監視装置及び監視方法
【課題】液体の患者への投与時において、フリーフローが発生した場合に、早期に、かつ、確実に検出できるようにする。
【解決手段】監視装置1は、点滴筒102よりも上流側の導管104ないし容器に取り付けられる上流側電極10と、点滴筒102よりも下流側の導管105ないし点滴筒102における液滴が生成される液滴生成部118よりも下流側に取り付けられる下流側電極9と、上流側電極10に電圧を印加し、下流側電極9の電圧の変化を検出するマイクロコンピュータとを備えている。マイクロコンピュータは、検出した電圧の変化に基づいて、フリーフローが発生したか否かを得るように構成されている。
【解決手段】監視装置1は、点滴筒102よりも上流側の導管104ないし容器に取り付けられる上流側電極10と、点滴筒102よりも下流側の導管105ないし点滴筒102における液滴が生成される液滴生成部118よりも下流側に取り付けられる下流側電極9と、上流側電極10に電圧を印加し、下流側電極9の電圧の変化を検出するマイクロコンピュータとを備えている。マイクロコンピュータは、検出した電圧の変化に基づいて、フリーフローが発生したか否かを得るように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば医療現場における輸液治療等を監視するための監視装置及び監視方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療現場や介護現場においては、輸液、輸血、経腸栄養剤の投与等が行われている。これら液体を患者に投与する際には、例えば、輸液セット及び輸液ポンプが使用されることがある(例えば、特許文献1参照)。輸液セットは、液体を収容する容器から延びる導管と、導管の途中に設けられた点滴筒と、導管の先端に設けられた穿刺針とを備えている。また、輸液ポンプは、導管をしごくことによって容器内の液体を送るように構成されている。
【0003】
上記のようにして液体を患者に投与する場合に、万一、導管が輸液ポンプから外れた事態を想定すると、容器内の液体が重力によって急速に自然落下し、点滴筒内において連続的に薬液が流れ、患者に規定以上の速度あるいは量の液体が投与されてしまう、いわゆるフリーフローが発生する懸念がある。このフリーフローが発生した場合に被害を最小限に食い止めるための機構が特許文献1の輸液ポンプには組み込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−222485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、フリーフローによる被害を最小限に食い止めるためには、フリーフローが発生したことを早期に、かつ、確実に検出することが重要である。
【0006】
そこで、例えば、赤外線センサを用いた監視装置を用いて点滴筒内の液体の流れを監視することが考えられる。この場合、赤外線を発する発光部と、赤外線を受ける受光部とを点滴筒を挟むように配置して取り付け、発光部から発する赤外線を液滴に向けて照射することで、発光部と受光部との間を通る液滴を検出し、これに基づいて液体の投与状態を監視することが可能になる。
【0007】
しかし、赤外線センサを用いた場合には、次の理由から正確な検出が難しい場合がある。例えば、単位時間当たりに滴下する液滴の数が多い場合には、液体が連続して流れているものと誤検出してフリーフローが発生したと判断してしまうことがある。また、例えば赤外線の照射時からフリーフローが発生している場合には、赤外線が遮られた状態が継続することになり、この状態がフリーフローの状態であるか、それとも、液滴が全く滴下していない状態であるか判別できないことがある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、液体を患者へ投与する際に、容器内の液体が連続的に自然落下するフリーフローが発生した場合に、早期に、かつ、確実に検出できるようにして患者の安全性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、容器内の液体を、導管及び点滴筒を介して患者に投与する際に、該容器内の液体が連続的に自然落下するフリーフローの発生状況を監視するように構成された監視装置において、上記点滴筒よりも上流側の導管ないし容器に取り付けられる上流側フリーフロー検出電極と、上記点滴筒よりも下流側の導管ないし該点滴筒における液滴が生成される液滴生成部よりも下流側の液貯留部に取り付けられる下流側フリーフロー検出電極と、上記上流側フリーフロー検出電極及び上記下流側フリーフロー検出電極の一方の電極に電圧を印加し、他方の電極の電圧の変化を検出する検出部とを備え、上記検出部は、検出した電圧の変化に基づいて、フリーフローが発生したか否かを得るように構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
すなわち、フリーフローが発生すると、薬液が上流側の導管から点滴筒に連続的に落ちるので、上流側フリーフロー検出電極と下流側フリーフロー検出電極とは薬液を介して電気的に接続された状態となり、電気回路が閉じられた形で構成される。
【0011】
一方、フリーフローが発生していない場合には、点滴筒には、上流側の導管から液滴が所定の時間間隔をあけて滴下する。このため、上流側フリーフロー検出電極と下流側フリーフロー検出電極とは接続された状態とはならない。
【0012】
従って、フリーフローが発生していない状態からフリーフローが発生した状態になると、上流側フリーフロー検出電極及び下流側フリーフロー検出電極のうち、電圧を印加していない方の電極(他方の電極)の電圧が変化することになる。この電圧の変化を検出部で検出することでフリーフローが発生しているか否かを確実に検出することが可能になる。また、フリーフローが発生した途端に電気回路が閉じられて電圧がすぐに変化するので、電圧の変化に基づいた素早い検出が可能になる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、下流側フリーフロー検出電極は、点滴筒よりも下流側の導管に取り付けられることを特徴とするものである。
【0014】
すなわち、患者に液体を投与する間は、液切れ等が起こらない限り、点滴筒よりも下流側の導管には必ず液体が存在することになる。一方、点滴筒の液貯留部の液体の量は変化することがあり、場合によっては下流側フリーフロー検出電極の取り付け位置が点滴筒の液貯留部から外れた位置になり、電気回路が構成されないことが考えられる。
【0015】
本発明では、液体の投与中に必ず液体が存在している下流側の導管に下流側フリーフロー検出電極を取り付けることで、フリーフローの発生を確実に検出することが可能になる。
【0016】
第3の発明は、第1または2の発明において、点滴筒における液滴生成部に取り付けられる下流側液滴生成状態検出電極と、点滴筒よりも上流側の導管ないし容器に取り付けられる上流側液滴生成状態検出電極とを備え、検出部は、上記上流側液滴生成状態検出電極に電圧を印加することで上記液滴生成部で生成される液滴を仮想電極とし、上記下流側液滴生成状態検出電極の電圧の変化を検出し、検出した電圧の変化に基づいて、液滴の生成状態及び/又は液切れであるか否かを得るように構成されていることを特徴とするものである。
【0017】
すなわち、点滴筒の液滴生成部で生成される液滴は徐々に大きくなって所定の大きさになった瞬間落下する。この液滴を仮想電極としているので、少なくとも仮想電極と下流側液滴生成状態検出電極とのキャパシタンスが液滴の大きさ及びその有無によって異なる。これが下流側液滴生成状態検出電極の電圧の変化として検出部で検出されることになる。
【0018】
従って、液滴が生成され続けていれば、略一定の周期で少なくともインピーダンスが変化して検出電圧が変化するので、液体の投与が継続されていることになる。しかも、インピーダンスの変化状態、即ち、電圧の変化状態によって液滴の生成速度である液体の流量も得られる。また、液滴が生成されていなければ、インピーダンスが周期的に変化せず、よって電圧が周期的に変化しないので、液体が投与されていないことになる。
【0019】
また、上流側液滴生成状態検出電極は点滴筒よりも上流に位置しているので、点滴筒よりも上流の液体の有無によって下流側液滴生成状態検出電極と上流側液滴生成状態検出電極間の抵抗が変化する。これが下流側液滴生成状態検出電極の電圧の変化として検出部により検出される。これにより、点滴筒よりも上流の液体が無くなると電圧が急に変化するので、液切れであることが得られる一方、導管の閉塞等による中断の場合には導管内に液体が存在しているので電圧の急な変化はない。これにより、液切れと、導管の閉塞等による中断との区別が可能になる。
【0020】
第4の発明は、第3の発明において、上流側液滴生成状態検出電極と上流側フリーフロー検出電極とは共通の電極で構成されていることを特徴とするものである。
【0021】
この構成によれば、部品点数が削減される。
【0022】
第5の発明は、第1から4のいずれか1つの発明において、検出部は、上流側フリーフロー検出電極に電圧を印加することを特徴とするものである。
【0023】
すなわち、例えば下流側フリーフロー検出電極に電圧を印加すると、電流が微弱ながら患者側に常時流れることになるが、本発明のように上流側フリーフロー検出電極に電圧を印加することで、フリーフローが起こっていない正常時に患者側へ電流が流れることはなくなる。
【0024】
また、第4の発明のように、上流側液滴生成状態検出電極と上流側フリーフロー検出電極とを共通にする場合には、上流側フリーフロー検出電極に電圧を印加することで仮想電極が確実に生成されるようになる。
【0025】
第6の発明は、容器内の液体を、導管及び点滴筒を介して患者に投与する際に、該容器内の液体が連続的に自然落下するフリーフローの発生状況を監視する監視方法において、上記点滴筒よりも上流側の導管ないし容器に取り付けられる上流側フリーフロー検出電極と、上記点滴筒よりも下流側の導管ないし該点滴筒における液滴が生成される液滴生成部よりも下流側の液貯留部に取り付けられる下流側フリーフロー検出電極との一方の電極に電圧を印加し、他方の電極の電圧の変化に基づいて、フリーフローが発生したか否かを得ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0026】
第1発明によれば、点滴筒よりも上流側の導管ないし容器に取り付けられる上流側フリーフロー検出電極と、点滴筒よりも下流側の導管ないし該点滴筒における液貯留部に取り付けられる下流側フリーフロー検出電極との一方の電極に電圧を印加し、他方の電極の電圧の変化に基づいてフリーフローが発生したか否かを得るようにしたので、フリーフローの発生を早期に、かつ、確実に検出でき、患者の安全性を高めることができる。
【0027】
第2の発明によれば、液体の投与中に必ず液体が存在している下流側の導管に下流側フリーフロー検出電極を取り付けることで、点滴筒の液貯留部に取り付ける場合に比べて、フリーフローの発生をより一層確実に検出することができる。
【0028】
第3の発明によれば、下流側液滴生成状態検出電極及び上流側液滴生成状態検出電極を設け、下流側液滴生成状態検出電極の電圧の変化に基づいて液滴の生成状態及び液切れであるか否かを得るようにしたので、フリーフローのみならず、液切れ、導管の閉塞等による投与の中断、及び液体の流量が正常範囲にあるか否かを常に的確に得ることができ、患者の安全性をより一層高めることができる。
【0029】
第4の発明によれば、上流側液滴生成状態検出電極と上流側フリーフロー検出電極とを共通の電極で構成したので、部品点数を削減でき、低コスト化を図ることができる。
【0030】
第5の発明によれば、上流側フリーフロー検出電極に電圧を印加するので、正常時に電流が患者に流れるのを防止できる。また、第4の発明のように、上流側液滴生成状態検出電極と上流側フリーフロー検出電極とを共通にする場合に仮想電極を確実に生成でき、液滴の生成状態及び/又は液切れであるか否かを確実に得ることができる。
【0031】
第6の発明によれば、第1の発明と同様に、フリーフローの発生を早期に、かつ、確実に検出でき、患者の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態1にかかる監視装置の使用状態を説明する図である。
【図2】点滴筒の拡大図である。
【図3】図2におけるIII−III線断面図である。
【図4】監視装置の本体部のブロック図である。
【図5】液滴が生成された状態における等価回路を示した点滴筒の断面図である。
【図6】液滴が生成された状態における等価回路である。
【図7】フリーフローが発生した状態における等価回路を示した図5相当図である。
【図8】フリーフローが発生した状態における等価回路である。
【図9】フリーフロー発生時における出力電圧の変化を示す図である。
【図10】液滴生成時における出力電圧の変化を示す図である。
【図11】液滴が生成されている状態から薬液が切れた状態になった場合の電圧の変化を示す図である。
【図12】監視装置のブロック図である。
【図13】液滴の生成過程を示す図である。
【図14】液滴の成長曲線を示す図である。
【図15】印加電圧の周波数と出力電圧との関係を示す図である。
【図16】終端抵抗値と出力電圧との関係を示す図である。
【図17】薬剤が生理食塩水の場合の出力電圧の変化を示す図である。
【図18】薬剤がラクテックD注の場合の出力電圧の変化を示す図である。
【図19】薬剤がKN1号輸液の場合の出力電圧の変化を示す図である。
【図20】薬剤が大塚糖液5%の場合の出力電圧の変化を示す図である。
【図21】薬剤が大塚糖液10%の場合の出力電圧の変化を示す図である。
【図22】薬剤がアミゼットB輸液の場合の出力電圧の変化を示す図である。
【図23】薬剤がキドミンの場合の出力電圧の変化を示す図である。
【図24】薬剤がアミノフリードの場合の出力電圧の変化を示す図である。
【図25】薬剤がツインパルの場合の出力電圧の変化を示す図である。
【図26】薬剤がネオパレン2号の場合の出力電圧の変化を示す図である。
【図27】薬剤がイントラリポス20%の場合の出力電圧の変化を示す図である。
【図28】実際の液滴の生成状況と出力電圧の変化とを同時に記録した結果を示す図である。
【図29】点滴筒電極の大きさを変更した場合の出力電圧の変化を示す図である。
【図30】点滴筒電極の横方向の寸法を周長の1/4にした場合の図2相当図である。
【図31】実施形態2にかかる監視装置の使用状態を示す正面図である。
【図32】実施形態2にかかる監視装置の使用状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0034】
図1は、本発明の実施形態にかかる監視装置1の使用状態を示すものである。監視装置1は、薬液(液体)を患者に投与する、いわゆる輸液治療の際に、薬液の投与状況を監視するためのものであり、輸液セット100及び輸液バッグ120(容器)と共に使用される。投与状況とは、例えば、フリーフローが発生したか否か、薬液の流量が適正範囲か否か、液切れが起こっていないか等である。
【0035】
尚、薬液の種類としては、例えば、生理食塩水や、ブドウ糖液等が挙げられる。
【0036】
本実施形態では、監視装置1の構造を説明する前に、輸液セット100及び輸液バッグ120の構造について説明する。
【0037】
輸液セット100は、びん針101と、点滴筒102と、穿刺針103と、びん針101から点滴筒102まで延びる上流側導管104と、点滴筒102から穿刺針103まで延びる下流側導管105と、クランプ106とを備えている。
【0038】
びん針101は輸液バッグ120に差し込まれるものである。
【0039】
点滴筒102は、例えばポリプロピレン等の透明な樹脂材で構成された有底の筒体110と、筒体110の上端開口を閉塞する蓋部材111とを備えている。筒体110は、略円筒形状とされている。筒体110の底部は、下方へ膨出するように形成されている。図2に示すように、底部の中心部には、流出管部112が下方へ突出するように形成されている。
【0040】
蓋部材111は、筒体110の上端開口を覆うように円板状に形成された円板部113と、円板部113の周縁部から下方へ突出して周方向に延びる周壁部114とを備えている。周壁部114の内周面は、筒体110の上部外周面に接着されている。円板部113の中心部には、上流側導管104の下流端が接続される接続管部115が形成されている。接続管部115には、上流側導管104が固定されている。薬液は上流側導管104の下端部104a(図5に示す)の開口から筒体110内に滴下するようになっている。蓋部材111及び筒体110の上部により、液滴を生成する液滴生成部118が構成されている。
【0041】
また、図5に示すように、薬液の投与時、点滴筒102の筒体110には、所定量の薬液が貯留される。筒体110の下側部分が液貯留部119である。
【0042】
上流側導管104及び下流側導管105は、柔軟な樹脂材で構成されている。また、図1に示すように、クランプ106は、下流側導管105の中途部に設けられている。このクランプ106によって下流側導管105を閉塞できるとともに、閉塞状態から徐々に開放して開度を調節することができるようになっている。
【0043】
また、輸液バッグ120は、透明かつ柔軟な樹脂材で構成されており、内部には、患者に投与する薬液が収容されている。尚、薬液は、輸液バッグ120でなく、例えば瓶(容器)に収容されていてもよい。
【0044】
また、輸液セット100は、図示しないが、周知の構造の輸液ポンプと共に使用される。このとき、輸液セット100の下流側導管105が輸液ポンプにセットされてしごきポンプ等によりしごかれて薬液が所定の流量で送られる。点滴筒102の液滴生成部118で生成される液滴の生成速度(薬液の流量に相当)は、下流側導管105の開度の調節により、変更することが可能になっている。
【0045】
フリーフローとは、輸液ポンプにセットされた下流側導管105が何らかの原因で輸液ポンプから外れてしまい、輸液バッグ120内の薬液が重力で急速に自然落下して患者に規定以上の速度あるいは量の薬液が投与されること、他に、下流側導管105が輸液ポンプにセットされていない場合であっても何らかの原因によって輸液バッグ120内の薬液が重力で急速に自然落下して患者に規定以上の速度あるいは量の薬液が投与されることである。フリーフローが発生すると、上流側導管104から点滴筒102に流入する薬液の流れが連続的になり、糸を引くようになる。
【0046】
次に、監視装置1の構造について説明する。監視装置1は、上流側導管104に取り付けられる上流側電極10と、点滴筒102の液滴生成部118に取り付けられる点滴筒電極11と、流出管部112に取り付けられる下流側電極9と、本体部12とを備えている。
【0047】
上流側電極10は、上流側導管104における点滴筒102近傍の部位を囲む環状に形成されており、本発明の上流側フリーフロー検出電極及び上流側液滴生成状態検出電極を構成している。
【0048】
点滴筒電極11は、上流側電極10と同様な導体からなり、図3に示すように、筒体110における液滴生成部118を構成する部分の外周面を囲む環状に形成されており、本発明の下流側液滴生成状態検出電極を構成している。点滴筒電極11の位置は、点滴筒102の接続管部115の下端部を取り囲むように設定されている。つまり、点滴筒電極11は、液滴生成部118で生成される液滴を取り囲むように位置している。
【0049】
また、下流側電極9は、流出管部112における点滴筒102近傍の部位を囲む環状に形成されており、下流側フリーフロー検出電極を構成している。
【0050】
上流側電極10、点滴筒電極11及び下流側電極9は導電性の材料であればよく、例えば銅などの金属製の薄板、フィルム或いは透明な導電性フィルム等で構成できる。特に好ましいのは透明な導電性フィルムであり、これを用いることで、点滴筒102の内部の視認性の悪化が回避される。
【0051】
本体部12には、図4に示すように、マイクロコンピュータ13と、液滴生成信号処理部14と、フリーフロー信号処理部15と、印加側LPF30とを備えている。
【0052】
フリーフロー信号処理部15は、インピーダンス変換器17、増幅器18、包絡線検波回路19、増幅器20、LPF21及び終端抵抗R1aを備えている。
【0053】
また、液滴生成信号処理部14も、フリーフロー信号処理部15と同様に、インピーダンス変換器23、増幅器24、包絡線検波回路25、増幅器26、LPF27及び終端抵抗R1bを備えている。
【0054】
マイクロコンピュータ13は、CPUやRAM等を備えた周知の汎用マイクロコンピュータである。マイクロコンピュータ13には、印加側LPF30が接続されている。印加側LPF30は、カットオフ周波数が例えば20kHzのものである。
【0055】
フリーフロー信号処理部15のインピーダンス変換器17は、下流側電極9から得られた信号を低インピーダンスに変換するためのものである。
【0056】
増幅器18は、増幅度が例えば40dbのものである。増幅器20は、増幅度が例えば36dbのものである。LPF21は、カットオフ周波数が例えば16Hzのものである。LPH21は、ノイズ成分を除去するためのものである。このようにして得られた信号は、マイクロコンピュータ13でA/D変換されて処理される。
【0057】
下流側電極9は、接続線9aにより終端抵抗R1aに接続され、この終端抵抗R1aを介してグラウンドされている。
【0058】
液滴生成信号処理部14のインピーダンス変換器23、増幅器24、包絡線検波回路25,増幅器26及びLPF27は、フリーフロー信号処理部15のインピーダンス変換器17、増幅器18、包絡線検波回路19,増幅器20及びLPF21と同様に構成されている。
【0059】
点滴筒流側電極11は、接続線11aにより終端抵抗R1bに接続され、この終端抵抗R1bを介してグラウンドされている。
【0060】
また、上流側電極10は、接続線10aにより印加側LPF30に接続されている。この実施形態では、周波数が30kHzの交流電圧を上流側電極10に印加するように構成されている。すなわち、マイクロコンピュータ13では30kHzの方形波を発振させる。そして、このマイクロコンピュータ13で発信した信号を印加側LPF30に入力する。印加側LPF30では、入力された方形波信号を正弦波信号に整形する。これにより、上流側電極10には、周波数が30kHzの正弦波の電圧が印加されることになる。
【0061】
上流側導管104及び点滴筒102の液滴生成部118にそれぞれ上流側電極10及び点滴筒電極11が取り付けられた状態で、電圧が印加されると、図5に示すように、液滴生成部118で生成される液滴が仮想電極Aとなる。
【0062】
これを等価回路図で示すと図6のようになる。すなわち、図5にも示すように、上流側導管104でコンデンサC1が構成され、上流側電極10よりも下流の薬液の抵抗が抵抗R2となる。また、液滴で構成された仮想電極Aと筒体110とでコンデンサC2が構成され、図3に示す筒体110の周壁部には厚みTがあるので、この周壁部でコンデンサC3が構成される。従って、上流側導管104、点滴筒102、上流側導管104内の薬液を電気回路の一部として利用することになる。
【0063】
コンデンサC1(上流側導管104)のキャパシタンス、抵抗(薬液)R2、コンデンサC2(仮想電極と筒体110)のキャパシタンス、コンデンサC3(筒体110の周壁部)のキャパシタンスの直列インピーダンスが変化すると、出力電圧が変化する。従って、直列インピーダンスの変化を出力電圧の変化という形で、マイクロコンピュータ13で検出することが可能となっている。
【0064】
また、上流側導管104及び下流側導管105にそれぞれ上流側電極10及び下流側電極9が取り付けられた状態で、電圧が印加されると、図5に示すように、薬液が液滴となって流れている場合には、上流側導管104及び下流側導管105の間には空気層があり、電気的な接続がない状態となる。
【0065】
一方、図7に示すように、フリーフローが発生して薬液が糸を引くように点滴筒102内を流れると、上流側導管104及び下流側導管105が薬液を介して電気的に接続される。
【0066】
これを等価回路図で示すと図8のようになる。すなわち、上流側導管104でコンデンサC1が構成され、上流側電極10よりも下流の薬液の抵抗が抵抗R3となる。また、流出管部112でコンデンサC4が構成される。従って、この場合、上流側導管104、フリーフロー中の薬液及び流出管部112を電気回路の一部として利用することになる。
【0067】
コンデンサC1(上流側導管104)のキャパシタンス、抵抗(薬液)R3、コンデンサC4(流出管部112)のキャパシタンスの直列インピーダンスが変化すると、出力電圧が変化する。従って、フリーフローが発生した場合も、直列インピーダンスの変化を出力電圧の変化という形で、マイクロコンピュータ13で検出することが可能となっている。
【0068】
マイクロコンピュータ13では、検出された信号に基づいて、フリーフローが発生したか否か、液滴の生成状態及び液切れであるか否かを得るように構成されている。マイクロコンピュータ13は本発明の検出部である。
【0069】
まず、フリーフローが発生した否かを得る場合について図9に基づいて説明する。尚、図9は、フリーフロー信号処理部15からの出力された電圧の波形を例示するものである。
【0070】
フリーフローが発生していないとき(正常時)には、上述のように上流側電極10と下流側電極9とが電気的に接続されていないので、出力電圧は略0ボルトとなる。図中の正常時にちょうど0ボルトとなっていない理由はノイズ等の原因による。
【0071】
一方、フリーフローが発生すると、上流側電極10と下流側電極9とが薬液を介して電気的に接続されるので電圧が高まる。マイクロコンピュータ13は、フリーフロー信号処理部15からの出力電圧が高まった場合に、フリーフローが発生したと判断し、それ以外のときには、フリーフローが発生していないと判断する。尚、コンデンサC1、C4のキャパシタンスの変化はない。
【0072】
次に、液滴の生成状態を得る場合について説明する。液滴は、図10の上部に示すように、液適生成部118で生成される過程で徐々に大きくなり、液滴と筒体110内周面との距離が短くなっていく。液滴は仮想電極Aであるため、図3に示すように、仮想電極Aと筒体110内周面との距離がX1からX2へと短くなる。すると、図5に示すコンデンサC2のキャパシタンスが変化し、直列インピーダンスが変化する。そして、出力電圧が変化する。尚、コンデンサC1,C3のキャパシタンスの変化はない。
【0073】
このことを図10に基づいて詳細に説明する。尚、図10は、液滴生成信号処理部14から出力された電圧の波形を例示するものである。
【0074】
液滴が生成されていない状態では、図中に液滴非生成領域として示すように、電圧が低い状態が継続する。そして、液滴が生成され始めると(液滴生成領域に入ると)、上記電気回路の電圧が徐々に高まっていく。つまり、液滴はある程度の時間をかけて滴下する大きさとなるまで成長していく。この液滴の大きさの変化が電圧の変化として検出される。その後、液滴が所定の大きさとなった瞬間に、滴下し、これが電圧の急低下として検出される。その後、再び、液滴が生成され始めるので、電圧が徐々に高まっていく。薬液が流れている間は、これが繰り返されるので、上記電気回路の出力電圧は周期的に変化することになる。マイクロコンピュータ13は、このことを検出している間は、輸液が継続して行われていると判断する。
【0075】
また、液滴生成信号処理部14からの出力電圧が周期的に変化している場合に、その変化速度または周期によって薬液の流量が得られる。すなわち、薬液の流量が多いと、液滴の生成速度が速くなり、その結果、出力電圧の変化速度が速くなり変化の周期は短くなる。一方、薬液の流量が少ないと、液滴の生成速度が遅くなり、その結果、出力電圧の変化速度が遅くなり変化の周期は長くなる。出力電圧の変化速度または周期から算出される流速が、一般的な流速よりも大幅に速い場合や、大幅に遅い場合には、マイクロコンピュータ13は、輸液の流速が正常範囲から外れていると判断する。
【0076】
また、点滴筒電極11が液滴を取り囲む環状をなしているので、例えば、輸液中に点滴筒102が傾いた場合のように、液滴が点滴筒102の径方向の中心部からずれたとしても、仮想電極Aと点滴筒電極11とのキャパシタンスが得られる。これにより、点滴筒102がどの方向に傾いたとしても、出力電圧の変化を的確に検出することが可能である。
【0077】
また、出力電圧が周期的に変化していた状態から変化しなくなった場合には、液滴生成部118で液滴が生成されていないということであり、薬液の流れが停止していると判断する。
【0078】
次に、液切れであるか否かを得る場合について図11に基づいて説明する。輸液バッグ120内の薬液が無くなって上流側導管104内が空になった場合には、図5及び図6における抵抗R2の抵抗値が急に変化することになる。抵抗R2の抵抗値の変化によって上記電気回路の直列インピーダンスが変化し、出力電圧が低下することになる。従って、出力電圧が周期的でなく、急に低下した場合には、マイクロコンピュータ13は輸液バッグ120の薬液が無くなったと判断する。
【0079】
また、上流側導管104や下流側導管105が閉塞した場合のように、輸液バッグ120内が空になっていないのに薬液が流れなくなった場合には、上流側導管104内に薬液が存在した状態で、液滴が液滴生成部118で生成されなくなる。すなわち、抵抗R2の抵抗値が急に変化することなく、しかも、コンデンサC2のキャパシタンスの周期的な変化がなくなる。マイクロコンピュータ13が、出力電圧によってこのことを検出した場合には、薬液が輸液バッグ120に残った状態で輸液が中断されたと判断する。
【0080】
輸液の中断の理由としては、上流側導管104や下流側導管105が折れ曲がることによって閉塞された場合や、上流側導管104や下流側導管105が押しつぶされて閉塞された場合があるが、いずれも異常状態である。
【0081】
図12に示すように、本体部12には、警報器30及び電動クランプ31が接続されている。警報器30は、例えば、ランプやブザー等である。電動クランプ31は、輸液セット100の下流側導管105にセットされるようになっている。
【0082】
マイクロコンピュータ13は、フリーフローが発生したと判断した場合、及び、輸液バッグ120の薬液が無くなったと判断した場合には、警報器30を作動させるとともに、電動クランプ31に対し閉鎖信号を出力する。
【0083】
これにより、フリーフローが発生したこと、及び、液切れであることを警報器30によって周囲の者に報知できるとともに、輸液を自動的に停止することが可能となる。
【0084】
また、マイクロコンピュータ13は、薬液の流量が正常範囲から外れたと判断した場合には、警報器30を作動させるとともに、電動クランプ31に閉鎖信号を出力して輸液を停止する。
【0085】
また、マイクロコンピュータ13は、薬液が輸液バッグ120に残った状態で輸液が中断されたと判断した場合には、警報器30を作動させる。
【0086】
以上説明したように、この実施形態1にかかる監視装置1によれば、フリーフローが発生すると、薬液が上流側導管104から点滴筒102に糸を引くように連続的に落ちるので、上流側電極10と下流側電極9とは薬液を介して接続された状態となり、電気回路が閉じられた形で構成される。
【0087】
一方、フリーフローが発生していない場合には、点滴筒102には、上流側導管104から液滴が所定の時間間隔をあけて滴下する。このため、上流側電極10と下流側電極9とは接続された状態とはならない。
【0088】
したがって、フリーフローが発生していない状態からフリーフローが発生した状態になると、下流側電極9の電圧が変化することになり、この電圧の変化を検出することで、フリーフローが発生しているか否かを確実に検出することができる。また、フリーフローが発生した途端に電気回路が閉じられて電圧がすぐに変化するので、電圧の変化に基づいて素早い検出ができる。これにより、フリーフローの発生を早期に、かつ、確実に検出でき、患者の安全性を高めることができる。
【0089】
また、薬液の投与中に必ず薬液が存在している下流側導管104に下流側電極9を取り付けることで、点滴筒102の液貯留部119に取り付ける場合に比べて、フリーフローの発生をより一層確実に検出することができる。
【0090】
また、点滴筒102の液滴生成部118の点滴筒電極11に電圧印加して液滴を仮想電極Aとし、点滴筒電極11の電圧変化を検出して液滴の生成状態及び液切れであるか否かを得るようにしたので、点滴筒電極11及び上流側電極10を取り付けるという、簡単な構成でもって、液切れ、導管104,105の閉塞等による投与の中断、及び薬液の流量が正常範囲にあるか否かを的確に得ることができる。
【0091】
また、フリーフローを検出するための電極と、液滴生成状態を検出するための電極とを共通の上流側電極119で構成したので、部品点数を削減でき、低コスト化を図ることができる。
【0092】
また、点滴筒電極11を、液滴生成部118で生成される液滴を取り囲む環状に形成したので、薬液の投与中に点滴筒102がどの方向に傾いた場合にも、電圧の変化を検出できる。
【0093】
また、フリーフローの発生の有無を検出するにあたって患者から離れた側の上流側電極10に電圧を印加するようにしたので、フリーフローが発生していない正常時には、患者側へ電流が流れることはない。また、液滴の生成状態を検出するにあたって上流側電極10に電圧を印加しているので、仮想電極Aを確実に生成して液滴の生成状態を確実に検出できる。
【実施例】
【0094】
以下、監視装置1の実施例について説明する。
【0095】
まず、点滴筒電極11の最適な大きさを決定するにあたり、液滴の生成状況を観察した。液滴の生成状況は、実際の点滴時と同様に薬液を流しながら、点滴筒102の外側から高速度カメラで撮影した。図13に示すように液滴は成長していく。輸液セット100は、複数種あり、本実施形態では、20滴/mlの輸液セット100と60滴/mlの輸液セット100との各々について、生理食塩水と糖液とで液滴の生成状況を観察した。その結果得られた液滴の成長曲線を図14に示す。
【0096】
20滴/mlの輸液セット100は、60滴/mlの輸液セット100に比べて上流側導管104の下端部104a(図13に示す)の開口が大きい。そのため、生成初期からある程度の大きさの直径の液滴ができる。そして、20滴/mlの輸液セット100では、鉛直方向の寸法が水平方向の寸法に比べて長い形状、いわゆる縦長形状となる。
【0097】
一方、60滴/mlの輸液セット100では、接続管部115の下端部115aの開口が小さいため、液滴は生成初期から小さな球状になっており、球が成長していく形となる。したがって、60滴/mlの輸液セット100では、水平方向及び鉛直方向の両方向に成長する。
【0098】
このように、20滴/mlの輸液セット100と、60滴/mlの輸液セット100とでは液滴の生成状況が異なるので、マイクロコンピュータ13によって両者の液滴の生成状況を判別することが可能である。これにより、使用中の輸液セット100が20滴/mlであるか、60滴/mlであるかを区別することが可能である。
【0099】
図10の上部に示すように、液滴は落下する直前に鉛直方向の寸法が急激に長くなる。これは、液滴の表面張力と重力の影響によって起こる。図14の(A)〜(D)に示すように、液滴の鉛直方向の寸法は、最長で8.8mmであった。この結果より、点滴筒電極11の縦方向(上下方向)の寸法は10mmとした。
【0100】
次に、点滴筒電極11に印加する電圧の周波数について図15に基づいて説明する。図15では、印加電圧の周波数と出力電圧との関係を示しており、(A)は薬液が生理食塩水である場合について、20滴/mlの輸液セット100を用いた際の液滴落下直後の電圧、60滴/mlの輸液セット100を用いた際の液滴落下直後の電圧、20滴/mlの輸液セット100を用いた際の液滴落下直前の電圧、60滴/mlの輸液セット100を用いた際の液滴落下直前の電圧の変化を示している。
【0101】
(B)は、薬液が糖液である場合について、20滴/mlの輸液セット100を用いた際の液滴落下直後の電圧、60滴/mlの輸液セット100を用いた際の液滴落下直後の電圧、20滴/mlの輸液セット100を用いた際の液滴落下直前の電圧、60滴/mlの輸液セット100を用いた際の液滴落下直前の電圧の変化を示している。糖液の濃度は10%である。
【0102】
生理食塩水の場合、及び糖液の場合の両方で出力電圧の急激な変化のない、安定した測定が可能な30kHzとした。
【0103】
尚、印加電圧の周波数は30kHzに限られるものではなく、1kHz以上2MHz以下の範囲で設定するのが好ましい。周波数が1kHzよりも低いと、インピーダンスが大きくなり過ぎて電圧の変化を検出するのが困難になり、一方、2MHzよりも高いと、消費電流が多くなるとともに、電磁波が出やすくなって周辺の他の機器への影響が懸念されるからである。
【0104】
次に、終端抵抗R1a、R1bの値について図16に基づいて説明する。図16では、終端抵抗R1a、R1bの抵抗値と出力電圧との関係を示しており、(A)は、図14の(A)と同様に、薬液が生理食塩水である場合について、4つのケースを示している。
【0105】
図16の(B)は、図14の(B)と同様に、薬液が糖液である場合について、4つのケースを示している。糖液の濃度は10%である。
【0106】
生理食塩水の場合、及び糖液の場合の両方で出力電圧の急激な変化のない、安定した測定が可能な100kΩとした。
【0107】
尚、終端抵抗R1の抵抗値は100kΩに限られるものではなく、例えば、50kΩ以上500kΩ以下の範囲で設定するのが好ましい。
【0108】
次に、上記のように構成された監視装置1を実際に使用した場合について、図17〜図27に基づいて説明する。
【0109】
図17は、薬液として生理食塩水を用いた場合であり、(A)は20滴/mlの輸液セット100を用いた場合の電圧変化を示し、(B)は60滴/mlの輸液セット100を用いた場合の電圧変化を示している。
【0110】
同図に示すように、電圧が徐々に上昇していく領域は、液滴が成長してインピーダンスが変化している領域であり、液滴生成領域である。そして、液滴が成長して滴下すると、インピーダンスが急に変化して電圧が一気に低下する。
【0111】
図18は、薬液がラクテックD注の場合であり、この場合も液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。
【0112】
図19は、KN1号輸液の場合であり、この場合も液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。
【0113】
図20は、大塚糖液5%場合であり、この場合も液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。
【0114】
図21は、大塚糖液10%の場合であり、この場合も液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。
【0115】
図22は、アミゼットB輸液の場合であり、この場合も液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。
【0116】
図23は、キドミンの場合であり、この場合も液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。
【0117】
図24は、アミノフリードの場合であり、この場合も液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。
【0118】
図25は、ツインパルの場合であり、この場合も液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。
【0119】
図26は、ネオパレン2号の場合であり、この場合も液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。
【0120】
図27は、イントラリポス20%の場合であり、この場合も液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。尚、イントラリポス20%の場合は、60滴/mlの輸液セット100を用いた場合のみ示しているが、20滴/mlの輸液セット100を用いた場合も同様に液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できると考えられる。
【0121】
以上のように、本監視装置1は、様々な薬剤に使用しても、液滴成長領域と滴下タイミングとを把握することができる。
【0122】
次に、監視装置1の動作検証を行った結果について図28に基づいて説明する。(A)は、薬液を生理食塩水とし、20滴/mlの輸液セット100を用いた場合を示し、上のグラフは、液滴を動画撮影して寸法を測定して得た成長曲線を示し、下のグラフは、出力電圧の変化を示す。これらグラフから明らかなように、液滴の成長曲線と、出力電圧の変化とは対応しており、液滴が大きくなるにつれて電圧が高まり、液滴が滴下すると電圧が急に低下する。つまり、液滴の成長と電圧の変化とは同期していることが分かる。図28(B)に示す場合も同様である。
【0123】
次に、点滴筒電極11の大きさの選定について説明する。上記実施例では、点滴筒電極11が筒体110を全周に亘って囲む環状である場合について説明しているが、点滴筒電極11の形状はこれに限られるものではない。
【0124】
図29(A)に示すように、点滴筒電極11の縦方向の寸法(上下方向の寸法)が10mmで横方向(水平方向)の寸法が5mmの場合であっても、液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。
【0125】
(B)に示すように、点滴筒電極11の縦方向の寸法が2mmで横方向の寸法が2mmの場合であっても、液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。
【0126】
(C)に示すように、点滴筒電極11の縦方向の寸法が10mmで横方向の寸法が筒体110の周長の1/4の場合であっても、液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。この点滴筒電極11について図30に示す。
【0127】
図29の(D)に示すように、点滴筒電極11の縦方向の寸法が10mmで横方向の寸法が筒体110の周長の1/4で、かつ、点滴筒電極11が上になるように点滴筒102を傾けた場合(図30に仮想線で示す)であっても、液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。
【0128】
他にも、図示しないが、点滴筒電極11の縦方向の寸法が20mm、30mmで横方向の寸法が筒体110の周長の1/2であっても、液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できた。点滴筒電極11の横方向の寸法は、筒体110の周長の5%以上であることが好ましい。
【0129】
点滴筒電極11の縦方向の寸法を短くしても液滴の落下は検出可能であるが、液滴の成長を検出することができなくなる。従って、点滴筒電極11の縦方向の寸法は、少なくとも液滴の落下直前の鉛直方向の寸法と同程度の寸法を確保するのが好ましい。
【0130】
また、点滴筒電極11の横寸法を短くするとノイズが減少する点で有効であるが、S/N比が悪化するので、少なくとも筒体110の周長の1/4程度を確保するのが好ましい。
【0131】
点滴筒102の材質としては、上述したポリプロピレン以外にも、ポリ塩化ビニル等があるがこれらいずれの材質であっても、上記のように液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。また、医療現場で使用されている点滴筒102の上下方向の寸法は、例えば、50mmや53mm等があり、外径は16mmや17mm等がある。これらいずれもの寸法の点滴筒102であっても、液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。
【0132】
また、点滴筒電極11は、点滴筒102の周方向に断続的に複数取り付けるようにしてもよい。上流側電極10についても同様である。
【0133】
また、点滴筒電極11を点滴筒102から取り外しできるようにしてもよい。また、上流側電極10を上流側導管104から取り外しできるようにしてもよい。
【0134】
また、点滴筒電極11の外面には、ノイズ侵入防止用の絶縁コーティングを施してもよい。
【0135】
また、本発明の監視装置1は、輸液ポンプに組み込むこともできる。すなわち、監視装置1により滴下速度を監視してポンプの流量をコントロールしたり、異常時にポンプを停止するなどの機能を実現できる。
【0136】
また、監視装置1に通信機器を接続し、異常を検出したときには、例えばナースステーションに設置してある看護師用端末に異常が起こった旨と、異常の種類を送信するように構成してもよい。また、輸液の状態を端末に常に送信し、端末側で輸液の状態をモニターできるようにすることも可能である。この場合、輸液の状態を記憶装置に記憶させておくのが好ましい。
【0137】
また、本監視装置1では、液滴の生成状態を電圧の変化として検出できるので、例えば、薬液の流量の変化を細かく得ることも可能である。これにより、例えば、薬液が血管に注入されずに皮下もれを起こした場合に、薬液の流量の変化によってそのことを検出できる。
【0138】
また、上流側電極10と点滴筒電極11との距離は近い方が好ましい。上流側電極10と点滴筒電極11とが離れると、図6における薬液の抵抗R2の値が大きくなり、コンデンサC2の変化を検出するのが困難になるからである。
【0139】
(実施形態2)
図31及び図32は、本発明の実施形態2にかかる監視装置1の使用状態を説明する図である。この実施形態2の監視装置1は、電極の構造が実施形態1のものとは異なるだけで他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分を詳細に説明する。
【0140】
実施形態2の上流側電極10は、上流側導管104を径方向に挟むように形成されており、上流側導管104に対し着脱可能となっている。また、点滴筒電極11は、点滴筒102を径方向に挟むように形成されており、点滴筒102に対し着脱可能となっている。さらに、下流側電極9は流出管部112を径方向に挟むように形成されており、流出管部112に対し着脱可能となっている。
【0141】
また、点滴筒102の筒体110には、点滴筒電極11が嵌る凹部110a,110aが形成されている。凹部110aに点滴筒電極11を嵌めることで、点滴筒電極11と仮想電極Aとを近づけることができるとともに、点滴筒電極11の位置ずれを防止することができる。
【0142】
また、図32に示すように、上流側電極10、点滴筒電極11及び下流側電極9は、本体部12に固定されている。従って、上流側電極10、点滴筒電極11及び下流側電極9は、本体部12を介した状態で一体化している。
【0143】
監視装置1を輸液セット100に取り付ける場合には、上流側電極10で上流側導管104を挟み、点滴筒電極11で点滴筒102の筒体110を挟み、さらに、下流側電極9で流出管部112を挟む。これにより、実施形態1と同様にフリーフローの発生を検出できるとともに、輸液の状況を得ることができる。そして、輸液が終了したら、上流側電極10を上流側導管104から外し、点滴筒電極11を筒体110から外し、さらに、下流側電極9を流出管部112から外す。
【0144】
以上説明したように、この実施形態2にかかる監視装置1によれば、実施形態1と同様な作用効果を奏することができる。
【0145】
また、上流側電極10、点滴筒電極11及び下流側電極9を着脱可能にしているので、上流側電極10、点滴筒電極11及び下流側電極9を再使用することができる。
【0146】
また、上流側電極10、点滴筒電極11及び下流側電極9を一体化して一度に着脱できるので、着脱時の作業性を良好にできる。
【0147】
また、上流側電極10と点滴筒電極11との距離、及び、上流側電極10と下流側電極9との距離をそれぞれ調整できるようにしてもよい。また、点滴筒電極11の二股部分の間隔を調整できるようにしてもよい。さらに、上流側電極10の二股部分の間隔を調整できるようにしてもよい。
【0148】
尚、上記実施形態では、上流側導管104に上流側電極10を取り付けるようにしているが、これに限らず、例えば、輸液バッグ120に上流側電極10を取り付けてもよい。
【0149】
また、上記実施形態では、輸液治療時に監視装置1を用いた場合について説明したが、これに限らず、例えば、輸血時や、経腸栄養剤の投与時などにも用いることができる。
【0150】
また、上記実施形態では、本体部12に警報器30及び電動クランプ31を接続しているが、これに限らず、いずれか一方のみ接続してもよい。
【0151】
また、監視装置1の点滴筒電極10が取り付けられる点滴筒102の構造は上記した構造に限られるものではなく、例えば、図示しないが、一体成形品の点滴筒に点滴筒電極10を取り付けるようにしてもよい。
【0152】
また、上流側電極10、点滴筒電極11及び下流側電極9と本体部12とをコネクタ等の接続手段によって着脱可能に接続して、輸液終了後に本体部12から上流側電極10、点滴筒電極11及び下流側電極9を外して本体部12のみ再使用できるようにしてもよい。
【0153】
また、上記実施形態1、2では、本発明の上流側フリーフロー検出電極及び上流側液滴生成状態検出電極を、共通の上流側電極10で構成しているが、これに限らず、例えば、上流側フリーフロー検出電極と、上流側液滴生成状態検出電極とを別に設けてもよい。
【0154】
また、下流側電極9は、下流側導管105に取り付けるようにしてもよいし、筒体110の液滴生成部18よりも下側部分の液貯留部119に取り付けるようにしてもよい。
【0155】
また、上記実施形態1、2では、点滴筒電極11を設けて液滴の生成状態を得るようにしているが、これに限らず、点滴筒電極11及び液滴生成信号処理部14を省略して、フリーフローの発生の有無のみを検出するように構成してもよい。フリーフローの有無のみを検出する場合、仮想電極Aの生成を考慮する必要がないので、下流側電極9に電圧を印加し、上流側電極10の電圧の変化を検出するようにすることも可能である。
【0156】
また、上記監視装置1によれば、液滴の生成状態に基づいて、どの程度の大きさの液滴が所定時間内に何回滴下しているかが分かるので、これを利用して薬剤の投与量及び投与速度を得ることが可能である。薬剤の投与量及び投与速度が得られると、投与終了予定時間(時刻)が得られる。これを端末装置に表示させることが可能になる。
【0157】
また、監視装置1と電子カルテシステムとを連動させるようにしてもよい。すなわち、電子カルテシステムでは、患者への薬剤の種類や投与量、投与速度が入力されている。これと監視装置1の監視結果とを比較して適正範囲内にあるか否かを判別することで、より一層安全な医療システムを構築できる。この場合、監視装置1と電子カルテシステムとは様々な通信形態で接続することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0158】
以上説明したように、本発明にかかる監視装置は、例えば、輸液、輸血、経腸栄養剤の投与等の場合に使用できる。
【符号の説明】
【0159】
1 監視装置
9 下流側電極(下流側フリーフロー検出電極)
10 上流側電極(上流側フリーフロー検出電極、上流側液滴生成状態検出電極)
11 点滴筒電極(下流側液滴生成状態検出電極)
12 本体部
13 マイクロコンピュータ(検出部)
14 液滴生成信号処理部
15 フリーフロー信号処理部
100 輸液セット
104 上流側導管
105 下流側導管
110 点滴筒
118 液滴生成部
120 輸液バッグ(容器)
A 仮想電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば医療現場における輸液治療等を監視するための監視装置及び監視方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療現場や介護現場においては、輸液、輸血、経腸栄養剤の投与等が行われている。これら液体を患者に投与する際には、例えば、輸液セット及び輸液ポンプが使用されることがある(例えば、特許文献1参照)。輸液セットは、液体を収容する容器から延びる導管と、導管の途中に設けられた点滴筒と、導管の先端に設けられた穿刺針とを備えている。また、輸液ポンプは、導管をしごくことによって容器内の液体を送るように構成されている。
【0003】
上記のようにして液体を患者に投与する場合に、万一、導管が輸液ポンプから外れた事態を想定すると、容器内の液体が重力によって急速に自然落下し、点滴筒内において連続的に薬液が流れ、患者に規定以上の速度あるいは量の液体が投与されてしまう、いわゆるフリーフローが発生する懸念がある。このフリーフローが発生した場合に被害を最小限に食い止めるための機構が特許文献1の輸液ポンプには組み込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−222485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、フリーフローによる被害を最小限に食い止めるためには、フリーフローが発生したことを早期に、かつ、確実に検出することが重要である。
【0006】
そこで、例えば、赤外線センサを用いた監視装置を用いて点滴筒内の液体の流れを監視することが考えられる。この場合、赤外線を発する発光部と、赤外線を受ける受光部とを点滴筒を挟むように配置して取り付け、発光部から発する赤外線を液滴に向けて照射することで、発光部と受光部との間を通る液滴を検出し、これに基づいて液体の投与状態を監視することが可能になる。
【0007】
しかし、赤外線センサを用いた場合には、次の理由から正確な検出が難しい場合がある。例えば、単位時間当たりに滴下する液滴の数が多い場合には、液体が連続して流れているものと誤検出してフリーフローが発生したと判断してしまうことがある。また、例えば赤外線の照射時からフリーフローが発生している場合には、赤外線が遮られた状態が継続することになり、この状態がフリーフローの状態であるか、それとも、液滴が全く滴下していない状態であるか判別できないことがある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、液体を患者へ投与する際に、容器内の液体が連続的に自然落下するフリーフローが発生した場合に、早期に、かつ、確実に検出できるようにして患者の安全性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、容器内の液体を、導管及び点滴筒を介して患者に投与する際に、該容器内の液体が連続的に自然落下するフリーフローの発生状況を監視するように構成された監視装置において、上記点滴筒よりも上流側の導管ないし容器に取り付けられる上流側フリーフロー検出電極と、上記点滴筒よりも下流側の導管ないし該点滴筒における液滴が生成される液滴生成部よりも下流側の液貯留部に取り付けられる下流側フリーフロー検出電極と、上記上流側フリーフロー検出電極及び上記下流側フリーフロー検出電極の一方の電極に電圧を印加し、他方の電極の電圧の変化を検出する検出部とを備え、上記検出部は、検出した電圧の変化に基づいて、フリーフローが発生したか否かを得るように構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
すなわち、フリーフローが発生すると、薬液が上流側の導管から点滴筒に連続的に落ちるので、上流側フリーフロー検出電極と下流側フリーフロー検出電極とは薬液を介して電気的に接続された状態となり、電気回路が閉じられた形で構成される。
【0011】
一方、フリーフローが発生していない場合には、点滴筒には、上流側の導管から液滴が所定の時間間隔をあけて滴下する。このため、上流側フリーフロー検出電極と下流側フリーフロー検出電極とは接続された状態とはならない。
【0012】
従って、フリーフローが発生していない状態からフリーフローが発生した状態になると、上流側フリーフロー検出電極及び下流側フリーフロー検出電極のうち、電圧を印加していない方の電極(他方の電極)の電圧が変化することになる。この電圧の変化を検出部で検出することでフリーフローが発生しているか否かを確実に検出することが可能になる。また、フリーフローが発生した途端に電気回路が閉じられて電圧がすぐに変化するので、電圧の変化に基づいた素早い検出が可能になる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、下流側フリーフロー検出電極は、点滴筒よりも下流側の導管に取り付けられることを特徴とするものである。
【0014】
すなわち、患者に液体を投与する間は、液切れ等が起こらない限り、点滴筒よりも下流側の導管には必ず液体が存在することになる。一方、点滴筒の液貯留部の液体の量は変化することがあり、場合によっては下流側フリーフロー検出電極の取り付け位置が点滴筒の液貯留部から外れた位置になり、電気回路が構成されないことが考えられる。
【0015】
本発明では、液体の投与中に必ず液体が存在している下流側の導管に下流側フリーフロー検出電極を取り付けることで、フリーフローの発生を確実に検出することが可能になる。
【0016】
第3の発明は、第1または2の発明において、点滴筒における液滴生成部に取り付けられる下流側液滴生成状態検出電極と、点滴筒よりも上流側の導管ないし容器に取り付けられる上流側液滴生成状態検出電極とを備え、検出部は、上記上流側液滴生成状態検出電極に電圧を印加することで上記液滴生成部で生成される液滴を仮想電極とし、上記下流側液滴生成状態検出電極の電圧の変化を検出し、検出した電圧の変化に基づいて、液滴の生成状態及び/又は液切れであるか否かを得るように構成されていることを特徴とするものである。
【0017】
すなわち、点滴筒の液滴生成部で生成される液滴は徐々に大きくなって所定の大きさになった瞬間落下する。この液滴を仮想電極としているので、少なくとも仮想電極と下流側液滴生成状態検出電極とのキャパシタンスが液滴の大きさ及びその有無によって異なる。これが下流側液滴生成状態検出電極の電圧の変化として検出部で検出されることになる。
【0018】
従って、液滴が生成され続けていれば、略一定の周期で少なくともインピーダンスが変化して検出電圧が変化するので、液体の投与が継続されていることになる。しかも、インピーダンスの変化状態、即ち、電圧の変化状態によって液滴の生成速度である液体の流量も得られる。また、液滴が生成されていなければ、インピーダンスが周期的に変化せず、よって電圧が周期的に変化しないので、液体が投与されていないことになる。
【0019】
また、上流側液滴生成状態検出電極は点滴筒よりも上流に位置しているので、点滴筒よりも上流の液体の有無によって下流側液滴生成状態検出電極と上流側液滴生成状態検出電極間の抵抗が変化する。これが下流側液滴生成状態検出電極の電圧の変化として検出部により検出される。これにより、点滴筒よりも上流の液体が無くなると電圧が急に変化するので、液切れであることが得られる一方、導管の閉塞等による中断の場合には導管内に液体が存在しているので電圧の急な変化はない。これにより、液切れと、導管の閉塞等による中断との区別が可能になる。
【0020】
第4の発明は、第3の発明において、上流側液滴生成状態検出電極と上流側フリーフロー検出電極とは共通の電極で構成されていることを特徴とするものである。
【0021】
この構成によれば、部品点数が削減される。
【0022】
第5の発明は、第1から4のいずれか1つの発明において、検出部は、上流側フリーフロー検出電極に電圧を印加することを特徴とするものである。
【0023】
すなわち、例えば下流側フリーフロー検出電極に電圧を印加すると、電流が微弱ながら患者側に常時流れることになるが、本発明のように上流側フリーフロー検出電極に電圧を印加することで、フリーフローが起こっていない正常時に患者側へ電流が流れることはなくなる。
【0024】
また、第4の発明のように、上流側液滴生成状態検出電極と上流側フリーフロー検出電極とを共通にする場合には、上流側フリーフロー検出電極に電圧を印加することで仮想電極が確実に生成されるようになる。
【0025】
第6の発明は、容器内の液体を、導管及び点滴筒を介して患者に投与する際に、該容器内の液体が連続的に自然落下するフリーフローの発生状況を監視する監視方法において、上記点滴筒よりも上流側の導管ないし容器に取り付けられる上流側フリーフロー検出電極と、上記点滴筒よりも下流側の導管ないし該点滴筒における液滴が生成される液滴生成部よりも下流側の液貯留部に取り付けられる下流側フリーフロー検出電極との一方の電極に電圧を印加し、他方の電極の電圧の変化に基づいて、フリーフローが発生したか否かを得ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0026】
第1発明によれば、点滴筒よりも上流側の導管ないし容器に取り付けられる上流側フリーフロー検出電極と、点滴筒よりも下流側の導管ないし該点滴筒における液貯留部に取り付けられる下流側フリーフロー検出電極との一方の電極に電圧を印加し、他方の電極の電圧の変化に基づいてフリーフローが発生したか否かを得るようにしたので、フリーフローの発生を早期に、かつ、確実に検出でき、患者の安全性を高めることができる。
【0027】
第2の発明によれば、液体の投与中に必ず液体が存在している下流側の導管に下流側フリーフロー検出電極を取り付けることで、点滴筒の液貯留部に取り付ける場合に比べて、フリーフローの発生をより一層確実に検出することができる。
【0028】
第3の発明によれば、下流側液滴生成状態検出電極及び上流側液滴生成状態検出電極を設け、下流側液滴生成状態検出電極の電圧の変化に基づいて液滴の生成状態及び液切れであるか否かを得るようにしたので、フリーフローのみならず、液切れ、導管の閉塞等による投与の中断、及び液体の流量が正常範囲にあるか否かを常に的確に得ることができ、患者の安全性をより一層高めることができる。
【0029】
第4の発明によれば、上流側液滴生成状態検出電極と上流側フリーフロー検出電極とを共通の電極で構成したので、部品点数を削減でき、低コスト化を図ることができる。
【0030】
第5の発明によれば、上流側フリーフロー検出電極に電圧を印加するので、正常時に電流が患者に流れるのを防止できる。また、第4の発明のように、上流側液滴生成状態検出電極と上流側フリーフロー検出電極とを共通にする場合に仮想電極を確実に生成でき、液滴の生成状態及び/又は液切れであるか否かを確実に得ることができる。
【0031】
第6の発明によれば、第1の発明と同様に、フリーフローの発生を早期に、かつ、確実に検出でき、患者の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態1にかかる監視装置の使用状態を説明する図である。
【図2】点滴筒の拡大図である。
【図3】図2におけるIII−III線断面図である。
【図4】監視装置の本体部のブロック図である。
【図5】液滴が生成された状態における等価回路を示した点滴筒の断面図である。
【図6】液滴が生成された状態における等価回路である。
【図7】フリーフローが発生した状態における等価回路を示した図5相当図である。
【図8】フリーフローが発生した状態における等価回路である。
【図9】フリーフロー発生時における出力電圧の変化を示す図である。
【図10】液滴生成時における出力電圧の変化を示す図である。
【図11】液滴が生成されている状態から薬液が切れた状態になった場合の電圧の変化を示す図である。
【図12】監視装置のブロック図である。
【図13】液滴の生成過程を示す図である。
【図14】液滴の成長曲線を示す図である。
【図15】印加電圧の周波数と出力電圧との関係を示す図である。
【図16】終端抵抗値と出力電圧との関係を示す図である。
【図17】薬剤が生理食塩水の場合の出力電圧の変化を示す図である。
【図18】薬剤がラクテックD注の場合の出力電圧の変化を示す図である。
【図19】薬剤がKN1号輸液の場合の出力電圧の変化を示す図である。
【図20】薬剤が大塚糖液5%の場合の出力電圧の変化を示す図である。
【図21】薬剤が大塚糖液10%の場合の出力電圧の変化を示す図である。
【図22】薬剤がアミゼットB輸液の場合の出力電圧の変化を示す図である。
【図23】薬剤がキドミンの場合の出力電圧の変化を示す図である。
【図24】薬剤がアミノフリードの場合の出力電圧の変化を示す図である。
【図25】薬剤がツインパルの場合の出力電圧の変化を示す図である。
【図26】薬剤がネオパレン2号の場合の出力電圧の変化を示す図である。
【図27】薬剤がイントラリポス20%の場合の出力電圧の変化を示す図である。
【図28】実際の液滴の生成状況と出力電圧の変化とを同時に記録した結果を示す図である。
【図29】点滴筒電極の大きさを変更した場合の出力電圧の変化を示す図である。
【図30】点滴筒電極の横方向の寸法を周長の1/4にした場合の図2相当図である。
【図31】実施形態2にかかる監視装置の使用状態を示す正面図である。
【図32】実施形態2にかかる監視装置の使用状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0034】
図1は、本発明の実施形態にかかる監視装置1の使用状態を示すものである。監視装置1は、薬液(液体)を患者に投与する、いわゆる輸液治療の際に、薬液の投与状況を監視するためのものであり、輸液セット100及び輸液バッグ120(容器)と共に使用される。投与状況とは、例えば、フリーフローが発生したか否か、薬液の流量が適正範囲か否か、液切れが起こっていないか等である。
【0035】
尚、薬液の種類としては、例えば、生理食塩水や、ブドウ糖液等が挙げられる。
【0036】
本実施形態では、監視装置1の構造を説明する前に、輸液セット100及び輸液バッグ120の構造について説明する。
【0037】
輸液セット100は、びん針101と、点滴筒102と、穿刺針103と、びん針101から点滴筒102まで延びる上流側導管104と、点滴筒102から穿刺針103まで延びる下流側導管105と、クランプ106とを備えている。
【0038】
びん針101は輸液バッグ120に差し込まれるものである。
【0039】
点滴筒102は、例えばポリプロピレン等の透明な樹脂材で構成された有底の筒体110と、筒体110の上端開口を閉塞する蓋部材111とを備えている。筒体110は、略円筒形状とされている。筒体110の底部は、下方へ膨出するように形成されている。図2に示すように、底部の中心部には、流出管部112が下方へ突出するように形成されている。
【0040】
蓋部材111は、筒体110の上端開口を覆うように円板状に形成された円板部113と、円板部113の周縁部から下方へ突出して周方向に延びる周壁部114とを備えている。周壁部114の内周面は、筒体110の上部外周面に接着されている。円板部113の中心部には、上流側導管104の下流端が接続される接続管部115が形成されている。接続管部115には、上流側導管104が固定されている。薬液は上流側導管104の下端部104a(図5に示す)の開口から筒体110内に滴下するようになっている。蓋部材111及び筒体110の上部により、液滴を生成する液滴生成部118が構成されている。
【0041】
また、図5に示すように、薬液の投与時、点滴筒102の筒体110には、所定量の薬液が貯留される。筒体110の下側部分が液貯留部119である。
【0042】
上流側導管104及び下流側導管105は、柔軟な樹脂材で構成されている。また、図1に示すように、クランプ106は、下流側導管105の中途部に設けられている。このクランプ106によって下流側導管105を閉塞できるとともに、閉塞状態から徐々に開放して開度を調節することができるようになっている。
【0043】
また、輸液バッグ120は、透明かつ柔軟な樹脂材で構成されており、内部には、患者に投与する薬液が収容されている。尚、薬液は、輸液バッグ120でなく、例えば瓶(容器)に収容されていてもよい。
【0044】
また、輸液セット100は、図示しないが、周知の構造の輸液ポンプと共に使用される。このとき、輸液セット100の下流側導管105が輸液ポンプにセットされてしごきポンプ等によりしごかれて薬液が所定の流量で送られる。点滴筒102の液滴生成部118で生成される液滴の生成速度(薬液の流量に相当)は、下流側導管105の開度の調節により、変更することが可能になっている。
【0045】
フリーフローとは、輸液ポンプにセットされた下流側導管105が何らかの原因で輸液ポンプから外れてしまい、輸液バッグ120内の薬液が重力で急速に自然落下して患者に規定以上の速度あるいは量の薬液が投与されること、他に、下流側導管105が輸液ポンプにセットされていない場合であっても何らかの原因によって輸液バッグ120内の薬液が重力で急速に自然落下して患者に規定以上の速度あるいは量の薬液が投与されることである。フリーフローが発生すると、上流側導管104から点滴筒102に流入する薬液の流れが連続的になり、糸を引くようになる。
【0046】
次に、監視装置1の構造について説明する。監視装置1は、上流側導管104に取り付けられる上流側電極10と、点滴筒102の液滴生成部118に取り付けられる点滴筒電極11と、流出管部112に取り付けられる下流側電極9と、本体部12とを備えている。
【0047】
上流側電極10は、上流側導管104における点滴筒102近傍の部位を囲む環状に形成されており、本発明の上流側フリーフロー検出電極及び上流側液滴生成状態検出電極を構成している。
【0048】
点滴筒電極11は、上流側電極10と同様な導体からなり、図3に示すように、筒体110における液滴生成部118を構成する部分の外周面を囲む環状に形成されており、本発明の下流側液滴生成状態検出電極を構成している。点滴筒電極11の位置は、点滴筒102の接続管部115の下端部を取り囲むように設定されている。つまり、点滴筒電極11は、液滴生成部118で生成される液滴を取り囲むように位置している。
【0049】
また、下流側電極9は、流出管部112における点滴筒102近傍の部位を囲む環状に形成されており、下流側フリーフロー検出電極を構成している。
【0050】
上流側電極10、点滴筒電極11及び下流側電極9は導電性の材料であればよく、例えば銅などの金属製の薄板、フィルム或いは透明な導電性フィルム等で構成できる。特に好ましいのは透明な導電性フィルムであり、これを用いることで、点滴筒102の内部の視認性の悪化が回避される。
【0051】
本体部12には、図4に示すように、マイクロコンピュータ13と、液滴生成信号処理部14と、フリーフロー信号処理部15と、印加側LPF30とを備えている。
【0052】
フリーフロー信号処理部15は、インピーダンス変換器17、増幅器18、包絡線検波回路19、増幅器20、LPF21及び終端抵抗R1aを備えている。
【0053】
また、液滴生成信号処理部14も、フリーフロー信号処理部15と同様に、インピーダンス変換器23、増幅器24、包絡線検波回路25、増幅器26、LPF27及び終端抵抗R1bを備えている。
【0054】
マイクロコンピュータ13は、CPUやRAM等を備えた周知の汎用マイクロコンピュータである。マイクロコンピュータ13には、印加側LPF30が接続されている。印加側LPF30は、カットオフ周波数が例えば20kHzのものである。
【0055】
フリーフロー信号処理部15のインピーダンス変換器17は、下流側電極9から得られた信号を低インピーダンスに変換するためのものである。
【0056】
増幅器18は、増幅度が例えば40dbのものである。増幅器20は、増幅度が例えば36dbのものである。LPF21は、カットオフ周波数が例えば16Hzのものである。LPH21は、ノイズ成分を除去するためのものである。このようにして得られた信号は、マイクロコンピュータ13でA/D変換されて処理される。
【0057】
下流側電極9は、接続線9aにより終端抵抗R1aに接続され、この終端抵抗R1aを介してグラウンドされている。
【0058】
液滴生成信号処理部14のインピーダンス変換器23、増幅器24、包絡線検波回路25,増幅器26及びLPF27は、フリーフロー信号処理部15のインピーダンス変換器17、増幅器18、包絡線検波回路19,増幅器20及びLPF21と同様に構成されている。
【0059】
点滴筒流側電極11は、接続線11aにより終端抵抗R1bに接続され、この終端抵抗R1bを介してグラウンドされている。
【0060】
また、上流側電極10は、接続線10aにより印加側LPF30に接続されている。この実施形態では、周波数が30kHzの交流電圧を上流側電極10に印加するように構成されている。すなわち、マイクロコンピュータ13では30kHzの方形波を発振させる。そして、このマイクロコンピュータ13で発信した信号を印加側LPF30に入力する。印加側LPF30では、入力された方形波信号を正弦波信号に整形する。これにより、上流側電極10には、周波数が30kHzの正弦波の電圧が印加されることになる。
【0061】
上流側導管104及び点滴筒102の液滴生成部118にそれぞれ上流側電極10及び点滴筒電極11が取り付けられた状態で、電圧が印加されると、図5に示すように、液滴生成部118で生成される液滴が仮想電極Aとなる。
【0062】
これを等価回路図で示すと図6のようになる。すなわち、図5にも示すように、上流側導管104でコンデンサC1が構成され、上流側電極10よりも下流の薬液の抵抗が抵抗R2となる。また、液滴で構成された仮想電極Aと筒体110とでコンデンサC2が構成され、図3に示す筒体110の周壁部には厚みTがあるので、この周壁部でコンデンサC3が構成される。従って、上流側導管104、点滴筒102、上流側導管104内の薬液を電気回路の一部として利用することになる。
【0063】
コンデンサC1(上流側導管104)のキャパシタンス、抵抗(薬液)R2、コンデンサC2(仮想電極と筒体110)のキャパシタンス、コンデンサC3(筒体110の周壁部)のキャパシタンスの直列インピーダンスが変化すると、出力電圧が変化する。従って、直列インピーダンスの変化を出力電圧の変化という形で、マイクロコンピュータ13で検出することが可能となっている。
【0064】
また、上流側導管104及び下流側導管105にそれぞれ上流側電極10及び下流側電極9が取り付けられた状態で、電圧が印加されると、図5に示すように、薬液が液滴となって流れている場合には、上流側導管104及び下流側導管105の間には空気層があり、電気的な接続がない状態となる。
【0065】
一方、図7に示すように、フリーフローが発生して薬液が糸を引くように点滴筒102内を流れると、上流側導管104及び下流側導管105が薬液を介して電気的に接続される。
【0066】
これを等価回路図で示すと図8のようになる。すなわち、上流側導管104でコンデンサC1が構成され、上流側電極10よりも下流の薬液の抵抗が抵抗R3となる。また、流出管部112でコンデンサC4が構成される。従って、この場合、上流側導管104、フリーフロー中の薬液及び流出管部112を電気回路の一部として利用することになる。
【0067】
コンデンサC1(上流側導管104)のキャパシタンス、抵抗(薬液)R3、コンデンサC4(流出管部112)のキャパシタンスの直列インピーダンスが変化すると、出力電圧が変化する。従って、フリーフローが発生した場合も、直列インピーダンスの変化を出力電圧の変化という形で、マイクロコンピュータ13で検出することが可能となっている。
【0068】
マイクロコンピュータ13では、検出された信号に基づいて、フリーフローが発生したか否か、液滴の生成状態及び液切れであるか否かを得るように構成されている。マイクロコンピュータ13は本発明の検出部である。
【0069】
まず、フリーフローが発生した否かを得る場合について図9に基づいて説明する。尚、図9は、フリーフロー信号処理部15からの出力された電圧の波形を例示するものである。
【0070】
フリーフローが発生していないとき(正常時)には、上述のように上流側電極10と下流側電極9とが電気的に接続されていないので、出力電圧は略0ボルトとなる。図中の正常時にちょうど0ボルトとなっていない理由はノイズ等の原因による。
【0071】
一方、フリーフローが発生すると、上流側電極10と下流側電極9とが薬液を介して電気的に接続されるので電圧が高まる。マイクロコンピュータ13は、フリーフロー信号処理部15からの出力電圧が高まった場合に、フリーフローが発生したと判断し、それ以外のときには、フリーフローが発生していないと判断する。尚、コンデンサC1、C4のキャパシタンスの変化はない。
【0072】
次に、液滴の生成状態を得る場合について説明する。液滴は、図10の上部に示すように、液適生成部118で生成される過程で徐々に大きくなり、液滴と筒体110内周面との距離が短くなっていく。液滴は仮想電極Aであるため、図3に示すように、仮想電極Aと筒体110内周面との距離がX1からX2へと短くなる。すると、図5に示すコンデンサC2のキャパシタンスが変化し、直列インピーダンスが変化する。そして、出力電圧が変化する。尚、コンデンサC1,C3のキャパシタンスの変化はない。
【0073】
このことを図10に基づいて詳細に説明する。尚、図10は、液滴生成信号処理部14から出力された電圧の波形を例示するものである。
【0074】
液滴が生成されていない状態では、図中に液滴非生成領域として示すように、電圧が低い状態が継続する。そして、液滴が生成され始めると(液滴生成領域に入ると)、上記電気回路の電圧が徐々に高まっていく。つまり、液滴はある程度の時間をかけて滴下する大きさとなるまで成長していく。この液滴の大きさの変化が電圧の変化として検出される。その後、液滴が所定の大きさとなった瞬間に、滴下し、これが電圧の急低下として検出される。その後、再び、液滴が生成され始めるので、電圧が徐々に高まっていく。薬液が流れている間は、これが繰り返されるので、上記電気回路の出力電圧は周期的に変化することになる。マイクロコンピュータ13は、このことを検出している間は、輸液が継続して行われていると判断する。
【0075】
また、液滴生成信号処理部14からの出力電圧が周期的に変化している場合に、その変化速度または周期によって薬液の流量が得られる。すなわち、薬液の流量が多いと、液滴の生成速度が速くなり、その結果、出力電圧の変化速度が速くなり変化の周期は短くなる。一方、薬液の流量が少ないと、液滴の生成速度が遅くなり、その結果、出力電圧の変化速度が遅くなり変化の周期は長くなる。出力電圧の変化速度または周期から算出される流速が、一般的な流速よりも大幅に速い場合や、大幅に遅い場合には、マイクロコンピュータ13は、輸液の流速が正常範囲から外れていると判断する。
【0076】
また、点滴筒電極11が液滴を取り囲む環状をなしているので、例えば、輸液中に点滴筒102が傾いた場合のように、液滴が点滴筒102の径方向の中心部からずれたとしても、仮想電極Aと点滴筒電極11とのキャパシタンスが得られる。これにより、点滴筒102がどの方向に傾いたとしても、出力電圧の変化を的確に検出することが可能である。
【0077】
また、出力電圧が周期的に変化していた状態から変化しなくなった場合には、液滴生成部118で液滴が生成されていないということであり、薬液の流れが停止していると判断する。
【0078】
次に、液切れであるか否かを得る場合について図11に基づいて説明する。輸液バッグ120内の薬液が無くなって上流側導管104内が空になった場合には、図5及び図6における抵抗R2の抵抗値が急に変化することになる。抵抗R2の抵抗値の変化によって上記電気回路の直列インピーダンスが変化し、出力電圧が低下することになる。従って、出力電圧が周期的でなく、急に低下した場合には、マイクロコンピュータ13は輸液バッグ120の薬液が無くなったと判断する。
【0079】
また、上流側導管104や下流側導管105が閉塞した場合のように、輸液バッグ120内が空になっていないのに薬液が流れなくなった場合には、上流側導管104内に薬液が存在した状態で、液滴が液滴生成部118で生成されなくなる。すなわち、抵抗R2の抵抗値が急に変化することなく、しかも、コンデンサC2のキャパシタンスの周期的な変化がなくなる。マイクロコンピュータ13が、出力電圧によってこのことを検出した場合には、薬液が輸液バッグ120に残った状態で輸液が中断されたと判断する。
【0080】
輸液の中断の理由としては、上流側導管104や下流側導管105が折れ曲がることによって閉塞された場合や、上流側導管104や下流側導管105が押しつぶされて閉塞された場合があるが、いずれも異常状態である。
【0081】
図12に示すように、本体部12には、警報器30及び電動クランプ31が接続されている。警報器30は、例えば、ランプやブザー等である。電動クランプ31は、輸液セット100の下流側導管105にセットされるようになっている。
【0082】
マイクロコンピュータ13は、フリーフローが発生したと判断した場合、及び、輸液バッグ120の薬液が無くなったと判断した場合には、警報器30を作動させるとともに、電動クランプ31に対し閉鎖信号を出力する。
【0083】
これにより、フリーフローが発生したこと、及び、液切れであることを警報器30によって周囲の者に報知できるとともに、輸液を自動的に停止することが可能となる。
【0084】
また、マイクロコンピュータ13は、薬液の流量が正常範囲から外れたと判断した場合には、警報器30を作動させるとともに、電動クランプ31に閉鎖信号を出力して輸液を停止する。
【0085】
また、マイクロコンピュータ13は、薬液が輸液バッグ120に残った状態で輸液が中断されたと判断した場合には、警報器30を作動させる。
【0086】
以上説明したように、この実施形態1にかかる監視装置1によれば、フリーフローが発生すると、薬液が上流側導管104から点滴筒102に糸を引くように連続的に落ちるので、上流側電極10と下流側電極9とは薬液を介して接続された状態となり、電気回路が閉じられた形で構成される。
【0087】
一方、フリーフローが発生していない場合には、点滴筒102には、上流側導管104から液滴が所定の時間間隔をあけて滴下する。このため、上流側電極10と下流側電極9とは接続された状態とはならない。
【0088】
したがって、フリーフローが発生していない状態からフリーフローが発生した状態になると、下流側電極9の電圧が変化することになり、この電圧の変化を検出することで、フリーフローが発生しているか否かを確実に検出することができる。また、フリーフローが発生した途端に電気回路が閉じられて電圧がすぐに変化するので、電圧の変化に基づいて素早い検出ができる。これにより、フリーフローの発生を早期に、かつ、確実に検出でき、患者の安全性を高めることができる。
【0089】
また、薬液の投与中に必ず薬液が存在している下流側導管104に下流側電極9を取り付けることで、点滴筒102の液貯留部119に取り付ける場合に比べて、フリーフローの発生をより一層確実に検出することができる。
【0090】
また、点滴筒102の液滴生成部118の点滴筒電極11に電圧印加して液滴を仮想電極Aとし、点滴筒電極11の電圧変化を検出して液滴の生成状態及び液切れであるか否かを得るようにしたので、点滴筒電極11及び上流側電極10を取り付けるという、簡単な構成でもって、液切れ、導管104,105の閉塞等による投与の中断、及び薬液の流量が正常範囲にあるか否かを的確に得ることができる。
【0091】
また、フリーフローを検出するための電極と、液滴生成状態を検出するための電極とを共通の上流側電極119で構成したので、部品点数を削減でき、低コスト化を図ることができる。
【0092】
また、点滴筒電極11を、液滴生成部118で生成される液滴を取り囲む環状に形成したので、薬液の投与中に点滴筒102がどの方向に傾いた場合にも、電圧の変化を検出できる。
【0093】
また、フリーフローの発生の有無を検出するにあたって患者から離れた側の上流側電極10に電圧を印加するようにしたので、フリーフローが発生していない正常時には、患者側へ電流が流れることはない。また、液滴の生成状態を検出するにあたって上流側電極10に電圧を印加しているので、仮想電極Aを確実に生成して液滴の生成状態を確実に検出できる。
【実施例】
【0094】
以下、監視装置1の実施例について説明する。
【0095】
まず、点滴筒電極11の最適な大きさを決定するにあたり、液滴の生成状況を観察した。液滴の生成状況は、実際の点滴時と同様に薬液を流しながら、点滴筒102の外側から高速度カメラで撮影した。図13に示すように液滴は成長していく。輸液セット100は、複数種あり、本実施形態では、20滴/mlの輸液セット100と60滴/mlの輸液セット100との各々について、生理食塩水と糖液とで液滴の生成状況を観察した。その結果得られた液滴の成長曲線を図14に示す。
【0096】
20滴/mlの輸液セット100は、60滴/mlの輸液セット100に比べて上流側導管104の下端部104a(図13に示す)の開口が大きい。そのため、生成初期からある程度の大きさの直径の液滴ができる。そして、20滴/mlの輸液セット100では、鉛直方向の寸法が水平方向の寸法に比べて長い形状、いわゆる縦長形状となる。
【0097】
一方、60滴/mlの輸液セット100では、接続管部115の下端部115aの開口が小さいため、液滴は生成初期から小さな球状になっており、球が成長していく形となる。したがって、60滴/mlの輸液セット100では、水平方向及び鉛直方向の両方向に成長する。
【0098】
このように、20滴/mlの輸液セット100と、60滴/mlの輸液セット100とでは液滴の生成状況が異なるので、マイクロコンピュータ13によって両者の液滴の生成状況を判別することが可能である。これにより、使用中の輸液セット100が20滴/mlであるか、60滴/mlであるかを区別することが可能である。
【0099】
図10の上部に示すように、液滴は落下する直前に鉛直方向の寸法が急激に長くなる。これは、液滴の表面張力と重力の影響によって起こる。図14の(A)〜(D)に示すように、液滴の鉛直方向の寸法は、最長で8.8mmであった。この結果より、点滴筒電極11の縦方向(上下方向)の寸法は10mmとした。
【0100】
次に、点滴筒電極11に印加する電圧の周波数について図15に基づいて説明する。図15では、印加電圧の周波数と出力電圧との関係を示しており、(A)は薬液が生理食塩水である場合について、20滴/mlの輸液セット100を用いた際の液滴落下直後の電圧、60滴/mlの輸液セット100を用いた際の液滴落下直後の電圧、20滴/mlの輸液セット100を用いた際の液滴落下直前の電圧、60滴/mlの輸液セット100を用いた際の液滴落下直前の電圧の変化を示している。
【0101】
(B)は、薬液が糖液である場合について、20滴/mlの輸液セット100を用いた際の液滴落下直後の電圧、60滴/mlの輸液セット100を用いた際の液滴落下直後の電圧、20滴/mlの輸液セット100を用いた際の液滴落下直前の電圧、60滴/mlの輸液セット100を用いた際の液滴落下直前の電圧の変化を示している。糖液の濃度は10%である。
【0102】
生理食塩水の場合、及び糖液の場合の両方で出力電圧の急激な変化のない、安定した測定が可能な30kHzとした。
【0103】
尚、印加電圧の周波数は30kHzに限られるものではなく、1kHz以上2MHz以下の範囲で設定するのが好ましい。周波数が1kHzよりも低いと、インピーダンスが大きくなり過ぎて電圧の変化を検出するのが困難になり、一方、2MHzよりも高いと、消費電流が多くなるとともに、電磁波が出やすくなって周辺の他の機器への影響が懸念されるからである。
【0104】
次に、終端抵抗R1a、R1bの値について図16に基づいて説明する。図16では、終端抵抗R1a、R1bの抵抗値と出力電圧との関係を示しており、(A)は、図14の(A)と同様に、薬液が生理食塩水である場合について、4つのケースを示している。
【0105】
図16の(B)は、図14の(B)と同様に、薬液が糖液である場合について、4つのケースを示している。糖液の濃度は10%である。
【0106】
生理食塩水の場合、及び糖液の場合の両方で出力電圧の急激な変化のない、安定した測定が可能な100kΩとした。
【0107】
尚、終端抵抗R1の抵抗値は100kΩに限られるものではなく、例えば、50kΩ以上500kΩ以下の範囲で設定するのが好ましい。
【0108】
次に、上記のように構成された監視装置1を実際に使用した場合について、図17〜図27に基づいて説明する。
【0109】
図17は、薬液として生理食塩水を用いた場合であり、(A)は20滴/mlの輸液セット100を用いた場合の電圧変化を示し、(B)は60滴/mlの輸液セット100を用いた場合の電圧変化を示している。
【0110】
同図に示すように、電圧が徐々に上昇していく領域は、液滴が成長してインピーダンスが変化している領域であり、液滴生成領域である。そして、液滴が成長して滴下すると、インピーダンスが急に変化して電圧が一気に低下する。
【0111】
図18は、薬液がラクテックD注の場合であり、この場合も液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。
【0112】
図19は、KN1号輸液の場合であり、この場合も液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。
【0113】
図20は、大塚糖液5%場合であり、この場合も液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。
【0114】
図21は、大塚糖液10%の場合であり、この場合も液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。
【0115】
図22は、アミゼットB輸液の場合であり、この場合も液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。
【0116】
図23は、キドミンの場合であり、この場合も液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。
【0117】
図24は、アミノフリードの場合であり、この場合も液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。
【0118】
図25は、ツインパルの場合であり、この場合も液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。
【0119】
図26は、ネオパレン2号の場合であり、この場合も液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。
【0120】
図27は、イントラリポス20%の場合であり、この場合も液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。尚、イントラリポス20%の場合は、60滴/mlの輸液セット100を用いた場合のみ示しているが、20滴/mlの輸液セット100を用いた場合も同様に液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できると考えられる。
【0121】
以上のように、本監視装置1は、様々な薬剤に使用しても、液滴成長領域と滴下タイミングとを把握することができる。
【0122】
次に、監視装置1の動作検証を行った結果について図28に基づいて説明する。(A)は、薬液を生理食塩水とし、20滴/mlの輸液セット100を用いた場合を示し、上のグラフは、液滴を動画撮影して寸法を測定して得た成長曲線を示し、下のグラフは、出力電圧の変化を示す。これらグラフから明らかなように、液滴の成長曲線と、出力電圧の変化とは対応しており、液滴が大きくなるにつれて電圧が高まり、液滴が滴下すると電圧が急に低下する。つまり、液滴の成長と電圧の変化とは同期していることが分かる。図28(B)に示す場合も同様である。
【0123】
次に、点滴筒電極11の大きさの選定について説明する。上記実施例では、点滴筒電極11が筒体110を全周に亘って囲む環状である場合について説明しているが、点滴筒電極11の形状はこれに限られるものではない。
【0124】
図29(A)に示すように、点滴筒電極11の縦方向の寸法(上下方向の寸法)が10mmで横方向(水平方向)の寸法が5mmの場合であっても、液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。
【0125】
(B)に示すように、点滴筒電極11の縦方向の寸法が2mmで横方向の寸法が2mmの場合であっても、液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。
【0126】
(C)に示すように、点滴筒電極11の縦方向の寸法が10mmで横方向の寸法が筒体110の周長の1/4の場合であっても、液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。この点滴筒電極11について図30に示す。
【0127】
図29の(D)に示すように、点滴筒電極11の縦方向の寸法が10mmで横方向の寸法が筒体110の周長の1/4で、かつ、点滴筒電極11が上になるように点滴筒102を傾けた場合(図30に仮想線で示す)であっても、液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。
【0128】
他にも、図示しないが、点滴筒電極11の縦方向の寸法が20mm、30mmで横方向の寸法が筒体110の周長の1/2であっても、液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できた。点滴筒電極11の横方向の寸法は、筒体110の周長の5%以上であることが好ましい。
【0129】
点滴筒電極11の縦方向の寸法を短くしても液滴の落下は検出可能であるが、液滴の成長を検出することができなくなる。従って、点滴筒電極11の縦方向の寸法は、少なくとも液滴の落下直前の鉛直方向の寸法と同程度の寸法を確保するのが好ましい。
【0130】
また、点滴筒電極11の横寸法を短くするとノイズが減少する点で有効であるが、S/N比が悪化するので、少なくとも筒体110の周長の1/4程度を確保するのが好ましい。
【0131】
点滴筒102の材質としては、上述したポリプロピレン以外にも、ポリ塩化ビニル等があるがこれらいずれの材質であっても、上記のように液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。また、医療現場で使用されている点滴筒102の上下方向の寸法は、例えば、50mmや53mm等があり、外径は16mmや17mm等がある。これらいずれもの寸法の点滴筒102であっても、液滴成長領域と滴下タイミングとが把握できる。
【0132】
また、点滴筒電極11は、点滴筒102の周方向に断続的に複数取り付けるようにしてもよい。上流側電極10についても同様である。
【0133】
また、点滴筒電極11を点滴筒102から取り外しできるようにしてもよい。また、上流側電極10を上流側導管104から取り外しできるようにしてもよい。
【0134】
また、点滴筒電極11の外面には、ノイズ侵入防止用の絶縁コーティングを施してもよい。
【0135】
また、本発明の監視装置1は、輸液ポンプに組み込むこともできる。すなわち、監視装置1により滴下速度を監視してポンプの流量をコントロールしたり、異常時にポンプを停止するなどの機能を実現できる。
【0136】
また、監視装置1に通信機器を接続し、異常を検出したときには、例えばナースステーションに設置してある看護師用端末に異常が起こった旨と、異常の種類を送信するように構成してもよい。また、輸液の状態を端末に常に送信し、端末側で輸液の状態をモニターできるようにすることも可能である。この場合、輸液の状態を記憶装置に記憶させておくのが好ましい。
【0137】
また、本監視装置1では、液滴の生成状態を電圧の変化として検出できるので、例えば、薬液の流量の変化を細かく得ることも可能である。これにより、例えば、薬液が血管に注入されずに皮下もれを起こした場合に、薬液の流量の変化によってそのことを検出できる。
【0138】
また、上流側電極10と点滴筒電極11との距離は近い方が好ましい。上流側電極10と点滴筒電極11とが離れると、図6における薬液の抵抗R2の値が大きくなり、コンデンサC2の変化を検出するのが困難になるからである。
【0139】
(実施形態2)
図31及び図32は、本発明の実施形態2にかかる監視装置1の使用状態を説明する図である。この実施形態2の監視装置1は、電極の構造が実施形態1のものとは異なるだけで他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分を詳細に説明する。
【0140】
実施形態2の上流側電極10は、上流側導管104を径方向に挟むように形成されており、上流側導管104に対し着脱可能となっている。また、点滴筒電極11は、点滴筒102を径方向に挟むように形成されており、点滴筒102に対し着脱可能となっている。さらに、下流側電極9は流出管部112を径方向に挟むように形成されており、流出管部112に対し着脱可能となっている。
【0141】
また、点滴筒102の筒体110には、点滴筒電極11が嵌る凹部110a,110aが形成されている。凹部110aに点滴筒電極11を嵌めることで、点滴筒電極11と仮想電極Aとを近づけることができるとともに、点滴筒電極11の位置ずれを防止することができる。
【0142】
また、図32に示すように、上流側電極10、点滴筒電極11及び下流側電極9は、本体部12に固定されている。従って、上流側電極10、点滴筒電極11及び下流側電極9は、本体部12を介した状態で一体化している。
【0143】
監視装置1を輸液セット100に取り付ける場合には、上流側電極10で上流側導管104を挟み、点滴筒電極11で点滴筒102の筒体110を挟み、さらに、下流側電極9で流出管部112を挟む。これにより、実施形態1と同様にフリーフローの発生を検出できるとともに、輸液の状況を得ることができる。そして、輸液が終了したら、上流側電極10を上流側導管104から外し、点滴筒電極11を筒体110から外し、さらに、下流側電極9を流出管部112から外す。
【0144】
以上説明したように、この実施形態2にかかる監視装置1によれば、実施形態1と同様な作用効果を奏することができる。
【0145】
また、上流側電極10、点滴筒電極11及び下流側電極9を着脱可能にしているので、上流側電極10、点滴筒電極11及び下流側電極9を再使用することができる。
【0146】
また、上流側電極10、点滴筒電極11及び下流側電極9を一体化して一度に着脱できるので、着脱時の作業性を良好にできる。
【0147】
また、上流側電極10と点滴筒電極11との距離、及び、上流側電極10と下流側電極9との距離をそれぞれ調整できるようにしてもよい。また、点滴筒電極11の二股部分の間隔を調整できるようにしてもよい。さらに、上流側電極10の二股部分の間隔を調整できるようにしてもよい。
【0148】
尚、上記実施形態では、上流側導管104に上流側電極10を取り付けるようにしているが、これに限らず、例えば、輸液バッグ120に上流側電極10を取り付けてもよい。
【0149】
また、上記実施形態では、輸液治療時に監視装置1を用いた場合について説明したが、これに限らず、例えば、輸血時や、経腸栄養剤の投与時などにも用いることができる。
【0150】
また、上記実施形態では、本体部12に警報器30及び電動クランプ31を接続しているが、これに限らず、いずれか一方のみ接続してもよい。
【0151】
また、監視装置1の点滴筒電極10が取り付けられる点滴筒102の構造は上記した構造に限られるものではなく、例えば、図示しないが、一体成形品の点滴筒に点滴筒電極10を取り付けるようにしてもよい。
【0152】
また、上流側電極10、点滴筒電極11及び下流側電極9と本体部12とをコネクタ等の接続手段によって着脱可能に接続して、輸液終了後に本体部12から上流側電極10、点滴筒電極11及び下流側電極9を外して本体部12のみ再使用できるようにしてもよい。
【0153】
また、上記実施形態1、2では、本発明の上流側フリーフロー検出電極及び上流側液滴生成状態検出電極を、共通の上流側電極10で構成しているが、これに限らず、例えば、上流側フリーフロー検出電極と、上流側液滴生成状態検出電極とを別に設けてもよい。
【0154】
また、下流側電極9は、下流側導管105に取り付けるようにしてもよいし、筒体110の液滴生成部18よりも下側部分の液貯留部119に取り付けるようにしてもよい。
【0155】
また、上記実施形態1、2では、点滴筒電極11を設けて液滴の生成状態を得るようにしているが、これに限らず、点滴筒電極11及び液滴生成信号処理部14を省略して、フリーフローの発生の有無のみを検出するように構成してもよい。フリーフローの有無のみを検出する場合、仮想電極Aの生成を考慮する必要がないので、下流側電極9に電圧を印加し、上流側電極10の電圧の変化を検出するようにすることも可能である。
【0156】
また、上記監視装置1によれば、液滴の生成状態に基づいて、どの程度の大きさの液滴が所定時間内に何回滴下しているかが分かるので、これを利用して薬剤の投与量及び投与速度を得ることが可能である。薬剤の投与量及び投与速度が得られると、投与終了予定時間(時刻)が得られる。これを端末装置に表示させることが可能になる。
【0157】
また、監視装置1と電子カルテシステムとを連動させるようにしてもよい。すなわち、電子カルテシステムでは、患者への薬剤の種類や投与量、投与速度が入力されている。これと監視装置1の監視結果とを比較して適正範囲内にあるか否かを判別することで、より一層安全な医療システムを構築できる。この場合、監視装置1と電子カルテシステムとは様々な通信形態で接続することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0158】
以上説明したように、本発明にかかる監視装置は、例えば、輸液、輸血、経腸栄養剤の投与等の場合に使用できる。
【符号の説明】
【0159】
1 監視装置
9 下流側電極(下流側フリーフロー検出電極)
10 上流側電極(上流側フリーフロー検出電極、上流側液滴生成状態検出電極)
11 点滴筒電極(下流側液滴生成状態検出電極)
12 本体部
13 マイクロコンピュータ(検出部)
14 液滴生成信号処理部
15 フリーフロー信号処理部
100 輸液セット
104 上流側導管
105 下流側導管
110 点滴筒
118 液滴生成部
120 輸液バッグ(容器)
A 仮想電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内の液体を、導管及び点滴筒を介して患者に投与する際に、該容器内の液体が連続的に自然落下するフリーフローの発生状況を監視するように構成された監視装置において、
上記点滴筒よりも上流側の導管ないし容器に取り付けられる上流側フリーフロー検出電極と、
上記点滴筒よりも下流側の導管ないし該点滴筒における液滴が生成される液滴生成部よりも下流側の液貯留部に取り付けられる下流側フリーフロー検出電極と、
上記上流側フリーフロー検出電極及び上記下流側フリーフロー検出電極の一方の電極に電圧を印加し、他方の電極電圧の変化を検出する検出部とを備え、
上記検出部は、検出した電圧の変化に基づいて、フリーフローが発生したか否かを得るように構成されていることを特徴とする監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の監視装置において、
下流側フリーフロー検出電極は、点滴筒よりも下流側の導管に取り付けられることを特徴とする監視装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の監視装置において、
点滴筒における液滴生成部に取り付けられる下流側液滴生成状態検出電極と、
点滴筒よりも上流側の導管ないし容器に取り付けられる上流側液滴生成状態検出電極とを備え、
検出部は、上記上流側液滴生成状態検出電極に電圧を印加することで上記液滴生成部で生成される液滴を仮想電極とし、上記下流側液滴生成状態検出電極の電圧の変化を検出し、検出した電圧の変化に基づいて、液滴の生成状態及び/又は液切れであるか否かを得るように構成されていることを特徴とする監視装置。
【請求項4】
請求項3に記載の監視装置において、
上流側液滴生成状態検出電極と上流側フリーフロー検出電極とは共通の電極で構成されていることを特徴とする監視装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の監視装置において、
検出部は、上流側フリーフロー検出電極に電圧を印加することを特徴とする監視装置。
【請求項6】
容器内の液体を、導管及び点滴筒を介して患者に投与する際に、該容器内の液体が連続的に自然落下するフリーフローの発生状況を監視する監視方法において、
上記点滴筒よりも上流側の導管ないし容器に取り付けられる上流側フリーフロー検出電極と、上記点滴筒よりも下流側の導管ないし該点滴筒における液滴が生成される液滴生成部よりも下流側の液貯留部に取り付けられる下流側フリーフロー検出電極との一方の電極に電圧を印加し、他方の電極の電圧の変化に基づいて、フリーフローが発生したか否かを得ることを特徴とする監視方法。
【請求項1】
容器内の液体を、導管及び点滴筒を介して患者に投与する際に、該容器内の液体が連続的に自然落下するフリーフローの発生状況を監視するように構成された監視装置において、
上記点滴筒よりも上流側の導管ないし容器に取り付けられる上流側フリーフロー検出電極と、
上記点滴筒よりも下流側の導管ないし該点滴筒における液滴が生成される液滴生成部よりも下流側の液貯留部に取り付けられる下流側フリーフロー検出電極と、
上記上流側フリーフロー検出電極及び上記下流側フリーフロー検出電極の一方の電極に電圧を印加し、他方の電極電圧の変化を検出する検出部とを備え、
上記検出部は、検出した電圧の変化に基づいて、フリーフローが発生したか否かを得るように構成されていることを特徴とする監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の監視装置において、
下流側フリーフロー検出電極は、点滴筒よりも下流側の導管に取り付けられることを特徴とする監視装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の監視装置において、
点滴筒における液滴生成部に取り付けられる下流側液滴生成状態検出電極と、
点滴筒よりも上流側の導管ないし容器に取り付けられる上流側液滴生成状態検出電極とを備え、
検出部は、上記上流側液滴生成状態検出電極に電圧を印加することで上記液滴生成部で生成される液滴を仮想電極とし、上記下流側液滴生成状態検出電極の電圧の変化を検出し、検出した電圧の変化に基づいて、液滴の生成状態及び/又は液切れであるか否かを得るように構成されていることを特徴とする監視装置。
【請求項4】
請求項3に記載の監視装置において、
上流側液滴生成状態検出電極と上流側フリーフロー検出電極とは共通の電極で構成されていることを特徴とする監視装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の監視装置において、
検出部は、上流側フリーフロー検出電極に電圧を印加することを特徴とする監視装置。
【請求項6】
容器内の液体を、導管及び点滴筒を介して患者に投与する際に、該容器内の液体が連続的に自然落下するフリーフローの発生状況を監視する監視方法において、
上記点滴筒よりも上流側の導管ないし容器に取り付けられる上流側フリーフロー検出電極と、上記点滴筒よりも下流側の導管ないし該点滴筒における液滴が生成される液滴生成部よりも下流側の液貯留部に取り付けられる下流側フリーフロー検出電極との一方の電極に電圧を印加し、他方の電極の電圧の変化に基づいて、フリーフローが発生したか否かを得ることを特徴とする監視方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2】
【図3】
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【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公開番号】特開2011−115557(P2011−115557A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192722(P2010−192722)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【出願人】(595115592)学校法人鶴学園 (39)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【出願人】(595115592)学校法人鶴学園 (39)
【Fターム(参考)】
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