説明

白蟻の駆除方法

【課題】 樹木や木造建築物に侵入して直接被害をもたらす白蟻のみならず、巣内の白蟻までも確実に駆除し、かつ環境にも優しい白蟻の駆除方法を提供する。
【解決手段】 白蟻が好む材質の紙に白蟻駆除用の薬液を含浸させて薬液含浸紙4となす。この薬液含浸紙4は薬液を乾燥させたドライ状態のものでもよいし、薬液にて湿潤したウェット状態のものでもよい。この薬液含浸紙4を所要サイズにカットしてピンセット等で樹木1や木造建築物等の白蟻被害個所3a,3b,3cに詰め込み、充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹木や木造建築物における白蟻の駆除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹木や木造建築物から白蟻を駆除する場合には、従来より、白蟻を駆除する個所全体に薬液を散布することが行なわれている(特許文献1参照)。
【0003】
また、既に被害を受けた個所については、その近くにドリル等で穴を開け、被害個所の内部に薬液を注入して木栓をしておくことも行なわれている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−205972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の白蟻駆除方法では、薬液に直接触れた白蟻が駆除されるだけで、薬液の届かない地中等の巣内にいる白蟻までも駆除することはできなかった。このため、薬効がきれると巣より這い出てくる白蟻により、再び被害を受ける場合が多々あった。
【0006】
また、特に街路樹等の樹木に薬液を散布した場合には、薬液の飛散や降雨による流出等の環境に対する悪影響が危惧されるという問題もあった。
【0007】
本発明は、従来のこのような問題を解決するためになされたものであり、樹木や木造建築物に侵入してくる白蟻だけでなく、その近くの地中等に巣くっている巣内の白蟻までも駆除することが可能で、かつ環境にも悪影響を及ぼす虞れのない白蟻駆除方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の白蟻駆除方法は、白蟻が好む材質の紙に白蟻駆除用の薬液を含浸させてなる薬液含浸紙を、樹木や木造建築物等の白蟻被害個所に充填することを要旨とするものである。
【0009】
本発明において、白蟻が好む材質の紙には、セルローズ系の紙を使用するのが良い。この白蟻が好む材質の紙に白蟻駆除用の薬液を含浸させてなる薬液含浸紙は、薬液を乾燥させた状態のものでもよいし、薬液にて湿潤した状態のものでもよいが、特に夏場においては湿気を好む白蟻の習性上、薬液にて湿潤した状態のものを樹木や木造建築物の白蟻被害個所に充填することが推奨される。さらに、上記の薬液含浸紙を樹木や木造建築物の白蟻被害個所に充填する際には、充填し易い大きさにカットしておくのが望ましい。また、紙に含浸させる白蟻駆除用の薬液としてはノバルロンやフィプロニルといった一般的な殺虫剤を使用することができる。
【発明の効果】
【0010】
上記構成よりなる本発明の白蟻駆除方法によれば、樹木や木造建築物の白蟻被害個所に薬液含浸紙を充填しておくと、ここに潜む白蟻がこの紙を食べる。紙を食べた白蟻が巣に帰り、その習性であるグルーミング(舐め合い)や共食い等の他の白蟻との接触行動を行なうことにより、上記薬液含浸紙を直接食べた白蟻はもとより、この白蟻と接触した他の白蟻にも薬効が次々と伝播してゆくことになる。
【0011】
したがって、樹木や木造建築物に被害をもたらす白蟻を営巣中のコロニーごと全滅させることができる。また、薬液の空中飛散や流出の虞がなく、環境に悪影響を与えることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1に示すように、直径約25cmの樹木(ポプラ)1には、白蟻が地中から蟻道2を通って作った3個所の被害個所3a,3b,3cがあり、これらの白蟻被害個所3a,3b,3cに対して、それぞれ本発明法を実施した。
【0014】
すなわち、予め白蟻が好むセルローズ系のロール紙を用意し、これを殺虫剤であるノバルロンを所要量に調整した水溶液中に24時間浸漬させた後、24時間自然乾燥させて白蟻駆除用の薬液含浸紙(ロール紙)4を製作しておいた。この薬液含浸紙4を現場に持ち込み、樹木1のいずれも陥没状となった被害個所3a,3b,3cに充填し易い大きさに手でカットし、カットした薬液含浸紙4をピンセットを用いて上記の各被害個所3a,3b,3cに充填していった。そうして10日間放置しておいた。
【0015】
10日後に、樹木1の各白蟻被害個所3a,3b,3cに充填してある薬液含浸紙4を全て撤去し、樹木1内部の白蟻の活動状況を観察した。その結果、樹木1にあった3個所の白蟻被害個所3a,3b,3cの全てで、白蟻の活動は全く見られなかった。
【0016】
薬液含浸紙4を撤去して、さらに10日後にも、同樹木1の上記被害個所3a,3b,3c内における白蟻の活動状況を再び観察したが、やはりどの被害個所3a,3b,3cにおいても白蟻の活動は全く見られなかった。
【0017】
上記の再観察後、さらに1年経過した時点で、再び同樹木1の被害個所3a,3b,3cについて白蟻の活動状況を観察したが、どの被害個所3a,3b,3cにおいても新たな白蟻の活動は全く見られなかった。しかも、1年前には白蟻の被害を受けて弱っていた樹木1自体も元気に蘇えっていた。
【0018】
このような実施結果から、当該樹木1に被害をもたらした白蟻は、本発明法の実施により、営巣中のコロニーまでもが死滅して、ほぼ完全に駆除されていることが確認できた。
【実施例2】
【0019】
上記の実施例では、薬液含浸紙4には、薬液を含浸後に乾燥させた状態(ドライ状態)のものを使用しているが、これに限るものではなく、含浸させた薬液にて湿潤した状態(ウェット状態)のものを使用して、樹木や木造建築物の白蟻被害個所に充填してもよい。
【0020】
この場合、薬液にて湿潤した状態の薬液含浸紙4としては、予めセルローズ系等の紙を白蟻駆除用の薬液に所要時間浸漬した後、その乾燥を長期間防止するポリプロピレン等の樹脂製の密閉容器または密閉袋に収納したものを用意しておき、現場にてその密閉容器または密閉袋より必要枚数ずつ取り出して使用するのが便利であり推奨される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明法の樹木への実施例を模式的に説明する要部側面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 樹木
2 蟻道
3a,3b,3c 白蟻被害個所
4 薬液含浸紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白蟻が好む材質の紙に白蟻駆除用の薬液を含浸させてなる薬液含浸紙を、樹木や木造建築物等の白蟻被害個所に充填することを特徴とする白蟻の駆除方法。
【請求項2】
白蟻が好む材質の紙は、セルローズ系の紙である請求項1に記載の白蟻の駆除方法。
【請求項3】
薬液含浸紙は、含浸させた薬液を乾燥させた状態のものである請求項1又は2に記載の白蟻の駆除方法。
【請求項4】
薬液含浸紙は、含浸させた薬液にて湿潤した状態のものである請求項1又は2に記載の白蟻の駆除方法。
【請求項5】
薬液含浸紙は、樹木や木造建築物等の白蟻被害個所に充填する際に、充填し易い大きさにカットしておく請求項1又は2、3、4に記載の白蟻の駆除方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−263789(P2008−263789A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106914(P2007−106914)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(592017345)近畿白蟻株式会社 (5)
【Fターム(参考)】