説明

発電装置

【課題】日常動作を利用して発電を行なうこと。
【解決手段】加重で変形する液体用のタンク1とタンク2を、靴内部の踵近傍と足の親指の付け根の辺りに配置する。タンク1とタンク2をパイプ41とパイプ42でつなぎ、パイプ43でパイプ41と42とを接続するとともに、逆止弁51,52,53,54により、パイプ43に常に一方向に液体流動を与える。このパイプ43にタービン3を設けて液体流動により回転させ、回転をプーリー9で発電機6に伝えて発電を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間の生活の動作によって電力を発生する発電装置に関し、特に歩行を行うことで電力を発生させ、携帯電気機器に電力を供給する発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯機器に搭載される機能が増加しその使用時間が伸びていることから、携帯電話や、音楽プレーヤーなどの電源が外出時に切れてしまうことがある。この問題を解決するには、機器に搭載される電池の容量が十分に大きいこと、もしくは外出時にもどこでも充電が出来ること、もしくは発電によって電力を得ることが必要である。
【0003】
しかし、現在の電池技術では電池の容量を大きくしようとすると、電池の大きさと重さが増えてしまい、携帯性が悪くなる。また外出時にどこでも充電をできるようなシステムは今のところない。また、手回し充電器など、携帯性の発電機は存在するが、意識的に力を入れて充電しなければならず疲れる。
【0004】
そこで、意識せずに発電を行うものとして、歩行発電が考案されている。例えば、特許文献1は、踵などの靴内部の稼動部分に圧電素子を配置し、歩行による応力により圧電素子にひずみを発生させ電力を得る方法を開示しており、特許文献2は、歩行運動により靴内部に取り付けられた磁石とコイルとの距離を変化させて電磁誘導により電力を得る方法を開示している。
【0005】
また、歩行運動により、靴内部のハンドルを体重により押し込み、その仕事によって発電機を回転させて電力を得る方法や、靴内部にポンプを配置し、歩行による圧力によって外部から空気を取り込み、タービンを回して発電機を回転させることで電力を得る方法なども考案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−96980号公報
【特許文献2】特許第2870330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の技術はその実用性に問題があった。例えば、圧電素子を用いる方法は、歩行時の違和感がほとんどないことが利点であるが、現状の技術では、靴底に入る大きさで出力はせいぜい数十mWである。例えば携帯電話などの通信機器の消費電力は1W以上であるが、1W以上を出力できるような材料は実用的なものはまだない。
【0008】
また、電磁誘導を用いる方法については、電磁誘導の起電圧は磁石とコイルの距離の変化の微分に比例するが、通常の歩行速度では1W以上の出力は期待できない。
【0009】
ハンドルを体重で押し込む方法は1W以上の出力を期待できるが、効率をあげるためには増速機構が必要である。そのため、従来の方法ではギアを用いているが、ギアから稼動時に騒音が発生するので、歩いているときに常に足元から音がすることとなり、利用者に不快感を与える。
【0010】
また、外部から取り込んだ空気圧でタービンを回す方法は、1W以上の出力を期待でき、増速機構として気体の圧力変化を利用するので騒音も無い。しかし、靴底近くの空気は地面に近いため、塵や、雨水などをとりこみやすい。そのため、タービンなどの稼動部分が磨耗もしくは劣化しやすくなる。また、空気は圧縮性を有する気体であるので、ポンプに体重をかけた際、かけ始めは気体が圧縮し、全体重のエネルギーを気体に伝えることができない。また、エネルギーの一部は熱となってポンプの壁を伝わって失われてしまう。
【0011】
以上のように、現状において無意識に発電をする技術は、得られる電力が小さい、利用者に不快感を与える、壊れやすい、エネルギーロスを生じるなどの問題点を有しており、どれも実用的ではなかった。
【0012】
本発明は、上述した従来技術における問題点を解消し、課題を解決するためになされたものであり、人間の日常生活の何気ない動作の中で意識的な作業なしに携帯電気機器を充電し、携帯電気機器の電池切れを予防することのできる、実用的な発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明に係る発電装置は、外部からの加重によって内容積が変化する2以上の液体用タンクと、前記内容積の変化に基づき前記2以上の液体用タンクの間で液体を流動させる流動経路と、前記流動経路上に設けられ、前記液体の流動によって回転するタービンと、前記タービンによって駆動される発電機と、利用者の動作に伴って前記液体用タンクに対する加重が変化するように前記利用者の体に装着するための装着手段と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、請求項2の発明に係る発電装置は、請求項1に記載の発明において、前記発電機において発電した電力を蓄える蓄電器をさらに備えたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項3の発明に係る発電装置は、請求項1または2に記載の発明において、特定方向に選択的に前記液体を流動させる流動経路を複数備え、該複数の流動経路のいずれを液体が流動する場合であっても、流動する液体は前記タービンを同一方向に回転させることを特徴とする。
【0016】
また、請求項4の発明に係る発電装置は、請求項3に記載の発明において、前記複数の流動経路は、前記液体用タンク間を接続し、逆流防止弁を有するパイプであることを特徴とする。
【0017】
また、請求項5の発明に係る発電装置は、請求項1〜4のいずれか一つに記載の発明において、前記装着手段は靴であり、前記利用者の足の爪先近傍に体重がかかる状態と踵近傍に体重がかかる状態とで異なる液体用タンクに加重が加わることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば発電装置は、利用者の動作によって液体を流動させ、流動の圧力と運動量によってタービンを回して発電するので、人間の日常生活の何気ない動作の中で意識的な作業なしに比較的大きな電力を発電可能な発電装置を得ることができるという効果を奏する。
【0019】
また、請求項2の発明によれば発電装置は、利用者の動作によって液体を流動させ、流動の圧力と運動量によってタービンを回して発電し、得られた電力を蓄積するので、人間の日常生活の何気ない動作の中で意識的な作業なしに比較的大きな電力を発電して蓄積し、携帯機器など任意の装置の電源として利用可能な発電装置を得ることができるという効果を奏する。
【0020】
また、請求項3の発明によれば発電装置は、利用者の動作によって液体を特定方向に流動させてタービンを回すので、人間の日常生活の何気ない動作の中で効率的に発電可能な発電装置を得ることができるという効果を奏する。
【0021】
また、請求項4の発明によれば発電装置は、逆支弁を有するパイプによって特定方向の流動を発生させてタービンを回すので、構成が簡易で効率的に発電可能な発電装置を得ることができるという効果を奏する。
【0022】
また、請求項5の発明によれば発電装置は、利用者の体重移動によって液体を流動させ、流動の圧力と運動量によってタービンを回して発電するので、歩行などの動作を利用して効率的に発電可能な発電装置を得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る発電装置の好適な実施例について詳細に説明する。
【実施例】
【0024】
本発明は、人間の日常生活の中で、外部に圧力をかける動作から電力をえようというものであるが、本実施例では外部に圧力をかける例として、歩行時に足の裏が靴底にかける圧力を利用する方法について説明する。
【0025】
図1および図2は、本発明の実施例である発電装置を有した靴の概要構成を説明する概要構成図である。図1および図2に示したように、靴内部の、歩行時に最も圧力がかかる2点、例えば踵と、足の親指の付け根の辺りにそれぞれやわらかいタンク1とタンク2を配置している。
【0026】
また、パイプ41とパイプ42は、タンク1とタンク2をつないでおり、さらにパイプ43がパイプ41と42とを接続している。そして、逆止弁51,52,53,54により、パイプ43には常に一方向にしか液体は流れない。
【0027】
例えば、タンク1に圧力をかけたときは、逆止弁51,53が閉じて逆止弁52からパイプ43を通り逆止弁54へ液体が流れる。同様に、タンク2に圧力を掛けた場合には、逆止弁52,54が閉じて逆止弁51からパイプ43を通り逆止弁53へ液体が流れる。
【0028】
パイプ43の中点にあるタービン3は、パイプ43に流れる液体の圧力と運動量によって回転をする。プーリー9はタービン3から発電機6へと動力を伝えるものである。プーリーを用いているのは、靴底という狭いスペースにおいて、タービンと発電機が軸を共有しておくスペースが無い場合や、タービンと発電機の回転数を違うものにしたい場合などである。状況によってはプーリーを用いずタービンと発電が軸を共用しても良い。
【0029】
発電機6は、タービンの動力によって交流電流を発生する。また、蓄電素子8は発生した電力を蓄える素子である。充電回路7は、発電機6と蓄電素子8の間にあり、発電機6で発生する交流電流を整流する機能と蓄電素子8の電圧を調整する機能を有する。
【0030】
なお、ここでは発生した電源を一旦蓄電素子8に蓄積する場合の構成を例に説明を行なっているが、例えば発電機6で発生した電流を直接外部に出力するなど、任意の構成とすることもできる。
【0031】
つづいて、図3を参照して発電装置の動作を説明する。人間の一般的な歩行の仕方は、片足をあげ、前に出し、踵から着地し、つま先の方に重心が移動し、指の付け根の辺りに完全に重心が来たとき、そこで全体重を支え、もう片方の足を持ち上げるというような動作を繰り返す。
【0032】
すなわち、歩行の間には、踵のみに体重がかかっている時間と、足の指の付け根辺りのみに体重がかかっている時間がある。本発明はこの2つの位置の圧力差を積極的に利用するものである。
【0033】
まず、踵に体重がかかっているとき、タンク2に圧力がかかり、タンク1には圧力がかかっていないので、その圧力差により、タンク2からタンク1へと液体は移動する。そのときの圧力差と、液体の運動量によってパイプ43の途中にあるタービン3を回すことができる。
【0034】
次に足の指の付け根に体重がかかっているときは先ほどとは逆にタンク1に圧力がかかり、タンク2には圧力はかかっていないので、その圧力差によりタンク1からタンク2へと液体は移動し、タービン3を回すことができる。
【0035】
この時、二本のパイプ41,42に取り付けられた逆止弁51〜54により、タービン3には常に同じ方向か液体が入るため、タービン3は一方向の回転のものでよい。タービン3の動力はプーリー9を介するか、もしくは軸を共有することによって発電機6へと伝えられる。発電された電力は充電回路7を通して蓄電素子8に貯められる。
【0036】
蓄電素子8は、靴の中敷を外すことにより簡単に取り出すことが出来、使用者はその蓄電素子8の電力を携帯機器の使用のために使うことができる。
【0037】
上述してきたように、本発明に係る発電装置は、液体を閉じ込めた二つ以上のタンクと、タンク同士をつなぐパイプと、パイプの中間点に存在するタービンとタービンの力で回転をする同期型発電機とで構成され、この発電装置を体に装着することで日常生活の中の、例えば歩行など、圧力をかける動作により電力を得ることができる。
【0038】
また、二つのタンクの中に閉じ込めた液体によってタービンを回すことにより、内部に塵などの不純物が入りタービンや、タンクなどが劣化することを防ぐことが出来る。この液体は、タービンを回しやすい最適な材料の液体を用いることができ、タービンの効率をあげることができる。
【0039】
さらに、液体の入ったやわらかいタンクは歩行、走行時の足への衝撃を吸収する役割も果たすため、靴本来の足を保護する機能を損なうことも無い。
【0040】
本発明により、既存の携帯機器の電池切れがなくなる。また、これまでその消費電力の高さのため実用的ではなかった携帯機器も本発明と組み合わせることにより市場に出てくることが出来る。また、使用者は発電装置をしようすることによりCO2を排出することにより生成される商用電力、もしくは乾電池などを使用しないことによる電気代の削減と、環境への貢献が出来る。また、電力を得るために積極的に歩行などの運動をするようになり、健康効果も期待できる。
【0041】
そして、本発明は、歩行時、走行時のみならず、重心を移動させるだけでも発電をすることが出来る。例えば、揺れる電車の中では立っているだけで電車のゆれによって重心がずらされ、発電をすることが出来る。
【0042】
なお、本実施例に示した構成はあくまで一例であり、適宜変更して実施することができるものである。例えば、図4に示した構成では、タンク1とタービン3との間を逆止弁を持たないパイプ44で接続し、タービン3とタンク2との間を、逆止弁55をもつパイプ45および逆止弁55をもつパイプ45で接続している。そのため、タンク1からタンク2へ液体が流動する場合の流動経路はパイプ44とパイプ46で構成され、タンク2からタンク1へ液体が流動する場合の流動経路はパイプ44とパイプ45で構成されることとなる
【0043】
同様に、図5に示した構成では、タービン3をタンク2の近傍に設け、逆止弁57をもつパイプ47および逆止弁58をもつパイプ48でタンク1とタンク2との間を接続している。
【0044】
このほか、例えば3以上のタンクを持たせるなど、任意の構成において本発明を適用可能である。また、設置場所も靴の中に限らず、圧力差を生じさせる場所、例えば股関節などに設置し、股関節を曲げたり伸ばしたりする動作によって発電をすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明にかかる発電装置は、人力による発電に有効であり、特に日常動作による発電に適している。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明で提案する発電装置の構成例を説明する説明図である(その1)。
【図2】本発明で提案する発電装置の構成例を説明する説明図である(その2)。
【図3】本発明で提案する発電装置の動作について説明する説明図である。
【図4】構成の変形例について説明する説明図である(その1)。
【図5】構成の変形例について説明する説明図である(その2)。
【符号の説明】
【0047】
1,2 タンク
3 タービン
41〜48 パイプ
51〜58 逆止弁
6 発電機
7 充電回路
8 蓄電素子
9 プーリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの加重によって内容積が変化する2以上の液体用タンクと、
前記内容積の変化に基づき前記2以上の液体用タンクの間で液体を流動させる流動経路と、
前記流動経路上に設けられ、前記液体の流動によって回転するタービンと、
前記タービンによって駆動される発電機と、
利用者の動作に伴って前記液体用タンクに対する加重が変化するように前記利用者の体に装着するための装着手段と、
を備えたことを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記発電機において発電した電力を蓄える蓄電器をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
特定方向に選択的に前記液体を流動させる流動経路を複数備え、該複数の流動経路のいずれを液体が流動する場合であっても、流動する液体は前記タービンを同一方向に回転させることを特徴とする請求項1または2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記複数の流動経路は、前記液体用タンク間を接続し、逆流防止弁を有するパイプであることを特徴とする請求項3に記載の発電装置。
【請求項5】
前記装着手段は靴であり、前記利用者の足の爪先近傍に体重がかかる状態と踵近傍に体重がかかる状態とで異なる液体用タンクに加重が加わることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−309228(P2007−309228A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−139334(P2006−139334)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】