説明

皮膚疾患の処置のための、マクロライドおよび局所麻酔薬の組合せ

33−エピクロロ−33−デスオキシアスコマイシンなどのマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤と、リドカイン、ポリドカノールまたはプリロカインなどの局所麻酔薬との相乗的組合せを提供する。それは、特に、アトピー性、接触性もしくは脂漏性皮膚炎、乾癬、座瘡、酒さ、ポストピール、そう痒症、皮膚熱傷、または痒みなどの皮膚疾患、および関連する疼痛の処置に有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、特に、皮膚疾患の処置における使用のための医薬組成物に関する。本発明は、マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤および局所麻酔薬を含む医薬組成物に関する。
【0002】
マクロライド系T細胞免疫調節剤および免疫抑制剤は、驚くべきことに、局所麻酔薬と組合せて使用したとき相乗的に作用し、結果として、有益な効果、とりわけ抗皮膚炎活性および疼痛の緩和が、個別に投与される有効量よりはるかに少ない投与量での共投与で見られるような、薬理学的活性の増強を生じることが明らかとなった。
【0003】
故に、本発明は、局所麻酔薬と混合したかまたは組合せたマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤を含む新規の医薬組成物に関し、それを以下に簡単に「本発明の組成物」と称する。
【0004】
マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤は、本明細書中にて、ラクトンまたはラクタム部分を含む大環状化合物構造を有するT細胞免疫調節剤またはT細胞免疫抑制剤であると解される。それは、好ましくは、少なくともいくらかのT細胞免疫調節活性または免疫抑制活性を有し、抗炎症活性などのさらなる医薬的特性を付随的に、または優位に有していても良い。
【0005】
局所麻酔薬とは、本明細書にて、興奮性または伝導性の一部または完全な欠如に関係する、末梢の、疼痛−伝達神経または神経末端の局所的に限定された可逆状態を誘導する、とりわけ(other than)ベンジルアルコールなどの化合物であると解される。
【0006】
本発明の組成物は、免疫調節成分または免疫抑制成分として、例えば経口もしくは静脈内などの全身的使用に、または両成分の局所的使用に適用可能であり得る;しかしながら、それらは局所的使用に共に適用されることが好ましい。それらは、その中に包含された特定の活性薬剤の既知の適応症に有用である。それらは特に皮膚疾患、例えばアトピー性、接触性もしくは脂漏性皮膚炎、乾癬、座瘡、酒さ、ポストピール(post-peel)、そう痒症、皮膚熱傷、または痒みなどのなどの炎症要因を有するかもしくは炎症性合併症を伴う皮膚疾患における使用のために用いられる。
【0007】
適当なマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤とは、例えばFKBP12結合カルシニューリン阻害剤またはマイトジェン活性化キナーゼ調節剤もしくは阻害剤であり、具体的にはアスコマイシンまたはラパマイシンである。好ましくは、アスコマイシンである。前記マクロライドは、好ましくは、少なくともいくらかのカルシニューリンまたはマイトジェン活性化キナーゼの調節活性または阻害活性を有するが、抗炎症活性などのさらなる医薬的特性を付随的にまたは優位に有していても良い。例えばアスコマイシンなどの、同じ構造クラスの他のメンバーと比較してより長期の作用活性を有する化合物、例えば、ゆっくりと不活性な産物に代謝分解される化合物が好ましい。
【0008】
アスコマイシンまたはラパマイシンとは、アスコマイシンまたはラパマイシ自体、またはその誘導体であると解される。アスコマイシンまたはラパマイシン誘導体は、親化合物のアンタゴニスト、アゴニストまたは類似体であると解され、それらは基本構造を保持し、そして少なくとも1種の生物学的特性、例えば親化合物の免疫学的特性を調節する。
【0009】
「抗炎症性アスコマイシン誘導体」とは、本明細書中にて、例えばアレルギー性接触性皮膚炎の動物モデルにおいて顕著な抗炎症活性を示すが、全身性免疫応答の抑制においては低い能力のみを有し、すなわち、アレルギー性接触性皮膚炎のマウスモデルでの局所投与にて約0.04%(w/v)濃度以下の最小有効量(MED)を有するが、同種腎臓移植のラットモデルでの経口投与におけるその効果は、タクロリムス(MED 14mg/kg)よりも少なくとも10倍低いものである、アスコマイシン誘導体と定義される(Meingassner, J.G.ら、 Br. J. Dermatol. 137 [1997] 568−579; Stuetz, A. Seminars in Cutaneous Medicine and Surgery 20 [2001] 233−241)。かかる化合物は、好ましくは親油性である。
【0010】
適当なアスコマイシンは、例えばEP 184162、EP 315978、EP 323042、EP 423714、EP 427680、EP 465426、EP 474126、WO 91/13889、WO 91/19495、EP 484936、EP 523088、EP 532089、EP 569337、EP 626385、WO 93/5059およびWO 97/8182に記載されており;
特に:
−アスコマイシン;
−タクロリムス(FK506;プログラフ(Prograf)(登録商標));
−イミダゾリルメトキシアスコマイシン(WO 97/8182の実施例1および式Iの化合物);
−32−O−(1−ヒドロキシエチルインドール−5−イル)アスコマイシン(L−732531)(Transplantation 65 [1998] 10−18、18−26、11頁、図1);および
−(32−デスオキシ,32−エピ−N1−テトラゾリル)アスコマイシン(ABT−281)(J.Invest.Dermatol. 12 [1999] 729−738、730頁、図1);
好ましくは:
−{1R,5Z,9S,12S−[1E−(1R,3R,4R)],13R,14S,17R,18E,21S,23S,24R,25S,27R}−17−エチル−1,14−ジヒドロキシ−12−[2−(4−ヒドロキシ−3−メトキシシクロヘキシル)−1−メチルビニル]−23,25−ジメトキシ−13,19,21,27−テトラメチル−11,28−ジオキサ−4−アザトリシクロ[22.3.1.0(4,9)]オクタコス−5,18−ジエン−2,3,10,16−テトラオン(EP626385の実施例8)(以下に「5,6−デヒドロアスコマイシン」として示す);
−{1E−(1R,3R,4R)]1R,4S,5R,6S,9R,10E,13S,15S,16R,17S,19S,20S}−9−エチル−6,16,20−トリヒドロキシ−4−[2−(4−ヒドロキシ−3−メトキシシクロヘキシル)−1−メチルビニル]−15,17−ジメトキシ−5,11,13,19−テトラメチル−3−オキサ−22−アザトリシクロ[18.6.1.0(1,22)]ヘプタコス−10−エン−2,8,21,27−テトラオン(EP569337の実施例6dおよび7l)(以下に「ASD 732」として示す);
【0011】
そして、とりわけ、
−ピメクロリムス(INN推薦)(ASM981;エリデル(Elidel)(商標))、すなわち
式I
【化1】

で示される、{[1E−(1R,3R,4S)]1R,9S,12S,13R,14S,17R,18E,21S,23S,24R,25S,27R}−12−[2−(4−クロロ−3−メトキシシクロヘキシル)−1−メチルビニル]−17−エチル−1,14−ジヒドロキシ−23,25−ジメトキシ−13,19,21,27−テトラメチル−11,28,ジオキサ−4−アザトレシクロ[22.3.1.0(4,9)]オクタコス−18−エン−2,3,10,16−テトラオン(EP427680の実施例66a)(以下に「33−エピクロロ−33−デスオキシアスコマイシン」として示す)
である。
【0012】
適当な抗炎症性アスコマイシン誘導体は、例えば:
(32−デスオキシ−32−エピ−N1−テトラゾリル)アスコマイシン(ABT−281);5,6−デヒドロアスコマイシン;ASD 732;およびピメクロリムスである。
適当なラパマイシンは、例えば米国特許番号第3’929’992号、WO94/9010および米国特許番号第5’258’389号記載のもの、好ましくはシロリムス(ラパマイシン;ラパミュン(Rapamune)(登録商標))およびエベロリムス(RAD001;セルチカン(Certican)(登録商標))である。
【0013】
適当な局所麻酔薬とは、例えばアミノエステルまたはアミノアミドであり;それは、例えば:
−ベンゾカイン(4−アミノ安息香酸エチルエステル);
−ブフェキサマク(bufexamac);
−ブピバカイン(1−n−フチル−2’,6’−ジメチル−2−ピペリジンカルボキサニリド);
−塩酸ジブカイン(シンコカイン;2−ブトキシ−N−[2−(ジエチルアミノ)エチル]−4−キノリンカルボキサミド一塩酸塩);
−ジメチソキン(キニソカイン(quinisocaine);3−ブチル−1−[2−(ジメチルアミノ)エトキシ]イソキノリン);
−ジクロニン[ジクロン(Dyclone)(登録商標);4−n−ブトキシ−β−(1−ピペリジル)プロピオフェノン];
−エチドカイン[2−(エチルプロピルアミン)−2’,6’−ブチロキシリジド];
−リドカイン(リグノカイン;キシロカイン(Xylocaine)(登録商標);ω−ジエチルアミノ−2,6−ジメチルアセトアニリド);
−メピバカイン(dl−N−メチルピペコリン酸−2,6−ジメチルアニリド);
−ミルテカイン(ノポキサミン(Nopoxamine)(登録商標);2−[2−(6,6−ジメチル−2−モルピネン−2−イル)エトキシ]トリエチルアミン);
−ポリドカノール(テシット(Thesit)(登録商標);ヒドロキシポリエトキシドデカノン);
−プラモキシン(プラモカイン;p−ブトキシフェニル γ−モルフォリノプロピルエーテル);
−プリロカイン(プロピトカイン;α−プロピルアミノ−2−メチルプロピオンアニリド);
−プロカイン(p−アミノベンゾイルジエチルアミノエタノール);
−テトラカイン(p−ブチルアミノベンゾイル−2−ジメチルアミノエタノール塩酸塩)であり;
好ましくはポリドカノールおよびプリロカイン、とりわけリドカインである。
【0014】
本発明の組成物の下位集団には、局所麻酔薬、とりわけ(other than)プリロカインおよび/またはリドカインと組合せたかまたは混合した、マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤、好ましくは上記の抗炎症性アスコマイシン誘導体、とりわけピメクロリムスが含まれる。
【0015】
本発明の組成物のさらなる下位集団にて、マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤とは、とりわけ(other than)タクロリムスである。さらなる下位集団にて、それは、とりわけ(other than)タクロリムスおよびシロリムスである。さらなる下位集団にて、それは、とりわけ(other than)タクロリムス、シロリムおよびアスコマイシンである。
【0016】
具体的に好ましい本発明の組成物は、リドカインと組合せたかまたは混合したピメクロリムスである。
【0017】
局所麻酔薬は、例えば注射可能であるか、または望ましくは局所的使用に適用される化合物であり得る。
【0018】
一方または両方の成分が、ある程度の固有の抗炎症活性を有する本発明の組成物が、炎症を伴う状態の処置における使用のために好ましい。特に、局所麻酔薬と組合せたアスコマイシンを含む組成物、とりわけ、ポリドカノール、リドカインまたはプリロカインと組合せた33−エピクロロ−33−デスオキシアスコマイシンが好ましい。炎症状態とは、例えば、アトピー性、接触性もしくは脂漏性皮膚炎、乾癬、座瘡、酒さ、ポストピール、そう痒症、皮膚熱傷、または痒み、および関連する疼痛である。
【0019】
本明細書に用いる「処置」には、予防、すなわち予防的処置ならびに治療的処置が含まれる。
【0020】
局所麻酔薬成分は、通常、局所的に投与される;マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤は、通常局所的に局所麻酔薬と一緒に、または個別に局所的もしくは全身的のどちらかで投与され得る。好ましくは、両方の化合物を局所的に投与する。
【0021】
相乗効果は、例えば、Chouらの、Transpl. Proc. 26 (1994) 3043に記載のような、2個の薬剤間のメカニズムの差異を補正するための相互作用項(interaction term)を用いて、Berenbaum, Clin. Exp. Immunol. 28 (1977) 1に記載のように測定される。相乗効果指数を、以下のように測定する:
【数1】

ここで、化合物AおよびBの用量とは、特定の組合せに用いたものを示し、AおよびBは、AおよびBそれぞれが同様の効果を与える個別の用量である。結果が1未満であるとき、相乗効果がある;結果が1であるとき、相加効果がある;結果が1より大きいとき、AとBは、アンタゴニストである。A/Aの用量対B/Bの用量のアイソボログラムのプロッティングにより、最大相乗効果の組合せを決定することができる。その後、アイソボログラムに沿った相乗効果用量、とりわけ最大相乗効果の点またはその近辺での2個の組成物の重量の比率として表される相乗効果比率を用いて、最適な相乗効果比率の2個の化合物を含む製剤を決定することができる。
【0022】
活性を、例えば前記組成物の個々の成分の薬学的活性を試験するための既知の分析モデルにて決定することができる。
【0023】
本発明はまた、マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤、例えば33−エピクロロ−3−デスオキシ−アスコマイシンまたは5,6−デヒドロアスコマイシンなどと、局所麻酔薬、例えばポリドカノール、リドカインまたはプリロカインなどを、相乗的有効投与量で共投与するための製品および方法を提供する。例えば:
−アトピー性、接触性もしくは脂漏性皮膚炎、乾癬、座瘡、酒さ、ポストピール、そう痒症、皮膚熱傷、または痒みなどの皮膚疾患、および関連する疼痛の、かかる状態に罹患しているかまたは危険のある被験者の処置または予防方法であって、相乗的有効量の本発明の組成物を共投与することを含む方法;
−相乗的有効量で局所麻酔薬と共投与するための医薬品の製造における、マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤の使用;
−相乗的有効量でマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤と共投与するための医薬品の製造における、局所麻酔薬の使用;
【0024】
−マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤および局所麻酔薬を、個別の単位用量剤形(好ましくは、前記単位用量剤形が、相乗的有効量における成分化合物の投与に適する)で、使用のための説明書と共に含み、要すれば成分化合物の投与のコンプライアンスを上昇させるためのさらなる手段、例えばラベルまたは図面を含んでいて良い、キット;
−局所麻酔薬との共投与を容易にするために使用される医薬キットの製造におけるマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤の使用;
−マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤との共投与を容易にするために使用される医薬品キットの製造における、局所麻酔薬の使用;
【0025】
−同時使用、個別使用または連続使用のための、好ましくは相乗的有効投与量での、例えばアトピー性、接触性もしくは脂漏性皮膚炎、乾癬、座瘡、酒さ、ポストピール、そう痒症、皮膚熱傷、または痒みなどの皮膚疾患、および関連する疼痛の処置または予防のための、組合せた医薬製剤としてのマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤および局所麻酔薬;
−例えばアトピー性、接触性もしくは脂漏性皮膚炎、乾癬、座瘡、酒さ、ポストピール、そう痒症、皮膚熱傷、または痒みなどの皮膚疾患、および関連する疼痛の処置または予防における使用のための、例えば相乗的有効投与量で、局所麻酔薬と組合せたかまたは混合したマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤を、少なくとも1種の薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含む、医薬組成物;そして、
−マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤と、少なくとも1種の薬学的に許容される希釈剤または担体と組合せたかまたは混合した局所麻酔薬を混合することを含む、本発明の組成物を製造する方法。
【0026】
「相乗的有効量」とは、関連する適応症についてのそれぞれの有効投与量を個々により下回るが、例えば上記に計算したような相乗効果比率での共投与にて薬学的に活性である、マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤の量および局所麻酔薬の量を意味する。さらに、「相乗的有効量」とは、関連する適応症についてのそれぞれの有効投与量と個々に等しく、相加効果を上回る結果を生じる、マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤の量および局所麻酔薬の量を意味し得る。
【0027】
存在するマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤のモル量は、局所麻酔薬の量と同じくらいからかなり少なく、好ましくは半分くらいかまたは半分以下である。故に、マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤と局所麻酔薬の相乗効果比率は重量で、約10:1から約1:50が適当であり、好ましくは約5:1から約1:20、より好ましくは約1:1から約1:15、例えば約1:12である。
【0028】
本発明の組成物は、自由な組合せ、例えば2個の成分の個別の全身的および局所的投与として投与され得るか、または患者に対して利便性を大いに高める、好ましくは両成分の局所投与のための、固定された組合せの製剤で投与され得る。
【0029】
前記化合物の絶対的な用量は、多数の因子、例えば個体、投与経路、所望の持続時間、活性物質の放出速度ならびに処置する状態の性質および重症度に依存して変化するであろう。例えば、必要な活性物質の量およびその放出速度は、血漿中の特定の活性物質の濃度が、治療効果に対して許容されるレベルでいつまで残っているかを測定する、公知のインビトロおよびインビボ技術を基に決定され得る。
【0030】
例えば、アトピー性皮膚炎もしくは接触性皮膚炎、痒み、またはそう痒症などの皮膚疾患の予防および処置にて、維持投与量の約2−3倍の初期投与量を投与するのが適当であり、続いて維持投与量の約2−3倍の日用量を1〜2週間の期間投与し、そしてその後、前記用量を1週間に約5%の割合で漸減し、維持投与量にする。一般に、大型動物、例えばヒトにおけるアトピー性、接触性もしくは脂漏性皮膚炎、乾癬、座瘡、酒さ、ポストピール、そう痒症、皮膚熱傷、または痒み、および関連する疼痛の予防および処置における使用のための経口投与にて、33−エピクロロ−33−デスオキシアスコマイシンの相乗的有効量は、33−エピクロロ−33−デゾキキシアスコマイシンの量が約2mg/kg/日以下、例えば、約0.01mg/kg/日から約2mg/kg/日、好ましくは約0.5mg/kg/日と、上記のような相乗的効果率にて、局所的に有効量のポリドカノール、リドカインまたはプリロカインを組合せるかまたは共投与する。
【0031】
「共投与」とは、一緒にまたは実質的に同時に、例えば15分以内かまたはそれ以下で、同じビヒクルかまたは別々のビヒクルのどちらかで、本発明の組成物成分を投与することを意味する。
【0032】
本発明の組成物には、いかなる常套的な経路による投与にも適する組成物が含まれ、特に経腸的投与、例えば、飲料用の溶液、錠剤またはカプセルの形態で経口的に、または例えば、注射用溶液または懸濁液の形態で非経腸的投与のどちらか;または、例えば、皮膚または粘膜の炎症性状態の処置のための、例えば、それぞれの成分の重量が約0.1%から約5%の濃度の、とりわけ浸透促進物質と組合せてかまたは混合した、例えば、皮膚用クリーム、軟膏、点耳液、ムース、シャンプー、溶液、ローション、ジェル、エマルジェルまたは類似の製剤の形態で局所的に、ならびに、例えば、眼用クリーム、ジェルまたは点眼調製液の形態での眼投与、肺および気管の炎症状態の処置のための、例えば吸入可能組成物の形態での投与、および、例えば、膣錠の形態での粘膜投与に適する組成物が含まれる。
【0033】
本発明の組成物としては、相乗効果比率でマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤および局所麻酔薬を含む、エマルジョン、マイクロエマルジョン、エマルジョン前濃縮物またはマイクロエマルジョン前濃縮物または固溶体、とりわけ油中水マイクロエマルジョン前濃縮物または水中油マイクロエマルジョンが適当である。
【0034】
本発明の組成物は、簡便な方法、例えば、マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤と局所麻酔薬を混合し、少なくとも1種の薬学的に許容される希釈剤または担体と組合せたかまたは混合することにより、製造され得る。
【0035】
前記活性物質成分は、必要に応じて、遊離型であるかまたは薬学的に許容される塩形態であり得る。
【0036】
本発明は主に、2個のみの薬学的に活性な成分の組合せまたは混合を検討しているが、本発明の目的と相反しない限りは、さらなる活性物質、例えば、1個のさらなる活性物質の存在を除外するものではない。
【0037】
以下の実施例は、本発明を説明するものである。前記化合物は遊離型、すなわち他に特記しない限り中性または塩基性形態である。
【0038】
実施例1クリーム
【表1】

【0039】
製造を、エマルジョンについての常套的な製造方法で行う。33−エピクロロ−33−デスオキシアスコマイシンを、中鎖トリグリセリド、オレイルアルコール、セシルステアリル硫酸ナトリウム、セチルアルコール、ステアリルアルコールおよびモノステアリン酸グリセリンを含む、加熱した均質の油相に加える。並行して、塩酸リドカイン、パラベン、プロピレングリコール、クエン酸および水酸化ナトリウムを含む水相を、油相と同じ温度で加熱する。油相を水相に加え、均質化する。得られたクリームを、室温まで冷やす。
【0040】
実施例2クリーム
組成物およびその製造は、ベンジルアルコール1.00gをパラベンの代わりに用いた以外は、実施例1のとおりである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所麻酔薬と組合せたかまたは混合したマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤を、少なくとも1種の薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含んでなる、医薬組成物。
【請求項2】
リドカイン、ポリドカノールまたはプリロカインと組合せたかまたは混合した33−エピクロロ−33−デスオキシアスコマイシンを含んでなる、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
相乗的有効量の請求項1記載の組成物を共投与することを含む、アトピー性、接触性もしくは脂漏性皮膚炎、乾癬、座瘡、酒さ、ポストピール、そう痒症、皮膚熱傷、または痒みなどの皮膚疾患、および関連する疼痛の、かかる状態に罹患しているかまたは危険のある被験者を処置する方法。
【請求項4】
マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤と、少なくとも1種の薬学的に許容される希釈剤または担体と組合せたかまたは混合している局所麻酔薬を混合することを含む、請求項1記載の組成物を製造する方法。
【請求項5】
使用のための説明書と共に、個別の単位用量剤形でマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤および局所麻酔薬を含んでなる、キット。

【公表番号】特表2006−522061(P2006−522061A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504968(P2006−504968)
【出願日】平成16年4月2日(2004.4.2)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003515
【国際公開番号】WO2004/087144
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】