説明

皮膚止痒外用組成物

本発明の目的は、皮膚止痒効果を有し、更に、良好な外観と使用感とを示す組成物を提供することである。 本発明は、ムコ多糖類又はその誘導体を0.5〜20重量%含有する皮膚止痒外用組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、優れた皮膚止痒効果を有する組成物に関する。
【背景技術】
従来、皮膚の痒みに対する止痒外用剤として、抗ヒスタミン剤やステロイド剤等が処方されてきたが、これらの薬剤は必ずしも充分な止痒効果が得られるものではなかった。
特に、乾燥性の痒みは、その発症機序が明確ではなく、そのため、特定の治療法がないのが現状である。
更に、これら痒みの原因も一様ではなく、アトピー性皮膚炎による痒みでは上記薬剤に効果がみられることもあるが、乾燥性の痒み、老人性皮膚掻痒症及び腎透析後の痒みに対しては、上記の薬剤ではほとんど効果が認められない。これは、痒みの質がそれぞれに異なるためである。
他方、皮膚の乾燥を防ぐためには、尿素、ワセリンの様な保湿剤が用いられているが、乾燥による痒みを改善することができない。また、ムコ多糖類も保湿剤として用いられることがあるが、皮膚止痒効果については全く知られていない(化粧品成分ガイド、第2版、フレグランスジャーナル社、2002年4月発行)。
発明の要約
本発明は、上記現状に鑑み、種々の痒みに対し、幅広い止痒効果を有する組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、ムコ多糖類又はその誘導体が0.5〜20重量%の濃度で強力な皮膚止痒効果を示すことを見いだした。
即ち、本発明は、ムコ多糖類又はその誘導体を0.5〜20重量%含有する皮膚止痒外用組成物である。
本発明で用いられるムコ多糖類は、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン、キチン及びキトサンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、また、平均重合度が5以上、1200未満であることが好ましい。
本発明の皮膚止痒外用組成物は、更に液体油類や尿素を含有することが好ましい。
発明の詳細な開示
以下に本発明を詳述する。
本発明の皮膚止痒外用組成物は、ムコ多糖類又はその誘導体を含有するものである。
上記ムコ多糖類とは、ヘキソサミンを構成成分とする多糖類を意味する。上記ムコ多糖類としては特に限定されないが、例えば、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン、キチン及びキトサンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、上記ムコ多糖類の誘導体とは、上記ムコ多糖類における分子内の小部分の変化によって生成される化合物を意味し、例えば、ヒアルロン酸塩、コンドロイチン硫酸塩等が挙げられる。
上記ムコ多糖類又はその誘導体は、平均重合度が5以上、1200未満であることが好ましい。5未満であると、充分に皮膚止痒効果が得られないことがあり、1200以上になると、物性が変わり、やはり充分に皮膚止痒効果が得られなくなることがある。より好ましい平均重合度は10以上、1000未満であり、更に好ましくは50以上、800未満である。
上記ムコ多糖類又はその誘導体の含有量は、0.5〜20重量%であることが好ましい。0.5重量%未満であると、充分な皮膚止痒効果が得られないことがあり、20重量%を超えると、それ以上の効果は期待できないことに加え、溶解しにくく、粘度が高くなり皮膚への追従性が悪くなることがある。より好ましい含有量は0.5〜10重量%であり、更に好ましくは0.5〜8重量%であり、特に好ましくは1〜6重量%であり、最も好ましくは1〜4重量%である。
上記ムコ多糖類又はその誘導体としてキトサン又はその誘導体を用いる場合には、本発明の皮膚止痒外用組成物は、上記キトサン又はその誘導体を水溶化するために酸を含有することが好ましい。
上記酸としては無機酸、有機酸のいずれをも用いることができる。上記無機酸としては、例えば、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸等が挙げられる。上記有機酸としては、例えば、酢酸、コハク酸、リンゴ酸、乳酸、酪酸、フマル酸、マロン酸、イタコン酸、グルコン酸、グリコール酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられる。なかでも、カルボン酸にヒドロキシル基を有する化学構造を持つ脂肪酸であるヒドロキシ酸が好ましい。これらの酸は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
上記酸の含有量は、0.1〜10重量%であることが好ましい。0.1重量%未満であると、充分にキトサン又はその誘導体を水溶化できないことがあり、10重量%を越えると、適用部位によっては皮膚刺激性を示す可能性がある。より好ましい含有量は0.5〜5重量%である。
本発明の皮膚止痒外用組成物は、のびをよくし、良好な使用感を与えるために、更に液体油類を含有することが好ましい。上記液体油類としては特に限定されず、例えば、スクワラン等の炭化水素類、トリグリセライド等のグリセライド油類等が挙げられる。なかでも、スクワランが特に好適である。
上記液体油類の含有量は、2〜20重量%であることが好ましく、より好ましくは5〜15重量%である。
本発明の皮膚止痒外用組成物は、更に尿素を含有することが好ましい。
上記ムコ多糖類、特にキトサンは、水溶液中において、熱によりメイラード反応が起こりやすく褐変化することがあるが、本発明者らは、尿素を添加することによりキトサン等が安定化して褐変化を防止できることを見出した。
上記尿素の含有量は、0.1〜3重量%であることが好ましい。0.1重量%未満であると充分な効果が得られないことがあり、3重量%を超えると、効果がそれ以上高まらないだけでなく、ムコ多糖類が析出し、製剤化が困難となることがある。より好ましい含有量は0.1〜1.5重量%である。
なお、本発明の皮膚止痒外用組成物は、例えば亜硫酸塩等の硫黄原子を有する化合物は本発明の効果を消失させる恐れがあるので、これらの硫黄原子を有する化合物をメイラード反応防止成分として含有しないことが好ましい。
本発明の皮膚止痒外用組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、粉末、油分、界面活性剤、増粘剤、有機溶剤、可塑剤、色素、顔料、香料、防腐剤、抗酸化剤等を含有していても良い。
本発明の皮膚止痒外用組成物の剤形としては特に限定されず、例えば、軟膏剤、クリーム剤、液剤等が挙げられ、上記液剤としては、例えば、ゲル剤、ゾル剤、水溶液剤、アルコール剤、グリセリン・グリコール剤、油剤、懸濁型ローション剤、乳剤型ローション剤、ニス剤、湿布剤、噴霧剤等が挙げられる。
本発明の皮膚止痒外用組成物の製造方法としては特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。
本発明の皮膚止痒外用組成物の適用量は、有効成分の種類、濃度や塗布する部位の状態により特に限定されないが、通常は1日に1〜数回、0.01〜10g/1回程度で適用することが好ましい。また本発明の皮膚止痒外用組成物の適用方法としても特に限定されず、手指やへら等の器具を用いた通常の皮膚外用剤塗布方法の他、ポンプ式、スプレー式、チューブ式容器から直接塗布する方法、湿布する方法等が挙げられる。
【発明の効果】
本発明の皮膚止痒外用組成物は、痒みを著しく軽減することができ、乾燥性の痒み、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎等の皮膚炎の痒み、老人性皮膚そう痒症又は腎透析後の痒み、更には湿疹、かぶれ、蕁麻疹、あせも、虫さされ、しもやけ、ただれ等の痒みにも有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない
【実施例1〜20】
ムコ多糖類を表1に示す含有量(重量%)となるように注射用水(大塚製薬社製)に添加し、攪拌し、キトサン(平均重合度30又は300、和光純薬工業社製)のみ乳酸(小堺製薬社製)を添加して溶解し、実施例1〜20の組成物を得た。
(比較例1〜5)
ムコ多糖類を表1に示す含有量(重量%)となるように注射用水(大塚製薬社製)に添加し、攪拌し、キトサン(平均重合度30又は300、和光純薬工業社製)のみ乳酸(小堺製薬社製)を添加して溶解し、比較例1〜5の組成物を得た。
【実施例21〜46】
ムコ多糖類を表1に示す含有量(重量%)となるように注射用水(大塚製薬社製)に添加し、攪拌し、キトサン(平均重合度30又は300、和光純薬工業社製)のみ乳酸(小堺製薬社製)を添加して溶解し、更にスクワラン(マルハ社製)及び尿素(小堺製薬社製)を表1に示す含有量(重量%)となるように添加して懸濁、乳化し、実施例21〜46の組成物を得た。

(評価1)
実施例2、6、10、14、18、22、26、30、34、38及び43〜46の各組成物について、以下の方法により評価した。結果を表2に示した。
<健常人による官能性評価>
健常人により、外観及び使用感について、官能性評価を行った。上記項目について、5:非常に良好、4:良好、3:どちらともいえない、2:やや悪い、1:悪いの5段階評価をした。この数値が高いほど、使用感がよいことを表す。

表2に示した結果より明らかなように、尿素及び液体油類を含有することで、より好ましい外観及び使用感を示した。
(評価2)
実施例1、4、6、11、14、17、20、38及び比較例1〜3、5の各組成物について、以下の方法により評価した。結果を表3に示した。
<止痒性評価>
痒みをもつ6名(男性2名、女性4名)により、上記実施例及び比較例で得られた外用剤の単回塗布による止痒性評価を行った。塗布直後、3:著効、2:有効、1:どちらともいえない、0:無効、の評価を行ない、6名中、3〜4名の各数値について、2以上を有効として、有効率を評価した。有効率が高い程、止痒性が高いことを表す。

表3に示した結果より明らかなように、0.5重量%以上のムコ多糖類を含む実施例は、強力な止痒効果を示した。
【産業上の利用可能性】
本発明によれば、優れた皮膚止痒効果と良好な使用感とを両立することができる組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ムコ多糖類又はその誘導体を0.5〜20重量%含有することを特徴とする皮膚止痒外用組成物。
【請求項2】
ムコ多糖類は、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン、キチン及びキトサンからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の皮膚止痒外用組成物。
【請求項3】
ムコ多糖類又はその誘導体は、平均重合度が5以上、1200未満であることを特徴とする請求の範囲第1又は2項記載の皮膚止痒外用組成物。
【請求項4】
更に液体油類を含有することを特徴とする請求の範囲第1、2又は3項記載の皮膚止痒外用組成物。
【請求項5】
更に尿素を含有することを特徴とする請求の範囲第1、2、3又は4項記載の皮膚止痒外用組成物。

【国際公開番号】WO2004/084918
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【発行日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504097(P2005−504097)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004159
【国際出願日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】