目封止ハニカム構造体及びその製造方法
【課題】目的や用途に応じて所望の端部形状をとることができ、形状加工による浄化性能及び強度の低下が抑えられ、原料収率やコストの面でも優れた目封止ハニカム構造体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】隔壁6によって区画された流体の流路となる複数のセル5を有し、隣接するセル5が互いに反対側となる一方の端部において目封止されたディーゼルパティキュレートフィルタ用の目封止ハニカム構造体であって、流体の流通端部の一部に切り欠き部2を有し、切り欠き部2を構成する所定のセル5の流通端部にも目封止が施された目封止ハニカム構造体20。
【解決手段】隔壁6によって区画された流体の流路となる複数のセル5を有し、隣接するセル5が互いに反対側となる一方の端部において目封止されたディーゼルパティキュレートフィルタ用の目封止ハニカム構造体であって、流体の流通端部の一部に切り欠き部2を有し、切り欠き部2を構成する所定のセル5の流通端部にも目封止が施された目封止ハニカム構造体20。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体及びその製造方法に関する。より詳しくは、切り欠き部が形成された目封止ハニカム構造体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関、ボイラー、化学反応機器、及び燃料電池用改質器等の触媒作用を利用する触媒用担体や、排ガス中の微粒子、特にディーゼル微粒子の捕集フィルタ(ディーゼルパティキュレートフィルタ:以下、「DPF」ということがある)等に、セラミックスからなるハニカム構造体が用いられている。
【0003】
このような目的に使用されるハニカム構造体は、一般に、多孔質の隔壁によって区画された流体の流路となる複数のセルを有し、特に、微粒子捕集フィルタとして用いられる場合には、端面が市松模様状を呈するように、隣接するセルが互いに反対側の端部において目封止された構造を有する。このような構造を有するハニカム構造体において、被処理流体は流入孔側端面が封止されていないセル、即ち流出孔側端面が封止されているセルに流入し、多孔質の隔壁を通って隣のセル、即ち、流入孔側端面が封止され、流出孔側端面が封止されていないセルから排出される。この際、隔壁がフィルタとなり、例えば、DPFとして使用した場合には、ディーゼルエンジンから排出されるスート(スス)等の粒子状物質(パティキュレート・マター:以下「PM」ということがある)が隔壁に捕捉され隔壁上に堆積する。
【0004】
ディーゼル機関においては、上記のようなハニカム構造体は、通常、DPFとしてエンジン下流側の排ガスの流路中に配設され、エンジンから排出される排ガスを通過させ浄化する機能を果たす。この時、排ガス上流側から流れてくる、流路内壁の錆等の剥れ、溶接屑、組み付け時に流路に入り込んだゴミ等の固体、或いは凝縮水のような液体が、排ガスと共に高速で流路の内壁、或いは流路中に配設されたハニカム構造体に衝突することにより、これらを破損せしめることがある。特に固体の異物は、エンジン振動によりDPFの流入孔側端面において跳ねるため、DPFの目封止部等をえぐり、捕集効率の低下を招くことがある。この作用は通常エロージョンと呼ばれ、流路及びハニカム構造体の長期耐久性を維持する観点から、大きな問題となっていた。
【0005】
エロージョン問題解決のため、従来、破損を受ける恐れのある流路内壁或いはハニカム構造体の上流側に、金網やじゃま板を設け、異物が直接高速で衝突することを防ぐ工夫がなされてきたが、固体や液体の異物を十分なレベルまで除去することができず、長期耐久性を確保するには至らなかった。即ち、排ガスの流れの上流側から飛来してきた異物により、流路内壁表面の損傷やハニカム構造体の破損が発生することがあった。そこで、より確実に流路内の異物を除去し、浄化装置の耐久性を強化することのできる工夫が求められており、例えば、特許文献1には、ハニカム構造体の上流側の流路上に、排ガスの流れ変更手段及び異物捕集部を設けた流路が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平9−206526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に開示されたガス流路は、排ガスの流れ変更手段により排ガスの流れを流路の外周方向へ向け、流路内壁に設置された、排ガスの上流方向に向いた開口部を有するポケット状の異物捕集部によって、排ガス中の異物を物理的に捕集するものであり、流路内を異物が跳ねることによるエロージョン問題に対して効果を奏するものであるが、排ガスの流路を流れ方向に長く設計する必要があり、排ガス浄化装置全体が大きくなってしまうという問題があった。また、流路径を変えずにポケットをつけると、流路断面が小さくなるため圧力損失が上がり、エンジン出力低下の懸念があり、流路径を大きくしてポケットをつけると、流路断面が大きくなり、車両床下搭載時の最低地上高確保のため、車高を上げなくてはならなくなる。車体への搭載スペースに制約がある点を考えると、排ガス浄化装置は可能な限り小さく設計されることが望ましく、特許文献1に開示された流路はその意味で十分とは言えなかった。
【0008】
本発明はかかる従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、エロージョン抑制効果及びサイズダウンを両立させた排ガス浄化装置において用いられ、形状加工による浄化性能及び強度の低下が抑えられ、原料収率やコストの面でも優れた目封止ハニカム構造体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題解決のため鋭意検討した結果、多孔質の隔壁によって区画された流体の流路となる複数のセルを有し、端面が市松模様状を呈するように、隣接するセルが互いに反対側となる一方の端部において目封止された構造を有する目封止ハニカム構造体において、流体の流通端部の一部に切り欠き部を有し、切り欠き部を構成する所定のセルの端部にも目封止が施された構成とすることによって、切り欠き部がエロージョン抑制に効果的に働き、且つ切り欠き部の体積分の省スペースを実現することが可能であることに想到した。更に本発明者らは、目封止ハニカム構造体に切り欠き部を形成することによって引き起こされることが想定される、強度低下、再生限界低下、圧力損失増加等の諸問題についても鋭意検討し、複数のハニカムセグメントを接合材層を介して一体的に接合した目封止ハニカム構造体において、接合材層の厚さ及び形状を所定のものとすることにより解決できることに想到し、本発明を完成させた。即ち、本発明によれば、十分な浄化性能と強度を備え、所望の端面形状を有する目封止ハニカム構造体及びその製造方法、即ち、以下の目封止ハニカム構造体及びその製造方法が提供される。
【0010】
[1] 多孔質の隔壁により区画された流体の流路となる複数のセルを有し、隣接するセルが互いに反対側となる一方の端部において目封止されたディーゼルパティキュレートフィルタ用の目封止ハニカム構造体であって、前記流体の流通端部の一部に切り欠き部を有し、前記切り欠き部を構成する所定のセルにおいても、前記隣接するセルが互いに反対側となる前記一方の端部において目封止された目封止ハニカム構造体。
【0011】
[2] 複数のハニカムセグメントが、接合材層を介して一体的に接合されてなる前記[1]に記載の目封止ハニカム構造体。
【0012】
[3] 前記複数のハニカムセグメントのうち、所定のハニカムセグメントの軸方向長さが、残余のハニカムセグメントの軸方向長さよりも短く構成されることによって、前記切り欠き部がハニカムセグメント単位で形成された前記[2]に記載の目封止ハニカム構造体。
【0013】
[4] 前記切り欠き部が、前記流体の流入孔側端部に形成され、前記所定のハニカムセグメントである短セグメントと前記残余のハニカムセグメントである長セグメントとを接合する前記接合材層の、前記流体の流入孔側端面における平均厚さTs(in)と、前記短セグメント同士及び前記長セグメント同士を接合する前記接合材層の、前記流入孔側端面における平均厚さT(in)との関係が、Ts(in)>T(in)である前記[3]に記載の目封止ハニカム構造体。
【0014】
[5] 前記平均厚さTs(in)と前記平均厚さT(in)との関係が、Ts(in)=(1.1〜5.0)×T(in)である前記[4]に記載の目封止ハニカム構造体。
【0015】
[6] 前記短セグメントと前記長セグメントとを接合する前記接合材層の、前記流体の流出孔側端面における平均厚さTs(out)と前記平均厚さTs(in)との関係が、Ts(out)<Ts(in)であり、前記接合材層の厚さが、前記平均厚さTs(in)から前記平均厚さTs(out)にかけて漸減する前記[4]又は[5]に記載の目封止ハニカム構造体。
【0016】
[7] 前記平均厚さTs(out)と前記平均厚さTs(in)との関係が、Ts(out)≦0.9×Ts(in)且つTs(out)≧0.2mmである前記[6]に記載の目封止ハニカム構造体。
【0017】
[8] 前記短セグメントが、接合材スペーサを用いて前記長セグメントに対して斜めに接合された斜めセグメントである前記[4]〜[7]のいずれかに記載の目封止ハニカム構造体。
【0018】
[9] 前記[8]に記載の目封止ハニカム構造体の製造方法であって、前記短セグメントと、隣接する前記長セグメントとの間の接合面において、前記流入孔側端面における前記接合材スペーサのハニカム構造体の軸方向に垂直な方向における厚みであるS(in)と、前記流出孔側端面における前記接合材スペーサのハニカム構造体の軸方向に垂直な方向における厚みであるS(out)との関係が、S(out)≦0.9×S(in)且つS(out)≧0.2mmとなるように、異なる厚みの複数の接合材スペーサを用いて、前記短セグメントを前記長セグメントに対して斜めに接合することで、前記切り欠き部を有する目封止ハニカム構造体を形成する目封止ハニカム構造体の製造方法。
【0019】
[10] 前記[3]〜[8]のいずれかに記載の目封止ハニカム構造体の製造方法であって、前記所定のハニカムセグメントである短セグメントとされる予定の、長目封止部の形成されたハニカムセグメントを、前記長目封止部よりも深さの小さい目封止部の形成された、前記残余のハニカムセグメントである長セグメントへ接合した後、前記ハニカムセグメントの長目封止部形成側端部を所定の長さまで切削することで、前記切り欠き部を有する目封止ハニカム構造体を形成する目封止ハニカム構造体の製造方法。
【0020】
[11] 前記[3]〜[8]のいずれかに記載の目封止ハニカム構造体の製造方法であって、あらかじめ軸方向長さが前記残余のハニカムセグメントである長セグメントよりも短く形成された、前記所定のハニカムセグメントである短セグメントを、前記長セグメントへ接合することで、前記切り欠き部を有する目封止ハニカム構造体を形成する目封止ハニカム構造体の製造方法。
【0021】
[12] 前記短セグメントを、長目封止部を形成した前記長セグメントの、長目封止部形成側端部を所定の長さで切断することで形成する前記[11]に記載の目封止ハニカム構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の目封止ハニカム構造体は、流体の流入孔側端部において所望の切り欠き部を形成することが可能であり、目的に応じた端部形状を持つ目封止ハニカム構造体とすることができる。また、本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法によれば、製造時の破損や強度低下の問題、また、使用時の再生限界低下、圧力損失増加等の問題も改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0024】
図1及び図2は、従来の目封止ハニカム構造体の各実施形態を模式的に示す斜視図であり、図3及び図4は、本発明の目封止ハニカム構造体の各実施形態を模式的に示す斜視図である。また、図5A〜5Cは、本発明の目封止ハニカム構造体を搭載した排ガス浄化装置の各実施形態を模式的に示す断面図である。尚、図5A及び5Bにおいては、図中向かって左側が排ガスの流入孔側であり、図中向かって右側が排ガスの流出孔側となる。
【0025】
排ガス浄化装置においてDPFとして用いられる従来の目封止ハニカム構造体としては、例えば図1に示すように、あらかじめ所望の形状に一体成形され、多孔質の隔壁6により区画された流体の流路となる複数のセル5を有し、隣接するセル5が互いに反対側となる流通端部において目封止され、目封止部25の形成された目封止ハニカム構造体10aがある。また、図2に示すように、多孔質の隔壁6によって区画された流体の流路となる複数のセル5を有するハニカムセグメント1が、接合材層3を介して複数個一体的に接合され、所望の形状に成形された後、隣接するセル5が互いに反対側となる流通端部において目封止され、目封止部25の形成された目封止ハニカム構造体10b等、軸方向端部に凹凸のない円筒形状の目封止ハニカム構造体10がある。
【0026】
一方、本発明の目封止ハニカム構造体は、図3及び図4に示すように、多孔質の隔壁6により区画された流体の流路となる複数のセル5を有し、隣接するセル5が互いに反対側となる一方の端部において目封止され、目封止部25の形成されたディーゼルパティキュレートフィルタ用の目封止ハニカム構造体であって、流体の流通端部の一部に切り欠き部2を有し、切り欠き部2を構成する所定のセル5においても、隣接するセル5が互いに反対側となる一方の端部において目封止された目封止ハニカム構造体20である。
【0027】
本発明の目封止ハニカム構造体20としては、例えば、図3に示すように、あらかじめ所望の形状に成形され、隣接するセル5が互いに反対側となる一方の端部において目封止され、目封止部25の形成された一体型の目封止ハニカム構造体であって、流体の流通端部の一部に切り欠き部2を有し、前記切り欠き部2を構成する所定のセル5においても、隣接するセル5が互いに反対側となる一方の端部において目封止された目封止ハニカム構造体20aがある。また、図4に示すように、多孔質の隔壁6によって区画された流体の流路となる複数のセル5を有し、隣接するセル5が互いに反対側となる一方の端部において目封止され、目封止部25の形成された複数のハニカムセグメント1(1a,1b)が接合材層3を介して一体的に接合され、所望の形状に成形された接合型の目封止ハニカム構造体であって、流体の流通端部の一部に切り欠き部2を有し、切り欠き部2を構成する所定のセル5においても、隣接するセル5が互いに反対側となる一方の端部において目封止された目封止ハニカム構造体20bがある。
【0028】
本発明の目封止ハニカム構造体20の全体の形状としては、排ガス浄化フィルタとして好適な、円筒形状、オーバル形状等所望の形状であって、流体の流通端部に切り欠き部2を有する形状とすることができる。本発明の目封止ハニカム構造体20において、切り欠き部2は、用途及び目的に応じて所望の位置及び所望の大きさに形成され、同時に、切り欠き部2を含む流通端面全域において所定のセル5に目封止が施され、形状加工による浄化性能の低下が抑えられている。
【0029】
一体成形された目封止ハニカム構造体20a、及び接合成形された目封止ハニカム構造体20bを構成するハニカムセグメント1の材料としては、セラミックが好ましく、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、チタン酸アルミニウム、鉄−クロム−アルミニウム系合金からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。特に、図4に示す目封止ハニカム構造体20bのように、複数のハニカムセグメント1(1a,1b)が接合材層3を介して一体的に接合される場合には、これらの材料の中でも、炭化珪素又は珪素−炭化珪素系複合材料がより好ましい。炭化珪素は、熱膨張率が比較的大きいため、炭化珪素を骨材として形成されるハニカム構造体は、大きなものを形成すると使用時に熱衝撃により欠陥が生じることがあったが、複数のハニカムセグメント1が接合材層3を介して一体的に接合された構造においては、炭化珪素の膨張収縮が接合材層3により緩衝され、ハニカムセグメント1の欠陥の発生を防止することができるためである。
【0030】
また、接合材層3の材料としては、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、SiC粒子、有機バインダ、発泡樹脂等の充填材を水等の分散媒に分散させてスラリー状にしたものを用いることができる。
【0031】
図5Aに示す排ガス浄化装置110では、コンテナ15内のハニカム触媒体9の後段に、切り欠き部2の形成された目封止ハニカム構造体20がDPF8として設置されている。この時DPF8は、排ガス浄化装置が車体に搭載された際に切り欠き部2が排ガスの流れの上流側に面し、且つ排ガス浄化装置110の下側(地面側)を向くように位置決めされることが好ましい。排ガスの流れの上流側から流れて来る固体や液体の異物は、重力に従って、排ガス浄化装置110の下側に下りて行く。そのため、コンテナ15の内壁及びDPF8の流入孔側端面11は、特にその下側に損傷が集中しやすい。切り欠き部2を下側に向けてDPF8を設置することによって、コンテナ15下部に異物を跳ねさせるスペースができ、DPF8の端面に異物が直接衝突する頻度を低減すると共に、衝突時の衝撃を軽減する効果がある。即ち、本発明の目封止ハニカム構造体20を用いれば、従来のように、排ガス浄化装置の流路上に金網や異物捕集ポケット等の余分な設備を備えなくとも、エロージョンによる耐久性悪化を抑制することができ、排ガス浄化装置における省スペース化、省コスト化を実現することができる。
【0032】
図5Bに示す排ガス浄化装置120では、コンテナ15のハニカム触媒体9の後段に、切り欠き部2の形成された目封止ハニカム構造体20がDPF8として設置されており、更に、排ガスと共に上流から流れ込みDPF8の破損の原因となる異物を捕集するための異物捕集ポケット13が設けられ、DPF8の切り欠き部2を、異物を異物捕集ポケット13へと逃がす誘導路として機能させている。このような構成とすることによって、流れ込む多くの異物を、DPF8の流入孔側端面11に衝突させることなく、異物捕集ポケット13へと回収することができる。この時DPF8は、図5Aに示す排ガス浄化装置110と同様、排ガス浄化装置120が車体に搭載された際に切り欠き部2が排ガスの流れの上流側に面し、且つ排ガス浄化装置120の下側(地面側)を向くように位置決めされることが好ましい。
【0033】
また、本発明の目封止ハニカム構造体20は、限られたスペース内においてエロージョン抑制効果を発揮するだけでなく、図5Cに示すように、特殊な形状のコンテナ15にも対応可能であるという利点を有する。例えば車体下部のように、利用できるスペースに制約がある場合には、排ガス浄化装置そのものを小さく設計すると同時に、車体に搭載後の排ガス浄化装置の周辺にデッドスペースを発生させないことも、省スペースの有効な手立てである。即ち、車体へ排ガス浄化装置を搭載させる際に、排ガス浄化装置のコンテナ形状をあらかじめ搭載箇所の空間形状に合わせて変形させておけば、無駄な空間が発生せず、限られたスペースを最大限に活用することができるが、そのためには、コンテナ形状にあわせた形状のハニカム構造体が必要となり、本発明の目封止ハニカム構造体20が好適に用いられる。
【0034】
図6は、本発明の目封止ハニカム構造体の一実施形態に排ガスが流れ込む様子を模式的に示す断面図であり、図7は、本発明の目封止ハニカム構造体の別の実施形態に排ガスが流れ込む様子を模式的に示す断面図である。この時、図6及び図7中に示される目封止ハニカム構造体20bにおいては、排ガスは、切り欠き部の角部14を避けるようにして流れるため、図6中、切り欠き部の角部14の下側に位置するセルには、排ガスが流れ込みにくくなり、従って、該セルの隔壁へのPMの堆積が少なくなり、短セグメント1a内におけるPMの堆積量が不均一になることがある。その結果、堆積したPMを燃焼させてフィルタの再生処理を行う際に、PM堆積量の差から生じる熱応力の偏在が、クラックの発生へとつながる可能性がある。
【0035】
そこで、本発明の目封止ハニカム構造体20bにおいては、図7に示すように、短セグメント1aと長セグメント1bとを接合する接合材層3の、流体の流入孔側端面11(ここでは切り欠き部形成側端面)における平均厚さTs(in)と、短セグメント1a同士及び長セグメント1b同士を接合する接合材層3の、流入孔側端面11における平均厚さT(in)との関係が、Ts(in)>T(in)であることが好ましい。このような設計とすると、切り欠き部の角部14下流側の排ガスの流れ込みにくいエリアが、セル5ではなく接合材層3となるので、短セグメント1a内でのPMの堆積不均一を抑制することができ、フィルタ再生時の熱応力の偏在によるクラック発生を効果的に防止することができる。
【0036】
また、上記平均厚さTs(in)と平均厚さT(in)との関係は、Ts(in)=(1.1〜5.0)×T(in)であることが更に好ましい。Ts(in)<1.1×T(in)であると、短セグメント1a内でのPMの堆積不均一を防ぐことができず、クラック発生防止効果を得られないため好ましくない。一方、Ts(in)>5.0×T(in)であると、長セグメント1bと短セグメント1aの間の熱伝導が悪化してPM再生時に発生する温度差が大きくなり、クラックが発生しやすくなるため好ましくない。
【0037】
しかしながら、平均厚さTs(in)を通常よりも厚くすることによって、相対的に、接する短セグメントの軸方向と垂直な方向における幅が小さくなり、フィルタ面積が減少するため、使用時に圧力損失が増加することがある。そこで、本発明の目封止ハニカム構造体においては、図7に示すように、短セグメント1aと長セグメント1bとを接合する接合材層3の、流出孔側端面12(ここでは切り欠き部形成側と反対の端面)における平均厚さTs(out)と、上記平均厚さTs(in)との関係が、Ts(out)<Ts(in)であり、接合材層3の厚さが、平均厚さTs(in)から平均厚さTs(out)にかけて漸減することが好ましい。このような設計とすることによって、フィルタ面積の減少を最小限に抑え、使用時の圧力損失の増加を抑制することができる。
【0038】
また、上記平均厚さTs(out)と平均厚さTs(in)との関係は、Ts(out)≦0.9×Ts(in)且つTs(out)≧0.2mmであることが更に好ましい。Ts(out)<0.2mmであると、PM再生時の長セグメント1bから短セグメント1aへの熱移動が大きくなることにより長セグメント1bの外周部温度と内部温度の差が大きくなり、長セグメント1bを起点としてクラックが発生しやすくなる場合がある。一方、Ts(out)>0.9×Ts(in)であると、フィルタ面積の確保による使用時の圧力損失増加抑制効果が十分に得られない場合がある。
【0039】
この時、短セグメント1aとしては、図8に示すように、その側面の少なくとも一つに軸方向に凹状の窪み16を持つ凹状セグメント21を用いることが好ましい。より詳しくは、接合前の、乾燥焼成前に、未だ柔軟性を有した状態のハニカムセグメント1の側面の少なくとも一つに、ローラー等の押圧手段17を用いて凹状の窪み16を形成することで得た凹状セグメント21を、短セグメント1aとして用いることが好ましい。尚、図8は、ハニカムセグメントの一側面に凹状の窪みを形成する工程を模式的に示す工程図である。この時、窪み16のカーブ形状や、深さ等は、得られる目封止ハニカム構造体20bの接合材層厚さに合わせて、所望のものとすることができる。また、凹状セグメント21の作製にはローラー等の押圧手段17を用いるため、ハニカムセグメント1の側面のうち所望の側面に窪みを形成することが可能であり、短セグメント1aと長セグメント1bとを接合するすべての接合材層3を所望の厚さとすることができる。
【0040】
また、短セグメント1aとしては、図9に示すように、その側面の一つが軸方向に弓状に曲がっている弓状セグメント22を用いることも好ましい。より詳しくは、接合前の、乾燥焼成前に、未だ柔軟性を有した状態のハニカムセグメント1の側面の一つを、一方の面が水平で、他方の面に所定の形状の型が凸状に形成された型押曲がり形成手段18に当てて、ハニカムセグメント1全体に曲がりを発生させ、それを乾燥、焼成することで得た弓状セグメント22を、短セグメント1aとして用いることが好ましい。尚、図9は、ハニカムセグメント全体に弓状の曲がりを形成する工程を模式的に示す工程図である。この時、型押曲がり形成手段18の凸状の型は、得られる目封止ハニカム構造体20bの接合材層厚さに合わせて、所望のカーブ形状や深さ等に形成することができる。
【0041】
更に、短セグメント1aとしては、図10に示すように、接合材スペーサ19を用いて長セグメント1bに対して斜めに接合された斜めセグメント23を用いることも好ましい。図10は、接合材スペーサを用いて短セグメントが長セグメントに対して斜めに接合された状態を模式的に示す断面図である。
【0042】
斜めセグメント23を備えた目封止ハニカム構造体20bの製造方法としては、短セグメント1aと、隣接する長セグメント1bとの間の接合面において、流入孔側端面11(ここでは切り欠き部形成側端面)における接合材スペーサ19のハニカム構造体の軸方向に垂直な方向における厚みであるS(in)と、流出孔側端面12(ここでは切り欠き部形成側と反対の端面)における接合材スペーサ19のハニカム構造体の軸方向に垂直な方向における厚みであるS(out)との関係が、S(out)≦0.9×S(in)且つS(out)≧0.2mmとなるように、異なる厚みの複数の接合材スペーサ19を用いて、短セグメント1aを長セグメント1bに対して斜めに接合すればよい。この時、短セグメント1aは、長セグメント1bに対して傾いた状態で接合されるが、外周加工を施すことによって、所定の接合材層厚さを持つ目封止ハニカム構造体20bを得ることができる。
【0043】
本発明の目封止ハニカム構造体20のうち、複数のハニカムセグメント1(1a,1b)が接合材層3を介して一体的に接合されてなる接合型の目封止ハニカム構造体20(20b)は、図11及び図12に示すように、短セグメント1aとされる予定の長目封止部24の形成されたハニカムセグメント1を、長目封止部24よりも深さの小さい目封止部25の形成された長セグメント1bへ接合した後、ハニカムセグメント1の長目封止部形成側端部を所定の長さまで切削することで、製造することができる。尚、図11は長目封止部形成側端部切削前の目封止ハニカム構造体を模式的に示す軸方向における部分断面図であり、図12は、長目封止部形成側端部切削後の目封止ハニカム構造体を模式的に示す軸方向における部分断面図である。図11及び図12においては、作図の都合上、切り欠き部形成予定側と反対の端部における目封止部25は図から捨象したが、いずれのハニカムセグメント1(1a,1b)においても、隣接するセル5は互いに反対側となる流通端部において目封止されており、切り欠き部形成予定側と反対の端部においては、ハニカムセグメント1(1a,1b)による目封止部深さの差異は無く、一定の深さを持つ目封止部25が形成されている。
【0044】
まず、乾燥後のハニカムセグメント1の一方の端面(切り欠き部形成予定側の端面)にマスクテープを貼着させ、目封止部形成予定箇所にのみ、レーザーによって孔を開け、長セグメント1bとなるものに関しては、ハニカムセグメント1のマスクの施された側の端部を0.5〜2.0mmの範囲の深さの目封止スラリーに浸漬させ、目封止部25を形成する。短セグメント1aとなるものに関しては、長セグメント1bとなるものと同様にして、ハニカムセグメント1のマスクの施された側の端部を所定の深さの目封止スラリーに浸漬させ、長目封止部24を形成する。この時、浸漬させる目封止スラリーの深さは、求める目封止ハニカム構造体20bの切り欠き部2の深さに応じて、適宜決定することができる。更に、いずれのハニカムセグメント1においても、隣接するセル5が互いに反対側となる流通端部において目封止されるよう、他方の端面(切り欠き部形成予定側と反対の端面)にもマスクテープを貼着させ、目封止部形成予定箇所にのみ、レーザーによって孔を開け、その端部を、0.5〜2.0mmの範囲の深さの目封止スラリーに浸漬させ、目封止部25を形成する。次に、それぞれのハニカムセグメント1を所望の個数及び組み合わせに従って積み上げ、各ハニカムセグメント1の両端が揃うように互いに接合した後、加圧、乾燥し、ハニカムセグメント積層体30を得る。この時、エロージョン抑制のための切り欠き部2を形成するという観点から、短セグメント1aがハニカム構造体20bの隅部を構成するように、短セグメント1aとなるハニカムセグメント1をハニカムセグメント積層体30の角に配置することが好ましい(図13参照)。また、複数の短セグメント1aによって切り欠き部2を形成する場合には、短セグメント1aとなる複数のハニカムセグメント1は、互いに隣接するように配置されることが好ましい(図14参照)。尚、図13は、本発明の目封止ハニカム構造体の一実施形態を切り欠き部形成方向から見た模式的正面図であり、図14は、本発明の目封止ハニカム構造体の別の実施形態を切り欠き部形成方向から見た模式的正面図である。図13及び図14においては、作図の都合上、セル5、隔壁6、及び目封止部25は図から捨象した。
【0045】
次いで、得られたハニカムセグメント積層体30に必要に応じて外周加工を施し、長目封止部24の形成されたハニカムセグメント1の長目封止部形成側端部(切り欠き部形成予定部)を、長目封止部24が所定の深さ残るようにエンドミル26にて切削することによって、長セグメント1bの目封止部25と同様の深さの目封止部25を有する短セグメント1aを形成し、所望の目封止ハニカム構造体20bを得る。このような製造方法においては、接合、外周加工までは、従来の目封止ハニカム構造体10の製造方法における技術を用いることができるため好ましい。尚、この時、エンドミル26による切削は、接合材層3に沿って行われるため、切削時のハニカムセグメント1の破損及び切削後のハニカムセグメント1(1a、1b)の強度低下等の問題は発生しない。
【0046】
また、複数のハニカムセグメント1(1a、1b)が接合材層3を介して一体的に接合されてなる接合型の目封止ハニカム構造体20bは、短セグメント1aとして、あらかじめ軸方向長さが長セグメント1bよりも短く形成された短セグメント1aを、長セグメント1bへ接合し、必要に応じてその外周を加工することでも製造することができる。
【0047】
まず、あらかじめ所定の長さに作製された短セグメント1a及び長セグメント1bの各接合面に接合材を塗布し、順次所望の個数及び組み合わせに従って積み上げ(図15参照)、切り欠き部形成予定側と反対の端面が揃うように互いに接合した後、加圧、乾燥し、ハニカムセグメント積層体30を得る(図16参照)。この時、エロージョン抑制のための切り欠き部2を形成するという観点から、短セグメント1aがハニカム構造体20bの隅部を構成するように、短セグメント1aをハニカムセグメント積層体30の角に配置することが好ましい(図13参照)。また、複数の短セグメント1aによって切り欠き部2を形成する場合には、複数の短セグメント1は、互いに隣接するように配置されることが好ましい(図14参照)。尚、図15は、ハニカムセグメントを積み上げる工程を模式的に示す工程図であり、図16は、ハニカムセグメント積層体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【0048】
次いで、得られたハニカムセグメント積層体30に必要に応じて外周加工を施し、所望の目封止ハニカム構造体20bを得る。このような製造方法においては、切削等の後工程を必要としないため、原料収率及びコストの点で好ましい。尚、この時短セグメント1aは、あらかじめ短セグメント1aに適した軸方向長さに作製したハニカムセグメント1に目封止部25を形成することで作製してもよいが、長セグメント1bとなるハニカムセグメント1と同じ軸方向長さのハニカムセグメント1に長目封止部24を形成し、長目封止部形成側端部を、ハニカムセグメント1全体が短セグメント1aに適した軸方向長さとなるように切断することで作製してもよい。
【0049】
一方、本発明の目封止ハニカム構造体20のうち、一体成形によって形成される一体型(モノリス型)の目封止ハニカム構造体20aは、上述した接合型の目封止ハニカム構造体20bのようにセグメント単位での切り欠き部2の形成が不可能であるため、以下の製造方法によって作製される。即ち、あらかじめ所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形されたハニカム成形体の切り欠き部形成予定部の所定のセル5に、長目封止部24を形成し、切り欠き部形成予定部以外の部分の所定のセル5に長目封止部24よりも深さの小さい目封止部25を形成し、更に切り欠き部形成予定部を所定の長さまで切削することによって製造することができる。
【0050】
より詳しくは、まず、乾燥後のハニカム成形体の一方の端面(切り欠き部形成予定側の端面)にマスクテープを貼着させ、目封止部形成予定箇所のうち切り欠き部形成予定部に相当する部分にのみ、レーザーによって孔を開け、ハニカム成形体のマスクの施された端部を十分な深さの目封止スラリーに浸漬させ、長目封止部24を形成する。この時、浸漬させる目封止スラリーの深さは、求める目封止ハニカム構造体の切り欠き部2の深さに応じて、適宜決定することができる。次に、残余の目封止部形成予定箇所(切り欠き部形成予定部以外の部分における目封止部形成予定箇所)にレーザーによって孔を開け、ハニカム成形体の該端部を0.5〜2.0mmの範囲の深さの目封止スラリーに浸漬させ、所望の深さの目封止部25を形成する。また、隣接するセル5が互いに反対側となる流通端部において目封止されるよう、他方の端部を、0.5〜2.0mmの範囲の深さの目封止スラリーに浸漬させ、目封止部25を形成する。目封止処理後のハニカム成形体に必要に応じて外周加工を施し、切り欠き部形成予定部を、長目封止部24が目封止部25と同様の深さ残るようエンドミル26にて切削することで、所望の目封止ハニカム構造体20aを得ることができる。尚、この時、切り欠き部形成予定側と反対の端部においては、セル5による目封止部深さの差異は無く、一定の深さを持つ目封止部25が形成されている。
【0051】
本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法によれば、用途や目的に応じて、所望の位置及び大きさに切り欠き部の形成された目封止ハニカム構造体を得ることができる。そのような目封止ハニカム構造体をDPFとして用いると、浄化装置内の限られたスペースにおいてエロージョン抑制効果を発揮するほか、特殊な形状のコンテナにも対応可能である等、車載用フィルタとして、様々な効果を発揮する。更に、本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法によれば、形状加工による浄化性能及び強度の低下が抑えられ、原料収率やコストの面でも優れた目封止ハニカム構造体を得ることができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
(比較例1)
炭化珪素組成粉末に、バインダ、分散剤、水等を加えて混練したセラミック成形材料を、直径144mmの径を持つ口金を用いて押出成形し、多孔質の隔壁により区画された流体の流路となる複数のセルを有した直径144mm×長さ152mmの円筒状の未焼成ハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体を140℃にて2時間乾燥し、隣接するセルが互いに反対側となる一方の端部において目封止されるよう、深さ6mmの目封止部を形成し、目封止ハニカム成形体を得た。得られた目封止ハニカム成形体の胴部外周にコーティング材を塗布し、700℃にて2時間乾燥硬化させ、直径144mm×長さ152mmの一体型の目封止ハニカム構造体を作製した。
【0054】
(実施例1)
比較例1の目封止ハニカム構造体の角部をエンドミルで切削し、断面辺長20mm×20mm、深さ3mmの切り欠き部を形成することによって、実施例1の一体型の目封止ハニカム構造体を作製した。
【0055】
(実施例2〜4)
切り欠き部の深さをそれぞれ表1の通りとしたほかは、実施例1と同様にして、実施例2〜4の一体型の目封止ハニカム構造体を作製した。
【0056】
(比較例2)
軸方向に垂直な方向における断面形状が一辺の長さ35mmの正方形であり、軸方向長さが152mmであり、目封止部の深さが6mmである16個のハニカムセグメントを用意し、各ハニカムセグメントの隣接するハニカムセグメントとの接合面に接合材を塗布後、互いに積み上げた。積み上げた16個のハニカムセグメントに外部より圧力を加え、全体を接合させた後、140℃にて2時間乾燥することにより、ハニカムセグメント積層体を得た。次に、得られたハニカムセグメント積層体の外周を円筒状に切削後、コーティング材を塗布し、700℃にて2時間乾燥硬化させ、直径144mm×長さ152mmの接合型の目封止ハニカム構造体を作製した。
【0057】
(実施例5)
長セグメントとして、軸方向に垂直な方向における断面形状が一辺の長さ35mmの正方形であり、軸方向長さが152mmであり、目封止部の深さが6mmである15個のハニカムセグメントを用意し、短セグメントとして、軸方向に垂直な方向における断面形状が一辺の長さ35mmの正方形であり、軸方向長さが149mmであり、目封止部の深さが6mmである1個のハニカムセグメントを用意し、各ハニカムセグメントの隣接するハニカムセグメントとの接合面に接合材を塗布後、互いに積み上げた。積み上げた合計16個のハニカムセグメントに外部より圧力を加え、全体を接合させた後、140℃にて2時間乾燥することにより、深さ3mmの切り欠き部を有するハニカムセグメント積層体を得た。この時、1個の短セグメントは、ハニカムセグメント積層体の角に配置された。また、すべてのハニカムセグメントは切り欠き部形成側と反対の端面が揃うように積層され、短セグメントによる段差、即ち切り欠き部は、一方の流通端部にのみ形成された。次に、得られたハニカムセグメント積層体の外周を円筒状に切削後、コーティング材を塗布し、700℃にて2時間乾燥硬化させ、直径144mm×長さ152mmの接合型の目封止ハニカム構造体を作製した。
【0058】
(実施例6〜8)
切り欠き部の深さがそれぞれ表1の通りとなるように、用いる短セグメントの軸方向長さを調製したほかは、実施例5と同様にして、実施例6〜8の接合型の目封止ハニカム構造体を作製した。
【0059】
(実施例9)
長セグメントを14個、短セグメントを2個用いたほかは、実施例5と同様にして、実施例9の接合型の目封止ハニカム構造体を作製した。尚、この時、2個の短セグメントは、互いに隣接するように、且つ、ハニカムセグメント積層体の隅部を構成するように配置された。
【0060】
(実施例10〜12)
切り欠き部の深さがそれぞれ表1の通りとなるように、用いる短セグメントの軸方向長さを調製したほかは、実施例9と同様にして、実施例10〜12の接合型の目封止ハニカム構造体を作製した。
【0061】
上記実施例1〜12及び比較例1,2について、得られた目封止ハニカム構造体をDPFとして用い、以下の方法にてエロージョン試験及び圧力損失測定試験を行った。
【0062】
(評価)
エロージョン試験:
エンジンベンチ(排気量2.0L)にて、床下位置にDPFを搭載し、異物として、直径約1.5mmの鉄球10個をDPF前段に入れておき、NEDCサイクルモードの繰り返し試験を実施した。100サイクル毎にPMエミッションを測定した。PMエミッションは、Euro.4にて規定されている測定方法に従い、重量方によるPM量を測定し、PMエミッション値が5mg/kmを超える際のサイクル数PM許容サイクル数として評価した。(エロージョンが進行すると、端面がえぐられていき、目封止が損失した時点でPMエミッション値が急上昇するため、PMエミッション値の観察により、許容サイクル数が分かる。)1サイクル11kmであるため、PM許容サイクル数よりPM許容距離[km]を算出した。結果を表1に示した。
【0063】
圧力損失測定試験:
バーナー燃焼によってスス(PM)を発生させる装置を用い、ガス流量2.0〜3.0Nm3/分、ガス温度150〜250℃の条件化で、DPFに4g/Lまでススを堆積させ、上記サイクルモードにて走行中70km/h時点でのDPF前後における圧力損失[kPa]を測定した。結果を表1に示した。
【0064】
【表1】
【0065】
切り欠き部を備えない従来のDPF(目封止ハニカム構造体)では、一体型である比較例1及び接合型である比較例2のいずれにおいても、PM許容距離の目標値である16万kmを達成しなかった。一方、切り欠き部を備えた本発明のDPF(目封止ハニカム構造体)では、切り欠き部を備えないものと比べて、PM許容距離が増し、エロージョン抑制において効果的であることが分かった。特に、5mm以上の深さを持つ切り欠き部を備えたDPFでは、目標とする16万km以上のPM許容量を達成しており、エロージョン抑制が更に効果的に機能することが分かった。また、切り欠き部の断面辺長に関しては、断面辺長が20mm×20mmのものも、断面辺長が60mm×32mmのものも、同様にエロージョン抑制効果が見られ、このことから、エロージョン抑制効果は、切り欠き部の断面辺長によらず、主に深さによるものであることが分かった。これは、エンジン振動により異物が転がる際に、排ガスの流れに沿って主に軸方向にのみ転がるためと考えられる。また、本条件下においては、圧力損失が6kPaを超えると、DPFの車両搭載による車両燃費の悪化率が5%を超えてしまい好ましくないが、切り欠き部の深さが35mm以下の時には、圧力損失を、目標とする6kPa未満に抑えることができることが分かった。即ち、表1の結果から、特に好ましい切り欠き部深さは、断面辺長にかかわらず5mm〜35mmであることが分かった。また、表1の結果から、接合型のDPFは、一体型のDPFと比べて、エロージョン抑制効果が高いことが分かったが、これは、接合型のDPFにおいては、切り欠き部がセグメント基材よりも強度の高い接合材で囲まれており、より耐久性に優れるためと考えられる。
【0066】
(実施例13)
長セグメントとして、軸方向に垂直な方向における断面形状が一辺の長さ36.2mmの正方形であり、軸方向長さが152.4mmである14個のハニカムセグメントを用意し、短セグメントとして、軸方向に垂直な方向における断面形状が一辺の長さ36.2mmの正方形で、軸方向長さが137.4mmの2個のハニカムセグメントを用意した。各ハニカムセグメントは、隣接するセルが互いに反対側となる一方の端部において目封止されており、目封止部深さは6mmであった。各ハニカムセグメントの隣接するハニカムセグメントとの接合面に接合材を塗布後、短セグメント同士及び長セグメント同士を接合する接合材層の、流体の流入孔側端面(ここでは切り欠き部形成側端面)における平均厚さT(in)が1.0mm、短セグメントと長セグメントとを接合する接合材層の、流体の流入孔側端面における平均厚さTs(in)が1.1mmとなるように、互いに積み上げた。積み上げた合計16個のハニカムセグメントに外部より圧力を加え、全体を接合させた後、140℃にて2時間乾燥することにより、ハニカムセグメント積層体を得た。この時、2個の短セグメントは、互いに隣接するように、ハニカムセグメント積層体の角に配置された。また、すべてのハニカムセグメントは流体の流出孔側端面(ここでは切り欠き部形成側と反対の端面)が揃うように積層され、短セグメントによる段差、即ち切り欠き部は、流入孔側端部にのみ形成された。次に、得られたハニカムセグメント積層体の外周を円筒状に切削後、コーティング材を塗布し、700℃にて2時間乾燥硬化させ、直径143.8mm×長さ152.4mmの接合型の目封止ハニカム構造体を作製した。得られた目封止ハニカム構造体をDPFとして用い、再生限界試験及び圧力損失測定試験を行った。
【0067】
(実施例14〜17、比較例3〜5)
短セグメントと長セグメントとを接合する接合材層の、流体の流入孔側端面における平均厚さTs(in)を、それぞれ表2の通りとしたほかは、実施例13と同様にして、実施例14〜17及び比較例3〜5の目封止ハニカム構造体を作製した。得られた目封止ハニカム構造体をDPFとして用い、実施例13の場合と同様に再生限界試験及び圧力損失測定試験を行った。
【0068】
(評価)
再生限界試験:
目封止ハニカム構造体をDPFとして用い、順次、スス(PM)の堆積量を増加させてフィルタの再生(PMの燃焼)を行い、クラックが発生する限界を確認した。スス堆積量を10g/L、エンジン回転数を1800rpm、エンジントルクを90Nmに保った状態で、ポストインジェクションを入れ、DPF前後の圧力損失が落ち始めたところでポストインジェクションを切り、エンジンをアイドル状態に切り替えた時における短セグメント出口側端面での最大温度勾配[℃/cm]及び出口側端面から50mm位置での短セグメント−長セグメント間最大温度差[℃]を測定すると共に、試験後におけるDPFのクラック発生の有無を確認し、結果を表2に示した。クラック発生の有無については、端面クラック及びリングオフクラックについて観察し、クラック発生が確認された場合は×印で、確認されなかった場合は、○印にて示した。
【0069】
尚、ここで端面クラックとは、フィルタ再生時に堆積したススを燃焼させる際に、DPFの出口側端面に発生し得るクラックであり、主にセグメントが高温になる際のセグメント中心部とセグメント外周部との間に発生する温度勾配による熱応力に起因して発生するものを指す。即ち、ここで、短セグメントの出口側端面での最大温度勾配は、短セグメントに発生する端面クラックの発生原因の指標となる。測温方法としては、短セグメントの出口側端面の四隅及びセグメント中央部の計5箇所にて温度を測定し、フィルタ再生時における最大温度勾配を算出した。
【0070】
また、リングオフクラックとは、フィルタ再生時に堆積したススを燃焼させる際に、DPFの外周に沿って発生し得るクラックであり、主に、DPF内部で高温が発生した際の内側セグメントと外側セグメント間の温度差による熱膨張の差によって発生する引張応力、またはDPF中心部が高温になった際のDPF中心部と外周部の熱膨張差によって外側セグメントに発生する曲げ応力に起因して発生するものを指す。即ち、ここで、短セグメント−長セグメント間最大温度差は、短セグメント外周部に発生するリングオフクラックの発生原因の指標となる。測温方法としては、出口側端面から50mmの位置において短セグメントの中央部及び隣接する長セグメントの中央部にて温度を測定し、フィルタ再生時におけるセグメント間最大温度差を算出した。
【0071】
圧力損失測定試験:
バーナー燃焼によってススを発生させる装置を用い、ガス流量2.0〜3.0Nm3/分、ガス温度150〜250℃の条件化で、DPFにススを堆積させていき、スス堆積量との関係においてDPF前後における圧力損失を測定した。圧力損失は、ススを5g/Lまで堆積させた時点での各圧力損失値を用い、比較例3の圧力損失値を基準に、圧力損失上昇率[%]として、結果を表2に示した。
【0072】
【表2】
【0073】
表2より、流体の流入孔側端面(ここでは切り欠き部形成側端面)における接合材層の平均厚さTs(in)を大きくすることによって、短セグメント内のスス分布の偏りを防ぐことができ、フィルタ再生時の短セグメント内の温度勾配を小さくし、クラック(端面クラック)の発生を防止することができることが分かった。但し、Ts(in)を大きくしすぎると、フィルタ再生時の短セグメントと長セグメントの温度差が大きくなることにより、短セグメントを起点としてクラック(リングオフクラック)が発生しやすくなることが分かった。また、Ts(in)が大きくなるにつれて圧力損失は大きくなることが分かった。
【0074】
(実施例18)
長セグメントとして、軸方向に垂直な方向における断面形状が一辺の長さ36.2mmの正方形であり、軸方向長さが152.4mmである14個のハニカムセグメントを用意し、短セグメントとして、軸方向に垂直な方向における断面形状が一辺の長さ36.2mmの正方形、軸方向長さが137.4mmで、それぞれ、側面の一つ及び隣接する二つがローラーにより凹形状に加工された2個のハニカムセグメントを用意した。各ハニカムセグメントの隣接するハニカムセグメントとの接合面に接合材を塗布後、短セグメント同士及び長セグメント同士を接合する接合材層の、流体の流入孔側端面(ここでは切り欠き部形成側端面)における平均厚さT(in)が1.0mm、短セグメントと長セグメントとを接合する接合材層の、流体の流入孔側端面における平均厚さTs(in)が1.1mm、短セグメントと長セグメントとを接合する接合材層の、流体の流出孔側端面(ここでは切り欠き部形成側と反対の端面)における平均厚さTs(out)が0.99mm、となるように互いに積み上げた。積み上げた合計16個のハニカムセグメントに外部より圧力を加え、全体を接合させた後、140℃にて2時間乾燥することにより、ハニカムセグメント積層体を得た。この時、2個の短セグメントは、互いに隣接するように、ハニカムセグメント積層体の角に配置され、凹状に加工された側面が、それぞれ長セグメントと接するように位置決めされた。また、すべてのハニカムセグメントは流体の流出孔側端面が揃うように積層され、短セグメントによる段差、即ち切り欠き部は、流入孔側端部にのみ形成された。次に、得られたハニカムセグメント積層体の外周を円筒状に切削後、コーティング材を塗布し、700℃にて2時間乾燥硬化させ、直径143.8mm×長さ152.4mmの接合型の目封止ハニカム構造体を作製した。得られた目封止ハニカム構造体をDPFとして用い、実施例13の場合と同様に、再生限界試験及び圧力損失測定試験を行い、結果を表3に示した。
【0075】
但し、再生限界試験においては、短セグメントと隣接する長セグメントにおける出口側端面から50mm位置での最大温度勾配[℃/cm]を測定すると共に、試験後におけるDPFのクラック発生の有無を確認した。クラック発生の有無については、リングオフクラックについて観察し、クラック発生が確認された場合は×印で、確認されなかった場合は、○印にて示した。ここで、短セグメントと隣接する長セグメントの出口側端面から50mm位置での最大温度勾配は、長セグメントに発生するクラックに起因して、短セグメント外周部に発生するするリングオフクラックの発生原因の指標となる。測温方法としては、短セグメントと隣接する長セグメントの出口側端面から50mmの位置において、短セグメント側の側縁部及びセグメント中央部にて温度を測定し、フィルタ再生時における最大温度勾配を算出した。また、圧力損失測定試験においては、各圧力損失値を、実施例13の圧力損失値を基準に、圧力損失低下率[%]として示した。
【0076】
(実施例19〜21、比較例6,7)
短セグメントと長セグメントとを接合する接合材層の、流体の流出孔側端面における平均厚さTs(out)を、それぞれ表3の通りとしたほかは、実施例18と同様にして、実施例19〜21及び比較例6,7を作製した。得られた目封止ハニカム構造体をDPFとして用い、実施例18の場合と同様に、再生限界試験及び圧力損失測定試験を行い、結果を表3に示した。
【0077】
【表3】
【0078】
(実施例22〜25、比較例8,9)
短セグメントと長セグメントとを接合する接合材層の、流体の流入孔側端面における平均厚さTs(in)及び流出孔側端面における平均厚さTs(out)を、それぞれ表4の通りとしたほかは、実施例18と同様にして、実施例22〜25及び比較例8,9を作製した。得られた目封止ハニカム構造体をDPFとして用い、実施例18の場合と同様に、再生限界試験及び圧力損失測定試験を行い、結果を表4に示した。但し、圧力損失測定試験においては、各圧力損失値を、実施例17の圧力損失値を基準に、圧力損失低下率[%]として示した。
【0079】
【表4】
【0080】
表3及び表4より、流体の流出孔側端面における接合材層の平均厚さTs(out)を流入孔側端面における接合材層の平均厚さTs(in)に比べて小さくすることによって、フィルタの面積を十分に確保することができ、スス堆積による圧力損失を小さくできることが分かった。但し、Ts(out)を小さくしすぎると、ススの堆積したフィルタを再生する際に、長セグメントから短セグメントへの熱移動が大きくなることにより、長セグメントの外周部温度と内部温度の差が大きくなり、長セグメントを起点としてクラック(リングオフクラック)が発生しやすくなることが分かった。よって、短セグメントと長セグメントとを接合する接合材層の厚さを適切な範囲に制御することによって、フィルタの耐クラック性能を向上させると同時に、DPFの圧力損失上昇を最小限に抑えることができることが確認された。DPFの圧力損失を抑えることによって、車両の燃料消費量を低減することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の目封止ハニカム構造体は、排ガス浄化装置内において、省スペース化を実現すると共にエロージョン抑制効果を持つDPFとして好適に用いることができ、また、本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法によれば、所望の端部形状を有する目封止ハニカム構造体を容易に製造することができ、産業上の利用可能性は大なるものである。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】従来の目封止ハニカム構造体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】従来の目封止ハニカム構造体の別の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図3】本発明の目封止ハニカム構造体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図4】本発明の目封止ハニカム構造体の別の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図5A】本発明の目封止ハニカム構造体を搭載した排ガス浄化装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【図5B】本発明の目封止ハニカム構造体を搭載した排ガス浄化装置の別の実施形態を模式的に示す断面図である。
【図5C】本発明の目封止ハニカム構造体を搭載した排ガス浄化装置の更に別の実施形態を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の目封止ハニカム構造体の一実施形態に排ガスが流れ込む様子を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明の目封止ハニカム構造体の別の実施形態に排ガスが流れ込む様子を模式的に示す断面図である。
【図8】ハニカムセグメントの側面に凹状の窪みを形成する工程を模式的に示す工程図である。
【図9】ハニカムセグメント全体に弓状の曲がりを形成する工程を模式的に示す工程図である。
【図10】接合材スペーサを用いて短セグメントが長セグメントに対して斜めに接合された状態を模式的に示す断面図である。
【図11】長目封止部形成側端部切削前の目封止ハニカム構造体を模式的に示す軸方向における部分断面図である。
【図12】長目封止部形成側端部切削後の目封止ハニカム構造体を模式的に示す軸方向における部分断面図である。
【図13】本発明の目封止ハニカム構造体の一実施形態を切り欠き部形成方向から見た模式的正面図である。
【図14】本発明の目封止ハニカム構造体の別の実施形態を切り欠き部形成方向から見た模式的正面図である。
【図15】ハニカムセグメントを積み上げる工程を模式的に示す工程図である。
【図16】ハニカムセグメント積層体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0083】
1:ハニカムセグメント、1a:短セグメント、1b:長セグメント、2:切り欠き部、3:接合材層、5:セル、6:隔壁、8:DPF、9:ハニカム触媒体、10,10a,10b,20,20a,20b:目封止ハニカム構造体、11:流入孔側端面、12:流出孔側端面、13:異物捕集ポケット、14:切り欠き部の角部、15:コンテナ、16:窪み、17:押圧手段、18:型押曲がり形成手段、19:接合材スペーサ、21:凹状セグメント、22:弓状セグメント、23:斜めセグメント、24:長目封止部、25:目封止部、26:エンドミル、30:ハニカムセグメント積層体、110,120,130:排ガス浄化装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体及びその製造方法に関する。より詳しくは、切り欠き部が形成された目封止ハニカム構造体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関、ボイラー、化学反応機器、及び燃料電池用改質器等の触媒作用を利用する触媒用担体や、排ガス中の微粒子、特にディーゼル微粒子の捕集フィルタ(ディーゼルパティキュレートフィルタ:以下、「DPF」ということがある)等に、セラミックスからなるハニカム構造体が用いられている。
【0003】
このような目的に使用されるハニカム構造体は、一般に、多孔質の隔壁によって区画された流体の流路となる複数のセルを有し、特に、微粒子捕集フィルタとして用いられる場合には、端面が市松模様状を呈するように、隣接するセルが互いに反対側の端部において目封止された構造を有する。このような構造を有するハニカム構造体において、被処理流体は流入孔側端面が封止されていないセル、即ち流出孔側端面が封止されているセルに流入し、多孔質の隔壁を通って隣のセル、即ち、流入孔側端面が封止され、流出孔側端面が封止されていないセルから排出される。この際、隔壁がフィルタとなり、例えば、DPFとして使用した場合には、ディーゼルエンジンから排出されるスート(スス)等の粒子状物質(パティキュレート・マター:以下「PM」ということがある)が隔壁に捕捉され隔壁上に堆積する。
【0004】
ディーゼル機関においては、上記のようなハニカム構造体は、通常、DPFとしてエンジン下流側の排ガスの流路中に配設され、エンジンから排出される排ガスを通過させ浄化する機能を果たす。この時、排ガス上流側から流れてくる、流路内壁の錆等の剥れ、溶接屑、組み付け時に流路に入り込んだゴミ等の固体、或いは凝縮水のような液体が、排ガスと共に高速で流路の内壁、或いは流路中に配設されたハニカム構造体に衝突することにより、これらを破損せしめることがある。特に固体の異物は、エンジン振動によりDPFの流入孔側端面において跳ねるため、DPFの目封止部等をえぐり、捕集効率の低下を招くことがある。この作用は通常エロージョンと呼ばれ、流路及びハニカム構造体の長期耐久性を維持する観点から、大きな問題となっていた。
【0005】
エロージョン問題解決のため、従来、破損を受ける恐れのある流路内壁或いはハニカム構造体の上流側に、金網やじゃま板を設け、異物が直接高速で衝突することを防ぐ工夫がなされてきたが、固体や液体の異物を十分なレベルまで除去することができず、長期耐久性を確保するには至らなかった。即ち、排ガスの流れの上流側から飛来してきた異物により、流路内壁表面の損傷やハニカム構造体の破損が発生することがあった。そこで、より確実に流路内の異物を除去し、浄化装置の耐久性を強化することのできる工夫が求められており、例えば、特許文献1には、ハニカム構造体の上流側の流路上に、排ガスの流れ変更手段及び異物捕集部を設けた流路が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平9−206526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に開示されたガス流路は、排ガスの流れ変更手段により排ガスの流れを流路の外周方向へ向け、流路内壁に設置された、排ガスの上流方向に向いた開口部を有するポケット状の異物捕集部によって、排ガス中の異物を物理的に捕集するものであり、流路内を異物が跳ねることによるエロージョン問題に対して効果を奏するものであるが、排ガスの流路を流れ方向に長く設計する必要があり、排ガス浄化装置全体が大きくなってしまうという問題があった。また、流路径を変えずにポケットをつけると、流路断面が小さくなるため圧力損失が上がり、エンジン出力低下の懸念があり、流路径を大きくしてポケットをつけると、流路断面が大きくなり、車両床下搭載時の最低地上高確保のため、車高を上げなくてはならなくなる。車体への搭載スペースに制約がある点を考えると、排ガス浄化装置は可能な限り小さく設計されることが望ましく、特許文献1に開示された流路はその意味で十分とは言えなかった。
【0008】
本発明はかかる従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、エロージョン抑制効果及びサイズダウンを両立させた排ガス浄化装置において用いられ、形状加工による浄化性能及び強度の低下が抑えられ、原料収率やコストの面でも優れた目封止ハニカム構造体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題解決のため鋭意検討した結果、多孔質の隔壁によって区画された流体の流路となる複数のセルを有し、端面が市松模様状を呈するように、隣接するセルが互いに反対側となる一方の端部において目封止された構造を有する目封止ハニカム構造体において、流体の流通端部の一部に切り欠き部を有し、切り欠き部を構成する所定のセルの端部にも目封止が施された構成とすることによって、切り欠き部がエロージョン抑制に効果的に働き、且つ切り欠き部の体積分の省スペースを実現することが可能であることに想到した。更に本発明者らは、目封止ハニカム構造体に切り欠き部を形成することによって引き起こされることが想定される、強度低下、再生限界低下、圧力損失増加等の諸問題についても鋭意検討し、複数のハニカムセグメントを接合材層を介して一体的に接合した目封止ハニカム構造体において、接合材層の厚さ及び形状を所定のものとすることにより解決できることに想到し、本発明を完成させた。即ち、本発明によれば、十分な浄化性能と強度を備え、所望の端面形状を有する目封止ハニカム構造体及びその製造方法、即ち、以下の目封止ハニカム構造体及びその製造方法が提供される。
【0010】
[1] 多孔質の隔壁により区画された流体の流路となる複数のセルを有し、隣接するセルが互いに反対側となる一方の端部において目封止されたディーゼルパティキュレートフィルタ用の目封止ハニカム構造体であって、前記流体の流通端部の一部に切り欠き部を有し、前記切り欠き部を構成する所定のセルにおいても、前記隣接するセルが互いに反対側となる前記一方の端部において目封止された目封止ハニカム構造体。
【0011】
[2] 複数のハニカムセグメントが、接合材層を介して一体的に接合されてなる前記[1]に記載の目封止ハニカム構造体。
【0012】
[3] 前記複数のハニカムセグメントのうち、所定のハニカムセグメントの軸方向長さが、残余のハニカムセグメントの軸方向長さよりも短く構成されることによって、前記切り欠き部がハニカムセグメント単位で形成された前記[2]に記載の目封止ハニカム構造体。
【0013】
[4] 前記切り欠き部が、前記流体の流入孔側端部に形成され、前記所定のハニカムセグメントである短セグメントと前記残余のハニカムセグメントである長セグメントとを接合する前記接合材層の、前記流体の流入孔側端面における平均厚さTs(in)と、前記短セグメント同士及び前記長セグメント同士を接合する前記接合材層の、前記流入孔側端面における平均厚さT(in)との関係が、Ts(in)>T(in)である前記[3]に記載の目封止ハニカム構造体。
【0014】
[5] 前記平均厚さTs(in)と前記平均厚さT(in)との関係が、Ts(in)=(1.1〜5.0)×T(in)である前記[4]に記載の目封止ハニカム構造体。
【0015】
[6] 前記短セグメントと前記長セグメントとを接合する前記接合材層の、前記流体の流出孔側端面における平均厚さTs(out)と前記平均厚さTs(in)との関係が、Ts(out)<Ts(in)であり、前記接合材層の厚さが、前記平均厚さTs(in)から前記平均厚さTs(out)にかけて漸減する前記[4]又は[5]に記載の目封止ハニカム構造体。
【0016】
[7] 前記平均厚さTs(out)と前記平均厚さTs(in)との関係が、Ts(out)≦0.9×Ts(in)且つTs(out)≧0.2mmである前記[6]に記載の目封止ハニカム構造体。
【0017】
[8] 前記短セグメントが、接合材スペーサを用いて前記長セグメントに対して斜めに接合された斜めセグメントである前記[4]〜[7]のいずれかに記載の目封止ハニカム構造体。
【0018】
[9] 前記[8]に記載の目封止ハニカム構造体の製造方法であって、前記短セグメントと、隣接する前記長セグメントとの間の接合面において、前記流入孔側端面における前記接合材スペーサのハニカム構造体の軸方向に垂直な方向における厚みであるS(in)と、前記流出孔側端面における前記接合材スペーサのハニカム構造体の軸方向に垂直な方向における厚みであるS(out)との関係が、S(out)≦0.9×S(in)且つS(out)≧0.2mmとなるように、異なる厚みの複数の接合材スペーサを用いて、前記短セグメントを前記長セグメントに対して斜めに接合することで、前記切り欠き部を有する目封止ハニカム構造体を形成する目封止ハニカム構造体の製造方法。
【0019】
[10] 前記[3]〜[8]のいずれかに記載の目封止ハニカム構造体の製造方法であって、前記所定のハニカムセグメントである短セグメントとされる予定の、長目封止部の形成されたハニカムセグメントを、前記長目封止部よりも深さの小さい目封止部の形成された、前記残余のハニカムセグメントである長セグメントへ接合した後、前記ハニカムセグメントの長目封止部形成側端部を所定の長さまで切削することで、前記切り欠き部を有する目封止ハニカム構造体を形成する目封止ハニカム構造体の製造方法。
【0020】
[11] 前記[3]〜[8]のいずれかに記載の目封止ハニカム構造体の製造方法であって、あらかじめ軸方向長さが前記残余のハニカムセグメントである長セグメントよりも短く形成された、前記所定のハニカムセグメントである短セグメントを、前記長セグメントへ接合することで、前記切り欠き部を有する目封止ハニカム構造体を形成する目封止ハニカム構造体の製造方法。
【0021】
[12] 前記短セグメントを、長目封止部を形成した前記長セグメントの、長目封止部形成側端部を所定の長さで切断することで形成する前記[11]に記載の目封止ハニカム構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の目封止ハニカム構造体は、流体の流入孔側端部において所望の切り欠き部を形成することが可能であり、目的に応じた端部形状を持つ目封止ハニカム構造体とすることができる。また、本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法によれば、製造時の破損や強度低下の問題、また、使用時の再生限界低下、圧力損失増加等の問題も改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0024】
図1及び図2は、従来の目封止ハニカム構造体の各実施形態を模式的に示す斜視図であり、図3及び図4は、本発明の目封止ハニカム構造体の各実施形態を模式的に示す斜視図である。また、図5A〜5Cは、本発明の目封止ハニカム構造体を搭載した排ガス浄化装置の各実施形態を模式的に示す断面図である。尚、図5A及び5Bにおいては、図中向かって左側が排ガスの流入孔側であり、図中向かって右側が排ガスの流出孔側となる。
【0025】
排ガス浄化装置においてDPFとして用いられる従来の目封止ハニカム構造体としては、例えば図1に示すように、あらかじめ所望の形状に一体成形され、多孔質の隔壁6により区画された流体の流路となる複数のセル5を有し、隣接するセル5が互いに反対側となる流通端部において目封止され、目封止部25の形成された目封止ハニカム構造体10aがある。また、図2に示すように、多孔質の隔壁6によって区画された流体の流路となる複数のセル5を有するハニカムセグメント1が、接合材層3を介して複数個一体的に接合され、所望の形状に成形された後、隣接するセル5が互いに反対側となる流通端部において目封止され、目封止部25の形成された目封止ハニカム構造体10b等、軸方向端部に凹凸のない円筒形状の目封止ハニカム構造体10がある。
【0026】
一方、本発明の目封止ハニカム構造体は、図3及び図4に示すように、多孔質の隔壁6により区画された流体の流路となる複数のセル5を有し、隣接するセル5が互いに反対側となる一方の端部において目封止され、目封止部25の形成されたディーゼルパティキュレートフィルタ用の目封止ハニカム構造体であって、流体の流通端部の一部に切り欠き部2を有し、切り欠き部2を構成する所定のセル5においても、隣接するセル5が互いに反対側となる一方の端部において目封止された目封止ハニカム構造体20である。
【0027】
本発明の目封止ハニカム構造体20としては、例えば、図3に示すように、あらかじめ所望の形状に成形され、隣接するセル5が互いに反対側となる一方の端部において目封止され、目封止部25の形成された一体型の目封止ハニカム構造体であって、流体の流通端部の一部に切り欠き部2を有し、前記切り欠き部2を構成する所定のセル5においても、隣接するセル5が互いに反対側となる一方の端部において目封止された目封止ハニカム構造体20aがある。また、図4に示すように、多孔質の隔壁6によって区画された流体の流路となる複数のセル5を有し、隣接するセル5が互いに反対側となる一方の端部において目封止され、目封止部25の形成された複数のハニカムセグメント1(1a,1b)が接合材層3を介して一体的に接合され、所望の形状に成形された接合型の目封止ハニカム構造体であって、流体の流通端部の一部に切り欠き部2を有し、切り欠き部2を構成する所定のセル5においても、隣接するセル5が互いに反対側となる一方の端部において目封止された目封止ハニカム構造体20bがある。
【0028】
本発明の目封止ハニカム構造体20の全体の形状としては、排ガス浄化フィルタとして好適な、円筒形状、オーバル形状等所望の形状であって、流体の流通端部に切り欠き部2を有する形状とすることができる。本発明の目封止ハニカム構造体20において、切り欠き部2は、用途及び目的に応じて所望の位置及び所望の大きさに形成され、同時に、切り欠き部2を含む流通端面全域において所定のセル5に目封止が施され、形状加工による浄化性能の低下が抑えられている。
【0029】
一体成形された目封止ハニカム構造体20a、及び接合成形された目封止ハニカム構造体20bを構成するハニカムセグメント1の材料としては、セラミックが好ましく、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、チタン酸アルミニウム、鉄−クロム−アルミニウム系合金からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。特に、図4に示す目封止ハニカム構造体20bのように、複数のハニカムセグメント1(1a,1b)が接合材層3を介して一体的に接合される場合には、これらの材料の中でも、炭化珪素又は珪素−炭化珪素系複合材料がより好ましい。炭化珪素は、熱膨張率が比較的大きいため、炭化珪素を骨材として形成されるハニカム構造体は、大きなものを形成すると使用時に熱衝撃により欠陥が生じることがあったが、複数のハニカムセグメント1が接合材層3を介して一体的に接合された構造においては、炭化珪素の膨張収縮が接合材層3により緩衝され、ハニカムセグメント1の欠陥の発生を防止することができるためである。
【0030】
また、接合材層3の材料としては、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、SiC粒子、有機バインダ、発泡樹脂等の充填材を水等の分散媒に分散させてスラリー状にしたものを用いることができる。
【0031】
図5Aに示す排ガス浄化装置110では、コンテナ15内のハニカム触媒体9の後段に、切り欠き部2の形成された目封止ハニカム構造体20がDPF8として設置されている。この時DPF8は、排ガス浄化装置が車体に搭載された際に切り欠き部2が排ガスの流れの上流側に面し、且つ排ガス浄化装置110の下側(地面側)を向くように位置決めされることが好ましい。排ガスの流れの上流側から流れて来る固体や液体の異物は、重力に従って、排ガス浄化装置110の下側に下りて行く。そのため、コンテナ15の内壁及びDPF8の流入孔側端面11は、特にその下側に損傷が集中しやすい。切り欠き部2を下側に向けてDPF8を設置することによって、コンテナ15下部に異物を跳ねさせるスペースができ、DPF8の端面に異物が直接衝突する頻度を低減すると共に、衝突時の衝撃を軽減する効果がある。即ち、本発明の目封止ハニカム構造体20を用いれば、従来のように、排ガス浄化装置の流路上に金網や異物捕集ポケット等の余分な設備を備えなくとも、エロージョンによる耐久性悪化を抑制することができ、排ガス浄化装置における省スペース化、省コスト化を実現することができる。
【0032】
図5Bに示す排ガス浄化装置120では、コンテナ15のハニカム触媒体9の後段に、切り欠き部2の形成された目封止ハニカム構造体20がDPF8として設置されており、更に、排ガスと共に上流から流れ込みDPF8の破損の原因となる異物を捕集するための異物捕集ポケット13が設けられ、DPF8の切り欠き部2を、異物を異物捕集ポケット13へと逃がす誘導路として機能させている。このような構成とすることによって、流れ込む多くの異物を、DPF8の流入孔側端面11に衝突させることなく、異物捕集ポケット13へと回収することができる。この時DPF8は、図5Aに示す排ガス浄化装置110と同様、排ガス浄化装置120が車体に搭載された際に切り欠き部2が排ガスの流れの上流側に面し、且つ排ガス浄化装置120の下側(地面側)を向くように位置決めされることが好ましい。
【0033】
また、本発明の目封止ハニカム構造体20は、限られたスペース内においてエロージョン抑制効果を発揮するだけでなく、図5Cに示すように、特殊な形状のコンテナ15にも対応可能であるという利点を有する。例えば車体下部のように、利用できるスペースに制約がある場合には、排ガス浄化装置そのものを小さく設計すると同時に、車体に搭載後の排ガス浄化装置の周辺にデッドスペースを発生させないことも、省スペースの有効な手立てである。即ち、車体へ排ガス浄化装置を搭載させる際に、排ガス浄化装置のコンテナ形状をあらかじめ搭載箇所の空間形状に合わせて変形させておけば、無駄な空間が発生せず、限られたスペースを最大限に活用することができるが、そのためには、コンテナ形状にあわせた形状のハニカム構造体が必要となり、本発明の目封止ハニカム構造体20が好適に用いられる。
【0034】
図6は、本発明の目封止ハニカム構造体の一実施形態に排ガスが流れ込む様子を模式的に示す断面図であり、図7は、本発明の目封止ハニカム構造体の別の実施形態に排ガスが流れ込む様子を模式的に示す断面図である。この時、図6及び図7中に示される目封止ハニカム構造体20bにおいては、排ガスは、切り欠き部の角部14を避けるようにして流れるため、図6中、切り欠き部の角部14の下側に位置するセルには、排ガスが流れ込みにくくなり、従って、該セルの隔壁へのPMの堆積が少なくなり、短セグメント1a内におけるPMの堆積量が不均一になることがある。その結果、堆積したPMを燃焼させてフィルタの再生処理を行う際に、PM堆積量の差から生じる熱応力の偏在が、クラックの発生へとつながる可能性がある。
【0035】
そこで、本発明の目封止ハニカム構造体20bにおいては、図7に示すように、短セグメント1aと長セグメント1bとを接合する接合材層3の、流体の流入孔側端面11(ここでは切り欠き部形成側端面)における平均厚さTs(in)と、短セグメント1a同士及び長セグメント1b同士を接合する接合材層3の、流入孔側端面11における平均厚さT(in)との関係が、Ts(in)>T(in)であることが好ましい。このような設計とすると、切り欠き部の角部14下流側の排ガスの流れ込みにくいエリアが、セル5ではなく接合材層3となるので、短セグメント1a内でのPMの堆積不均一を抑制することができ、フィルタ再生時の熱応力の偏在によるクラック発生を効果的に防止することができる。
【0036】
また、上記平均厚さTs(in)と平均厚さT(in)との関係は、Ts(in)=(1.1〜5.0)×T(in)であることが更に好ましい。Ts(in)<1.1×T(in)であると、短セグメント1a内でのPMの堆積不均一を防ぐことができず、クラック発生防止効果を得られないため好ましくない。一方、Ts(in)>5.0×T(in)であると、長セグメント1bと短セグメント1aの間の熱伝導が悪化してPM再生時に発生する温度差が大きくなり、クラックが発生しやすくなるため好ましくない。
【0037】
しかしながら、平均厚さTs(in)を通常よりも厚くすることによって、相対的に、接する短セグメントの軸方向と垂直な方向における幅が小さくなり、フィルタ面積が減少するため、使用時に圧力損失が増加することがある。そこで、本発明の目封止ハニカム構造体においては、図7に示すように、短セグメント1aと長セグメント1bとを接合する接合材層3の、流出孔側端面12(ここでは切り欠き部形成側と反対の端面)における平均厚さTs(out)と、上記平均厚さTs(in)との関係が、Ts(out)<Ts(in)であり、接合材層3の厚さが、平均厚さTs(in)から平均厚さTs(out)にかけて漸減することが好ましい。このような設計とすることによって、フィルタ面積の減少を最小限に抑え、使用時の圧力損失の増加を抑制することができる。
【0038】
また、上記平均厚さTs(out)と平均厚さTs(in)との関係は、Ts(out)≦0.9×Ts(in)且つTs(out)≧0.2mmであることが更に好ましい。Ts(out)<0.2mmであると、PM再生時の長セグメント1bから短セグメント1aへの熱移動が大きくなることにより長セグメント1bの外周部温度と内部温度の差が大きくなり、長セグメント1bを起点としてクラックが発生しやすくなる場合がある。一方、Ts(out)>0.9×Ts(in)であると、フィルタ面積の確保による使用時の圧力損失増加抑制効果が十分に得られない場合がある。
【0039】
この時、短セグメント1aとしては、図8に示すように、その側面の少なくとも一つに軸方向に凹状の窪み16を持つ凹状セグメント21を用いることが好ましい。より詳しくは、接合前の、乾燥焼成前に、未だ柔軟性を有した状態のハニカムセグメント1の側面の少なくとも一つに、ローラー等の押圧手段17を用いて凹状の窪み16を形成することで得た凹状セグメント21を、短セグメント1aとして用いることが好ましい。尚、図8は、ハニカムセグメントの一側面に凹状の窪みを形成する工程を模式的に示す工程図である。この時、窪み16のカーブ形状や、深さ等は、得られる目封止ハニカム構造体20bの接合材層厚さに合わせて、所望のものとすることができる。また、凹状セグメント21の作製にはローラー等の押圧手段17を用いるため、ハニカムセグメント1の側面のうち所望の側面に窪みを形成することが可能であり、短セグメント1aと長セグメント1bとを接合するすべての接合材層3を所望の厚さとすることができる。
【0040】
また、短セグメント1aとしては、図9に示すように、その側面の一つが軸方向に弓状に曲がっている弓状セグメント22を用いることも好ましい。より詳しくは、接合前の、乾燥焼成前に、未だ柔軟性を有した状態のハニカムセグメント1の側面の一つを、一方の面が水平で、他方の面に所定の形状の型が凸状に形成された型押曲がり形成手段18に当てて、ハニカムセグメント1全体に曲がりを発生させ、それを乾燥、焼成することで得た弓状セグメント22を、短セグメント1aとして用いることが好ましい。尚、図9は、ハニカムセグメント全体に弓状の曲がりを形成する工程を模式的に示す工程図である。この時、型押曲がり形成手段18の凸状の型は、得られる目封止ハニカム構造体20bの接合材層厚さに合わせて、所望のカーブ形状や深さ等に形成することができる。
【0041】
更に、短セグメント1aとしては、図10に示すように、接合材スペーサ19を用いて長セグメント1bに対して斜めに接合された斜めセグメント23を用いることも好ましい。図10は、接合材スペーサを用いて短セグメントが長セグメントに対して斜めに接合された状態を模式的に示す断面図である。
【0042】
斜めセグメント23を備えた目封止ハニカム構造体20bの製造方法としては、短セグメント1aと、隣接する長セグメント1bとの間の接合面において、流入孔側端面11(ここでは切り欠き部形成側端面)における接合材スペーサ19のハニカム構造体の軸方向に垂直な方向における厚みであるS(in)と、流出孔側端面12(ここでは切り欠き部形成側と反対の端面)における接合材スペーサ19のハニカム構造体の軸方向に垂直な方向における厚みであるS(out)との関係が、S(out)≦0.9×S(in)且つS(out)≧0.2mmとなるように、異なる厚みの複数の接合材スペーサ19を用いて、短セグメント1aを長セグメント1bに対して斜めに接合すればよい。この時、短セグメント1aは、長セグメント1bに対して傾いた状態で接合されるが、外周加工を施すことによって、所定の接合材層厚さを持つ目封止ハニカム構造体20bを得ることができる。
【0043】
本発明の目封止ハニカム構造体20のうち、複数のハニカムセグメント1(1a,1b)が接合材層3を介して一体的に接合されてなる接合型の目封止ハニカム構造体20(20b)は、図11及び図12に示すように、短セグメント1aとされる予定の長目封止部24の形成されたハニカムセグメント1を、長目封止部24よりも深さの小さい目封止部25の形成された長セグメント1bへ接合した後、ハニカムセグメント1の長目封止部形成側端部を所定の長さまで切削することで、製造することができる。尚、図11は長目封止部形成側端部切削前の目封止ハニカム構造体を模式的に示す軸方向における部分断面図であり、図12は、長目封止部形成側端部切削後の目封止ハニカム構造体を模式的に示す軸方向における部分断面図である。図11及び図12においては、作図の都合上、切り欠き部形成予定側と反対の端部における目封止部25は図から捨象したが、いずれのハニカムセグメント1(1a,1b)においても、隣接するセル5は互いに反対側となる流通端部において目封止されており、切り欠き部形成予定側と反対の端部においては、ハニカムセグメント1(1a,1b)による目封止部深さの差異は無く、一定の深さを持つ目封止部25が形成されている。
【0044】
まず、乾燥後のハニカムセグメント1の一方の端面(切り欠き部形成予定側の端面)にマスクテープを貼着させ、目封止部形成予定箇所にのみ、レーザーによって孔を開け、長セグメント1bとなるものに関しては、ハニカムセグメント1のマスクの施された側の端部を0.5〜2.0mmの範囲の深さの目封止スラリーに浸漬させ、目封止部25を形成する。短セグメント1aとなるものに関しては、長セグメント1bとなるものと同様にして、ハニカムセグメント1のマスクの施された側の端部を所定の深さの目封止スラリーに浸漬させ、長目封止部24を形成する。この時、浸漬させる目封止スラリーの深さは、求める目封止ハニカム構造体20bの切り欠き部2の深さに応じて、適宜決定することができる。更に、いずれのハニカムセグメント1においても、隣接するセル5が互いに反対側となる流通端部において目封止されるよう、他方の端面(切り欠き部形成予定側と反対の端面)にもマスクテープを貼着させ、目封止部形成予定箇所にのみ、レーザーによって孔を開け、その端部を、0.5〜2.0mmの範囲の深さの目封止スラリーに浸漬させ、目封止部25を形成する。次に、それぞれのハニカムセグメント1を所望の個数及び組み合わせに従って積み上げ、各ハニカムセグメント1の両端が揃うように互いに接合した後、加圧、乾燥し、ハニカムセグメント積層体30を得る。この時、エロージョン抑制のための切り欠き部2を形成するという観点から、短セグメント1aがハニカム構造体20bの隅部を構成するように、短セグメント1aとなるハニカムセグメント1をハニカムセグメント積層体30の角に配置することが好ましい(図13参照)。また、複数の短セグメント1aによって切り欠き部2を形成する場合には、短セグメント1aとなる複数のハニカムセグメント1は、互いに隣接するように配置されることが好ましい(図14参照)。尚、図13は、本発明の目封止ハニカム構造体の一実施形態を切り欠き部形成方向から見た模式的正面図であり、図14は、本発明の目封止ハニカム構造体の別の実施形態を切り欠き部形成方向から見た模式的正面図である。図13及び図14においては、作図の都合上、セル5、隔壁6、及び目封止部25は図から捨象した。
【0045】
次いで、得られたハニカムセグメント積層体30に必要に応じて外周加工を施し、長目封止部24の形成されたハニカムセグメント1の長目封止部形成側端部(切り欠き部形成予定部)を、長目封止部24が所定の深さ残るようにエンドミル26にて切削することによって、長セグメント1bの目封止部25と同様の深さの目封止部25を有する短セグメント1aを形成し、所望の目封止ハニカム構造体20bを得る。このような製造方法においては、接合、外周加工までは、従来の目封止ハニカム構造体10の製造方法における技術を用いることができるため好ましい。尚、この時、エンドミル26による切削は、接合材層3に沿って行われるため、切削時のハニカムセグメント1の破損及び切削後のハニカムセグメント1(1a、1b)の強度低下等の問題は発生しない。
【0046】
また、複数のハニカムセグメント1(1a、1b)が接合材層3を介して一体的に接合されてなる接合型の目封止ハニカム構造体20bは、短セグメント1aとして、あらかじめ軸方向長さが長セグメント1bよりも短く形成された短セグメント1aを、長セグメント1bへ接合し、必要に応じてその外周を加工することでも製造することができる。
【0047】
まず、あらかじめ所定の長さに作製された短セグメント1a及び長セグメント1bの各接合面に接合材を塗布し、順次所望の個数及び組み合わせに従って積み上げ(図15参照)、切り欠き部形成予定側と反対の端面が揃うように互いに接合した後、加圧、乾燥し、ハニカムセグメント積層体30を得る(図16参照)。この時、エロージョン抑制のための切り欠き部2を形成するという観点から、短セグメント1aがハニカム構造体20bの隅部を構成するように、短セグメント1aをハニカムセグメント積層体30の角に配置することが好ましい(図13参照)。また、複数の短セグメント1aによって切り欠き部2を形成する場合には、複数の短セグメント1は、互いに隣接するように配置されることが好ましい(図14参照)。尚、図15は、ハニカムセグメントを積み上げる工程を模式的に示す工程図であり、図16は、ハニカムセグメント積層体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【0048】
次いで、得られたハニカムセグメント積層体30に必要に応じて外周加工を施し、所望の目封止ハニカム構造体20bを得る。このような製造方法においては、切削等の後工程を必要としないため、原料収率及びコストの点で好ましい。尚、この時短セグメント1aは、あらかじめ短セグメント1aに適した軸方向長さに作製したハニカムセグメント1に目封止部25を形成することで作製してもよいが、長セグメント1bとなるハニカムセグメント1と同じ軸方向長さのハニカムセグメント1に長目封止部24を形成し、長目封止部形成側端部を、ハニカムセグメント1全体が短セグメント1aに適した軸方向長さとなるように切断することで作製してもよい。
【0049】
一方、本発明の目封止ハニカム構造体20のうち、一体成形によって形成される一体型(モノリス型)の目封止ハニカム構造体20aは、上述した接合型の目封止ハニカム構造体20bのようにセグメント単位での切り欠き部2の形成が不可能であるため、以下の製造方法によって作製される。即ち、あらかじめ所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形されたハニカム成形体の切り欠き部形成予定部の所定のセル5に、長目封止部24を形成し、切り欠き部形成予定部以外の部分の所定のセル5に長目封止部24よりも深さの小さい目封止部25を形成し、更に切り欠き部形成予定部を所定の長さまで切削することによって製造することができる。
【0050】
より詳しくは、まず、乾燥後のハニカム成形体の一方の端面(切り欠き部形成予定側の端面)にマスクテープを貼着させ、目封止部形成予定箇所のうち切り欠き部形成予定部に相当する部分にのみ、レーザーによって孔を開け、ハニカム成形体のマスクの施された端部を十分な深さの目封止スラリーに浸漬させ、長目封止部24を形成する。この時、浸漬させる目封止スラリーの深さは、求める目封止ハニカム構造体の切り欠き部2の深さに応じて、適宜決定することができる。次に、残余の目封止部形成予定箇所(切り欠き部形成予定部以外の部分における目封止部形成予定箇所)にレーザーによって孔を開け、ハニカム成形体の該端部を0.5〜2.0mmの範囲の深さの目封止スラリーに浸漬させ、所望の深さの目封止部25を形成する。また、隣接するセル5が互いに反対側となる流通端部において目封止されるよう、他方の端部を、0.5〜2.0mmの範囲の深さの目封止スラリーに浸漬させ、目封止部25を形成する。目封止処理後のハニカム成形体に必要に応じて外周加工を施し、切り欠き部形成予定部を、長目封止部24が目封止部25と同様の深さ残るようエンドミル26にて切削することで、所望の目封止ハニカム構造体20aを得ることができる。尚、この時、切り欠き部形成予定側と反対の端部においては、セル5による目封止部深さの差異は無く、一定の深さを持つ目封止部25が形成されている。
【0051】
本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法によれば、用途や目的に応じて、所望の位置及び大きさに切り欠き部の形成された目封止ハニカム構造体を得ることができる。そのような目封止ハニカム構造体をDPFとして用いると、浄化装置内の限られたスペースにおいてエロージョン抑制効果を発揮するほか、特殊な形状のコンテナにも対応可能である等、車載用フィルタとして、様々な効果を発揮する。更に、本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法によれば、形状加工による浄化性能及び強度の低下が抑えられ、原料収率やコストの面でも優れた目封止ハニカム構造体を得ることができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
(比較例1)
炭化珪素組成粉末に、バインダ、分散剤、水等を加えて混練したセラミック成形材料を、直径144mmの径を持つ口金を用いて押出成形し、多孔質の隔壁により区画された流体の流路となる複数のセルを有した直径144mm×長さ152mmの円筒状の未焼成ハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体を140℃にて2時間乾燥し、隣接するセルが互いに反対側となる一方の端部において目封止されるよう、深さ6mmの目封止部を形成し、目封止ハニカム成形体を得た。得られた目封止ハニカム成形体の胴部外周にコーティング材を塗布し、700℃にて2時間乾燥硬化させ、直径144mm×長さ152mmの一体型の目封止ハニカム構造体を作製した。
【0054】
(実施例1)
比較例1の目封止ハニカム構造体の角部をエンドミルで切削し、断面辺長20mm×20mm、深さ3mmの切り欠き部を形成することによって、実施例1の一体型の目封止ハニカム構造体を作製した。
【0055】
(実施例2〜4)
切り欠き部の深さをそれぞれ表1の通りとしたほかは、実施例1と同様にして、実施例2〜4の一体型の目封止ハニカム構造体を作製した。
【0056】
(比較例2)
軸方向に垂直な方向における断面形状が一辺の長さ35mmの正方形であり、軸方向長さが152mmであり、目封止部の深さが6mmである16個のハニカムセグメントを用意し、各ハニカムセグメントの隣接するハニカムセグメントとの接合面に接合材を塗布後、互いに積み上げた。積み上げた16個のハニカムセグメントに外部より圧力を加え、全体を接合させた後、140℃にて2時間乾燥することにより、ハニカムセグメント積層体を得た。次に、得られたハニカムセグメント積層体の外周を円筒状に切削後、コーティング材を塗布し、700℃にて2時間乾燥硬化させ、直径144mm×長さ152mmの接合型の目封止ハニカム構造体を作製した。
【0057】
(実施例5)
長セグメントとして、軸方向に垂直な方向における断面形状が一辺の長さ35mmの正方形であり、軸方向長さが152mmであり、目封止部の深さが6mmである15個のハニカムセグメントを用意し、短セグメントとして、軸方向に垂直な方向における断面形状が一辺の長さ35mmの正方形であり、軸方向長さが149mmであり、目封止部の深さが6mmである1個のハニカムセグメントを用意し、各ハニカムセグメントの隣接するハニカムセグメントとの接合面に接合材を塗布後、互いに積み上げた。積み上げた合計16個のハニカムセグメントに外部より圧力を加え、全体を接合させた後、140℃にて2時間乾燥することにより、深さ3mmの切り欠き部を有するハニカムセグメント積層体を得た。この時、1個の短セグメントは、ハニカムセグメント積層体の角に配置された。また、すべてのハニカムセグメントは切り欠き部形成側と反対の端面が揃うように積層され、短セグメントによる段差、即ち切り欠き部は、一方の流通端部にのみ形成された。次に、得られたハニカムセグメント積層体の外周を円筒状に切削後、コーティング材を塗布し、700℃にて2時間乾燥硬化させ、直径144mm×長さ152mmの接合型の目封止ハニカム構造体を作製した。
【0058】
(実施例6〜8)
切り欠き部の深さがそれぞれ表1の通りとなるように、用いる短セグメントの軸方向長さを調製したほかは、実施例5と同様にして、実施例6〜8の接合型の目封止ハニカム構造体を作製した。
【0059】
(実施例9)
長セグメントを14個、短セグメントを2個用いたほかは、実施例5と同様にして、実施例9の接合型の目封止ハニカム構造体を作製した。尚、この時、2個の短セグメントは、互いに隣接するように、且つ、ハニカムセグメント積層体の隅部を構成するように配置された。
【0060】
(実施例10〜12)
切り欠き部の深さがそれぞれ表1の通りとなるように、用いる短セグメントの軸方向長さを調製したほかは、実施例9と同様にして、実施例10〜12の接合型の目封止ハニカム構造体を作製した。
【0061】
上記実施例1〜12及び比較例1,2について、得られた目封止ハニカム構造体をDPFとして用い、以下の方法にてエロージョン試験及び圧力損失測定試験を行った。
【0062】
(評価)
エロージョン試験:
エンジンベンチ(排気量2.0L)にて、床下位置にDPFを搭載し、異物として、直径約1.5mmの鉄球10個をDPF前段に入れておき、NEDCサイクルモードの繰り返し試験を実施した。100サイクル毎にPMエミッションを測定した。PMエミッションは、Euro.4にて規定されている測定方法に従い、重量方によるPM量を測定し、PMエミッション値が5mg/kmを超える際のサイクル数PM許容サイクル数として評価した。(エロージョンが進行すると、端面がえぐられていき、目封止が損失した時点でPMエミッション値が急上昇するため、PMエミッション値の観察により、許容サイクル数が分かる。)1サイクル11kmであるため、PM許容サイクル数よりPM許容距離[km]を算出した。結果を表1に示した。
【0063】
圧力損失測定試験:
バーナー燃焼によってスス(PM)を発生させる装置を用い、ガス流量2.0〜3.0Nm3/分、ガス温度150〜250℃の条件化で、DPFに4g/Lまでススを堆積させ、上記サイクルモードにて走行中70km/h時点でのDPF前後における圧力損失[kPa]を測定した。結果を表1に示した。
【0064】
【表1】
【0065】
切り欠き部を備えない従来のDPF(目封止ハニカム構造体)では、一体型である比較例1及び接合型である比較例2のいずれにおいても、PM許容距離の目標値である16万kmを達成しなかった。一方、切り欠き部を備えた本発明のDPF(目封止ハニカム構造体)では、切り欠き部を備えないものと比べて、PM許容距離が増し、エロージョン抑制において効果的であることが分かった。特に、5mm以上の深さを持つ切り欠き部を備えたDPFでは、目標とする16万km以上のPM許容量を達成しており、エロージョン抑制が更に効果的に機能することが分かった。また、切り欠き部の断面辺長に関しては、断面辺長が20mm×20mmのものも、断面辺長が60mm×32mmのものも、同様にエロージョン抑制効果が見られ、このことから、エロージョン抑制効果は、切り欠き部の断面辺長によらず、主に深さによるものであることが分かった。これは、エンジン振動により異物が転がる際に、排ガスの流れに沿って主に軸方向にのみ転がるためと考えられる。また、本条件下においては、圧力損失が6kPaを超えると、DPFの車両搭載による車両燃費の悪化率が5%を超えてしまい好ましくないが、切り欠き部の深さが35mm以下の時には、圧力損失を、目標とする6kPa未満に抑えることができることが分かった。即ち、表1の結果から、特に好ましい切り欠き部深さは、断面辺長にかかわらず5mm〜35mmであることが分かった。また、表1の結果から、接合型のDPFは、一体型のDPFと比べて、エロージョン抑制効果が高いことが分かったが、これは、接合型のDPFにおいては、切り欠き部がセグメント基材よりも強度の高い接合材で囲まれており、より耐久性に優れるためと考えられる。
【0066】
(実施例13)
長セグメントとして、軸方向に垂直な方向における断面形状が一辺の長さ36.2mmの正方形であり、軸方向長さが152.4mmである14個のハニカムセグメントを用意し、短セグメントとして、軸方向に垂直な方向における断面形状が一辺の長さ36.2mmの正方形で、軸方向長さが137.4mmの2個のハニカムセグメントを用意した。各ハニカムセグメントは、隣接するセルが互いに反対側となる一方の端部において目封止されており、目封止部深さは6mmであった。各ハニカムセグメントの隣接するハニカムセグメントとの接合面に接合材を塗布後、短セグメント同士及び長セグメント同士を接合する接合材層の、流体の流入孔側端面(ここでは切り欠き部形成側端面)における平均厚さT(in)が1.0mm、短セグメントと長セグメントとを接合する接合材層の、流体の流入孔側端面における平均厚さTs(in)が1.1mmとなるように、互いに積み上げた。積み上げた合計16個のハニカムセグメントに外部より圧力を加え、全体を接合させた後、140℃にて2時間乾燥することにより、ハニカムセグメント積層体を得た。この時、2個の短セグメントは、互いに隣接するように、ハニカムセグメント積層体の角に配置された。また、すべてのハニカムセグメントは流体の流出孔側端面(ここでは切り欠き部形成側と反対の端面)が揃うように積層され、短セグメントによる段差、即ち切り欠き部は、流入孔側端部にのみ形成された。次に、得られたハニカムセグメント積層体の外周を円筒状に切削後、コーティング材を塗布し、700℃にて2時間乾燥硬化させ、直径143.8mm×長さ152.4mmの接合型の目封止ハニカム構造体を作製した。得られた目封止ハニカム構造体をDPFとして用い、再生限界試験及び圧力損失測定試験を行った。
【0067】
(実施例14〜17、比較例3〜5)
短セグメントと長セグメントとを接合する接合材層の、流体の流入孔側端面における平均厚さTs(in)を、それぞれ表2の通りとしたほかは、実施例13と同様にして、実施例14〜17及び比較例3〜5の目封止ハニカム構造体を作製した。得られた目封止ハニカム構造体をDPFとして用い、実施例13の場合と同様に再生限界試験及び圧力損失測定試験を行った。
【0068】
(評価)
再生限界試験:
目封止ハニカム構造体をDPFとして用い、順次、スス(PM)の堆積量を増加させてフィルタの再生(PMの燃焼)を行い、クラックが発生する限界を確認した。スス堆積量を10g/L、エンジン回転数を1800rpm、エンジントルクを90Nmに保った状態で、ポストインジェクションを入れ、DPF前後の圧力損失が落ち始めたところでポストインジェクションを切り、エンジンをアイドル状態に切り替えた時における短セグメント出口側端面での最大温度勾配[℃/cm]及び出口側端面から50mm位置での短セグメント−長セグメント間最大温度差[℃]を測定すると共に、試験後におけるDPFのクラック発生の有無を確認し、結果を表2に示した。クラック発生の有無については、端面クラック及びリングオフクラックについて観察し、クラック発生が確認された場合は×印で、確認されなかった場合は、○印にて示した。
【0069】
尚、ここで端面クラックとは、フィルタ再生時に堆積したススを燃焼させる際に、DPFの出口側端面に発生し得るクラックであり、主にセグメントが高温になる際のセグメント中心部とセグメント外周部との間に発生する温度勾配による熱応力に起因して発生するものを指す。即ち、ここで、短セグメントの出口側端面での最大温度勾配は、短セグメントに発生する端面クラックの発生原因の指標となる。測温方法としては、短セグメントの出口側端面の四隅及びセグメント中央部の計5箇所にて温度を測定し、フィルタ再生時における最大温度勾配を算出した。
【0070】
また、リングオフクラックとは、フィルタ再生時に堆積したススを燃焼させる際に、DPFの外周に沿って発生し得るクラックであり、主に、DPF内部で高温が発生した際の内側セグメントと外側セグメント間の温度差による熱膨張の差によって発生する引張応力、またはDPF中心部が高温になった際のDPF中心部と外周部の熱膨張差によって外側セグメントに発生する曲げ応力に起因して発生するものを指す。即ち、ここで、短セグメント−長セグメント間最大温度差は、短セグメント外周部に発生するリングオフクラックの発生原因の指標となる。測温方法としては、出口側端面から50mmの位置において短セグメントの中央部及び隣接する長セグメントの中央部にて温度を測定し、フィルタ再生時におけるセグメント間最大温度差を算出した。
【0071】
圧力損失測定試験:
バーナー燃焼によってススを発生させる装置を用い、ガス流量2.0〜3.0Nm3/分、ガス温度150〜250℃の条件化で、DPFにススを堆積させていき、スス堆積量との関係においてDPF前後における圧力損失を測定した。圧力損失は、ススを5g/Lまで堆積させた時点での各圧力損失値を用い、比較例3の圧力損失値を基準に、圧力損失上昇率[%]として、結果を表2に示した。
【0072】
【表2】
【0073】
表2より、流体の流入孔側端面(ここでは切り欠き部形成側端面)における接合材層の平均厚さTs(in)を大きくすることによって、短セグメント内のスス分布の偏りを防ぐことができ、フィルタ再生時の短セグメント内の温度勾配を小さくし、クラック(端面クラック)の発生を防止することができることが分かった。但し、Ts(in)を大きくしすぎると、フィルタ再生時の短セグメントと長セグメントの温度差が大きくなることにより、短セグメントを起点としてクラック(リングオフクラック)が発生しやすくなることが分かった。また、Ts(in)が大きくなるにつれて圧力損失は大きくなることが分かった。
【0074】
(実施例18)
長セグメントとして、軸方向に垂直な方向における断面形状が一辺の長さ36.2mmの正方形であり、軸方向長さが152.4mmである14個のハニカムセグメントを用意し、短セグメントとして、軸方向に垂直な方向における断面形状が一辺の長さ36.2mmの正方形、軸方向長さが137.4mmで、それぞれ、側面の一つ及び隣接する二つがローラーにより凹形状に加工された2個のハニカムセグメントを用意した。各ハニカムセグメントの隣接するハニカムセグメントとの接合面に接合材を塗布後、短セグメント同士及び長セグメント同士を接合する接合材層の、流体の流入孔側端面(ここでは切り欠き部形成側端面)における平均厚さT(in)が1.0mm、短セグメントと長セグメントとを接合する接合材層の、流体の流入孔側端面における平均厚さTs(in)が1.1mm、短セグメントと長セグメントとを接合する接合材層の、流体の流出孔側端面(ここでは切り欠き部形成側と反対の端面)における平均厚さTs(out)が0.99mm、となるように互いに積み上げた。積み上げた合計16個のハニカムセグメントに外部より圧力を加え、全体を接合させた後、140℃にて2時間乾燥することにより、ハニカムセグメント積層体を得た。この時、2個の短セグメントは、互いに隣接するように、ハニカムセグメント積層体の角に配置され、凹状に加工された側面が、それぞれ長セグメントと接するように位置決めされた。また、すべてのハニカムセグメントは流体の流出孔側端面が揃うように積層され、短セグメントによる段差、即ち切り欠き部は、流入孔側端部にのみ形成された。次に、得られたハニカムセグメント積層体の外周を円筒状に切削後、コーティング材を塗布し、700℃にて2時間乾燥硬化させ、直径143.8mm×長さ152.4mmの接合型の目封止ハニカム構造体を作製した。得られた目封止ハニカム構造体をDPFとして用い、実施例13の場合と同様に、再生限界試験及び圧力損失測定試験を行い、結果を表3に示した。
【0075】
但し、再生限界試験においては、短セグメントと隣接する長セグメントにおける出口側端面から50mm位置での最大温度勾配[℃/cm]を測定すると共に、試験後におけるDPFのクラック発生の有無を確認した。クラック発生の有無については、リングオフクラックについて観察し、クラック発生が確認された場合は×印で、確認されなかった場合は、○印にて示した。ここで、短セグメントと隣接する長セグメントの出口側端面から50mm位置での最大温度勾配は、長セグメントに発生するクラックに起因して、短セグメント外周部に発生するするリングオフクラックの発生原因の指標となる。測温方法としては、短セグメントと隣接する長セグメントの出口側端面から50mmの位置において、短セグメント側の側縁部及びセグメント中央部にて温度を測定し、フィルタ再生時における最大温度勾配を算出した。また、圧力損失測定試験においては、各圧力損失値を、実施例13の圧力損失値を基準に、圧力損失低下率[%]として示した。
【0076】
(実施例19〜21、比較例6,7)
短セグメントと長セグメントとを接合する接合材層の、流体の流出孔側端面における平均厚さTs(out)を、それぞれ表3の通りとしたほかは、実施例18と同様にして、実施例19〜21及び比較例6,7を作製した。得られた目封止ハニカム構造体をDPFとして用い、実施例18の場合と同様に、再生限界試験及び圧力損失測定試験を行い、結果を表3に示した。
【0077】
【表3】
【0078】
(実施例22〜25、比較例8,9)
短セグメントと長セグメントとを接合する接合材層の、流体の流入孔側端面における平均厚さTs(in)及び流出孔側端面における平均厚さTs(out)を、それぞれ表4の通りとしたほかは、実施例18と同様にして、実施例22〜25及び比較例8,9を作製した。得られた目封止ハニカム構造体をDPFとして用い、実施例18の場合と同様に、再生限界試験及び圧力損失測定試験を行い、結果を表4に示した。但し、圧力損失測定試験においては、各圧力損失値を、実施例17の圧力損失値を基準に、圧力損失低下率[%]として示した。
【0079】
【表4】
【0080】
表3及び表4より、流体の流出孔側端面における接合材層の平均厚さTs(out)を流入孔側端面における接合材層の平均厚さTs(in)に比べて小さくすることによって、フィルタの面積を十分に確保することができ、スス堆積による圧力損失を小さくできることが分かった。但し、Ts(out)を小さくしすぎると、ススの堆積したフィルタを再生する際に、長セグメントから短セグメントへの熱移動が大きくなることにより、長セグメントの外周部温度と内部温度の差が大きくなり、長セグメントを起点としてクラック(リングオフクラック)が発生しやすくなることが分かった。よって、短セグメントと長セグメントとを接合する接合材層の厚さを適切な範囲に制御することによって、フィルタの耐クラック性能を向上させると同時に、DPFの圧力損失上昇を最小限に抑えることができることが確認された。DPFの圧力損失を抑えることによって、車両の燃料消費量を低減することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の目封止ハニカム構造体は、排ガス浄化装置内において、省スペース化を実現すると共にエロージョン抑制効果を持つDPFとして好適に用いることができ、また、本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法によれば、所望の端部形状を有する目封止ハニカム構造体を容易に製造することができ、産業上の利用可能性は大なるものである。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】従来の目封止ハニカム構造体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】従来の目封止ハニカム構造体の別の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図3】本発明の目封止ハニカム構造体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図4】本発明の目封止ハニカム構造体の別の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図5A】本発明の目封止ハニカム構造体を搭載した排ガス浄化装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【図5B】本発明の目封止ハニカム構造体を搭載した排ガス浄化装置の別の実施形態を模式的に示す断面図である。
【図5C】本発明の目封止ハニカム構造体を搭載した排ガス浄化装置の更に別の実施形態を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の目封止ハニカム構造体の一実施形態に排ガスが流れ込む様子を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明の目封止ハニカム構造体の別の実施形態に排ガスが流れ込む様子を模式的に示す断面図である。
【図8】ハニカムセグメントの側面に凹状の窪みを形成する工程を模式的に示す工程図である。
【図9】ハニカムセグメント全体に弓状の曲がりを形成する工程を模式的に示す工程図である。
【図10】接合材スペーサを用いて短セグメントが長セグメントに対して斜めに接合された状態を模式的に示す断面図である。
【図11】長目封止部形成側端部切削前の目封止ハニカム構造体を模式的に示す軸方向における部分断面図である。
【図12】長目封止部形成側端部切削後の目封止ハニカム構造体を模式的に示す軸方向における部分断面図である。
【図13】本発明の目封止ハニカム構造体の一実施形態を切り欠き部形成方向から見た模式的正面図である。
【図14】本発明の目封止ハニカム構造体の別の実施形態を切り欠き部形成方向から見た模式的正面図である。
【図15】ハニカムセグメントを積み上げる工程を模式的に示す工程図である。
【図16】ハニカムセグメント積層体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0083】
1:ハニカムセグメント、1a:短セグメント、1b:長セグメント、2:切り欠き部、3:接合材層、5:セル、6:隔壁、8:DPF、9:ハニカム触媒体、10,10a,10b,20,20a,20b:目封止ハニカム構造体、11:流入孔側端面、12:流出孔側端面、13:異物捕集ポケット、14:切り欠き部の角部、15:コンテナ、16:窪み、17:押圧手段、18:型押曲がり形成手段、19:接合材スペーサ、21:凹状セグメント、22:弓状セグメント、23:斜めセグメント、24:長目封止部、25:目封止部、26:エンドミル、30:ハニカムセグメント積層体、110,120,130:排ガス浄化装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質の隔壁により区画された流体の流路となる複数のセルを有し、隣接するセルが互いに反対側となる一方の端部において目封止されたディーゼルパティキュレートフィルタ用の目封止ハニカム構造体であって、前記流体の流通端部の一部に切り欠き部を有し、前記切り欠き部を構成する所定のセルにおいても、前記隣接するセルが互いに反対側となる前記一方の端部において目封止された目封止ハニカム構造体。
【請求項2】
複数のハニカムセグメントが、接合材層を介して一体的に接合されてなる請求項1に記載の目封止ハニカム構造体。
【請求項3】
前記複数のハニカムセグメントのうち、所定のハニカムセグメントの軸方向長さが、残余のハニカムセグメントの軸方向長さよりも短く構成されることによって、前記切り欠き部がハニカムセグメント単位で形成された請求項2に記載の目封止ハニカム構造体。
【請求項4】
前記切り欠き部が、前記流体の流入孔側端部に形成され、前記所定のハニカムセグメントである短セグメントと前記残余のハニカムセグメントである長セグメントとを接合する前記接合材層の、前記流体の流入孔側端面における平均厚さTs(in)と、前記短セグメント同士及び前記長セグメント同士を接合する前記接合材層の、前記流入孔側端面における平均厚さT(in)との関係が、
Ts(in)>T(in)である請求項3に記載の目封止ハニカム構造体。
【請求項5】
前記平均厚さTs(in)と前記平均厚さT(in)との関係が、
Ts(in)=(1.1〜5.0)×T(in)である請求項4に記載の目封止ハニカム構造体。
【請求項6】
前記短セグメントと前記長セグメントとを接合する前記接合材層の、前記流体の流出孔側端面における平均厚さTs(out)と前記平均厚さTs(in)との関係が、
Ts(out)<Ts(in)であり、
前記接合材層の厚さが、前記平均厚さTs(in)から前記平均厚さTs(out)にかけて漸減する請求項4又は5に記載の目封止ハニカム構造体。
【請求項7】
前記平均厚さTs(out)と前記平均厚さTs(in)との関係が、
Ts(out)≦0.9×Ts(in)且つTs(out)≧0.2mmである請求項6に記載の目封止ハニカム構造体。
【請求項8】
前記短セグメントが、接合材スペーサを用いて前記長セグメントに対して斜めに接合された斜めセグメントである請求項4〜7のいずれか一項に記載の目封止ハニカム構造体。
【請求項9】
請求項8に記載の目封止ハニカム構造体の製造方法であって、
前記短セグメントと、隣接する前記長セグメントとの間の接合面において、前記流入孔側端面における前記接合材スペーサのハニカム構造体の軸方向に垂直な方向における厚みであるS(in)と、前記流出孔側端面における前記接合材スペーサのハニカム構造体の軸方向に垂直な方向における厚みであるS(out)との関係が、
S(out)≦0.9×S(in)且つS(out)≧0.2mmとなるように、異なる厚みの複数の接合材スペーサを用いて、前記短セグメントを前記長セグメントに対して斜めに接合することで、前記切り欠き部を有する目封止ハニカム構造体を形成する目封止ハニカム構造体の製造方法。
【請求項10】
請求項3〜8のいずれか一項に記載の目封止ハニカム構造体の製造方法であって、前記所定のハニカムセグメントである短セグメントとされる予定の、長目封止部の形成されたハニカムセグメントを、前記長目封止部よりも深さの小さい目封止部の形成された、前記残余のハニカムセグメントである長セグメントへ接合した後、前記ハニカムセグメントの長目封止部形成側端部を所定の長さまで切削することで、前記切り欠き部を有する目封止ハニカム構造体を形成する目封止ハニカム構造体の製造方法。
【請求項11】
請求項3〜8のいずれか一項に記載の目封止ハニカム構造体の製造方法であって、あらかじめ軸方向長さが前記残余のハニカムセグメントである長セグメントよりも短く形成された、前記所定のハニカムセグメントである短セグメントを、前記長セグメントへ接合することで、前記切り欠き部を有する目封止ハニカム構造体を形成する目封止ハニカム構造体の製造方法。
【請求項12】
前記短セグメントを、長目封止部を形成した前記長セグメントの、長目封止部形成側端部を所定の長さで切断することで形成する請求項11に記載の目封止ハニカム構造体の製造方法。
【請求項1】
多孔質の隔壁により区画された流体の流路となる複数のセルを有し、隣接するセルが互いに反対側となる一方の端部において目封止されたディーゼルパティキュレートフィルタ用の目封止ハニカム構造体であって、前記流体の流通端部の一部に切り欠き部を有し、前記切り欠き部を構成する所定のセルにおいても、前記隣接するセルが互いに反対側となる前記一方の端部において目封止された目封止ハニカム構造体。
【請求項2】
複数のハニカムセグメントが、接合材層を介して一体的に接合されてなる請求項1に記載の目封止ハニカム構造体。
【請求項3】
前記複数のハニカムセグメントのうち、所定のハニカムセグメントの軸方向長さが、残余のハニカムセグメントの軸方向長さよりも短く構成されることによって、前記切り欠き部がハニカムセグメント単位で形成された請求項2に記載の目封止ハニカム構造体。
【請求項4】
前記切り欠き部が、前記流体の流入孔側端部に形成され、前記所定のハニカムセグメントである短セグメントと前記残余のハニカムセグメントである長セグメントとを接合する前記接合材層の、前記流体の流入孔側端面における平均厚さTs(in)と、前記短セグメント同士及び前記長セグメント同士を接合する前記接合材層の、前記流入孔側端面における平均厚さT(in)との関係が、
Ts(in)>T(in)である請求項3に記載の目封止ハニカム構造体。
【請求項5】
前記平均厚さTs(in)と前記平均厚さT(in)との関係が、
Ts(in)=(1.1〜5.0)×T(in)である請求項4に記載の目封止ハニカム構造体。
【請求項6】
前記短セグメントと前記長セグメントとを接合する前記接合材層の、前記流体の流出孔側端面における平均厚さTs(out)と前記平均厚さTs(in)との関係が、
Ts(out)<Ts(in)であり、
前記接合材層の厚さが、前記平均厚さTs(in)から前記平均厚さTs(out)にかけて漸減する請求項4又は5に記載の目封止ハニカム構造体。
【請求項7】
前記平均厚さTs(out)と前記平均厚さTs(in)との関係が、
Ts(out)≦0.9×Ts(in)且つTs(out)≧0.2mmである請求項6に記載の目封止ハニカム構造体。
【請求項8】
前記短セグメントが、接合材スペーサを用いて前記長セグメントに対して斜めに接合された斜めセグメントである請求項4〜7のいずれか一項に記載の目封止ハニカム構造体。
【請求項9】
請求項8に記載の目封止ハニカム構造体の製造方法であって、
前記短セグメントと、隣接する前記長セグメントとの間の接合面において、前記流入孔側端面における前記接合材スペーサのハニカム構造体の軸方向に垂直な方向における厚みであるS(in)と、前記流出孔側端面における前記接合材スペーサのハニカム構造体の軸方向に垂直な方向における厚みであるS(out)との関係が、
S(out)≦0.9×S(in)且つS(out)≧0.2mmとなるように、異なる厚みの複数の接合材スペーサを用いて、前記短セグメントを前記長セグメントに対して斜めに接合することで、前記切り欠き部を有する目封止ハニカム構造体を形成する目封止ハニカム構造体の製造方法。
【請求項10】
請求項3〜8のいずれか一項に記載の目封止ハニカム構造体の製造方法であって、前記所定のハニカムセグメントである短セグメントとされる予定の、長目封止部の形成されたハニカムセグメントを、前記長目封止部よりも深さの小さい目封止部の形成された、前記残余のハニカムセグメントである長セグメントへ接合した後、前記ハニカムセグメントの長目封止部形成側端部を所定の長さまで切削することで、前記切り欠き部を有する目封止ハニカム構造体を形成する目封止ハニカム構造体の製造方法。
【請求項11】
請求項3〜8のいずれか一項に記載の目封止ハニカム構造体の製造方法であって、あらかじめ軸方向長さが前記残余のハニカムセグメントである長セグメントよりも短く形成された、前記所定のハニカムセグメントである短セグメントを、前記長セグメントへ接合することで、前記切り欠き部を有する目封止ハニカム構造体を形成する目封止ハニカム構造体の製造方法。
【請求項12】
前記短セグメントを、長目封止部を形成した前記長セグメントの、長目封止部形成側端部を所定の長さで切断することで形成する請求項11に記載の目封止ハニカム構造体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−101282(P2010−101282A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275453(P2008−275453)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]