説明

監視用センサ

【課題】 鳥や濃霧など人体以外の空中の移動物体による誤検出を抑制しつつ侵入者を検出可能な監視用センサを提供する。
【解決手段】 警戒領域内への侵入者を検出する監視用センサであって、警戒領域内の物体までの距離値を示す測距データを生成する検知部と、警戒領域の縁部に設定される周辺領域と周辺領域の内側に設定される内部領域とを記憶する記憶部と、測距データから警戒領域内における物体の存在位置を検出する物体検出部と、物体検出部が検出した物体が警戒領域内に存在する滞留時間または警戒領域内での移動距離に基づき当該物体を侵入者と判定する判定部と、を備え、判定部は、周辺領域からの移動を伴わずに内部領域にて検知された物体を侵入者と判定する判定基準を、周辺領域にて検知された物体を侵入者と判定する判定基準より厳格な判定基準にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光線の投受光により警戒領域内への侵入者を検出する監視用センサに関し、特に、人体以外の物体による誤検出を抑制して侵入者の検出精度を向上することのできる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋外などの広域な監視範囲を監視するために、レーザ光線や可視光線、超音波、赤外線などの各種探査信号を監視範囲内に照射して、対象物からの反射回帰信号を受信することで監視範囲における物体を検出する監視用センサが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、所定角度範囲を回転走査しながらレーザ光を投光することで2次元の監視エリアを監視して、反射光の受光時に算出される距離値より侵入者の存在を判定するレーザセンサを用いた警備システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−241062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のレーザセンサは、任意に設定された2次元の監視エリアにおいてレーザセンサにて取得される距離データに変化があった場合に侵入物の存在を検出し、この侵入物の移動量に基づき侵入者か否かの判定を行っている。
【0006】
しかしながら、屋外環境は一定ではなく逐次変化し得るために、屋外環境で設定される監視エリアには侵入者以外の種々の移動物体が出現する。例えば、鳥などの飛行物体や、濃霧など気象条件により空気中を浮遊する浮遊粒子が局所的に高密度となるような場合である。このため、特許文献1に開示されているセンサのように、単純に距離データが変化すること、または移動量に基づいて監視エリア内に侵入した侵入者を検出しようとすると、このような鳥(飛行物体)や濃霧(高密度な浮遊粒子)を侵入者として誤検出してしまう可能性がある。
【0007】
このような鳥や濃霧に代表される空中の移動物体は、レーザセンサで計測される2次元平面上の大きさが人体と同程度となる場合がある。また、鳥は、着地前や飛び立ち直後においては飛行速度が遅く人体と同程度の移動速度となることがあり、濃霧などの高密度な浮遊粒子は、風に漂い移動するために人体と同程度の移動速度となることがある。従って、特許文献1に開示された内容に加え、物体の大きさや移動速度といった識別の基準を設けて侵入者を検出しようとしても、鳥や濃霧など空中の移動物体による誤検出を排除することができないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、鳥や濃霧など人体以外の空中の移動物体による誤検出を抑制しつつ、侵入者を鳥や濃霧と区別して検出可能な監視用センサの提案を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために本発明による監視用センサは、警戒領域内を監視して該警戒領域内への侵入者を検出する監視用センサであって、周期的に前記警戒領域内を探査信号で走査して該警戒領域における各方位ごとに探査信号を反射した物体までの距離値を示す測距データを生成する検知部と、前記警戒領域の縁部に設定される周辺領域と前記周辺領域の内側に設定される内部領域とを記憶する記憶部と、前記測距データから前記警戒領域内における物体の存在位置を検出する物体検出部と、前記物体検出部が検出した物体が警戒領域内に存在する滞留時間または警戒領域内での移動距離に基づき当該物体を侵入者と判定する判定部と、を備え、前記判定部は、前記周辺領域からの移動を伴わずに前記内部領域にて検知された物体を侵入者と判定する判定基準を、前記周辺領域にて検知された物体を侵入者と判定する判定基準より厳格な判定基準とすることを特徴とする。
【0010】
かかる構成において、監視用センサは、警戒領域の縁部に設定される周辺領域とこの周辺領域の内側に設定される内部領域とを各々記憶し、警戒領域内を走査して検知された物体が警戒領域内に存在する滞留時間または警戒領域内での移動距離に基づき当該物体が侵入者か否かを判定する。そして、監視用センサは、この侵入者の判定処理において、周辺領域からの移動を伴わずに内部領域にて検知された物体については、周辺領域にて検知された物体を侵入者と判定する判定基準よりも厳格な判定基準にて侵入者であるか否かを判定するように作用する。
【0011】
かかる構成では、警戒領域を周辺領域と内部領域とに区分している。警戒領域をこのように縁部分とその内側とに区分した場合、地面を歩いて移動する侵入者は警戒領域に侵入する際に必ず周辺領域を通過することとなるのに対し、鳥や濃霧などの空中に存在する物体は、検知部が走査する警戒領域内に必ずしも周辺領域を通って侵入する訳ではなく、多くの場合、警戒領域の上空より直接内部領域に入り込むこととなる。
【0012】
かかる特性を利用し、本発明の監視用センサでは、周辺領域からの移動を伴わずに直接内部領域にて存在が検知された物体については、相対的に厳格な判定基準により侵入者であるか判定する。相対的に厳格な判定基準とは、即ち、被検知物体が侵入者であると判定する条件を厳しくすることを意味する。これにより、鳥や濃霧などの誤報要因を警戒領域内で検知した場合であっても誤って侵入者として判定してしまうことを防止して、侵入者の判定精度を向上させることが可能となる。
【0013】
また、本発明の監視用センサにおいて、前記判定部は、前記周辺領域にて検知された物体については第一の所定距離移動すると当該物体を侵入者と判定し、前記周辺領域からの移動を伴わずに前記内部領域にて検知された物体については前記第一の所定距離より長い第二の所定距離移動すると当該物体を侵入者と判定するようにしてもよい。
【0014】
かかる構成において、監視用センサは、物体を警戒領域の縁部分で検知したか、又は警戒領域の縁部分を経ずに直接警戒領域の内部で検知したかにより、被検知物体が侵入者であると判定するための判定基準である物体の移動距離を異ならせるように作用する。すなわち、監視用センサは、警戒領域の縁部分で物体を検知した場合には当該物体が第一の所定距離移動したことにより侵入者と判定し、警戒領域の縁部分を経ずに直接警戒領域の内部で物体を検知した場合には当該物体が第一の所定距離より長い第二の所定距離移動したことにより侵入者と判定する。
【0015】
上述したように、鳥や濃霧などの空中に存在する物体は、多くの場合、検知部が走査する警戒領域の上空より直接内部領域に入り込む。また、このような鳥や濃霧などは、検知部が走査する警戒領域に沿って平行に移動するよりも、上空から表れて警戒領域と交差する方向に横切るだけである可能性が高い。
【0016】
このため、かかる監視用センサによれば、警戒領域に侵入する際に周辺領域を通過する侵入者である可能性が高い物体については、相対的に短い距離の移動により侵入者として判定することで検出漏れを防止でき、また、周辺領域からの移動を伴わずに直接内部領域にて存在が検知された鳥や濃霧などの誤報要因である可能性が高い物体については、警戒領域内で相対的に長い距離移動したことを条件に侵入者として判定することで、誤判定を抑制しつつ真に侵入者である場合に確実に検出することが可能となる。
【0017】
また、本発明の監視用センサにおいて、前記判定部は、前記周辺領域にて検知された物体および前記周辺領域からの移動を伴わずに前記内部領域にて検知された物体の何れについても、前記警戒領域内において所定の滞留時間に渡り存在が検知されていると当該物体を侵入者と判定するようにしてもよい。
【0018】
かかる構成において、監視用センサは、警戒領域内で検知された物体が、警戒領域の縁部分で検知されたか、警戒領域の縁部分を経ずに直接警戒領域の内部で検知されたかを問わず、当該被検知物体が警戒領域内に所定の滞留時間の間存在している場合には侵入者であると判定するように作用する。
【0019】
警戒領域内で検知された物体が侵入者である場合、警戒領域内を常に移動するとは限らず中途位置にて立ち止まり破壊行為など何らかの作業を行う可能性がある。一方で、鳥や濃霧などの空中に存在する物体は、飛行または風に漂っているため警戒領域内に留まる可能性は低く、上述したように検知部が走査する警戒領域を直交する方向に横切って領域から消える可能性が高い。
【0020】
このため、かかる監視用センサによれば、何れの領域に侵入してきた物体であっても、警戒領域内に所定時間留まっていれば侵入者として判定することにより、周辺領域を通過するような侵入者である可能性が高い物体以外の、何らかの不正な手段を用いて周辺領域を通過することなく直接内部領域へ侵入したような物体であっても、領域内に留まっている間に侵入者であることを判定することで、誤判定を抑制しつつ真に侵入者である場合に確実に検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、警戒領域の縁部である周辺領域からの移動を伴わずに直接内部領域にて存在が検知された物体については、相対的に厳格な判定基準により侵入者であるか判定することにより、警戒領域の上空より直接内部領域に入り込む鳥や濃霧などの誤報要因を誤って侵入者として判定してしまうことを防止して、侵入者の判定精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の警備システムの全体構成を示す概略図である。
【図2】本発明の監視用センサの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の警備装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の監視用センサによる警戒領域と侵入者判定の概要を示す図である。
【図5】本発明の監視用センサの動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の監視用センサによる物体位置検出処理のフローチャートである。
【図7】本発明の監視用センサによる侵入判定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
本実施形態では、監視建物において監視用センサを用いて屋外監視する警備システムを例示するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0024】
図1は、本発明の監視用センサ2を用いた警備システム1を示す構成図である。
図1は、監視建物3の屋外壁面に設置される監視用センサ2と、この監視用センサ2の警戒領域4と、監視建物3内に設置される警備装置5との関係を模式的に平面図上に示している。図1の例では、監視建物3の周囲に3つの監視用センサ2が設置されている。監視用センサ2は、それぞれ警備装置5と通信線にて接続されており、警備装置5は、遠隔の監視センタ6と通信回線網7を介して接続されている。なお、特に図示はしていないが、監視建物3の内部にも熱線センサや開閉センサなどの警備センサが設置されており、警備装置5に接続されている。
【0025】
監視用センサ2は、予め設定された警戒領域4内に探査信号としてのレーザ光を照射しながら所定周期で空間走査を行い、光路上にある物体にて反射した反射光を受光することで、領域内に存在する被検知物としての物体の位置を検出する。ここで、本実施形態において、警戒領域4は、監視用センサ2がレーザ光で走査する走査範囲から植栽などの既設物を除いた範囲として設定されている。また、警戒領域4において、領域4外側との境界となる部分が周辺領域4aとして構成され、この周辺領域に包囲される内側部分が内部領域4bとして構成されている。
【0026】
監視用センサ2は、警戒領域4内に存在する物体の位置を検出すると、当該物体を追跡してその位置変化から警戒領域4内での移動距離を検出する。また、監視用センサ2は、当該物体が警戒領域4内に出現してから領域4内に留まっている時間を計時する。そして、当該物体が警戒領域4内で初めて検知された位置(警戒領域4内に出現した位置)が周辺領域4aであったか内部領域4bであったかに応じて異なる判定基準を用いて当該物体が侵入者であるか否かを判定する。
このようにして、監視用センサ2は、警戒領域4内に出現する物体を監視し、侵入者の存在を判定すると侵入異常として自己のアドレス情報を示す検知信号を警備装置5に出力する。
【0027】
警備装置5は、監視区域となる監視建物3内外を監視している。そして、警備装置5は、監視用センサ2の検知信号などに基づき監視区域の異常を確定し、監視センタ6に異常信号を出力する。
【0028】
監視センタ6は、警備会社などが運営するセンタ装置61を備えた施設である。センタ装置61は、1又は複数のコンピュータで構成されており、本発明に関連する監視センタ6の機能を実現する。監視センタ6では、センタ装置61により各種機器が制御され、警備装置5から受信した異常信号を記録するとともに、異常の情報をディスプレイ62に表示し、監視員が監視対象となる複数の監視区域を監視している。
【0029】
<監視用センサ>
次に、図2を用いて監視用センサ2の構成について説明する。図2は、監視用センサ2の構成を示すブロック図である。
監視用センサ2は、監視建物3の屋外壁面に水平または一定の俯角を設定されて設置され、警備装置5より電源供給を受けて作動する。
【0030】
監視用センサ2は、警備装置5と接続され通信を行う通信部21と、レーザ光を照射及び受光する検知部22と、HDDやメモリなどで構成され各種設定情報やプログラムなどを記憶する記憶部23と、MPUやマイコンなどで構成され各部の制御を行う制御部24とを有して概略構成される。
【0031】
通信部21は、警備装置5と接続され、制御部24にて警戒領域4の異常(侵入異常)が判定されると、かかる異常の情報と自己のアドレス情報を示す検知信号を警備装置5に送信する。
【0032】
検知部22は、監視用センサ2の筐体に設けられた透光性のレーザ投受光面を介して探査信号としてのレーザ光を警戒領域4に照射して警戒領域4の一端から他端までを含む走査範囲を走査し、レーザ光を反射した被検知物としての物体の位置を検出する。検知部22は、例えば波長890nm程度の近赤外線を発射するレーザ発振部221と、レーザ光を反射して監視用センサ2より照射させる走査鏡222と、走査鏡222を等速に回転駆動させる走査制御部223と、受光素子を備えてレーザ発振部221の近傍に設けられる反射光検出部224と、レーザ光の照射結果として測距データを生成する測距データ生成部225とを備えている。
【0033】
レーザ発振部221より発射されるレーザ光は、走査鏡222と走査制御部223とにより照射方向を制御されて、少なくとも警戒領域4の全体を走査する。この走査は、監視用センサ2の設置角に応じて水平な平面について行うか、あるいは、俯角を以て遠距離となるほど地面に近づくような平面について行うことができる。走査は、所定の周期間隔(例えば30msec)で行われ、例えば、同方向について繰り返し行ってもよく、また、往方向の走査を行った後に復方向の走査を行ってもよい。
【0034】
測距データ生成部225は、レーザ光の照射から反射光の検出までに要する時間から算出される監視用センサ2とレーザ光を反射した物体(測定点)との距離と、走査制御部223により回転駆動される走査鏡222の角度(警戒領域4における方向)とにより、レーザ光を反射した物体、即ちレーザ光を反射した測定点の相対位置を算出する。相対位置は、監視用センサ2を基準とした測定点の位置であり、具体的には物体においてレーザ光を反射した面の位置である。また、測距データ生成部225は、所定時間内に反射光が返ってこない場合には、レーザ光の照射可能な距離内に物体がないと判断して、所定の擬似データを相対位置として記録する。擬似データは所定の値でよく、例えば監視用センサ2が監視すべき警戒領域4の外周までとなる距離値や、レーザ光による有効測定距離以上の適当な値でよい。
【0035】
測距データ生成部225により得られる測定データを本実施形態では測距データと呼ぶ。測距データは、具体的には検知部22による1回の走査で警戒領域4を所定の角度間隔(例えば0.25°)で測定した結果である。例えば、180°の範囲について0.25°間隔で測距データを取得すると721個の距離値が得られる。これら721個の距離値のセットが一つの測距データになる。測距データは、角度(方向)と距離のテーブルとして記憶されてよい。
測距データ生成部225は、所定の周期間隔(例えば30msec)にて検知部22の1回の走査が終了する毎に測距データを生成して制御部24に出力する。
【0036】
記憶部23は、ROMやRAM、又はHDDにて構成され自己を特定するためのアドレス情報と各種プログラムなどを記憶しており、更に監視用センサ2を動作させるための各種情報を記憶する。具体的に、記憶部23は、設定された警戒領域4及び警戒領域4内に設定される周辺領域4aと内部領域4bを示す警戒領域情報と、検知部22にて検出された物体の位置を示す物体位置情報と、検知部22にて検出された物体を複数周期に渡り追跡するためのトラッキング情報と、現在の警戒領域4の状態を示す現状態情報とを記憶している。また、記憶部23には、検知部22から出力された過去所定周期分の測距データが記憶されている。
【0037】
警戒領域情報は、例えば、警備会社などによる監視区域の警備プランニングに応じて、監視用センサ2にて監視すべき範囲として設定される警戒領域4を示す情報である。
この警戒領域情報は、監視用センサ2の設置時や監視区域の警備プランニング変更時などに、設定端末や図示しない入力部などから検知部22による走査面上の範囲を指定されて入力される。このとき、警戒領域4は、検知部22の走査範囲に存在する植栽や塀などの既設物を除外した範囲に設定される。そして、入力された警戒領域4の範囲は、検知部22で走査を行う所定の角度間隔(例えば0.25°)ごとに、検知部22からの角度(方向)と距離値が対応付けられて角度(方向)と距離のテーブルとして記憶部23に記憶される。本実施形態では、図1に示すように、監視用センサ2を中心とした略半円状に警戒領域4が設定される例について説明する。
なお、警戒領域情報は、これに限らず警戒領域4の範囲を示す情報と監視用センサ2との位置関係が識別可能に記憶されていればよく、例えば、監視用センサ2を原点として相対的な位置関係を示す二次元座標にて設定され記憶していてもよい。
【0038】
また、警戒領域情報には、更に、設定された警戒領域4内における周辺領域4aと内部領域4bの範囲を示す情報が記憶される。周辺領域4aは、警戒領域4の外縁から内側にかけて所定幅(例えば1m)の帯状領域として設定され、内部領域4bは、警戒領域4における周辺領域4a以外の部分として設定される。周辺領域4aと内部領域4bは、警戒領域4の範囲が設定されたときに、上述した縁部の帯状領域として予め設定された規則に従って割り当てられてよく、また、警戒領域4の範囲指定と同様に設定端末や図示しない入力部などから警戒領域4上の範囲を任意に指定されて入力されてもよい。この周辺領域4aと内部領域4bの範囲を示す情報は、警戒領域4と対応付けられて、検知部22で走査を行う所定の角度間隔(例えば0.25°)ごとに、検知部22からの角度(方向)と距離のテーブルとして警戒領域情報に記憶される。
【0039】
物体位置情報は、後述する物体検出部241により警戒領域4内に侵入候補物体の存在が判定されたときに、現在の測距データにおける侵入候補物体の位置情報が、検出された測定点の角度と距離値の組として記憶される。物体位置情報は、毎周期判定される新たな物体の位置により更新され、現在警戒領域4で検出される侵入候補物体の位置情報が記憶される。すなわち、前周期に記憶した侵入候補物体の存在位置に現周期では物体が検出されなくなると記憶している当該物体の位置情報を消去して、また、現周期に存在が判定された侵入候補物体があれば当該物体の位置情報を記憶して、物体位置情報には常に最新の侵入候補物体の位置が記憶される。
【0040】
トラッキング情報は、後述する侵入判定部242により警戒領域4で検出された侵入物体を複数周期に渡り追跡するために用いられる情報である。トラッキング情報には、現在周期における警戒領域4内の物体の位置と大きさ及び侵入者と判定されたか否かと、当該物体が警戒領域4に始めて出現した位置と大きさ、現在までの各周期における位置と大きさが対応づけられて記憶されている。
【0041】
現状態情報には、制御部24による判定結果として現在の警戒領域4が正常であるか、それとも侵入者など警戒領域4に侵入してきた物体による侵入異常が発生しているかが記憶される。制御部24によりかかる異常発生と判定されると現状態情報に異常の状態が記憶され、また、異常が消失したと判定されると異常の状態が消去され、何らの異常も記憶されていなければ正常であることが記憶される。
【0042】
制御部24は、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータ及びその周辺回路で構成され、上述した各部を制御する。そのために、制御部24は、このマイクロコンピュータ及びマイクロコンピュータ上で実行されるコンピュータプログラムによって実現される機能モジュールとして、警戒領域4内の物体の存在位置を検出する物体検出部241と、判定部として侵入者の存在を判定する侵入判定部242と、を備えている。
【0043】
物体検出部241は、現在の測距データと記憶部23に記憶された警戒領域情報とを比較して、警戒領域4内に得られた測定点の方向(角度)と距離値から、警戒領域4内に現在存在する物体の位置を検出する。物体検出部241は、測距データから得られる走査角度ごとの距離値と警戒領域情報に記憶された角度ごとの距離値との差分を対応する角度ごとに算出して、警戒領域4の境界より内側となる測定点(警戒領域情報よりも近距離となった測定点)を候補点として抽出する。そして、候補点が抽出できれば隣接する走査角度において距離が近い候補点があるか調べ、距離の近い候補点同士を連続区間としてラベリングする。このとき、連続していない候補点(孤立点)はノイズとして除去してよく、また膨張収縮処理による統合やノイズ除去を行ってもよい。物体検出部241は、ラベリングした物体の大きさが不審人物や不審車両の一部と判定できる所定サイズ(例えば15cm)以上であれば当該物体を侵入候補物体として検出する。物体検出部241は、侵入候補物体を検出すると、当該侵入候補物体となるラベルごとに、ラベルに含まれる候補点を検出した角度と距離値の情報を記憶部23の物体位置情報に記憶する。
【0044】
侵入判定部242は、物体検出部241にて現在の測距データから侵入候補物体が検出されると、侵入候補物体の位置情報を過去周期の測距データと比較して侵入異常の発生有無を判定する。屋外環境では屋内と比較して鳥や風に漂う濃霧など飛来物などが存在し得るため、警戒領域4に新規な移動物体が出現しただけで即座に監視区域の保全が損なわれ得る侵入異常と判定することは誤判定を招きかねない。このため、本実施形態において、侵入判定部242は、警戒領域4に出現した侵入候補物体が検出されると、この物体の出現位置に基づき異なる判定基準を用いて複数周期に渡り当該物体を評価して、警戒領域4内に継続的に存在している侵入候補物体が侵入者(人物や車両など)であるか否かを判定する。
【0045】
図4は、監視用センサ2に設定された警戒領域4を模式的に平面図上に示したものであり、侵入判定部242による侵入者判定の概念を表している。侵入判定部242は、物体位置情報に記憶された現在周期の侵入候補物体について、トラッキング情報を参照して前回周期に検出された侵入候補物体(過去候補物体)にこの現在周期で検出した物体と対応する物体が存在するか否かを判定する。前回周期の検出結果との対応付けは、両周期で検出された物体間の距離と大きさなどにより行われる。即ち、両周期で検出された物体間の距離がしきい値以内で大きさの変動がしきい値以内である場合に、現在周期の侵入候補物体とトラッキング情報に記憶された前回周期の過去候補物体とが同一物体として対応付けされる。前回周期の過去候補物体のうち対応する物体(トラッキング対象)がある場合、現在周期で検出された侵入候補物体の位置と大きさ及び現在周期を特定する時刻情報が、トラッキング対象と対応付けられてトラッキング情報に記憶される。一方、前回周期の検出結果に対応する物体(トラッキング対象)がなければ、現在周期で検出された侵入候補物体の位置と大きさ及び現在周期を特定する時刻情報を、警戒領域4に出現した新規な物体としてトラッキング情報に記憶する。
【0046】
そして、侵入判定部242は、現在周期で検出された侵入候補物体ごとに、トラッキング情報及び警戒領域情報を参照して警戒領域4に初めて出現した位置が周辺領域4aであるか内部領域4bであるかを判別する。これは、例えば、侵入候補物体となるラベルの重心点が警戒領域情報に記憶された何れの領域に存在するかを判定することにより実現されてよく、また、ラベルに含まれる候補点の過半数が何れの領域に存在するかを判定することにより実現されてもよい。
【0047】
また、侵入判定部242は、トラッキング情報を参照して、注目する侵入候補物体が警戒領域4に初めて出現した位置から現在位置までの移動距離と、警戒領域4に初めて出現してから現在までの時間である侵入候補物体の滞留時間とを算出する。
【0048】
侵入候補物体が警戒領域4に初めて出現した位置が周辺領域4aである場合(図4中左側の例)、侵入判定部242は、現在位置までの移動距離が判定距離Th1(例えば2m)以上であれば、この侵入候補物体を侵入者と判定する。一方、侵入候補物体の出現位置が内部領域4bであれば(図4中右側の例)、侵入判定部242は、現在位置までの移動距離がTh1より長い判定距離Th2(例えば5m)以上である場合にこの侵入候補物体を侵入者と判定する。
これは、周辺領域4aからの移動を伴わずに直接内部領域4bにて存在が検知される物体は、鳥や濃霧など空中を移動する誤報要因である可能性が高いという知見に基づいている。警戒領域4を縁部分(周辺領域4a)とその内側(内部領域4b)とに区分した場合、地面を歩いて警戒領域4に侵入する際には必ず周辺領域4aを通過することとなるが、鳥や濃霧など空中に存在する物体は、空中から警戒領域4に入り込むため、周辺領域4aを通過することなく上空から内部領域4bに入り込む場合がある。そこで、本実施形態において、侵入判定部242は、このような周辺領域4aからの移動を伴わず直接内部領域4bに出現した侵入候補物体については、通常より長距離の移動を観察する厳格な判定基準を用いて侵入者か否かを判定することにより、鳥や濃霧など空中を移動する物体を誤って侵入者として判定することを防止している。
【0049】
また、侵入判定部242は、侵入候補物体の移動距離が判定距離Th1またはTh2に満たない場合であっても、侵入候補物体の警戒領域4内での滞留時間(初めて出現してから現在までの時間)が侵入判定時間(例えば30秒)以上であれば、この侵入候補物体を侵入者と判定する。これは、警戒領域4内で検知された侵入候補物体が侵入者である場合、警戒領域4内を常に移動するとは限らず、中途位置にて立ち止まり破壊行為など何らかの作業を行う可能性があるという知見に基づいている。一方で、鳥や濃霧などの空中から警戒領域4に入り込む物体は、飛行または風に漂い警戒領域4内に留まることなく領域外へと脱する。
そこで、本実施形態において、侵入判定部242は、このような警戒領域4から脱することなく領域内に一定の時間留まっている物体を侵入者として判定することにより、鳥や濃霧などを誤って侵入者として判定することを防止しつつ、何らかの不正な手段を用いて周辺領域4aを通過することなく直接内部領域4bへと侵入したような侵入者であっても検出漏れを防止して確実に侵入者を検出できるようにしている。
【0050】
侵入判定部242は、このように侵入候補物体の出現位置に基づく移動距離または滞留時間により、警戒領域4内に侵入者が存在するか否かを判定し、侵入者が存在する場合に侵入異常の発生を判定する。侵入判定部242により侵入異常の発生が判定されると記憶部23の現状態情報に侵入異常が記憶され、侵入異常が発生していないことが判定されると現状態情報から当該異常の情報が削除される。
【0051】
<警備装置>
次に、図3を用いて警備装置5の構成について説明する。図3は、警備装置5の構成を示すブロック図である。警備装置5は、監視建物3内に設置されて監視区域を警戒監視し、異常の所在を遠隔の監視センタ6へと通報する。
【0052】
警備装置5は、監視用センサ2及びその他の警備センサ(不図示)と接続されるセンサI/F(インターフェース)51と、通信網7を介して遠隔の監視センタ6と接続される通信部52と、監視区域の利用者により操作される操作部53と、HDDやメモリなどで構成される記憶部54と、MPUやマイコンなどで構成され各部の制御を行う制御部55とを有して概略構成される。制御部55は、機能モジュールとして、監視区域の警備モードを設定/変更するモード設定部551と、監視区域に異常が発生したことを確定する異常処理部552とを備えている。また、記憶部54には、警備モード情報や現状態情報などの管理情報や、各種の処理プログラムやパラメータや警備装置5の識別情報などが記憶されている。
【0053】
モード設定部551は、利用者が警備モードを設定する際に操作部53から入力する情報を照合し、照合OKと判定できれば、操作部53の入力に基づいて警備モードを警備セットモードまたは警備解除モードに設定する。モード設定部551にて設定された警備モードは、記憶部54の警備モード情報に記憶される。ここで、警備セットモードは、夜間や休日など、監視建物3を含む監視区域が無人となるときに設定され、各種センサが事象の変化を検知したときに通信部52を介して遠隔の監視センタ6に異常通報を行うモードである。また、警備解除モードは、監視区域が有人のときに設定され、各種センサの検知による異常通報を行わないモードである。
【0054】
異常処理部552は、記憶部54に記憶された現在の警備モードが警備セットモードであるときに各種センサから検知信号の入力を受けると、監視区域に異常が発生したと確定し、現状態情報に各種センサから入力された検知信号に対応する異常種別と検知したセンサの情報を記憶する。また、異常処理部552は、異常の発生を確定すると、異常種別と検知したセンサ及び警備装置5の識別情報を含む異常信号を、遠隔の監視センタ6に通信部52を介して送信する。
【0055】
<動作の説明>
以上のように構成された警備システム1について、図面を参照してその動作を説明する。ここでは、主として監視用センサ2に関する動作について説明する。図5は、監視用センサ2にて繰り返し実行される監視プログラムの動作を示すフローチャートである。
【0056】
制御部24は、検知部22により警戒領域の1回の走査が終わる度にかかる監視プログラムを実行する。制御部24は、検知部22から測距データを受け取り記憶部23に記憶する(ステップST1)。そして、物体検出部241が、物体位置検出処理を実行し(ステップST2)、現在周期に取得された測距データから警戒領域4内の被検知物体(侵入候補物体)の位置情報を検出し、物体位置情報に記憶する。ステップST3では、侵入判定部242により物体検出部241にて検出された侵入候補物体の位置情報と警戒領域情報及びトラッキング情報を比較して侵入判定処理が行われる。そして、侵入判定処理の結果として、記憶部23の現状態情報に未だ警備装置5に出力していない異常情報が記憶されていれば(ステップST4−Yes)、通信部21よりかかる異常の情報と自己のアドレス情報を示す検知信号が警備装置5に送信される(ステップST5)。警備装置5に異常情報を出力したか否かは判定された異常ごとにフラグ管理され識別されてよい。
【0057】
以上に、監視用センサ2の基本的な動作について説明した。
次に、図5のステップST2における物体位置検出処理について図6を参照して説明する。図6は物体位置検出処理のフローチャートである。図6において、物体検出部241は、現在周期にて取得された測距データと警戒領域情報を読み出し(ステップST21)、測距データと警戒領域情報とを比較して各角度成分(方向)ごとに、現在の測距データで検出された距離値と警戒領域情報に記憶された警戒領域の範囲を示す距離値との差分計算を行い、警戒領域4内に存在する測定点を抽出し、これを候補点として検出する(ステップST22)。
【0058】
物体検出部241は、候補点が存在するか否か判定し(ステップST23)、候補点が存在しなければ、警戒領域4内に物体が存在しないと判定し、物体位置検出処理を終了する。このとき、物体検出部241は、物体位置情報に記憶されている前周期に記憶した侵入候補物体の位置情報を消去する。
【0059】
他方、候補点が存在する場合(ステップST23−Yes)、物体検出部241は、走査角度が隣接する候補点について、距離値の差が所定値(例えば10cm)以内または両点間の直線距離が所定値(例えば10cm)以内であれば、その隣接する候補点を一つのグループにまとめるようラベリング処理を行う(ステップST24)。そして、ラベリングしたグループごとに大きさを求め侵入者(人や車両など)の一部と判定できる所定サイズ(例えば15cm)以上となるグループ(ラベル)を現在周期の侵入候補物体としてその位置情報(角度と距離値)と現在周期を特定する時刻情報を記憶部23の物体位置情報に記憶する(ステップST25)。
【0060】
次に、図5のステップST3における侵入判定処理について図7を参照して説明する。図7は物体位置検出処理のフローチャートである。図7において、侵入判定部242は、物体位置情報と警戒領域情報及びトラッキング情報を読出し(ステップST41)、物体位置情報に現在周期の侵入候補物体が存在するか否かを判定する(ステップST42)。物体位置情報に侵入候補物体が存在しなければ、警戒領域4内に侵入者が存在しないと判定し、侵入異常が無いことを制御部24に通知して侵入判定処理を終了する。
【0061】
他方、物体位置情報に現在周期の侵入候補物体が記憶されていれば(ステップST42−Yes)、物体位置情報に記憶された侵入候補物体のうち、着目する侵入候補物体を決定する(ステップST43)。そして、侵入判定部242は、着目する侵入候補物体と、トラッキング情報に記憶されている1回から数回前の測距データについて求められた過去の侵入候補物体である過去候補物体との間でトラッキング処理を行って、着目する侵入候補物体と同一の物体に相当する過去候補物体(トラッキング対象)が存在するか否か判定する(ステップST44)。なお、トラッキング処理として、公知の様々なトラッキング技術の何れかを採用できる。例えば、侵入判定部242は、着目する侵入候補物体の位置に最も近い過去候補物体の位置を求め、これらの位置の差が、検出しようとする侵入者の移動速度とこれら二つの物体の取得時刻の差との積として定められる移動可能距離以下であればこの過去候補物体がトラッキング対象となり、着目する侵入候補物体とこの過去候補物体は同一の物体に対応すると判定する。
【0062】
ステップST44において、着目する侵入候補物体と同一の物体として対応する過去候補物体が存在しない場合(ステップST44−No)、侵入判定部242は、着目する侵入候補物体に対して、警戒領域4に出現した新規な物体として何れの過去候補物体に割り当てられた物体識別番号とも異なる新規な物体識別番号を関連付け、この侵入候補物体の位置と大きさ及び現在周期を特定する時刻情報をトラッキング情報に記憶する(ステップST45)。そして、侵入判定部242は、警戒領域情報を参照して、この着目する侵入候補物体の存在位置が、周辺領域4aと内部領域4bの何れであるかを判別し(ステップST46)、この侵入候補物体の出現位置の情報としてトラッキング情報に記憶する(ステップST47)。なお、侵入候補物体の存在位置が何れの領域であるかを判定する処理としては、侵入候補物体となるラベルの重心点が警戒領域情報に記憶された何れの領域に存在するかを判定することにより実現されてよく、また、ラベルに含まれる候補点の過半数が何れの領域に存在するかを判定することにより実現されてもよい。
【0063】
他方、ステップST44において、トラッキング処理の結果、着目する侵入候補物体と同一の物体に相当する過去候補物体が存在する場合(ステップST44−Yes)、侵入判定部242は、着目する侵入候補物体に対して、対応する過去候補物体に割り当てられている物体識別番号と同一の物体識別番号を関連付け、この侵入候補物体の位置と大きさ及び現在周期を特定する時刻情報をトラッキング情報に記憶する(ステップST48)。そして、侵入判定部242は、着目する侵入候補物体について、同一の物体識別番号が割り当てられた最も古い侵入候補物体の存在位置である当該物体の出現位置をトラッキング情報から読み出して(ステップST49)、着目する侵入候補物体の位置(現在周期の位置)と最も古い侵入候補物体の位置(出現位置)間の距離を当該侵入候補物体の移動距離として算出する。また、侵入判定部242は、現在周期を特定する時刻情報と当該最も古い侵入候補物体を検出した時刻情報との差分から当該侵入候補物体の警戒領域4内での滞留時間を算出する(ステップST50)。なお、移動距離は、警戒領域4内に出現した位置から現在位置までの直線距離より算出してよい。また、滞留時間は、時刻差から算出する例に限らず、新規に出現してからの周期数と検知部22の測定周期(例えば30msec)より算出してもよい。
【0064】
ステップST51において、侵入判定部242は、ステップST49で読み出した着目する侵入候補物体の出現位置(対応する最も古い侵入候補物体の存在位置)が、周辺領域4a又は内部領域4bの何れであるかを判定する。出現位置が周辺領域4aであれば(ステップST51−Yes)、着目する侵入候補物体の移動距離が判定距離Th1(例えば2m)以上であるか判定する(ステップST52)。移動距離が判定距離Th1以上であれば(ステップST52−Yes)、着目する侵入候補物体を侵入者と判定し、侵入者による侵入異常が発生したと判定して記憶部23の現状態情報に侵入異常を記憶する(ステップST53)。この結果、図5のステップST5において警備装置5に検知信号が出力され、警備装置5にて異常が確定されると遠隔の監視センタ6に異常通報がなされる。また、このとき、着目する侵入候補物体が侵入者であることがトラッキング情報に記憶される。
【0065】
他方、着目する侵入候補物体の移動距離が判定距離Th1以上でなければ(ステップST52−No)、侵入判定部242は、当該侵入候補物体の警戒領域4内での滞留時間が侵入判定時間(例えば30秒)以上であるか判定する(ステップST54)。滞留時間が侵入判定時間以上であれば(ステップST54−Yes)、着目する侵入候補物体を侵入者と判定してステップST53へと処理を進め、侵入異常が発生したと判定して記憶部23の現状態情報に侵入異常を記憶する。
【0066】
また、侵入判定部242は、ステップST51において、着目する侵入候補物体の出現位置が内部領域4bと判定された場合(ステップST51−No)、判定距離Th1より長い判定距離Th2を用いて、着目する侵入候補物体の移動距離が判定距離Th2(例えば5m)以上であるか判定する(ステップST55)。移動距離が判定距離Th2以上であれば(ステップST55−Yes)、着目する侵入候補物体を侵入者と判定してステップST53へと処理を進め、侵入異常が発生したと判定して記憶部23の現状態情報に侵入異常を記憶する。他方、ステップST55において、着目する侵入候補物体の移動距離が判定距離Th2以上でなければ(ステップST55−No)、ステップST54へと処理を進めて当該侵入候補物体の警戒領域4内での滞留時間が侵入判定時間(例えば30秒)以上であるか判定する。
【0067】
ステップST47又はST53の後、あるいはステップST54において滞留時間が侵入判定時間未満である場合(ステップST54−No)、侵入判定部242は、未着目の侵入候補物体が存在するか否か判定し(ステップST56)、未着目の侵入候補物体が存在する場合(ステップST56−Yes)、侵入判定部242はステップST43以降の処理を繰り返す。他方、全ての侵入候補物体が既に着目する侵入候補物体に設定されている場合(ステップST56−No)、侵入判定部242は侵入判定処理を終了する。このとき、着目した何れの侵入候補物体についても侵入異常と判定されていなければ、侵入異常が発生していないと判定して侵入異常が無いことを制御部24に通知する。
なお、ステップST48において、着目する侵入候補物体と同一の物体に相当する過去候補物体が既に侵入者と判定されていれば、この着目する侵入候補物体については侵入異常が継続しているとしてステップST49からST55までの処理をスキップし、次の未着目の侵入候補物体について処理を進めてよい。
【0068】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【0069】
例えば、本実施形態では、周辺領域を警戒領域の外縁から内側にかけて所定幅の帯状領域として設定する例について説明したが、これに限定されず、警戒領域の縁部である周辺領域は、警戒領域の外部から地面を移動して領域内に侵入する者が侵入すると予測される経路の外縁に設定されてよい。例えば、一辺が建物の壁面に接している矩形の警戒領域であれば当該一辺を除いた略コ字状の部分について外縁から内側にかけての帯状領域を周辺領域としてよく、この場合、周辺領域を除いた残りの警戒領域内が内部領域となる。また、周辺領域は、帯状領域に限定されず、設置環境や場所に応じて任意の幅に設定されてよい。
【符号の説明】
【0070】
1 警備システム
2 監視用センサ
20 報知部
21 通信部
22 検知部
221レーザ発振部
222走査鏡
223走査制御部
224反射光検出部
225測距データ生成部
23 記憶部
24 制御部
241物体検出部
242侵入判定部
3 監視建物
4 警戒領域
4a 周辺領域
4b 内部領域
5 警備装置
51 センサI/F
52 通信部
53 操作部
54 記憶部
55 制御部
551モード設定部
552異常処理部
6 監視センタ
7 通信網




【特許請求の範囲】
【請求項1】
警戒領域内を監視して該警戒領域内への侵入者を検出する監視用センサであって、
周期的に前記警戒領域内を探査信号で走査して該警戒領域における各方位ごとに探査信号を反射した物体までの距離値を示す測距データを生成する検知部と、
前記警戒領域の縁部に設定される周辺領域と前記周辺領域の内側に設定される内部領域とを記憶する記憶部と、
前記測距データから前記警戒領域内における物体の存在位置を検出する物体検出部と、
前記物体検出部が検出した物体が警戒領域内に存在する滞留時間または警戒領域内での移動距離に基づき当該物体を侵入者と判定する判定部と、
を備え、
前記判定部は、前記周辺領域からの移動を伴わずに前記内部領域にて検知された物体を侵入者と判定する判定基準を、前記周辺領域にて検知された物体を侵入者と判定する判定基準より厳格な判定基準とすることを特徴とした監視用センサ。

【請求項2】
前記判定部は、前記周辺領域にて検知された物体については第一の所定距離移動すると当該物体を侵入者と判定し、前記周辺領域からの移動を伴わずに前記内部領域にて検知された物体については前記第一の所定距離より長い第二の所定距離移動すると当該物体を侵入者と判定する請求項1に記載の監視用センサ。

【請求項3】
前記判定部は、前記周辺領域にて検知された物体および前記周辺領域からの移動を伴わずに前記内部領域にて検知された物体の何れについても、前記警戒領域内において所定の滞留時間に渡り存在が検知されていると当該物体を侵入者と判定する請求項1または2に記載の監視用センサ。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−73856(P2012−73856A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218654(P2010−218654)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【特許番号】特許第4907732号(P4907732)
【特許公報発行日】平成24年4月4日(2012.4.4)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】