機8のスクリュロータ7を駆動回転させるためだけでなく、この蒸気を回転子9を備えた発電機本体10へも導入し、発電機本体10を冷却させることを特徴としている。そのために、膨張機8を通過した作動媒体Tの蒸気を発電機本体10へ導く流路が筐体11内に備えられている。
【0022】
以下、発電装置3の詳細について述べる。
図2に示すように、発電装置3は、横倒円筒形状とされた筐体11を有している。この筐体11は、水平方向に長い、例えば断面円形の中空容器とされている。なお、以下では、図2の左右方向、上下方向を、それぞれ発電装置3の左右方向、上下方向として説明する。また本第1実施形態では、発電装置3の左右方向が水平方向に沿うように設置するものとおく。
【0023】
この筐体11の左側壁11Lには、蒸発器2からの作動媒体を発電装置3内へ取り込むための導入部22が設けられており、換言すると作動媒体をスクリュロータ7、7(膨張機駆動部)に導入する(作用させる)ための導入部22(詳細は後述)が設けられており、この筐体11の右側壁11Rには、当該発電装置3内の作動媒体を凝縮器4へ送り出すための流出部28(詳細は後述)が設けられている。
【0024】
筐体11の内部は作動媒体Tを収納可能な空洞とされており、この空洞とされた内部空間の左右方向の中央部には、上下に延びる隔壁部12が形成されている。この隔壁部12によって、筐体11の内部空間は、第1空間13(図2での左空間)と第2空間14(図2での右空間)とに画成されている。
この隔壁部12の上下方向中央部には、第1空間13と第2空間14とを連通する連通孔15が、水平方向(図2の紙面貫通方向)に並んで2つ形成されている。それぞれの連通孔15の部分には、ベアリング等の軸受部16を格納する軸受収容部17が設けられている。
【0025】
各連通孔15には、軸心が左右方向を向くように回転軸18が挿通されており、この回転軸18は軸受部16により回転自在に支持されている。回転軸18は、その一方端が第1空間13の中央部に位置し、他方端が第2空間14の中央部に位置する程度の長さとされている。
図2に示すように、回転軸18の一方端(左端部)には、互いに噛み合って回転する一対のスクリュロータ7、7(膨張機駆動部)が設けられている。このスクリュロータ7の外周面には、螺旋状にねじれた形状に形成されたスクリュフライト19が設けられている。このスクリュロータ7、7は、それらを取り囲むような筒状に形成され且つ隔壁部12から第1空間13内に突出状に設けられた筒状周壁内によって形成されたロータ収容室20内に回転自在に収容されるものとなっている。このロータ収容室20は第1空間13の一部を構成しており、筒状周壁で取り囲まれたスクリュロータ7、7のスクリュフライト19に作動媒体Tの蒸気を吹き付けることで、スクリュロータ7が回転し回転軸18に回転駆動力が発生する。
【0026】
なお、このスクリュロータ7は、上述した軸受部16とは別に設けられた第2軸受部29によっても回転自在に支持されている。第2軸受部29は、スクリュロータ7の左側(反回転軸側)に設けられており、軸受部16と第2軸受部29との間にスクリュロータ7が挟み込まれた形で配備されている。
このように、第1空間13内にスクリュロータ7が配備されることで、第1空間13側が膨張機8とされている。
【0027】
一方、図2に示すように、回転軸18の他方端には、回転軸18に固定されて同伴回転する回転子9(ロータ)が設けられている。この回転子9の径外側であって筐体11の内壁面には固定子21(ステータ)が配備されている。
回転子9は、ネオジム磁石やサマリウムコバルト磁石などの永久磁石から構成されており、固定子21は金属の導線を巻線したコイルから構成されている。この固定子21は、回転子9の回転を阻害することがないように、回転子9の外周面から径方向に一定の距離をあけて配備されており、回転子9と対面するように配備されている。スクリュロータ7の回転に合わせて回転子9が固定子21に対して回転することで電力が生成される。
【0028】
このように、第2空間14内に固定子21とこの固定子21内で回転する回転子9とが配備されることで第2空間14側が発電機本体10とされている。
ところで、スクリュロータ7に作動媒体Tの蒸気を吹き付けて膨張機8を動作させるためには、第1空間13内に作動媒体Tを導き入れる必要がある。そのために、筐体11には、上述したように蒸発器2で生成された蒸気を第1空間13(ロータ収容室20)に収容されたスクリュロータ7、7(膨張機駆動部)導入する(作用させる)ための導入部22が設けられている。
【0029】
詳しくは、導入部22は、蒸発器2から排出された蒸気をフィルタ23が内装された第1空間13に案内する第1導入管24と、フィルタ23を通過して異物が除去された後の蒸気を、第1空間13及び第1空間13の一部を構成するロータ収容室20に案内する第2導入管25と、を有している。
第1導入管24は、筐体11の左側壁11Lの上下中央部に固定されており、この第1空間13内を左右方向に延びている。この第1導入管24には蒸発器2側からの循環配管5がつながっていて、蒸発器2から排出された蒸気がこの第1導入管24を通ってフィルタ23が内装された第1空間13に流入する。
【0030】
一方、第2導入管25は、フィルタ23を通過して異物が除去された後の蒸気をスクリュロータ7、7(膨張機駆動部)が収容された第1空間13であるロータ収容室20内に案内するものであり、換言すれば、異物が除去された後の蒸気を一対のスクリュロータ7、7(膨張機駆動部)に導入する(作用させる)ものである。この第2導入管25は、フ
ィルタ23からロータ収容室20までを左右方向に延びるように架設されている。
【0031】
なお、フィルタ23において分離された異物は筐体11の下部に溜まる。異物は図示しない排出手段によって筐体11内から排出される。
図2に示す如く、蒸気導出部26は、作動媒体Tを流通できるように隔壁部12に穿孔された流通路であり、第1空間13を構成するロータ収容室20と第2空間14との双方に連通している。この蒸気導出部26は、第1空間13におけるロータ収容室20で膨張し減温された作動媒体Tの蒸気を、隔壁部12の右側に位置する第2空間14に導くものである。この蒸気導出部26は、隔壁部12における軸受収容部17のやや下方に形成されており、隔壁部12の上下中央部側を通って作動媒体Tの蒸気を第2空間14に流通できるようになっている。
【0032】
蒸気導出部26を通って第2空間14に導入された作動媒体Tの蒸気は、回転子9や固定子21の外表面に沿うように流れることとなる。本実施形態の場合、固定子21の反回転子側に対する作動媒体Tの導入を促進するために、固定子側流通部27が形成されている。
固定子側流通部27は、筐体11の内壁面と固定子21との間に貫通状に形成された流通路であり、左右方向を向くように複数形成されている。それ故、固定子側流通部27を通過する作動媒体Tは、筐体11の内周壁近傍を沿うように流れることになる。
【0033】
流出部28は、筐体11の右側壁11Rの上下方向中央部に設けられた貫通孔である。言い換えれば、流出部28は、回転軸18の軸心の延長線上に位置する筐体11の右壁面に形成された穿孔である。
この流出部28には、凝縮器4側に向かう循環配管5が連通している。固定子側流通部27などを流通して、固定子21や回転子9を冷却した後の作動媒体Tの蒸気は、流出部28を介して凝縮器4側に流出させられるようになっている。
【0034】
この流出部28には、凝縮器4に送られる蒸気から異物を除去できるように、フィルタ23が取り付けられていてもよい。
以上まとめるならば、本発明の発電装置3は、蒸気の膨張を伴いつつこの蒸気により回転軸18を駆動させる膨張機駆動部を有する膨張機8と、膨張機駆動部に回転軸18を介して連結されて当該回転軸18の回転に伴い回転する回転子9を有する発電機本体10と、膨張機駆動部及び回転子9を収容する筐体11と、を有するものであって、筐体11は、蒸発器2から蒸気を膨張機駆動部に導入するための導入部22と、膨張機駆動部が収容される第1空間13と回転子9が収容される第2空間14とを隔離状態で画成するための隔壁部12と、作動媒体を凝縮器に排出するための流出部とを有するものとなっている。
【0035】
さらに、隔壁部12は、第1空間13と第2空間14とを連通すると共に第1空間13で膨張して減温した蒸気を第2空間14に導く蒸気導出部26と、回転軸18を支持する軸受が収容される軸受収容部17とを有している。加えて、蒸気導出部26と流出部28との間に、発電機本体10の回転子9が配備された構成となっている。
この発電装置3が、熱源により液状の作動媒体Tを蒸発させて蒸気を生成する蒸発器2と、蒸気を凝縮させて、蒸発器2に供給される液状の作動媒体Tを生成する凝縮器4と、ポンプ6とが設けられた循環配管5上に配備され、当該発電装置3で発電を行う発電システム1が構成されるものとなっている。
【0036】
次に、上述した構成を備える発電システム1を用いて発電を行う方法、言い換えれば本発明の発電システム1を用いた発電方法について、説明する。
図1に示すように、第1実施形態の発電システム1では、低温の熱源(図例では温水)から供給される熱を利用して、蒸発器2で液状の作動媒体Tの蒸発が行われる。このとき、図5の(4)→(1)に示すように、液状の作動媒体Tは、等圧的に膨張して蒸発(気化)する。このようにして蒸発器2で生成された蒸気は、循環配管5に沿って発電装置3に送られる。
【0037】
発電装置3では、蒸発器2から送られてきて且つ導入部22を通過して第1空間13に入った蒸気を、第1空間13の一部を構成するロータ収容室20に取り込み、このロータ収容室20に収容された膨張機8のスクリュロータ7に作動媒体Tを吹き付ける。この蒸
気の持つ運動エネルギによりスクリュロータ7が回転する。このとき、図5の(1)→(2)に示すように、作動媒体Tの蒸気はエンタルピーがΔhだけ下がり、作動媒体Tの蒸気はΔhに対応して減温(冷却)される。
【0038】
このようにして膨張機8でスクリュロータ7を回転駆動すると共に減温された作動媒体T(例えば、50℃程度)は、蒸気導出部26を通過して、発電機本体10の回転子9が収容されている第2空間14に送られる。
この第2空間14では、スクリュロータ7に対して回転軸18を介して連結された回転子9が固定子21に対して回転し、電気エネルギが生成される(発電が行われる)。
【0039】
ところで、発電動作を行っている際には、発生した電流により固定子21が加熱されることとなる。しかし、第2空間14では、第1空間13で減温された低温の作動媒体Tが蒸気導出部26を通って流れ込み、上述した固定子側流通部27を通って固定子21の周囲に回り込むように流れて、高温となった固定子21が優先的に冷却される。
このような第1空間13から第2空間14への蒸気の流入は、回転軸18を支持する軸受部16を介して行われるのではなく、斯かる目的のために別途形成された蒸気導出部26を介して行われる。
【0040】
ところで、図2の例では、流出部28や蒸気導出部26は回転軸18に近い位置に形成されて、第2空間14の中央付近に位置している。それに比して、固定子側流通部27は筐体11の近傍に形成され、第2空間14の周縁に位置している。そのため、作動媒体Tは、蒸気導出部26→固定子側流通部27→流出部28と大きく蛇行して流れ、発電機本体10の回転子9や固定子21の周囲を包み込み、確実に冷却を行うようになる。この冷却作用により、発電機本体10の発電効率を安定化させることが可能となり、温度上昇が原因で発生する発電機の故障を防止することが可能となる。
【0041】
固定子21や回転子9を冷却した蒸気は、流出部28を介して外部へ出て、凝縮器4に送られる。
凝縮器4では、図5の(2)→(3)に示すように蒸気が液化され、ポンプ6により、図5の(3)→(4)に示す如く加圧される。
このように本発明の発電サイクルでは、図5のカルノーサイクルに従って作動媒体Tが熱力学的に状態変化を繰り返し、発電が行われる。
[第2実施形態]
次に、図3を用いて、第2実施形態の発電システム1を説明する。
【0042】
図3に示すように、第2実施形態の発電システム1に備えられた発電装置3は、流出部28が、第2空間14の底部内壁面と流出部28の開口縁とが、少なくとも底部内壁面の最も低い位置で連続するように筐体11の右側壁11Rの下部に形成されている。換言すると、第2実施形態の流出部28の開口における下端が第2空間14の底部内壁面と面一で同じ高さになっていている。この点、第1実施形態の発電システム1の発電装置3において、流出部28が回転軸18を右側(第2空間14から外部を向く方向)に延長した部分に形成されている構成とは、大きく異なっている。
【0043】
すなわち、第2実施形態の流出部28は、第2実施形態の発電システム1に備えられた発電装置3は、流出部28が、第2空間14の底部における筐体内壁面を高さ方向で含む位置に開口するように筐体の壁面に形成されているため、第2空間14で作動媒体が液化した場合でも、第2空間14の底部に溜まった液状の作動媒体Tをそのまま底面に沿って流出部28へ流し込み、外部へ(凝縮器側へ)排出することができるようになっている。また、作動媒体に潤滑油が含まれている場合にも、この潤滑油が流出部28を介して筐体11内からスムーズに外部に排出される。ただし、この場合は流出部28から凝縮器までの間に油分離器を設ける必要がある。
以上のことから、第2実施形態では、液化した作動媒体や潤滑油が第2空間14に貯まることはなく、貯まった液体で発電機本体10の回転子9の回転が阻害されることがない。
【0044】
なお、他の構成や奏する作用効果は第1実施形態と略同様であるため、詳細な説明は省略する。
[第3実施形態]
次に、図6を用いて、第3実施形態の発電システム1を説明する。
図6に示すように、第3実施形態の発電システム1に備えられた発電装置3は、筐体11の底面(下側の内壁面)、言い換えれば第2空間14の底部における筐体内壁面が流出部28へ向けて下る傾斜面となるように形成されている。
【0045】
具体的には、この第3実施形態の発電装置3では、筐体11の底面のうち右側壁11Rに近い部分は隔壁部12に近い側に比べて下方に位置しており、この底面は左から右に向かうにつれて下方に向かってなだらかに傾斜するようになっていて、最も下方に下がった位置に流出部28が設けられている。この流出部28には、作動媒体から異物を除去するフィルタ23などが設けられていてもよい。
【0046】
それゆえ、第2空間14において作動媒体が液化したものや潤滑油が発生したとしても、これらの液体は流出部28へ向かって下方傾斜する傾斜面に沿って流れ下り、図3に示す例と比べ、よりスムーズに筐体11の外部に排出される。
以上のことから、第3実施形態では、液化した作動媒体や潤滑油が第2空間14から外部へ速やかに排出されるので、これらの液体が第2空間14に貯まることはなく、貯まった液体で発電機本体10の回転子9の回転が阻害されることがない。
【0047】
なお、他の構成や奏する作用効果は第1実施形態や第2実施形態と略同様であるため、詳細な説明は省略する。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【0048】
例えば、上記実施形態では、膨張機8としてスクリュロータ7を回転駆動させるスクリュ式のものを挙げたが、膨張機8としてはレシプロ式や遠心式を用いることもできる。
【符号の説明】
【0049】
1 発電システム
2 蒸発器
3 発電装置
4 凝縮器
5 循環配管
6 ポンプ
7 スクリュロータ(膨張機駆動部)
8 膨張機
9 回転子
10 発電機本体
11 筐体
11L 筐体の左側壁
11R 筐体の右側壁
12 隔壁部
13 第1空間
14 第2空間
15 連通孔
16 軸受部
17 軸受収容部
18 回転軸
19 スクリュフライト
20 ロータ収容室
21 固定子
22 導入部
23 フィルタ
24 第1導入管
25 第2導入管
26 蒸気導出部
27 固定子側流通部
28 流出部
29 第2軸受部
T 作動媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源により液状の作動媒体を蒸発させて蒸気を生成する蒸発器と、前記蒸発器で生成された蒸気を利用して発電を行う発電装置と、前記発電装置で発電に利用された蒸気を凝縮させて、前記蒸発器に供給される液状の作動媒体を生成する凝縮器と、を備えていて、前記作動媒体を蒸発器から発電装置及び凝縮器を経由して蒸発器に帰還させつつ発電装置で発電を行う発電システムであって、
前記発電装置は、前記蒸気の膨張を伴いつつこの蒸気により回転軸を駆動させる膨張機駆動部を有する膨張機と、前記膨張機駆動部に回転軸を介して連結されて当該回転軸の回転に伴い回転する回転子を有する発電機本体と、前記膨張機駆動部及び回転子を収容する筐体と、を有しており、
前記筐体は、前記蒸発器から蒸気を膨張機駆動部に導入するための導入部と、前記膨張機駆動部が収容される第1空間と前記回転子が収容される第2空間とを隔離状態で画成するための隔壁部と、前記作動媒体を凝縮器に排出するための流出部とを有し、
前記隔壁部は、前記第1空間と第2空間とを連通すると共に前記第1空間で膨張して減温した蒸気を前記第2空間に導く蒸気導出部と、前記回転軸を支持する軸受が収容される軸受収容部とを有しており、
前記蒸気導出部と流出部との間に、前記発電機本体の回転子が配備されていることを特徴とする発電システム。
【請求項2】
前記膨張機駆動部と回転子とは、水平方向に沿って配備された回転軸を介して連結されており、
前記流出部は、前記回転軸の軸心の延長線上に位置する前記筐体の壁面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
前記流出部は、前記第2空間の底部における筐体内壁面を高さ方向で含む位置に開口するように前記筐体の壁面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の発電システム。
【請求項4】
前記第2空間の底部における筐体内壁面は、前記流出部へ向けて下る傾斜面となるように形成されていることを特徴とする請求項3に記載の発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−207827(P2012−207827A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72370(P2011−72370)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】