説明

監視装置

【課題】 広い海域を航行する船の位置を特定し、それが不審船であるか否かの情報を収集するため航空機を、他の支援手段に依らず速やかに現場へ向かわせることのできる監視装置を得る。
【解決手段】 各衛星2−1、2−2、2−3を用いて、船1からのレーダ波を航空機7へ中継する。また、各衛星2−1、2−2、2−3は自機の位置を航空機7へ伝える。航空機7に搭載した信号処理装置11は自機の位置と、衛星2−1、2−2、2−3の位置と中継されたレーダ波の着信時刻の差を用いて、発信源の位置を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、広い海域における船の出現を検出し、その検出した船の位置を特定するための監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の艦船ないしは航空機に搭載され、船からのレーダ波を検出し、レーダ波の到来方向から船の存在する方位を探知する方位探知装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−146349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の方位探知装置は、レーダ波の発信源(以下「発信源」と呼ぶ)の方位を探知する。発信源の位置を知るためには複数組の方位探知装置を配置し、かつ各組の方位探知装置が探知した方位の交差する点から発信源の位置を求める処理を行う。これは、予め限られた海域内に船が存在する場合を想定した処理であるが、より広い海域における船の出現を監視するためには、方位探知装置を広い海域に隈なく配置する必要がある。このため、方位探知装置を搭載した艦船または航空機を広範囲に多数配備しなければならず、その運用形態が複雑化し、例えば常時交替で複数組の艦船または航空機が海域に出動する運用が必要となるという問題があった。
【0005】
また、発信源が不審船であるか否かの情報を収集するためには、発信源の現場へ向かう航空機を別途用意し、かつこの航空機へ発信源の位置を伝えて、航空機上で不審船であるか否かを判別する手段が必要となるという問題があった。
【0006】
この発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであって、広い海域における船の出現を監視し、出現した船の位置を特定する監視装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による監視装置は、船から発信されるレーダ波を中継して送信する中継機と、自己位置を計測するGPS受信機と、上記GPS受信機により計測された自己の位置情報を送信する送信機と、をそれぞれ具備した3つ以上の衛星と、
上記各衛星により中継されたレーダ波をそれぞれ受信し、それぞれが受信したレーダ波の着信時刻を求めるとともに、各衛星から送信される位置情報を受信する受信機と、自己の位置を計測するGPS受信機と、上記各衛星が中継したレーダ波毎の着信時刻の時間差を求め、当該求めた時間差、上記GPS受信機により得られた自己の位置、および上記各衛星の位置情報を用いて、レーダ波を発信する船の位置を特定する信号処理装置と、を具備した航空機と、
を備えたものである。
【0008】
また、自己位置を計測するGPS受信機と、船から発信されるレーダ波を受信し、受信したレーダ波の着信時刻を記録するとともに、GPS受信機の計測した自己位置を記録する信号処理装置と、上記信号処理装置の記録情報を送信する送信機と、をそれぞれ具備した3つ以上の衛星と、
上記各衛星から送信される記録情報をそれぞれ受信する受信機と、上記受信機の受信した各衛星からの記録情報にそれぞれ含まれる船から発信されたレーダ波の着信時刻に基づいて上記各衛星におけるレーダ波毎の着信時刻の時間差を求め、当該求めた時間差、および上記各衛星からの記録情報にそれぞれ含まれる各衛星の位置情報を用いて、レーダ波を発信する船の位置を特定する信号処理装置と、を具備した航空機と、
を備えたものであってもよい。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、航空機よりも高い高度を飛行する衛星を用いることにより、より広範囲に信号源の発するレーダ波を検出して、その位置情報を収集することができる。
【0010】
また、不審船か否かの情報を収集する航空機の機上にて発信源の位置を特定できるため、発信源の位置特定を専用に行う別の装置の支援無しに、発信源の位置へ速やかに移動して、不審船の判別のための情報を収集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1による監視装置の配置形態を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1による監視装置のブロック図である。
【図3】従来の方位探知装置を用いて発信源の位置を特定しようとする場合の艦船の配置を示す比較図である。
【図4】この発明の実施の形態2による監視装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1はこの発明に係る実施の形態1による不審船を監視する監視装置の配置形態を示す図である。図2は、実施の形態1による監視装置の構成を示すブロック図である。図1において、船1はレーダ装置(図示せず)を搭載し、搭載するレーダ装置からレーダ波を出している。ここでは、船1は不審船の可能性があるものと想定する。船1は監視対象とすべき広範囲の海域内に入り込んでいる。3つの衛星2−1、衛星2−2、衛星2−3は、それぞれ監視対象とすべき広範囲の海域の上空を飛しょうしている。航空機7は、監視対象とすべき広範囲の海域の上空を飛行している。
なお、衛星2は図1に示す3つに限るものではなく、監視対象とすべき広範囲の海域の上空を通過する衛星軌道上に、4つ以上配置されていてもよい。
【0013】
船1から出たレーダ波は、その付近の上空を飛ぶ各衛星2−1、2−2、2−3に到達する。その時、船1から各衛星2−1、2−2、2−3までの間に、それぞれ空中線3−1、3−2、3−3が形成される。この各空中線3−1、3−2、3−3は、船1と各衛星2−1、2−2、2−3との位置関係に依存した経路長を持ち、船1からのレーダ波を受信する。
【0014】
また、図2において、各衛星2−1、2−2、2−3は、それぞれにレーダ波を中継できる各中継機4−1、4−2、4−3と、各GPS受信機5−1、5−2、5−3と、各送信機6−1、6−2、6−3を備えている。各GPS受信機5−1、5−2、5−3は、それぞれ自機の位置を特定して、各衛星2−1、2−2、2−3の位置の情報を得る。各送信機6−1、6−2、6−3は、各GPS受信機5−1、5−2、5−3で得た各衛星の位置の情報を伝送する。各衛星2−1、2−2、2−3は、不審船から発せられたレーダ波を、それぞれ各中継機4−1、4−2、4−3を介して航空機7へ中継する。また、各衛星2−1、2−2、2−3は、各GPS受信機5−1、5−2、5−3で得られた自機の位置の情報を、それぞれ各送信機6−1、6−2、6−3を介して航空機7に伝送する。
【0015】
航空機7は、船を目視観測する搭乗員ないしはカメラ20を乗せている。航空機7は、受信機9と、自機の位置を特定できるGPS受信機10と、信号処理装置11を備えている。これにより、各衛星2−1、2−2、2−3から航空機7までの間に、それぞれ空中線8−1、8−2、8−3が形成され、その経路長は各衛星2−1、2−2、2−3と航空機7とのそれぞれの位置関係に依存して決まる。受信機9は、各空中線8−1、8−2、8−3を介して、各衛星2−1、2−2、2−3からそれぞれ衛星の位置の情報を受信する。
【0016】
また、受信機9は、各空中線8−1、8−2、8−3を介して、不審船から発せられ各中継機4−1、4−2、4−3にて中継されたレーダ波を受信する。受信機9は、各衛星2−1、2−2、2−3の位置の情報を信号処理装置11に入力する。受信機9は、各中継機4−1、4−2、4−3を介して中継されたレーダ波を受信し、その受信時刻を計測して、計測した受信時刻をレーダ波の着信時刻として信号処理装置11に入力する。また、GPS受信機10により得られた自機の位置の情報は、信号処理装置11に入力される。信号処理装置11は、各衛星2−1、2−2、2−3のレーダ波の着信時刻と、各衛星2−1、2−2、2−3の位置の情報と、自機の位置の情報とを用いて、レーダ波の発信源の位置を特定する。搭乗員は、特定された発信源の位置情報に基づいて、該当位置に存在する船を目視によって観察するかもしくはカメラ20によって撮影する。この船の観察または撮影された情報に基づいて、該当する船が不審船であるか否かを判断することが可能となる。
【0017】
実施の形態1による監視装置は以上のように構成され、次のように動作する。
船1から発信されたレーダ波は航空機7へ至るまでに、船1から衛星2−1までの空中線3−1と衛星2−1から航空機7までの空中線8−1、船1から衛星2−2までの空中線3−2と衛星2−2から航空機7までの空中線8−2、及び船1から衛星2−3までの空中線3−3と衛星2−3から航空機7までの空中線8−3からなる、レーダ波の伝播経路(空中線)がそれぞれ形成される。
【0018】
これら空中線の経路長の違いによって、航空機7へのレーダ波の着信時刻に差異を生じる。このとき、各衛星2−1、2−2、2−3の位置と航空機7の位置は、GPSを用いて既知であることから、空中線8−1、8−2、8−3の経路長も既知である。例えば、各衛星2−1、2−2、2−3のそれぞれの位置座標と航空機7の位置座標から座標間の距離を幾何学的に演算することで、空中線8−1、8−2、8−3の経路長をそれぞれ求めることができる。
【0019】
また、空中線を伝播するレーダ波の速さを光速とみなすことで、航空機7に搭載した信号処理装置11では、レーダ波が着信した時刻から時間的に遡って、各衛星2−1、2−2、2−3における着信時刻を知ることができる。例えば、各空中線8−1、8−2、8−3の経路長を光速で除算した値を、レーダ波が着信した各時刻から差し引くことで、各衛星2−1、2−2、2−3における着信時刻を求めることができる。
【0020】
この着信時刻は差異を持つが、その差異は船1から各衛星2−1、2−2、2−3までの各空中線3−1、3−2、3−3の経路長の違いによるものである。各衛星2−1、2−2、2−3の位置が既知であることから、信号処理装置11は経路長の違いに対応した船1の位置を、三角測量の原理を用いて特定することができる。信号処理装置11によって特定された船の位置は、搭乗員またはカメラ20に伝達される。
【0021】
例えば、船1の未知の位置座標を(x、y、z)、各衛星2−1、2−2、2−3のそれぞれの位置座標を(x、y、z)、(x、y、z)、(x、y、z)、各衛星2−1、2−2、2−3のそれぞれの着信時刻をt、t、tとする。このとき、総当りによる着信時刻t、t、tの時刻差t−t、t−t、t−tに光速cを乗算して得られる距離差について、それぞれ船1の未知の位置座標と各衛星2−1、2−2、2−3のそれぞれの位置座標とを用いた、例えば数1に示すような連立方程式を立てる。この連立方程式を解くことで、船1の位置座標を求めることができる。
【0022】
【数1】

【0023】
このように実施の形態1による監視装置は、衛星を用いて広い海域の発信源からレーダ波を受信し、衛星からの情報を基に、目視観測を行う搭乗員ないしはカメラを乗せた航空機の機上にて、レーダ波の信号源の位置を特定する。これにより、信号源の位置から船の位置を特定することで、特定した位置に存在する不審船の判別のための情報収集を速やかに連携して実施することが可能となる。
【0024】
図3は、従来の方位探知装置を用いて発信源の位置を特定する場合の同装置の配置を示す比較図である。図3において、方位探知装置1と方位探知装置2がそれぞれ2隻の艦船を用いて、発信源の方位14−1と方位14−2を得る。従来の技術では、このように複数の方位探知装置を配置し、かつそれぞれの方位探知装置が探知した方位が交差する点から発信源の位置を特定するための別途の装置が必要であった。
【0025】
これに対し、実施の形態1による不審船の監視装置では、別途の装置を用いずに発信源の位置を直接求めることが出来る。さらに、目視観測する搭乗員ないしはカメラを乗せた航空機にて発信源の位置を把握できるため、他からの支援無しに自己の航空機によって速やかに現場へ向かい、不審船か否かの判断材料となる情報を収集することが可能となる。
【0026】
実施の形態2.
上記実施の形態1は、各衛星2−1、2−2、2−3にて、船1からのレーダ波を航空機7へ中継する形態としたが、各衛星におけるレーダ波の着信時刻を航空機7へ伝えることが出来れば、中継機を用いずともよい。この実施の形態2による不審船を監視する監視装置は、各衛星2−1、2−2、2−3が、レーダ波を受信しかつその着信時刻を記録する信号処理装置12−1、12−2、12−3を、それぞれ搭載したことを特徴とする。
【0027】
図4は、実施の形態2による監視装置の構成を示すブロック図である。図4において、各衛星2−1、2−2、2−3は、図2における中継機4−1、4−2、4−3の代わりに、信号処理装置12−1、12−2、12−3を具備している。GPS受信機5−1、5−2、5−3の出力する自機の位置情報は、信号処理装置12−1、12−2、12−3に入力される。また、信号処理装置12−1、12−2、12−3の出力する記録情報は、送信機6−1、6−2、6−3に入力される。
【0028】
空中線3−1、3−2、3−3におけるレーダ波の着信時刻は、信号処理装置12−1、12−2、12−3にそれぞれ記録される。信号処理装置12−1、12−2、12−3にそれぞれ記録されたレーダ波の着信時刻の記録内容と、GPS受信機5−1、5−2、5−3にて取得した自機の位置の情報は、送信機6−1、6−2、6−3から航空機7へ伝送される。
【0029】
航空機7に搭載された信号処理装置11は、送信機6−1、6−2、6−3から伝送される信号処理装置12−1、12−2、12−3の記録内容と、GPS受信機5−1、5−2、5−3にて取得した自機の位置の情報とを受信する。信号処理装置11は、この受信情報から、空中線3−1、3−2、3−3におけるレーダ波の各衛星2−1、2−2、2−3への着信時刻と、各衛星2−1、2−2、2−3の位置とがわかるので、実施の形態1と同様にして、三角測量の原理にて船1の位置を特定することができる。これによって、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、自機の位置の情報と特定したレーダ波を発信する船の位置の情報を利用して、航空機7を船の所在する位置の上空に迅速に移動させることが可能となる。
【0030】
なお、実施の形態1、2による不審船の監視装置は、検出するレーダ波を救難信号に置き換えることで、救難活動に利用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0031】
1 船、2−1,2−2,2−3 衛星、3−1,3−2,3−3 空中線、4−1,4−2,4−3 中継機、5−1,5−2,5−3 GPS受信機、6−1,6−2,6−3 送信機、7 航空機、8−1,8−2,8−3 空中線、9 受信機、10 GPS受信機、11 信号処理装置、12−1,12−2,12−3 信号処理装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船から発信されるレーダ波を中継して送信する中継機と、
自己位置を計測するGPS受信機と、
上記GPS受信機により計測された自己の位置情報を送信する送信機と、
をそれぞれ具備した3つ以上の衛星と、
上記各衛星により中継されたレーダ波をそれぞれ受信し、それぞれが受信したレーダ波の着信時刻を求めるとともに、各衛星から送信される位置情報を受信する受信機と、
自己の位置を計測するGPS受信機と、
上記各衛星が中継したレーダ波毎の着信時刻の時間差を求め、当該求めた時間差、上記GPS受信機により得られた自己の位置、および上記各衛星の位置情報を用いて、レーダ波を発信する船の位置を特定する信号処理装置と、
を具備した航空機と、
を備えたことを特徴とする監視装置。
【請求項2】
自己位置を計測するGPS受信機と、
船から発信されるレーダ波を受信し、受信したレーダ波の着信時刻を記録するとともに、GPS受信機の計測した自己位置を記録する信号処理装置と、
上記信号処理装置の記録情報を送信する送信機と、
をそれぞれ具備した3つ以上の衛星と、
上記各衛星から送信される記録情報をそれぞれ受信する受信機と、
上記受信機の受信した各衛星からの記録情報にそれぞれ含まれる船から発信されたレーダ波の着信時刻に基づいて上記各衛星におけるレーダ波毎の着信時刻の時間差を求め、当該求めた時間差、および上記各衛星からの記録情報にそれぞれ含まれる各衛星の位置情報を用いて、レーダ波を発信する船の位置を特定する信号処理装置と、
を具備した航空機と、
を備えたことを特徴とする監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−207957(P2012−207957A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72334(P2011−72334)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】