説明

発電型スイッチ

【課題】スイッチングの際に押圧力により誘電性エラストマーを変形させることにより発電させ、待機中の通電が不要で、省エネルギー化を図った発電型スイッチを提供する。
【解決手段】シート状の誘電性エラストマー10の表裏面にそれぞれ上部電極20と下部電極30を添着してなり、かつ、少なくとも一方の上部電極20あるいは下部電極30側から外部応力を加えて誘電性エラストマー10を変形させ、その際に発生した電流を上部電極20と下部電極30間に流して「ON」状態にする発電型スイッチ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチングのたびに自己発電を行う発電型スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器のスイッチは、離間配置された2つの電極の一方を押圧して他方に接触させる構造になっている。例えば、図5はドーム型スイッチと称されるスイッチ1であるが、金属薄板をドーム上に加工してなる上部電極2と、平板の下部電極3とが所定間隔で離間して配置されており、指先で上部電極2を下部電極側に押圧して上部電極2を下部電極3に接触させて導通状態、即ち「ON」状態とする構成になっている(例えば、特許文献1参照)。尚、図中の符号4は、上部電極2を保護するための弾性材料からなる押さえシートであり、符号5は上部電極2と下部電極3とを絶縁するためのスペーサであり、符号6はスイッチ全体を保持するための基板である。
【0003】
【特許文献1】実開昭62−118322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のスイッチ1は、上部電極2と下部電極3との間に電流を常時流しておく必要があり、待機電力の消耗は避けられない。
【0005】
そこで本発明は、待機中の通電が不要で、省エネルギー化を図ったスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すらために本発明は、下記の発電型スイッチを提供する。
(1)シート状の誘電性エラストマーの表裏面に電極を添着してなり、かつ、少なくとも一方の電極側から外部応力を加えて誘電性エラストマーを変形させ、その際に発生した電流を電極間に流すことを特徴とする発電型スイッチ。
(2)コンデンサが接続されていることを特徴とする上記(1)記載の発電型スイッチ。
【発明の効果】
【0007】
本発明の発電型スイッチは、スイッチングの際に押圧力により誘電性エラストマーを変形させることにより発電するものであり、待機中に通電する必要がなく、省電力となる。また、コンデンサを接続することにより、余剰電力が発生した場合に蓄電でき、エネルギーロスが無くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に関して図面を参照して詳細に説明する。
【0009】
本発明の発電型スイッチは、図1に示すように、シート状の誘電性エラストマー10の表裏面に電極10、20を添着した素子本体を有する。尚、以降の説明では、誘電性エラストマー10の上面の電極10を「上部電極」、下面の電極20を「下部電極」という。
【0010】
誘電性エラストマー10には各種ゴムを使用できるが、伸長しやすく、比誘電率が高いことからイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、フロロシリコーンゴム等を好適に使用できる、中でも、比誘電率が3以上であるクロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、フロロシリコーンゴム、フッ素ゴムが好ましい。
【0011】
また、誘電性エラストマー10には、上記のゴムに、ゴムよりも誘電性の高い材料、例えばガラスやセラミックスからなる繊維や粉末等の高誘電性フィラーを配合してもよい。高誘電性フィラーは配合することにより、誘電性エラストマー10の誘電性は高まるものの、弾性が低下して変形し難くなり、発電性能に劣るようになる。そのため、高誘電性フィラーの配合量は、誘電性エラストマー全量の5〜60質量%が適当である。
【0012】
誘電性エラストマー10の硬さや厚さには制限はないが、例えば指先で押し込んだ際の変形し易さを考慮して硬さはデュロメータAスケールで20〜60、厚さは0.01〜1mmが適当である。
【0013】
上部電極10及び下部電極20は、導電性に優れるとともに、誘電性エラストマー10の変形に追従できるように軟質の導電性材料で形成される。具体的には、金属のシートやフィルム、導電性カーボンや金属粉末を樹脂に混練した導電性エラストマー、導電性グリース等を好適に使用できる。
【0014】
このような素子本体は、例えば上部電極20を指先で押圧すると、誘電性エラストマー10の押圧された箇所が窪み、あるいは全体的に湾曲して伸長し、薄くなる。そして、このような誘電性エラストマー10の厚さ変化に伴って電極間の静電容量が変化し、上部電極20と下部電極30との間に電流が流れて導通し、[ON]状態になる。このように、誘電性エラストマー10に外部応力を加えて変形させることにより発電して「ON」状態になるため、待機中に上部電極20と下部電極30との間に電流を流す必要がない。
【0015】
スイッチとするには、上記の素子本体を備える限り制限はないが、例えば図2及び図3に示す構造を例示することができる。図2は平板型スイッチ100を示しており、誘電性エラストマー10を上部電極20及び下部電極30で挟持した素子本体を基板40に載置し、上記電極20の上面に弾性材料からなる保護用の押さえシート50を配設したものである。また、上部電極20の一端は誘電性エラストマー10の外側に延出しており、導電性を有する支持部材60を介して出力端子70に接続している。尚、出力端子70は上部電極20に直接接続してもよいが、支持部材60はスペーサとしても作用して補強が図られる。
【0016】
このような平板型スイッチ100では、押さえシート50を指先で押圧すると、誘電性エラストマー10の押圧された箇所が窪むことで発電して上部電極20と下部電極30との間に電流が流れて「ON」状態となり、更に電流が支持部材60、出力端子70を通じて外部回路(図示せず)に流れ、外部回路を「ON」状態にする。
【0017】
図3は、図4に示した従来のドーム型スイッチに対応するものであり、ドーム型スイッチ200は、誘電性エラストマー10を上部電極20及び下部電極30で挟持した同様の素子本体を基板40に載置し、上部電極20の上方を覆うように弾性材料からなるドーム型の押さえシート50aを配設している。また、押さえシート50aの上部電極20と対向する内面には絶縁材料からなる突起80が付設されており、押さえシート50aを押圧したときの押圧力がより効果的に誘電性エラストマー10に作用するようにしてある。
【0018】
このようなドーム型スイッチ200も同様に、押さえシート50aを指先で押圧して誘電性エラストマー10を変形させることにより、上部電極20と下部電極30との間に電流が流れて「ON」状態となる。
【0019】
上記の発電型スイッチには、コンデンサを接続することもできる。図4は、図2に示した平板型発電スイッチ100の外部導体70と下部電極30との間に、外部回路の他にコンデンサ300を挿入した構成を例示した回路図である。平板型発電スイッチ100を押圧すると発電して外部回路に電流が流れるが、余剰の電力が発生した場合には、余剰電力をコンデンサ300に蓄電することができ、エネルギーロスが無くなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の発電型スイッチの素子本体を示す断面図である。
【図2】本発明の発電型スイッチの一例(平板型)を示す断面図である。
【図3】本発明の発電型スイッチの他の例(ドーム型)を示す断面図である。
【図4】コンデンサを付加した状態を示す回路図である。
【図5】従来のスイッチを示す断面図である。
【符号の説明】
【0021】
10 誘電性エラストマー
20 上部電極
30 下部電極
40 基板
50、50a 押さえシート
70 出力端子
80 突起
100 平板型スイッチ
200 ドーム型スイッチ
300 コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の誘電性エラストマーの表裏面に電極を添着してなり、かつ、少なくとも一方の電極側から外部応力を加えて誘電性エラストマーを変形させ、その際に発生した電流を電極間に流すことを特徴とする発電型スイッチ。
【請求項2】
コンデンサが接続されていることを特徴とする請求項1記載の発電型スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−103032(P2010−103032A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275314(P2008−275314)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】