説明

白色光蛍光材料及びその製造方法

【課題】低電圧での励起により高純度及び高い安全度の白色光を発生させる白色光蛍光材料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】カルシウム化合物、アルミ化合物、ケイ素酸化物、二価のユーロビウム化合物、及び二価のマンガン化合物を取るステップ110と、カルシウム化合物、アルミ化合物、ケイ素酸化物、二価のユーロビウム化合物、及び二価のマンガン化合物を均一的混合して混合物を形成するステップ120と、混合物を高温炉に入れると同時に還元雰囲気を提供するステップ130と、高温炉の温度を焼結温度まで上げ混合物を焼結して化学式のけい酸アルミナ化合物を形成するステップ140と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光材料及びその製造方法に関し、特に白色光蛍光材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電界放出ディスプレイ(field emission display、FED)は、平板フラットディスプレイに属する。電界放出ディスプレイの構造は、前板(陽極)及び基板(陰極)からなり、中間に空間支持部を備えると同時に、両平板の間を真空状態(略10−8トール)にならしめる。前板は、酸化インジウム錫ガラス基板で、その表面に蛍光材料を塗付けて、基板は、電界放出マトリクスからなり、電界放出ディスプレイの各画素の何れかに対応する電界放出要素を有する。電界放出ディスプレイが作動する際に、陰極は、極めて低いゲートバイアスにおいて先端放電を発生し、放出された低エネルギー電子が陽極加速を受けて蛍光粉を衝撃して発光する。電界放出ディスプレイの作動原理によりその作動電圧(<5kv)が従来の陰極線管(cathode ray tube、CRT)より遥かに低く、そして、電界ディスプレイは従来のフラットディスプレイに比べて、その厚さが大きく減少され、さらに体積が小さく、重量も軽く、視覚幅及びフルカラーなどの優点を備えている。
【0003】
ディスプレイの影像は、蛍光材料を介して表示しなければならないため、電界放出ディスプレイの蛍光材料の性質は、全ディスプレイの性能に対する影響が極めて重要である。今までの電界放出ディスプレイが使用する蛍光材料の殆どは、赤色、緑色、青色の三色の蛍光粉または両可視光が互いに補償可能に放出される蛍光粉を採用して、適切な比例的調和により白色光を発生する。
蛍光粉の電子と光子とのエネルギー転換効率及び劣化程度が異なっているため、色彩上の差が生じやすく、自然的白色光を形成することができないが、高純度の白色光蛍光を放出できる材料を使用することによって、電界放出ディスプレイにおける影像の品質の向上が図れる。
【0004】
また、電界放出ディスプレイの作動電圧が低く、入射電子は、蛍光材料粒子の表面の僅か数ナノメータの所に達しているため、蛍光材料の発光効率及び解像能力が低下され、作動電圧の低い蛍光材料は電界放出ディスプレイに必要であることは明らである。殆どの電界放出ディスプレイの作動電圧は略5kvである。今まで、これより低い電圧においてより好ましい発光効率または色をもつ蛍光材料が未だに見出されていない。もし優れた性能をもった低圧電界放出蛍光材料を見つけることができれば、作動電圧をさらに低下させることによって、電界放出ディスプレイの製造中にあった問題(例えば、真空支持体の問題など)がより解決しやすく、ディスプレイの軽量化また小型化に有利である。そのために、低電圧における、より好ましい発光効率及び色を有する白色光蛍光材料の開発は、現に重要な課題である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、白色光蛍光材料及びその製造方法を提供する目的とし、低電圧での励起により高純度及び高い安全度の白色光を発生させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明が開示する白色光蛍光材料は、化学式である(Ca1xx)Al2Si28のけい酸アルミナ化合物を含み、Mは金属イオンで、二価のユーロピウムイオン(Eu2+)及び二価のマンガンイオン(Mn2+)を含み、前記Xの数値範囲は、電子ビームを励起し、白色光蛍光材料を励起して白色光を発生させることができる。またけい酸アルミナ化合物における放射ピークの波長範囲が425nm(青色光)である二価のユーロビウムイオンと、放射ピークの波長が570nm(黄色光)である二価のマンガンイオンとを適宜に融合して高純度の白色光を発することができる。
【0007】
さらに白色光蛍光材料の製造方法を含み、ステップとして、カルシウム化合物、アルミ化合物、ケイ素酸化物、二価のユーロビウム化合物、及び二価のマンガン化合物を取るステップと、カルシウム化合物、アルミ化合物、ケイ素酸化物、二価のユーロビウム化合物、及び二価のマンガン化合物を均一的混合して混合物を形成するステップと、混合物を高温炉に入れると同時に還元雰囲気を提供するステップと、高温炉の温度を焼結温度まで上げ混合物を焼結して化学式のけい酸アルミナ化合物を形成するステップと、を含む。
【0008】
励起電子ビームの電圧範囲は0.1〜5千ボルト(Kv)であってもよい。
白色光蛍光材料が発する高純度の白色光の発光色調は、CIE色度座標(x、y)において、xの数値範囲は0.25≦x≦0.36、yの数値範囲は0.25≦y≦0.36であってもよい。
以下、本発明の詳しい内容及び技術は、図式を合わせて説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一実施例による白色光蛍光材料の製造方法を提供する。固態焼結法を利用して化学式(Ca1xx)Al2Si28のけい酸アルミナ化合物を形成し、Mは金属イオンで、二価のユーロピウムイオン(Eu2+)及び二価のマンガンイオン(Mn2+)を含み、前記Xの数値範囲は0.001≦x≦0.8を満たす。
図1に、本発明の一実施例による白色光蛍光材料の製造方法のフローチャートを示す。ステップとして、0.89モルのカルシウム、1モルのアルミナ、2モルの二酸化ケイ素、0.005モルの酸化ユーロビウム、及び0.1モルの炭酸マンガンを用い(ステップ110)、これらのカルシウム、アルミナ、二酸化ケイ素、酸化ユーロビウム、及び炭酸マンガンを均一に混合して混合物を形成する(ステップ120)。これらの混合物を高温炉に入れ、さらに水素及びアルゴンの還元雰囲気を提供する(ステップ130)。最後に、高温炉内の温度を摂氏1300°ないし1500°まで昇温させ、さらに3ないし7時間維持して混合物を焼結する(ステップ140)。それにより、化学式(Ca1xx)Al2Si28のけい酸アルミナ化合物を形成することができる。
【0010】
本発明の一実施例における白色光蛍光材料を高真空度10‐5Paの陰極射線発光測量システムに置き、それぞれ異なった7、9、18、28、および46μA/cm2の電流密度の励起電子ビームで励起させ、相対的陰極射線発光輝度を測量する。前記の励起電子ビームの電流密度は1〜100μA/cm2である。図2に、本発明の一実施例における陰極射線発光輝度と電流密度との対応図を示す。そこで、18μA/cm2の電流密度で本発明の一実施例の白色光蛍光材料を励起することにより最も優れた陰極射線発光輝度が得られることが分かった。
【0011】
さらに、18μA/cm2の電流密度で異なる電圧に合わせて本発明の一実施例の白色光蛍光材料を励起させると共に、その陰極射線発光スペクトルを測量するため、その電圧をそれぞれ0.5、0.8、1、1.5、2、3、4、及び5kvとした本発明の一実施例における陰極射線発光スペクトル図を図3に示す。図には両セットの著しい425nm及び570nmの放射ピーク波長を備える。電子ビームの励起された電圧の増加次第、陰極射線の発光強度も次第に増加される。けい酸アルミナ化合物における二価のユーロビウムイオン放射ピーク波長は425nm(青色光)で、二価のマンガンイオン放射ピーク波長は570nm(黄色光)で、何れも適当に融合することによって高純度の白色光を発生させることができる。本発明の一実施例において、励起される電子ビームの電圧範囲は0.1〜5千ボルト(kv)。また、本発明の一実施例が励起する白色光の発光色調は、CIE色度座標(x、y)において、xの数値範囲は0.25≦x≦0.36、yの数値範囲は0.25≦y≦0.36である。
以上のように、本発明のより好ましい実施例を前記のように開示したが、本発明を限定するものではなく、本発明の要旨及び技術範囲内を離脱しない前提において、如何なる変動または潤飾することができるので、本発明の保護しようとする範囲は後記の特許請求の範囲に限定するものに準ずるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例による白色光蛍光材料の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明の一実施例における陰極射線発光輝度と駆動電流の対応図である。
【図3】本発明の一実施例における陰極射線発光スペクトル図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(Ca1xx)Al2Si28のけい酸アルミナ化合物を含み、Mは金属イオンであって、二価のユーロピウムイオン(Eu2+)及び二価のマンガンイオン(Mn2+)を含み、前記Xの数値範囲は、電子ビームを励起し、白色光蛍光材料を励起して白色光を発生させることが可能であることを特徴とする白色光蛍光材料。
【請求項2】
前記電子ビームを励起する電圧範囲は0.1〜5KVであることを特徴とする請求項1に記載の白色光蛍光材料。
【請求項3】
前記電子ビームを励起する電流密度は1〜100μA/cm2であることを特徴とする請求項1に記載の白色光蛍光材料。
【請求項4】
前記白色光の発光色調のCIE色度座標(x、y)における、xの数値範囲は0.25≦x≦0.36、yの数値範囲は0.25≦y≦0.36であることを特徴とする請求項1に記載の白色光蛍光材料。
【請求項5】
白色光蛍光材料の製造方法において、ステップとして、
カルシウム化合物、アルミ化合物、ケイ素酸化物、二価のユーロビウム化合物、及び二価のマンガン化合物を取るステップと、
前記カルシウム化合物、前記アルミ化合物、前記ケイ素酸化物、前記二価のユーロビウム化合物、及び前記二価のマンガン化合物を均一に混合して混合物を形成するステップと、
混合物を高温炉に入れるとともに還元雰囲気を提供するステップと、
混合物が焼結するように高温炉の温度を焼結温度まで上昇させ化学式(Ca1xx)Al2Si28のけい酸アルミナ化合物を形成するステップと、
を含み、Mは金属イオンであって、二価のユーロピウムイオン(Eu2+)及び二価のマンガンイオン(Mn2+)を含むことを特徴とする白色光蛍光材料の製造方法。
【請求項6】
前記カルシウム化合物は0.89モルの炭酸カルシウムであって、前記アルミ化合物は1モルのアルミナであって、前記けい素酸化物は2モルの二酸化ケイ素であって、前記二価のユーロビウム化合物は0.005モルの酸化ユーロビウムであって、二価のマンガン化合物は0.1モルの炭酸マンガンであることを特徴とする請求項5に記載の白色光蛍光材料の製造方法。
【請求項7】
前記xの数値範囲は0.001≦x≦0.8を満たすことを特徴とする請求項5に記載の白色光蛍光材料の製造方法。
【請求項8】
前記還元雰囲気は水素及びアルゴンを含むことを特徴とする請求項5に記載の白色光蛍光材料の製造方法。
【請求項9】
前記焼結温度の範囲は1300℃から1500℃であることを特徴とする請求項5に記載の白色光蛍光材料の製造方法。
【請求項10】
前記高温炉を前記焼結温度まで上昇させ、前記焼結温度を3時間〜7時間維持して前記混合物を焼結させることを特徴とする請求項5に記載の白色光蛍光材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−161984(P2007−161984A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−123741(P2006−123741)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(390023582)財団法人工業技術研究院 (524)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】195 Chung Hsing Rd.,Sec.4,Chutung,Hsin−Chu,Taiwan R.O.C
【Fターム(参考)】