説明

発電システム

【課題】インバータ装置が商用電源と系統連系しつつ作動しているとき、商用電源の停電の誤判定の発生を抑制させるのに有利な発電システムを提供する。
【解決手段】制御装置5は、タイミング電圧信号Vに対して指令電流Iの位相を一定周期で第1変動値で変動させ、変動させたときにおけるタイミング電圧信号Vおよび指令電流Iの位相差を求め、位相差がしきい値の範囲外のとき、商用電源43の停電の可能性有りと仮判定する。仮判定後、タイミング電圧信号Vに対して指令電流Iの位相を第1変動値よりも大きな第2変動値で強制的に変動させ、変動させたときにおけるタイミング電圧信号Vの周波数と、タイミング電圧信号Vおよび指令電流Iの位相差とに基づいて、商用電源43の停電の判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は商用電源と発電機とを系統連係する発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
コージェネシステム等に使用される発電システムは、エンジンと、エンジンで作動される発電機と、発電機が発電した交流電力を直流電流に変換させる第1変換器と、第1変換器が変換した直流電力を負荷側交流電力に変換させると共に商用電源と系統連系する第2変換器と、制御装置とを有する(特許文献1等)。商用電源が停電すると、系統からの電力は喪失されるが、発電システムのインバータ装置は発電出力を継続させるため、電圧の有り無しでは、商用電源の停電発生の判定は困難である。更に、グラインダー等の誘導モータが回転駆動している状態で商用電源の停電が発生する場合には、商用電源が停電であるにも拘わらず、誘導モータが自身の慣性力で回転を継続させて誘導発電機として作用し、商用電源側に電圧を与える可能性があるため、周波数変動も発生しないおそれがある。この場合、商用電源の停電の短時間内での正確な検知は更に困難となる。検出感度を上げれば、商用電源が停電していないにも拘わらず、停電していると判定する誤検知が多発する。誤検知が多発すると、商用電源と発電システムとの連系時間が過剰に減少し、発電システムの発電出力量が減少するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3950706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、インバータ装置が商用電源と系統連系しつつ作動している場合において、商用電源の停電が発生したとき、商用電源の停電の誤検知の発生を抑制させるのに有利な発電システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る発電システムは、エンジンと、エンジンで作動される発電機と、発電機が発電した交流電力を直流電流に変換させる第1変換器と第1変換器が変換した直流電力を負荷側交流電力に変換させると共に商用電源に系統連系する第2変換器と第2変換器をスイッチング制御するゲート駆動回路とをもつインバータ装置と、CPUをもつ制御部を備え且つインバータ装置を制御する制御装置とを具備しており、
第2変換器が変換した負荷側交流電力に対して同期すると共に変圧器を介して制御装置の制御部に入力される電圧をタイミング電圧信号とし、第2変換器を制御するゲート駆動回路にPWM回路を介して制御装置が指令する電流を指令電流とするとき、
制御装置は、
PWM回路に接続されPWM回路に信号を出力する出力ポートをもち、商用電源の停電発生時において第2変換器が出力した電圧を変圧器で変圧させて形成されたタイミング電圧信号が制御部に入力される場合、出力ポートからPWM回路に給電される前記指令電流の出力周波数が上昇する機能を有するPLL回路とを有しており、
インバータ装置の作動中においてタイミング電圧信号に対して指令電流の位相を同位相とさせつつ、
タイミング電圧信号に対して指令電流の位相を一定周期で第1変動値で変動させ、変動させたときにおけるタイミング電圧信号に対する指令電流の位相差を求め、位相差がしきい値の範囲外のとき、商用電源の停電の可能性有りと仮判定し、仮判定後、
タイミング電圧信号に対して指令電流の位相を第1変動値よりも大きな第2変動値で強制的に変動させ、変動させたときにおけるタイミング電圧信号の周波数の変動と、タイミング電圧信号に対する指令電流の位相差とに基づいて、商用電源の停電の本判定を行うことを特徴とする。
【0006】
PLL回路は、PWM回路に接続されPWM回路に信号を出力する出力ポートをもつ。商用電源の停電発生時において、第2変換器が出力した電圧を変圧器で変圧させて形成されたタイミング電圧信号が制御部に入力される場合には、PLL回路の出力ポートからPWM回路に給電される指令電流の出力周波数が上昇する機能を有する。
【0007】
本発明によれば、インバータ装置が商用電源と系統連系しつつ作動している場合において、制御装置は、タイミング電圧信号に対して指令電流の位相を一定周期で第1変動値で変動させる。そして、制御装置は、変動させたときにおけるタイミング電圧信号に対する指令電流の位相差を求め、位相差がしきい値の範囲外のとき、商用電源の停電の可能性有りと仮判定する。仮判定により、商用電源の停電発生のおそれが濃厚になると、制御装置は、タイミング電圧信号に対して指令電流の位相を第1変動値よりも大きな第2変動値で強制的に進める。更に、PLL回路による周波数上昇効果により、タイミング電圧信号の必要な大きな周波数変動を生じさせる。この場合、電力負荷として誘導モータが設けられている場合には、周波数変動は、誘導モータの回転を継続させる慣性力に打ち勝つ程度の大きさであることが好ましい。そして、第2変動値で変動させたとき、制御装置は、タイミング電圧信号の周波数の変動と、タイミング電圧信号に対する指令電流の位相差に基づいて、商用電源の停電の判定を行う。このため商用電源の停電発生の判定の精度を高めることができる。なお、しきい値としては、インバータ装置および商用電源の事情等に応じて商用電源の停電発生の可能性を判定できるような値として適宜選択できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、インバータ装置が商用電源と系統連系しつつ作動している場合において、商用電源の停電が発生したとき、停電発生の判定の精度を高めることができ、商用電源の停電発生の誤判定を抑制させるのに有利な発電システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係り、発電システムを示すシステム図である。
【図2】実施形態に係り、タイミング電圧信号を示す波形図である。
【図3】実施形態に係り、第1変動値および第2変動値のタイミングを示す波形図である。
【図4】他の実施形態に係り、制御部が実行するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
好ましくは、制御装置は、PLL回路の出力ポートから出力された指令電流が入力される入力ポートとタイミング電圧信号が入力される入力ポートとを有する位相比較器とを備えている。この場合、位相比較器は、指令電流の位相とタイミング電圧信号の位相とを比較し、タイミング電圧信号の位相に対して指令電流の位相差があるとき、位相差を解消するように位相差に相当する位相差信号をPLL回路に出力する。また、PLL回路は、位相差信号に基づいて、タイミング電圧信号の位相に指令電流の位相を整合させて位相差を解消させる。更に、好ましくは、制御部は、所定の周期間隔で、タイミング電圧信号に対して指令電流の位相を強制的に変動させる指令をPLL回路に出力する出力ポートを有する。
【0011】
(実施形態1)
図1〜図3は実施形態1の概念を示す。発電システムは、燃料で作動するエンジン1と、エンジン1で回転されて発電する発電機2と、インバータ装置3とを有する。エンジン1の排熱は、エンジン冷却水回路10を経て暖房装置等の温水使用機器12に温水として利用される。インバータ装置3は、発電機2が発電した交流電力を直流電流に変換させる第1変換器30と、第1変換器30が変換した直流電力を負荷側交流電力に変換させると共に商用電源43と系統連系する第2変換器35とを有する。第1変換器30は、発電機2が発電した交流電力を直流電流に変換させる複数の第1スイッチング素子31と、第1フライホィールダイオード32とをもつ。第2変換器35は第1変換器30に配線30a,30cを介して繋がり、第1変換器30が変換した直流電力を負荷側交流電力に変換させる複数の第2スイッチング素子36と、第2フライホィールダイオード37とをもつ。配線30a,30cにおける直流中間電圧Vは、第1変換器30と第2変換器35との中間点における電圧を意味する。
【0012】
第2変換器35の第2スイッチング素子36をオンさせるゲート信号Sが、ゲート駆動回路40から第2スイッチング素子36に入力される。第2変換器35はリアクトル41およびリレー42、配線35a,35c、配線43a,43b,43c等を介して商用電源43側に系統連系されている。電力負荷44、ランプ45、誘導モータ46等の屋内電力負荷47は、配線43a,43b,43cを介して商用電源43およびインバータ装置3につながり、商用電源43およびインバータ装置3より給電されて作動可能とされている。商用電源43および第2変換器35に繋がる配線48a,48b,48cは変圧器48に繋がる。配線35cには電流センサ59が設けられている。
【0013】
本実施形態によれば、商用電源43または第2変換器35に基づいて変圧器48から出力された電圧は、フイルタ59を介してタイミング電圧信号Vとして、第1割り込みポート503およびA/Dポート505から制御部50に入力される。
【0014】
制御装置5は、制御部50(MPU)と、指令電流Iを出力する出力ポート513をもつPLL(phase locked looP)回路51と、PLL回路51の出力ポート513から出力された指令電流Iに基づいた正弦波信号を発生させる正弦波発生器52と、正弦波発生器52からの正弦波信号Iが入力されるPWM回路53と、位相比較器55とを有する。ここで図1から理解できるように、PLL回路51,PWM回路53,第2変換器35,変圧器48、PLL回路51の導電経路が存在する。制御部50は、CPU501と、メモリ502と、第1割り込みポート503と、PLL回路51の出力ポート513から出力された電流Iが割り込み信号として入力される第2割り込みポート504と、A/Dポート505と、デジタル信号をアナログ信号に変換するD/Aコンバータ57とを有する。
【0015】
位相比較器55は、PLL回路51の出力ポート513から出力された指令電流Iが入力される入力ポート552と、タイミング電圧信号Vが入力される入力ポート551と、出力ポート553とを有する。位相比較器55は、入力ポート552から入力された指令電流Iの位相と、入力ポート551から入力されたタイミング電圧信号Vの位相とを比較し、タイミング電圧信号Vの位相に対して指令電流Iの位相差があるとき、この位相差を解消するように、位相差に比例する位相差信号VrをPLL回路51の入力ポート511に出力する。
【0016】
PLL回路51は、位相差を解消するように、タイミング電圧信号Vの位相に対して指令電流Iの位相をロックできる機能を有しており、この結果、PLL回路51の出力ポート513から出力された指令電流Iの位相を、タイミング電圧信号Vの位相に対して同位相に設定することができる。従って、インバータ装置3が作動するとき、第2変換器35または商用電源43から変圧器48を介して制御部50に入力されるタイミング電圧信号Vに対して、第2変換器35が出力する電流をPLL回路51およびPWM回路53により同位相にできる。
【0017】
PWM(Pulse width modulation)回路53は、三角波電圧信号Vを発生させる三角波発生器531と、指令電流Iの電流値に比例して対応する基準電圧信号Vを発生させる基準電圧発生部532と、三角波電圧信号Vと基準電圧信号Vとを比較する比較器533とをもち、指令電流Iの電流値に対応する制御信号Sをゲート駆動回路40に出力する。このためゲート駆動回路40からのゲート信号Sにより第2変換器35のスイッチング素子36のオンオフが制御され、第2変換器35により負荷側交流電力が形成される。ここで、タイミング電圧信号Vの信号は、配線49aを介して制御部50の第1割り込みポート503に入力され、且つ、配線55aを介して位相比較器55の第1入力ポート551に入力される。このような本実施形態によれば、インバータ装置3は、タイミング電圧信号Vに対して同位相をもつ電流を第2変換器35から屋内電力負荷47側に出力する。
【0018】
図2は、タイミング電圧信号Vおよび指令電流Iが同位相である状態を一波長として模試的に示す。タイミング電圧信号Vは、制御部50の第1割り込みポート503に入力される信号であり、インバータ装置3の第2変換器35や商用電源43から変圧器48を介して出力される負荷側交流電力の位相と同相である。指令電流Iは、PLL回路51の出力ポート513から正弦波発生器52に出力される電流である。ここで、図2において、タイミング電圧信号Vの1波長に相当する1周期Tは、制御部50が有するカウンタのカウンタ値N(例えばN=10000)に対応する。制御部50によるカウンタ値の計測は、タイミング電圧信号VのゼロクロスVからスタートする。ここで、例えばタイミング電圧信号Vの位相に対して指令電流Iの位相が90°遅れている場合には、90°の位相差は、N/4のカウンタ値に相当する。タイミング電圧信号Vの位相に対して指令電流Iの位相が3°遅れている場合には、3°の位相差は、N/120のカウンタ値に相当する。タイミング電圧信号Vの位相に対して指令電流Iの位相が15°遅れている場合には、15°の位相差は、N/24のカウンタ値に相当する。すなわち、タイミング電圧信号Vの位相に対して指令電流Iの位相がD°遅れている場合には、N/(360/D)のカウンタ値に相当する。このようにタイミング電圧信号Vの位相に対する指令電流Iの位相差をカウンタ値に基づいて、位相比較器55および制御部50は求めることができる。
【0019】
さて本実施形態によれば、商用電源43とインバータ装置3とが連系しているとき、タイミング電圧信号Vに対して指令電流Iの位相を、一定周期(例えば10〜2000ミリ秒の範囲内の任意値)で3°(第1変動値に相当)で瞬間的に強制的に変動させ、無効電力の変動を故意に与えるように、制御装置5の制御部50は、D/Aコンバータ57の出力ポート570から、図3に示すように、矩形パルス状の信号Sを所定時間Δt1(例えば200ミリ秒)ぶんPLL回路51の入力ポート512に瞬間的に入力させる。これを受け、PLL回路51は、位相タイミングを規定する信号として出力ポート513から指令電流Iを正弦波発生器52に与える。ここで、正弦波発生器52は、指令電流Iに基づいた位相タイミングに従いつつ、インバータ装置3の直流中間電圧Vに応じた波高値(=電流値)をもつ信号を電流指令値Iとして出力する。この電流指令値Iと電流センサ59からの実際の電流値Iを比較し、タイミング電圧信号Vに対して位相を強制的に3°ずらした電流をゲート駆動回路40に出力する。その後、所定時間Δt1経過したら、制御装置5の制御部50は、D/Aコンバータ57の出力ポート570から、タイミング電圧信号Vに対して指令電流Iの位相を同位相とさせる信号Sを所定時間Δt2(例えば200ミリ秒)、PLL回路51の入力ポート511に入力させる。これによりタイミング電圧信号Vと指令電流Iの位相とを同位相に戻す。
【0020】
上記したように強制的に3°ずらして位相差を与えたとき、制御部50は、タイミング電圧信号Vに対する指令電流Iの位相差が実際に3°であるかをカウンタ値に基づいて求める。この場合、商用電源43の停電発生ではなく、商用電源43が正常である場合には、求められた位相差は、3°に相当するしきい値の範囲内とされるため、制御部50は、商用電源43の停電無しと判定する。しかしながら商用電源43の停電が実際に発生している場合には、上記した3°に相当する位相差は得られず、3°に相当するしきい値の範囲外となる。このようにタイミング電圧信号Vに対する指令電流Iの位相差が、位相差用のしきい値の範囲外であるときには、制御装置5の制御部50は、商用電源43の停電発生の可能性有りと仮判定する。
【0021】
この仮判定をトリガーとして、制御装置5の制御部50は、D/Aコンバータ57の出力ポート570から、タイミング電圧信号Vに対して指令電流Iの位相差を、前記した3°(第1変動値に相当)よりも大きな位相差15°(第2変動値に相当)で強制的に且つ急激に矩形パルス的に立ち上げて変動させる。この場合、商用電源43の停電発生がない場合には、タイミング電圧信号Vの周波数の変化は周波数用のしきい値の範囲内であり小さく、更に、タイミング電圧信号Vに対する指令電流Iの位相差も位相差用のしきい値の範囲内であり小さい。このため、制御装置5の制御部50は、商用電源43の停電の可能性無しと判定する。
【0022】
ここで、誘導モータ46が回転駆動している状態で商用電源43の停電が発生する場合には、商用電源43が停電であるにも拘わらず、誘導モータ46が自身の慣性力で回転を継続させて誘導発電機として作用し、商用電源43側に電圧を与える可能性があるため、タイミング電圧信号Vの周波数変動も発生しないおそれがある。
【0023】
この点について本実施形態によれば、第2変動値が大きい場合、商用電源43が停電しているときには、タイミング電圧信号Vの周波数の変化は第2変動値の大きさに追従し、周波数用のしきい値の範囲外となる。更に、商用電源43の停電発生時には、PLL回路51は、これの出力ポート513から出力される指令電流Iの周波数が上昇するように設定されているため、タイミング電圧信号Vの周波数において大きな周波数変動を生じさせる。周波数変動は、誘導モータ46の自身の慣性力に打ち勝つ程度の大きさとする。更に、商用電源43の停電発生時には、タイミング電圧信号Vに対する指令電流Iの位相差も第2変動値の大きさに追従し、位相差用のしきい値の範囲外となる。
【0024】
このため制御装置5は、タイミング電圧信号Vの周波数が周波数用のしきい値の範囲外となるとき、更には、上記した位相差が位相差用のしきい値の範囲外となるときには、商用電源43の停電発生であると、制御部50は本判定する。
【0025】
すなわち、本実施形態によれば、上記したようにインバータ装置3が商用電源43と系統連系しつつ作動しているとき、制御装置5の制御部50は、所定の周期(Δt1,Δt2)で、D/Aコンバータ57から、タイミング電圧信号Vに対して指令電流Iの位相を一定周期で3°(第1変動値に相当)の位相差を発生させる信号SをPLL回路51の入力ポート512に入力させる。更に制御部50は、タイミング電圧信号Vと指令電流Iとの位相差を検知し、3°に相当する位相差であれば、商用電源43が停電していないと判定する。このように制御部50は商用電源43の停電の疑いの有無を周期的(Δt1,Δt2)に仮判定している。
【0026】
ここで、もし、商用電源43の停電が実際に発生した場合には、タイミング電圧信号Vに対する指令電流Iとの位相差が、3°に相当する位相差でなくなる。この場合、商用電源43の停電が発生すると、商用電源43の電圧が喪失されるためである。そこで、これをトリガーとして、制御装置5の制御部50は、D/Aコンバータ57の出力ポート570から、タイミング電圧信号Vに対して指令電流Iの位相を、15°(第2変動値に相当)の位相差を発生させる信号SをPLL回路51の入力ポート512に入力させる。これにより無効電力が増加し、出力と負荷とのバランスが崩れ、直流中間電圧Vが変動し、タイミング電圧信号Vに対する指令電流Iが大きく変動する。この結果、タイミング電圧信号Vの電圧実効値も変動すると共に、タイミング電圧信号Vに対する指令電流Iの位相が大きく変化するため、タイミング電圧信号Vの電圧実効値がしきい値の範囲外であり、タイミング電圧信号Vに対する指令電流Iの位相差が位相差用のしきい値の範囲外であれば、商用電源43の停電が発生していると本判定する。
【0027】
更に、商用電源43の停電が発生すると、PLL回路51の出力ポート513から出力される電流の周波数が自動的に増加するように、PLL回路51は設定されている。このため、タイミング電圧信号Vの周波数が周波数用のしきい値の範囲外となるときには、商用電源43の停電発生を本判定できる。このため本実施形態によれば、商用電源43の停電発生の判定精度を高めることができる。
【0028】
更に、タイミング電圧信号Vに対して指令電流Iの位相を15°(第2変動値に相当)の位相差を発生させたとしても、タイミング電圧信号Vの変動が位相差用のしきい値の範囲内であれば、商用電源43の停電発生がないと判定できるため、誤判定の発生を抑制できる。
【0029】
(実施形態2)
図4は実施形態2を示す。本実施形態は、前記した実施形態1と基本的に同じ構成および同じ作用効果を果たす。図4は制御装置5の制御部50が実行するフローチャートを示す。図4に示すように、まず、インバータ装置3が商用電源43と系統連系しつつ任意の出力で運転されているとき、制御装置5の制御部50は、D/Aコンバータ57の出力ポート570から、タイミング電圧信号Vに対して指令電流Iの位相を一定周期で3°(第1変動値)の位相差を発生させる信号Sを、PLL回路51の入力ポート512に入力させる処理を実行する(ステップS102)。次に、制御部50は、タイミング電圧信号Vに対する指令電流Iの位相差を求める(ステップS104)。3°相当の位相差が存在すれば、商用電源43が正常であり停電発生でないと仮判定する(ステップS106のNO)。もし、商用電源43の停電が発生している場合には、タイミング電圧信号Vに対する指令電流Iの位相差が、3°に相当する位相差でなくなる(ステップS104のYES)。このため、商用電源43の停電が発生していると、制御部50は仮判定する(ステップS108)。
【0030】
仮判定をトリガーとして、制御装置5の制御部50は、D/Aコンバータ57の出力ポート570から、タイミング電圧信号Vに対して指令電流Iの位相を15°(第2変動値)の位相差を発生させる信号Sを、PLL回路51の入力ポート511に入力させる(ステップS110)。これにより無効電力が増加し、出力と負荷とのバランスが崩れる。この場合、直流中間電圧Vが変動し、タイミング電圧信号Vおよび指令電流Iのタイミングおよび波形の変動が増加する。この結果、タイミング電圧信号Vの電圧実効値も変動する。更に、タイミング電圧信号Vに対する指令電流の位相も大きく変化する。このため、制御部50は、タイミング電圧信号Vの電圧実効値の変動を求める(ステップS112)。タイミング電圧信号Vの電圧実効値の変動がしきい値の範囲外である場合には(ステップS114のYES)、商用電源43の停電発生であると本判定する(ステップS124)。更に、商用電源43とインバータ装置3とを遮断する等の停電処理(ステップS126)を行う。
【0031】
ここで、商用電源43の停電が実際に発生すると、PLL回路51の出力ポート513から出力される指令電流Iの周波数が自動的に増加するように、PLL回路51は設定されている。そこで本実施形態によれば、タイミング電圧信号Vの電圧実効値の変動がしきい値の範囲内である場合であっても(ステップS114のNo)、商用電源43の停電発生についての判断の精度を高めるために、制御部50は、タイミング電圧信号Vの周波数の変動を求める(ステップS116)。周波数の変動が周波数用のしきい値の範囲外である場合(ステップS118のYES)には、商用電源43の停電発生であると本判定し(ステップS124)、停電処理(ステップS126)を行う。
【0032】
周波数の変動が周波数用のしきい値の範囲内である場合(ステップS118のNo)であっても、制御部50は、タイミング電圧信号Vに対する指令電流Iの位相差を求め(ステップS120)、位相差がしきい値の範囲外であれば(ステップS122のYES)、制御部50は商用電源43の停電発生と本判定する(ステップS124)。更に、商用電源43とインバータ装置3とを遮断する等の停電処理(ステップS126)を行う。周波数の変動が周波数用のしきい値の範囲内であり(ステップS118のNo)、且つ、タイミング電圧信号Vに対する指令電流Iの位相差がしきい値の範囲内である場合には(ステップS122のNo)、制御部50は商用電源43の停電なし判定する。
【0033】
このように本実施形態によれば、商用電源43の停電発生の判定について、停電のおそれが濃厚であると仮判定されるときには、制御部50は、タイミング電圧信号Vに対する指令電流Iの位相差(第2変動値)を発生させ、その後、複数のパラメータに基づいて複数回判定するため、商用電源43の停電発生と判定するときにおける誤判定の発生が抑制される。上記した各パラメータのしきい値の範囲としては、インバータ装置3および商用電源43の事情等に応じて商用電源43の停電発生の可能性を判定できるような値として適宜選択できる。
【0034】
なお本実施形態によれば、第2変動値を発生させたとき、タイミング電圧信号Vの電圧実効値、タイミング電圧信号Vの周波数の変動、タイミング電圧信号Vに対する指令電流Iの位相差をこの順で求めることにしているが、これに限らず、タイミング電圧信号Vの周波数の変動、タイミング電圧信号Vの電圧実効値、タイミング電圧信号Vに対する指令電流Iの位相差、タイミング電圧信号Vの周波数の変動、タイミング電圧信号Vの電圧実効値の順にしても良い。
【0035】
(その他)
上記した実施形態によれば、第1変動値として、タイミング電圧信号Vに対する指令電流Iの位相差φ1は3°とされ、第2変動値として、タイミング電圧信号Vに対する指令電流Iの位相差φ2は15°とされている。しかしながらこれに限らず、第1変動値として位相差φ1は例えば2〜7°の範囲内で設定でき、第2変動値として位相差φ2は例えば10〜20°の範囲内で設定できる。第2変動値が過剰に大きい場合には、タイミング電圧信号Vの歪みが過剰になるおそれがあるため、好ましくない。そこで、φ2/φ1の値としては、2.5〜7の範囲内、3〜6の範囲内で設定することが好ましい。本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0036】
1はエンジン、2は発電機、3はインバータ装置、30は第1変換器、35は第2変換器、43は商用電源、44は電力負荷、46は誘導モータ、5は制御装置、50は制御部、51はPLL回路、52は正弦波発生器、53はPWM回路、55は位相比較器、57はD/Aコンバータを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンで作動される発電機と、
前記発電機が発電した交流電力を直流電流に変換させる第1変換器と前記第1変換器が変換した直流電力を負荷側交流電力に変換させると共に商用電源に系統連系する第2変換器と前記第2変換器をスイッチング制御するゲート駆動回路とをもつインバータ装置と、
CPUをもつ制御部を備え且つ前記インバータ装置を制御する制御装置とを具備しており、
前記第2変換器が変換した負荷側交流電力に対して同期すると共に変圧器を介して前記制御装置の前記制御部に入力される電圧をタイミング電圧信号とし、前記第2変換器を制御する前記ゲート駆動回路にPWM回路を介して前記制御装置が指令する電流を指令電流とするとき、
前記制御装置は、
前記PWM回路に接続され前記PWM回路に信号を出力する出力ポートをもち、前記商用電源の停電発生時において前記第2変換器が出力した電圧を前記変圧器で変圧させて形成された前記タイミング電圧信号が前記制御部に入力される場合、前記出力ポートから前記PWM回路に給電される前記指令電流の出力周波数が上昇する機能を有するPLL回路とを有しており、
前記インバータ装置の作動中において前記タイミング電圧信号に対して前記指令電流の位相を同位相とさせつつ、
前記タイミング電圧信号に対して前記指令電流の位相を一定周期で第1変動値で変動させ、変動させたときにおける前記タイミング電圧信号に対する前記指令電流の位相差を求め、前記位相差がしきい値の範囲外のとき、前記商用電源の停電の可能性有りと仮判定し、仮判定後、
前記タイミング電圧信号に対して前記指令電流の位相を前記第1変動値よりも大きな第2変動値で強制的に変動させ、変動させたときにおける前記タイミング電圧信号の周波数の変動と、前記タイミング電圧信号に対する前記指令電流の位相差とに基づいて、前記商用電源の停電の本判定を行うことを特徴とする発電システム。
【請求項2】
請求項1において、前記制御装置は、前記PLL回路の前記出力ポートから出力された前記指令電流が入力される入力ポートと前記タイミング電圧信号が入力される入力ポートとを有する位相比較器とを備えており、
前記位相比較器は、前記指令電流の位相と前記タイミング電圧信号の位相とを比較し、前記タイミング電圧信号の位相に対して前記指令電流の位相差があるとき、前記位相差を解消するように前記位相差に相当する位相差信号を前記PLL回路に出力し、
前記PLL回路は、前記位相差信号に基づいて、前記タイミング電圧信号の位相に前記指令電流の位相を整合させて位相差を解消させ、
前記制御部は、所定の周期間隔で、前記タイミング電圧信号に対して前記指令電流の位相を強制的に変動させる指令を前記PLL回路に出力する出力ポートを有することを特徴とする発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−5205(P2012−5205A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136336(P2010−136336)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】