監視制御装置における伝送帯域制御方式
【課題】データを受信する前に遅延の発生を予測し、スループット特性を維持するために必要な帯域を確保する。
【解決手段】受信した監視データの送信時刻、受信時刻、監視対象機器のアドレスおよび監視対象機器の状態を含むパターンデータを生成し、生成したをパターンデータを受信パターンとして記録する受信パターン記録部700と、前記送信時刻および受信時刻をもとに伝送遅延時間が所定値を超えるか否かを判定する伝送遅延判定部300と、伝送遅延が発生したとき、発生した監視データに先行する監視データに対応するパターンデータを伝送遅延要因パターンとして記録する伝送遅延情報記録部900と、伝送遅延情報記録部に記録された伝送遅延要因パターンと受信パターンとを比較し、一致したとき、当該端局との通信路の帯域幅を拡大するパターン比較部を備える。
【解決手段】受信した監視データの送信時刻、受信時刻、監視対象機器のアドレスおよび監視対象機器の状態を含むパターンデータを生成し、生成したをパターンデータを受信パターンとして記録する受信パターン記録部700と、前記送信時刻および受信時刻をもとに伝送遅延時間が所定値を超えるか否かを判定する伝送遅延判定部300と、伝送遅延が発生したとき、発生した監視データに先行する監視データに対応するパターンデータを伝送遅延要因パターンとして記録する伝送遅延情報記録部900と、伝送遅延情報記録部に記録された伝送遅延要因パターンと受信パターンとを比較し、一致したとき、当該端局との通信路の帯域幅を拡大するパターン比較部を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視制御システムにおける伝送帯域制御方式に係り、特に限られた帯域を各端局に効果的に割り振り、前記帯域を有効活用することのできる帯域制御方式に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ネットワーク技術の発展に伴いネットワークの用途は多様化し、例えばIPネットワーク網を用いて伝送制御を行う伝送制御システムが開発されている。
【0003】
伝送制御システムは上位となる伝送制御装置と下位となる複数の端局により形成され、伝送制御装置と端局はIPネットワーク網でつながり、IPネットワーク内の限られた帯域を端局毎に割り振って通信をおこなっている。通信に使用される帯域は限られた帯域であるため有効活用が望まれる。
【0004】
また、伝送制御システムのようなリアルタイムシステムではデータの欠損、遅延が大きな問題となるためタイムクリティカル性とスループット性を保障する必要がある。このため、QoS(Quality of Service)の確保を目的とした帯域制御が必要である。
【0005】
特許文献1には、パケットフローの各々に設定された設定帯域に基づいて各フローの帯域を制限する帯域制限装置、すなわち設定帯域の各々の条件を満たすパケット間隔を生成し、パケット送信完了時点からの経過時間と前記パケット間隔との比較に基づいて各フローにおける次パケットの送信優先度を判定する帯域制限装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−158640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来技術によれば、パケットを送信する毎に帯域の制御を行うことが必要となり、装置の処理負荷が増加してスループットが低下する。本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、スループットの低下を抑制することのできる帯域制御方式を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するため、次のような手段を採用した。
【0009】
複数の端局を備え、各端局がそれぞれ監視対象機器から取得した監視データをネットワークを介して監視制御装置に伝送し、前記監視制御装置は受信した前記監視データをもとに各端局を介して前記監視対象機器を制御する監視制御装置を備え、
前記監視制御装置は、
受信した監視データの送信時刻、受信時刻、監視対象機器のアドレスおよび監視対象機器の状態を含むパターンデータを生成し、生成したをパターンデータを受信パターンとして記録する受信パターン記録部と、
前記送信時刻および受信時刻をもとに伝送遅延時間が所定値を超えるか否かを判定する伝送遅延判定部と、
伝送遅延が発生したとき、発生した監視データに先行する監視データに対応するパターンデータを伝送遅延要因パターンとして記録する伝送遅延情報記録部と、
伝送遅延情報記録部に記録された伝送遅延要因パターンと受信パターンとを比較し、一致したとき、当該端局との通信路の帯域幅を拡大するパターン比較部とを備えた。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以上の構成を備えるため、監視制御システムにおいてスループットの低下を抑制することのできる帯域制御方式を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態にかかる監視制御システムを説明する図である。
【図2】監視制御装置の詳細を説明する図である。
【図3】受信パターンの生成から伝送遅延要因パターン記録までの処理の流れを説明する図である。
【図4】受信データのデータ構造例を示す図である。
【図5】受信パターンデータのデータ構造例を示す図である。
【図6】受信パターン記録部に記録される受信パターンデータのデータ構成例を示す図である。
【図7】伝送遅延情報記録部に記憶されるデータのデータ構成例を示す図である。
【図8】帯域情報記録部に記録されるデータのデータ構成例を示す図である。
【図9】受信パターン生成部の処理手順例を示す図である。
【図10】パターン比較部の処理手順例を示す図である。
【図11】伝送遅延判定部の処理手順例を示す図である。
【図12】発生要因取得部の処理手順例を示す図である。
【図13】必要帯域算出部の処理手順例を示す図である。
【図14】帯域制御要求処理部の処理手順例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を添付図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施形態にかかる監視制御システムを説明する図であり、このシステムは、例えば発電所あるいは変電所など電力系統システムの監視制御を行う。
【0013】
監視制御装置1は、複数の監視制御対象機器4(監視制御対象機器4a〜監視制御対象機器4n:nは自然数)とIPネットワーク網3、端局2を介して接続し、端局2から監視データを収集する。また、遠方監視制御装置1は端局2(端局2a〜端局2n:nは自然数)と接続し、収集した監視データを基に監視制御対象機器の監視制御を行う。
【0014】
図2は、監視制御装置の詳細を説明する図である。監視制御装置1は、伝送遅延予測部10、端局からの監視データを受信処理をするデータ受信処理部20、端局毎に帯域を設定する帯域制御部30を備える。ここで、前記伝送遅延予測部10は、伝送の遅延を予測し、伝送の遅延が発生する前に端局毎の帯域を制御し、伝送の遅延を防止する。
【0015】
また、伝送遅延予測部10は、受信したデータをパターン化し保持しておく受信パターン記録部(700)、伝送遅延が発生したときの遅延情報を保持する伝送遅延情報記録部(900)、端局に割り当てられている帯域を記録している帯域情報記録部(800)、受信データをパターン化する受信パターン生成部(100)、パターン化された受信データを記録する受信パターン記録部(700)、
受信パターン記録部(700)と伝送遅延情報記録部(900)に記録されたデータのパターンを比較し伝送遅延の発生を予測するパターン比較部(200)、伝送遅延時間を算出し、伝送遅延が発生しているかを判定する伝送遅延判定部(300)、伝送遅延が発生した要因を取得する発生要因取得部(400)、伝送遅延が再度発生したときに必要となる必要帯域を算出する必要帯域算出部(500)、伝送遅延を予測したとき伝送遅延が発生する前に必要帯域の確保を要求する帯域制御要求部(600)を備える。
【0016】
通常では、端局からの受信データ量は、各端局に割り当てられた帯域を越えない一定のスループット特性を持つ。また、各端局に割り当てられている帯域の合計はIPネットワーク網の帯域より少ない。
【0017】
図3は、受信パターンの生成から伝送遅延要因パターン記録までの処理の流れを説明する図である。受信データ処理部20で受信した受信データをもとに受信パターン生成部100において受信パターンデータを生成し、生成した受信パターンは、受信パターン記録部700に記録する。受信パターン記録部700に記録できる量はシステムにより可変とする。図3では3としている。記録されたデータは古いデータから削除する。
【0018】
受信データをもとに生成した受信パターンDにおいて伝送遅延が発生したとき、受信パターン記録部700は、データNo.1(受信パターンB)、データNo.2(受信パターンC)の順で受信データを取得したため、受信パターンD(伝送遅延)が発生したと推定し、受信パターン記録部のデータNo.1(受信パターンB)、データNo.2(受信パターンC)を伝送遅延情報記録部900に伝送遅延の発生要因データとして記録する。
【0019】
パターン比較部200は、記録した伝送遅延の発生要因データと、新たに受信した受信データをもとに生成した受信パターンデータとを比較し、受信パターンDの発生(伝送遅延の発生)を予測する。
【0020】
図4は、受信データのデータ構造例を示す図である。受信データは固定部及び可変部のを備える。固定部(1010)は全てのデータに共通であり、可変部(1010)はデータ種別(1011)により異なる。固定部のデータ種別を固定部パターンFP(1012)とし、可変部のデータ内容を可変部パターンCP(1013)とする。FPとCPを組合わせたものをパターンデータP(1014)とし、受信パターン生成に使用する。また、端局時刻をST(1015)として受信パターン生成に使用する。
【0021】
図5は、受信パターンデータのデータ構造例を示す図である。図4で説明したパターンデータP、STを組み合わせ受信パターンデータ(1100)生成する。また生成時に監視制御装置にて受信データを受信した時刻、受信時刻RT(1110)を付加する。なお、可変部パターンCPは、監視対象機器のアドレス(ワードアドレス)および監視対象機器の状態(ポジション,ON/OFF)を含む。
【0022】
図6は、受信パターン記録部(700)に記録される受信パターンデータのデータ構成例を示す図である。データNo.は、記録データを個別に識別する為の番号である。パターンデータには受信データから生成したパターンデータPが記録され、端局時刻には受信データから生成した端局時間STが記録され、受信時刻には受信パターンデータ生成時に付加された受信時刻RTが記録される。
【0023】
図7は、伝送遅延情報記録部(900)に記憶されるデータのデータ構成例を示す図である。伝送遅延No.(910)は記録した伝送遅延情報を個別に識別するための番号である。伝送遅延要因パターン(920)は、伝送遅延が発生したときの受信パターンを要因として記録する。伝送遅延パターン(930)は伝送遅延が発生したデータを記録する。伝送遅延時間(940)は、伝送遅延が発生し、伝送遅延により遅延した時間を記録する。必要制御帯域(950)は、伝送遅延パターンの受信を予測したときに必要となる帯域を記録する。伝送遅延情報記録部(900)は初起動時、空の状態であるが、データは逐次蓄積されていく。伝送遅延No.(910)は蓄積されたデータの数を表している。
【0024】
図8は、帯域情報記録部(800)に記録されるデータのデータ構成例を示す図である。図に示すように、監視制御装置1に接続される端局2に割り振られた帯域が記録されている。
【0025】
図9〜図13を参照して伝送遅延情報記録部に伝送遅延情報を記録するまでの処理を説明する。
【0026】
図9は、受信パターン生成部(100)の処理手順例を示す図である。データ受信処理部20を介して監視データを受信することにより処理を開始する。データを受信すると、受信データから固定パターンFPを取得し(S102)、受信データから可変パターンCPを取得し(S102)、固定パターンFP及び可変パターンCPをもとにパターンデータPを生成する(S103)。さらに、受信データから端局時刻STを取得し(S104)、受信時刻RTを生成し(S105)、生成した受信パターンを受信パターン記録部に記録し(S106)、受信パターン比較部(200)を動作させて、処理を終了する。
【0027】
図10は、パターン比較部(200)の処理手順例を示す図である。まず、伝送遅延情報記録部(900)に一つ以上の伝送遅延情報が記録されているか判定する(S201)。起動時は偽(記録無)のため、伝送遅延判定部(300)を動作を移行して、処理を終了する。
【0028】
判定結果が、真(記録有)の場合、受信パターン記録部(700)に記録されているパターンを取得し(S202)、伝送遅延情報記録部に登録されている伝送遅延要因パターンと比較する(S203)。パターン不一致かを判定し(S204)、真(不一致)の場合は伝送遅延判定部(300)を動作させ、偽(一致)の場合は帯域制御要求部を動作させる(S600)。
【0029】
図11は、伝送遅延判定部300の処理手順例を示す図である。まず、受信パターンの端局時刻STmを取得し(S301)、受信パターンの受信時刻RTmを取得し(S302)、伝送遅延時間Tを算出する(S303)。
【0030】
伝送遅延時間Tは
T=RTm―STmで表すことができる。
【0031】
次に、Tを用いて伝送遅延の判定を行う(S304)。Tが閾値内で収まっている場合(遅延なし)には処理を終了する。収まっていない場合(遅延有)には伝送遅延時間を伝送遅延情報記録部に記録し(S306)、発生要因取得部(400)を動作させる。
【0032】
図12は、発生要因取得部400の処理手順例を示す図である。まず、受信パターン記録部700に記録された受信パターンNo.m−1からNo.1までを伝送遅延の発生要因となる伝送遅延要因パターンであると推定し(S401)、伝送遅延要因パターンとして伝送遅延情報記録部900に記録し(S402)、必要帯域算出部を動作させる(S500)。
【0033】
図13は、必要帯域算出部500の処理手順例を示す図である。まず、伝送遅延が発生した端局に割り当てられている帯域Bを取得し(S501)、伝送遅延時間Tと帯域Bより必要帯域NBを算出する(S502)。ここで必要帯域NBは、
NB=T×Bで求めることができる。
【0034】
算出した必要帯域NBは伝送遅延情報記録部900の必要制御帯域に記録する(S504)。
【0035】
図10および図14を参照し、伝送遅延情報記録部作成後の伝送遅延情報予測、帯域制御要求までの流れを説明する。
【0036】
図14は、帯域制御要求処理部(600)の処理手順例を示す図である。パターンの判定(S204)において一致した伝送遅延要因パターンの伝送遅延量を予測し、伝送遅延することなく受信するために必要となる帯域の必要制御帯域NBを取得し(S601)、必要帯域NBを確保するため帯域制御要求を帯域制御部に送信して(S602)、処理を終了する。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段は、それら一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、またはICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0038】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【0039】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、一定のスループット特性とタイムクリティカル性とが要求されるデータをIPネットワーク網を介して定常的に送受信する監視制御システムにおいて、
受信データから固有のデータ(パターンデータ)を抽出し、パターンデータを受信順に並べたものを現在のパターン(受信パターンB、C、D・・)として記録し、一定のスループット特性から逸脱したデータ(受信パターンD)を受信したことにより伝送遅延が発生した場合、記録されている現在のパターン(受信パターンB、C)内に逸脱した要因があると推定し、現在のパターンを伝送遅延が発生した要因として記録する。
【0040】
以後、新たに受信したパターンと記録した伝送遅延要因のパターン(受信パターンB、C)を比較し、一致した場合(受信パターンB、Cを受信した場合)に、逸脱したデータ(受信パターンD)を次に受信し、伝送遅延が発生すると予測し、受信前に伝送遅延することなく伝送するために必要な帯域を確保する帯域制御をする。これにより一定のスループット特性を維持することができる。
【0041】
このように、一定のスループット特性から逸脱したデータの受信時にそのデータの発生した要因を特定し、次に逸脱したデータを受信する前に前記逸脱したデータの発生を予測し、スループット特性を維持するために必要な帯域を確保する帯域制御することによって、一定のスループット特性を維持することができる。
【符号の説明】
【0042】
1…監視制御装置
2…端局
3…IPネットワーク網
10…伝送遅延予測部
100…受信パターン生成部
200…パターン比較部
600…帯域制御要求部
700…受信パターン記録部
900…伝送遅延情報記録部
920…発生要因パターン
1030…伝送遅延時間
1040…必要制御帯域
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視制御システムにおける伝送帯域制御方式に係り、特に限られた帯域を各端局に効果的に割り振り、前記帯域を有効活用することのできる帯域制御方式に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ネットワーク技術の発展に伴いネットワークの用途は多様化し、例えばIPネットワーク網を用いて伝送制御を行う伝送制御システムが開発されている。
【0003】
伝送制御システムは上位となる伝送制御装置と下位となる複数の端局により形成され、伝送制御装置と端局はIPネットワーク網でつながり、IPネットワーク内の限られた帯域を端局毎に割り振って通信をおこなっている。通信に使用される帯域は限られた帯域であるため有効活用が望まれる。
【0004】
また、伝送制御システムのようなリアルタイムシステムではデータの欠損、遅延が大きな問題となるためタイムクリティカル性とスループット性を保障する必要がある。このため、QoS(Quality of Service)の確保を目的とした帯域制御が必要である。
【0005】
特許文献1には、パケットフローの各々に設定された設定帯域に基づいて各フローの帯域を制限する帯域制限装置、すなわち設定帯域の各々の条件を満たすパケット間隔を生成し、パケット送信完了時点からの経過時間と前記パケット間隔との比較に基づいて各フローにおける次パケットの送信優先度を判定する帯域制限装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−158640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来技術によれば、パケットを送信する毎に帯域の制御を行うことが必要となり、装置の処理負荷が増加してスループットが低下する。本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、スループットの低下を抑制することのできる帯域制御方式を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するため、次のような手段を採用した。
【0009】
複数の端局を備え、各端局がそれぞれ監視対象機器から取得した監視データをネットワークを介して監視制御装置に伝送し、前記監視制御装置は受信した前記監視データをもとに各端局を介して前記監視対象機器を制御する監視制御装置を備え、
前記監視制御装置は、
受信した監視データの送信時刻、受信時刻、監視対象機器のアドレスおよび監視対象機器の状態を含むパターンデータを生成し、生成したをパターンデータを受信パターンとして記録する受信パターン記録部と、
前記送信時刻および受信時刻をもとに伝送遅延時間が所定値を超えるか否かを判定する伝送遅延判定部と、
伝送遅延が発生したとき、発生した監視データに先行する監視データに対応するパターンデータを伝送遅延要因パターンとして記録する伝送遅延情報記録部と、
伝送遅延情報記録部に記録された伝送遅延要因パターンと受信パターンとを比較し、一致したとき、当該端局との通信路の帯域幅を拡大するパターン比較部とを備えた。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以上の構成を備えるため、監視制御システムにおいてスループットの低下を抑制することのできる帯域制御方式を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態にかかる監視制御システムを説明する図である。
【図2】監視制御装置の詳細を説明する図である。
【図3】受信パターンの生成から伝送遅延要因パターン記録までの処理の流れを説明する図である。
【図4】受信データのデータ構造例を示す図である。
【図5】受信パターンデータのデータ構造例を示す図である。
【図6】受信パターン記録部に記録される受信パターンデータのデータ構成例を示す図である。
【図7】伝送遅延情報記録部に記憶されるデータのデータ構成例を示す図である。
【図8】帯域情報記録部に記録されるデータのデータ構成例を示す図である。
【図9】受信パターン生成部の処理手順例を示す図である。
【図10】パターン比較部の処理手順例を示す図である。
【図11】伝送遅延判定部の処理手順例を示す図である。
【図12】発生要因取得部の処理手順例を示す図である。
【図13】必要帯域算出部の処理手順例を示す図である。
【図14】帯域制御要求処理部の処理手順例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を添付図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施形態にかかる監視制御システムを説明する図であり、このシステムは、例えば発電所あるいは変電所など電力系統システムの監視制御を行う。
【0013】
監視制御装置1は、複数の監視制御対象機器4(監視制御対象機器4a〜監視制御対象機器4n:nは自然数)とIPネットワーク網3、端局2を介して接続し、端局2から監視データを収集する。また、遠方監視制御装置1は端局2(端局2a〜端局2n:nは自然数)と接続し、収集した監視データを基に監視制御対象機器の監視制御を行う。
【0014】
図2は、監視制御装置の詳細を説明する図である。監視制御装置1は、伝送遅延予測部10、端局からの監視データを受信処理をするデータ受信処理部20、端局毎に帯域を設定する帯域制御部30を備える。ここで、前記伝送遅延予測部10は、伝送の遅延を予測し、伝送の遅延が発生する前に端局毎の帯域を制御し、伝送の遅延を防止する。
【0015】
また、伝送遅延予測部10は、受信したデータをパターン化し保持しておく受信パターン記録部(700)、伝送遅延が発生したときの遅延情報を保持する伝送遅延情報記録部(900)、端局に割り当てられている帯域を記録している帯域情報記録部(800)、受信データをパターン化する受信パターン生成部(100)、パターン化された受信データを記録する受信パターン記録部(700)、
受信パターン記録部(700)と伝送遅延情報記録部(900)に記録されたデータのパターンを比較し伝送遅延の発生を予測するパターン比較部(200)、伝送遅延時間を算出し、伝送遅延が発生しているかを判定する伝送遅延判定部(300)、伝送遅延が発生した要因を取得する発生要因取得部(400)、伝送遅延が再度発生したときに必要となる必要帯域を算出する必要帯域算出部(500)、伝送遅延を予測したとき伝送遅延が発生する前に必要帯域の確保を要求する帯域制御要求部(600)を備える。
【0016】
通常では、端局からの受信データ量は、各端局に割り当てられた帯域を越えない一定のスループット特性を持つ。また、各端局に割り当てられている帯域の合計はIPネットワーク網の帯域より少ない。
【0017】
図3は、受信パターンの生成から伝送遅延要因パターン記録までの処理の流れを説明する図である。受信データ処理部20で受信した受信データをもとに受信パターン生成部100において受信パターンデータを生成し、生成した受信パターンは、受信パターン記録部700に記録する。受信パターン記録部700に記録できる量はシステムにより可変とする。図3では3としている。記録されたデータは古いデータから削除する。
【0018】
受信データをもとに生成した受信パターンDにおいて伝送遅延が発生したとき、受信パターン記録部700は、データNo.1(受信パターンB)、データNo.2(受信パターンC)の順で受信データを取得したため、受信パターンD(伝送遅延)が発生したと推定し、受信パターン記録部のデータNo.1(受信パターンB)、データNo.2(受信パターンC)を伝送遅延情報記録部900に伝送遅延の発生要因データとして記録する。
【0019】
パターン比較部200は、記録した伝送遅延の発生要因データと、新たに受信した受信データをもとに生成した受信パターンデータとを比較し、受信パターンDの発生(伝送遅延の発生)を予測する。
【0020】
図4は、受信データのデータ構造例を示す図である。受信データは固定部及び可変部のを備える。固定部(1010)は全てのデータに共通であり、可変部(1010)はデータ種別(1011)により異なる。固定部のデータ種別を固定部パターンFP(1012)とし、可変部のデータ内容を可変部パターンCP(1013)とする。FPとCPを組合わせたものをパターンデータP(1014)とし、受信パターン生成に使用する。また、端局時刻をST(1015)として受信パターン生成に使用する。
【0021】
図5は、受信パターンデータのデータ構造例を示す図である。図4で説明したパターンデータP、STを組み合わせ受信パターンデータ(1100)生成する。また生成時に監視制御装置にて受信データを受信した時刻、受信時刻RT(1110)を付加する。なお、可変部パターンCPは、監視対象機器のアドレス(ワードアドレス)および監視対象機器の状態(ポジション,ON/OFF)を含む。
【0022】
図6は、受信パターン記録部(700)に記録される受信パターンデータのデータ構成例を示す図である。データNo.は、記録データを個別に識別する為の番号である。パターンデータには受信データから生成したパターンデータPが記録され、端局時刻には受信データから生成した端局時間STが記録され、受信時刻には受信パターンデータ生成時に付加された受信時刻RTが記録される。
【0023】
図7は、伝送遅延情報記録部(900)に記憶されるデータのデータ構成例を示す図である。伝送遅延No.(910)は記録した伝送遅延情報を個別に識別するための番号である。伝送遅延要因パターン(920)は、伝送遅延が発生したときの受信パターンを要因として記録する。伝送遅延パターン(930)は伝送遅延が発生したデータを記録する。伝送遅延時間(940)は、伝送遅延が発生し、伝送遅延により遅延した時間を記録する。必要制御帯域(950)は、伝送遅延パターンの受信を予測したときに必要となる帯域を記録する。伝送遅延情報記録部(900)は初起動時、空の状態であるが、データは逐次蓄積されていく。伝送遅延No.(910)は蓄積されたデータの数を表している。
【0024】
図8は、帯域情報記録部(800)に記録されるデータのデータ構成例を示す図である。図に示すように、監視制御装置1に接続される端局2に割り振られた帯域が記録されている。
【0025】
図9〜図13を参照して伝送遅延情報記録部に伝送遅延情報を記録するまでの処理を説明する。
【0026】
図9は、受信パターン生成部(100)の処理手順例を示す図である。データ受信処理部20を介して監視データを受信することにより処理を開始する。データを受信すると、受信データから固定パターンFPを取得し(S102)、受信データから可変パターンCPを取得し(S102)、固定パターンFP及び可変パターンCPをもとにパターンデータPを生成する(S103)。さらに、受信データから端局時刻STを取得し(S104)、受信時刻RTを生成し(S105)、生成した受信パターンを受信パターン記録部に記録し(S106)、受信パターン比較部(200)を動作させて、処理を終了する。
【0027】
図10は、パターン比較部(200)の処理手順例を示す図である。まず、伝送遅延情報記録部(900)に一つ以上の伝送遅延情報が記録されているか判定する(S201)。起動時は偽(記録無)のため、伝送遅延判定部(300)を動作を移行して、処理を終了する。
【0028】
判定結果が、真(記録有)の場合、受信パターン記録部(700)に記録されているパターンを取得し(S202)、伝送遅延情報記録部に登録されている伝送遅延要因パターンと比較する(S203)。パターン不一致かを判定し(S204)、真(不一致)の場合は伝送遅延判定部(300)を動作させ、偽(一致)の場合は帯域制御要求部を動作させる(S600)。
【0029】
図11は、伝送遅延判定部300の処理手順例を示す図である。まず、受信パターンの端局時刻STmを取得し(S301)、受信パターンの受信時刻RTmを取得し(S302)、伝送遅延時間Tを算出する(S303)。
【0030】
伝送遅延時間Tは
T=RTm―STmで表すことができる。
【0031】
次に、Tを用いて伝送遅延の判定を行う(S304)。Tが閾値内で収まっている場合(遅延なし)には処理を終了する。収まっていない場合(遅延有)には伝送遅延時間を伝送遅延情報記録部に記録し(S306)、発生要因取得部(400)を動作させる。
【0032】
図12は、発生要因取得部400の処理手順例を示す図である。まず、受信パターン記録部700に記録された受信パターンNo.m−1からNo.1までを伝送遅延の発生要因となる伝送遅延要因パターンであると推定し(S401)、伝送遅延要因パターンとして伝送遅延情報記録部900に記録し(S402)、必要帯域算出部を動作させる(S500)。
【0033】
図13は、必要帯域算出部500の処理手順例を示す図である。まず、伝送遅延が発生した端局に割り当てられている帯域Bを取得し(S501)、伝送遅延時間Tと帯域Bより必要帯域NBを算出する(S502)。ここで必要帯域NBは、
NB=T×Bで求めることができる。
【0034】
算出した必要帯域NBは伝送遅延情報記録部900の必要制御帯域に記録する(S504)。
【0035】
図10および図14を参照し、伝送遅延情報記録部作成後の伝送遅延情報予測、帯域制御要求までの流れを説明する。
【0036】
図14は、帯域制御要求処理部(600)の処理手順例を示す図である。パターンの判定(S204)において一致した伝送遅延要因パターンの伝送遅延量を予測し、伝送遅延することなく受信するために必要となる帯域の必要制御帯域NBを取得し(S601)、必要帯域NBを確保するため帯域制御要求を帯域制御部に送信して(S602)、処理を終了する。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段は、それら一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、またはICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0038】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【0039】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、一定のスループット特性とタイムクリティカル性とが要求されるデータをIPネットワーク網を介して定常的に送受信する監視制御システムにおいて、
受信データから固有のデータ(パターンデータ)を抽出し、パターンデータを受信順に並べたものを現在のパターン(受信パターンB、C、D・・)として記録し、一定のスループット特性から逸脱したデータ(受信パターンD)を受信したことにより伝送遅延が発生した場合、記録されている現在のパターン(受信パターンB、C)内に逸脱した要因があると推定し、現在のパターンを伝送遅延が発生した要因として記録する。
【0040】
以後、新たに受信したパターンと記録した伝送遅延要因のパターン(受信パターンB、C)を比較し、一致した場合(受信パターンB、Cを受信した場合)に、逸脱したデータ(受信パターンD)を次に受信し、伝送遅延が発生すると予測し、受信前に伝送遅延することなく伝送するために必要な帯域を確保する帯域制御をする。これにより一定のスループット特性を維持することができる。
【0041】
このように、一定のスループット特性から逸脱したデータの受信時にそのデータの発生した要因を特定し、次に逸脱したデータを受信する前に前記逸脱したデータの発生を予測し、スループット特性を維持するために必要な帯域を確保する帯域制御することによって、一定のスループット特性を維持することができる。
【符号の説明】
【0042】
1…監視制御装置
2…端局
3…IPネットワーク網
10…伝送遅延予測部
100…受信パターン生成部
200…パターン比較部
600…帯域制御要求部
700…受信パターン記録部
900…伝送遅延情報記録部
920…発生要因パターン
1030…伝送遅延時間
1040…必要制御帯域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端局を備え、各端局がそれぞれ監視対象機器から取得した監視データをネットワークを介して監視制御装置に伝送し、前記監視制御装置は受信した前記監視データをもとに各端局を介して前記監視対象機器を制御する監視制御装置を備え、
前記監視制御装置は、
受信した監視データの送信時刻、受信時刻、監視対象機器のアドレスおよび監視対象機器の状態を含むパターンデータを生成し、生成したをパターンデータを受信パターンとして記録する受信パターン記録部と、
前記送信時刻および受信時刻をもとに伝送遅延時間が所定値を超えるか否かを判定する伝送遅延判定部と、
伝送遅延が発生したとき、発生した監視データに先行する監視データに対応するパターンデータを伝送遅延要因パターンとして記録する伝送遅延情報記録部と、
伝送遅延情報記録部に記録された伝送遅延要因パターンと受信パターンとを比較し、一致したとき、当該端局との通信路の帯域幅を拡大するパターン比較部とを備えたことを特徴とする監視制御装置における伝送帯域制御方式。
【請求項2】
請求項1記載の監視制御装置における伝送帯域制御方式において、
伝送遅延情報記録部に記録された伝送遅延要因パターンと前記受信パターンとの比較結果が一致せず、かつ伝送遅延判定部が伝送遅延時間が所定値を超えると判定したとき、前記伝送遅延が発生した監視データに先行する監視データに対応するパターンデータを伝送遅延要因パターンとして伝送遅延情報記録部に記録することを特徴とする監視制御装置における伝送帯域制御方式。
【請求項1】
複数の端局を備え、各端局がそれぞれ監視対象機器から取得した監視データをネットワークを介して監視制御装置に伝送し、前記監視制御装置は受信した前記監視データをもとに各端局を介して前記監視対象機器を制御する監視制御装置を備え、
前記監視制御装置は、
受信した監視データの送信時刻、受信時刻、監視対象機器のアドレスおよび監視対象機器の状態を含むパターンデータを生成し、生成したをパターンデータを受信パターンとして記録する受信パターン記録部と、
前記送信時刻および受信時刻をもとに伝送遅延時間が所定値を超えるか否かを判定する伝送遅延判定部と、
伝送遅延が発生したとき、発生した監視データに先行する監視データに対応するパターンデータを伝送遅延要因パターンとして記録する伝送遅延情報記録部と、
伝送遅延情報記録部に記録された伝送遅延要因パターンと受信パターンとを比較し、一致したとき、当該端局との通信路の帯域幅を拡大するパターン比較部とを備えたことを特徴とする監視制御装置における伝送帯域制御方式。
【請求項2】
請求項1記載の監視制御装置における伝送帯域制御方式において、
伝送遅延情報記録部に記録された伝送遅延要因パターンと前記受信パターンとの比較結果が一致せず、かつ伝送遅延判定部が伝送遅延時間が所定値を超えると判定したとき、前記伝送遅延が発生した監視データに先行する監視データに対応するパターンデータを伝送遅延要因パターンとして伝送遅延情報記録部に記録することを特徴とする監視制御装置における伝送帯域制御方式。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−195748(P2012−195748A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57893(P2011−57893)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000153443)株式会社日立情報制御ソリューションズ (359)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000153443)株式会社日立情報制御ソリューションズ (359)
【Fターム(参考)】
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