説明

監視システム、監視装置及び監視方法

【課題】伝送レートが低い通信システムであっても、多くの子局監視装置から効率的に画像データのようにデータ量が大きな監視情報を収集することができ、また、高伝送レートシステムに適用すれば、更に、多数の子局監視装置の制御を可能とする監視システムを提供する。
【解決手段】複数の子局監視装置を親局監視装置により監視する際、子局監視装置が複数の事象の変化を検出すると、その画像データを送信する代わりに、事象変化の種類と事象発生時刻等の関連情報を親局監視装置に送信し、親局監視装置は事象発生の正常/異常を判断し、異常の可能性がある場合に、該当する子局監視装置に、静止画像や動画像データの送信を指示して、詳細に異常の有無を監視する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は監視システム、監視装置及び監視方法に関し、例えば、狭帯域無線通信のように伝送レートが低い通信手段であっても、多数の監視ポイントの異常を遅滞無く監視することができる監視手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、留守宅、夜間のオフィスや工場、無人駐車場、等々には防犯用監視装置が設置されていることが多いが、不審者侵入、火災発生等の異変を的確に把握する手段としては監視カメラの映像をモニタすることが最も有用である。
例えば無人駐車場を監視するシステムとして、一つの親局監視装置が複数の子局監視装置が狭帯域無線通信手段(単信方式)を介して監視区域夫々を監視する場合は、同時に複数の子局監視装置との無線通信が不可能であることから、従来、子局を順番に呼び出して、画像信号送信要求行うポーリング方式を用いるのが一般的であった。
この例のようなポーリング方式では、子局監視装置の数が多くなると、全ての子局を一巡する周期が長時間に及び、監視効率が大幅に低下する。
【0003】
そこで、可能な限り監視効率を向上させる手段として、種々の方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、外出中のユーザに留守宅内の様子を撮影した画像データを、ユーザが携行するPDA(Personal Digital Assistant)端末等の携帯型情報端末に転送する画像転送システムが提案されている。このシステムは、複数のカメラとパーソナルコンピュータ(PC)との間の通信を無線通信手段で行うことにより、配線を不要とし、更に、各カメラの撮影画像の変化を検出して、不審者等の侵入を捉えた場合、すべてのカメラ映像を同期させて、ユーザのPDAに転送するものである。この例では、複数のカメラの映像を同期させて伝送するため監視効率は向上する。
また、特許文献2には、遠隔制御カメラを用いた静止画像転送システムにおいて、時刻や気象条件等の所要の条件情報と共に静止画像を記録しておき、必要に応じて条件情報に一致する画像データを読み出すシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−232877公報
【特許文献2】特開平5−236469公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方法では、狭帯域無線通信手段のように伝送レートが低い通信手段を用いる場合、遅滞無く多数の子局監視装置を制御することが困難であった。
特許文献1記載の発明は、撮影画像に変化が検出された場合にのみ、画像データをユーザに転送するので、常時画像データを転送する必要がなく、効率的である。
しかし、変化が検出された場合に常に画像を転送すると、結果的に転送が不要であった画像も転送されることになるためデータを転送する頻度が高くなる。従って、狭帯域無線通信手段を使用する場合は、画像データ圧縮手段を用いたとしても所定時間内に監視し得る子局監視装置の数が大幅に少なくなる。
特許文献2に示された監視システムでは、時刻や気象条件等の所要の条件情報と共に静止画像を記録しておき条件に一致する画像データのみを伝送するので、データ量を低減し得る可能性があり監視局数を増やすことはできるが、過去に記憶された映像を条件情報により一致する画像を読み出すためリアルタイムに監視を行うことはできなかった。
本発明は、伝送レートが低い通信システムを使用する場合であっても、多くの子局監視装置から効率的に監視情報を収集することができる監視システム、監視方法および監視装置を提供することを目的としている。なお、本発明は、狭帯域通信システムに限られるものではなく、高伝送レートシステムに適用すれば、更に、多数の子局監視装置の制御が可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の監視システムは、複数の検出手段を有し、前記検出手段のいずれかもしくは複数が所定の事象を検出した場合、前記事象を第1のデータとして送信する子局監視装置と、前記第1のデータを受信して分析し、分析の結果、前記所定の事象に関連した詳細な情報である第2のデータが必要である場合には、前記子局監視装置に前記第2のデータの送信を要求する送信要求情報を送信する親局監視装置と、を備えることを特徴とする。
また、前記第2のデータは、前記複数の検出手段において特定の検出手段が検出した前記所定の事象に関連する詳細な状況の情報である状況情報のうち前記送信要求情報により定められた状況情報のデータでであってもよい。
【0007】
また、前記子局監視装置は、所定の監視区域を監視する監視装置であって、前記監視区域内での所定の事象を検出する事象検出手段と、前記監視区域内での前記状況情報を取得する状況情報取得手段と、前記事象検出手段により前記所定の事象が検出された場合に前記事象が検出された時刻と共に前記状況情報を記録する記録手段と、前記親局監視装置から前記送信要求情報を受信する子局受信手段と、前記送信要求情報を解析し、前記送信要求情報に定められた状況情報を前記記録手段から抽出して前記第2のデータを生成する子局制御手段と、前記事象検出手段により前記所定の事象が検出された場合に前記第1のデータを送信し、前記送信要求情報を受信した場合に第2のデータを送信する子局送信手段と、を備え、前記親局監視装置は、前記第1のデータ又は前記第2のデータを受信する親局受信手段と、前記第1のデータの分析を行う事象分析手段と、前記事象分析手段が、所定の条件を満たすと判断した場合に要求する状況情報を定め、前記子局監視装置に対し定めた状況情報の送信を要求する送信要求情報を生成する親局制御手段と、前記送信要求情報を送信する親局送信手段と、を備えてもよい。
【0008】
前記所定の事象は、前記子局監視装置が備える所定のセンサで検出される事柄であってもよく、前記所定の条件は、発生した複数の事象の組合せ、複数の事象の発生の順番、複数の事象の発生の時間間隔、又は発生した事象の数値が予め定められた条件を満たす場合であってもよい。
また、前記情報状況取得手段は、動画像検出手段による動画像もしくは静止画像であってもよく、前記送信要求情報により定められた状況情報は、前記動画像検出手段より得られた所定の時刻の静止画像もしくは所定の時刻間の動画像であってもよい。
【0009】
本発明の子局監視装置を遠隔制御する監視システムの親局監視装置は、前記子局監視装置が監視区域内で検出した所定の事象のデータである第1のデータと、前記子局監視装置が常時検出して記録している状況情報であって前記親局監視装置によって前記第1のデータを分析した結果定められた状況情報である第2のデータと、を受信する親局受信手段と、前記第1のデータが所定の条件を満たすか否かの分析を行う事象分析手段と、前記事象分析手段が、前記第1のデータが前記所定の条件を満たす場合に、前記子局監視装置に対し、前記第2のデータの送信を要求する送信要求情報を生成する親局制御手段と、前記送信要求情報を送信する親局送信手段と、を備えたることを特徴とする。
【0010】
本発明の子局監視装置を遠隔制御する監視システムの親局監視装置は、前記子局監視装置が監視区域内で検出した所定の事象のデータである第1のデータと、前記子局監視装置が検出して記録している状況情報より当該親局監視装置によって前記第1のデータを分析した結果定められた状況情報を記録しているデータから抽出した第2のデータと、を受信する親局受信手段と、前記第1のデータが所定の条件を満たすか否かの分析を行う事象分析手段と、前記事象分析手段は、前記第1のデータが前記所定の条件を満たす場合に、前記子局監視装置に対し、前記第2のデータの送信を要求する送信要求情報を生成する親局制御手段と、前記送信要求情報を送信する親局送信手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の親局監視装置から遠隔制御される監視システムの子局監視装置は、前記親局監視装置と通信を行う通信手段と、前記子局監視装置の監視区域内での所定の事象を検出する事象検出手段と、前記監視区域内の状況を状況情報として取得する状況情報取得手段と、前記状況情報を記録する記録手段と、前記事象検出手段が前記所定の事象を検出した場合に前記親局監視装置に前記所定の事象を第1のデータとして送信すると共に前記状況情報を前記記録手段に記録し、前記親局監視装置が前記第1のデータの分析を行いその結果が所定の条件を満たす場合、前記子局監視装置に所定の状況情報の送信を要求する送信要求情報の送信を行い、前記子局監視装置が前記送信要求情報を受信した場合に前記送信要求情報により定められた状況情報を前記記録手段より抽出して第2のデータを生成する子局制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の監視方法は、監視区域内での所定の事象を検出する事象検出手段と、前記監視区域内で前記事象に関する詳細な情報である状況情報を取得する状況情報取得手段と、を備えた子局監視装置を親局監視装置から遠隔制御する監視方法であって、前記子局監視装置が、前記監視区域内で所定の事象を検出する検出ステップと、前記子局監視装置が、前記検出ステップで検出された時点の前記状況情報を取得して記憶する記憶ステップと、前記子局監視装置が、前記所定の事象が検出された場合に前記所定の事象を第1のデータとして前記親局監視装置に送信するステップと、前記親局監視装置が、前記第1のデータを受信し前記第1のデータの分析を行うステップと、前記親局監視装置が、前記分析の結果、所定の条件を満たした場合に、前記子局監視装置に所定の状況情報の送信を要求する送信要求情報を送信するステップと、前記子局監視装置が、前記送信要求情報を受信し、前記記憶ステップにて記憶した状況情報から前記送信要求情報により定められた状況情報を第2のデータとして抽出するステップと、前記子局監視装置が、前記第2のデータを親局監視装置に送信するステップと、を含むことを特徴とする。
なお、多数の子局監視装置を配置する必要がある場合は、子局監視装置は可能な限り小型化することが望ましい。そこで、子局監視装置側の状況情報を記録する記録手段(画像メモリ等の記録手段)の容量を、親局監視装置から第2データの送信要求が返送されるまでの時間より長い時間、例えば数十秒間乃至は数分間程度のデータを記憶可能な容量とし、航空機等のフライトレコーダのように、新しいデータを古いデータ記憶領域にオーバーライト(上書き)しながら、親局監視装置からの送信要求情報を待機してもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明によれば、子局監視装置が事象の変化を検出すると、その時の詳細データ、例えば静止画像データや動画像データといった状況情報をメモリに記憶すると共に、事象の変化に関連した詳細なデータを送信する代わりに、事象変化の種類と事象発生時刻等の関連情報(事象データ)を親局監視装置に送信し、親局ではオペレーターが、又は、判断処理プログラムにより、事象発生の正常/異常を判断し、異常の可能性がある場合に、該当する子局監視装置に、静止画像や動画像データの送信を指示するように制御することが可能である。
従って、事象発生時に各子局監視装置から親局装置に送信される情報量が極めて少なくなり、その分、より多くの子局監視装置を含む監視システムを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例である駐車場監視システムの概要ブロック図である。
【図2】図1の駐車場監視システムの制御例を示すフローチャートである。
【図3】図1の駐車場監視システムの通信トラフィックの例を示す図である。
【図4】図1の駐車場監視システムの他の制御例を示すフローチャートである。
【図5】本発明を適用する監視システムの一例を示す概要ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図面に示した形態例により詳細に説明する。
今、図5に示すように一つの基地局(親局監視装置)と複数の監視局A乃至D(子局監視装置)とからなる監視システムに本発明を適用する場合を考える。
図1は本発明を駐車場監視システムに適用した場合の一実施例を示すシステム概要図である。
図1において、1は親局監視装置、10は子局監視装置であり、子局監視装置10は図5に示した監視局A乃至Dに該当するもので複数含まれているが、一つの子局監視装置のみ図示し他は省略している。
親局監視装置1は、子局監視装置10と通信を行う無線送受信機(親局送信手段、親局受信手段)2と、事象発生の異常/正常を判断し、異常であると判断した場合に、子局監視装置10に対し状況情報の送信を要求する事象分析部(事象分析手段)3と、子局監視装置から送信される画像信号等を記録する画像メモリ4と、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示部5と、図示を省略した親局制御手段を備えている。
【0016】
子局監視装置10は、親局監視装置1と通信を行う無線送受信機(子局送信手段、子局受信手段)11と、カメラからの画像データの圧縮や、動画像データから静止画像データを生成する画像変換部12と、1つ以上のセンサからの信号を収集して事象発生の有無を検出する事象監視部13と、事象発生を検出するセンサ(事象検出手段、事象監視部を含めてもよい)14−1乃至14−3と、事象の変化に関連した詳細な情報を取得する画像撮影用カメラ(状況情報取得手段)15−1、15−2と、画像メモリ(記録手段)16とを含んでいる。なお、図示を省略したが、事象監視部13には、時刻情報を発生する機能や、子局監視装置10全体の制御を行う子局制御機能(子局制御手段)を備えている。
この構成において、子局監視装置10の各センサは、例えば、車両出入り口用ゲートの開閉を検知するセンサ14−1と、駐車料金を投入する駐車料金精算機の集金情報センサ14−2と、人の入場/退場センサ14−3と、であり、夫々のセンサ結果を、事象監視部13に供給する。事象監視部13は、車両出入り口用のゲートが開いた/閉じた事象、駐車料金清算機に料金が投入された事象、人の入場/退場といった事象をセンサからの信号により監視し、事象が発生したと判断した場合は、監視カメラの画像信号(静止画像又は動画像)に発生時刻情報を付して画像メモリ16に記録すると共に、その発生時刻とセンサ情報(センサ種別を含む)とを事象データ(第1のデータ)として無線送受信機11を介して親局監視装置1に送信する。画像信号が静止画像の場合は凡その様子が分かるように、例えば、一秒間に一枚乃至数枚程度をメモリに記録してもよい。
【0017】
図2は、以上のように構成した監視システムの制御例を示すフローチャートであり、左側が子局監視装置、右側が親局監視装置の制御を示し、両者を関連付けて表示したものである。
子局監視装置10の処理がスタートすると、上述したように、車両出入り口用ゲートの開閉を検知するセンサ14−1、駐車料金を投入する駐車料金精算機の集金情報センサ14−2、人の入場/退場センサ14−3のセンサ結果を、事象監視部13に供給する(S1)。事象監視部13は、センサからの信号を監視し(S2)、事象発生と判断した場合は(S2、Yes)、監視カメラの画像信号(静止画像又は動画像)を画像メモリ16に記録する(S3)と共に、その発生時刻とセンサ情報とを事象データ(第1のデータ)として無線送受信機11を介して親局監視装置1に送信する(S4)。
なお、事象データの送信は、夫々のセンサ毎に独立して行ってもよいが、所定時間内に発生する事象データを纏めて事象データとして送信してもよい。
【0018】
親局監視装置1は、子局監視装置10から送信された事象データを受信すると(S5)、事象分析部3において複数の事象センサの時系列的な変化を分析し、表示部5に表示する(S6)。この例では、事象の異常/正常の判断は、オペレーター(人)が表示を見て判断する場合を例示している(S7)。
異常/正常の判断は、例えば、オペレーター(人)は、受信した事象データが、ゲートが開状態のまま閉状態とならない(ゲートのセンサによりゲートが開いたことを検出した旨の信号が受信され、一定時間以上経過してもゲートのセンサが閉じたことを検出した旨の信号が受信されない)場合や、駐車料金の精算処理がなされない状態で車両が通過した(集金センサにより料金が投入されたことを検出した旨の信号が受信されず、ゲートのセンサがゲートが開いた旨の信号が受信された)場合には異常とみなす。
このように、オペレーターが表示を見て、異常の可能性ありと判断すれば(S7でYes)、オペレーターが図示を省略した制御部を操作して、子局監視装置10に対し状況情報(画像データ)の送信を指示すると、親局監視装置1は無線送受信機2から子局監視装置10に対し状況情報送信要求信号(送信要求情報)を送信する(S8)。
【0019】
子局監視装置10は、親局監視装置1からの状況情報(映像信号)要求信号(送信要求情報)を待っていて(S9)、状況情報(映像信号)要求信号が受信されると(S9、Yes)、画像メモリ16に記録している画像データ(静止画像又は動画像:第2のデータ)を親局監視装置1に返送する(S10)。なお、子局監視装置10から親局監視装置1に送信される事象データ(第1のデータ)には、その発生時刻とセンサ情報とが含まれているので、それらの情報に基づいて画像データを読み出し、親局監視装置1に送信する。
あるいは、各画像データにセッション管理番号等を付して管理してもよい。
親局監視装置1では、子局監視装置10から返送された画像データを受信し(S11、Yes)、処理した後(S12)、終了する(S13)。処理の具体例についての説明は省略するが、返送された画像データを表示部5に表示し、オペレーターが表示を見ながら異常の有無や、その様子を見て、更なる対応をすべきか否かを決める。
なお、子局監視装置10のフローS9における親局監視装置1からの状況情報要求信号を待機する処理では、予め設定した待ち受け時間をタイマにより計数し、その時間を過ぎれば(S14、Yes)、親局監視装置1において「異常なし」と判断したものとしてフローを終了する(S15)。
【0020】
この監視システムによれば、子局監視装置10では、常時、事象発生の有無を検出するものの、センサから検出される事象に変化が発生した場合にのみ、事象発生を検出したセンサの種別、この例では通過ゲートの開閉、集金情報、人の入退場の何れであるかを示す情報と、事象発生の時刻情報を事象データとして、親局監視装置1に送信するので、子局監視装置10から送信する事象データは画像データを含む必要がなく、極めて少量のデータとなる。
また、親局監視装置1では、時系列的な事象変化から異常であるか否かを判断し、異常の可能性がある場合にのみ、画像データの返送を指示するので、異常の可能性が無い場合は、単に、子局監視装置からの事象データの送信のみとなり、送信すべきデータ量が大幅に少なくなる。
なお、子局監視装置側の状況情報を記録する記録手段(画像メモリ等の記録手段)の容量は、既に説明したように親局監視装置から第2データの送信要求が返送されるまでの時間より長い時間、例えば数十秒間乃至は数分間程度のデータを記憶可能な容量とし、新しいデータを古いデータ記憶領域にオーバーライト(上書き)しながら、親局監視装置からの送信要求情報を待機すれば、メモリ容量を小さくできる。
【0021】
図3は、本発明に基づいて、親局監視装置1が四つの子局監視装置A乃至Dを遠隔制御する場合のトラフィックの発生状況例を示す図である。図面を参照すれば明らかなように、子局監視装置10において事象変化が発生しない場合は、データ送受信の必要がなく、親局監視装置1は、子局監視装置10からの事象データ送信を待機するので、トラフックの混雑の可能性は大幅に少なくなる。
なお、この図に示す例では、ポーリング方式に準じて、子局監視装置A乃至Dから親局監視装置1に事象データを送信するタイミングを、予め設定(スケジューリング)する場合を示しているが、事象データ送信が必要な場合、全くの非同期で送信するように構成してもよい。そのときは、他の子局監視装置からの送信と衝突することなく受信されたことを示す受信応答信号を親局監視装置1から子局監視装置10に返送する等の手段を備えることが好ましく、所定時間内に応答信号が無い場合は再度、あるいは親局監視装置から応答信号が返送されるまで予め設定した回数、事象データの送信を繰返すように構成することもできる。
以上の実施例では、親局監視装置において、事象データに基づいて異常/正常の判断をオペレーターが行う場合を示したが、これらの処理を実行するプログラミングソフトにより自動的に判断することも可能である。この場合、検出された事象データに関連した何時、何処の画像データを子局監視装置10に対して要求するか、検出された事象データの様々な組合せに応じた対応が可能となる。
【0022】
図4は、本発明の変形実施例を示すフローチャートである。この例が、上述した図2と相違するのは、ステップS6、S7がS26、S27に変更された部分であり、その他の処理フローには変化は無い。即ち、図4においては、親局監視装置1は、子局監視装置10から送信された事象データを受信すると(S5)、事象分析部3において複数の事象センサの時系列的な変化を分析し、事象の異常/正常を判断する(S26、S27)。
この処理においては、目的を達成できるようにプログラミングされたソフトウェアをインストールしておく。その際、子局監視装置10に備えられた各種事象検出センサの種類によって、各事象の時系列的発生順や、事象発生の欠落状態、或いは余分な事象の発生等、予め可能な限り多くの異常状態を想定し、夫々の異常に対応する事象発生の時系列的順序を基準事象として記憶したデータテーブルを用意しておき、それらを子局監視装置から送信される事象データと比較して異常/正常を判断することができる。センサ出力に温度、煙濃度やガス濃度、時間間隔等の事象発生の有無を判断する必要がある場合は、予めスレッシュホールド値(閾値)を設定しておき、検出値が所要範囲にある場合は正常であると判断することもできる。
【0023】
例えば、ゲートが開状態のまま閉状態とならない(ゲートのセンサによりゲートが開いたことを検出した旨の信号が受信され、一定時間以上経過してもゲートのセンサが閉じたことを検出した旨の信号が受信されない)場合、オペレーター(人)が、ゲートが開いて閉じるまでの時間をその度に監視するのは効率的ではない。そこで、ソフトウェアにより、ゲートの開閉時間を算出し、その時間が設定した閾値以上であれば異常が発生している可能性があるので、子局監視装置10に対して状況情報の送信を要求するように構成すれば、異常の判断や送信要求情報の生成及び送信を自動化できる。
【0024】
以上、本発明を駐車場の監視システムとして応用する場合を示したが、本発明はこの例に限ることなく種々の監視システムに利用可能である。
例えば、異常の実施例では、子局監視装置が、ほぼ同一の監視項目、例えば、各地に位置する複数の駐車場の夫々を監視する場合を示したが、この例に限らず、一つの施設内の複数個所に配置した無線通信手段を備えたセンサを子局監視装置とみなして、設備内の異常/正常を監視するものであってもよい。例えば、工場プラント、或いは、夜間・休日等のオフィスや事務所、個人の留守宅等、の複数個所に無線通信機を有する各種センサと画像撮影手段を配置し、同様の方法で、施設内の親局監視装置に、センサ(子局監視装置)からの事象発生情報を収集して異常/正常を監視し、異常と判断した場合に、親局監視装置から第二の親局監視装置にあたる監視センタ等に画像データを送信するものであってもよい。
【0025】
更に変形例として、上述した実施例の子局監視装置に簡単な異常/正常判断機能を付加し、異常と判断した場合に、親局監視装置に詳細な事象データを送信するものとし、親局監視装置では詳細に異常/正常を判断した上で、必要に応じて子局監視装置に状況情報の送信要求を行うように構成することもできる。
【0026】
事象を検出するセンサは、通過ゲートの開閉、集金情報、人の入退場を例としたが、これに限らず、量や数値を検出する温度センサ、湿度センサ、放射能センサでもよく、カメラそのものを事象検出手段としてもよい。
事象テータは、H/L、+/−、ON/OFFといった2値に限る必要は無く、例えば量や数値を検出する例として掲げた温度センサにて温度を監視し、ある閾値を超えた場合に温度データを送信するといったように構成することもできる。その場合、親局監視装置は、送られた温度データの数値範囲により、発生した事象の詳細な状況情報の送信を指示するか否かの判断を行うように構成することもできる。
また複数の子局監視装置からの事象データを総合的に判断し、画像データの送信要求を行う子局監視装置を特定してもよく、子局監視装置が複数のカメラを有する場合は、どのカメラにより撮影された画像データを送るかといったことを特定するように構成することもできる。
【0027】
状況情報は画像データに限らない。事象データと比較して大きなデータとなる検出手段、例えばマイク(音)で検出した音声データを記録した情報であってもよく、画像と音を同時に検出した情報でもよい。また、事象データを検出するセンサとは異なる手段から得られたデータでなくてもよく、事象を検出する手段から得られるデータでもよい。
また状況を取得する手段から事象を検出してもよい。
【0028】
例えば、子局監視装置に複数の放射性物質を検出可能な放射線センサを備え、夫々の検出値をメモリすると共に、通常はある特定の放射性物質の検出を事象データとして検出し、検出値が閾値を超えた場合は、その値によって親局監視装置は分析を行い、放射線センサに事象データ検出時における複数の放射性物質のデータ(状況情報)を送信させるように構成することもできる。
状況情報を取得する手段から事象を検出する例として、カメラ画像から画像認識を行うこと、あるいはマイク出力信号から特定の音声周波数を検出する等の周知慣用手段を用いて事象の発生を検出してもよい。
なお、本発明において用いる事象検出手段と状況取得手段は、どちらも検出手段であって、検出している情報量の大きさの違いであると考えることも可能であり、夫々、利用する場面に応じて適宜設定することができる。
【0029】
本発明は、通常の監視は伝送量の少ない第1のデータを送り、詳細な情報が必要な場合に、子局監視装置に送信要求を行い通常の監視時よりデータ量の多い詳細な第2のデータを送るものであるので、そのようなことが要望される様々な監視システムに応用可能である。
また、多数の子局監視装置を配置する必要がある場合は、子局監視装置は可能な限り小型化することが望ましい。そのため上述したように、子局監視装置側の画像メモリ等の記録手段の容量を、例えば数秒間乃至は数十間程度の記憶容量とし、新しいデータを古いデータ記憶領域にオーバーライト(上書き)する方法を例示した。しかし、将来メモリデバイスの更なる高密度技術による小型化や大容量化、あるいは動画像データの更なる高圧縮技術の開発が進めば、より長時間にわたって常時動画像を録画できるメモリ容量を備え、事象発生を検出した場合、親局側監視装置は子局監視装置に対して事象発生時刻の任意の前後の時間、たとえば事象発生時刻の3秒前から事象発生後の5秒後といった所望時間分の動画像データ(状況情報)を必要な時間部分を切り出して、送信するように要求することも可能となる。
なお、云うまでもないが、親局監視装置と子局監視装置との間の通信手段は無線通信手段に限定する必要は無く、有線通信であっても構わない。また、狭帯域(低レート)通信手段に代えて広帯域(高レート)通信手段を使用すれば、その分より多くの子局監視装置を制御することができることは明らかである。
【符号の説明】
【0030】
1 親局監視装置、2、11 無線送受信機、3 事象分析部、4、16 画像メモリ、5 表示部、12 画像変換部、13 事象監視部、14 事象センサ、15 カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の検出手段を有し、前記検出手段のいずれかもしくは複数が所定の事象を検出した場合、前記事象を第1のデータとして送信する子局監視装置と、
前記第1のデータを受信して分析し、分析の結果、前記所定の事象に関連した詳細な情報である第2のデータが必要な場合には、前記子局監視装置に前記第2のデータの送信を要求する送信要求情報を送信する親局監視装置と、
を備える監視システム。
【請求項2】
前記第2のデータは、
前記複数の検出手段において特定の検出手段が検出した前記所定の事象に関連する詳細な状況の情報である状況情報のうち前記送信要求情報により定められた状況情報のデータであることを特徴とする請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
前記子局監視装置は、
所定の監視区域を監視する監視装置であって、
前記監視区域内での所定の事象を検出する事象検出手段と、
前記監視区域内での前記状況情報を取得する状況情報取得手段と、
前記事象検出手段により前記所定の事象が検出された場合に前記事象が検出された時刻と共に前記状況情報を記録する記録手段と、
前記親局監視装置から前記送信要求情報を受信する子局受信手段と、
前記送信要求情報を解析し、前記送信要求情報に定められた状況情報を前記記録手段から抽出して前記第2のデータを生成する子局制御手段と、
前記事象検出手段により前記所定の事象が検出された場合に前記第1のデータを送信し、前記送信要求情報を受信した場合に第2のデータを送信する子局送信手段と、を備え、
前記親局監視装置は、
前記第1のデータ又は前記第2のデータを受信する親局受信手段と、
前記第1のデータの分析を行う事象分析手段と、
前記事象分析手段が、所定の条件を満たすと判断した場合に要求する状況情報を定め、前記子局監視装置に対し定めた状況情報の送信を要求する送信要求情報を生成する親局制御手段と、
前記送信要求情報を送信する親局送信手段と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の監視システム。
【請求項4】
前記所定の事象は、
前記子局監視装置が備える所定のセンサからの信号により検出される事柄であることを特徴とする請求項3に記載の監視システム。
【請求項5】
前記所定の条件は、
発生した複数の事象の組合せ、複数の事象の発生の順番、複数の事象の発生の時間間隔、又は発生した事象の数値が予め定められた条件を満たす場合であることを特徴とする請求項3に記載の監視システム。
【請求項6】
前記情報状況取得手段は、画像検出手段による動画像又は静止画像であることを特徴とする請求項3に記載の監視システム。
【請求項7】
前記送信要求情報により定められた状況情報は、前記記録手段に記録された所定の時刻の静止画像もしくは所定の時刻間の動画像であることを特徴とする請求項6に記載の監視システム。
【請求項8】
子局監視装置を遠隔制御する監視システムの親局監視装置であって、
前記子局監視装置と通信を行う親局通信手段と、
前記子局監視装置が監視区域内で検出した所定の事象のデータである第1のデータを前記通信手段が受信し、前記第1のデータが所定の条件を満たすか否かの分析を行う事象分析手段と、
前記事象分析手段が前記第1のデータは前記所定の条件を満たすとした場合に、前記子局監視装置に対し、前記子局装置が監視区域内で前記所定の事象が発生した時刻に記録した詳細な状況の情報である状況情報より、指定した状況情報を第2のデータとして送信を要求する送信要求情報を生成する親局制御手段と、
を備えた監視システムの親局監視装置。
【請求項9】
前記所定の条件は、
発生した複数の事象の組合せ、複数の事象の発生の順番、複数の事象の発生の時間間隔、又は発生した事象の数値が予め定められた条件を満たす場合であることを特徴とする請求項8に記載の監視システムの親局監視装置。
【請求項10】
親局監視装置から遠隔制御される監視システムの子局監視装置であって、
前記親局監視装置と通信を行う通信手段と、
前記子局監視装置の監視区域内での所定の事象を検出する事象検出手段と、
前記監視区域内の前記所定の事象に関する詳細な状況を状況情報として取得する状況情報取得手段と、
前記状況情報を記録する記録手段と、
前記事象検出手段が前記所定の事象を検出した場合に前記親局監視装置に前記所定の事象を第1のデータとして前記通信手段に送信させると共に前記所定の事象の検出時刻の状況情報を前記記録手段に記録し、前記親局監視装置が前記第1のデータの分析を行いその結果が所定の条件を満たすとされると前記子局監視装置に指定した状況情報の送信を要求する送信要求情報の送信を行い、前記子局監視装置が前記送信要求情報を受信した場合に前記送信要求情報により指定された状況情報を前記記録手段より抽出して第2のデータを生成し、前記第2のデータを前記通信手段に送信させる子局制御手段と、
を備えることを特徴とする監視システムの子局監視装置。
【請求項11】
前記所定の事象は、
前記子局監視装置が備える所定のセンサからの信号により検出される事柄であることを特徴とする請求項10に記載の監視システムの子局監視装置。
【請求項12】
所定の監視区域を監視する子局監視装置を親局監視装置から遠隔制御する監視方法であって、
前記子局監視装置が、前記監視区域内での所定の事象を検出する検出ステップと、
前記子局監視装置が、前記検出ステップで検出された時点の詳細な状況の情報である状況情報を取得して記憶する記憶ステップと、
前記子局監視装置が、前記所定の事象が検出された場合に前記所定の事象を第1のデータとして前記親局監視装置に送信するステップと、
前記親局監視装置が、前記第1のデータを受信し前記第1のデータの分析を行うステップと、
前記親局監視装置が、前記分析の結果、所定の条件を満たした場合に、前記子局監視装置に指定した状況情報の送信を要求する送信要求情報を送信するステップと、
前記子局監視装置が、前記送信要求情報を受信し、前記記憶ステップにて記憶した状況情報から前記送信要求情報により定められた状況情報を第2のデータとして抽出するステップと、
前記子局監視装置が、前記第2のデータを親局監視装置に送信するステップと、
を含むことを特徴とする監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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