説明

皮膚外用剤

【課題】 粘度が高いにもかかわらず、シートへの含浸性が良好な皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】 (A)カルボキシビニルポリマー、(B)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、及び(C)疎水基と親水基とを有する水溶性多糖誘導体を含有する皮膚外用剤、特に、シートに含浸させて用いる皮膚外用剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤、特にシートに含浸させて用いる皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、顔の皮膚に美容液を供給する際に使用される美容用具として、化粧用シート体であるフェイスマスクが使用されている(例えば、特許文献1参照)。フェイスマスクは、化粧水等の液体を含浸させて顔面に載置される。かかるフェイスマスクに関しては、シートの形状に関する技術(特許文献2,3参照)、その製造方法に関する技術(特許文献4)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−172022号公報
【特許文献2】特開2010−155454号公報
【特許文献3】特開2009−195373号公報
【特許文献4】特開2010−22484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シートに含浸させる皮膚外用剤の粘度が低いと、肌上にシートを適用する際に液ダレしやすくなるが、逆に粘度が高すぎると皮膚外用剤がシートに含浸しにくくなり、生産性に問題を生じる場合があった。そこで、本発明においては、粘度が高いにもかかわらず、シートへの含浸性が良好な皮膚外用剤を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(A)カルボキシビニルポリマー、(B)アルキル変性カルボキシビニルポリマー、及び(C)疎水基と親水基とを有する水溶性多糖誘導体を含有する皮膚外用剤、特に、シートに含浸させて用いる皮膚外用剤に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の皮膚外用剤は、粘度が高いため、肌上で液ダレしにくく、しかもシートへの含浸性が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の皮膚外用剤に関し、詳細に説明する。
【0008】
本発明において用いる成分(A)のカルボキシビニルポリマーは、中和することにより粘度が上昇するポリアクリル酸系高分子であり、平均分子量10万〜500万のものが好ましい。市販されているものとしては、カーボポール940、カーボポール941、カーボポール980、カーボポール981、カーボポールETD2050(以上、BF Goodrich社製)、シンタレンK、シンタレンL(以上、3Vシグマ社製)等が挙げられ、これらを1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0009】
成分(A)のカルボキシビニルポリマーは、1種以上を用いることができ、全組成中に0.01〜10質量%、特に0.02〜5質量%、更に0.05〜3質量%配合するのが、十分な粘度が得られるとともに、使用感も良好であり好ましい。
【0010】
本発明で用いる成分(B)のアルキル変性カルボキシビニルポリマーは、中和することにより粘度が上昇するポリアクリル酸系高分子であり、平均分子量10万〜500万のものが好ましい。市販されているものとしては、ペミュレンTR−1、ペミュレンTR−2、カーボポールULTREZ−20、カーボポールULTREZ−21(以上、BF Goodrich社製)等が挙げられ、これらを1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0011】
成分(B)のアルキル変性カルボキシビニルポリマーは、1種以上を用いることができ、全組成中に0.01〜10質量%、特に0.02〜5質量%、更に0.05〜3質量%配合するのが、十分な粘度が得られるとともに、使用感も良好であり好ましい。
【0012】
本発明で用いる成分(C)の疎水基と親水基とを有する水溶性多糖誘導体としては、炭素数8以上の炭化水素基を有するものが好ましく、例えば多糖類又はその誘導体のヒドロキシル基の水素原子の一部又は全てが、(a)炭素数8〜40のアルキル基、アルケニル基、アリールアルキル基及びアルキルアリール基から選ばれる疎水部を有する置換基、及び(b)ヒドロキシル基が置換していてもよいイオン性又は非イオン性の親水部を有する置換基で置換されており、置換基(a)と置換基(b)の置換度の比が1:1000〜100:1である水溶性多糖誘導体等が挙げられる。
【0013】
ここで、置換基(a)としては、例えば炭素数8〜40のアルキル基、アルケニル基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、アルキルエーテル基、アルケニルエーテル基、アリールアルキルエーテル基等が挙げられ、特に炭素数10〜40のアルキル基又はアルケニル基を有する置換グリセリルエーテル基が好ましい。具体的には、2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロピル基、2−アルコキシ−1−(ヒドロキシメチル)エチル基、2−ヒドロキシ−3−アルケニルオキシプロピル基、2−アルケニルオキシ−1−(ヒドロキシメチル)エチル基が挙げられる。
【0014】
また、置換基(b)としては、例えばメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ポリオキシエチレン基、ポリグリセリン基、スルホアルキル基等が挙げられる。これらのうち、ヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数1〜5のスルホアルキル基又はその塩が好ましく、具体的には2−スルホエチル基、3−スルホプロピル基、3−スルホ−2−ヒドロキシプロピル基、2−スルホ−1−(ヒドロキシメチル)エチル基等が挙げられ、それらスルホ基の全てあるいは一部がアルカリ金属、アルカリ土類金属、アミン類等の有機カチオン基、アンモニウムイオンなどとの塩となっていてもよい。
【0015】
置換基(a)の置換度は、構成単糖残基当たり0.001〜1、特に0.002〜0.5、更に0.003〜0.1であるのが好ましく、置換基(b)の置換度は、構成単糖残基当たり0.01〜2.5、特に0.02〜2、更に0.1〜1.5であるのが好ましい。また、置換基(a)と置換基(b)の置換度の比は1:1000〜100:1、特に1:500〜10:1、更に1:300〜10:1であるのが好ましい。
【0016】
また、成分(C)の多糖誘導体の基本骨格は公知の多糖類から選択され、特にセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。また、これら多糖類又はその誘導体の重量平均分子量は、1万〜1000万、特に10万〜500万、更に30万〜200万の範囲が好ましい。
【0017】
このような疎水基と親水基とを有する水溶性多糖誘導体は、例えば特開平11−12119号公報に記載の方法により、多糖類又はその誘導体に疎水性置換基(a)及び親水性置換基(b)を順次又は同時に導入することにより製造される。
【0018】
また、成分(C)の疎水基と親水基とを有する水溶性多糖誘導体としては、特開平3−12401号公報の実施例1〜3に記載されている変性セルロースエーテルや、米国特許第4228277号に記載されている非イオン長鎖アルキル化セルロースエーテル、変性ヒドロキシエチルセルロースや、疎水化変性スルホン化多糖誘導体などが好適に使用でき、市販品としてはポイズ310(花王社製)、ナトロゾル・プラス(NATROSOL PLUS)330やナトロゾル・プラスCS(NATROSOL PLUS)D−67(アクアロン・カンパニー社製)等が好適に使用できる。
【0019】
成分(C)の疎水基と親水基とを有する水溶性多糖誘導体は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.01〜10質量%、特に0.02〜5質量%、更に0.05〜3質量%配合するのが、十分な粘度が得られるとともに、使用感も良好であり好ましい。
【0020】
本発明の皮膚外用剤は、成分(A)のカルボキシビニルポリマーと、成分(B)のアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、及び成分(C)疎水基と親水基とを有する水溶性多糖誘導体を併用して用いることにより、適度な粘度を有しながら、シートに含浸しやすく、肌上に適用した際には、液ダレしにくいという優れた特徴を有する。本発明の皮膚外用剤において、適度な粘度は25℃で、8,000〜20,000cps程度が最適である。8,000cps未満では肌上に適用した際に液ダレを生じる可能性がある。20,000cpsを超えると、シートへの含浸に時間がかかり作業性が低下する。
【0021】
本発明の皮膚外用剤は、そのまま皮膚に塗布してもよく、シートに含浸させて用いても良い。
【0022】
シートに含浸させる場合、そのシートの素材は通常マスク化粧料に用いられるものであれば特に問わないが、例えばポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ナイロン、ビニロン、レーヨン、アセテート、コットン、パルプなどのセルロースなどが挙げられる。これらの素材は、カード機でウェブを形成し、ウェブに高圧の水をノズルから吐出し、水圧により繊維を交絡して、シート状に加工し、該シートをドライヤーで加熱乾燥を行うことにより作製された不織布を用いることが好ましい。シートの形状としては、顔面全面に適用する形状、部分的に適用する形状のどちらでも問題はない。シートは、予め皮膚外用剤を含浸させて共用することも可能であり、使用時に皮膚外用剤を含浸させてもよい。シートに含浸させる皮膚外用剤の量は、シートの面積、厚みなどにより適宜調整する。
【0023】
本発明の皮膚外用剤の剤型は水系若しくは乳化系が好ましく、さらには、水系ゲル状が最も好ましい。
【0024】
本発明の皮膚外用剤には、上述の必須成分の他に、必要に応じて、通常、医薬品、医薬部外品、皮膚化粧料に配合される、水性成分、油性成分、保湿剤、色素、乳化剤、可溶化剤、紫外線吸収剤、増粘剤、薬剤、香料、樹脂、防菌防黴剤、アルコール類等を適宜配合することができる。
【実施例】
【0025】
さらに実施例により、本発明の特徴について詳細に説明する。
【0026】
【表1】

【0027】
表1に示した処方にて定法に従い、ゲル状化粧料を調製した。表1中、疎水化変性スルホン化多糖誘導体としては、ヒドロキシエチルセルロースヒドロキシプロピルステアリルエーテルヒドロキシプロピルスルホン酸ナトリウムを用いた。
【0028】
実施例1及び比較例1、2について、調製翌日の粘度、pHの測定を行った。また、顔型に裁断した不織布への含浸性並びに含浸した不織布を顔に適用した場合の液ダレの状態を評価した。その結果、本発明の(A)カルボキシビニルポリマー、(B)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、及び(C)疎水基と親水基とを有する水溶性多糖誘導体を併用した実施例1は、粘度が高くても、マスクへの含浸性が良好で、マスクを顔に適用したときに液ダレが認められず良好な使用感であった。これに対し、(C)疎水基と親水基とを有する水溶性多糖誘導体をジェランガム置換した比較例においては、粘度を高くする(比較例1)とマスクへの含浸性が悪くなり、粘度を低くする(比較例2)とマスクを適用したときの液ダレがひどくなった。
【0029】
[実施例2] 美白美容液
(1)精製水 77.096(質量%)
(2)1,3−ブチレングリコール 20.00
(3)疎水化変性スルホン化多糖誘導体 0.50
(4)カルボキシビニルポリマー 0.12
(5)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.04
(6)水酸化ナトリウム(10質量%水溶液) 0.244
(7)アスコルビルリン酸マグネシウム 2.00
【0030】
[実施例3] 保湿美容液
(1)精製水 77.096(質量%)
(2)1,3−ブチレングリコール 20.00
(3)疎水化変性スルホン化多糖誘導体 0.50
(4)カルボキシビニルポリマー 0.12
(5)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.04
(6)水酸化ナトリウム(10質量%水溶液) 0.244
(7)ヒアルロン酸ナトリウム 2.00
【0031】
実施例2、実施例3についても、顔型に切断した不織布への含浸性並びに含浸した不織布を顔に適用した場合の液ダレの状態を評価した結果、マスクへの含浸性が良好で、マスクを顔に適用したときに液ダレが認められず良好な使用感であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシビニルポリマー、(B)アルキル変性カルボキシビニルポリマー、及び(C)疎水基と親水基とを有する水溶性多糖誘導体を含有する皮膚外用剤。
【請求項2】
シートに含浸させて用いる、請求項1に記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2012−97029(P2012−97029A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245781(P2010−245781)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000135324)株式会社ノエビア (258)
【Fターム(参考)】