説明

白色導電性プライマー塗料組成物、それを用いた塗装方法、及び該塗装方法で塗装された塗装物品

【課題】 本発明は、ポリオレフィン基材上で、良好な導電性に加えて、優れた付着性、耐水性を有する白色導電性プライマー塗料組成物を提供する。
【解決手段】 塩素化ポリオレフィン樹脂を含有する樹脂(A)、カップリング剤で処理された白色導電性フィラーであって、カップリング剤の表面被覆率が10〜90%であるフィラー(B)、溶剤(C)からなり、樹脂(A)の固形分100質量部に対し、(B)が10〜150質量部である白色導電性プライマー塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン基材上に塗装する、導電性に優れ、耐水性にも優れた白色導電性プライマー塗料組成物に関する。
さらに、本発明は、該白色導電性プライマー塗料組成物を用いた塗装方法、並びに、該方法により塗装された物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン基材に、上塗り塗料を静電塗装する方法として、導電性カーボンブラックに代表される導電性を有する顔料を配合した導電性プライマーが広く用いられている。近年、意匠性や色調が重視されるに伴い、特に、淡彩色メタリック塗料には、導電性カーボンに代わる白色導電性フィラーが用いられている。白色度を大きく低下させない導電性フィラーとして、ウィスカー表面に例えば酸化錫等の導電性金属酸化物を被覆したもの、フレーク状のマイカ表面に酸化錫やニッケルを被覆したもの(例えば、特許文献1)や酸化錫、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、錫ドープ酸化インジウム(ITO)で基材を被覆したもの(例えば、特許文献2)などが知られている。しかしながら、導電性の良好な針状、繊維状のこれらの白色導電性フィラーを用いた塗料組成物では、耐水性の良好な塗膜を得ることは困難であり、耐水性の良好な非導電性顔料との併用や塗料配合中の樹脂に制約があるなどの問題があった。
【0003】
また、導電性ポリマーの耐水性を付与する方法として、スルホン酸基及び/又はカルボキシル基を有する水溶性導電性ポリマー、溶媒及びシランカップリング剤を含有する静電塗装用架橋性導電性プライマー組成物が知られている(例えば、特許文献3)。しかしながら、導電性フィラー、特に、白色導電性フィラーに対する耐水性効果についての示唆はなく、また、単に、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、ジルコアルミカップリング剤等のカップリング剤やシリコンオイルなどを、白色導電性フィラーを含む塗料中にブレンドしても耐水性の効果はない。
【0004】
【特許文献1】特開2004−262988号公報
【特許文献2】特開2004−217872号公報
【特許文献3】特開2003−039010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ポリオレフィン基材上で、良好な導電性に加えて、優れた付着性、耐水性を有する白色導電性プライマー塗料組成物、それを用いた塗装方法、及び該塗装方法により得られる塗装物品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、塩素化ポリオレフィン樹脂を含有する樹脂(A)、カップリング剤で処理された白色導電性フィラーであって、カップリング剤の表面被覆率が10〜90%であるフィラー(B)、溶剤(C)からなり、樹脂(A)の固形分100質量部に対し、白色導電性フィラー(B)が10〜150質量部である白色導電性プライマー塗料組成物を提供する。
また、本発明は、上記カップリング剤で処理された白色導電性フィラーが、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤及びジルコアルミカップリング剤から選ばれた少なくとも1種のカップリング剤で処理された酸化スズ及び/又はアンチモンで被覆された酸化チタン又は繊維状チタン酸カリウムのいずれかである白色導電性プライマー塗料組成物を提供する。
【0007】
また、本発明は、上記塩素化ポリオレフィンの塩素含有率が、5〜50質量%であり、重量平均分子量が10,000〜100,000である白色導電性プライマー塗料組成物を提供する。
さらに、本発明は、上記の白色導電性プライマー塗料組成物の塗装方法、及び、その塗装方法により塗装された物品を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のカップリング剤で表面処理を施した白色導電性フィラーを含有した白色導電性プライマー塗料組成物を用いることによって、ポリオレフィン基材上で、良好な導電性に加えて、優れた付着性、耐水性を有する塗膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の白色導電性プライマー塗料組成物に用いられる塩素化ポリオレフィン樹脂を含有する樹脂(A)において、塩素化ポリオレフィン樹脂としては、例えば、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素化エチレン−プロピレン共重合体、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体などを挙げることができる。
塩素化ポリオレフィン樹脂は、塩素含有率が5〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは、15〜35質量%であり、特に好ましくは、18〜25質量%である。塩素化ポリオレフィン樹脂の塩素含有率が5質量%未満の場合には、溶剤への溶解力が低下し、50質量%を超える場合には、塗膜の耐溶剤性と耐候性が不良になるおそれがある。
塩素化ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、10,000〜100,000であることが好ましい。より好ましくは、30,000〜80,000であり、特に好ましくは、50,000〜70,000である。重量平均分子量が、10,000未満の場合は、基材への付着性が劣り、100,000を超える場合は、塗料粘度が高くなり、塗装作業性に支障がでる。
また、本発明に用いる塩素化ポリオレフィン樹脂は、無水マレイン酸などの酸無水物を共重合させて、変性してもよい。
【0010】
本発明の白色導電性プライマーに用いられる塩素化ポリオレフィン樹脂を含有する樹脂(A)において、塩素化ポリオレフィン樹脂に加えて、例えば、非塩素化ポリオレフィン樹脂、メラミン樹脂、ブロック化イソシアネート樹脂、エポキシ樹脂等のその他の樹脂を併用することができる。
塩素化ポリオレフィン樹脂とその他の樹脂との樹脂固形分比は、100/0〜50/50(質量部)が好ましい。その他の樹脂が、固形分比で50質量部を超える場合には、基材との付着性が劣る。塩素化ポリオレフィン樹脂とその他の樹脂と固形分比は、より好ましい範囲は、90/10〜55/45であり、特に好ましい範囲は、80/20〜60/40である。
【0011】
本発明の白色導電性プライマー塗料組成物において、カップリング剤で処理された白色導電性フィラー(B)は、導電性を有する白色のフィラーを、カップリング剤で表面処理したものである。表面処理に用いるカップリング剤は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、ジルコアルミカップリング剤から選ばれた少なくとも1種であり、それらで表面処理を行なうことにより、白色導電性フィラーの導電性を維持しながら、フィラー自身の耐水性を向上させることができる。白色導電性プライマー層中では導電性フィラー同士が互いに接触して、塗膜面全体として導電性が付与される。
【0012】
本発明に用いられるシランカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等があげられる。
【0013】
本発明に用いられるチタンカップリング剤としては、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリオクタイノルチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート等があげられる。
【0014】
本発明に用いられるアルミニウムカップリング剤としては、アセトアルコシキアルミニウムジイソプロピレート等があげられる。
【0015】
本発明に用いられるジルコアルミカップリング剤としては、キャブドンケミカル社製のキャブコモッドM、キャブコモッドMPG、キャブコモッドMPM等があげられる。
白色導電性フィラーとしては、酸化スズ及び/又はアンチモンで被覆された酸化チタン又は繊維状チタン酸カリウムのいずれかが好ましい。
【0016】
白色導電性フィラーに、カップリング剤で表面処理を行う場合、フィラーの表面全体をカップリング剤で被覆させてしまうと、導電性は発現せず、また処理量が、極端に少ないと耐水性が向上しない。
カップリング剤は、理論値として表面被覆率が10〜90%になるようにカップリング剤を加え、好ましくは被覆率が30〜85%なるように、さらに好ましくは50〜80%になるよう加えることが望ましい。
処理に必要なカップリング剤量は、目標とする表面被覆率から、以下の式により算出することができる。
カップリング剤量(g)={フィラー(g)×フィラーの比表面積(m/g)/カップリング剤の最小被覆面積(g/m)}×表面被覆率
【0017】
本発明に用いられる白色導電性フィラーのカップリング剤による表面処理方法としては、例えば、特開平5−303238号公報に記載されているような公知の方法を用いることができる。例えば、カップリング剤を溶解した溶液に、導電性フィラーを分散させ、一定温度で一定時間撹拌混合後、フィラーを濾過等の手段で分離除去し、乾燥する方法(溶液浸漬法)や、カップリング剤を溶解した溶液を、導電性フィラーに噴霧し乾燥する方法(噴霧乾燥法)などを用いることができる。
溶液浸漬法において、表面処理に用いられる溶剤としては、シクロヘキサン、メチルアルコール、エチルアルコール、トルエン、イソプロピルアルコール、アセトン、ベンゼン等カップリング剤に対して不活性であり、乾燥除去しやすいものであれば、特に限定されない。
また、表面処理温度は、使用する溶剤やカップリング剤により異なるが、10〜80℃が好ましい。80℃より高いと溶剤が蒸発してしまい、表面処理を行うことができず、また10℃より低いと、表面処理が十分に行えない。
また、表面処理時間は、0.01〜12時間が好ましいが、より好ましくは0.5〜5時間である。0.01時間より短いと、表面処理が十分に行えない。また12時間より長いと溶剤が蒸発してしまい表面処理が行えなくなる。
【0018】
噴霧乾燥法においては、溶液浸漬法で使用する同種類の溶剤を使用することができるが、カップリング剤の使用量の範囲内で、溶液浸漬法で使用する濃度の半分程度の低い濃度の溶液を使用することができる以外は、溶液浸漬法と同様の条件を適用することができる。
【0019】
本発明の白色導電性プライマー塗料組成物に用いられる溶剤(C)としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤等、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、ブチルセロソルブなどのエーテル系溶剤、又はこれらの2種以上の混合物などの有機溶剤があげられる。溶剤の量は、塗料の粘度が塗装できる適当な範囲になるように選定すればよい。
【0020】
本発明の白色導電性プライマー塗料組成物を、ポリオレフィン基材に塗装することにより、良好な導電性に加えて、優れた付着性と耐水性を有することができる。
本発明のプライマー塗料組成物を塗装するポリオレフィン基材を構成する成分としては、例えば、ポリプロピレン樹脂や、ポリプロピレン樹脂系アロイ材が挙げられる。ポリプロピレン樹脂系アロイ材とは、ポリプロピレン樹脂と、1種以上のポリマーが物理的に混合された複合材料であり、総合的な実用性能に相乗効果を有する材料として知られている。
ポリオレフィン基材が、可塑剤を含有する場合に、本発明の特徴が特に発揮される。また、ポリオレフィン基材には、用途に応じた特性を満足するように、例えば、紫外線吸収剤や、酸化防止剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤、難燃剤、ガラス繊維などの繊維強化剤、無機充填剤等を1種又は2種以上含有することができる。
ポリオレフィン基材の形状は、フィルム、シート、板、立体など種々の形状が挙げられる。
【0021】
本発明において、導電性プライマー塗料組成物の塗装方法に特に制限はなく、例えば、エアースプレー塗装、エアレススプレー塗装、低圧霧化スプレー塗装(HVLP)などにより塗装することができる。塗膜の厚さにも特に制限はないが、塗膜に導電性を発揮させるためには、硬化塗膜厚が5〜15μmであることが好ましい。
【0022】
本発明の白色導電性プライマー塗料組成物を塗装して得られる塗膜の上に、上塗り塗料を塗装することができる。塗装する上塗り塗料は、ソリッドカラー塗料であっても、また、メタリックベースコート塗料とクリヤー塗料との組合せであってもよいが、上塗り塗料は淡彩色であることが好ましい。
ソリッドカラー塗料用として用いられる樹脂は、ポリウレタン樹脂系塗料が一般的に用いられるが、素材を変形させない温度で硬化が可能なものであれば、アクリル−メラミン樹脂系塗料などのその他の熱硬化性型樹脂組成物であってもよい。
また、ソリッドカラー塗料用の顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック、黄鉛、黄土、黄色酸化鉄、ハンザエロー、ピグメントエロー、クロムオレンジ、クロムバーミリオン、パーマネントオレンジ、アンバー、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン、ファストバイオレット、メチルバイオレットレーキ、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、ピグメントグリーン、ナフトールグリーンなどがあり、ソリッドカラー塗料には、必要に応じて、各種の添加剤を用いることができる。
【0023】
メタリックベースコート塗料及びクリヤー塗料用として用いられる樹脂は、ソリッドカラー塗料と同様、ポリウレタン樹脂系塗料が一般的に用いられる。
また、メタリックベースコート塗料に用いられる光輝性顔料としては、アルミニウムフレーク、蒸着アルミニウム、酸化アルミニウム、及び、光干渉性顔料として知られているフレーク状のマイカ、酸化チタン被覆マイカ、酸化鉄被覆マイカなどがあり、メタリックベースコート塗料には、必要に応じて、各種の添加剤を用いることができる。
メタリックベースコート塗料とクリヤー塗料を、順次ウェットオンウェットで塗装することにより、塗膜の意匠性、仕上がり外観、耐候性、耐薬品性、耐水性、耐湿性などをより一層向上することができる。
これらの上塗り塗料の塗装方法に特に制限はなく、例えば、エアースプレー塗装、エアレススプレー塗装、静電塗装などにより塗装することができるが、本発明の白色導電性プライマー塗料を用いた場合には、静電塗装を用いることが好ましい。上塗り塗膜の厚さにも特に制限はないが、硬化塗膜厚が、ソリッドカラーの場合には、20〜60μm、メタリックベースベースコートの場合には、10〜30μm、クリヤーコートの場合には、15〜50μmであることが好ましい。
【0024】
これらの上塗り塗料は、常温で塗膜を硬化乾燥させることもできる。しかし、塗膜を十分に硬化させるためには、硬化温度70〜150℃に加熱することが好ましい。硬化温度が70℃未満であると、硬化が十分に進まないおそれがある。硬化温度が150℃を超えると、素材の変形や塗膜の黄変、塗膜が固く脆くなるなどの塗膜物性低下を招くおそれがある。硬化時間は、硬化温度により変化し、硬化温度70〜150℃では、30〜60分が適当である。
【実施例】
【0025】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において、評価は下記の方法にて行った。
≪試験方法および評価≫
(導電性)
導電性の測定法を、図1を用いて説明する。長さが約15cmのプラスチック基材の両端の各々に、市販のアルミニウムテープを巻き付け、測定器の端子間距離が10cmになるように、両端のアルミニウムテープ上に予め印を付けておく(A)。次に、アルミニウムテープの上から、基材との境を約3〜5mm残して、マスキングテープを巻き付けた後(B)、導電性プライマー塗料をエアースプレーにて塗装する(C)。塗装直後、マスキングテープを速やかに剥がし、両端のアルミニウムテープ部分の予め付けておいた印の上に、共立電気計器(株)製「3レンジ絶縁抵抗計 モデル 3301」の端子を取り付け、塗装後1分後の抵抗値を測定する(D)。単位は、「×106Ω」である。
導電性の評価は、次のようにした。
○・・・抵抗値 100×106Ω未満
△・・・抵抗値 100×106Ω以上、2,000×106Ω未満
×・・・抵抗値 2,000×106Ω以上
【0026】
(素材との付着性)
上塗り塗装された塗膜に、2mm間隔の100マスが得られるように、カッターナイフで縦横11本の切れ目を入れ、セロハンテープにて剥離の状態を、次のように評価する。
○・・・塗膜のハガレがない状態(碁盤目表記では 100/100)
△・・・塗膜の一部にハガレがある状態(碁盤目表記では 85〜99/100)
×・・・塗膜の殆どにハガレがある状態(碁盤目表記では 0〜84/100)
【0027】
(耐湿性)
上塗り塗装された塗装板を、50℃、湿度95%の恒温恒湿槽内に入れ、240時間放置する。放置後、塗装板を取り出し、塗膜の外観異常や、ふくれの程度を調べる。また、取り出してから24時間後に上記と同様の方法で、耐湿試験後の付着性の試験を行い、剥離の状態を次のように評価する。
○・・・塗膜に異常がない状態
△・・・塗膜にチカチカや、僅かに外観異常がある状態
×・・・塗膜にふくれや著しい外観異常がある状態
【0028】
≪カップリング処理白色導電性フィラーの製造例≫
カップリング処理白色導電性フィラー(1)の製造
エチルアルコール250ml中にシランカップリング剤ビニルトリエトキシシランKBE1003(信越化学工業(株)製、商品名、最小被覆面積410m/g)2.6質量部を混合し、TKホモジナイザー(特殊機工業社製)で約10分間撹拌して均一に分散させた。得られた分散液に白色導電性フィラーFT1000(石原産業、比表面積15m/g)100質量部を投入し、ゆっくりと1時間撹拌した。その後、減圧濾過器で濾過し、50〜60℃で3時間熱風乾燥し、50〜60℃で5時間真空乾燥した後、TKホモジナイザーにより、2000rpmで5分間分散し、本発明によるカップリング処理白色導電性フィラー(1)を得た。白色導電性フィラーのシランカップリング剤被覆率は、70%であった。
【0029】
カップリング処理白色導電性フィラー(2)〜(5)の製造
シランカップリング剤ビニルトリエトキシシランKBE1003の量を0.4質量部、3.3質量部、0.2質量部、3.5質量部に置き換えた以外は、上記の製造例1と同様の方法で製造を行い、それぞれカップリング処理白色導電性フィラー(2)、(3)、(4)、(5)を得た。各々の白色導電性フィラーのシランカップリング剤被覆率は、10%、90%、5%、95%であった。
【0030】
カップリング処理白色導電性フィラー(6)の製造
シランカップリング剤をγ-アミノプロピルトリエトキシシランKBM903(信越化学工業(株)製、商品名、最小被覆面積436m/g)2.4質量部に置き換えた以外は上記の製造例1と同様の方法で製造を行い、カップリング処理白色導電性フィラー(6)を得た。白色導電性フィラーのカップリング剤の被覆率は、70%であった。
【0031】
カップリング処理白色導電性フィラー(7)の製造
シランカップリング剤をγ-グリシドキシプロピルトリエトキシシランKBM403(信越化学工業(株)製、商品名、最小被覆面積280m/g)3.75質量部に置き換えた以外は上記の製造例1と同様の方法で製造を行い、カップリング処理白色導電性フィラー(7)を得た。白色導電性フィラーのカップリング剤の被覆率は、70%であった。
【0032】
カップリング処理白色導電性フィラー(8)の製造
白色導電性フィラーをFT3000(石原産業(株)製、商品名、比表面積5m/g)100質量部、シランカップリング剤ビニルトリエトキシシランKBE1003の量を0.9質量部に置き換えた以外は上記の製造例1と同様の方法で製造を行い、カップリング処理白色導電性フィラー(8)を得た。白色導電性フィラーのカップリング剤の被覆率は、70%であった。
【0033】
カップリング処理白色導電性フィラー(9)の製造
白色導電性フィラーをWK600(大塚化学(株)製、商品名、比表面積25m/g)100質量部、シランカップリング剤ビニルトリエトキシシランKBE1003の量を4.3質量部に置き換えた以外は上記の製造例1と同様の方法で製造を行い、カップリング処理白色導電性フィラー(9)を得た。白色導電性フィラーのカップリング剤の被覆率は、70%であった。
【0034】
≪白色導電性プライマー塗料組成物の製造≫
実施例1
分散容器に、塩素化ポリプロピレン樹脂溶液 ハードレンCY9122(東洋化成工業(株)製、商品名;無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素含有率22%、重量平均分子量50,000〜60,000、加熱残分20%)500質量部と、カップリング処理白色導電性フィラー(1)100質量部とを入れ、ガラスビーズにて、粒度が15μm以下になるまで、分散する。目的の粒度になったら、分散を止めて取り出し、白色導電性プライマー塗料組成物を得た。表1(表1、表2)に、樹脂原料、及びカップリング処理された白色導電性フィラーの配合率を固形分換算にて示した。
【0035】
実施例2〜7
カップリング処理白色導電性フィラーを、(2)、(3)及び(6)〜(9)に置き換えた以外は、実施例1と同様にして、表1(表1、表2)に示した組合せの白色導電性プライマー塗料組成物を得た。
【0036】
実施例8
分散容器に、塩素化ポリプロピレン樹脂溶液ハードレンCY9122(東洋化成工業(株)製、商品名;無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素含有率22%、重量平均分子量50,000〜60,000、加熱残分20%)400質量部と、カップリング処理白色導電性フィラー(1)80質量部とを入れ、ガラスビーズにて、粒度が15μm以下になるまで、分散する。取り出した分散ベースに、ブロック化イソシアネート「デスモジュールBL3157(住化バイエルウレタン(株)製;オキシムでブロックされたHDIイソシアヌレート、含有NCO11.2%、加熱残分75%)」26.6質量部を少量ずつ攪拌しながら加え、さらに充分攪拌して、表1(表1、表2)に示した組合せの白色導電性プライマー塗料組成物を得た。
【0037】
実施例9
ブロック化イソシアネート26.6質量部(固形分で20質量部)をエポキシ樹脂「エピコート#828(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、エポキシ当量190、加熱残分100%)」20質量部に置き換えた以外は、実施例8と同様にして、表1(表1、表2)に示した組合せの白色導電性プライマー塗料組成物9を得た。
【0038】
実施例10及び11
塩素化ポリプロピレン樹脂溶液をスーパークロン842LM(日本製紙ケミカル(株)製、商品名;無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素含有率20%、重量平均分子量50,000〜60,000、加熱残分20%)、スーパークロン892L (日本製紙ケミカル(株)製、商品名;無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素含有率22%、重量平均分子量60,000〜70,000、加熱残分20%)置き換えた以外は、実施例1と同様にして、表1(表1、表2)に示した組合せの白色導電性プライマー塗料組成物を得た。
【0039】
比較例1及び2
カップリング処理白色導電性フィラーを、(4)及び(5)に置き換えた以外は、実施例1と同様にして、表1(表1、表2)に示した組合せの白色導電性プライマー塗料組成物を得た。
【0040】
比較例3
カップリング処理白色導電性フィラー(1)の替わりに白色導電性フィラーFT1000を用いた以外は、実施例1と同様の方法で分散を行ない、取り出した分散ベースに、シランカップリング剤ビニルトリエトキシシランKBE1003を2.6質量部加え、充分攪拌して、表1(表1、表2)に示した組合せの白色導電性プライマー塗料組成物を得た。
【0041】
比較例4
カップリング処理白色導電性フィラー(1)の替わりに白色導電性フィラーFT1000を用いた以外は、実施例1と同様の方法で分散を行ない、表1(表1、表2)に示した組合せの白色導電性プライマー塗料組成物を得た。
【0042】
≪塗膜の評価≫
日本ポリケム製ポリプロピレン「PX01A」(70mm×150mm×3mm)を3枚用意し、それぞれ、イソプロピルアルコールにて表面をワイプし、被塗物に付着した汚れやゴミを除去した。次にポリプロピレン板の1枚には、導電性の試験方法で記載した方法で、アルミニウムテープとマスキングテープを巻き付けた。キシレンにて、フォードカップ#4、20℃の条件で11秒になるよう粘度を調整した、実施例1〜11及び比較例1〜4で得た導電性プライマー塗料組成物をエアースプレーにて乾燥塗膜厚が6〜8μmになるよう塗装した。試験片をすぐに、アルミニウムテープを剥がして塗装後の導電性を測定した。結果を表1(表1、表2)に示した。
残りの2枚には、アルミニウムテープとマスキングテープを巻き付けない以外は、上記と同様にして、実施例1〜11及び比較例1〜4で得た導電性プライマー塗料組成物を塗装し、室温にて2分間放置した。次いで、アクリル樹脂系ベースコート塗料「プライマックNo.5600ホワイトソリッド(日本油脂BASFコーティングス(株)製、白色塗料)」を乾燥塗膜厚が15μmになるように静電塗装をし、次に、ウェットオンウェットにて、アクリル樹脂系クリヤー塗料「プライマックNo.5900クリヤー(日本油脂BASFコーティングス(株)製、クリヤー塗料)を乾燥塗膜厚が30μmになるように静電塗装を行い、乾燥機にて20分間120℃の温度をキープして塗装試験板を得た。これらの試験板を用いて、素材との付着性と耐湿性の試験を行った。結果を表1(表1、表2)に示した。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
なお、表1に略号で示した原料は次のとおりである。
A−1:ハードレンCY9122(東洋化成工業(株)製、商品名;無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素含有率22%、重量平均分子量50,000〜60,000、加熱残分20%)
A−2:スーパークロン842LM(日本製紙ケミカル(株)製、商品名;無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素含有率20%、重量平均分子量50,000〜60,000、加熱残分20%)
A−3:スーパークロン892L(日本製紙ケミカル(株)製、商品名;無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素含有率22%、重量平均分子量60,000〜70,000、加熱残分20%)
B−1:デスモジュールBL3175(住化バイエルウレタン(株)製、商品名;オキシムでブロックされたHDIイソシアヌレート、含有NCO11.2%、加熱残分75%)
C−1:エピコート#828(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名;ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、エポキシ当量190、加熱残分100%)
D−1:白色導電性フィラーFT1000(石原産業(株)製、商品名、針状形状、ルチル型結晶形、比表面積15m/g)
E−1:シランカップリング剤ビニルトリエトキシシランKBE1003(信越化学工業(株)製、商品名、最小被覆面積410m/g)
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】基材上の導電性プライマー塗膜の導電性を測定する方法を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 ポリオレフィン基材
4 導電性プライマー塗膜
5 導電性測定器
20、21 アルミニウムテープ
30、31 マスキングテープ
50、51 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素化ポリオレフィン樹脂を含有する樹脂(A)、カップリング剤で処理された白色導電性フィラーであって、カップリング剤の表面被覆率が10〜90%であるフィラー(B)、溶剤(C)からなり、樹脂(A)の固形分100質量部に対し、(B)が10〜150質量部である白色導電性プライマー塗料組成物。
【請求項2】
カップリング剤で処理された白色導電性フィラーが、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤及びジルコアルミカップリング剤から選ばれた少なくとも1種のカップリング剤で処理された、酸化スズ及び/又はアンチモンで被覆された酸化チタン又は繊維状チタン酸カリウムのいずれかである請求項1記載の白色導電性プライマー塗料組成物。
【請求項3】
塩素化ポリオレフィンの塩素含有率が、5〜50質量%であり、重量平均分子量が10,000〜100,000である請求項1記載の白色導電性プライマー塗料組成物。
【請求項4】
ポリオレフィン基材上に、請求項1〜3のいずれかに記載の白色導電性プライマー塗料組成物を用いて塗装することを特徴とする塗装方法。
【請求項5】
ポリオレフィン基材上に、請求項4記載の塗装方法で塗装された物品。

【図1】
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【公開番号】特開2006−232884(P2006−232884A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−45714(P2005−45714)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(599076424)BASFコーティングスジャパン株式会社 (59)
【Fターム(参考)】