説明

白金ナノコロイド溶液の製造方法、及び白金ナノコロイドを含有する飲料

本発明は、白金ナノコロイドと、ポリアクリル酸塩とを含有する白金ナノコロイド溶液であって、前記白金ナノコロイドが1〜5nmの平均粒径を有するとともに、その90%以上の粒径が0.1〜10nmの範囲に入る白金ナノコロイド溶液及び白金ナノコロイド溶液を含有する飲料である。
また、白金塩と、ポリアクリル酸塩と、アルコールと、水とを含有する溶液を還流した後、前記溶液から前記アルコール及び前記水を一部が残留するように蒸発させ、アルコールを加えた後再度アルコール及び水を蒸発させる白金ナノコロイド溶液の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金ナノコロイドとコロイド保護剤を含有し、優れた活性酸素種除去能力を有する白金ナノコロイド溶液及びその製造方法、並びにかかる白金ナノコロイドを含有する飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内、特にミトコンドリア、ミクロソーム、白血球等においては、スーパーオキシドアニオンラジカル(O・)、過酸化水素(H)、ヒドロキシラジカル(・OH)、及び励起分子種である一重項酸素()等の高い反応性を有する活性酸素種が多く発生する。このような活性酸素種は、生態防御、生化学反応等を含めた生体防御に関与していると言われている。正常な細胞では、これら活性酸素種の生成量は主反応である酸化還元反応の1mol%程度であり、生成した活性酸素種は分解酵素等によって代謝される。
【0003】
人が呼吸により体内に取り入れた酸素の95質量%以上は、通常の代謝過程を経て水になるが、残りの数%はミトコンドリアやミクロソームの電子伝達系において活性酸素種となる。発生した活性酸素種は、多くの場合、スーパーオキシドデスミューターゼ(superoxide dismutase、SOD)、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ等の抗酸化酵素により除去される。
【0004】
しかしながら、これらの抗酸化酵素によっても活性酸素種の全てを体内から除去することはできず、活性酸素種の一部はタンパク質、脂質、核酸等を酸化してしまう。これらの酸化された物質の一部は生体防衛機構により修復されるものの、酸化損傷したままであるものもある。酸化損傷した物質が体内に蓄積することが、疾病や老化に繋がると考えられる。
【0005】
SOD等の抗酸化酵素の発現量は加齢とともに減少すると言われている。老化による活性酸素種代謝能の低下や病気による活性酸素種の過剰生成によって代謝が間に合わず、活性酸素種が蓄積してしまうと、非特異的に脂質等の細胞成分が酸化され、細胞死を引き起こすこともある。活性酸素種の蓄積は老化、生活習慣病、アルツハイマー等多くの病気の要因となる。
【0006】
激しい運動や労働をした場合、多量の酸素を体内に取り入れるために活性酸素種が過剰に発生する上、疲労及び発汗による水分やミネラルの喪失のため、抗酸化酵素の活性が低下し、活性酸素種が体内に多量に蓄積してしまう。ミネラルを含有するスポーツドリンク等を摂取すれば、失われた水分やミネラルを補給することができ、疲労回復の効果がある。しかしながら、従来のスポーツドリンクは活性酸素種の除去能を有さないので、摂取しても体内の活性酸素種を削減する効果はほとんど得られない。このため、運動中にも手軽に摂取でき、体内で活性酸素種を効率よく除去できる飲料が望まれている。
【0007】
ビタミンC、ビタミンE等のビタミン類は活性酸素種除去能を有することが知られている。これらのビタミンを含有する飲料は市販されており、手軽に飲むことができる。しかしビタミン類の消化管からの吸収量には限界があり、所定量を超えた分は腎から排泄されてしまうので、ビタミン含有飲料を多量に摂取してもビタミン類を体内で高濃度に維持することはできない。またビタミンは自身が活性酸素種により酸化され、活性酸素種除去能を失うという欠点を有する。酸化されたビタミンは、酸化剤として生体内のタンパク質、脂質、核酸等を酸化してしまうこともある。このようにビタミン類の体内濃度が高過ぎると、ビタミン類は生体にとってかえって弊害となる。このため、ビタミン類は生体にとって諸刃の剣と言われている。従って、効率的に活性酸素種を除去するために一度に大量のビタミン含有飲料を摂取することは、健康にかえってマイナスとなるおそれがある。
【0008】
特開2002−212102号(特許文献1)は、生体内に陰イオンが豊富な場を形成し、消化管内を通過する間に生体組織内の受容体に負電荷を供給し続けて受容体の生理活性を維持する電気化学的生理活性微粒子を開示している。電気化学的生理活性微粒子としては、界面活性剤によって処理された白金コロイド等が記載されている。また電気化学的生理活性微粒子は清涼飲料水等に添加できるとも記載されている。電気化学的生理活性微粒子の製造方法については、特開2001−79382号(特許文献2)に記載の金属塩還元法等を利用できると記載されている。
【0009】
特開2001−79382号の金属塩還元法は、水に還元剤(エタノール)及び非イオン系界面活性剤(保護コロイド剤)を添加した処理液に、白金等の金属イオンを含有する溶液とpH補償剤(炭酸水素ナトリウム等)を添加し、得られた混合液を加熱攪拌することにより、金属イオンを還元して金属コロイドを生成させるものである。この方法によれば、処理液の温度、金属イオン溶液に対する界面活性剤及び還元剤の添加量等を調整することにより、金属コロイド粒子の凝集が少なく高濃度の金属コロイド溶液を作製することができる。
【0010】
特開2001−79382号に記載されている非イオン系界面活性剤はポリソルベート80だけである。しかしながら、ポリソルベート(Polysorbate)80を保護コロイド剤として含有する白金コロイド溶液は活性酸素種除去能力が十分でないことが分かった。その上、ポリソルベート80自体もわが国では飲料に添加できる食品添加物として許可されていない。このため、保護コロイド剤としてポリソルベート80を含有する白金コロイド溶液は飲料用に満足ではなく、かつ安全性上にも問題がある。
【0011】
特開平10−68008号(特許文献3)は、ポリソルベート80を添加した塩化白金酸溶液に還元剤としてエタノールを加え、これを昇温しながら撹拌した後、限外ろ過膜を用いた透析処理を行ってポリソルベート80を除去し、白金コロイド溶液を得る方法を開示している。特開平10−68008号によれば、この方法により得られた白金コロイド溶液中にはポリソルベート80が残存せず、また白金コロイド粒子自体は負に荷電しているために沈殿しないとされている。
【0012】
しかしながら、ポリソルベート80は一種の保護コロイド剤であり、白金コロイド粒子と例えば会合、吸着、配位等により結合していると考えられ、限外ろ過膜を用いた透析処理を行ってもポリソルベート80の一部は白金コロイド溶液中に残存する。また本発明者の研究によれば、白金コロイド粒子自体は荷電しておらず、保護コロイド剤なしにコロイド状態を維持することができない。
【0013】
さらに研究の結果、特開2001−79382号の方法により作製した白金コロイド溶液中の白金コロイド粒子は広い粒径分布を有するのみならず、粒径分布は製品ロットごとに大きく異なることが分かった。ところが、大粒径の白金コロイドは消化管から体内に摂取されないので、体内の活性酸素種を除去することができない。さらに、大粒径の白金コロイドの割合が多くなると、同じ白金濃度では白金コロイド粒子の総表面積が減少するので、白金コロイド溶液の活性酸素種除去能は必然的に低くなる。また粒径分布が製品ロットごとに大きく異なると、同一白金濃度であっても、活性酸素種除去能に実質的に寄与しない大粒径の白金コロイド粒子の割合が変動し(有効な白金コロイド粒子の割合も変動し)、活性酸素種除去能に著しい差が出るという問題がある。このため、特開2001−79382号の方法では安定して高い活性酸素種除去能を有する白金コロイド溶液を得ることができない。
【0014】
一方、金属コロイドの保護剤としてポリビニルピロリドン、ドデカンチオール、ポリアクリル酸ナトリウム、メチルセルロース等を使用することが知られている。これらの保護剤のうちポリアクリル酸ナトリウムは食品添加物として許可されており、安全性に問題がない。しかし、特開2001−79382号の方法に保護剤としてポリアクリル酸ナトリウムを使用して得た白金ナノコロイド溶液からエタノールを除去すると、べとついた状態になってしまい、水を添加しても均一な白金コロイド溶液にならないことが分かった。
【特許文献1】特開2002−212102号
【特許文献2】特開2001−79382号
【特許文献3】特開平10−68008号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明の目的は、体内の活性酸素種を効率良くかつ安定して除去でき、高い安全性を有する白金ナノコロイド溶液を提供することである。
【0016】
本発明のもう一つの目的は、かかる白金ナノコロイド溶液の効率的な製造方法を提供することである。
【0017】
本発明のさらにもう一つの目的は、かかる白金ナノコロイドを含有する飲料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、(a)狭い粒径分布を有する白金ナノコロイド粒子と保護剤としてポリアクリル酸塩等を含有する白金ナノコロイド溶液は、優れた活性酸素種除去能を有すること、(b)白金ナノコロイド溶液は、白金塩と、ポリアクリル酸塩と、アルコールと、水とを含有する溶液を還流した後、アルコール及び水を一部が残留する程度に蒸発させた後アルコールを添加し、得られたコロイド溶液からアルコール及び水の大部分を蒸発させる方法により作製できること、及び(c)かかる白金ナノコロイド溶液を各種の飲料に添加すると、白金ナノコロイドの良好な分散状態を維持したままで優れた活性酸素種除去能を有する飲料となることを発見し、本発明に想到した。
【0019】
すなわち、本発明の白金ナノコロイド溶液は、白金ナノコロイドと、ポリアクリル酸塩とを含有し、前記白金ナノコロイドが1〜5nmの平均粒径を有するとともに、その90%以上の粒径が0.1〜10nmの範囲に入ることを特徴とする。
【0020】
スーパーオキシドアニオンラジカルに代表される活性酸素種の濃度を半減するのに要する白金ナノコロイドの濃度IC50は、200mmol/L以下であるのが好ましい。ここで「スーパーオキシドアニオンラジカル」はO・により表されるが、文献によってはスーパーオキシドアニオンとも呼ばれるものである。本明細書では、「スーパーオキシドアニオンラジカル」の用語を使用するが、「スーパーオキシドアニオン」も含むものと理解されたい。
【0021】
コロイド保護剤のモル数と前記白金のモル数との比率(R値)は80〜180であるのが好ましい。ポリアクリル酸塩のモル数はモノマー単位に換算したものを用いる。前記ポリアクリル酸塩としてはポリアクリル酸ナトリウムが好ましい。
【0022】
本発明の白金ナノコロイド溶液の製造方法は、白金塩と、ポリアクリル酸塩と、アルコールと水とを含有する溶液を還流した後、前記溶液から前記アルコール及び前記水を一部が残留するように蒸発させ、アルコールを加えた後再度アルコール及び水を蒸発させることを特徴とする。
【0023】
前記アルコールとしては、エタノールを使用するのが好ましい。前記溶液のR値は80〜180であるのが好ましい。
【0024】
本発明の白金ナノコロイド含有飲料は、本発明の白金ナノコロイド溶液を含有することを特徴とする。
【0025】
前記飲料中における前記白金ナノコロイドの含有量は0.001〜100mmol/Lであるのが好ましい。白金ナノコロイド含有飲料は陽イオンを含有し、浸透圧が250〜350mOsm・kg−1であるのが好ましい。前記陽イオンはナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンから選ばれた少なくとも一種であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の白金ナノコロイド溶液の含有する白金ナノコロイドは均一な粒径分布を有し、優れた活性酸素種除去能を示す。このため、体内に摂取することにより活性酸素種を効率よく除去することができる。
【0027】
本発明の白金ナノコロイド溶液の製造方法により、狭い粒径分布を有する白金ナノコロイド溶液を安定して作製できる。このため大粒径の白金ナノコロイド粒子はほとんど存在せず、しかもその割合がほとんど変動しないので、高い活性酸素種除去能を有する白金ナノコロイド溶液を安定して得ることができる。また本発明の白金ナノコロイド溶液の製造方法により、白金ナノコロイドと、ポリアクリル酸ナトリウムとを含有する溶液を作製することができる。白金及びポリアクリル酸ナトリウムは、いずれも食品添加物として安全性が確認されているものである。このため、ポリアクリル酸ナトリウムを含有する白金ナノコロイド溶液は飲料に添加することができる。
【0028】
本発明の白金ナノコロイド含有飲料は、本発明の白金ナノコロイド溶液を含有する。白金ナノコロイドは消化器官で分解されることなく、高い活性酸素種除去能を有したままで体に吸収される。吸収された白金ナノコロイドは体内の活性酸素種を不活性な形態に変換するが、その分解反応によって消費されず、触媒様の反応を示す。このため、白金ナノコロイドは体内で長時間に渡って活性酸素種除去能を示すので、白金ナノコロイド含有飲料を摂取することにより、体内の活性酸素種を効率よく除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】Pt濃度とO・の残存率との関係を示すグラフである。
【図2】NADPH−PAA−Pt水溶液へのPMS添加後の経過時間と水溶液中のO・の残存率との関係を示すグラフである。
【図3】PAA−Pt系におけるPtナノコロイド粒子の粒径分布を示すグラフである。
【図4】NADPH−PVP−Pt水溶液へのPMS添加後の経過時間と水溶液中のO・の残存率との関係を示すグラフである。
【図5】PAA−Pt水溶液及びPAA溶液のO・除去能を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
[1]白金ナノコロイド溶液
本発明の白金ナノコロイド溶液は、白金ナノコロイドと、ポリアクリル酸塩とを含有する。本明細書中、白金ナノコロイド溶液とは白金ナノコロイドの均一な分散液を言う。ポリアクリル酸塩は白金に配位し、白金の親溶媒性を向上させるコロイド保護剤となっている。
【0031】
ポリアクリル酸塩としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウムが好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムが特に好ましい。ポリアクリル酸ナトリウムは食品衛生法で許可された食品添加物であるので、ポリアクリル酸ナトリウムを保護コロイドとすると、飲料に添加しても安全な白金ナノコロイド溶液となる。
【0032】
白金ナノコロイド溶液中のR値は80〜180であるのが好ましく、90〜170であるのがより好ましく、100〜150であるのが特に好ましい。R値とは、コロイド保護剤のモル数と白金のモル数との比率を示す。ただし、ポリアクリル酸塩のモル数はモノマー単位当たりに換算したものとする。R値が80〜180であると、陽イオン等を添加して等張としたイオン溶液中でも、白金ナノコロイドが分散状態を維持することができる。「等張」とは、体液と同じ浸透圧を有する状態を示す。等張液の浸透圧は、具体的には、250〜350mOsm・kg−1程度である。等張液の具体例としては、生理的食塩水(0.9質量%NaCl水溶液)が挙げられる。白金ナノコロイド溶液を飲料に添加する場合、体内に吸収されやすいように飲料を等張液にするのが好ましい。このため等張液に対する白金ナノコロイドの分散性が低いと、白金ナノコロイドが均一に分散した飲料を作製できないので好ましくない。
【0033】
白金ナノコロイドの平均粒径は1〜5nmであり、1〜3nmであるのが好ましく、1.5〜2.5nmであるのが特に好ましい。また90%以上の白金ナノコロイドの粒径が0.1〜10nmの範囲に入り、1〜3nmの範囲に入るのが好ましい。このように白金ナノコロイドの粒径分布が狭く、かつその平均粒径が1〜5nmの範囲であると、体内に取り込まれたときに大きな活性酸素種除去能を発揮すると考えられる。このような狭い粒径分布を有する白金ナノコロイド溶液は、後述する方法によって製造することができる。
【0034】
白金ナノコロイドは、活性酸素種(スーパーオキシドアニオンラジカル、ヒドロキシラジカル、過酸化水素等)に対して高い除去能を有する。活性酸素種を半減するのに要する白金ナノコロイドの濃度IC50は200mmol/L以下であるのが好ましく、180mmol/L以下であるのがより好ましい。ここでIC50は、所定濃度の活性酸素種発生系の水溶液に同量の水を混合して45秒後に活性酸素種の濃度Cwを測定し、同じ活性酸素種発生系の水溶液に同量の白金ナノコロイド溶液を混合して45秒後に活性酸素種の濃度Cptを測定した場合に、Cpt/Cwの比が50%になるのに要する白金ナノコロイド溶液の最低濃度と定義する。発生する活性酸素種は主としてスーパーオキシドアニオンラジカルであると考えられるが、それ以外の活性酸素種(ヒドロキシラジカル、過酸化水素等)も除去できるので、活性酸素種の濃度は全ての活性酸素種の合計濃度を意味する。なお活性酸素種の濃度は直接測定できないので、活性酸素種捕捉体の量の測定値から求める。
【0035】
活性酸素種の一種であるスーパーオキシドアニオンラジカルを例にとって、IC50の測定方法を説明する。スーパーオキシドアニオンラジカルは一般的な方法により発生させることができる。例えばヒポキサンチン(HXN)を反応基質とし、キサンチンオキシダーゼ(XOD)を酸化酵素とした酵素反応による方法や、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)を電子供与体とし、フェナンジメトサルフェート(PMS)を電子転移剤とする化学反応による方法が挙げられる。HXN/XOD系で求めたIC50と、NADPH/PMS系で求めたIC50とが異なる場合、少なくとも一方のIC50が200mmol/L以下であるのが好ましく、両方とも200mmol/L以下であるのがより好ましい。
【0036】
白金ナノコロイドによって失活する活性酸素種としては、スーパーオキシドアニオン(O)、スーパーオキシドアニオンラジカル(O・)、過酸化水素(H)、ヒドロキシラジカル(・HO)、一重項酸素()、過酸化脂質ラジカル、過酸化アルコールラジカル、一酸化窒素(NO)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。下記式(1)に例示するように、白金ナノコロイドは活性酸素種を触媒的に還元し、水を生成させると考えられる。
【化1】

【0037】
[2]白金ナノコロイド溶液の製造方法
(1)白金塩溶液の調製
白金塩と、ポリアクリル酸塩と、アルコールと、水とを含有する溶液を調製する。白金塩として、アルコールと水の混合溶媒に可溶なものを選択するのが好ましい。このような白金塩としては、例えばヘキサクロロ白金酸、ヘキサクロロ白金酸カリウム等が挙げられる。これらのうち、ヘキサクロロ白金酸が好ましい。
【0038】
ポリアクリル酸塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。これらのうち好ましいものは、ポリアクリル酸ナトリウムである。
【0039】
アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、エチレングリコール等が好ましく、特にエタノールが好ましい。エタノールを使用することにより、体内に摂取しても安全な白金ナノコロイド溶液を得ることができる。
【0040】
白金塩を含む水溶液を調製する。白金塩の濃度は2mmol/L以下であるのが好ましく、1〜2mmol/Lであるのがより好ましい。別の容器にコロイド保護剤を水に溶解する。コロイド保護剤溶液の濃度は0.01〜0.5mol/Lであるのが好ましい。
【0041】
白金塩水溶液をコロイド保護剤溶液に加えて、白金塩−コロイド保護剤溶液とする。コロイド保護剤−白金塩溶液のR値は80〜180であるのが好ましく、90〜170であるのがより好ましく、100〜150であるのが特に好ましい。R値が180超であるとコロイド保護剤が水/アルコール混合溶媒に溶解しにくく、均一な溶液が得られ難い。またR値が80未満であると、コロイド溶液に陽イオン等を添加して浸透圧を250〜350mOsm・kg−1とした場合の白金ナノコロイドの塩析効果に対する分散能が低く、凝集して沈殿しやすい。
【0042】
白金塩水溶液を加えた後、白金塩−コロイド保護剤溶液を撹拌する。撹拌時間は30〜40分程度とするするのが好ましい。撹拌後、白金塩−コロイド保護剤溶液にアルコールを加え、反応溶液とする。反応溶液中のアルコール/白金塩のモル比は10〜20であるのが好ましい。
【0043】
(2)還流
反応溶液を還流する。還流は不活性ガス雰囲気中で行うのが好ましい。還流中にエタノール等のアルコールは白金イオンを還元して白金ナノコロイドを生成させ、アルコールは酸化されてアルデヒドになる。
【0044】
反応溶液中の白金塩の量にも依るが、2〜3時間還流するとほぼ全ての白金イオンが白金ナノコロイドになる。白金イオンの消失及び白金ナノコロイドの生成は、反応溶液の紫外可視吸光スペクトルを測定することにより確認することができる。
【0045】
(3)アルコール溶液の調製
還流後の反応溶液を加熱及び/又は減圧することにより、反応溶液の体積が加熱及び/又は減圧前の体積の0.5〜2割程度になるまで、アルコール及び水を蒸発させる。例えば反応溶液をナスフラスコに入れ、ナスフラスコを室温〜30℃の湯浴に浸した状態でフラスコ内を水流アスピレータにより減圧にして60〜90分保持する。加熱及び/又は減圧前の反応溶液が50mLの場合、水流アスピレータにより60分程度減圧し、残量5mL程度とするのが好ましい。
【0046】
アルコール及び水の蒸発により得られた濃縮液にアルコール(例えばエタノール)を加えて撹拌し、白金のアルコールコロイド溶液とする。加えるアルコールの量は、原料として使用した白金塩を基準にしてアルコール/白金塩のモル比が20〜40程度となるように設定するのが好ましい。
【0047】
(4)白金ナノコロイド溶液の調製
白金コロイドのアルコール溶液(分散液)を加熱及び/又は減圧することにより溶媒を蒸発させると、ペースト状の白金ナノコロイドが得られる。この白金ナノコロイドに溶媒を加えて撹拌することにより、均一な白金ナノコロイド溶液を調製できる。溶媒としては、水、水とエタノールの混合物等が挙げられる。ペースト状の白金ナノコロイドにアルコールを加えてアルコール溶液を調製する工程を経ず、反応溶液から直接全ての溶媒を揮発させると、得られる残渣は非常に粘性が高く、べとついた状態になる。このため均一な白金ナノコロイド溶液を得ることができない。これに対し、本発明の白金ナノコロイド溶液の製造方法では、水及びアルコールの蒸発後に再度アルコールを添加して希釈し、再度アルコールを蒸発させる工程を経るので、優れた分散性を有する白金ナノコロイドを製造することができる。
【0048】
本発明の白金ナノコロイド溶液の製造方法と同様の手法を用いて、白金以外の貴金属からなるナノコロイド溶液も調製できる。調製可能なナノコロイド溶液としては、例えば金ナノコロイド溶液及び白金−金ナノコロイド溶液が挙げられる。白金−金ナノコロイドとは、白金と金からなるナノコロイドを言う。白金−金ナノコロイドはコアシェル構造を有し、(a)白金がコアで金がシェルとなっているものと、(b)白金がシェルで金がコアとなっているものがある。白金と同様に金も許可された食品添加物であるので、摂取しても安全である。しかし金ナノコロイド及び白金−金ナノコロイドより、白金ナノコロイドの方が優れた活性酸素種除去能を有する。
【0049】
さらに、ポリアクリル酸ナトリウム以外のコロイド保護剤を含有する貴金属からなるナノコロイド溶液も調製できる。使用可能なコロイド保護剤としてはメチルセルロース、シクロデキストリン、ポリシクロデキストリン及びグルタチオンが挙げられる。メチルセルロースは食品衛生法で許可されており、体内に摂取可能である。またデキストリン及びグルタチオンは通常の食品に含まれている成分であるので、摂取しても安全である。これらのコロイド保護剤は白金及び/又は金の周囲に多少配位するので、白金及び/又は金の親溶媒性をある程度向上させる。しかしこれらを溶液中に併存させても、貴金属からなるナノコロイドを十分に分散させることはできない。すなわちポリアクリル酸ナトリウムを配合しない限り、優れた活性酸素種除去能を有するナノコロイド溶液は得られない。従って、白金ナノコロイドとポリアクリル酸ナトリウムとを含有する白金ナノコロイド溶液は、活性酸素の除去に最も適していると言うことができる。
【0050】
[3]白金ナノコロイド含有飲料
(1)白金の濃度
白金ナノコロイド含有飲料中の白金ナノコロイドの濃度は、0.001〜100mmol/Lであるのが好ましく、0.01〜10mmol/Lであるのがより好ましい。白金ナノコロイドの濃度が0.001mmol/L未満であると、十分な量の白金ナノコロイドを摂取するためには白金ナノコロイド含有飲料を大量に飲まなければならず、効率が悪すぎる。また100mmol/L超としても、添加量の割に抗酸化効果が向上せず、コストの面から望ましくない。
【0051】
(2)白金ナノコロイド以外の成分
(a)無機電解質及び有機酸塩
白金ナノコロイド含有飲料をスポーツドリンクとする場合、無機電解質、有機酸塩、糖質及びビタミン類が配合されているのが好ましい。無機電解質を添加することにより、運動時の発汗により失われる陽イオン及び陰イオンを補給する飲料とすることができる。無機電解質としては一般的なものを使用することができる。例えばNaCl、KCl、MgCl、MgSO、MgCO、CaCl、CaSO、NaSO、KPO、Ca[PO、KHPO、KHPO、CaHPO等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の各種無機酸の塩類が挙げられる。これらの数種を組合せて配合するのが好ましい。コスト及び吸収効率の観点から、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩及びカルシウム塩からなる群より選ばれた少なくとも一種を含有するのがより好ましい。塩素イオン、燐酸イオン等の陰イオンの補給を考慮して、適当な無機酸を配合するのが好ましい。
【0052】
陽イオンは、有機酸塩の形態でも添加することができる。有機酸塩としては、例えばクエン酸、乳酸、L−グルタミン酸、コハク酸、アスパラギン酸、アルギン酸、リンゴ酸、グルコン酸の塩が挙げられる。具体的にはクエン酸ナトリウム、クエン酸カルシウム、乳酸ナトリウム、乳酸カルシウム、コハク酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、L−グルタミン酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸カルシウム、アルギン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、グルコン酸カルシウム等を挙げることができる。
【0053】
無機電解質及び/又は有機酸塩は、陽イオン及び陰イオンを補給するのに必要な量を配合すれば良く、飲料の浸透圧を所望の範囲にするように配合するのが好ましい。配合量は白金ナノコロイド含有飲料の配合に従って広い範囲にわたり得るが、好ましい配合量は白金ナノコロイド含有飲料1000mL中に陽イオンが10〜40mEq程度、より好ましくは20〜60mEq程度である。無機陰イオンは10〜25mEq程度配合するのが好ましい。
【0054】
有機酸成分は有機酸塩類の形態で添加しても良いし、遊離酸の形態で添加しても良い。遊離酸としては、前述の有機酸塩と同じ酸が挙げられる。有機酸の配合量も一般的な飲料と同じで良く、また必要に応じてそれより多く配合しても良いし、少なく配合しても良い。例えば白金ナノコロイド含有飲料1000mL中に1.3〜2.5gとなる割合で配合することができる。
【0055】
(b)甘味料
白金ナノコロイド含有飲料に配合する甘味料は、糖質、合成又は天然甘味剤のいずれでも良い。糖質としてはグルコース、フラクトース等の単糖類、マルトース、蔗糖等の二糖類、デキストリン、シクロデキストリン等の多糖類、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール等の糖アルコールが挙げられる。甘味剤としては、天然甘味剤[ソーマチン、ステビア抽出物(レバウディオサイドA等)、グリチルリチン等]、合成甘味剤(サッカリン、アスパルテーム等)を使用することができる。糖質の配合量は白金ナノコロイド含有飲料100mL中に約1〜15g程度であるのが好ましく、3〜12g程度であるのがより好ましい。甘味剤の配合量は、その甘さによって様々であるが、糖質を配合した場合と同程度の甘さになるように配合するのが好ましい。
【0056】
(c)その他の成分
本発明の白金ナノコロイド含有飲料には、果汁やアミノ酸を配合することができる。果汁としては、例えばグレープフルーツ果汁、リンゴ果汁、オレンジ果汁、レモン果汁、パイナップル果汁、バナナ果汁、ナシ果汁、グレープ果汁等が挙げられる。アミノ酸としては、例えばグルタミン酸ナトリウム、グリシン、アラニン、アスパラギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0057】
上記以外にも各種の添加剤を使用することができる。添加剤としては、ビタミン類、ミネラル類、合成香料及び天然香料等の香料、着色料等や風味物質(チーズ、チョコレート等)、ペクチン酸及びその塩類、アルギン酸及びその塩類等、増粘剤、pH調節剤、安定化剤、保存料、グリセリン類、アルコール類、炭酸飲料用発泡性成分等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上組み合わせて使用しても良い。これら添加剤の配合割合は、通常白金ナノコロイド含有飲料100重量部に対して0〜20重量部程度の範囲から選択されるのが一般的である。
【0058】
ビタミン類としては、水溶性及び脂溶性を問わず、各種のものを使用できる。例えばパルミチン酸レチノール、ビスベンチアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、シアノコバラミン、アスコルビン酸ナトリウム、コレカシフェロール、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、葉酸、ビオチン、重酒石酸コリンが挙げられる。これらの中では、ビタミンE及び/又はビタミンCを添加するのが特に好ましい。ビタミンE及び/又はビタミンCは摂取直後の活性酸素種除去能が大きい。このため、ビタミンE及び/又はビタミンCを飲料に添加することにより、飲料摂取直後の活性酸素種除去能の向上効果を期待できる。
【0059】
ミネラル類としては、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、リン酸二カリウム、リン酸一ナトリウム、グリセロリン酸カルシウム、コハク酸クエン酸鉄ナトリウム、硫酸マンガン、硫酸銅、硫酸亜鉛、ヨウ化ナトリウム、ソルビン酸カリウム、亜鉛、マンガン、銅、ヨウ素、コバルト等を挙げることができる。これらの配合量は必要に応じて適宜決定することができる。
【0060】
(3)白金ナノコロイド含有飲料の性質
白金ナノコロイド含有飲料の浸透圧は250〜350mOsm・kg−1であるのが好ましく、280〜320mOsm・kg−1であるのがより好ましい。浸透圧が250〜350mOsm・kg−1であると、体液の浸透圧に近いので白金ナノコロイドが体内に吸収されやすい。上述の無機電解質や有機酸塩の配合量を調整することにより、飲料の浸透圧を所望の範囲にすることができる。
【0061】
白金ナノコロイド含有飲料の例としては清涼飲料、アルコール飲料(ビール、清酒、ワイン、ウイスキー等)、乳性飲料(厚生省令52号の規定による分類に従う乳飲料、発酵乳、乳酸菌飲料等。ヨーグルト類を含む。)が挙げられる。清涼飲料としてはスポーツドリンク、ニアウオーター、茶(紅茶、緑茶、ウーロン茶等)、JAS規格の定義に基づく分類に従う天然果汁、果汁飲料、果肉飲料、果汁入り飲料、果粒入り飲料等の果実飲料が挙げられる。
【0062】
白金ナノコロイド含有飲料はゲル状飲料でも良い。ゲル状飲料とは、僅かにゲル化した飲料であって、ストロー状の口部を有する可撓性の袋等に充填され、ストロー口から吸い込むものをいう。ゲル状飲料は常温で振とう等の操作を行うことによって容易にゲルが崩壊又は離水し得る。ゲル状飲料は上述の白金ナノコロイド含有飲料の原料を水に溶解させ、ゲル化剤を加えて加熱溶解し、溶融状態で容器に充填して容器内でゲル化させることにより製造することができる。ゲル化剤としては寒天、カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、ジェランガム、ペクチン等を使用することができる。
【0063】
白金ナノコロイド含有飲料の好ましい摂取量は、摂取する人の年齢、摂取の目的、白金ナノコロイドの濃度等により異なる。一般的な運動量の成人の場合、白金ナノコロイド濃度0.1mmol/L程度の飲料を1〜100mL/kg/日程度摂取すると、非常に効果的に体内の活性酸素種を除去することができる。
【0064】
本発明を以下の実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0065】
実施例1
(1)白金ナノコロイド[保護剤:ポリアクリル酸(PAA)ナトリウム、R値:100]の作製
100mlの二口ナスフラスコと、アリーン冷却管と、三方コックとからなる反応システムを組立てた。二口ナスフラスコに、ポリアクリル酸ナトリウム(アルドリッチ社製)0.31gと純水(日本ミリポア株式会社製の純水製造装置milli−Qを使用して精製した水、以下「milli−Q水」という)23mLとを入れて溶解し、スターラーチップで10分間撹拌した。ヘキサクロロ白金酸結晶(HPtCl・6HO、和光純薬工業株式会社製)を蒸留水に溶解し、濃度を1.66×10−2mol/Lとした。二口ナスフラスコ内にこのヘキサクロロ白金酸水溶液を2mL加え、さらに30分間撹拌した。
【0066】
反応システム内を窒素置換した後、エタノール25mLを入れ、窒素雰囲気に保ちながら100℃で2時間還流した。還流後に反応液の紫外可視吸光スペクトルを測定したところ、白金イオンのピークが消失し、金属固体特有の表面プラズモン吸収に因るピークが出現していた。
【0067】
ロータリーエバポレータを使用し、ナスフラスコを30℃の湯浴に浸しながら水流アスピレータによりフラスコ内を減圧にして60分程度保持した。反応液から水とアルコールが蒸発し、フラスコ内の反応混合物が約5mLになったところで、減圧を開放してエタノール50mLを加えた。得られたアルコール溶液の入ったフラスコ内を水流アスピレータにより減圧することによりアルコール溶液から再び溶媒を蒸発させると、ペースト状の白金ナノコロイドが得られた。ペースト状の白金ナノコロイドに33mLのmilli−Q水を加え、ポリアクリル酸ナトリウムを保護剤とした1mmol/Lの白金ナノコロイド溶液(PAA−Pt水溶液)を得た。
【0068】
(2)抗酸化能力の測定
(a)ヒポキサンチン(HXN)/キサンチンオキシダーゼ(XOD)系
(i)活性酸素種捕捉体の量の測定
以下のとおり反応基質としてHXNを使用し、酸化酵素としてXODを使用して、酵素反応により活性酸素種(便宜上O・で表す)を発生させ、PAA−Pt水溶液と反応させた。まず上記工程(1)で作製した1mmol/LのPAA−Pt水溶液をmilli−Q水でそれぞれ25mmol/L、50mmol/L、75mmol/L、100mmol/L、125mmol/L、150mmol/L、及び200mmol/Lに希釈した。各希釈溶液100mLに、HXN水溶液[5.5mmol/L、200mmol/Lリン酸バッファー(pH7.5)、HXN:和光純薬工業株式会社製]50mLと、5,5−ジメチル−1−ピロリン−N−オキシド(DMPO、株式会社同仁化学研究所製)15mLとを溶解した。得られたDMPOを含有するHXN−PAA−Pt水溶液に、XOD溶液[0.2U/mL、200mmol/Lリン酸バッファー(pH7.5)、XOD:ロシュ社製]50mLを加え、DMPOを含有するHXN−PAA−Pt−XOD水溶液とした。なおXODの失活を防ぐため、XODを含む溶液は氷浴で冷却しておいた。
【0069】
HXNとXODの酵素反応により発生したO・によりDMPOは酸化され、DMPO−OOH(DMPOのO・捕捉体)を生成する。HXN−PAA−Pt−XOD水溶液中のDMPO−OOH(DMPOのO・捕捉体)の量を、XOD水溶液の添加から45秒後にESRを用いて測定した。ESRの測定条件は、以下のとおりとした。
測定機器:JES−FA100
FREQ=9423MHz(変動域:+/−1MHz)
FIELD CENTER=335.5mT、Width=+/−5.000mT
POWER=4.000000mW、SWEEP TIME=1.0min
Mn(マーカー):700
【0070】
(ii)O・の残存率の算定
使用したPtコロイド溶液PAA−Ptのそれぞれの濃度において、HXN−PAA−Pt−XOD水溶液中に生成したO・捕捉体の量を測定した。測定結果をコントロールに対する割合として図5に示す。なお図5に示すO・捕捉体の量は、O・捕捉体の量の測定値から下記のブランクを差し引いた値である。
【0071】
ブランクはHXNによるDMPOの酸化反応の程度を見るためのもので、HXNとmilli−Q水との混合物にDMPOを添加した以外、工程(i)と同様にして測定したO・捕捉体の量を表す。
【0072】
さらにHXN−DMPO水溶液にXODを添加した以外工程(i)と同様にして、O・捕捉体量を測定し、この測定値からブランクを差し引いた値をコントロールとした。
【0073】
・の残存率として、各白金コロイド濃度におけるO・捕捉体の量(ブランクを差し引いた後)をコントロールで割った値を求めた。各Pt濃度におけるO・の残存率を図1に黒丸で示す。
【0074】
(b)フェナンジメトサルフェート(PMS)/還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)系
電子供与体としてNADPH(和光純薬工業株式会社製)の水溶液50mL[濃度13.3mmol/L、200mmol/Lリン酸バッファー(pH7.5)]を使用し、電子転移剤としてPMS(和光純薬工業株式会社製)の水溶液50mL[濃度17.6mmol/L、200mmol/Lリン酸バッファー(pH7.5)]を使用した。上記工程(a)と同様にして、各Pt濃度におけるPAA−Pt水溶液100mLにNADPH水溶液を添加し、得られたNADPH−PAA−Pt水溶液にDMPOを添加し、最後にPMS水溶液を添加した。得られたNADPH−PAA−Pt−DMPO−PMS水溶液中のDMPO−OOHの量を、PMS水溶液の添加から45秒後にESRを用いて測定した。なおPMSは光により分解するので、一連の分析操作は暗所で扱った。
【0075】
NADPH水溶液とmilli−Q水のみを混合した水溶液(Pt濃度0mmol/L)にDMPOを添加したときのO・捕捉体の量をコントロールとして、コントロールに対するO・捕捉体量の割合から、水溶液中に残存するO・の割合を各Pt濃度毎に算定した。各Pt濃度におけるO・残存率を図1に白丸で示す。
【0076】
(c)PAA−Pt(PAAを保護剤とする白金ナノコロイド)のIC50の算定(R値:100)
図1からPAA−PtのIC50を求めたところ、HXN/XOD系では135.7±9.0mmol/Lであり、NADPH/PMS系では45.6mmol/Lであった。HXN/XOD系におけるPAA−PtのIC50を表2に示す。
【0077】
いずれの系においても、O・の捕捉量はPAA−Pt水溶液の濃度が高くなるに連れて減少した。NADPH/PMS系ではO・を発生する酸化反応が起こったことが確認されたので、発生したO・はDMPOと反応する前に白金コロイドにより不活性種(最終的には水と酸素)に転化したと考えられる。同様にHXN/XODの酵素反応系でも、白金ナノコロイドが酵素反応自体を阻止した訳ではなく、やはり発生したO・が不活性種に転化したと考えられる。
【0078】
(d)活性酸素種除去能の経時変化の測定
NADPH−PMSの系においてPAA−Ptの活性酸素種除去能の経時変化を評価するために、NADPH−PAA−Pt−PMS水溶液に、それぞれPMS添加の直後、その5分後、10分後、15分後、30分後、45分後、及び60分後に、DMPOを添加し、DMPOの添加から45秒後にESRを用いて水溶液中のDMPO−OOHの量を測定した。これ以外の条件は上記工程(b)と同様であった。得られたO・捕捉体の量の測定値から水溶液中に残存するO・の割合を求めた。NADPH−PAA−Pt−PMS水溶液の調製の際にPMSを添加した時からの経過時間に対するO・の残存率を図2に白丸で示す。
【0079】
実施例2
(3)40〜200の範囲内で種々のR値を有するPAA−Pt水溶液
(a)PAA−Pt水溶液の作製
R値がそれぞれ40、50、75、125、150及び200となるようにポリアクリル酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を配合した以外実施例1の工程(1)と同様にして、PAA−Pt水溶液を作製した。このPAA−Pt水溶液を一晩静置し、分散性を観察した。結果を表1に示す。
【0080】
(b)PAA−Pt含有塩化ナトリウム水溶液の作製
R値がそれぞれ40、50、75、125、150及び200となるようにポリアクリル酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を配合して作成したPAA−Pt水溶液をペースト状にした後、塩化ナトリウム水溶液(0.9質量%)を加えた以外実施例1の工程(1)と同様にして、PAA−Pt含有塩化ナトリウム水溶液を作製した。このPAA−Pt含有塩化ナトリウム水溶液を一晩静置し、分散性を下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
Excellent:均一なコロイド溶液が得られた。
Poor:コロイド粒子が沈殿した。
Impossible:ポリアクリル酸ナトリウムがエタノールに溶解せず、コロイド
液の作製不可。
【0081】
(4)PAA−Pt(R値:40〜200)の平均粒径とIC50の測定
上記工程(3)で得られたPAA−Pt水溶液を使用した以外実施例1の工程(2)と同様にして、各R値のPAA−Pt水溶液のHXN/XOD系におけるIC50を求めた。また各R値のPAA−Pt水溶液のナノコロイド粒子のTEM写真を撮影し、写真中で任意に選んだ200個のPtナノコロイド粒子からPtナノコロイド粒子の平均粒径を求めた。PAA−Pt水溶液のIC50及びPtナノコロイド粒子の平均粒径を表1に示し、Ptナノコロイド粒子の粒径分布を図3に示す。
【表1】

【0082】
R値を200とすると、ポリアクリル酸ナトリウムがエタノールに溶けず、PAA−Pt水溶液を作製できなかった。R値をそれぞれ40、50及び75としてPAA−Pt塩化ナトリウム水溶液を作製すると、作製当初は水溶液中にコロイド粒子が分散するものの、一晩経過するとナノコロイド粒子は沈殿した。R値をそれぞれ100、125及び150とすると、一晩経過後も0.9質量%NaCl水溶液中でPAA−Ptコロイド粒子が均一に分散していた。
【0083】
比較例1
白金ナノコロイドを含有しないポリアクリル酸ナトリウム水溶液を使用した以外実施例1と同様にして、DMPO−OOH(DMPOのO・捕捉体)の量を測定し、溶液中に残存するO・の量を求めた。結果をコントロールに対する割合として図5に示す。なお実施例1と同様に、図5に示すO・の割合は、その測定値からブランクを差し引いた値である。図5に示すように、比較例1のO・の量はコントロールとほぼ同じであった。これから、白金ナノコロイドを含有しないポリアクリル酸ナトリウム水溶液を添加しても、HXN/XOD系で発生したO・は除去されないことが分かる。
【0084】
比較例2
・を発生させるHXN/XOD系水溶液に、ビタミンC(L−アスコルビン酸、和光純薬工業株式会社製、100mmol/L)の水溶液を加えた以外実施例1の(2)(a)と同様にして、ビタミンCのIC50を求めた。結果を表2に示す。
【0085】
またビタミンC(L−アスコルビン酸、100mmol/L)の水溶液にNADPH及びPMSを加えた以外実施例1の工程(2)(d)と同様にしてNADPH−ビタミンC−PMS水溶液を調製し、溶液中に残存するO・の量を求めた。NADPH−ビタミンC−PMS水溶液の調製の際にPMSを添加した時からの経過時間に対するO・の残存率を図2に黒丸で示す。
【0086】
比較例3
・を発生させるHXN/XOD系水溶液に、SOD(抗酸化酵素、わかもと製薬株式会社製WK−013)の水溶液を加えた以外実施例1の工程(2)(a)と同様にして、SODのIC50を求めた。結果を表2に示す。
【表2】

【0087】
表2に示すようにビタミンCは優れた活性酸素種除去能を有するが、図2から明らかなように、その活性酸素種除去能は非常に短時間しか継続しなかった。これは、実施例1のPAA−Ptが触媒的に機能して活性酸素種を失活させるのに対し、ビタミンCは活性酸素種を失活させる反応において消費されてしまうためであると考えられる。
【0088】
表2に示すようにSODも優れた活性酸素種除去能を有するが、酵素であるSODは経口摂取するとペプシン等の消化酵素の働きにより口腔や胃で直ちに分解されてしまう。このようにSODは活性を保ったまま体内に吸収することができないので、生体内で有効に活性酸素種を除去することはできない。
【0089】
参考例1
保護剤としてポリビニルピロリドン(PVP)0.1467gを使用した以外、実施例1の工程(1)と同様にして、PVPを保護剤とする白金ナノコロイド溶液(PVP−Pt水溶液、R値40)を作製した。次に、O・を発生させるHXN/XOD系水溶液にPVP−Pt水溶液を加えた以外実施例1の工程(2)(a)及び(c)と同様にして、PVP−PtのIC50を求めたところ、148.7±23.2mmol/Lであった。
【0090】
このPVP−Pt水溶液を使用し、DMPOの添加をそれぞれPMS溶液の添加直後、5分後、10分後、15分後、60分後、及び75分後に行った以外実施例1の工程(2)(d)と同様にして、O・の捕捉体量を測定し、溶液中に残存するO・の量を求めた。NADPH−PVP−Pt−PMS水溶液の調製の際のPMSの添加からの経過時間に対するO・の残存率を図4に示す。
【0091】
図4から、保護剤をPVPとしても白金コロイドは、長時間に渡って触媒的に活性酸素種を除去する作用を発揮することが分かった。
【0092】
一般に活性酸素種除去能は酸化還元電位と相関があり、酸化還元電位が低いほど活性酸素種除去能が大きいと言える。これを実証するために、milli−Q水を用いて濃度1mmol/LのPAA−Pt水溶液(実施例1)及び濃度1mmol/LのPVP−Pt水溶液(参考例2)を調製し、酸化還元電位を測定した。結果を表3に示す。また比較のために、milli−Q水及び水道水の酸化還元電位の測定値も併せて表3に示す。
【0093】
比較例4
白金を含む清涼飲料水として市販されている「白金玄水」(商品名、協業組合リード製)のPt濃度を測定したところ、2.5mmol/Lであった。O・を発生させるHXN/XOD系水溶液に種々の濃度の白金玄水を加えた以外実施例1の工程(2)(a)と同様にして、白金玄水のIC50を求めたところ、251.4±7.4mmol/Lであった。また白金玄水の酸化還元電位は470±2.3mVであった。結果を表3に示す。
【0094】
比較例5
milli−Q水を用いて白金玄水を白金濃度1mmol/Lに希釈し、得られた希釈白金玄水の酸化還元電位を測定した。結果を表3に示す。
【表3】

【0095】
表3から明らかなように、比較例4の白金玄水(白金濃度2.5mmol/L)や比較例5の希釈白金玄水(白金濃度1mmol/L)の酸化還元電位はmilli−Q水と大差なく、そのIC50は大きかったが、実施例1のPAA−Pt水溶液(白金濃度1mmol/L)の酸化還元電位はmilli−Q水より著しく低く、そのIC50は小さかった。
【0096】
しかしながら参考例1を見ると、酸化還元電位が低いものが全て大きな活性酸素種除去能を有する訳ではないことが分かる。すなわち、参考例1のPVP−Ptは629±0.9mVと高い酸化還元電位を有するにも係わらず、148.7±23.2mmol/Lと小さなIC50を有するのに対し、比較例4の白金玄水は470±2.3mVと参考例1のPVP−Ptより低い酸化還元電位を有するにも係わらず、そのIC50は251.4±7.4mmol/Lと大きかった。
【0097】
参考例2
白金ナノコロイドの酸化還元電位における保護剤の影響を以下のとおり調べた。PAA−Ptの保護剤であるポリアクリル酸ナトリウム(PAA)、PVP−Ptの保護剤であるポリビニルピロリドン(PVP)、及び白金玄水の保護剤と考えられるポリソルベート80の酸化還元電位を測定した。結果を表4に示す。
【表4】

【0098】
PAA−Pt、PVP−Pt及びポリソルベート80−Pt(白金玄水)の系の場合と比較して差は小さいものの、保護剤の酸化還元電位にも白金ナノコロイド系と同様の傾向が認められた。すなわち白金ナノコロイドとしたときの酸化還元電位の大きさはPAA−Pt<白金玄水<PVP−Ptの順であったのに対し、保護剤の酸化還元電位はPAA<ポリソルベート80<PVPの順であった。このことから、白金ナノコロイドの酸化還元電位は保護剤に依存すると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金ナノコロイドと、ポリアクリル酸塩とを含有する白金ナノコロイド溶液であって、前記白金ナノコロイドが1〜5nmの平均粒径を有するとともに、その90%以上の粒径が0.1〜10nmの範囲に入ることを特徴とする白金ナノコロイド溶液。
【請求項2】
請求項1に記載の白金ナノコロイド溶液において、活性酸素種の濃度を半減するのに要する白金ナノコロイドの濃度IC50が200mmol/L以下であることを特徴とする白金ナノコロイド溶液。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の白金ナノコロイド溶液において、前記コロイド保護剤のモル数と前記白金のモル数との比率(R値)が80〜180であることを特徴とする白金ナノコロイド溶液。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の白金ナノコロイド溶液において、前記ポリアクリル酸塩がポリアクリル酸ナトリウムであることを特徴とする白金ナノコロイド溶液。
【請求項5】
白金塩と、ポリアクリル酸塩と、アルコールと、水とを含有する溶液を還流した後、前記溶液から前記アルコール及び前記水を一部が残留するように蒸発させ、アルコールを加えた後再度アルコール及び水を蒸発させることを特徴とする白金ナノコロイド溶液の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の白金ナノコロイド溶液の製造方法において、前記アルコールとしてエタノールを使用することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の白金ナノコロイド溶液の製造方法において、前記溶液中の前記R値を80〜180とすることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載の白金ナノコロイド溶液を含有することを特徴とする白金ナノコロイド含有飲料。
【請求項9】
請求項8に記載の白金ナノコロイド含有飲料において、前記白金ナノコロイドの含有量が0.001〜100mmol/Lであることを特徴とする飲料。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の白金ナノコロイド含有飲料において、陽イオンを含有し、浸透圧が250〜350mOsm・kg−1であることを特徴とする飲料。
【請求項11】
請求項10に記載の白金ナノコロイド含有飲料において、前記陽イオンがナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンから選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする飲料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【国際公開番号】WO2005/023467
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【発行日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513594(P2005−513594)
【国際出願番号】PCT/JP2004/008042
【国際出願日】平成16年6月9日(2004.6.9)
【出願人】(506300730)アプト株式会社 (5)
【Fターム(参考)】