説明

目地形成方法

【課題】本発明は、目地を含む化粧面において、特に汚染物質がたまりやすい目地下縁部の汚染を表面から見えなくするとともに、目地下縁部に汚染物質が付着したとしても、その汚染物質が目地方向に洗い流されやすくすることによって、化粧面の美観性を長期に渡り維持することができる目地形成方法を提供する。
【解決手段】本発明の目地形成方法は、装飾塗材を用いて、目地構造を有する化粧面を仕上げる際に、水平方向の目地下縁部の傾斜角を鈍角にする工程、形成塗膜の水に対する接触角が70度以下である上塗材を、少なくとも該目地下縁部に塗付する工程、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧面の目地形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、美観性をほどこした壁面等への関心が高まる中、天然石調、陶磁器タイル調、レンガ調等の美観性を施した化粧面が広く採用されている。
このような化粧面を得る方法としては、例えば、目地材を被塗面に貼り付けた上から、仕上塗材を塗付した後、目地材を除去して、天然石調、陶磁器タイル調、レンガ調等の模様を施す方法がある(例えば、特許文献1等)。
このような目地を含む化粧面を得る方法では、天然石やタイル、レンガ等を一枚一枚貼着する場合に比べて、工期が大幅に短縮され、コストも大幅に削減できる上、天然石、陶磁器タイル、レンガ等とほぼ同等の美観性を表出することができる。
【0003】
【特許文献1】特開平10−266517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般に、目地を含む化粧面においては、目地部に汚染物質がたまりやすく、美観性を損なう場合がある。また、たまった汚染物質は降雨等により、壁面に広がる恐れがあり、雨筋汚染などが生じてしまう場合がある。
特に水平方向となる目地部においては、このような現象が生じやすく、壁面の美観性に悪影響を与えるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記の問題点に鑑み、鋭意検討を行なった結果、水平方向となる目地部の目地下縁部の傾斜角を鈍角にし、さらに、表面の水に対する接触角を70度以下とすることで、汚染物質がたまりやすい目地下縁部の汚染を表面から見えなくするとともに、目地下縁部に汚染物質が付着したとしても、その汚染物質が目地方向に洗い流されやすくすることによって、化粧表面の美観性を維持する方法に想到し、本発明を完成させるに到った。
【0006】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.装飾塗材を用いて、目地構造を有する化粧面を仕上げるに際し、
水平方向の目地下縁部の傾斜角を鈍角にする工程、
形成塗膜の水に対する接触角が70度以下である上塗材を、少なくとも該目地下縁部に塗付する工程、を含むことを特徴とする化粧面の目地形成方法。
2.装飾塗材を用いて、目地構造を有する化粧面を仕上げるに際し、
該装飾塗材として形成塗膜の水に対する接触角が70度以下である塗材を使用し、かつ、水平方向の目地下縁部の傾斜角を鈍角にする工程を含むことを特徴とする化粧面の目地形成方法。
3.(1)基材に対し、下塗材を塗付する工程、
(2)脱着可能な目地形成材を貼り付ける工程、
(3)装飾塗材を塗付する工程、
(4)該装飾塗材が未硬化、または硬化した状態で、目地形成材を取り外し、該目地部の水平方向の目地下縁部の傾斜角が鈍角となるように処理する工程、
(5)形成塗膜の水に対する接触角が70度以下である上塗材を、少なくとも該目地下縁部に塗付する工程、を含むことを特徴とする化粧面の目地形成方法。
4.(1)基材に対し、下塗材を塗付する工程、
(2)脱着可能な目地形成材を貼り付ける工程、
(3´)形成塗膜の水に対する接触角が70度以下である装飾塗材を塗付する工程、
(4)該装飾塗材が未硬化、または硬化した状態で、目地形成材を取り外し、該目地部の水平方向の目地下縁部の傾斜角が鈍角となるように処理する工程、を含むことを特徴とする化粧面の目地形成方法。
5.(1)基材に対し、下塗材を塗付する工程、
(2)装飾塗材を塗付する工程、
(3)該装飾塗材が未硬化状態のうちに、スタンプ式目地形成具を用いて目地を形成し、該目地部の水平方向の目地下縁部の傾斜角が鈍角となるように処理する工程、
(4)形成塗膜の水に対する接触角が70度以下である上塗材を、少なくとも該目地下縁部に塗付する工程、を含むことを特徴とする化粧面の目地形成方法。
6.(1)基材に対し、下塗材を塗付する工程、
(2´)形成塗膜の水に対する接触角が70度以下である装飾塗材を塗付する工程、
(3)該装飾塗材が未硬化状態のうちに、スタンプ式目地形成具を用いて目地を形成し、該目地部の水平方向の目地下縁部の傾斜角が鈍角となるように処理する工程、を含むことを特徴とする化粧面の目地形成方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の目地形成方法によれば、汚染物質がたまりやすい目地下縁部の汚染を表面から見えなくするとともに、目地下縁部に汚染物質が付着したとしても、その汚染物質が目地方向に洗い流されやすくすることによって、化粧表面の美観性を長期に亘り維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0009】
本発明の目地形成方法は、目地構造を有する化粧面において、特に、汚染物質のたまりやすい水平方向の目地下縁部の傾斜角を鈍角にすること、かつ、少なくとも該目地下縁部の水に対する接触角を70度以下(好ましくは、60度以下、さらに好ましくは45度以下)にすることを特徴とするものである。
本発明では、上述の方法で仕上げることで、汚染物質がたまりやすい目地下縁部の汚染を表面から見えなくするとともに、目地下縁部に汚染物質が付着したとしても、その汚染物質が目地方向に洗い流されやすくすることによって、化粧面の美観性を長期に亘り維持することができる。
【0010】
なお、接触角は、CA−A型接触角測定装置(協和界面科学株式会社製)にて測定(測定温度23度)した値である。
【0011】
具体的に、水平方向の目地下縁部とは、図1に示すように、化粧面の水平方向(傾き20°以内)に形成された目地において、目地部と装飾塗材部との下方部の境界付近のことである。
さらに、水平方向の目地下縁部の傾斜角(θ)とは、図2に示すように、目地下縁部の装飾塗材部断面(装飾塗材傾斜部断面)の角度のことである。
【0012】
本発明では、水平方向の目地下縁部の傾斜角(θ)を、90°超(好ましくは、110°以上、さらに好ましくは、130°以上)とすることが好ましい。このように、水平方向の目地下縁部の傾斜角(θ)を鈍角とすることによって、目地下縁部に汚染物質を表面からみえなくすることができる。
【0013】
本発明においては、水平方向の目地下縁部の傾斜角(θ)は、鈍角であれば特に限定されず、例えば、図3(a)〜(g)に示すような傾斜角(θ)が、本発明に包含される。
目地部と装飾塗材部との傾斜角(θ)が微視的に90°以下であっても、巨視的に傾斜角(θ)が鈍角とみなすことができれば、本発明に包含される。このような条件としては、90°以下となる装飾塗材部の厚さが0.3mm以下(好ましくは0.2mm以下、さらに好ましくは0.1mm以下)となる場合である。
例えば、図3(c)、図3(d)では、目地部と装飾塗材部との傾斜角(θ)が微視的に90°である部分が存在するが、90°となる装飾塗材部の厚さが0.3mm以下となる場合、巨視的に傾斜角(θ)は鈍角とみなすことができる。このような場合、90°以下となる装飾塗材部の厚さは無視できるものと考え、目地下縁部の傾斜角(θ)は、図3(c)、図3(d)に示すように測定すればよい。
【0014】
一方、水平方向の目地上縁部の傾斜角(θ)は、特に限定されることはなく、鋭角であっても、直角であっても、鈍角であってもよい。
【0015】
本発明の目地の断面図の一例を、図4(a)〜(g)に示す。なお、本発明の目地断面図は、図4に限られるものではない。
目地断面の形状は、図4のように、目地上縁部、下縁部の形状と組み合わせて、適宜設定することができる。
【0016】
さらに本発明は、少なくとも目地下縁部の水に対する接触角を70度以下(好ましくは、60度以下、より好ましくは45度以下、さらに好ましくは30度以下)とすることを特徴とするものである。
水に対する接触角が70度以下であることにより、該表面は、親水性が高くなり、目地にたまりやすい汚染物質を降雨等により、目地方向に洗い流すことができる。そのため、化粧面の美観性を長期に亘り維持することができる。
【0017】
したがって、本発明では、上述したように、水平方向の目地下縁部の傾斜角を鈍角とし、化粧表面の水に対する接触角が70度以下とすることにより、目地下縁部にたまった汚染物質を表面から見えなくするとともに、該汚染物質が降雨等により目地方向に洗い流され、雨筋汚染が生じにくく、化粧面の美観性を長期に亘り維持することができる。
【0018】
本発明の目地形成方法は、主に、水平方向の目地に対して適用できるものであるが、垂直方向の目地、斜め方向の目地、湾曲した目地等にも適用可能である。
このような目地形成方法では、目地を連続的につなぎ合わせることによって、汚染物質が化粧面外へ洗い流されやすい構造となり、好ましい。特に、垂直方向の目地、斜め方向の目地を組み合わせることによって、よりいっそう目地方向に汚染物質が洗い流されやすい構造となる。
【0019】
本発明の目地形成方法として、具体的な例を次に示す。ただし、本発明の目地形成方法は次の工法に限定されるものではない。
【0020】
(い)
(1)基材に対し、下塗材を塗付する工程、
(2)脱着可能な目地形成材を貼り付ける工程、
(3)装飾塗材を塗付する工程、
(4)該装飾塗材が未硬化、または硬化した状態で、目地形成材を取り外し、該目地部の水平方向の目地下縁部の傾斜角が鈍角となるように処理する工程、
(5)形成塗膜の水に対する接触角が70度以下である上塗材を、少なくとも該目地下縁部に塗付する工程、
を含むことを特徴とする化粧面の目地形成方法。
【0021】
(ろ)
(1)基材に対し、下塗材を塗付する工程、
(2)脱着可能な目地形成材を貼り付ける工程、
(3´)形成塗膜の水に対する接触角が70度以下である装飾塗材を塗付する工程、
(4)該装飾塗材が未硬化、または硬化した状態で、目地形成材を取り外し、該目地部の水平方向の目地下縁部の傾斜角が鈍角となるように処理する工程、
を含むことを特徴とする化粧面の目地形成方法。
【0022】
(は)
(1)基材に対し、下塗材を塗付する工程、
(2)装飾塗材を塗付する工程、
(3)該装飾塗材が未硬化状態のうちに、スタンプ式目地形成具を用いて目地を形成し、該目地部の水平方向の目地下縁部の傾斜角が鈍角となるように処理する工程、
(4)形成塗膜の水に対する接触角が70度以下である上塗材を、少なくとも該目地下縁部に塗付する工程、
を含むことを特徴とする化粧面の目地形成方法。
【0023】
(に)
(1)基材に対し、下塗材を塗付する工程、
(2´)形成塗膜の水に対する接触角が70度以下である装飾塗材を塗付する工程、
(3)該装飾塗材が未硬化状態のうちに、スタンプ式目地形成具を用いて目地を形成し、該目地部の水平方向の目地下縁部の傾斜角が鈍角となるように処理する工程、
を含むことを特徴とする化粧面の目地形成方法。
【0024】
(い)、(ろ)の方法では、
まず(1)基材に対し、下塗材を塗付する。(図5(a)、図6(a)、図7(a)、図8(a))
【0025】
基材としては、特に限定されず、建築材料として通常使用される基材を使用すればよい。基材としては、例えば、コンクリート、モルタル、サイディングボード、押出成形板、石膏ボード、スレート板、珪酸カルシウム板、PC板、ALC板、パーライト板、合板、プラスチック板、金属板、木工板、ガラス、陶磁器タイル等の各種基材を挙げることができる。またこれら基材の表面は、何らかの表面処理(フィラー処理、サーフェーサー処理、シーラー処理等)が施されたものでもよく、既に塗膜が形成されたものであってもよい。
【0026】
下塗材としては、特に限定されないが、例えば、結合剤及び着色剤を含むもの等が挙げられる。
【0027】
結合剤としては、水溶性樹脂、水分散性樹脂、溶剤可溶形樹脂、無溶剤形樹脂、非水分散形樹脂、粉末樹脂、セメント、石膏、シリカ等の各種結合剤、あるいはこれらを複合化した結合剤等を使用することができる。このような結合剤の形態は特に限定されず、1液型、2液型のいずれであってもよい。本発明では特に、水溶性樹脂及び/または水分散性樹脂が好適に用いられる。使用可能な樹脂の種類としては、例えば、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、セルロース、ポリビニルアルコール等、あるいはこれらの複合系等を挙げることができる。
【0028】
着色剤としては、下塗材を所望の色相に着色可能なものを特に制限なく使用することができる。具体的に着色剤としては、顔料、骨材等が使用できる。
【0029】
顔料としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、酸化第二鉄(ベンガラ)、黄色酸化鉄、オーカー、群青、コバルトグリーン等の無機系着色顔料、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンゾイミダゾール系、フタロシアニン系、キノフタロン系等の有機系着色顔料、重質炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム等の体質顔料等が挙げられる。
【0030】
骨材としては、自然石、自然石の粉砕物等の天然骨材、及び着色骨材等の人工骨材から選ばれる少なくとも一種以上が使用可能である。具体的には、例えば、大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、蛍石、寒水石、長石、珪石、珪砂、及びこれらの粉砕物、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ、樹脂粉砕物、樹脂ビーズ、金属粒、植物性粉粒体等や、これらの表面を着色コーティングしたもの等が挙げられる。
これら着色剤は、結合剤の固形分100重量部に対し、通常5〜1200重量部、好ましくは50〜1000重量部の比率で混合する。
【0031】
本発明で使用する下塗材においては、上述の成分の他に、通常塗材に使用可能な成分を含むこともできる。このような成分としては、例えば、繊維、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、触媒、架橋剤等が使用可能である。
【0032】
下塗材の塗装方法としては、特に限定されず、吹付け塗装、ローラー塗装、刷毛塗り、コテ塗り等の方法を採用することができる。下塗材の塗付量は、基材を被覆できる範囲内であればよく、通常0.1〜2kg/m程度、好ましくは0.2〜1kg/m程度である。
【0033】
下塗材から形成される塗膜が目地色となる場合は、各種着色剤を選定することにより色彩を設定し、基材に塗付すればよい。このような場合、下塗材においては、耐候性、防水性等を付与することが好ましい。
また、基材自体や目地形成材自体が、目地色となる場合は、透明性を有する下塗材を基材に塗付してもよいし、下塗材を塗付する工程を省くこともできる。
【0034】
次に(2)脱着可能な目地形成材を貼り付ける。(図5(b)、図6(b)、図7(b)、図8(b))
【0035】
目地形成材を貼り付ける際には、粘着剤、接着剤等(以下「粘着剤等」ともいう)を用いて貼り付けることができる。このとき、予め目地形成材の裏面に粘着層、接着層を設けておくこともできる。なお、粘着剤等としては、通常、透明性を有するものを使用する。粘着剤等を用いる場合は、下塗材が乾燥した後に目地形成材を貼り付ければよい。
本発明では、下塗材の接着力を利用して目地形成材を貼り付けることもできる。この場合は、下塗材の乾燥前に、その表面に目地形成材を押し当てて固定化すればよい。
【0036】
目地形成材を貼り付ける位置、間隔等は、所望の目地模様に応じて決定すればよい。例えば、均等間隔に貼り付けることもできるし、ランダムに貼り付けることもできる。
目地幅は、通常0.5〜200mm程度であり、この範囲内で適宜設定することができる。目地形成材の高さは、通常0.5〜10mm程度である。
【0037】
目地形成材として細幅のもの(目地幅0.5〜1mm程度)を使用した場合は、目地を目立たなくすることができ、目地の交差部分や末端部分等において、目地の継目を目立たなくする効果を得ることができる。特に、目地色となる下塗材と装飾塗材の色相を同系色(共色)にすることにより、突き合わせ調の仕上りが得ることができる。
また、目地形成材として太幅のもの(目地幅5〜200mm程度)を使用した場合は、目地のデザインを強調することができ、目地を利用した優れた意匠性を得ることもできる。特に、目地色となる下塗材と装飾塗材の色相を同系色(共色)にすることにより、目地を利用した独特のデザインに仕上げることができる。
【0038】
本発明で用いる、脱着可能な目地形成材としては、その一部または全部が脱着可能であればよく、目地棒式目地形成材の他に、埋め込み式目地形成材等も包含される。
【0039】
目地棒式目地形成材としては、例えば、図9(a)〜(f)に示すもの等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
このような目地棒式目地形成材としては、底面及び/または上面に剥離材等を予め備えていてもよい。また、側面にも、剥離しやすいように、何らかの剥離材を備えていてもよい。
このような目地棒式目地形成材を用いた場合、下塗材から形成される塗膜または基材の色彩が目地色となる。
【0040】
埋め込み式目地形成材としては、例えば、図10(a)〜(b)に示すような、上端部に嵌合凹部が形成された目地基材と、該目地基材の嵌合凹部に嵌合される目地芯材とからなるもの等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
このような埋め込み式目地形成材では、装飾塗材を塗付した後、目地芯材を取り外して、目地を形成するもので、目地色としては、目地基材の色彩となる。
【0041】
目地棒式目地形成材、埋め込み式目地形成材の目地基材の材質としては、特に限定されないが、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、塩化ビニル樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、ポリカーボネート等のプラスチック及びゴム等を用いることができる。埋め込み式目地形成材の目地芯材の材質としては、この他に、リード線、釣り糸、針金、ピアノ線、竹等を用いることもできる。
【0042】
このような目地形成材を用いて形成される目地幅については特に限定されないが、通常0.5〜200mm程度となるように設計すればよい。なお、目地幅とは、最終的に仕上がった化粧面の目地の幅となるものである。
【0043】
次に(3)装飾塗材を塗付する。(図5(c)、図6(c)、図7(c)、図8(c))
【0044】
本発明で用いる装飾塗材としては、目的とする化粧面が得られるものであれば特に限定されることはない。
【0045】
例えば、装飾塗材としては、JIS A 6909に規定される建築用仕上塗材及びこれらの類似材料、石材調塗材、左官用の各種内外装用仕上塗材、多彩模様塗材等、またはそれらを複合したもの等が挙げられる。この中でも特に、御影石、砂岩調、インド砂岩調、大理石(トラバーチン)調、天然石調、自然石調、陶磁器タイル調、レンガ調等の模様が形成可能な装飾塗材が好適である。このような装飾塗材としては、通常、結合剤及び骨材を含有する塗材が用いられる。
【0046】
結合剤としては、水溶性樹脂、水分散性樹脂、溶剤可溶形樹脂、無溶剤形樹脂、非水分散形樹脂、粉末樹脂、セメント、石膏、シリカ等の各種結合剤、あるいはこれらを複合化した結合剤等を使用することができる。このような結合剤の形態は特に限定されず、1液型、2液型のいずれであってもよい。本発明では特に、水溶性樹脂及び/または水分散性樹脂が好適に用いられる。使用可能な樹脂の種類としては、例えば、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、セルロース、ポリビニルアルコール等、あるいはこれらの複合系等を挙げることができる。このうち、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、あるいはこれらの複合系を使用すると、塗膜の耐候性を高めることができる点で好適である。
【0047】
結合剤としては、架橋反応性を有する結合材を使用することもできる。架橋反応性を有する結合材を用いた場合は、塗膜の耐候性、密着性等を高めることができる。架橋反応性を有する結合材は、それ自体で架橋反応を生じるもの、あるいは別途混合する架橋剤によって架橋反応を生じるもののいずれであってもよい。このような架橋反応性は、例えば、カルボキシル基と金属イオン、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とアジリジン基、カルボキシル基とオキサゾリン基、水酸基とイソシアネート基、カルボニル基とヒドラジド基、エポキシ基とアミノ基、アルド基とセミカルバジド基、ケト基とセミカルバジド基、反応性シリル基どうし等の反応性官能基を組み合わせることによって付与することができる。
結合剤のガラス転移温度は適宜設定することができ、通常は−50〜50℃、好ましくは−40〜40℃、より好ましくは−30〜30℃である。
【0048】
骨材としては、自然石、自然石の粉砕物等の天然骨材、及び着色骨材等の人工骨材から選ばれる少なくとも一種以上が使用可能である。具体的には、例えば、大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、蛍石、寒水石、長石、石灰石、珪石、珪砂、砕石、雲母、珪質頁岩、及びこれらの粉砕物、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、樹脂粉砕物、樹脂ビーズ、ゴム粒、プラスチック片、金属粒、植物性粉粒体等や、これらの表面を着色コーティングしたもの等が挙げられる。また、貝殻、珊瑚、木材、炭、活性炭等の粉砕物を使用することもできる。
骨材の粒径は、通常0.01mm〜5mm、好ましくは0.05〜2mmである。
これら骨材は、結合剤の固形分100重量部に対し、通常30〜1200重量部、好ましくは100〜1000重量部の比率で混合する。
【0049】
本発明で使用する装飾塗材においては、上述の成分の他に、通常塗材に使用可能な成分を含むこともできる。このような成分としては、例えば、着色顔料、体質顔料、繊維、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、触媒、光触媒、架橋剤等が使用可能である。
【0050】
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化第二鉄(ベンガラ)、黄色酸化鉄、オーカー、群青、コバルトグリーン等の無機系着色顔料、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンゾイミダゾール系、フタロシアニン系、キノフタロン系等の有機系着色顔料、アルミニウム顔料、パール顔料、蛍光顔料等が挙げられる。
【0051】
体質顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、珪藻土、含水微粉珪酸、タルク、バライト粉、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、シリカ粉、水酸化アルミニウム等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。体質顔料の粒子径は、通常50μm未満であるが、好ましくは0.5μm以上45μm以下、より好ましくは1μm以上30μm以下である。
【0052】
なお、(ろ)の方法の場合、装飾塗材として、形成塗膜の水に対する接触角が70度以下である装飾塗材を使用する。このような装飾塗材を使用した場合、後述する形成塗膜の水に対する接触角が70度以下である上塗材を、塗付する必要はない。
形成塗膜の水に対する接触角が70度以下である装飾塗材を得る場合、例えば、後述するようなシリケート化合物、コロイダルシリカ、あるいは、公知の光触媒成分等の親水化成分を装飾塗材に添加すればよい。また、結合剤として、アクリルシリコン樹脂等の親水性の樹脂を使用することによって、形成塗膜の水に対する接触角を70度以下にすることもできる。
【0053】
装飾塗材を塗付する方法としては、特に限定されず、吹付け塗装、ローラー塗装、刷毛塗り、コテ塗り等の方法を採用することができる。装飾塗材を塗付する際には、波型模様等様々な凹凸模様を形成することが可能であるが、このような凹凸模様の凹下部の傾斜角を鈍角にし、かつ、凹下部の水に対する接触角を70度以下にすることによって、凹凸模様部における汚染も降雨等によって洗い流され、化粧面の美観性を長期に亘り維持することができる。
装飾塗材の平均膜厚としては、特に限定されないが、0.5〜15mm(好ましくは1〜12mm)程度となるように、塗付すればよい。
【0054】
次に(4)該装飾塗材が未硬化、または硬化した状態で、目地形成材を取り外し、該目地部の水平方向の目地下縁部の傾斜角が鈍角となるように処理する。
【0055】
例えば、図5では、装飾塗材が未硬化の状態で、目地形成材を取り外すことによって、目地形成材を取り外すと同時に、該目地部の水平方向の目地下縁部の傾斜角を鈍角にすることができる。
目地形成材として、上面や底面に剥離材が予め備えてある目地形成材を使用することもでき、例えば上面に剥離材が予め備えてある目地形成材(図9(b))を使用した場合、装飾塗材が未硬化の状態で、剥離材を剥離し、さらに装飾塗材が硬化してから、目地形成材を取り外すことによって、余分な装飾塗材を切り取ることができ、目地部と装飾塗材部との縁をきれいに仕上げることができる。
また、目地下縁部表面の水に対する接触角が70度以下となるように、目地形成材の側面に、接触角が70度以下となるような塗剤を付与しておいてもよい。
【0056】
また、図6のような目地形成材を使用した場合は、目地形成材を取り外す際に、目地下縁部の傾斜角が鈍角となるように押し当てて鈍角にする方法、目地形成材を取り外した後に、目地下縁部の傾斜角を鈍角にする方法等により、傾斜角を鈍角にすることができる。
目地形成材を取り外した後に、目地下縁部の傾斜角を鈍角にする方法では、目地形成材を取り外した後、ローラー、コテ、刷毛、櫛、へら等を用いて装飾塗材を押し付けたり、また硬化した装飾塗材を何らかの方法で削ることによって、傾斜角を鈍角にすることが可能である。
【0057】
また、図7のような目地形成材を使用した場合は、目地形成材を取り外す際に、まず、目地調整板により、目地下縁部の傾斜角が鈍角となるように調整し、その後、目地形成材を取り外すことによって、目地下縁部の傾斜角を鈍角にすることが可能である。
目地調整板の材質としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、塩化ビニル樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、ポリカーボネート等のプラスチック板及びゴム板等、アルミニウム、ステンレス、銅、鉄等の無機板等、合板等を用いることができる。
【0058】
さらに(い)の場合は、(5)形成塗膜の水に対する接触角が70度以下(好ましくは50°以下、さらに好ましくは30°以下)である上塗材を、少なくとも該目地下縁部に塗付する。また、(ろ)の場合においても、必要に応じて、該上塗材を塗付することができる。
【0059】
このような上塗材を、少なくとも該目地下縁部に塗付することによって、目地下縁部にたまった汚染物質を、目地方向に洗い流すことができる。
本発明では、少なくとも目地下縁部に該上塗材を塗付することによって、本発明の効果を発揮することができるが、化粧面全面に該上塗材を塗付することが好ましい。化粧面全面に塗付することによって、たとえ目地下縁部から汚染物質が流れ出たとしても、該汚染物質を降雨等により洗い流すことができ、雨筋汚染等を防止し、化粧面の美観性を長期に亘り維持することができる。また、このような場合、建築物の温度上昇を抑制することもできる。
【0060】
このような上塗材としては、例えば結合剤と、シリケート化合物、コロイダルシリカを含有するもの、及び/または、光触媒を含有するもの等が挙げられる。
シリケート化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラsec−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、モノエトキシトリメトキシシラン、モノブトキシトリメトキシシラン、モノペントキシトリメトキシシラン、モノヘトキシトリメトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、ジメトキシジブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン等、あるいはこれらの縮合物等が挙げられ、または、これらの多価アルコール変性物等が挙げられる。また、カルボキシル基、水酸基、フルオロ基、スルホン基、オキシアルキレン基等を含有するシリケート化合物を使用することもできる。このようなシリケート化合物の形態は、液状、ゾル状、ゲル状、粒状特に限定されない。ゾル状のシリケート化合物(シリカゾル)としては、例えば、平均一次粒子径が通常1〜200nm、好ましくは5〜100nmのものを使用することができる。
シリカゾルとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラsec−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン等、あるいはこれらの縮合物等を原料として製造することができ、上記シリケート化合物以外のアルコキシシラン化合物や、アルコール類、グリコール類、グルコールエーテル類、フッ素アルコール、シランカップリング剤、ポリオキシアルキレン基含有化合物等も併せて使用することができる。
このようなシリカゾルは、雨筋汚染をより防止することができ、化粧面の美観性を長期に亘り維持することができる。
シリカゾルが、被膜形成時にシリカ凝集体を形成するものであれば、装飾塗材の色相・質感保持の点で有利である。
シリカゾルは、結合剤の固形分100重量部に対し、通常固形分で50〜500重量部の比率で混合することが好ましい。
【0061】
結合剤としては、上述したような水溶性樹脂、水分散性樹脂、溶剤可溶形樹脂、無溶剤形樹脂、非水分散形樹脂、粉末樹脂、セメント、石膏、シリカ等の各種結合剤、あるいはこれらを複合化した結合剤等を使用することができる。
【0062】
本発明の上塗材においては、上述の成分の他、例えば、顔料、染料、増粘剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、界面活性剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光触媒等を混合することもできる。
結合剤としては、例えば、上述の結合剤の中から適宜設定して用いることができる。
顔料としては、例えば、上述の着色顔料、体質顔料の中から適宜設定して用いることができる。
【0063】
このような上塗材は、例えば、スプレー塗り、ローラー塗り、刷毛塗り等の公知の方法で塗装することができる。塗付量は、特に限定されないが、通常、10〜500g/m(好ましくは30〜400g/m)程度であれば、本発明の効果を、十分発揮することができる。
【0064】
(は)、(に)の方法では、
まず、(1)基材に対し、下塗材を塗付する(例えば、図11(a))。この工程では、(い)、(ろ)と同様の方法で、下塗材を塗付すればよい。
次に、(2)装飾塗材を塗付する(例えば、図11(b))。(2)の工程においても、(い)、(ろ)と同様の方法で、装飾塗材を塗付すればよい。
【0065】
次に(3)該装飾塗材が未硬化状態で、スタンプ式目地形成具を用いて目地を形成し、(4)該目地部の水平方向の目地下縁部の傾斜角が鈍角となるように処理する(例えば、図11(c)、図11(d))。
このような方法で用いるスタンプ式目地形成具としては、例えば、図12(a)〜(d)のようなものが挙げられ(ただし、これらに限定されるものではない。)、塗付した装飾塗材に、押し当てて、目地を形成させるものである。
【0066】
このようなスタンプ式目地形成具を用いた方法では、目地形成材(目地棒式目地形成材、埋め込み式目地形成材)を貼着したり、脱着する工程を省くことができる。また、スタンプ式目地形成具は、繰り返し使用することができ、目地形成材のコスト削減、廃棄物削減にも寄与できる。
スタンプ式目地形成具としては、例えば、図12に示すような、押圧部と非押圧部とからなるもの等が挙げられる。このようなスタンプ式目地形成具を用いた場合、通常、押圧部の断面形状が、目地断面形状を示す。
スタンプ式目地形成具の材質としては、上述した目地形成材に用いられる材質等が挙げられる。
【0067】
例えば、図12(a)、図12(c)に示すようなスタンプ式目地形成具を用いた場合、スタンプ式目地形成具を押し当てると同時に、目地下縁部の傾斜角を鈍角にすることができる。また、押し当て時に、押圧部に装飾塗材が付着しないように、予め押圧部を水や溶剤等に浸した後に行うこともできる。また、予め押圧部に、上述した上塗材等を付与させて、押し当てることにより、押し当てると同時に、表面の水に対する接触角を70度以下にすることもできる。
【0068】
また、図12(b)、図12(d)に示すようなスタンプ式目地形成具を用いた場合、スタンプ式目地形成具を装飾塗材から離す際に、目地下縁部の傾斜角が鈍角となるように押し当てて鈍角にする方法、スタンプ式目地形成具を押し当てた後に、目地下縁部の傾斜角を鈍角にする方法等により、傾斜角を鈍角にすることができる。
また、押し当て時に、押圧部に装飾塗材が付着しないように、予め押圧部を水や溶剤等に浸した後に行うこともできる。また、予め押圧部に、上述した上塗材等を付与させて、押し当てることにより、押し当てると同時に、表面の水に対する接触角を70度以下にすることもできる。
スタンプ式目地形成具を押し当てた後に、目地下縁部の傾斜角を鈍角にする方法では、スタンプ式目地形成具を押し当てた後、ローラー、コテ、刷毛、櫛、へら等を用いて装飾塗材を押し付けたり、また硬化した装飾塗材を何らかの方法で削ることによって、傾斜角を鈍角にすることが可能である。
【0069】
スタンプ式目地形成具は、図12に示すようなものが挙げられるが、この他に、様々なデザインを簡便に形成させることができる。例えば、代表的なデザインを、図13に挙げたが、これらのデザインに限定されるものではなく、各ユーザーの要望にあわせて、デザインを形成させることができる。
なお、図13に示すデザインは、上述した目地棒式目地形成材、埋め込み式目地形成材等にも適用可能である。
【0070】
本発明の目地形成方法は、上述した(い)〜(に)のような湿式工法に限定されるものではなく、他の湿式工法や乾式工法においても適用することができる。例えば、乾式工法においては、予め、建材シート等の目地下縁部となる部位が鈍角となるように処理しておき、該建材シートを粘着剤・接着剤等で貼り付けることによって、簡便に目地を形成することもできる。
本発明の目地形成方法は、新築物件、改修物件等に適用することができ、現場での施工や、工場等での施工等に採用することができる。本発明では、特に現場にて、簡便に仕上げることができる。
【実施例】
【0071】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0072】
・下塗材A:アクリル樹脂エマルション系下塗材(固形分50重量%、茶色)
・装飾塗材A:アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%、最低造膜温度20℃)200重量部、酸化チタン分散液(固形分70重量%、粒子径0.3μm)40重量部、重質炭酸カルシウム(粒子径5〜10μm)140重量部、寒水石(粒子径0.1〜0.3mm)300重量部、造膜助剤10重量部、水60重量部、増粘剤5重量部、消泡剤3重量部を常法により均一に混合し、装飾塗材Aを得た(形成塗膜の水に対する接触角:90度)。
・装飾塗材B:アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%、最低造膜温度20℃)200重量部、酸化チタン分散液(固形分70重量%、粒子径0.3μm)40重量部、重質炭酸カルシウム(粒子径5〜10μm)140重量部、寒水石(粒子径0.1〜0.3mm)300重量部、造膜助剤10重量部、水60重量部、増粘剤5重量部、消泡剤3重量部、下記に示すシリケート化合物A70重量部を常法により均一に混合し、装飾塗材Bを得た(形成塗膜の水に対する接触角:50度)。
・シリケート化合物A:テトラエトキシシランの縮合物である平均分子量750のエチルシリケート縮合物(平均分子量750、シリカ残量比率40重量%)100.0重量部と、平均分子量400のポリオキシエチレングリコールモノセチルエーテル(東京化成株式会社製)81.7重量部を混合し、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.02重量部を添加して、75℃で8時間脱エタノール反応を行い、シリケート化合物Aを得た。
・上塗材A:アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%、最低造膜温度20℃)200重量部、下記に示すシリケート化合物B70重量部、造膜助剤15重量部、増粘剤5重量部、消泡剤5重量部を常法により均一に混合し、上塗材Aを得た(形成塗膜の水に対する接触角:32度)
・シリケート化合物B:還流冷却器と攪拌羽根を備えた反応容器に、水分散性シリカゾル(pH7.6、固形分20重量%、平均1次粒子径27nm、電気伝導度0.6mS/cm)を500重量部仕込み、攪拌しながらトリフルオロエタノール0.3重量部を徐々に滴下した後、メトキシポリエチレングリコール0.15重量部を徐々に滴下した。次いで、80℃まで昇温して24時間攪拌を継続した後、室温まで放冷し、シリケート化合物Bを得た。
・上塗材B:アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%、最低造膜温度20℃)200重量部、水溶性ウレタン樹脂(固形分35重量%)10重量部、水分散性シリカゾル(pH7.6、固形分20重量%、平均1次粒子径27nm)600重量部を混合し、さらに水を加えて固形分2重量%、pH7.2の上塗材Bを得た(形成塗膜の水に対する接触角:10度以下)。
【0073】
なお、装飾塗材A、装飾塗材Bの形成塗膜の水に対する接触角は、各塗材を、アルミ板(150mm×70mm)上に、アプリケーターにて、ウェット膜厚が0.5mmとなるように塗付し温度23度、相対湿度50%にて24時間乾燥させたものを試験体とし、該試験体をCA−A型接触角測定装置(協和界面科学株式会社製)にて測定(測定温度23度)した値である。
また、上塗材Aの形成塗膜の水に対する接触角は、上塗材Aを、アルミ板(150mm×70mm)上に、アプリケーターにて、ウェット膜厚が0.125mmとなるように塗付し温度23度、相対湿度50%にて24時間乾燥させたものを試験体とし、該試験体をCA−A型接触角測定装置(協和界面科学株式会社製)にて測定(測定温度23度)した値である。
【0074】
(実施例1)
スレート板(900mm×900mm)の上に、下塗材Aをローラーにて塗付量200g/mで塗付し、3時間養生させた。
次に、図9(d)に示すような目地棒式目地形成材(目地幅1cm、ポリエチレン製)を粘着剤にて、格子状に貼着させた。
次に、装飾塗材Aを塗膜厚が5mmとなるようにコテで塗付した。
次に、装飾塗材Aが乾燥する前に、目地棒式目地形成材を取り外し、目地下縁部の傾斜角が120°となるようにコテで押し付け、24時間養生させた。
次に、目地下縁部、及び、化粧面全面に、上塗材Aをスプレーにて塗付量200g/mで塗付し、24時間養生させ、図1に示すような天然石調の化粧面を形成させ、試験体を得た。
【0075】
(汚染性試験1)
得られた試験体を、大阪府茨木市で南面向きに、垂直に静置し、屋外暴露を3か月間実施した。
3か月後、試験体表面の汚染状態について、目視にて評価した。評価は次の通り。結果は表1に示す。
4:表面の汚染がなく、優れた美観性を維持していた。
3:表面の汚染がほどんどなく、優れた美観性を維持していた。
2:表面の汚染が一部が見られた。
1:表面の汚染が見られた。
【0076】
(汚染性試験2)
得られた試験体を、大阪府茨木市で南面向きに、垂直に静置し、屋外暴露を1年間実施した。
1年後、試験体表面の汚染状態について、目視にて評価した。評価は次の通り。結果は表1に示す。
4:表面の汚染がなく、優れた美観性を維持していた。
3:表面の汚染がほどんどなく、優れた美観性を維持していた。
2:表面の汚染が一部が見られた。
1:表面の汚染が見られた。
【0077】
(汚染性試験3)
垂直に固定した試験体に、カーボン水溶液(カーボン0.1重量%)を吹付け、10分後、試験体上部から水1リットルを、試験体表面全面にいきわたるように、流し込んだ。その後、試験体表面の汚染状態について、目視にて評価した。評価は次の通り。結果は表1に示す。
4:表面の汚染がなく、優れた美観性を維持していた。
3:表面の汚染がほどんどなく、優れた美観性を維持していた。
2:表面の汚染が一部見られた。
1:表面の汚染が見られた。
【0078】
(実施例2)
スレート板(900mm×900mm)の上に、下塗材Aをローラーにて塗付量200g/mで塗付し、3時間養生させた。
次に、図9(d)に示すような目地棒式目地形成材(目地幅1cm、ポリエチレン製)を粘着剤にて、格子状に貼着させた。
次に、装飾塗材Bを塗膜厚が5mmとなるようにコテで塗付した。
次に、装飾塗材Bが乾燥する前に、目地棒式目地形成材を取り外し、24時間養生させ、図1に示すような天然石調の化粧面を形成させ、試験体を得た。(目地下縁部の傾斜角:120°)
得られた試験体について、実施例1と同様の試験を行った。
【0079】
(実施例3)
スレート板(900mm×900mm)の上に、下塗材Aをローラーにて塗付量200g/mで塗付し、3時間養生させた。
次に、装飾塗材Aを塗膜厚が5mmとなるようにコテで塗付した。
次に、装飾塗材Aが乾燥する前に、図12(a)に示すようなスタンプ式目地形成具(目地幅1cm、ポリエチレン製)を格子状に押し当て、24時間養生させた。(目地下縁部の傾斜角:120°)
次に、目地下縁部、及び、化粧面全面に、上塗材Aをスプレーにて塗付量200g/mで塗付し、24時間養生させ、図14に示すような天然石調の化粧面を形成させ、試験体を得た。
得られた試験体について、実施例1と同様の試験を行った。
【0080】
(実施例4)
スレート板(900mm×900mm)の上に、下塗材Aをローラーにて塗付量200g/mで塗付し、3時間養生させた。
次に、図9(d)に示すような目地棒式目地形成材(目地幅1cm、ポリエチレン製)を粘着剤にて、格子状に貼着させた。
次に、装飾塗材Bを塗膜厚が5mmとなるようにコテで塗付した。
次に、装飾塗材Bが乾燥する前に、目地棒式目地形成材を取り外し、24時間養生させ、図1に示すような天然石調の化粧面を形成させ、試験体を得た。(目地下縁部の傾斜角:120°)
次に、目地下縁部、及び、化粧面全面に、上塗材Bをスプレーにて塗付量が固形分5g/mで塗付し、24時間養生させ、図1に示すような天然石調の化粧面を形成させ、試験体を得た。
得られた試験体について、実施例1と同様の試験を行った。
【0081】
(実施例5)
スレート板(900mm×900mm)の上に、下塗材Aをローラーにて塗付量200g/mで塗付し、3時間養生させた。
次に、図9(d)に示すような目地棒式目地形成材(目地幅2.5cm、ポリエチレン製)を用いて、図15に示すように、目地幅7.5mm、目地幅2.5mmとなるように粘着剤にて貼着させた。(目地幅7.5mmは、目地棒式目地形成材を3つつなぎ合わせて得ることができる。)
次に、装飾塗材Bを塗膜厚が5mmとなるようにコテで塗付した。
次に、装飾塗材Bが乾燥する前に、目地棒式目地形成材を取り外し、24時間養生させ、図13に示すような天然石調の化粧面を形成させ、試験体を得た。(目地下縁部の傾斜角:120°)
次に、目地下縁部、及び、化粧面全面に、上塗材Aをスプレーにて塗付量200g/mで塗付し、24時間養生させ、図15に示すような天然石調の化粧面を形成させ、試験体を得た。
得られた試験体について、実施例1と同様の試験を行った。
【0082】
(表1)
─────────────────────────────────
│ │実施例1│実施例2│実施例3│実施例4│実施例5│
─────────────────────────────────
│汚染性試験1│ 4 │ 4 │ 4 │ 4 │ 4 │
│汚染性試験2│ 3 │ 3 │ 3 │ 4 │ 3 │
│汚染性試験3│ 4 │ 3 │ 4 │ 4 │ 4 │
─────────────────────────────────
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明化粧面の正面図である。
【図2】図1におけるA−A´断面図(目地断面図)である。
【図3】本発明の目地下縁部の傾斜角を示す一例である。
【図4】本発明の目地断面図を示す一例である。
【図5】本発明の目地形成方法の一例である。
【図6】本発明の目地形成方法の一例である。
【図7】本発明の目地形成方法の一例である。
【図8】本発明の目地形成方法の一例である。
【図9】本発明の目地棒式目地形成材の一例である。
【図10】本発明の目地棒式目地形成材の一例である。
【図11】本発明の目地形成方法の一例である。
【図12】本発明のスタンプ式目地形成具の一例である。
【図13】本発明の目地デザインの一例である。
【図14】実施例3で得られる化粧面の正面図である。
【図15】実施例5で得られる化粧面の正面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装飾塗材を用いて、目地構造を有する化粧面を仕上げるに際し、
水平方向の目地下縁部の傾斜角を鈍角にする工程、
形成塗膜の水に対する接触角が70度以下である上塗材を、少なくとも該目地下縁部に塗付する工程、
を含むことを特徴とする化粧面の目地形成方法。
【請求項2】
装飾塗材を用いて、目地構造を有する化粧面を仕上げるに際し、
該装飾塗材として形成塗膜の水に対する接触角が70度以下である塗材を使用し、かつ、水平方向の目地下縁部の傾斜角を鈍角にする工程を含むことを特徴とする化粧面の目地形成方法。
【請求項3】
(1)基材に対し、下塗材を塗付する工程、
(2)脱着可能な目地形成材を貼り付ける工程、
(3)装飾塗材を塗付する工程、
(4)該装飾塗材が未硬化、または硬化した状態で、目地形成材を取り外し、該目地部の水平方向の目地下縁部の傾斜角が鈍角となるように処理する工程、
(5)形成塗膜の水に対する接触角が70度以下である上塗材を、少なくとも該目地下縁部に塗付する工程、
を含むことを特徴とする化粧面の目地形成方法。
【請求項4】
(1)基材に対し、下塗材を塗付する工程、
(2)脱着可能な目地形成材を貼り付ける工程、
(3´)形成塗膜の水に対する接触角が70度以下である装飾塗材を塗付する工程、
(4)該装飾塗材が未硬化、または硬化した状態で、目地形成材を取り外し、該目地部の水平方向の目地下縁部の傾斜角が鈍角となるように処理する工程、
を含むことを特徴とする化粧面の目地形成方法。
【請求項5】
(1)基材に対し、下塗材を塗付する工程、
(2)装飾塗材を塗付する工程、
(3)該装飾塗材が未硬化状態のうちに、スタンプ式目地形成具を用いて目地を形成し、該目地部の水平方向の目地下縁部の傾斜角が鈍角となるように処理する工程、
(4)形成塗膜の水に対する接触角が70度以下である上塗材を、少なくとも該目地下縁部に塗付する工程、
を含むことを特徴とする化粧面の目地形成方法。
【請求項6】
(1)基材に対し、下塗材を塗付する工程、
(2´)形成塗膜の水に対する接触角が70度以下である装飾塗材を塗付する工程、
(3)該装飾塗材が未硬化状態のうちに、スタンプ式目地形成具を用いて目地を形成し、該目地部の水平方向の目地下縁部の傾斜角が鈍角となるように処理する工程、
を含むことを特徴とする化粧面の目地形成方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−8113(P2008−8113A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−182116(P2006−182116)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】