白金錯体、発光材料、有機電界発光素子、表示装置及び照明装置
【課題】青色純度に優れた白金錯体の提供。
【解決手段】下式1で表されることを特徴とする白金錯体。
[R11〜R14は各々独立に置換基;n11及びn12は各々独立に0〜2の整数;n13及びn14は各々独立に0〜3の整数;n11、n12が2のとき、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R11同士、R12同士が互いに連結して環を形成してもよい。n13、n14が2以上のとき、複数存在するR13、R14はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣り合うR13同士、R14同士が互いに連結して環を形成してもよい。S11〜S14は各々独立にH又は置換基;隣り合うR13とS13、R14とS14、S11とS12は互いに連結して環を形成してもよい。ただし、S11〜S14の少なくとも一つは特定の置換基群より選択される置換基を表す。]
【解決手段】下式1で表されることを特徴とする白金錯体。
[R11〜R14は各々独立に置換基;n11及びn12は各々独立に0〜2の整数;n13及びn14は各々独立に0〜3の整数;n11、n12が2のとき、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R11同士、R12同士が互いに連結して環を形成してもよい。n13、n14が2以上のとき、複数存在するR13、R14はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣り合うR13同士、R14同士が互いに連結して環を形成してもよい。S11〜S14は各々独立にH又は置換基;隣り合うR13とS13、R14とS14、S11とS12は互いに連結して環を形成してもよい。ただし、S11〜S14の少なくとも一つは特定の置換基群より選択される置換基を表す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金錯体、それを用いる発光材料、有機電界発光素子、表示装置及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子(以下、「有機EL素子」、単に「EL素子」ともいう)は、低電圧駆動で高輝度の発光が得られることから、近年活発な研究開発が行われている。一般に有機EL素子は、発光層を含む有機層及び該層を挟んだ一対の電極から構成されており、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔が発光層において再結合し、生成した励起子のエネルギーを発光に利用するものである。発光層には発光材料をホスト材料中にドープした、ドープ型素子が広く採用されている。
【0003】
燐光発光材料を用いることにより、素子の高効率化が進んでいる。燐光発光材料としてはイリジウム錯体や白金錯体などが知られており(例えば特許文献1、2)、青色〜緑色発光可能な白金錯体が報告されている。また、フェニルピラゾール四座配位白金錯体においても、例えば特許文献3〜5に青色〜緑色発光可能な白金錯体が開示されている。
【0004】
特許文献6には、特許文献3〜5に開示のものよりも、発光特性(発光波長、輝度、量子収率、駆動電圧等)及び耐久性が良好なフェニルピラゾール四座配位白金錯体が開示されている。しかしながら、特許文献3〜6に開示のフェニルピラゾール四座配位白金錯体を発光層に含有する有機電界発光素子においても、近年求められている青色純度に優れた(CIExy色度座標(0.15、0.15)付近)、発光効率、駆動電圧、消費電力、耐久性の点で十分とは言えないことが判明し、上記白金錯体の構造特定からさらなる改良が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6303238号明細書
【特許文献2】国際公開第00/57676号
【特許文献3】特開2006−232784号公報
【特許文献4】特開2007−096255号公報
【特許文献5】特開2008−037848号公報
【特許文献6】特開2009−096800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有機EL素子は、例えば携帯電話ディスプレイ、コンピュータディスプレイ、自動車の情報ディスプレイ、TVモニターなどの表示装置、及び一般照明を含む幅広い用途に適用され得るが、この際に発光量子効率が高く、青色純度に優れた(CIExy色度座標(0.15、0.15)付近)発光材料が求められている。
しかしながら、特許文献3、5に記載の四座白金錯体は、青色純度が低く、発光波長が青緑色であり、純青色ではなかった。更に、発光効率に問題があった。また、特許文献4、6に記載の四座白金錯体の発光色は純青色に近いが、発光効率の観点から十分なレベルに達していなかった。また、これらの白金錯体で、高効率な有機EL素子を得ようとする場合、ホスト材料中への白金錯体のドープ濃度を増加させる必要があった。しかし、これらの白金錯体のドープ濃度を増加させた場合、平面白金錯体に特有な長波長領域に発光を有するエキシマー発光が顕著に現れた。その結果、色度の低下を招き、所望の発光色を得ることができないという問題を内包していた。
本発明の目的は、上記課題を解決するためになされたものであり、極大発光波長が440〜480nmの範囲にあって、青色発光を示す四座白金錯体に嵩高い置換基を導入することで、ドープ濃度を増加させても青色のCIExy色度を保持したまま、高効率の発光特性を示すことのできる白金錯体の提供にある。
更に、本発明の他の目的は、該白金錯体を用いる発光材料、有機電界発光素子、表示装置及び照明装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、フェニルピラゾール四座配位白金錯体の特定の位置に特定の嵩高い基を有することにより、薄膜状態で青色純度に優れた発光が得られ、かつ発光効率も優れたものとなることを見出したことによりなされたものである。
本発明者らは、下記構成の発明により上記課題を解決した。
【0008】
[1]
下記一般式(1)で表されることを特徴とする白金錯体。
【化1】
[上記一般式(1)中、R11〜R14は各々独立に置換基を表す。n11及びn12は各々独立に0〜2の整数を表し、n13及びn14は各々独立に0〜3の整数を表す。n11、n12が2のとき、2つ存在するR11、R12はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、R11同士、R12同士が互いに連結して環を形成してもよい。n13、n14が2以上のとき、複数存在するR13、R14はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣り合うR13同士、R14同士が互いに連結して環を形成してもよい。S11〜S14は各々独立に水素原子又は置換基を表す。隣り合うR13とS13、R14とS14、S11とS12は互いに連結して環を形成してもよい。ただし、S11〜S14の少なくとも一つは下記置換基群Sより選択される置換基を表す。]
【化2】
[2]
前記白金錯体が、下記一般式(2)で表されることを特徴とする[1]に記載の白金錯体。
【化3】
[上記一般式(2)中、R21〜R25は各々独立に置換基を表す。n21、n22、n24は各々独立に0〜2の整数を表し、n23は0〜3の整数を表し、n25は0〜4の整数を表す。n21、n22、n24が2のとき、2つ存在するR21、R22、R24はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、R21同士、R22同士が互いに連結して環を形成してもよい。n23、n25が2以上のとき、複数存在するR23、R25はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣り合うR23同士、R25同士が互いに連結して環を形成してもよい。S21〜S23は各々独立に水素原子又は置換基を表す。隣り合うR23とS23、S21とS22は互いに連結して環を形成してもよい。ただし、S21〜S23の少なくとも一つは前記置換基群Sより選択される置換基を表す。XはO、S、Se、NR201、SiR202R203又はCR204R205を表す。R201〜R205は各々独立に水素原子又は置換基を表す。]
[3]
前記一般式(2)のXがNR36である[R36は水素原子又は置換基を表す]ことを特徴とする[2]に記載の白金錯体。
[4]
[1]〜[3]のいずれか1項に記載の白金錯体を含有することを特徴とする発光材料。
[5]
一対の電極間に発光層を含む複数の有機層を有し、前記有機層のいずれかが[1]〜[3]のいずれか1項に記載の白金錯体を含有することを特徴とする有機電界発光素子。
[6]
[5]に記載の有機電界発光素子を用いた表示装置。
[7]
[5]に記載の有機電界発光素子を用いた照明装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、薄膜状態での極大発光波長が440〜480nmの範囲にあって青色純度に優れ(CIExy色度座標(0.15、0.15)付近)、発光効率にも優れる白金錯体、及び発光材料を提供することができる。また、青色純度及び発光効率に優れた有機電界発光素子、並びに該有機電界発光素子を用いた表示装置及び照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る有機EL素子の層構成の一例(第1実施形態)を示す概略図である。
【図2】本発明に係る発光装置の一例(第2実施形態)を示す概略図である。
【図3】本発明に係る照明装置の一例(第3実施形態)を示す概略図である。
【図4】実施例5及び比較例4における発光スペクトルを示す図である。
【図5】実施例9及び比較例5における発光スペクトルを示す図である。
【図6】実施例10における発光スペクトルを示す図である。
【図7】実施例12及び比較例6における発光スペクトルを示す図である。
【図8】実施例にて合成した化合物(30)の1H−NMRデータを示す図である。
【図9】実施例にて合成した化合物(29)の1H−NMRデータを示す図である。
【図10】実施例にて合成した化合物(80)の1H−NMRデータを示す図である。
【図11】実施例にて合成した化合物(26)の1H−NMRデータを示す図である。
【図12】実施例にて合成した化合物(97)の1H−NMRデータを示す図である。
【図13】実施例にて合成した化合物(127)の1H−NMRデータを示す図である。
【図14】実施例にて合成した化合物(57)の1H−NMRデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一般式の説明における水素原子は同位体(重水素原子等)も含み、また更に置換基を構成する原子は、その同位体も含んでいることを表す。
本発明において、上記アルキル基等の置換基の「炭素数」とは、アルキル基等の置換基が他の置換基によって置換されてもよい場合も含み、当該他の置換基の炭素数も包含する意味で用いる。
【0012】
本発明書において置換基群Aとは以下のように定義される。
(置換基群A)
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環(ヘテロアリール)基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数2〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられ、具体的にはイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)、ホスホリル基(例えばジフェニルホスホリル基、ジメチルホスホリル基などが挙げられる。)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、以上に説明した置換基群Aから選択される基を挙げることができる。
【0013】
本発明の白金錯体は、一般式(1)で表される。
また、本発明の発光材料は、一般式(1)で表される白金錯体を含有し、本発明の有機電界発光素子は、一対の電極間に発光層を有する有機電界発光素子であって、該発光層に一般式(1)で表される白金錯体を有する。
【0014】
特許文献3〜6に開示のフェニルピラゾール4座配位白金錯体は、平面性の高い構造であるため、白金錯体間のπ−π相互作用によるスタッキングや白金−白金間相互作用が生じる。これらの相互作用が存在する錯体では一般にドープ濃度の増大に伴い凝集体を形成しやすく、薄膜状態での極大発光波長は、希薄溶液状態やドープ濃度の低い(例えば1〜3%など)薄膜状態での極大発光波長(モノマー発光)よりも長波長化することが知られている。
本発明の一般式(1)で表される白金錯体は、特許文献3〜6に開示の平面四座配位白金錯体に特定の嵩高い置換基を導入したことで、錯体間同士の相互作用を弱めることにより、有機電界発光素子の発光層に用いる場合など薄膜状態でもモノマー発光が可能となり、青色純度に優れた発光が得られる。また、高濃度にドープした場合でも、青色純度に優れた発光が得られる。
更に、一般的に金属錯体にアルキル鎖などのフレキシブルな置換基を導入することはアルキル鎖の熱運動のために励起状態からの熱失活パスを引き起こし、その結果、アルキル鎖の導入は発光効率の低下を招く可能性が考えられた。しかし、本発明において、アルキル鎖やそのほかの置換基を特定の位置に導入した白金錯体を用いることで、発光効率が低下することなく、また、予想外なことに発光効率が格段に向上するということが分かった。
また、本発明の一般式(1)で表される白金錯体は、その構造が非対称であるほど、錯体同士の相互作用を弱める効果が大きくなることも分かった。分子構造の対称性の低下が錯体間同士の相互作用の低下に繋がったと考えられる。
【0015】
〔一般式(1)で表される白金錯体〕
以下、一般式(1)で表される白金錯体(以下、「一般式(1)で表される化合物」等とも称する)について説明する。
【0016】
【化4】
【0017】
[上記一般式(1)中、R11〜R14は各々独立に置換基を表す。n11及びn12は各々独立に0〜2の整数を表し、n13及びn14は各々独立に0〜3の整数を表す。n11、n12が2のとき、2つ存在するR11、R12はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、R11同士、R12同士が互いに連結して環を形成してもよい。n13、n14が2以上のとき、複数存在するR13、R14はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣り合うR13同士、R14同士が互いに連結して環を形成してもよい。S11〜S14は各々独立に水素原子又は置換基を表す。隣り合うR13とS13、R14とS14、S11とS12は互いに連結して環を形成してもよい。ただし、S11〜S14の少なくとも一つは下記置換基群Sより選択される置換基を表す。]
【0018】
【化5】
【0019】
一般式(1)について、説明する。
n11及びn12は各々独立に0〜2の整数を表し、好ましくは0である。
n13及びn14は各々独立に0〜3の整数を表し、好ましくは0又は1である。
R11〜R14は各々独立に置換基を表す。置換基としては、特に限定されないが、置換基群Aで表される置換基が挙げられる。
R11〜R14としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シアノ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基が好ましく、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数2〜18のヘテロアリール基、シアノ基、アルコキシ基がより好ましく、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のヘテロアリール基が更に好ましい。これらの基は、更に置換可能な場合には、更なる置換基を有してもよく、該更なる置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シアノ基が好ましく、フッ素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のヘテロアリール基、シアノ基が更に好ましく、フッ素原子、炭素数1〜10のアルキル基、シアノ基が特に好ましい。
n11、n12が2のとき、2つ存在するR11、R12はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、R11同士、R12同士が互いに連結して環を形成してもよい。n13、n14が2以上のとき、複数存在するR13、R14はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣り合うR13同士、R14同士が互いに連結して環を形成してもよい。2つのR11同士、2つのR12同士、複数のR13同士、又は複数のR14同士が互いに連結して形成する環としては、飽和又は不飽和の、芳香族環又は非芳香族環が挙げられ、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、ピロール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。該環の置換基としては特に限定されないが、置換基群Aで表わされる置換基が挙げられる。その場合、形成される環は置換基を有していてもよく、更に縮環していても良い。
【0020】
S11〜S14は、水素原子又は置換基を表し、該置換基としては、特に限定されないが、置換基群Aで表される置換基が挙げられる。該置換基としては、好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シアノ基、アルコキシ基、アミノ基、シリル基が好ましく、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数2〜18のヘテロアリール基、シアノ基、シリル基がより好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のヘテロアリール基が更に好ましい。これらの基は、更に置換可能な場合には、更なる置換基を有してもよく、該更なる置換基しては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シアノ基が好ましく、フッ素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のヘテロアリール基、シアノ基が更に好ましく、フッ素原子、炭素数1〜10のアルキル基(トリフルオロメチル基含む)、炭素数6〜12のアリール基、シアノ基が特に好ましい。
【0021】
隣り合うR13とS13、R14とS14は互いに連結して環を形成してもよい。該環としては、飽和又は不飽和の、芳香族環又は非芳香族環が挙げられ、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、ピロール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。好ましくは、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、ピロール環、インデン環であり、より好ましくは、イミダゾール環、オキサゾール環、ピラゾール環、インドール環又はベンゾフラン環であり、更に好ましくはインドール環又はベンゾフラン環である。該環の置換基としては特に限定されないが、置換基群Aで表わされる置換基が挙げられる。その場合、形成される環は置換基を有していてもよく、更に縮環していても良い。
S11とS12は互いに連結して環を形成してもよい。この場合、S13又はS14が前記置換基群Sより選択される置換基を表す。S11とS12は互いに連結して形成する環としては、特に限定されないが、例えば、シクロアルキル基、シクロペンタジエニル基(フルオレン環含む)などが挙げられる。特に、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が好ましい。
【0022】
S11〜S14の少なくとも一つは前記置換基群Sより選択される置換基を表す。
置換基群Sの置換基は嵩高い基であり、一般式(1)で表される白金錯体は、該嵩高い基をS11〜S14の位置の少なくとも一つに有することにより、錯体同士の相互作用を弱めることができ、固相の状態にあっても会合体を形成しにくく、モノマー状態を維持することができる。
前記置換基群Sの中でも(a)、(b)、(e)、(h)、(y)が好ましい。
【0023】
本発明において上記一般式(1)で表される白金錯体は、下記一般式(2)で表される白金錯体であることが好ましい。
【0024】
【化6】
【0025】
[上記一般式(2)中、R21〜R25は各々独立に置換基を表す。n21、n22、n24は各々独立に0〜2の整数を表し、n23は0〜3の整数を表し、n25は0〜4の整数を表す。n21、n22、n24が2のとき、2つ存在するR21、R22、R24はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、R21同士、R22同士が互いに連結して環を形成してもよい。n23、n25が2以上のとき、複数存在するR23、R25はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣り合うR23同士、R25同士が互いに連結して環を形成してもよい。S21〜S23は各々独立に水素原子又は置換基を表す。隣り合うR23とS23、S21とS22は互いに連結して環を形成してもよい。ただし、S21〜S23の少なくとも一つは前記置換基群Sより選択される置換基を表す。XはO、S、Se、NR201、SiR202R203又はCR204R205を表す。R201〜R205は各々独立に水素原子又は置換基を表す。]
【0026】
一般式(2)について説明する。
一般式(2)中のR21〜R25、S21〜S23における置換基としては、一般式(1)のR11〜R14、S11〜S14における置換基と同様であり、好ましいものも同様である。
一般式(2)中のn21〜n23のそれぞれは、一般式(1)のn11〜n13のそれぞれと同様であり、好ましいものも同様である。
一般式(2)中のn24は0〜2の整数を表し、好ましくは0であり、n25は0〜4の整数を表し、好ましくは0である。
S21〜S23の少なくともいずれかの位置には前記置換基群Sより選択される基が置換されるが、その中でも好ましいものは、一般式(1)と同様である。
XはO、S、Se、NR201、SiR202R203又はCR204R205を表し、R201〜R205は各々独立に水素原子又は置換基を表す。XはO、S、又はNR201が好ましく、O又はNR201がより好ましい。
R201〜R205における置換基としては、特に限定されないが、置換基群Aで表される置換基が挙げられる。該置換基としては、好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基が好ましく、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜18のヘテロアリール基がより好ましく、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のヘテロアリール基が更に好ましい。これらの基は、更に置換可能な場合には、更なる置換基を有してもよく、該更なる置換基しては、置換基群Aで表される置換基が挙げられ、水素原子又はアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
SiR202R203又はCR204R205おいて該置換基が2つある場合、該2つの置換基は結合して環を形成してもよい。
【0027】
本発明において上記一般式(2)で表される白金錯体は、一般式(2)おけるXがNR36である[R36は水素原子又は置換基を表す]白金錯体であることが好ましい。
R36は水素原子又は置換基を表し、該置換基としては特に限定されないが、置換基群Aで表される置換基が挙げられる。該置換基としては、好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基が好ましく、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜18のヘテロアリール基がより好ましく、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のヘテロアリール基が更に好ましい。これらの基は、更に置換可能な場合には、更なる置換基を有してもよく、該更なる置換基としては置換基群Aで表される置換基が挙げられ、水素原子又はアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0028】
以下に、本発明における一般式(1)〜(2)で表される白金錯体の具体例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
【化7】
【0030】
【化8】
【0031】
【化9】
【0032】
【化10】
【0033】
【化11】
【0034】
【化12】
【0035】
【化13】
【0036】
【化14】
【0037】
【化15】
【0038】
【化16】
【0039】
【化17】
【0040】
本発明における一般式(1)〜(2)で表される白金錯体は、低分子化合物であっても、また、オリゴマー化合物、ポリマー化合物(質量平均分子量(ポリスチレン換算)は好ましくは1000〜5000000、より好ましくは2000〜1000000.更に好ましくは3000〜100000である。)であってよい。オリゴマー化合物又はポリマー化合物の場合、一般式で表される構造がポリマー主鎖中に含まれてよく、ポリマー側鎖に含まれても良い。該ポリマー化合物はホモポリマー化合物であってもよく、共重合体であってもよい。本発明は低分子化合物が好ましい。また、低分子化合物を真空蒸着する場合、蒸着適性の観点から、分子量250以上2000以下が好ましく、350以上1500以下がより好ましく、400以上1200以下が特に好ましい。
【0041】
本発明における一般式(1)〜(2)で表される白金錯体は、有機電界発光素子の有機層に適用可能であり、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送材料、正孔ブロック材料、電子ブロック材料、励起子ブロック材料、発光材料のいずれに用いることも可能であり、好ましくは正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロック材料、発光材料であり、より好ましくは正孔輸送材料、発光材料であり、更に好ましくは発光材料である。
【0042】
本発明の一般式(1)〜(2)で表される白金錯体は種々の手法で合成することができる。例えば、配位子、又はその解離体と白金イオンを溶媒(例えば、ハロゲン系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒、アミド系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキサイド系溶媒、水などが挙げられる)の存在下、若しくは、溶媒非存在下、塩基の存在下(無機、有機の種々の塩基、例えば、ナトリウムメトキサイド、t−ブトキシカリウム、トリエチルアミン、炭酸カリウムなどが挙げられる)、若しくは、塩基非存在下、室温以下、若しくは加熱し(通常の加熱以外にもマイクロウェーブで加熱する手法も有効である)得ることができる。
【0043】
上記一般式(1)〜(2)で表される白金錯体として例示した化合物は、例えば以下に示す工程により製造することができる。
例えば、特開2009−161524号公報の段落番号〔0112〕〜〔0121〕に記載の方法やSynthesis,5,409−411(1986)に記載の方法などを参照として、対応するジカルボニル化合物とヒドラジン水和物と反応させることでフェニルピラゾール体を合成し、更にハロゲン化アルキルあるいはホスゲン等と反応せしめることにより、対応する配位子を合成した後、得られた有機配位子を適当な白金源を前述したような溶媒下で反応せしめることにより合成することができるが、ここで挙げた方法に限定されるものではない。
具体的には、本発明の一般式(1)〜(2)のいずれかで表される白金錯体は、以下の合成スキームを応用することで合成できる。
【0044】
【化18】
【0045】
上記合成スキームにおいて、Rは上記一般式(1)におけるS11及び/又はS12に相当する基を表し、R’は上記一般式(1)におけるS13及び/又はS14に相当する基を表す。
【0046】
〔発光材料〕
本発明の発光材料は、前記一般式(1)〜(2)のいずれかで表される白金錯体を含む。
本発明の発光材料は、一般式(1)〜(2)のいずれかで表される白金錯体の薄膜状態での極大発光波長が440〜480nmの範囲にあるので、青色純度に優れ、かつ発光効率にも優れ、有機電界発光素子などに有利に用いることができる。
ここで、「極大発光波長が440〜480nmの範囲にある」とは、発光極大の少なくとも1つが440〜480nmの範囲にあることを意味する。一般式(1)〜(2)のいずれかで表される白金錯体は、薄膜状態で、極大発光波長の少なくとも1つが440〜470nmにあることがより好ましい。一般式(1)〜(2)のいずれかで表される白金錯体は、薄膜状態で、440〜480nmの範囲に複数の発光極大を有していてもよい。
【0047】
〔有機電界発光素子〕
本発明の有機電界発光素子について詳細に説明する。
本発明の有機電界発光素子は、一対の電極間に発光層を有する有機電界発光素子であって、該発光層に前記一般式(1)〜(2)のいずれかで表される白金錯体を含有する。
【0048】
本発明の有機電界発光素子において、一般式(1)〜(2)のいずれかで表される白金錯体を含有する層は発光層であり、更に複数の有機層を有していてもよい。発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明若しくは半透明であることが好ましい。
図1は、本発明に係る有機電界発光素子の構成の一例を示している。図1に示される本発明に係る有機電界発光素子10は、支持基板2上において、陽極4と陰極9との間に発光層6が挟まれている。具体的には、陽極4と陰極9との間に正孔注入層4、正孔輸送層5、電子ブロック層6、発光層7、及び電子輸送層8がこの順に積層されている。
【0049】
<有機層の構成>
前記有機層の層構成としては、特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記透明電極上に又は前記背面電極上に形成されるのが好ましい。この場合、有機層は、前記透明電極又は前記背面電極上の全面又は一部に形成される。
有機層の形状、大きさ、及び厚み等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0050】
具体的な層構成として、下記が挙げられるが本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔輸送層/ブロック層/発光層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔輸送層/ブロック層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ブロック層/発光層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ブロック層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ブロック層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ブロック層/発光層/ブロック層/電子注入層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ブロック層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ブロック層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
【0051】
有機層としては特に限定されないが、発光層の他に、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層、励起子ブロック層、保護層などを有していてもよい。またこれらの各層は、それぞれ他の機能を兼備していても良い。
【0052】
本発明における有機層の積層の態様としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されている態様が好ましい。更に、正孔輸送層と発光層との間、又は、発光層と電子輸送層との間には、電荷ブロック層等を有していてもよい。陽極と正孔輸送層との間に、正孔注入層を有してもよく、陰極と電子輸送層との間には、電子注入層を有してもよい。なお、各層は複数の二次層に分かれていてもよい。
本発明の素子を構成する各要素について詳細に説明する。
【0053】
<基板>
本発明で使用する基板としては、有機層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
<陽極>
陽極は、通常、有機層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
<陰極>
陰極は、通常、有機層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0054】
基板、陽極、陰極については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0070〕〜〔0089〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0055】
<有機層>
本発明における有機層について説明する。
有機層は発光層を含み、発光層以外の有機層としては、前述したごとく、正孔輸送層、電子輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層等の各層が挙げられる。
【0056】
−有機層の形成−
本発明の有機電界発光素子において、各有機層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、溶液塗布などの湿式製膜法、転写法、印刷法等いずれによっても好適に形成することができる。
【0057】
−発光層−
発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
本発明における発光層は、発光材料のみで構成されていても良く、ホスト材料と発光材料の混合層とした構成でも良い。発光材料としては、本発明の一般式(1)〜(2)のいずれかで表される白金錯体以外に、蛍光発光材料又は燐光発光材料を用いることができ、ドーパントは一種であっても二種以上であっても良い。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は一種であっても二種以上であっても良く、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。更に、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料(バインダー材料)を含んでいても良い。発光層としては、ホスト材料と発光材料として一般式(1)〜(2)のいずれかで表される白金錯体とを用いたものが好ましい。
また、発光層は一層であっても二層以上の多層であってもよい。発光層が複数の場合、一般式(1)〜(2)のいずれかで表される白金錯体を二層以上の発光層に含んでもよい。また、それぞれの発光層が異なる発光色で発光してもよい。
【0058】
(蛍光発光材料)
本発明に使用できる蛍光発光材料の例としては、例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の錯体やピロメテン誘導体の錯体に代表される各種錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体などの化合物等が挙げられる。
【0059】
(燐光発光材料)
本発明に使用できる燐光発光材料としては、一般式(1)で表される化合物の他、例えば、US6303238B1、US6097147、WO00/57676、WO00/70655、WO01/08230、WO01/39234A2、WO01/41512A1、WO02/02714A2、WO02/15645A1、WO02/44189A1、WO05/19373A2、特開2001−247859、特開2002−302671、特開2002−117978、特開2003−133074、特開2002−235076、特開2003−123982、特開2002−170684、EP1211257、特開2002−226495、特開2002−234894、特開2001−247859、特開2001−298470、特開2002−173674、特開2002−203678、特開2002−203679、特開2004−357791、特開2006−256999、特開2007−19462、特開2007−84635、特開2007−96259等の特許文献に記載の燐光発光化合物などが挙げられ、中でも、更に好ましい発光性ドーパントとしては、Ir錯体、Pt錯体、Cu錯体、Re錯体、W錯体、Rh錯体、Ru錯体、Pd錯体、Os錯体、Eu錯体、Tb錯体、Gd錯体、Dy錯体、及びCe錯体が挙げられる。特に好ましくは、Ir錯体、Pt錯体、又はRe錯体であり、中でも金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が好ましい。更に、発光効率、駆動耐久性、色度等の観点で、3座以上の多座配位子を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が特に好ましい。
【0060】
一般式(1)〜(2)のいずれかで表される白金錯体の含有量は、発光層中に、発光層の総質量に対して、0.1質量%以上50質量%以下の範囲が好ましく、1質量%以上50質量%以下の範囲がより好ましく、3質量%以上40質量%以下の範囲が更に好ましく、5質量%以上30質量%以下の範囲が最も好ましい。
【0061】
本発明に用いることのできる燐光発光材料(一般式(1)〜(2)のいずれかで表される白金錯体及び/又は併用する燐光発光材料)の含有量は、発光層の総質量に対して、0.1質量%以上50質量%以下の範囲が好ましく、1質量%以上40質量%以下の範囲がより好ましく、5質量%以上30質量%以下の範囲が最も好ましい。特に5質量%以上30質量%以下の範囲では、その有機電界発光素子の発光の色度は、燐光発光材料の添加濃度依存性が小さい。
【0062】
(ホスト材料)
ホスト材料とは、発光層において主に電荷の注入、輸送を担う化合物であり、また、それ自体は実質的に発光しない化合物のことである。本明細書において「実質的に発光しない」とは、該実質的に発光しない化合物からの発光量が好ましくは素子全体での全発光量の5%以下であり、より好ましくは3%以下であり、更に好ましくは1%以下であることをいう。
【0063】
本発明においては、発光層が、ホスト材料を含むことが好ましい。
本発明の一般式(1)〜(2)のいずれかで表される白金錯体と共に用いられるホスト材料としては、正孔輸送性ホスト材料、電子輸送性ホスト材料又は両者を兼ね備えた、いわゆるバイポーラ性ホスト材料などが挙げられるが、バイポーラ性ホスト材料であることが好ましい。
発光層中のホスト材料の濃度は、特に限定されないが、発光層中において主成分(含有量が一番多い成分)であることが好ましく、50質量%以上99.9質量%以下がより好ましく、50質量%以上99.8質量%以下が更に好ましく、60質量%以上99.7質量%以下が特に好ましく、70質量%以上95質量%以下が最も好ましい。
【0064】
前記ホスト材料のガラス転移点は、60℃以上500℃以下であることが好ましく、70℃以上300℃以下であることがより好ましく、90℃以上250℃以下であることが更に好ましい。
【0065】
発光層において、前記ホスト材料の三重項最低励起エネルギー(T1エネルギー)が前記発光材料のT1エネルギーより高いことが発光効率、駆動耐久性の点で好ましい。
【0066】
本発明に用いられるホスト材料として、以下の化合物を部分構造に含有していても良い。例えば、ピロール、インドール、カルバゾール(例えばCBP(4,4’−ジ(9−カルバゾイル)ビフェニル))、アザインドール、アザカルバゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、チオフェン、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体及びそれらの誘導体(置換基や縮環を有していてもよい)や、後述の正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層の項で例示されている材料が挙げられる。
【0067】
更に、本発明に用いるホスト材料として例えば、特開2002−100476号公報の段落〔0113〕〜〔0161〕に記載の化合物及び特開2004−214179号公報の段落〔0087〕〜〔0098〕に記載の化合物を好適に用いることができるが、これらに限定されることはない。
【0068】
本発明に用いるホスト材料としては、下記一般式(A−1)又は(A−2)で表される化合物の少なくとも一つ以上を含むことが好ましい。
【0069】
【化19】
【0070】
(一般式(A−1)及び(A−2)中、d、eは0〜3の整数を表し、少なくとも一方は1以上である。fは1〜3の整数を表す。Rc8は下記一般式(B)で表されるカルバゾール基を表す。)
【0071】
【化20】
【0072】
(一般式(B)中、Rc9はそれぞれ独立に置換基を表す。gは0〜8の整数を表す。)
【0073】
Rc8、Rc9はそれぞれ独立に置換基を表し、具体的にはハロゲン原子、アルコキシ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、又は一般式(B)で表される置換基である。好ましくは炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下の置換又は無置換のアリール基であり、更に好ましくは炭素数6以下のアルキル基である。
gは0〜8の整数を表し、電荷輸送を担うカルバゾール骨格を遮蔽しすぎない観点から0〜4が好ましい。また、合成容易さの観点から、カルバゾールが置換基を有する場合、左右に対称になるように置換基を持つものが好ましい。
一般式(A−1)において、電荷輸送能を保持する観点で、dとeの和は2以上であることが好ましい。また、駆動耐久性の観点から、他方のベンゼン環に対しRc8がメタ位で置換されることが好ましい。具体的には以下の構造で表される化合物であることが好ましい。
【0074】
【化21】
【0075】
一般式(A−2)において、電荷輸送能を保持する観点で、fは2以上であることが好ましい。fが2又は3の場合、同様の観点からRc8が互いにメタ位で置換することが好ましい。具体的には以下の構造で表される化合物であることが好ましい。
【0076】
【化22】
【0077】
一般式(A−1)及び(A−2)が水素原子を有する場合、同位体(重水素原子等)も含む。この場合、化合物中の全ての水素原子が同位体に置き換わっていてもよく、また一部が同位体を含む化合物である混合物でもよい。好ましくは一般式(B)におけるRc9が重水素によって置換されたものであり、特に好ましくは以下の構造が挙げられる。
【0078】
【化23】
【0079】
なお、一般式(A−1)及び(A−2)の置換基を構成する原子は、その同位体も含んでいてもよい。
【0080】
一般式(A−1)及び(A−2)で表される化合物は、種々の公知の合成法を組み合わせて合成することが可能である。最も一般的には、カルバゾール化合物に関してはアリールヒドラジンとシクロヘキサン誘導体との縮合体のアザーコープ転位反応の後、脱水素芳香族化による合成(L.F.Tieze,Th.Eicher著、高野、小笠原訳、精密有機合成、339頁(南江堂刊))が挙げられる。また、得られたカルバゾール化合物とハロゲン化アリール化合物のパラジウム触媒を用いるカップリング反応に関してはテトラヘドロン・レターズ39巻617頁(1998年)、同39巻2367頁(1998年)及び同40巻6393頁(1999年)等に記載の方法が挙げられる。反応温度、反応時間については特に限定されることはなく、前記文献に記載の条件が適用できる。また、mCPなどのいくつかの化合物は市販されているものを好適に用いる事ができる。
【0081】
一般式(A−1)及び(A−2)で表される化合物は、真空蒸着プロセスで薄層を形成することが好ましいが、溶液塗布などのウェットプロセスも好適に用いることが出来る。化合物の分子量は、蒸着適性や溶解性の観点から2000以下であることが好ましく、1500以下であることがより好ましく、1200以下であることが特に好ましい。また蒸着適性の観点では、分子量が小さすぎると蒸気圧が小さくなり、気相から固相への変化がおきず、有機層を形成することが困難となるので、250以上が好ましく、300以上が特に好ましい。
【0082】
以下に、本発明における一般式(A−1)及び(A−2)で表される化合物の具体例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0083】
【化24】
【0084】
【化25】
【0085】
【化26】
【0086】
【化27】
【0087】
【化28】
【0088】
【化29】
【0089】
一般式(A−1)又は(A−2)で表される化合物は、より好ましくは化合物(H−1)(H−2)、(H−51)である。
【0090】
更に、ホスト化合物として一般式(A−1)及び(A−2)以外で表わされるアリールアミン化合物(下記一般式(B−1))、ケイ素を含む有機化合物(下記一般式(C−1))も本発明のホスト材料として好ましいが、本発明のホスト化合物はこれらに限定されるものではない。
【0091】
【化30】
【0092】
(式中、複数のAr1はそれぞれ独立に置換基を表し、複数のAr2はそれぞれ独立に置換基を表す。)
【0093】
一般式(B−1)及び(C−1)について説明する。
複数のAr1はそれぞれ独立に置換基を表し、具体的にはアリール基、ヘテロアリール基である。好ましくはベンゼン環である。更にそれぞれのAr1は置換基を有してもよく、該置換基としてはアリール基、ヘテロアリール基、アルキル基である。好ましくはアリール基、アルキル基であり、更に好ましくはアリール基である。
【0094】
複数のAr2はそれぞれ独立に置換基を表し、具体的にはアリール基、ヘテロアリール基である。好ましくはアリール基である。更にそれぞれのAr2は置換基を有してもよく、該置換基としてはアリール基、ヘテロアリール基(特にカルバゾール基)、アルキル基である。好ましくはアリール基、カルバゾール基であり、更に好ましくはカルバゾール基である。
【0095】
以下に、本発明における一般式(B−1)及び(C−1)で表される化合物の具体例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0096】
【化31】
【0097】
【化32】
【0098】
一般式(A−1)、(A−2)、(B−1)、(C−1)で表される化合物を発光層以外の層(例えば電荷輸送層等)に導入する場合には、該層中において10質量%〜100質量%含まれることが好ましく、30質量%〜100質量%含まれることがより好ましい。
【0099】
本発明の白金錯体を用いた有機電界発光素子は、更に発光層にバインダー材料として炭化水素化合物を含むことが好ましい。本発明の白金錯体の配位様式は平面四座配位であるため、周囲のホスト分子や発光材料からπ軌道相互作用を受けやすいと考えられる。炭化水素化合物のような非極性な材料を発光層に添加することによって、この相互作用を低減し、エネルギー準位のばらつきを抑制することによって発光波形がよりシャープになり、青色純度に優れた素子を得る事ができる。炭化水素化合物は飽和若しくは不飽和であり、蒸着適性を付与するため分子量が1200以下のものが好ましい。また、T1エネルギーが発光材料よりも大きい値である必要があるため、母格としてアルカン、シクロアルカン、ビシクロアルカン、アダマンタンなどの飽和炭化水素を含有した構造が好ましい。
炭化水素化合物は下記一般式(VI)で表される化合物であることが好ましい。
有機電界発光素子において用いられる、一般式(VI)で表される化合物は、化学的な安定性に優れ、素子駆動中における材料の分解等の変質が少なく、当該材料の分解物による、有機電界発光素子の効率低下や素子寿命の低下を防ぐことができる。
一般式(VI)で表される化合物について説明する。
【0100】
【化33】
【0101】
一般式(VI)中、R4、R6、R8、R10、X4〜X15は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。置換基として具体的には置換基群Aが挙げられ、R4、R6、R8、R10、X4〜X15として好ましくは水素原子、アルキル基又はアリール基である。
【0102】
一般式(VI)の、R4、R6、R8、R10、X4〜X15で表されるアルキル基は、アダマンタン構造、アリール構造で置換されていてもよく、炭素数1〜70が好ましく、炭素数1〜50がより好ましく、炭素数1〜30が更に好ましく、炭素数1〜10がより更に好ましく、炭素数1〜6が特に好ましく、炭素数2〜6の直鎖のアルキル基が最も好ましい。
【0103】
一般式(VI)の、R4、R6、R8、R10、X4〜X15で表されるアルキル基としては、例えば、n−C50H101基、n−C30H61基、3−(3,5,7−トリフェニルアダマンタン−1−イル)プロピル基(炭素数31)、トリチル基(炭素数19)、3−(アダマンタン−1−イル)プロピル基(炭素数13)、9−デカリル基(炭素数10)、ベンジル基(炭素数7)、シクロヘキシル基(炭素数6)、n−ヘキシル基(炭素数6)、n−ペンチル基(炭素数5)、n−ブチル基(炭素数4)、n−プロピル基
(炭素数3)、シクロプロピル基(炭素数3)、エチル基(炭素数2)、メチル基(炭素数1)などが挙げられる。
【0104】
一般式(VI)の、R4、R6、R8、R10、X4〜X15で表されるアリール基は、アダマンタン構造、アルキル構造で置換されていてもよく、炭素数6〜30が好ましく、炭素数6〜20がより好ましく、炭素数6〜15が更に好ましく、炭素数6〜10が特に好ましく、炭素数6が最も好ましい。
【0105】
一般式(VI)の、R4、R6、R8、R10、X4〜X15で表されるアリール基としては、例えば、1−ピレニル基(炭素数16)、9−アントラセニル基(炭素数14)、1−ナフチル基(炭素数10)、2−ナフチル基(炭素数10)、p−t−ブチルフェニル基(炭素数10)、2−m−キシリル基(炭素数8)、5−m−キシリル基(炭素数8)、o−トリル基(炭素数7)、m−トリル基(炭素数7)、p−トリル基(炭素数7)、フェニル基(炭素数6)などが挙げられる。
【0106】
一般式(VI)のR4、R6、R8、R10は、水素原子であっても、アルキル基であっても、アリール基であってもよいが、前述の高いガラス転移温度が好ましい観点から、少なくともひとつはアリール基であることが好ましく、少なくともふたつはアリール基であることがより好ましく、3ないし4つがアリール基であることが特に好ましい。
【0107】
一般式(VI)の、X4〜X15は、水素原子であっても、アルキル基であっても、アリール基であってもよいが、水素原子、又はアリール基であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0108】
本発明における一般式(VI)で表される化合物の分子量は、有機電界発光素子を真空蒸着プロセスや溶液塗布プロセスを用いて作成するので、蒸着適性や溶解性の観点から、2000以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、1000以下であることが特に好ましい。また、蒸着適性の観点では、分子量が小さすぎると蒸気圧が小さくなり、気相から固相への変化がおきず、有機層を形成することが困難となるので、250以上が好ましく、350以上がより好ましく、400以上が特に好ましい。
【0109】
一般式(VI)で表される化合物は、室温(25℃)において固体であることが好ましく、室温(25℃)から40℃の範囲において固体であることがより好ましく、室温(25℃)から60℃の範囲において固体であることが特に好ましい。
室温(25℃)において固体を形成しない一般式(VI)で表される化合物を用いる場合は、他の材料と組み合わせることにより、常温で固相を形成させることができる。
【0110】
一般式(VI)で表される化合物の発光層における含量は、電荷輸送性を抑制しない程度の量に制限して用いる必要があり、一般式(VI)で表される化合物は0.1〜70質量%含まれることが好ましく、0.1〜30質量%含まれることがより好ましく、0.1〜25質量%含まれることが特に好ましい。
【0111】
一般式(VI)で表される化合物は、一種類のみを含有していてもよく、複数の一般式
(VI)で表される化合物を任意の割合で組み合わせて含有していてもよい。
【0112】
一般式(VI)で表される化合物の具体例を以下に列挙するが、以下に限定されるものではない。
【0113】
【化34】
【0114】
【化35】
【0115】
【化36】
【0116】
【化37】
【0117】
一般式(VI)で表される化合物は、アダマンタン、若しくは、ハロゲン化アダマンタンと、ハロゲン化アルキル若しくは、アルキルマグネシウムハライド(グリニヤー試薬)を適当に組み合わせることによって合成できる。例えば、インジウムを用いて、ハロゲン化アダマンタンと、ハロゲン化アルキルをカップリングすることができる(文献1)。また、ハロゲン化アルキルをアルキル銅試薬に変換し、芳香族化合物のグリニヤー試薬とカップリングすることもできる(文献2)。また、ハロゲン化アルキルを、適当なアリールホウ酸とパラジウム触媒を用いてカップリングすることもできる(文献3)。
文献1:Tetrahedron Lett.39,1998,9557−9558.
文献2:Tetrahedron Lett.39,1998,2095−2096.
文献3:J.Am.Chem.Soc.124,2002,13662−13663.
【0118】
アリール基を有するアダマンタン骨格は、アダマンタン、若しくは、ハロゲン化アダマンタンと、対応するアレーンやアリールハライドを適当に組み合わせることにより合成できる。
【0119】
なお、上記に示した製造方法において、定義された置換基が、ある合成方法の条件下で変化するか、又は該方法を実施するのに不適切な場合、官能基の保護、脱保護(例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)、グリーン(T. W. Greene)著、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(John Wiley & Sons Inc.)(1981年)等)等の手段により容易に製造が可能である。また、必要に応じて適宜置換基導入等の反応工程の順序を変化させることも可能である。
【0120】
発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
【0121】
−正孔注入層、正孔輸送層−
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極と発光層の間に設けられ、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。正孔注入層、正孔輸送層は、具体的には、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボン等を含有する層であることが好ましい。
【0122】
正孔注入層、正孔輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
正孔輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、5nm〜100nmであるのが更に好ましい。また、正孔注入層の厚さとしては、0.1nm〜500nmであるのが好ましく、0.5nm〜300nmであるのがより好ましく、1nm〜200nmであるのが更に好ましい。
正孔注入層、正孔輸送層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0123】
−電子注入層、電子輸送層−
電子注入層、電子輸送層は、陰極と発光層の間に設けられ、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。電子注入層、電子輸送層は、具体的には、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、フェナントレン誘導体、フェナントロリン誘導体、8−キノリノール誘導体の錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする錯体に代表される各種錯体、有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
【0124】
電子注入層、電子輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々100nm以下であることが好ましい。
電子輸送層の厚さとしては、1nm〜100nmであるのが好ましく、5nm〜50nmであるのがより好ましく、10nm〜30nmであるのが更に好ましい。また、電子注入層の厚さとしては、0.1nm〜100nmであるのが好ましく、0.2nm〜80nmであるのがより好ましく、0.5nm〜50nmであるのが更に好ましい。
電子注入層、電子輸送層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0125】
−正孔ブロック層−
正孔ブロック層は、陰極と発光層の間に設けられ、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機層として、正孔ブロック層を設けることができる。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナト)4−フェニルフェノラート(Aluminum (III)bis〔2−methyl−8−quinolinato〕4−phenylphenolate(BAlqと略記する))等のアルミニウム錯体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(2,9−Dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline(BCPと略記する))等のフェナントロリン誘導体等が挙げられる。
正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
正孔ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
−電子ブロック層−
電子ブロック層は、陽極と発光層の間に設けられ、陰極側から発光層に輸送された電子が、陽極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陽極側で隣接する有機層として、電子ブロック層を設けることができる。
電子ブロック層を構成する有機化合物の例としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが適用できる。
電子ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
電子ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0126】
<保護層>
本発明において、有機EL素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
保護層については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0169〕〜〔0170〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0127】
<封止容器>
本発明の素子は、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。
封止容器については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0171〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0128】
(駆動)
本発明の素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
【0129】
本発明の素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0130】
本発明の素子は、種々の公知の工夫により、光取り出し効率を向上させることができる。例えば、基板表面形状を加工する(例えば微細な凹凸パターンを形成する)、基板・ITO層・有機層の屈折率を制御する、基板・ITO層・有機層の膜厚を制御すること等により、光の取り出し効率を向上させ、外部量子効率を向上させることが可能である。
【0131】
本発明の素子は、陽極側から発光を取り出す、いわゆるトップエミッション方式であっても良い。
【0132】
本発明における有機電界発光素子は、共振器構造を有しても良い。例えば、透明基板上に、屈折率の異なる複数の積層膜よりなる多層膜ミラー、透明又は半透明電極、発光層、及び金属電極を重ね合わせて有する。発光層で生じた光は多層膜ミラーと金属電極を反射板としてその間で反射を繰り返し共振する。
別の好ましい態様では、透明基板上に、透明又は半透明電極と金属電極がそれぞれ反射板として機能して、発光層で生じた光はその間で反射を繰り返し共振する。
共振構造を形成するためには、2つの反射板の有効屈折率、反射板間の各層の屈折率と厚みから決定される光路長を所望の共振波長の得るのに最適な値となるよう調整される。第一の態様の場合の計算式は特開平9−180883号明細書に記載されている。第2の態様の場合の計算式は特開2004−127795号明細書に記載されている。
【0133】
本発明の有機電界発光素子の外部量子効率としては、3%以上が好ましく、5%以上がより好ましい。外部量子効率の数値は20℃で素子を駆動したときの外部量子効率の最大値、若しくは、20℃で素子を駆動したときの100〜500cd/m2付近での外部量子効率の値を用いることができる。
【0134】
本発明の有機電界発光素子の内部量子効率は、15%以上であることが好ましく、25%以上が更に好ましく、50%以上が更に好ましい。素子の内部量子効率は、外部量子効率を光取り出し効率で除して算出される。通常の有機EL素子では光取り出し効率は約20%であるが、基板の形状、電極の形状、有機層の膜厚、無機層の膜厚、有機層の屈折率、無機層の屈折率等を工夫することにより、光取り出し効率を20%以上にすることが可能である。
【0135】
(本発明の素子の用途)
本発明の素子は、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、又は光通信等に好適に利用できる。特に、照明装置、表示装置等の発光輝度が高い領域で駆動されるデバイスに好ましく用いられる。
【0136】
次に、図2を参照して本発明の発光装置について説明する。
本発明の発光装置は、前記有機電界発光素子を用いてなる。
図2は、本発明の発光装置の一例を概略的に示した断面図である。
図2の発光装置20は、透明基板(支持基板)2、有機電界発光素子10、封止容器16等により構成されている。
【0137】
有機電界発光素子10は、基板2上に、陽極(第一電極)3、有機層11、陰極(第二電極)9が順次積層されて構成されている。また、陰極9上には、保護層12が積層されており、更に、保護層12上には接着層14を介して封止容器16が設けられている。なお、各電極3、9の一部、隔壁、絶縁層等は省略されている。
ここで、接着層14としては、エポキシ樹脂等の光硬化型接着剤や熱硬化型接着剤を用いることができ、例えば熱硬化性の接着シートを用いることもできる。
【0138】
本発明の発光装置の用途は特に制限されるものではなく、例えば、照明装置のほか、テレビ、パーソナルコンピュータ、携帯電話、電子ペーパ等の表示装置とすることができる。
【0139】
次に、図3を参照して本発明の実施形態に係る照明装置について説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る照明装置の一例を概略的に示した断面図である。
本発明の実施形態に係る照明装置40は、図3に示すように、前述した有機EL素子10と、光散乱部材30とを備えている。
より具体的には、照明装置40は、有機EL素子10の基板2と光散乱部材30とが接触するように構成されている。光散乱部材30は、光を散乱できるものであれば特に制限されないが、図3においては、透明基板31に微粒子32が分散した部材とされている。
透明基板31としては、例えば、ガラス基板を好適に挙げることができる。微粒子32としては、透明樹脂微粒子を好適に挙げることができる。ガラス基板及び透明樹脂微粒子としては、いずれも、公知のものを使用できる。このような照明装置40は、有機電界発光素子10からの発光が散乱部材30の光入射面30Aに入射されると、入射光を光散乱部材30により散乱させ、散乱光を光出射面30Bから照明光として出射するものである。
【実施例】
【0140】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0141】
〔合成例〕
化合物(30)の合成
化合物(30)の合成スキームを下記に示す。
【0142】
【化38】
【0143】
三ツ口フラスコに2,4−ペンタンジオン(50mL)、ジメチルアセトアミド(300mL)、炭酸カリウム(200g)を加え80℃で撹拌させた。ベンジルブロミド(127mL)を滴下後、140℃で9時間反応させ、蒸留水(250mL)を加え沈殿物をろ取した。ろ取した沈殿物にイソプロピルアルコール(150mL)を加え、加熱撹拌しながら洗浄することで、化合物(W−1)(56.8g)を得た。
三ツ口フラスコに化合物(W−1)(25.0g)、ジメチルホルムアミド(150mL)を加え、撹拌しながら化合物(G−1)(37mL)を滴下した。150℃で7時間反応させた。氷浴につけて撹拌し、得られた沈殿物をろ取することで化合物(W−2)(21.0g)を得た。
三ツ口フラスコに化合物(W−2)(20.0g)、エタノール(200mL)を加え、加熱還流させた。そこへエタノール(10mL)に溶解させたヒドラジン一水和物(5.64g)をゆっくり滴下した後、4.5時間反応させた。エタノールを留去し、蒸留水(600mL)に注ぎ、沈殿させた。得られた沈殿物にイソプロパノール(30mL)を加え、氷浴中で撹拌しながら洗浄した後、更にイソプロパノール/ヘキサン=1/1で洗浄することで、化合物(W−3)(12.0g)を得た。
三ツ口フラスコに化合物(W−3)(1.00g)、炭酸カリウム(1.68g)、1,3−ジメチルイミダゾリジノン(10mL)を加え、100℃で加熱撹拌した。その後、化合物(G−2)(810mg)を加えて、135℃に昇温し8.5時間反応させた。蒸留水(50mL)を加え白色沈殿を生成させ、沈殿物をろ取した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行うことで、化合物(W−4)(660mg)を得た。
三ツ口フラスコに化合物(W−4)(550mg)、塩化白金(276mg)、m−トルニトリル(5mL)を加え、外温220℃にて4時間反応させた。反応溶液を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行うことで、化合物(30)(390mg)を得た。得られた化合物の同定は1H−NMRにより行った。1H−NMRデータを図8に示す。
【0144】
化合物(29)の合成
化合物(29)の合成スキームを下記に示す。
【0145】
【化39】
【0146】
三ツ口フラスコに化合物(W−3)(1.00g)、炭酸カリウム(1.68g)、1,3−ジメチルイミダゾリジノン(10mL)を加え、100℃で加熱撹拌した。その後、化合物(G−3)(1.16g)を加えて、155℃に昇温し6時間反応させた。蒸留水(50mL)を加え白色沈殿を生成させ、沈殿物をろ取した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、イソプロピルアルコールで洗浄し、化合物(W−5)(610mg)を得た。
三ツ口フラスコに化合物(W−5)(610mg)、塩化白金(263mg)、m−トルニトリル(5mL)を加え、加熱還流し、11時間反応させた。反応溶液を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行うことで、化合物(29)(330mg)を得た。得られた化合物の同定は1H−NMRにより行った。1H−NMRデータを図9に示す。
【0147】
化合物(80)の合成
化合物(80)の合成スキームを下記に示す。
【0148】
【化40】
【0149】
三ツ口フラスコに化合物(W−3)(450mg)、化合物(G−4)(1.55g)、酸化銅(I)(78mg)、化合物(G−5)(75mg)、炭酸セシウム(3.60g)、1,3−ジメチルイミダゾリジノン(10mL)を加え、170℃で6時間反応させた。反応溶液を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行うことで、化合物(W−6)(440mg)を得た。
三ツ口フラスコに化合物(W−6)(430mg)、塩化白金(173mg)、m−トルニトリル(5mL)を加え、加熱還流し、8時間反応させた。溶媒を減圧留去し、メタノールを加えて沈殿物をろ取した。得られた沈殿物をm−トルニトリルに溶解させ、ヘキサンを加えて再沈殿を行った。得られた沈殿物をろ取し、イソプロピルアルコールで洗浄することで化合物(80)(170mg)を得た。得られた化合物の同定は1H−NMRにより行った。1H−NMRデータを図10に示す。
【0150】
化合物(26)の合成
化合物(26)の合成スキームを下記に示す。
【0151】
【化41】
【0152】
三ツ口フラスコに2,4−ペンタンジオン(20mL)、ジメチルアセトアミド(100mL)、炭酸カリウム(80.3g)を加え、80℃で加熱撹拌させた。1−ブロモ−2−メチルプロパン(78.4g)を滴下後、135℃に昇温し、18時間反応させた。蒸留水を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を濃縮させた。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、化合物(W−7)(6.6g)を得た。
化合物(W−8)は前記化合物(W−2)を得る方法と同様な方法を行うことで得た。
化合物(W−9)は前記化合物(W−3)を得る方法と同様な方法を行うことで得た。
化合物(W−10)は前記化合物(W−6)を得る方法と同様な方法を行うことで得た。
化合物(26)は前記化合物(29)を得る方法と同様な方法を行うことで得た。得られた化合物の同定は1H−NMRにより行った。1H−NMRデータを図11に示す。
【0153】
化合物(32)の合成
下記化合物(32)は、前記化合物(26)の出発原料である1−ブロモ−2−メチルプロパンを1−ブロモ−2,2−ジメチルプロパンに置き換え同様の方法により合成できる。
【0154】
【化42】
【0155】
化合物(97)の合成
化合物(97)の合成スキームを下記に示す。
【0156】
【化43】
【0157】
化合物(W−11)は前記化合物(W−2)や前記化合物(W−8)を得る方法と同様な方法を行うことで得た。
化合物(W−12)は前記化合物(W−3)や前記化合物(W−9)を得る方法と同様な方法を行うことで得た。
三ツ口フラスコに化合物(W−12)(6.00g)、化合物(G−7)(10.9g)、酸化銅(I)(487mg)、化合物(G−5)(1.87g)、炭酸セシウム(22.2g)、ジメチルホルムアミド(100mL)を加え、175℃で26時間反応させた。蒸留水を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を濃縮させた。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行うことで、化合物(W−13)(6.00g)を得た。
三ツ口フラスコに化合物(W−13)(2.00g)、化合物(G−4)(3.20g)、酸化銅(I)(93mg)、化合物(G−5)(356mg)、炭酸セシウム(4.20g)、1,3−ジメチルイミダゾリジノン(50mL)を加え、200℃で20時間反応させた。蒸留水を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を濃縮させた。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行うことで、化合物(W−14)(2.82g)を得た。
三ツ口フラスコに化合物(W−14)(3.32g)、塩化白金(1.90g)、m−トルニトリル(70mL)を加え、加熱還流し、30時間反応させた。反応溶液を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行うことで、化合物(97)(2.92g)を得た。得られた化合物の同定は1H−NMRにより行った。1H−NMRデータを図12に示す。
【0158】
化合物(127)の合成
化合物(127)の合成スキームを下記に示す。
【0159】
【化44】
【0160】
三ツ口フラスコに化合物(W−13)(2.65g)、化合物(G−8)(3.35g)、酸化銅(I)(123mg)、化合物(G−5)(471mg)、炭酸セシウム(5.6g)、1,3−ジメチルイミダゾリジノン(70mL)を加え、185℃で23時間反応させた。蒸留水を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を濃縮させた。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行うことで、化合物(W−15)(2.75g)を得た。
三ツ口フラスコに化合物(W−15)(500mg)、塩化白金(273mg)、m−トルニトリル(10mL)を加え、加熱還流し、13時間反応させた。反応溶液を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行うことで、化合物(127)(450mg)を得た。得られた化合物の同定は1H−NMRにより行った。1H−NMRデータを図13に示す。
【0161】
化合物(57)の合成
化合物(57)の合成スキームを下記に示す。
【0162】
【化45】
【0163】
三ツ口フラスコに化合物(W−13)(1.10g)、炭酸カリウム(1.97g)、化合物(G−2)(864mg)、1,3−ジメチルイミダゾリジノン(25mL)を加え、150℃で48時間加熱撹拌した。蒸留水を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を濃縮させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行うことで、化合物(W−16)(1.22g)を得た。
三ツ口フラスコに化合物(W−16)(1.22g)、塩化白金(792mg)、m−トルニトリル(10mL)を加え、加熱還流し、8時間反応させた。反応溶液をセライト上に熱時ろ過させ、不溶物を除いた。その後、生じた沈殿物をろ取し、メタノールで洗浄することで、化合物(57)(1.08g)を得た。得られた化合物の同定は1H−NMRにより行った。1H−NMRデータを図14に示す。
【0164】
〔実施例1〜4及び比較例1〜3〕
下記化合物(26)、(29)、(30)、(80)及び比較化合物(R−1)〜(R−3)を、それぞれ、ジクロロメタンに10質量%になるように溶解して、各化合物溶液を得た。
これらの溶液の発光波長と量子収率をSHIMADZU製SPECTROFLUOROPHOTOMETER(RF−5300PC)を用いて測定した。結果を下記表1に示す。
【0165】
【化46】
【0166】
【表1】
【0167】
〔有機薄膜の作製及び評価〕
〔実施例5〕
実施例4で用いた化合物(26)10%、ホスト材料として下記化合物(H−64)を90%の比率(質量比)でガラス基板に真空蒸着した。
得られた有機薄膜について、以下のようにして発光波長、フォトルミネッセンス強度を求めた。
発光スペクトル、量子収率は浜松ホトニクス製スペクトルアナライザーPMA−11を用いて測定し、CIExy色度座標を求めた。得られた有機薄膜の発光測定を行ったところ、λmax=437,462nm、φ=0.57となり完全なモノマー発光が得られた。CIExy色度座標は(0.14、0.12)であり、純青色発光であることを確認した。また、その発光スペクトルは図4に示す通りであった。
【0168】
【化47】
【0169】
〔比較例4〕
実施例5の化合物(26)を比較化合物(R−1)に置き換え、その他は実施例5と同様にしてガラス基板に真空蒸着し、得られた有機薄膜の発光測定を行ったところ、λmax=566nmとなり凝集体の発光が主として得られた。CIExy色度座標は(0.46、0.50)であり、純青色発光は達成できず、黄色発光であった。また、その発光の発光スペクトルは図4に示す通りであった。
【0170】
〔実施例6〜8〕
下記化合物(97)、(127)、(57)を、それぞれ、実施例1〜4と同様に各化合物溶液を調整し、実施例1〜4と同様に溶液中の発光波長及び量子収率を測定した。結果を下記表2に示す。
【0171】
【化48】
【0172】
【表2】
【0173】
〔実施例9〕
実施例6で用いた化合物(97)10%、ホスト材料として下記化合物(H−75)を90%の比率(質量比)とした以外は、実施例5と同様にガラス基板に真空蒸着し、得られた有機薄膜の発光測定を行ったところ、λmax=455,481nm、φ=0.40となり完全なモノマー発光が得られた。CIExy色度座標は(0.15、0.17)であり、純青色発光であることを確認した。また、その発光の発光スペクトルは図5に示す通りであった。
【0174】
【化49】
【0175】
〔比較例5〕
実施例9の化合物(97)を比較化合物(R−4)に置き換え、その他は実施例9と同様にしてガラス基板に真空蒸着し、得られた有機薄膜の発光測定を行ったところ、λmax=456,482nm、φ=0.49だが、図5に示す発光スペクトルの通り、長波長領域に裾を引いているために、CIExy色度座標は(0.20、0.27)であり、実施例9と比較して、青色純度が劣っていることがわかった。
【0176】
〔実施例10〕
実施例9で用いたホスト材料を化合物(H−64)に置き換え、その他は実施例9と同様にしてガラス基板に真空蒸着し、得られた有機薄膜の発光測定を行ったところ、λmax=453,481nm、φ=0.68となり完全なモノマー発光が得られた。CIExy色座標は(0.16、0.19)であり、青色発光であることを確認した。また、その発光スペクトルは図6に示す通りであった。
【0177】
〔実施例11〕
実施例7で用いた化合物(127)10%、ホスト材料として化合物(H−64)を90%の比率(質量比)とした以外は、実施例9と同様にガラス基板に真空蒸着し、得られた有機薄膜の発光測定を行ったところ、λmax=454,480nm、φ=0.67となり完全なモノマー発光が得られた。CIExy色座標は(0.14、0.17)であり、青色発光であることを確認した。
【0178】
〔実施例12〕
実施例8で用いた化合物(57)10%、ホスト材料として下記化合物(H−1)を90%の比率とした以外は、実施例9と同様にガラス基板に真空蒸着し、得られた有機薄膜の発光測定を行ったところ、λmax=463,490nm、φ=0.71、CIExy色座標は(0.22、0.33)であり水色発光であった。また、その発光スペクトルは図7に示す通りであった。下記比較例6と比較して、エキシマー発光成分が極度に弱くなり、モノマー発光が主となる発光スペクトルが得られた。また、量子収率も約10倍に向上した。嵩高い置換基であるt-ブチル基を導入した本発明の効果であると考えられる。
【0179】
【化50】
【0180】
〔比較例6〕
実施例12の化合物(57)を比較化合物(R−3)に置き換え、その他は実施例12と同様にしてガラス基板に真空蒸着し、得られた有機薄膜の発光測定を行ったところ、λmax=602nm、φ=0.07となり凝集体の発光が主として得られ、青色発光は達成できなかった。また、その発光スペクトルは図7に示す通りであった。
【0181】
〔有機電界発光素子の作製及び評価〕
〔実施例13〕
0.5mm厚み、2.5cm角のITO膜を有するガラス基板(ジオマテック社製、表面抵抗10Ω/□)を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。この透明陽極(ITO膜)上に真空蒸着法にて以下の有機層(有機化合物層)を順次蒸着した。
なお、本明細書の実施例における蒸着速度は、特に断りのない場合は0.2nm/秒である。蒸着速度は水晶振動子を用いて測定した。以下に記載の膜厚も水晶振動子を用いて測定したものである。
【0182】
洗浄したITO基板を蒸着装置に入れ、4,4’,4’’−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン (2−TNATA)、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン (F4−TCNQ)を99.7:0.3の質量比で120nm共蒸着し、更にこの上にα−NPDを7nm蒸着し、更にこの上に下記化合物(H−26)を3nm蒸着した。この上に白金錯体として上記化合物(127)、ホスト材料として上記化合物(H−75)、バインダー材料として下記化合物(1−7)を10:45:45の質量比で30nm共蒸着し(発光層)、更にこの上にBAlqを30nm蒸着した。
得られた有機薄膜上にパターニングしたマスク(発光面積が4mm×5mmとなる)を設置し、フッ化リチウムを1nm蒸着した後アルミニウムを100nm蒸着した。これを大気に触れさせること無く、アルゴンガスで置換したグローブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止し、実施例13の有機電界発光素子を作製した。
【0183】
【化51】
【0184】
(発光素子の評価)
得られた有機電界発光素子について、以下のようにして発光波長、エレクトロルミネッセンス強度、及び外部量子効率を求めた。
東陽テクニカ製ソースメジャーユニット2400を用いて、直流電圧を素子に印加し発光させ、その輝度をトプコン社製輝度計BM−8を用いて測定した。発光スペクトルと発光波長は浜松ホトニクス製スペクトルアナライザーPMA−11を用いて測定し、CIExy色度座標を求めた。これらを元に外部量子効率を輝度換算法により算出した。
【0185】
作製した有機電界発光素子に直流定電圧を印加したところ、本発明の例示化合物(127)に由来する青色の発光が得られた。表3に作製した素子の相対外部量子収率ηext、CIExy色度座標値を示した。
【0186】
〔比較例7〕
実施例13の化合物(127)を比較化合物(R−4)に置き換え、その他は実施例13と同様にして素子を作製し、評価した。表3に評価結果を示す。
【0187】
【表3】
【0188】
以上より、四座配位子含有白金錯体に嵩高い置換基を導入することで、溶液中での発光量子収率が大幅に向上し、また、有機薄膜中で凝集が起こらずモノマー発光が可能となった。これにより本発明の化合物は、従来の白金錯体と比較して、色純度及び発光効率の点で極めて優れることが分かった。
【符号の説明】
【0189】
2・・・基板
3・・・陽極
4・・・正孔注入層
5・・・正孔輸送層
6・・・電子ブロック層
7・・・発光層
8・・・電子輸送層
9・・・陰極
10・・・有機電界発光素子(有機EL素子)
11・・・有機層
12・・・保護層
14・・・接着層
16・・・封止容器
20・・・発光装置
30・・・光散乱部材
30A・・・光入射面
30B・・・光出射面
32・・・微粒子
31・・・透明基板
40・・・照明装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金錯体、それを用いる発光材料、有機電界発光素子、表示装置及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子(以下、「有機EL素子」、単に「EL素子」ともいう)は、低電圧駆動で高輝度の発光が得られることから、近年活発な研究開発が行われている。一般に有機EL素子は、発光層を含む有機層及び該層を挟んだ一対の電極から構成されており、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔が発光層において再結合し、生成した励起子のエネルギーを発光に利用するものである。発光層には発光材料をホスト材料中にドープした、ドープ型素子が広く採用されている。
【0003】
燐光発光材料を用いることにより、素子の高効率化が進んでいる。燐光発光材料としてはイリジウム錯体や白金錯体などが知られており(例えば特許文献1、2)、青色〜緑色発光可能な白金錯体が報告されている。また、フェニルピラゾール四座配位白金錯体においても、例えば特許文献3〜5に青色〜緑色発光可能な白金錯体が開示されている。
【0004】
特許文献6には、特許文献3〜5に開示のものよりも、発光特性(発光波長、輝度、量子収率、駆動電圧等)及び耐久性が良好なフェニルピラゾール四座配位白金錯体が開示されている。しかしながら、特許文献3〜6に開示のフェニルピラゾール四座配位白金錯体を発光層に含有する有機電界発光素子においても、近年求められている青色純度に優れた(CIExy色度座標(0.15、0.15)付近)、発光効率、駆動電圧、消費電力、耐久性の点で十分とは言えないことが判明し、上記白金錯体の構造特定からさらなる改良が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6303238号明細書
【特許文献2】国際公開第00/57676号
【特許文献3】特開2006−232784号公報
【特許文献4】特開2007−096255号公報
【特許文献5】特開2008−037848号公報
【特許文献6】特開2009−096800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有機EL素子は、例えば携帯電話ディスプレイ、コンピュータディスプレイ、自動車の情報ディスプレイ、TVモニターなどの表示装置、及び一般照明を含む幅広い用途に適用され得るが、この際に発光量子効率が高く、青色純度に優れた(CIExy色度座標(0.15、0.15)付近)発光材料が求められている。
しかしながら、特許文献3、5に記載の四座白金錯体は、青色純度が低く、発光波長が青緑色であり、純青色ではなかった。更に、発光効率に問題があった。また、特許文献4、6に記載の四座白金錯体の発光色は純青色に近いが、発光効率の観点から十分なレベルに達していなかった。また、これらの白金錯体で、高効率な有機EL素子を得ようとする場合、ホスト材料中への白金錯体のドープ濃度を増加させる必要があった。しかし、これらの白金錯体のドープ濃度を増加させた場合、平面白金錯体に特有な長波長領域に発光を有するエキシマー発光が顕著に現れた。その結果、色度の低下を招き、所望の発光色を得ることができないという問題を内包していた。
本発明の目的は、上記課題を解決するためになされたものであり、極大発光波長が440〜480nmの範囲にあって、青色発光を示す四座白金錯体に嵩高い置換基を導入することで、ドープ濃度を増加させても青色のCIExy色度を保持したまま、高効率の発光特性を示すことのできる白金錯体の提供にある。
更に、本発明の他の目的は、該白金錯体を用いる発光材料、有機電界発光素子、表示装置及び照明装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、フェニルピラゾール四座配位白金錯体の特定の位置に特定の嵩高い基を有することにより、薄膜状態で青色純度に優れた発光が得られ、かつ発光効率も優れたものとなることを見出したことによりなされたものである。
本発明者らは、下記構成の発明により上記課題を解決した。
【0008】
[1]
下記一般式(1)で表されることを特徴とする白金錯体。
【化1】
[上記一般式(1)中、R11〜R14は各々独立に置換基を表す。n11及びn12は各々独立に0〜2の整数を表し、n13及びn14は各々独立に0〜3の整数を表す。n11、n12が2のとき、2つ存在するR11、R12はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、R11同士、R12同士が互いに連結して環を形成してもよい。n13、n14が2以上のとき、複数存在するR13、R14はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣り合うR13同士、R14同士が互いに連結して環を形成してもよい。S11〜S14は各々独立に水素原子又は置換基を表す。隣り合うR13とS13、R14とS14、S11とS12は互いに連結して環を形成してもよい。ただし、S11〜S14の少なくとも一つは下記置換基群Sより選択される置換基を表す。]
【化2】
[2]
前記白金錯体が、下記一般式(2)で表されることを特徴とする[1]に記載の白金錯体。
【化3】
[上記一般式(2)中、R21〜R25は各々独立に置換基を表す。n21、n22、n24は各々独立に0〜2の整数を表し、n23は0〜3の整数を表し、n25は0〜4の整数を表す。n21、n22、n24が2のとき、2つ存在するR21、R22、R24はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、R21同士、R22同士が互いに連結して環を形成してもよい。n23、n25が2以上のとき、複数存在するR23、R25はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣り合うR23同士、R25同士が互いに連結して環を形成してもよい。S21〜S23は各々独立に水素原子又は置換基を表す。隣り合うR23とS23、S21とS22は互いに連結して環を形成してもよい。ただし、S21〜S23の少なくとも一つは前記置換基群Sより選択される置換基を表す。XはO、S、Se、NR201、SiR202R203又はCR204R205を表す。R201〜R205は各々独立に水素原子又は置換基を表す。]
[3]
前記一般式(2)のXがNR36である[R36は水素原子又は置換基を表す]ことを特徴とする[2]に記載の白金錯体。
[4]
[1]〜[3]のいずれか1項に記載の白金錯体を含有することを特徴とする発光材料。
[5]
一対の電極間に発光層を含む複数の有機層を有し、前記有機層のいずれかが[1]〜[3]のいずれか1項に記載の白金錯体を含有することを特徴とする有機電界発光素子。
[6]
[5]に記載の有機電界発光素子を用いた表示装置。
[7]
[5]に記載の有機電界発光素子を用いた照明装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、薄膜状態での極大発光波長が440〜480nmの範囲にあって青色純度に優れ(CIExy色度座標(0.15、0.15)付近)、発光効率にも優れる白金錯体、及び発光材料を提供することができる。また、青色純度及び発光効率に優れた有機電界発光素子、並びに該有機電界発光素子を用いた表示装置及び照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る有機EL素子の層構成の一例(第1実施形態)を示す概略図である。
【図2】本発明に係る発光装置の一例(第2実施形態)を示す概略図である。
【図3】本発明に係る照明装置の一例(第3実施形態)を示す概略図である。
【図4】実施例5及び比較例4における発光スペクトルを示す図である。
【図5】実施例9及び比較例5における発光スペクトルを示す図である。
【図6】実施例10における発光スペクトルを示す図である。
【図7】実施例12及び比較例6における発光スペクトルを示す図である。
【図8】実施例にて合成した化合物(30)の1H−NMRデータを示す図である。
【図9】実施例にて合成した化合物(29)の1H−NMRデータを示す図である。
【図10】実施例にて合成した化合物(80)の1H−NMRデータを示す図である。
【図11】実施例にて合成した化合物(26)の1H−NMRデータを示す図である。
【図12】実施例にて合成した化合物(97)の1H−NMRデータを示す図である。
【図13】実施例にて合成した化合物(127)の1H−NMRデータを示す図である。
【図14】実施例にて合成した化合物(57)の1H−NMRデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一般式の説明における水素原子は同位体(重水素原子等)も含み、また更に置換基を構成する原子は、その同位体も含んでいることを表す。
本発明において、上記アルキル基等の置換基の「炭素数」とは、アルキル基等の置換基が他の置換基によって置換されてもよい場合も含み、当該他の置換基の炭素数も包含する意味で用いる。
【0012】
本発明書において置換基群Aとは以下のように定義される。
(置換基群A)
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環(ヘテロアリール)基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数2〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられ、具体的にはイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)、ホスホリル基(例えばジフェニルホスホリル基、ジメチルホスホリル基などが挙げられる。)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、以上に説明した置換基群Aから選択される基を挙げることができる。
【0013】
本発明の白金錯体は、一般式(1)で表される。
また、本発明の発光材料は、一般式(1)で表される白金錯体を含有し、本発明の有機電界発光素子は、一対の電極間に発光層を有する有機電界発光素子であって、該発光層に一般式(1)で表される白金錯体を有する。
【0014】
特許文献3〜6に開示のフェニルピラゾール4座配位白金錯体は、平面性の高い構造であるため、白金錯体間のπ−π相互作用によるスタッキングや白金−白金間相互作用が生じる。これらの相互作用が存在する錯体では一般にドープ濃度の増大に伴い凝集体を形成しやすく、薄膜状態での極大発光波長は、希薄溶液状態やドープ濃度の低い(例えば1〜3%など)薄膜状態での極大発光波長(モノマー発光)よりも長波長化することが知られている。
本発明の一般式(1)で表される白金錯体は、特許文献3〜6に開示の平面四座配位白金錯体に特定の嵩高い置換基を導入したことで、錯体間同士の相互作用を弱めることにより、有機電界発光素子の発光層に用いる場合など薄膜状態でもモノマー発光が可能となり、青色純度に優れた発光が得られる。また、高濃度にドープした場合でも、青色純度に優れた発光が得られる。
更に、一般的に金属錯体にアルキル鎖などのフレキシブルな置換基を導入することはアルキル鎖の熱運動のために励起状態からの熱失活パスを引き起こし、その結果、アルキル鎖の導入は発光効率の低下を招く可能性が考えられた。しかし、本発明において、アルキル鎖やそのほかの置換基を特定の位置に導入した白金錯体を用いることで、発光効率が低下することなく、また、予想外なことに発光効率が格段に向上するということが分かった。
また、本発明の一般式(1)で表される白金錯体は、その構造が非対称であるほど、錯体同士の相互作用を弱める効果が大きくなることも分かった。分子構造の対称性の低下が錯体間同士の相互作用の低下に繋がったと考えられる。
【0015】
〔一般式(1)で表される白金錯体〕
以下、一般式(1)で表される白金錯体(以下、「一般式(1)で表される化合物」等とも称する)について説明する。
【0016】
【化4】
【0017】
[上記一般式(1)中、R11〜R14は各々独立に置換基を表す。n11及びn12は各々独立に0〜2の整数を表し、n13及びn14は各々独立に0〜3の整数を表す。n11、n12が2のとき、2つ存在するR11、R12はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、R11同士、R12同士が互いに連結して環を形成してもよい。n13、n14が2以上のとき、複数存在するR13、R14はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣り合うR13同士、R14同士が互いに連結して環を形成してもよい。S11〜S14は各々独立に水素原子又は置換基を表す。隣り合うR13とS13、R14とS14、S11とS12は互いに連結して環を形成してもよい。ただし、S11〜S14の少なくとも一つは下記置換基群Sより選択される置換基を表す。]
【0018】
【化5】
【0019】
一般式(1)について、説明する。
n11及びn12は各々独立に0〜2の整数を表し、好ましくは0である。
n13及びn14は各々独立に0〜3の整数を表し、好ましくは0又は1である。
R11〜R14は各々独立に置換基を表す。置換基としては、特に限定されないが、置換基群Aで表される置換基が挙げられる。
R11〜R14としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シアノ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基が好ましく、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数2〜18のヘテロアリール基、シアノ基、アルコキシ基がより好ましく、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のヘテロアリール基が更に好ましい。これらの基は、更に置換可能な場合には、更なる置換基を有してもよく、該更なる置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シアノ基が好ましく、フッ素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のヘテロアリール基、シアノ基が更に好ましく、フッ素原子、炭素数1〜10のアルキル基、シアノ基が特に好ましい。
n11、n12が2のとき、2つ存在するR11、R12はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、R11同士、R12同士が互いに連結して環を形成してもよい。n13、n14が2以上のとき、複数存在するR13、R14はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣り合うR13同士、R14同士が互いに連結して環を形成してもよい。2つのR11同士、2つのR12同士、複数のR13同士、又は複数のR14同士が互いに連結して形成する環としては、飽和又は不飽和の、芳香族環又は非芳香族環が挙げられ、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、ピロール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。該環の置換基としては特に限定されないが、置換基群Aで表わされる置換基が挙げられる。その場合、形成される環は置換基を有していてもよく、更に縮環していても良い。
【0020】
S11〜S14は、水素原子又は置換基を表し、該置換基としては、特に限定されないが、置換基群Aで表される置換基が挙げられる。該置換基としては、好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シアノ基、アルコキシ基、アミノ基、シリル基が好ましく、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数2〜18のヘテロアリール基、シアノ基、シリル基がより好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のヘテロアリール基が更に好ましい。これらの基は、更に置換可能な場合には、更なる置換基を有してもよく、該更なる置換基しては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シアノ基が好ましく、フッ素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のヘテロアリール基、シアノ基が更に好ましく、フッ素原子、炭素数1〜10のアルキル基(トリフルオロメチル基含む)、炭素数6〜12のアリール基、シアノ基が特に好ましい。
【0021】
隣り合うR13とS13、R14とS14は互いに連結して環を形成してもよい。該環としては、飽和又は不飽和の、芳香族環又は非芳香族環が挙げられ、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、ピロール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。好ましくは、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、ピロール環、インデン環であり、より好ましくは、イミダゾール環、オキサゾール環、ピラゾール環、インドール環又はベンゾフラン環であり、更に好ましくはインドール環又はベンゾフラン環である。該環の置換基としては特に限定されないが、置換基群Aで表わされる置換基が挙げられる。その場合、形成される環は置換基を有していてもよく、更に縮環していても良い。
S11とS12は互いに連結して環を形成してもよい。この場合、S13又はS14が前記置換基群Sより選択される置換基を表す。S11とS12は互いに連結して形成する環としては、特に限定されないが、例えば、シクロアルキル基、シクロペンタジエニル基(フルオレン環含む)などが挙げられる。特に、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が好ましい。
【0022】
S11〜S14の少なくとも一つは前記置換基群Sより選択される置換基を表す。
置換基群Sの置換基は嵩高い基であり、一般式(1)で表される白金錯体は、該嵩高い基をS11〜S14の位置の少なくとも一つに有することにより、錯体同士の相互作用を弱めることができ、固相の状態にあっても会合体を形成しにくく、モノマー状態を維持することができる。
前記置換基群Sの中でも(a)、(b)、(e)、(h)、(y)が好ましい。
【0023】
本発明において上記一般式(1)で表される白金錯体は、下記一般式(2)で表される白金錯体であることが好ましい。
【0024】
【化6】
【0025】
[上記一般式(2)中、R21〜R25は各々独立に置換基を表す。n21、n22、n24は各々独立に0〜2の整数を表し、n23は0〜3の整数を表し、n25は0〜4の整数を表す。n21、n22、n24が2のとき、2つ存在するR21、R22、R24はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、R21同士、R22同士が互いに連結して環を形成してもよい。n23、n25が2以上のとき、複数存在するR23、R25はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣り合うR23同士、R25同士が互いに連結して環を形成してもよい。S21〜S23は各々独立に水素原子又は置換基を表す。隣り合うR23とS23、S21とS22は互いに連結して環を形成してもよい。ただし、S21〜S23の少なくとも一つは前記置換基群Sより選択される置換基を表す。XはO、S、Se、NR201、SiR202R203又はCR204R205を表す。R201〜R205は各々独立に水素原子又は置換基を表す。]
【0026】
一般式(2)について説明する。
一般式(2)中のR21〜R25、S21〜S23における置換基としては、一般式(1)のR11〜R14、S11〜S14における置換基と同様であり、好ましいものも同様である。
一般式(2)中のn21〜n23のそれぞれは、一般式(1)のn11〜n13のそれぞれと同様であり、好ましいものも同様である。
一般式(2)中のn24は0〜2の整数を表し、好ましくは0であり、n25は0〜4の整数を表し、好ましくは0である。
S21〜S23の少なくともいずれかの位置には前記置換基群Sより選択される基が置換されるが、その中でも好ましいものは、一般式(1)と同様である。
XはO、S、Se、NR201、SiR202R203又はCR204R205を表し、R201〜R205は各々独立に水素原子又は置換基を表す。XはO、S、又はNR201が好ましく、O又はNR201がより好ましい。
R201〜R205における置換基としては、特に限定されないが、置換基群Aで表される置換基が挙げられる。該置換基としては、好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基が好ましく、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜18のヘテロアリール基がより好ましく、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のヘテロアリール基が更に好ましい。これらの基は、更に置換可能な場合には、更なる置換基を有してもよく、該更なる置換基しては、置換基群Aで表される置換基が挙げられ、水素原子又はアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
SiR202R203又はCR204R205おいて該置換基が2つある場合、該2つの置換基は結合して環を形成してもよい。
【0027】
本発明において上記一般式(2)で表される白金錯体は、一般式(2)おけるXがNR36である[R36は水素原子又は置換基を表す]白金錯体であることが好ましい。
R36は水素原子又は置換基を表し、該置換基としては特に限定されないが、置換基群Aで表される置換基が挙げられる。該置換基としては、好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基が好ましく、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜18のヘテロアリール基がより好ましく、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のヘテロアリール基が更に好ましい。これらの基は、更に置換可能な場合には、更なる置換基を有してもよく、該更なる置換基としては置換基群Aで表される置換基が挙げられ、水素原子又はアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0028】
以下に、本発明における一般式(1)〜(2)で表される白金錯体の具体例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
【化7】
【0030】
【化8】
【0031】
【化9】
【0032】
【化10】
【0033】
【化11】
【0034】
【化12】
【0035】
【化13】
【0036】
【化14】
【0037】
【化15】
【0038】
【化16】
【0039】
【化17】
【0040】
本発明における一般式(1)〜(2)で表される白金錯体は、低分子化合物であっても、また、オリゴマー化合物、ポリマー化合物(質量平均分子量(ポリスチレン換算)は好ましくは1000〜5000000、より好ましくは2000〜1000000.更に好ましくは3000〜100000である。)であってよい。オリゴマー化合物又はポリマー化合物の場合、一般式で表される構造がポリマー主鎖中に含まれてよく、ポリマー側鎖に含まれても良い。該ポリマー化合物はホモポリマー化合物であってもよく、共重合体であってもよい。本発明は低分子化合物が好ましい。また、低分子化合物を真空蒸着する場合、蒸着適性の観点から、分子量250以上2000以下が好ましく、350以上1500以下がより好ましく、400以上1200以下が特に好ましい。
【0041】
本発明における一般式(1)〜(2)で表される白金錯体は、有機電界発光素子の有機層に適用可能であり、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送材料、正孔ブロック材料、電子ブロック材料、励起子ブロック材料、発光材料のいずれに用いることも可能であり、好ましくは正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロック材料、発光材料であり、より好ましくは正孔輸送材料、発光材料であり、更に好ましくは発光材料である。
【0042】
本発明の一般式(1)〜(2)で表される白金錯体は種々の手法で合成することができる。例えば、配位子、又はその解離体と白金イオンを溶媒(例えば、ハロゲン系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒、アミド系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキサイド系溶媒、水などが挙げられる)の存在下、若しくは、溶媒非存在下、塩基の存在下(無機、有機の種々の塩基、例えば、ナトリウムメトキサイド、t−ブトキシカリウム、トリエチルアミン、炭酸カリウムなどが挙げられる)、若しくは、塩基非存在下、室温以下、若しくは加熱し(通常の加熱以外にもマイクロウェーブで加熱する手法も有効である)得ることができる。
【0043】
上記一般式(1)〜(2)で表される白金錯体として例示した化合物は、例えば以下に示す工程により製造することができる。
例えば、特開2009−161524号公報の段落番号〔0112〕〜〔0121〕に記載の方法やSynthesis,5,409−411(1986)に記載の方法などを参照として、対応するジカルボニル化合物とヒドラジン水和物と反応させることでフェニルピラゾール体を合成し、更にハロゲン化アルキルあるいはホスゲン等と反応せしめることにより、対応する配位子を合成した後、得られた有機配位子を適当な白金源を前述したような溶媒下で反応せしめることにより合成することができるが、ここで挙げた方法に限定されるものではない。
具体的には、本発明の一般式(1)〜(2)のいずれかで表される白金錯体は、以下の合成スキームを応用することで合成できる。
【0044】
【化18】
【0045】
上記合成スキームにおいて、Rは上記一般式(1)におけるS11及び/又はS12に相当する基を表し、R’は上記一般式(1)におけるS13及び/又はS14に相当する基を表す。
【0046】
〔発光材料〕
本発明の発光材料は、前記一般式(1)〜(2)のいずれかで表される白金錯体を含む。
本発明の発光材料は、一般式(1)〜(2)のいずれかで表される白金錯体の薄膜状態での極大発光波長が440〜480nmの範囲にあるので、青色純度に優れ、かつ発光効率にも優れ、有機電界発光素子などに有利に用いることができる。
ここで、「極大発光波長が440〜480nmの範囲にある」とは、発光極大の少なくとも1つが440〜480nmの範囲にあることを意味する。一般式(1)〜(2)のいずれかで表される白金錯体は、薄膜状態で、極大発光波長の少なくとも1つが440〜470nmにあることがより好ましい。一般式(1)〜(2)のいずれかで表される白金錯体は、薄膜状態で、440〜480nmの範囲に複数の発光極大を有していてもよい。
【0047】
〔有機電界発光素子〕
本発明の有機電界発光素子について詳細に説明する。
本発明の有機電界発光素子は、一対の電極間に発光層を有する有機電界発光素子であって、該発光層に前記一般式(1)〜(2)のいずれかで表される白金錯体を含有する。
【0048】
本発明の有機電界発光素子において、一般式(1)〜(2)のいずれかで表される白金錯体を含有する層は発光層であり、更に複数の有機層を有していてもよい。発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明若しくは半透明であることが好ましい。
図1は、本発明に係る有機電界発光素子の構成の一例を示している。図1に示される本発明に係る有機電界発光素子10は、支持基板2上において、陽極4と陰極9との間に発光層6が挟まれている。具体的には、陽極4と陰極9との間に正孔注入層4、正孔輸送層5、電子ブロック層6、発光層7、及び電子輸送層8がこの順に積層されている。
【0049】
<有機層の構成>
前記有機層の層構成としては、特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記透明電極上に又は前記背面電極上に形成されるのが好ましい。この場合、有機層は、前記透明電極又は前記背面電極上の全面又は一部に形成される。
有機層の形状、大きさ、及び厚み等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0050】
具体的な層構成として、下記が挙げられるが本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔輸送層/ブロック層/発光層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔輸送層/ブロック層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ブロック層/発光層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ブロック層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ブロック層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ブロック層/発光層/ブロック層/電子注入層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ブロック層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ブロック層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
【0051】
有機層としては特に限定されないが、発光層の他に、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層、励起子ブロック層、保護層などを有していてもよい。またこれらの各層は、それぞれ他の機能を兼備していても良い。
【0052】
本発明における有機層の積層の態様としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されている態様が好ましい。更に、正孔輸送層と発光層との間、又は、発光層と電子輸送層との間には、電荷ブロック層等を有していてもよい。陽極と正孔輸送層との間に、正孔注入層を有してもよく、陰極と電子輸送層との間には、電子注入層を有してもよい。なお、各層は複数の二次層に分かれていてもよい。
本発明の素子を構成する各要素について詳細に説明する。
【0053】
<基板>
本発明で使用する基板としては、有機層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
<陽極>
陽極は、通常、有機層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
<陰極>
陰極は、通常、有機層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0054】
基板、陽極、陰極については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0070〕〜〔0089〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0055】
<有機層>
本発明における有機層について説明する。
有機層は発光層を含み、発光層以外の有機層としては、前述したごとく、正孔輸送層、電子輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層等の各層が挙げられる。
【0056】
−有機層の形成−
本発明の有機電界発光素子において、各有機層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、溶液塗布などの湿式製膜法、転写法、印刷法等いずれによっても好適に形成することができる。
【0057】
−発光層−
発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
本発明における発光層は、発光材料のみで構成されていても良く、ホスト材料と発光材料の混合層とした構成でも良い。発光材料としては、本発明の一般式(1)〜(2)のいずれかで表される白金錯体以外に、蛍光発光材料又は燐光発光材料を用いることができ、ドーパントは一種であっても二種以上であっても良い。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は一種であっても二種以上であっても良く、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。更に、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料(バインダー材料)を含んでいても良い。発光層としては、ホスト材料と発光材料として一般式(1)〜(2)のいずれかで表される白金錯体とを用いたものが好ましい。
また、発光層は一層であっても二層以上の多層であってもよい。発光層が複数の場合、一般式(1)〜(2)のいずれかで表される白金錯体を二層以上の発光層に含んでもよい。また、それぞれの発光層が異なる発光色で発光してもよい。
【0058】
(蛍光発光材料)
本発明に使用できる蛍光発光材料の例としては、例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の錯体やピロメテン誘導体の錯体に代表される各種錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体などの化合物等が挙げられる。
【0059】
(燐光発光材料)
本発明に使用できる燐光発光材料としては、一般式(1)で表される化合物の他、例えば、US6303238B1、US6097147、WO00/57676、WO00/70655、WO01/08230、WO01/39234A2、WO01/41512A1、WO02/02714A2、WO02/15645A1、WO02/44189A1、WO05/19373A2、特開2001−247859、特開2002−302671、特開2002−117978、特開2003−133074、特開2002−235076、特開2003−123982、特開2002−170684、EP1211257、特開2002−226495、特開2002−234894、特開2001−247859、特開2001−298470、特開2002−173674、特開2002−203678、特開2002−203679、特開2004−357791、特開2006−256999、特開2007−19462、特開2007−84635、特開2007−96259等の特許文献に記載の燐光発光化合物などが挙げられ、中でも、更に好ましい発光性ドーパントとしては、Ir錯体、Pt錯体、Cu錯体、Re錯体、W錯体、Rh錯体、Ru錯体、Pd錯体、Os錯体、Eu錯体、Tb錯体、Gd錯体、Dy錯体、及びCe錯体が挙げられる。特に好ましくは、Ir錯体、Pt錯体、又はRe錯体であり、中でも金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が好ましい。更に、発光効率、駆動耐久性、色度等の観点で、3座以上の多座配位子を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が特に好ましい。
【0060】
一般式(1)〜(2)のいずれかで表される白金錯体の含有量は、発光層中に、発光層の総質量に対して、0.1質量%以上50質量%以下の範囲が好ましく、1質量%以上50質量%以下の範囲がより好ましく、3質量%以上40質量%以下の範囲が更に好ましく、5質量%以上30質量%以下の範囲が最も好ましい。
【0061】
本発明に用いることのできる燐光発光材料(一般式(1)〜(2)のいずれかで表される白金錯体及び/又は併用する燐光発光材料)の含有量は、発光層の総質量に対して、0.1質量%以上50質量%以下の範囲が好ましく、1質量%以上40質量%以下の範囲がより好ましく、5質量%以上30質量%以下の範囲が最も好ましい。特に5質量%以上30質量%以下の範囲では、その有機電界発光素子の発光の色度は、燐光発光材料の添加濃度依存性が小さい。
【0062】
(ホスト材料)
ホスト材料とは、発光層において主に電荷の注入、輸送を担う化合物であり、また、それ自体は実質的に発光しない化合物のことである。本明細書において「実質的に発光しない」とは、該実質的に発光しない化合物からの発光量が好ましくは素子全体での全発光量の5%以下であり、より好ましくは3%以下であり、更に好ましくは1%以下であることをいう。
【0063】
本発明においては、発光層が、ホスト材料を含むことが好ましい。
本発明の一般式(1)〜(2)のいずれかで表される白金錯体と共に用いられるホスト材料としては、正孔輸送性ホスト材料、電子輸送性ホスト材料又は両者を兼ね備えた、いわゆるバイポーラ性ホスト材料などが挙げられるが、バイポーラ性ホスト材料であることが好ましい。
発光層中のホスト材料の濃度は、特に限定されないが、発光層中において主成分(含有量が一番多い成分)であることが好ましく、50質量%以上99.9質量%以下がより好ましく、50質量%以上99.8質量%以下が更に好ましく、60質量%以上99.7質量%以下が特に好ましく、70質量%以上95質量%以下が最も好ましい。
【0064】
前記ホスト材料のガラス転移点は、60℃以上500℃以下であることが好ましく、70℃以上300℃以下であることがより好ましく、90℃以上250℃以下であることが更に好ましい。
【0065】
発光層において、前記ホスト材料の三重項最低励起エネルギー(T1エネルギー)が前記発光材料のT1エネルギーより高いことが発光効率、駆動耐久性の点で好ましい。
【0066】
本発明に用いられるホスト材料として、以下の化合物を部分構造に含有していても良い。例えば、ピロール、インドール、カルバゾール(例えばCBP(4,4’−ジ(9−カルバゾイル)ビフェニル))、アザインドール、アザカルバゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、チオフェン、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体及びそれらの誘導体(置換基や縮環を有していてもよい)や、後述の正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層の項で例示されている材料が挙げられる。
【0067】
更に、本発明に用いるホスト材料として例えば、特開2002−100476号公報の段落〔0113〕〜〔0161〕に記載の化合物及び特開2004−214179号公報の段落〔0087〕〜〔0098〕に記載の化合物を好適に用いることができるが、これらに限定されることはない。
【0068】
本発明に用いるホスト材料としては、下記一般式(A−1)又は(A−2)で表される化合物の少なくとも一つ以上を含むことが好ましい。
【0069】
【化19】
【0070】
(一般式(A−1)及び(A−2)中、d、eは0〜3の整数を表し、少なくとも一方は1以上である。fは1〜3の整数を表す。Rc8は下記一般式(B)で表されるカルバゾール基を表す。)
【0071】
【化20】
【0072】
(一般式(B)中、Rc9はそれぞれ独立に置換基を表す。gは0〜8の整数を表す。)
【0073】
Rc8、Rc9はそれぞれ独立に置換基を表し、具体的にはハロゲン原子、アルコキシ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、又は一般式(B)で表される置換基である。好ましくは炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下の置換又は無置換のアリール基であり、更に好ましくは炭素数6以下のアルキル基である。
gは0〜8の整数を表し、電荷輸送を担うカルバゾール骨格を遮蔽しすぎない観点から0〜4が好ましい。また、合成容易さの観点から、カルバゾールが置換基を有する場合、左右に対称になるように置換基を持つものが好ましい。
一般式(A−1)において、電荷輸送能を保持する観点で、dとeの和は2以上であることが好ましい。また、駆動耐久性の観点から、他方のベンゼン環に対しRc8がメタ位で置換されることが好ましい。具体的には以下の構造で表される化合物であることが好ましい。
【0074】
【化21】
【0075】
一般式(A−2)において、電荷輸送能を保持する観点で、fは2以上であることが好ましい。fが2又は3の場合、同様の観点からRc8が互いにメタ位で置換することが好ましい。具体的には以下の構造で表される化合物であることが好ましい。
【0076】
【化22】
【0077】
一般式(A−1)及び(A−2)が水素原子を有する場合、同位体(重水素原子等)も含む。この場合、化合物中の全ての水素原子が同位体に置き換わっていてもよく、また一部が同位体を含む化合物である混合物でもよい。好ましくは一般式(B)におけるRc9が重水素によって置換されたものであり、特に好ましくは以下の構造が挙げられる。
【0078】
【化23】
【0079】
なお、一般式(A−1)及び(A−2)の置換基を構成する原子は、その同位体も含んでいてもよい。
【0080】
一般式(A−1)及び(A−2)で表される化合物は、種々の公知の合成法を組み合わせて合成することが可能である。最も一般的には、カルバゾール化合物に関してはアリールヒドラジンとシクロヘキサン誘導体との縮合体のアザーコープ転位反応の後、脱水素芳香族化による合成(L.F.Tieze,Th.Eicher著、高野、小笠原訳、精密有機合成、339頁(南江堂刊))が挙げられる。また、得られたカルバゾール化合物とハロゲン化アリール化合物のパラジウム触媒を用いるカップリング反応に関してはテトラヘドロン・レターズ39巻617頁(1998年)、同39巻2367頁(1998年)及び同40巻6393頁(1999年)等に記載の方法が挙げられる。反応温度、反応時間については特に限定されることはなく、前記文献に記載の条件が適用できる。また、mCPなどのいくつかの化合物は市販されているものを好適に用いる事ができる。
【0081】
一般式(A−1)及び(A−2)で表される化合物は、真空蒸着プロセスで薄層を形成することが好ましいが、溶液塗布などのウェットプロセスも好適に用いることが出来る。化合物の分子量は、蒸着適性や溶解性の観点から2000以下であることが好ましく、1500以下であることがより好ましく、1200以下であることが特に好ましい。また蒸着適性の観点では、分子量が小さすぎると蒸気圧が小さくなり、気相から固相への変化がおきず、有機層を形成することが困難となるので、250以上が好ましく、300以上が特に好ましい。
【0082】
以下に、本発明における一般式(A−1)及び(A−2)で表される化合物の具体例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0083】
【化24】
【0084】
【化25】
【0085】
【化26】
【0086】
【化27】
【0087】
【化28】
【0088】
【化29】
【0089】
一般式(A−1)又は(A−2)で表される化合物は、より好ましくは化合物(H−1)(H−2)、(H−51)である。
【0090】
更に、ホスト化合物として一般式(A−1)及び(A−2)以外で表わされるアリールアミン化合物(下記一般式(B−1))、ケイ素を含む有機化合物(下記一般式(C−1))も本発明のホスト材料として好ましいが、本発明のホスト化合物はこれらに限定されるものではない。
【0091】
【化30】
【0092】
(式中、複数のAr1はそれぞれ独立に置換基を表し、複数のAr2はそれぞれ独立に置換基を表す。)
【0093】
一般式(B−1)及び(C−1)について説明する。
複数のAr1はそれぞれ独立に置換基を表し、具体的にはアリール基、ヘテロアリール基である。好ましくはベンゼン環である。更にそれぞれのAr1は置換基を有してもよく、該置換基としてはアリール基、ヘテロアリール基、アルキル基である。好ましくはアリール基、アルキル基であり、更に好ましくはアリール基である。
【0094】
複数のAr2はそれぞれ独立に置換基を表し、具体的にはアリール基、ヘテロアリール基である。好ましくはアリール基である。更にそれぞれのAr2は置換基を有してもよく、該置換基としてはアリール基、ヘテロアリール基(特にカルバゾール基)、アルキル基である。好ましくはアリール基、カルバゾール基であり、更に好ましくはカルバゾール基である。
【0095】
以下に、本発明における一般式(B−1)及び(C−1)で表される化合物の具体例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0096】
【化31】
【0097】
【化32】
【0098】
一般式(A−1)、(A−2)、(B−1)、(C−1)で表される化合物を発光層以外の層(例えば電荷輸送層等)に導入する場合には、該層中において10質量%〜100質量%含まれることが好ましく、30質量%〜100質量%含まれることがより好ましい。
【0099】
本発明の白金錯体を用いた有機電界発光素子は、更に発光層にバインダー材料として炭化水素化合物を含むことが好ましい。本発明の白金錯体の配位様式は平面四座配位であるため、周囲のホスト分子や発光材料からπ軌道相互作用を受けやすいと考えられる。炭化水素化合物のような非極性な材料を発光層に添加することによって、この相互作用を低減し、エネルギー準位のばらつきを抑制することによって発光波形がよりシャープになり、青色純度に優れた素子を得る事ができる。炭化水素化合物は飽和若しくは不飽和であり、蒸着適性を付与するため分子量が1200以下のものが好ましい。また、T1エネルギーが発光材料よりも大きい値である必要があるため、母格としてアルカン、シクロアルカン、ビシクロアルカン、アダマンタンなどの飽和炭化水素を含有した構造が好ましい。
炭化水素化合物は下記一般式(VI)で表される化合物であることが好ましい。
有機電界発光素子において用いられる、一般式(VI)で表される化合物は、化学的な安定性に優れ、素子駆動中における材料の分解等の変質が少なく、当該材料の分解物による、有機電界発光素子の効率低下や素子寿命の低下を防ぐことができる。
一般式(VI)で表される化合物について説明する。
【0100】
【化33】
【0101】
一般式(VI)中、R4、R6、R8、R10、X4〜X15は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。置換基として具体的には置換基群Aが挙げられ、R4、R6、R8、R10、X4〜X15として好ましくは水素原子、アルキル基又はアリール基である。
【0102】
一般式(VI)の、R4、R6、R8、R10、X4〜X15で表されるアルキル基は、アダマンタン構造、アリール構造で置換されていてもよく、炭素数1〜70が好ましく、炭素数1〜50がより好ましく、炭素数1〜30が更に好ましく、炭素数1〜10がより更に好ましく、炭素数1〜6が特に好ましく、炭素数2〜6の直鎖のアルキル基が最も好ましい。
【0103】
一般式(VI)の、R4、R6、R8、R10、X4〜X15で表されるアルキル基としては、例えば、n−C50H101基、n−C30H61基、3−(3,5,7−トリフェニルアダマンタン−1−イル)プロピル基(炭素数31)、トリチル基(炭素数19)、3−(アダマンタン−1−イル)プロピル基(炭素数13)、9−デカリル基(炭素数10)、ベンジル基(炭素数7)、シクロヘキシル基(炭素数6)、n−ヘキシル基(炭素数6)、n−ペンチル基(炭素数5)、n−ブチル基(炭素数4)、n−プロピル基
(炭素数3)、シクロプロピル基(炭素数3)、エチル基(炭素数2)、メチル基(炭素数1)などが挙げられる。
【0104】
一般式(VI)の、R4、R6、R8、R10、X4〜X15で表されるアリール基は、アダマンタン構造、アルキル構造で置換されていてもよく、炭素数6〜30が好ましく、炭素数6〜20がより好ましく、炭素数6〜15が更に好ましく、炭素数6〜10が特に好ましく、炭素数6が最も好ましい。
【0105】
一般式(VI)の、R4、R6、R8、R10、X4〜X15で表されるアリール基としては、例えば、1−ピレニル基(炭素数16)、9−アントラセニル基(炭素数14)、1−ナフチル基(炭素数10)、2−ナフチル基(炭素数10)、p−t−ブチルフェニル基(炭素数10)、2−m−キシリル基(炭素数8)、5−m−キシリル基(炭素数8)、o−トリル基(炭素数7)、m−トリル基(炭素数7)、p−トリル基(炭素数7)、フェニル基(炭素数6)などが挙げられる。
【0106】
一般式(VI)のR4、R6、R8、R10は、水素原子であっても、アルキル基であっても、アリール基であってもよいが、前述の高いガラス転移温度が好ましい観点から、少なくともひとつはアリール基であることが好ましく、少なくともふたつはアリール基であることがより好ましく、3ないし4つがアリール基であることが特に好ましい。
【0107】
一般式(VI)の、X4〜X15は、水素原子であっても、アルキル基であっても、アリール基であってもよいが、水素原子、又はアリール基であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0108】
本発明における一般式(VI)で表される化合物の分子量は、有機電界発光素子を真空蒸着プロセスや溶液塗布プロセスを用いて作成するので、蒸着適性や溶解性の観点から、2000以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、1000以下であることが特に好ましい。また、蒸着適性の観点では、分子量が小さすぎると蒸気圧が小さくなり、気相から固相への変化がおきず、有機層を形成することが困難となるので、250以上が好ましく、350以上がより好ましく、400以上が特に好ましい。
【0109】
一般式(VI)で表される化合物は、室温(25℃)において固体であることが好ましく、室温(25℃)から40℃の範囲において固体であることがより好ましく、室温(25℃)から60℃の範囲において固体であることが特に好ましい。
室温(25℃)において固体を形成しない一般式(VI)で表される化合物を用いる場合は、他の材料と組み合わせることにより、常温で固相を形成させることができる。
【0110】
一般式(VI)で表される化合物の発光層における含量は、電荷輸送性を抑制しない程度の量に制限して用いる必要があり、一般式(VI)で表される化合物は0.1〜70質量%含まれることが好ましく、0.1〜30質量%含まれることがより好ましく、0.1〜25質量%含まれることが特に好ましい。
【0111】
一般式(VI)で表される化合物は、一種類のみを含有していてもよく、複数の一般式
(VI)で表される化合物を任意の割合で組み合わせて含有していてもよい。
【0112】
一般式(VI)で表される化合物の具体例を以下に列挙するが、以下に限定されるものではない。
【0113】
【化34】
【0114】
【化35】
【0115】
【化36】
【0116】
【化37】
【0117】
一般式(VI)で表される化合物は、アダマンタン、若しくは、ハロゲン化アダマンタンと、ハロゲン化アルキル若しくは、アルキルマグネシウムハライド(グリニヤー試薬)を適当に組み合わせることによって合成できる。例えば、インジウムを用いて、ハロゲン化アダマンタンと、ハロゲン化アルキルをカップリングすることができる(文献1)。また、ハロゲン化アルキルをアルキル銅試薬に変換し、芳香族化合物のグリニヤー試薬とカップリングすることもできる(文献2)。また、ハロゲン化アルキルを、適当なアリールホウ酸とパラジウム触媒を用いてカップリングすることもできる(文献3)。
文献1:Tetrahedron Lett.39,1998,9557−9558.
文献2:Tetrahedron Lett.39,1998,2095−2096.
文献3:J.Am.Chem.Soc.124,2002,13662−13663.
【0118】
アリール基を有するアダマンタン骨格は、アダマンタン、若しくは、ハロゲン化アダマンタンと、対応するアレーンやアリールハライドを適当に組み合わせることにより合成できる。
【0119】
なお、上記に示した製造方法において、定義された置換基が、ある合成方法の条件下で変化するか、又は該方法を実施するのに不適切な場合、官能基の保護、脱保護(例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)、グリーン(T. W. Greene)著、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(John Wiley & Sons Inc.)(1981年)等)等の手段により容易に製造が可能である。また、必要に応じて適宜置換基導入等の反応工程の順序を変化させることも可能である。
【0120】
発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
【0121】
−正孔注入層、正孔輸送層−
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極と発光層の間に設けられ、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。正孔注入層、正孔輸送層は、具体的には、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボン等を含有する層であることが好ましい。
【0122】
正孔注入層、正孔輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
正孔輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、5nm〜100nmであるのが更に好ましい。また、正孔注入層の厚さとしては、0.1nm〜500nmであるのが好ましく、0.5nm〜300nmであるのがより好ましく、1nm〜200nmであるのが更に好ましい。
正孔注入層、正孔輸送層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0123】
−電子注入層、電子輸送層−
電子注入層、電子輸送層は、陰極と発光層の間に設けられ、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。電子注入層、電子輸送層は、具体的には、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、フェナントレン誘導体、フェナントロリン誘導体、8−キノリノール誘導体の錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする錯体に代表される各種錯体、有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
【0124】
電子注入層、電子輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々100nm以下であることが好ましい。
電子輸送層の厚さとしては、1nm〜100nmであるのが好ましく、5nm〜50nmであるのがより好ましく、10nm〜30nmであるのが更に好ましい。また、電子注入層の厚さとしては、0.1nm〜100nmであるのが好ましく、0.2nm〜80nmであるのがより好ましく、0.5nm〜50nmであるのが更に好ましい。
電子注入層、電子輸送層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0125】
−正孔ブロック層−
正孔ブロック層は、陰極と発光層の間に設けられ、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機層として、正孔ブロック層を設けることができる。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナト)4−フェニルフェノラート(Aluminum (III)bis〔2−methyl−8−quinolinato〕4−phenylphenolate(BAlqと略記する))等のアルミニウム錯体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(2,9−Dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline(BCPと略記する))等のフェナントロリン誘導体等が挙げられる。
正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
正孔ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
−電子ブロック層−
電子ブロック層は、陽極と発光層の間に設けられ、陰極側から発光層に輸送された電子が、陽極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陽極側で隣接する有機層として、電子ブロック層を設けることができる。
電子ブロック層を構成する有機化合物の例としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが適用できる。
電子ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
電子ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0126】
<保護層>
本発明において、有機EL素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
保護層については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0169〕〜〔0170〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0127】
<封止容器>
本発明の素子は、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。
封止容器については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0171〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0128】
(駆動)
本発明の素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
【0129】
本発明の素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0130】
本発明の素子は、種々の公知の工夫により、光取り出し効率を向上させることができる。例えば、基板表面形状を加工する(例えば微細な凹凸パターンを形成する)、基板・ITO層・有機層の屈折率を制御する、基板・ITO層・有機層の膜厚を制御すること等により、光の取り出し効率を向上させ、外部量子効率を向上させることが可能である。
【0131】
本発明の素子は、陽極側から発光を取り出す、いわゆるトップエミッション方式であっても良い。
【0132】
本発明における有機電界発光素子は、共振器構造を有しても良い。例えば、透明基板上に、屈折率の異なる複数の積層膜よりなる多層膜ミラー、透明又は半透明電極、発光層、及び金属電極を重ね合わせて有する。発光層で生じた光は多層膜ミラーと金属電極を反射板としてその間で反射を繰り返し共振する。
別の好ましい態様では、透明基板上に、透明又は半透明電極と金属電極がそれぞれ反射板として機能して、発光層で生じた光はその間で反射を繰り返し共振する。
共振構造を形成するためには、2つの反射板の有効屈折率、反射板間の各層の屈折率と厚みから決定される光路長を所望の共振波長の得るのに最適な値となるよう調整される。第一の態様の場合の計算式は特開平9−180883号明細書に記載されている。第2の態様の場合の計算式は特開2004−127795号明細書に記載されている。
【0133】
本発明の有機電界発光素子の外部量子効率としては、3%以上が好ましく、5%以上がより好ましい。外部量子効率の数値は20℃で素子を駆動したときの外部量子効率の最大値、若しくは、20℃で素子を駆動したときの100〜500cd/m2付近での外部量子効率の値を用いることができる。
【0134】
本発明の有機電界発光素子の内部量子効率は、15%以上であることが好ましく、25%以上が更に好ましく、50%以上が更に好ましい。素子の内部量子効率は、外部量子効率を光取り出し効率で除して算出される。通常の有機EL素子では光取り出し効率は約20%であるが、基板の形状、電極の形状、有機層の膜厚、無機層の膜厚、有機層の屈折率、無機層の屈折率等を工夫することにより、光取り出し効率を20%以上にすることが可能である。
【0135】
(本発明の素子の用途)
本発明の素子は、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、又は光通信等に好適に利用できる。特に、照明装置、表示装置等の発光輝度が高い領域で駆動されるデバイスに好ましく用いられる。
【0136】
次に、図2を参照して本発明の発光装置について説明する。
本発明の発光装置は、前記有機電界発光素子を用いてなる。
図2は、本発明の発光装置の一例を概略的に示した断面図である。
図2の発光装置20は、透明基板(支持基板)2、有機電界発光素子10、封止容器16等により構成されている。
【0137】
有機電界発光素子10は、基板2上に、陽極(第一電極)3、有機層11、陰極(第二電極)9が順次積層されて構成されている。また、陰極9上には、保護層12が積層されており、更に、保護層12上には接着層14を介して封止容器16が設けられている。なお、各電極3、9の一部、隔壁、絶縁層等は省略されている。
ここで、接着層14としては、エポキシ樹脂等の光硬化型接着剤や熱硬化型接着剤を用いることができ、例えば熱硬化性の接着シートを用いることもできる。
【0138】
本発明の発光装置の用途は特に制限されるものではなく、例えば、照明装置のほか、テレビ、パーソナルコンピュータ、携帯電話、電子ペーパ等の表示装置とすることができる。
【0139】
次に、図3を参照して本発明の実施形態に係る照明装置について説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る照明装置の一例を概略的に示した断面図である。
本発明の実施形態に係る照明装置40は、図3に示すように、前述した有機EL素子10と、光散乱部材30とを備えている。
より具体的には、照明装置40は、有機EL素子10の基板2と光散乱部材30とが接触するように構成されている。光散乱部材30は、光を散乱できるものであれば特に制限されないが、図3においては、透明基板31に微粒子32が分散した部材とされている。
透明基板31としては、例えば、ガラス基板を好適に挙げることができる。微粒子32としては、透明樹脂微粒子を好適に挙げることができる。ガラス基板及び透明樹脂微粒子としては、いずれも、公知のものを使用できる。このような照明装置40は、有機電界発光素子10からの発光が散乱部材30の光入射面30Aに入射されると、入射光を光散乱部材30により散乱させ、散乱光を光出射面30Bから照明光として出射するものである。
【実施例】
【0140】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0141】
〔合成例〕
化合物(30)の合成
化合物(30)の合成スキームを下記に示す。
【0142】
【化38】
【0143】
三ツ口フラスコに2,4−ペンタンジオン(50mL)、ジメチルアセトアミド(300mL)、炭酸カリウム(200g)を加え80℃で撹拌させた。ベンジルブロミド(127mL)を滴下後、140℃で9時間反応させ、蒸留水(250mL)を加え沈殿物をろ取した。ろ取した沈殿物にイソプロピルアルコール(150mL)を加え、加熱撹拌しながら洗浄することで、化合物(W−1)(56.8g)を得た。
三ツ口フラスコに化合物(W−1)(25.0g)、ジメチルホルムアミド(150mL)を加え、撹拌しながら化合物(G−1)(37mL)を滴下した。150℃で7時間反応させた。氷浴につけて撹拌し、得られた沈殿物をろ取することで化合物(W−2)(21.0g)を得た。
三ツ口フラスコに化合物(W−2)(20.0g)、エタノール(200mL)を加え、加熱還流させた。そこへエタノール(10mL)に溶解させたヒドラジン一水和物(5.64g)をゆっくり滴下した後、4.5時間反応させた。エタノールを留去し、蒸留水(600mL)に注ぎ、沈殿させた。得られた沈殿物にイソプロパノール(30mL)を加え、氷浴中で撹拌しながら洗浄した後、更にイソプロパノール/ヘキサン=1/1で洗浄することで、化合物(W−3)(12.0g)を得た。
三ツ口フラスコに化合物(W−3)(1.00g)、炭酸カリウム(1.68g)、1,3−ジメチルイミダゾリジノン(10mL)を加え、100℃で加熱撹拌した。その後、化合物(G−2)(810mg)を加えて、135℃に昇温し8.5時間反応させた。蒸留水(50mL)を加え白色沈殿を生成させ、沈殿物をろ取した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行うことで、化合物(W−4)(660mg)を得た。
三ツ口フラスコに化合物(W−4)(550mg)、塩化白金(276mg)、m−トルニトリル(5mL)を加え、外温220℃にて4時間反応させた。反応溶液を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行うことで、化合物(30)(390mg)を得た。得られた化合物の同定は1H−NMRにより行った。1H−NMRデータを図8に示す。
【0144】
化合物(29)の合成
化合物(29)の合成スキームを下記に示す。
【0145】
【化39】
【0146】
三ツ口フラスコに化合物(W−3)(1.00g)、炭酸カリウム(1.68g)、1,3−ジメチルイミダゾリジノン(10mL)を加え、100℃で加熱撹拌した。その後、化合物(G−3)(1.16g)を加えて、155℃に昇温し6時間反応させた。蒸留水(50mL)を加え白色沈殿を生成させ、沈殿物をろ取した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、イソプロピルアルコールで洗浄し、化合物(W−5)(610mg)を得た。
三ツ口フラスコに化合物(W−5)(610mg)、塩化白金(263mg)、m−トルニトリル(5mL)を加え、加熱還流し、11時間反応させた。反応溶液を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行うことで、化合物(29)(330mg)を得た。得られた化合物の同定は1H−NMRにより行った。1H−NMRデータを図9に示す。
【0147】
化合物(80)の合成
化合物(80)の合成スキームを下記に示す。
【0148】
【化40】
【0149】
三ツ口フラスコに化合物(W−3)(450mg)、化合物(G−4)(1.55g)、酸化銅(I)(78mg)、化合物(G−5)(75mg)、炭酸セシウム(3.60g)、1,3−ジメチルイミダゾリジノン(10mL)を加え、170℃で6時間反応させた。反応溶液を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行うことで、化合物(W−6)(440mg)を得た。
三ツ口フラスコに化合物(W−6)(430mg)、塩化白金(173mg)、m−トルニトリル(5mL)を加え、加熱還流し、8時間反応させた。溶媒を減圧留去し、メタノールを加えて沈殿物をろ取した。得られた沈殿物をm−トルニトリルに溶解させ、ヘキサンを加えて再沈殿を行った。得られた沈殿物をろ取し、イソプロピルアルコールで洗浄することで化合物(80)(170mg)を得た。得られた化合物の同定は1H−NMRにより行った。1H−NMRデータを図10に示す。
【0150】
化合物(26)の合成
化合物(26)の合成スキームを下記に示す。
【0151】
【化41】
【0152】
三ツ口フラスコに2,4−ペンタンジオン(20mL)、ジメチルアセトアミド(100mL)、炭酸カリウム(80.3g)を加え、80℃で加熱撹拌させた。1−ブロモ−2−メチルプロパン(78.4g)を滴下後、135℃に昇温し、18時間反応させた。蒸留水を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を濃縮させた。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、化合物(W−7)(6.6g)を得た。
化合物(W−8)は前記化合物(W−2)を得る方法と同様な方法を行うことで得た。
化合物(W−9)は前記化合物(W−3)を得る方法と同様な方法を行うことで得た。
化合物(W−10)は前記化合物(W−6)を得る方法と同様な方法を行うことで得た。
化合物(26)は前記化合物(29)を得る方法と同様な方法を行うことで得た。得られた化合物の同定は1H−NMRにより行った。1H−NMRデータを図11に示す。
【0153】
化合物(32)の合成
下記化合物(32)は、前記化合物(26)の出発原料である1−ブロモ−2−メチルプロパンを1−ブロモ−2,2−ジメチルプロパンに置き換え同様の方法により合成できる。
【0154】
【化42】
【0155】
化合物(97)の合成
化合物(97)の合成スキームを下記に示す。
【0156】
【化43】
【0157】
化合物(W−11)は前記化合物(W−2)や前記化合物(W−8)を得る方法と同様な方法を行うことで得た。
化合物(W−12)は前記化合物(W−3)や前記化合物(W−9)を得る方法と同様な方法を行うことで得た。
三ツ口フラスコに化合物(W−12)(6.00g)、化合物(G−7)(10.9g)、酸化銅(I)(487mg)、化合物(G−5)(1.87g)、炭酸セシウム(22.2g)、ジメチルホルムアミド(100mL)を加え、175℃で26時間反応させた。蒸留水を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を濃縮させた。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行うことで、化合物(W−13)(6.00g)を得た。
三ツ口フラスコに化合物(W−13)(2.00g)、化合物(G−4)(3.20g)、酸化銅(I)(93mg)、化合物(G−5)(356mg)、炭酸セシウム(4.20g)、1,3−ジメチルイミダゾリジノン(50mL)を加え、200℃で20時間反応させた。蒸留水を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を濃縮させた。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行うことで、化合物(W−14)(2.82g)を得た。
三ツ口フラスコに化合物(W−14)(3.32g)、塩化白金(1.90g)、m−トルニトリル(70mL)を加え、加熱還流し、30時間反応させた。反応溶液を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行うことで、化合物(97)(2.92g)を得た。得られた化合物の同定は1H−NMRにより行った。1H−NMRデータを図12に示す。
【0158】
化合物(127)の合成
化合物(127)の合成スキームを下記に示す。
【0159】
【化44】
【0160】
三ツ口フラスコに化合物(W−13)(2.65g)、化合物(G−8)(3.35g)、酸化銅(I)(123mg)、化合物(G−5)(471mg)、炭酸セシウム(5.6g)、1,3−ジメチルイミダゾリジノン(70mL)を加え、185℃で23時間反応させた。蒸留水を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を濃縮させた。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行うことで、化合物(W−15)(2.75g)を得た。
三ツ口フラスコに化合物(W−15)(500mg)、塩化白金(273mg)、m−トルニトリル(10mL)を加え、加熱還流し、13時間反応させた。反応溶液を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行うことで、化合物(127)(450mg)を得た。得られた化合物の同定は1H−NMRにより行った。1H−NMRデータを図13に示す。
【0161】
化合物(57)の合成
化合物(57)の合成スキームを下記に示す。
【0162】
【化45】
【0163】
三ツ口フラスコに化合物(W−13)(1.10g)、炭酸カリウム(1.97g)、化合物(G−2)(864mg)、1,3−ジメチルイミダゾリジノン(25mL)を加え、150℃で48時間加熱撹拌した。蒸留水を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を濃縮させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行うことで、化合物(W−16)(1.22g)を得た。
三ツ口フラスコに化合物(W−16)(1.22g)、塩化白金(792mg)、m−トルニトリル(10mL)を加え、加熱還流し、8時間反応させた。反応溶液をセライト上に熱時ろ過させ、不溶物を除いた。その後、生じた沈殿物をろ取し、メタノールで洗浄することで、化合物(57)(1.08g)を得た。得られた化合物の同定は1H−NMRにより行った。1H−NMRデータを図14に示す。
【0164】
〔実施例1〜4及び比較例1〜3〕
下記化合物(26)、(29)、(30)、(80)及び比較化合物(R−1)〜(R−3)を、それぞれ、ジクロロメタンに10質量%になるように溶解して、各化合物溶液を得た。
これらの溶液の発光波長と量子収率をSHIMADZU製SPECTROFLUOROPHOTOMETER(RF−5300PC)を用いて測定した。結果を下記表1に示す。
【0165】
【化46】
【0166】
【表1】
【0167】
〔有機薄膜の作製及び評価〕
〔実施例5〕
実施例4で用いた化合物(26)10%、ホスト材料として下記化合物(H−64)を90%の比率(質量比)でガラス基板に真空蒸着した。
得られた有機薄膜について、以下のようにして発光波長、フォトルミネッセンス強度を求めた。
発光スペクトル、量子収率は浜松ホトニクス製スペクトルアナライザーPMA−11を用いて測定し、CIExy色度座標を求めた。得られた有機薄膜の発光測定を行ったところ、λmax=437,462nm、φ=0.57となり完全なモノマー発光が得られた。CIExy色度座標は(0.14、0.12)であり、純青色発光であることを確認した。また、その発光スペクトルは図4に示す通りであった。
【0168】
【化47】
【0169】
〔比較例4〕
実施例5の化合物(26)を比較化合物(R−1)に置き換え、その他は実施例5と同様にしてガラス基板に真空蒸着し、得られた有機薄膜の発光測定を行ったところ、λmax=566nmとなり凝集体の発光が主として得られた。CIExy色度座標は(0.46、0.50)であり、純青色発光は達成できず、黄色発光であった。また、その発光の発光スペクトルは図4に示す通りであった。
【0170】
〔実施例6〜8〕
下記化合物(97)、(127)、(57)を、それぞれ、実施例1〜4と同様に各化合物溶液を調整し、実施例1〜4と同様に溶液中の発光波長及び量子収率を測定した。結果を下記表2に示す。
【0171】
【化48】
【0172】
【表2】
【0173】
〔実施例9〕
実施例6で用いた化合物(97)10%、ホスト材料として下記化合物(H−75)を90%の比率(質量比)とした以外は、実施例5と同様にガラス基板に真空蒸着し、得られた有機薄膜の発光測定を行ったところ、λmax=455,481nm、φ=0.40となり完全なモノマー発光が得られた。CIExy色度座標は(0.15、0.17)であり、純青色発光であることを確認した。また、その発光の発光スペクトルは図5に示す通りであった。
【0174】
【化49】
【0175】
〔比較例5〕
実施例9の化合物(97)を比較化合物(R−4)に置き換え、その他は実施例9と同様にしてガラス基板に真空蒸着し、得られた有機薄膜の発光測定を行ったところ、λmax=456,482nm、φ=0.49だが、図5に示す発光スペクトルの通り、長波長領域に裾を引いているために、CIExy色度座標は(0.20、0.27)であり、実施例9と比較して、青色純度が劣っていることがわかった。
【0176】
〔実施例10〕
実施例9で用いたホスト材料を化合物(H−64)に置き換え、その他は実施例9と同様にしてガラス基板に真空蒸着し、得られた有機薄膜の発光測定を行ったところ、λmax=453,481nm、φ=0.68となり完全なモノマー発光が得られた。CIExy色座標は(0.16、0.19)であり、青色発光であることを確認した。また、その発光スペクトルは図6に示す通りであった。
【0177】
〔実施例11〕
実施例7で用いた化合物(127)10%、ホスト材料として化合物(H−64)を90%の比率(質量比)とした以外は、実施例9と同様にガラス基板に真空蒸着し、得られた有機薄膜の発光測定を行ったところ、λmax=454,480nm、φ=0.67となり完全なモノマー発光が得られた。CIExy色座標は(0.14、0.17)であり、青色発光であることを確認した。
【0178】
〔実施例12〕
実施例8で用いた化合物(57)10%、ホスト材料として下記化合物(H−1)を90%の比率とした以外は、実施例9と同様にガラス基板に真空蒸着し、得られた有機薄膜の発光測定を行ったところ、λmax=463,490nm、φ=0.71、CIExy色座標は(0.22、0.33)であり水色発光であった。また、その発光スペクトルは図7に示す通りであった。下記比較例6と比較して、エキシマー発光成分が極度に弱くなり、モノマー発光が主となる発光スペクトルが得られた。また、量子収率も約10倍に向上した。嵩高い置換基であるt-ブチル基を導入した本発明の効果であると考えられる。
【0179】
【化50】
【0180】
〔比較例6〕
実施例12の化合物(57)を比較化合物(R−3)に置き換え、その他は実施例12と同様にしてガラス基板に真空蒸着し、得られた有機薄膜の発光測定を行ったところ、λmax=602nm、φ=0.07となり凝集体の発光が主として得られ、青色発光は達成できなかった。また、その発光スペクトルは図7に示す通りであった。
【0181】
〔有機電界発光素子の作製及び評価〕
〔実施例13〕
0.5mm厚み、2.5cm角のITO膜を有するガラス基板(ジオマテック社製、表面抵抗10Ω/□)を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。この透明陽極(ITO膜)上に真空蒸着法にて以下の有機層(有機化合物層)を順次蒸着した。
なお、本明細書の実施例における蒸着速度は、特に断りのない場合は0.2nm/秒である。蒸着速度は水晶振動子を用いて測定した。以下に記載の膜厚も水晶振動子を用いて測定したものである。
【0182】
洗浄したITO基板を蒸着装置に入れ、4,4’,4’’−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン (2−TNATA)、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン (F4−TCNQ)を99.7:0.3の質量比で120nm共蒸着し、更にこの上にα−NPDを7nm蒸着し、更にこの上に下記化合物(H−26)を3nm蒸着した。この上に白金錯体として上記化合物(127)、ホスト材料として上記化合物(H−75)、バインダー材料として下記化合物(1−7)を10:45:45の質量比で30nm共蒸着し(発光層)、更にこの上にBAlqを30nm蒸着した。
得られた有機薄膜上にパターニングしたマスク(発光面積が4mm×5mmとなる)を設置し、フッ化リチウムを1nm蒸着した後アルミニウムを100nm蒸着した。これを大気に触れさせること無く、アルゴンガスで置換したグローブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止し、実施例13の有機電界発光素子を作製した。
【0183】
【化51】
【0184】
(発光素子の評価)
得られた有機電界発光素子について、以下のようにして発光波長、エレクトロルミネッセンス強度、及び外部量子効率を求めた。
東陽テクニカ製ソースメジャーユニット2400を用いて、直流電圧を素子に印加し発光させ、その輝度をトプコン社製輝度計BM−8を用いて測定した。発光スペクトルと発光波長は浜松ホトニクス製スペクトルアナライザーPMA−11を用いて測定し、CIExy色度座標を求めた。これらを元に外部量子効率を輝度換算法により算出した。
【0185】
作製した有機電界発光素子に直流定電圧を印加したところ、本発明の例示化合物(127)に由来する青色の発光が得られた。表3に作製した素子の相対外部量子収率ηext、CIExy色度座標値を示した。
【0186】
〔比較例7〕
実施例13の化合物(127)を比較化合物(R−4)に置き換え、その他は実施例13と同様にして素子を作製し、評価した。表3に評価結果を示す。
【0187】
【表3】
【0188】
以上より、四座配位子含有白金錯体に嵩高い置換基を導入することで、溶液中での発光量子収率が大幅に向上し、また、有機薄膜中で凝集が起こらずモノマー発光が可能となった。これにより本発明の化合物は、従来の白金錯体と比較して、色純度及び発光効率の点で極めて優れることが分かった。
【符号の説明】
【0189】
2・・・基板
3・・・陽極
4・・・正孔注入層
5・・・正孔輸送層
6・・・電子ブロック層
7・・・発光層
8・・・電子輸送層
9・・・陰極
10・・・有機電界発光素子(有機EL素子)
11・・・有機層
12・・・保護層
14・・・接着層
16・・・封止容器
20・・・発光装置
30・・・光散乱部材
30A・・・光入射面
30B・・・光出射面
32・・・微粒子
31・・・透明基板
40・・・照明装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とする白金錯体。
【化1】
[上記一般式(1)中、R11〜R14は各々独立に置換基を表す。n11及びn12は各々独立に0〜2の整数を表し、n13及びn14は各々独立に0〜3の整数を表す。n11、n12が2のとき、2つ存在するR11、R12はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、R11同士、R12同士が互いに連結して環を形成してもよい。n13、n14が2以上のとき、複数存在するR13、R14はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣り合うR13同士、R14同士が互いに連結して環を形成してもよい。S11〜S14は各々独立に水素原子又は置換基を表す。隣り合うR13とS13、R14とS14、S11とS12は互いに連結して環を形成してもよい。ただし、S11〜S14の少なくとも一つは下記置換基群Sより選択される置換基を表す。]
【化2】
【請求項2】
前記白金錯体が、下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項1に記載の白金錯体。
【化3】
[上記一般式(2)中、R21〜R25は各々独立に置換基を表す。n21、n22、n24は各々独立に0〜2の整数を表し、n23は0〜3の整数を表し、n25は0〜4の整数を表す。n21、n22、n24が2のとき、2つ存在するR21、R22、R24はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、R21同士、R22同士が互いに連結して環を形成してもよい。n23、n25が2以上のとき、複数存在するR23、R25はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣り合うR23同士、R25同士が互いに連結して環を形成してもよい。S21〜S23は各々独立に水素原子又は置換基を表す。隣り合うR23とS23、S21とS22は互いに連結して環を形成してもよい。ただし、S21〜S23の少なくとも一つは前記置換基群Sより選択される置換基を表す。XはO、S、Se、NR201、SiR202R203又はCR204R205を表す。R201〜R205は各々独立に水素原子又は置換基を表す。]
【請求項3】
前記一般式(2)のXがNR36である[R36は水素原子又は置換基を表す]ことを特徴とする請求項2に記載の白金錯体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の白金錯体を含有することを特徴とする発光材料。
【請求項5】
一対の電極間に発光層を含む複数の有機層を有し、前記有機層のいずれかが請求項1〜3のいずれか1項に記載の白金錯体を含有することを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項6】
請求項5に記載の有機電界発光素子を用いた表示装置。
【請求項7】
請求項5に記載の有機電界発光素子を用いた照明装置。
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とする白金錯体。
【化1】
[上記一般式(1)中、R11〜R14は各々独立に置換基を表す。n11及びn12は各々独立に0〜2の整数を表し、n13及びn14は各々独立に0〜3の整数を表す。n11、n12が2のとき、2つ存在するR11、R12はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、R11同士、R12同士が互いに連結して環を形成してもよい。n13、n14が2以上のとき、複数存在するR13、R14はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣り合うR13同士、R14同士が互いに連結して環を形成してもよい。S11〜S14は各々独立に水素原子又は置換基を表す。隣り合うR13とS13、R14とS14、S11とS12は互いに連結して環を形成してもよい。ただし、S11〜S14の少なくとも一つは下記置換基群Sより選択される置換基を表す。]
【化2】
【請求項2】
前記白金錯体が、下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項1に記載の白金錯体。
【化3】
[上記一般式(2)中、R21〜R25は各々独立に置換基を表す。n21、n22、n24は各々独立に0〜2の整数を表し、n23は0〜3の整数を表し、n25は0〜4の整数を表す。n21、n22、n24が2のとき、2つ存在するR21、R22、R24はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、R21同士、R22同士が互いに連結して環を形成してもよい。n23、n25が2以上のとき、複数存在するR23、R25はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣り合うR23同士、R25同士が互いに連結して環を形成してもよい。S21〜S23は各々独立に水素原子又は置換基を表す。隣り合うR23とS23、S21とS22は互いに連結して環を形成してもよい。ただし、S21〜S23の少なくとも一つは前記置換基群Sより選択される置換基を表す。XはO、S、Se、NR201、SiR202R203又はCR204R205を表す。R201〜R205は各々独立に水素原子又は置換基を表す。]
【請求項3】
前記一般式(2)のXがNR36である[R36は水素原子又は置換基を表す]ことを特徴とする請求項2に記載の白金錯体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の白金錯体を含有することを特徴とする発光材料。
【請求項5】
一対の電極間に発光層を含む複数の有機層を有し、前記有機層のいずれかが請求項1〜3のいずれか1項に記載の白金錯体を含有することを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項6】
請求項5に記載の有機電界発光素子を用いた表示装置。
【請求項7】
請求項5に記載の有機電界発光素子を用いた照明装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−213674(P2011−213674A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84404(P2010−84404)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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