説明

盛土壁構築方法

【課題】地盤が軟弱と推定される場所においても、地盤沈下による影響を最小限にとどめ耐久安定性に優れた盛土壁を構築すること。
【解決手段】第1の面状補強材2を配設した後盛土材3を投入し、所定勾配に仕上げて第1の盛土層4を完成し、続いて、該第1の盛土層4の上に第2の面状補強材2Aを配設し、以降、同様にして第2の盛土層4Aを完成し最終的に所定の高さの傾斜盛土層5を形成し、該傾斜盛土層5の自重により地盤沈下を生じせしめる。その後、根石ブロック8に埋設された台座部9に回動可能に軸支された連結具11の鈎状部10bに第1の面状補強材2が棒状体15を介して固定され、続いて、根石ブロック8と盛土層の間に新たな盛土材を充填し転圧され、また根石ブロック8の上に積層・並設される壁面パネル14の鈎状部10bに、同様にして第2の面状補強材2Aが固定され、以降同じ工程を順次繰り返して所定高さの盛土壁を完成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路等の構造物を構築する場合や、公園、台地等の盛土工事等に主として適用され、特に軟弱地盤の沈下対策を含めて施工する場合の盛土壁構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の盛土壁構築方法は、先ず壁面パネルが地面に対して垂直状態に、又は所定の角度傾斜して構築された後、壁面パネルと盛土層とを連結状態にする補強材が盛土層側に敷設され、続いて、ここに盛土材が搬入充填されて締め固められる。以降、所定の盛土層の厚みになるまで、壁面パネルを縦横方向に増設すると共に、その都度補強材を盛土層内に敷設しては、盛土材を搬入充填し、締め固め等の施工工程を順次繰り返し、所定の盛土層高さに形成される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−213689号公報(図5、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の盛土壁構築方法は、在来形のコンクリートブロックの頑強な擁壁構造のように、それ自体で強固に裏込め盛土を支え、またその盛土の面圧力の変動に耐えられる形態の構造ではなく、その仕様は壁面パネル自体は盛土のこぼれ出しを防止できる強度に耐えられる程度の設計施工に基ずく形態が多く利用されている。
【0004】
前記特許文献1に記載された盛土壁構築方法は、方形状のコンクリート枠体の中空に、防錆金属製の格子状の植生部を有する壁面緑化パネルが使用されている。該パネルはフレキシビリティや追随性に富んだ金属材料を使用した壁面材であるが、例えば、これを軟弱地盤に適用した場合において、施工途中あるいは施工後に、許容限界を越えるような地盤沈下が発生すると、壁面パネルの継目部分に競りが生じたり、金属製の格子状の部分が剛性に欠けるため、その部分が湾曲したり、過大な変形が生じ座屈を生じたり、破損したりして構造的にも外観的にも深刻な問題をはらんでいる。
上記現象は、溶接金網、エキスパンドメタル、グレーチング等の鋼製材料からなる壁面材を用いる場合にも同様に発生する。
【0005】
一方、コンクリート製壁面材の場合は、鋼製の壁面材とは異なり、高い剛性を有するため、湾曲や座屈は生じ難いが、壁面材の継目部分の競りが生じ易く、破損したり、外観を著しく悪化させるという問題を含んでいる。
【0006】
更に、従来の盛土壁構築方法では、壁体の一部が破損、破壊、劣化したような場合に、壁体を構成する壁面材の取り替えは不可能に近く、従って、盛土壁全体を一旦解体した後、最初から再構築を行わざるを得ず、多大の労力とコストアップが避けられない。
【0007】
本発明は上記課題を解決するもので、先ず、一次施工として盛土層を形成後、その自重による地盤沈下を生じせしめ地盤が安定した後に、二次施工として壁体を構築することにより、壁面材の変形や損傷を防止し、耐久安定性と信頼性を更に向上させた盛土壁構築方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
また、本発明は、壁体の一部が損傷、破壊、劣化した場合に、容易に補修可能な盛土壁構築方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1は、壁体の内側に盛土層を形成する盛土壁構築方法において、先ず盛土層を形成して該盛土層の自重による地盤沈下を生じせしめ、次いで壁面パネルを縦及び横方向に積層及び並設して壁体を構築することを特徴とする盛土壁構築方法を内容とする。
【0010】
また、本発明の請求項2は、盛土層内に補強材を配設し、該補強材を壁体の内側に接続する請求項1記載の盛土壁構築方法を内容とする。
【0011】
また、本発明の請求項3は、盛土層の壁体側に仮壁を構築する請求項1又は2記載の盛土壁構築方法を内容とする。
【0012】
また、本発明の請求項4は、壁体と仮壁との距離が50cm〜150cmである請求項3記載の盛土壁構築方法を内容とする。
【0013】
また、本発明の請求項5は、壁体と仮壁とを補強材で接続した後、壁体と仮壁との間に盛土材を充填する請求項3又は4記載の盛土壁構築方法を内容とする。
【0014】
また、本発明の請求項6は、補強材が面状補強材である請求項2〜5のいずれか1項に記載の盛土壁構築方法を内容とする。
【0015】
また、本発明の請求項7は、補強材を連結具を介して壁体の内側に接続する請求項2〜6のいずれか1項に記載の盛土壁構築方法を内容とする。
【0016】
また、本発明の請求項8は、連結具が固定部と鈎状部とからなる請求項7記載の盛土壁構築方法を内容とする。
【0017】
また、本発明の請求項9は、連結具の固定部が台座部に回動可能に軸支されている請求項8記載の盛土壁構築方法を内容とする。
【0018】
また、本発明の請求項10は、連結具の固定部又は台座部を壁体の内側に取り付け、前記連結具の鈎状部に補強材を係着する請求項8又は9記載の盛土壁構築方法を内容とする。
【0019】
更にまた、本発明の請求項11は、連結具の固定部又は台座部を壁体の内側に適宜間隔をおいて取り付け、前記連結具の鈎状部に2本の棒状体を前記鈎状部に抱持させ該棒状体に補強材を巻き付ける請求項8又は9記載の盛土壁構築方法を内容とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の盛土壁構築方法は、壁面パネル等で壁体を構築する前に、それを構築する予定位置の内側に盛土層を形成しておき、その自重によって地盤沈下を生じせしめた後に、その外側に壁体を構築することにより、該壁体は地盤沈下の影響を殆ど受けることがなくなるか、残留沈下(微小沈下)のみによる最小限の影響に止まることになり、その結果、壁体が破損したり、変形したりするトラブルが防止され、盛土壁としての耐久安定性が格段に向上する。
【0021】
また、前記盛土層の壁体側に盛土層を囲むように、土嚢等からなる仮壁を構築したうえ、前記同様、地盤沈下を生じせしめた後に壁体を構築することにより、更に強固で安定した盛土壁を構築することが可能となる。
【0022】
さらにまた、盛土層内に面状補強材等の補強材を配設し、該補強材を壁体の内側に接続して盛土層と壁体とを一体的化することになり、一層強度及び安定性に優れた盛土壁を構築することができる。
【0023】
また、連結具の固定部又は台座部を壁面パネルなどの壁体の内側に適宜間隔をおいて取り付け、連結具の鈎状部に2本の棒状体を前記鈎状部に抱持させ、該棒状体に面状補強材を巻き付けたうえ、該補強材に適度のテンションを持たせて張設することにより、補強材は強固に固定されると共に、該補強材の存在によって盛土層と壁体とは一体となって強固な擁壁が構築される。
【0024】
そしてまた、本発明の盛土壁構築方法は、盛土層形成後に壁体(壁面材)と補強材とを取り付ける壁体後付け工法であるので、例えば、損傷した壁面材を取り替えた後でも補強材と一体化することが容易に可能である。従って、壁体が部分的に損傷、破壊、劣化した場合においても部分的な補修が容易で、大巾な省力化とコストダウンが図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の盛土壁構築方法は、壁面パネル等の壁体の内側に盛土層を形成する盛土壁構築方法において、先ず盛土層を形成して該盛土層の自重による地盤沈下を生じせしめ、次いで壁面パネルを縦及び横方向に積層及び並設して壁体を構築することを特徴とする。
【0026】
盛土層内には補強材を配設するのが好ましく、このような補強材としては、面状補強材の他、帯状補強材、アンカー式補強材などが好適であり、その材質は面状補強材ではポリエステル繊維や高強度低伸度のアラミド繊維、これ以外は鋼材が多用される。
【0027】
盛土層の壁体側は仮壁を構築することが好ましく、このような仮壁を構築することにより、壁体の構築作業が容易となるばかりでなく、壁体と仮壁とを補強材で一体化することにより、強度の向上した盛土壁を構築することができる。更に、壁体の一部が損傷、破壊、劣化したような場合に、仮壁が盛土層の崩落を防ぐので作業性が容易となる。
【0028】
壁体と仮壁との距離は50cm〜100cm程度が好ましい。50cm未満では作業性が困難となり、一方、100cmを越えると壁体構築後に壁体と仮壁との間に充填される盛土材量が大きくなり、これの自重による地盤沈下の影響が無視できなくなる場合があるので好ましくない。
【0029】
仮壁としては、土嚢、スチール板、木板、合板、樹脂板、布製のシートやネット、金属製のネット等の盛土層の土の崩落を防ぐものが用いられる。また、壁体としては、コンクリート製や鋼製のパネル、溶接金網、エキスパンドメタル、グレーチング、特開2003−213689号に記載されているような、方形状の枠体の中心部に格子状の植生部を設けた壁面緑化パネル等の各種壁面材が挙げられる。
【0030】
壁体の構築は、盛土層又は仮壁付盛土層が自重により所望の地盤沈下量に達した時点に行われるが、通常は地盤沈下が落ちついた時点に行うのが好ましい。
【0031】
補強材は連結具を介して壁体の内側に接続される。連結具は特に制限されないが、固定部と鈎状部とからなるもの、固定部が台座部に回動可能に軸支されているもの、等が好ましい。固定部が台座部に回動可能に軸支されているものは、壁体が傾斜している場合でも、鈎状部を水平方向に位置させることができるので好適である。これらの連結具は、例えば、コンクリート製パネルに取り付ける場合は、固定部又は台座部をコンクリート中に埋設してもよく、また、コンクリート製パネルの内側表面にビス等により取りつけてもよい。また、鋼製のパネル、溶接金網、エキスパンドメタル、グレーチングからなる壁面材の場合は、ビスや溶接により取りつければよい。補強材は、必要に応じ仮壁に取りつけることもできる。
また、補強材がアンカー式のように鋼製の場合には、壁体側にその張力を調節できるターンバックルを装着し張力を調節できるようにしても良い。
【0032】
連結具の鈎状部に補強材を固定する方法も特に制限はなく、例えば、補強材を鈎状部に結びつけたり、引っ掛けたりすることにより係着することができる。また、特に面状補強材の場合は、連結具を壁体の内側に適宜間隔をおいて取り付け、前記連結具の鈎状部に少なくとも2本の棒状体を前記鈎状部に抱持させ、該棒状体に補強材を巻き付けることもできる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例を挙げて本発明を詳述するが、本発明はかかる実施例のみに制限されないことは云うまでもない。
【0034】
実施例1
本発明の盛土壁構築方法の実施例1を図1〜図5に基ずいて説明する。
図1に示すように、丁張りの設置(図示せず)によって、壁体1の位置、勾配を決定した後、構築予定の盛土層側の地面に第1の面状補強材2を所定の位置に配設し、後に構築される壁体1の根元から100cm程度隔てた位置から奥方向に盛土材3を投入し、盛土材3の壁体1の側が、一定の勾配(図では1:1.0)になるように仕上げながら、また、盛土頂部を転圧して押し固めながら略水平面状態の第1の盛土層4を形成する。
【0035】
続いて、該第1の盛土層4の上に第2の面状補強材2Aを配設し、以降、前と同様にこの上に新たな盛土材3Aを投入し、盛土材3Aの壁体1の側が、連続して所定勾配になるように仕上げながら、また、新たな盛土頂部を転圧して押し固めながら略水平面状態の第2の盛土層4Aを形成する。なお、図1に示したように、後の二次施工の際、壁体1に連結するために長めにとった面状補強材2、2Aの端部分はそれぞれの盛土層の勾配に沿って折り畳んでおけば施工の邪魔にならない。
【0036】
図2は、このように前述の工程を反復して所定の高さの傾斜盛土層5を形成した状態を示す側断面図であり、この後、傾斜盛土層5の自重により地盤が沈下するが、その沈下量hが予測値に達し、沈下が落ちついたと判断された後に次の二次施工に着手する。
【0037】
次に、盛土壁構築方法の二次施工について、図3(a)、(b)に基ずいて説明する。
図3(a)は、傾斜盛土層5と壁面パネル14等の壁体1との位置関係、工程手順を説明する断面図、図3(b)は図3(a)に示した台座部に軸支された連結具の拡大側面図である。
前述の図1、2でも説明した壁体1の構築位置の地面は所定深さ掘削されて、ここに栗石6が敷かれ、コンクリート基礎7が打設され、該基礎7の植設ボルト(図示せず)によって根石ブロック8が取付られる。該根石ブロック8の盛土層側には、該ブロック8に埋設された台座部9に回動可能に軸支され、固定部10aと鈎状部10bからなる連結具11が設けられている。
【0038】
根石ブロック8が最下部の壁体を構築すべく横方向に並設されると、一次施工で敷設され折り畳まれていた第1の面状補強材2が、壁体1側方向に且つ地面に接して引き延ばされたうえ、後述する棒状体15を介し、地面に略着接状態の第1の連結具11の鈎状部10bに固定される。続いて、最下部の、根石ブロック8と傾斜盛土層5の間に、新たな盛土材を充填し、予め定められた第1の盛土層4の高さDになるまで転圧作業を併行して行いつつ略水平面の状態に仕上げる。
【0039】
続いて、根石ブロック8の上端面に第2、第3の連結具12、13を備えた壁面パネル14が積層・並設される。そしてこの後、前工程同様に、一次施工で敷設され折り畳まれていた第2の面状補強材2Aが、壁体1側の方向に且つ第1の盛土層4に接して延ばされたうえ、同様にして棒状体15を介し、第2の連結具12の鈎状部10bに固定される。以上のような同じ工程を順次反復して所定高さの盛土壁を完成する。
【0040】
次に、面状補強材2、(2A)が棒状体15を介し、連結具11の鈎状部10bに固定される方法に付いて図4(a)、(b)、図5に基ずいて詳述する。
図4(a)は、連結具11の固定部10aを他の壁体として例えばスチール板14A等に直接取り付けた形態の斜視図であって、前述の図3に示した台座部9が壁面パネルに埋設され、且つ該台座部9に連結具11が軸支されている形態の図と一部相違するが、面状補強材2、(2A)が棒状体15を介し、連結具11の鈎状部10bに固定されるという機能は、連結具11の回動の有無を除き他は同様である。また、図4(b)は面状補強材2、(2A)が棒状体15を介して連結具11に固定される原理を説明するための概念図である。
【0041】
図4(a)、(b)において、連結具11との干渉をさけるために、部分的に切欠き部16を設けた面状補強材2の端縁部は2本の棒状体15に挟巻されたうえ、鈎状部10bのL字状上溝10cからに挿入され、且つ面状補強材2にはある程度の張力が作用するように配設される。
尚、面状補強材がグリッド(格子状)からなる場合は、横糸を予め又は施工現場で切断して連結具との干渉を避けることもできる。この場合、補強材の補強効果は主として縦糸によって得られるので、横糸を一部切断しても特に補強効果が低下する等の問題を生じることはない。
【0042】
図4(b)から明かのように、面状補強材2にテンションが働けば2本の棒状体15は互いに密着しようとし、したがって、この間に挟まれている面状補強材2には棒状体15の長手方向の線上に沿って強力な押圧力が作用すると同時に、連結棒15の外表面とこれに接する面状補強材2との間に摩擦力が作用し、その結果、面状補強材2はこれらの総力によって2本の棒状体15に挟まれた状態で連結具11の鈎状部10bに抱持される。
以上、面状補強材の連結具との固定方法を説明したが、補強材が線状形態の場合には、図4(c)に示したように鈎状部10bに直接係着するのが良い。
【0043】
続いて、根石ブロック8上に積層され、横方向に並設される壁面パネル14について図5(a)、(b)を基に説明する。
図5(a)、(b)は、緑化パネルとしても利用できる壁面パネルの正面図及びA−A線断面図を示したものであり、壁面バネル14の左右に中空部17を有し、且つ方形状の枠体18が2個連接して形成され、それぞれの中空部17には、格子状の植生部19が、適当なピッチで縦横に張設された防錆金属の線状体(ステンレス鋼線等)により形成されている。また、壁面パネル14の上端面20、下端面21には、本壁面パネル14を積層する際に、その位置を固定するアンカーピン(図示せず)を挿入するジョイナー挿入孔22が上下対称に設けられており、このジョイナー挿入孔22は、端面から奥方向に狭まるようなテーパ孔23と、このテーパ孔8に連続したストレート孔24から形成される。
【0044】
また、壁面パネル14の枠体18の後面には、図3(a)にも示しているが、このパネル14を配設した後、土圧に耐えて固定維持されるように面状補強材2を固定するため、壁面パネル14に埋設された台座部9に回動可能に軸支され、固定部10aと鈎状部10bからなる連結具11が設けられている。また、壁面パネル14を緑化パネルとして使用しないときには枠体18に矩形状の蓋体(図示せず)を取り付けるためのメネジ部25が計8箇所設けられている。
【0045】
なお、図5では壁面パネルに14に台座部5を埋設した形態を示したが、台座部9を壁面パネル14の内側表面にビス止め、溶接等により取り付けてもよく、また、台座部を備えていない連結具を用い、図4(a)に示した如く、連結具11の固定部10aを直接埋設しても良い。また、壁体1としてスチール板14Aの場合、該スチール板14Aへの台座部9又は固定部10aの固定方法は図4(a)に示したビス止めの他、直接溶接しても良い。
【0046】
以上により構築される盛土壁は、予め形成した盛土層5の自重により地盤沈下させているので、微小な残留沈下による僅かな影響をうけるに止まる。また、壁体1と盛土層5との間に充填した盛土材量は盛土層5に比べると僅かな量であるため、これによる地盤沈下の影響は殆ど無視することができる。
【0047】
実施例2
前述の実施例1では壁体の内側に盛土層を構築する形態の盛土壁構築方法について詳述した。本実施例2ではこの盛土層の傾斜側の根元部から傾斜面に沿い、仮壁として所定高さの土嚢を積層し、横方向に並設し、且つ土嚢と盛土材とが一体的となった仮壁付き盛土層として施工する形態を説明する。
【0048】
本実施例2における仮壁付き盛土層形態の盛土壁構築方法は、土嚢などの仮壁を設けた以外の前述した点、すなわち、盛土層内に補強材を配設し、該補強材を壁面パネル等の壁体の内側に設けた連結具に棒状体を介して接続する点、壁面パネル等の壁体と盛土層(土嚢等の仮壁)との間に一定の空間が存在する点、また、壁体と盛土層(仮壁+盛土層)とを補強材で接続した後、壁体と盛土層(仮壁)との間の空間部に新たな盛土材を充填する点等については、前述の実施例1で説明した施工方法と同様である。
【0049】
図6は、所定の高さHまで土嚢を仮壁26として積層し、仮壁付き傾斜盛土層5Aを形成した状態(一次施工状態)を示す側面図である。図6に示したように、この形態の場合も前述の実施例1の場合と同様に、傾斜盛土層5Aの自重により地盤が沈下するのを待ち、その沈下量hが予測値に達し、沈下が落ちついたと判断された時点で一次施工が完了する。
【0050】
本実施例の盛土壁構築方法は、仮壁26が構築されている分、全体的に強固な傾斜盛土層5を形成することになるので、仮壁26の無い場合に比較し傾斜角度を急勾配にすることが可能となる。また、壁体の一部が損傷した場合等において、壁体の修復(壁面材の取り替え)を容易に行うことができる。
【0051】
また、図7に示すように、仮壁付きの傾斜盛土層5Aの傾斜角度と壁面パネル等の壁体1の傾斜角度を同一にすることができ、且つ仮壁付き傾斜盛土層5Aと壁体1とでいわば2重壁構造の強固な擁壁を形成することができる。
【0052】
実施例3
図8(a)、(b)は、仮壁付き傾斜盛土層5Aを備えた盛土壁が構築された後、壁体1としての表面の壁面パネル14が部分的に劣化したり、破損したりして交換補修が必要になった際の施工手順を示す概念的側面図である。
本実施例の盛土壁構築方法によれば、図から明かのように、また前述したように仮壁付き傾斜盛土層5Aと壁体1とで、いわば2重土壁構造の盛土壁を形成しているので、破損部27より上方の壁面パネル14のみを取り外した後、土嚢などの仮壁26と壁体1との間の盛土材3を敷均し転圧してはあらたな盛土材を充填し、壁面パネル14を積層し、さらに補強材を所定通り接続する等、所定の手順に沿って施工すれば元の状態に容易に修復することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の盛土壁構築方法は、先ず盛土層を形成してその自重によって地盤沈下させ、しかる後に、この外側に本来の壁面パネルなどの壁体を積層・並設し、補強材を介して構築するので、地盤沈下による影響を残留沈下による最小限の影響にとどめることができ、その結果、壁体が破損したり、変形したりするトラブルが防止され、盛土壁としての耐久安定性が格段に向上する。
また、盛土層に仮壁を形成する場合は、内壁としての仮壁と、外壁としての壁体とで二重構造壁を形成するので、表面の外壁としての壁面パネル等は、容易に交換することが可能であり、したがって、これまで修復が困難であることから実施されていなかったような河川護岸等における盛土壁の修復工法としても広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施例1における盛土壁構築方法の一次施工を説明する側面図である。
【図2】同工法における傾斜盛土層を示す側面図である。
【図3】(a)同工法ににおける盛土層と壁面パネル等の壁体との関係位置及び施工手順を説明する側面図である。 (b)台座部に軸支された連結具の拡大側面図である。
【図4】(a)同工法における連結具の鈎状部に面状補強材が棒状体を介して固定される状態を示す部分斜視図である。 (b)面状補強材が2本の棒状体を介して連結具に固定される原理を説明するための概念図である。 (c)補強材が線状形態の場合に連結具の鈎状部に直接係着する方法を示した部分側面図である。
【図5】(a)同工法ににおける壁面パネルの一形態を示す正面図である。 (b)同側面図である。
【図6】本発明の実施例2における盛土壁構築方法において、土嚢などの仮壁付き傾斜盛土層を示す側面図である。
【図7】同工法において仮壁付き傾斜盛土層を形成した形態の盛土壁の他の例を示す側面図である。
【図8】本発明の実施例3における盛土壁構築方法を示す。 (a)同工法において壁体が損傷し補修が必要になった状態を示す概念的側面図である。 (b)同修復手順において修復方法を説明する概念的側面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 璧体
2 第1の面状補強材
2A 第2の面状補強材
3、3A 盛土材
4 第1の盛土層
4A 第2の盛土層
5 傾斜盛土層
5A 仮壁付き傾斜盛土層
6 栗石
7 コンクリート基礎
8 根石ブロック
9 台座部
10a 固定部
10b 鈎状部
10c L字状溝
11 第1の連結具
12 第2の連結具
13 第3の連結具
14 壁面パネル
14A スチール板
15 棒状体
16 切欠き部
17 中空部
18 枠体
19 植生部
20 上端面
21 下端面
22 ジョイナー挿通孔
23 テーパ孔
24 ストレート孔
25 メネジ部
26 仮壁
27 破損部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁体の内側に盛土層を形成する盛土壁構築方法において、先ず盛土層を形成して該盛土層の自重による地盤沈下を生じせしめ、次いで壁面パネルを縦及び横方向に積層及び並設して壁体を構築することを特徴とする盛土壁構築方法。
【請求項2】
盛土層内に補強材を配設し、該補強材を壁体の内側に接続する請求項1記載の盛土壁構築方法。
【請求項3】
盛土層の壁体側に仮壁を構築する請求項1又は2記載の盛土壁構築方法。
【請求項4】
壁体と仮壁との距離が50cm〜150cmである請求項3記載の盛土壁構築方法。
【請求項5】
壁体と仮壁とを補強材で接続した後、壁体と仮壁との間に盛土材を充填する請求項3又は4記載の盛土壁構築方法。
【請求項6】
補強材が面状補強材である請求項2〜5のいずれか1項に記載の盛土壁構築方法。
【請求項7】
補強材を連結具を介して壁体の内側に接続する請求項2〜6のいずれか1項に記載の盛土壁構築方法。
【請求項8】
連結具が固定部と鈎状部とからなる請求項7記載の盛土壁構築方法。
【請求項9】
連結具の固定部が台座部に回動可能に軸支されている請求項8記載の盛土壁構築方法。
【請求項10】
連結具の固定部又は台座部を壁体の内側に取り付け、前記連結具の鈎状部に補強材を係着する請求項8又は9記載の盛土壁構築方法。
【請求項11】
連結具の固定部又は台座部を壁体の内側に適宜間隔をおいて取り付け、前記連結具の鈎状部に2本の棒状体を前記鈎状部に抱持させ該棒状体に補強材を巻き付ける請求項8又は9記載の盛土壁構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−70576(P2006−70576A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255520(P2004−255520)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(599134263)有限会社ランズスペース (8)
【Fターム(参考)】