説明

目封止ハニカム構造体

【課題】圧力損失の増加を抑制することができるとともに、その耐久性を良好に向上させることが可能な目封止ハニカム構造体を提供する。
【解決手段】複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を有する柱状のハニカムセグメント8を複数個有するハニカム構造体4と、流出側目封止部5bと、流入側目封止部と、を備え、少なくともハニカム構造体4のセルの延びる方向に垂直な断面の重心Oに位置するハニカムセグメント8が、ハニカムセグメント8の断面における対角線P1,P2の交点部Uに存在する流出セル2bの、セル2の延びる方向に垂直な断面における隔壁1が交差する少なくとも一の角部21に補強部6が形成された補強セグメント8xとなっている目封止ハニカム構造体100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目封止ハニカム構造体に関する。更に詳しくは、圧力損失の増加を抑制することができるとともに、その耐久性を良好に向上させることが可能な目封止ハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関や各種の燃焼装置等から排出されるガスには、煤(soot)を主体とする粒子状物質(パティキュレートマター(PM))が、多量に含まれている。このPMがそのまま大気中に放出されると、環境汚染を引き起こすため、排出ガスの排気系には、PMを捕集するためのディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)が搭載されている。
【0003】
このようなDPFとしては、例えば、流体(排ガス、浄化ガス)の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造体が用いられている。このようにハニカム構造体は、流体(浄化ガス)の流出側の端面における所定のセル(流入セル)の開口部と、流体(排ガス)の流入側端面における残余のセル(流出セル)の開口部とに、セルの開口部を封止するための目封止部が配設され、目封止ハニカム構造体(ハニカムフィルタ)として利用される。ハニカム構造体としては、流入側端面から流出側端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有する柱状のハニカムセグメントを、複数個備え、この複数個の前記ハニカムセグメントの互いの側面同士が対向するように隣接して配置された状態で接合されたハニカム構造体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記目封止ハニカム構造体では、流入セルから排ガスを流入させると、排ガスが隔壁を通過する際に排ガス中のパティキュレートが隔壁に捕集され、パティキュレートが除去された浄化ガスが流出セルから流出する。
【0005】
従来、ハニカム構造体の隔壁の交差点に生じる過大な熱衝撃や機械的衝撃による破損を防止するために、少なくとも一部の流路(セル)の軸方向に直交する断面形状が、一方の対向する隅角部に略円弧状のR部を有するセラミックハニカム構造体が提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、多孔質の隔壁により区画形成されたセルの角部に隅肉を形成し、セルの補強を行ったハニカム構造体も提案されている(例えば、特許文献3参照)。このようなハニカム構造体によれば、隔壁の交差部分の厚さが厚くなり、機械的強度(即ち、耐久性)を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4335783号明細書
【特許文献2】特開2003−269131号公報
【特許文献3】特表2009−532197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2に記載されたハニカム構造体は、全てのセルの角部に円弧状のR部を形成するため、流体が通過する流路の容積が著しく減少してしまう。この結果、排ガスに含まれる灰(Ash)の堆積の観点から、目封止ハニカム構造体の耐久性が低下してしまうこととなる。
【0008】
また、特許文献2及び3に記載されたハニカム構造体においては、流体が流入する流入セルにも補強が行われるため、流路の容積(特に、流体が流入する側の容積)が減少する。このため、フィルタとして実質的に機能する濾過面の面積が減少し、目封止ハニカム構造体の圧力損失が増大してしまう。
【0009】
更に、補強部を形成することにより、目封止ハニカム構造体の質量も当然増加するため、過剰に補強部を形成することは、目封止ハニカム構造体の性能面において不利益を生じることがある。例えば、目封止ハニカム構造体の質量が増加すれば、排気ガス等の浄化に必要な温度に達するまでの時間が増大し、排気ガスの浄化性能を損なうこととなる。また、上記浄化性能を維持するために、排気ガスの温度を上昇させることも考えられるが、このような場合には、自動車等の内燃機関の燃料消費量(燃費)が悪化してしまう。
【0010】
即ち、従来のハニカム構造体においては、単にハニカム構造体の強度を向上させることを目的として、上述したような補強部を形成することは行われていたが、補強部を形成して耐久性を向上させることにより、圧力損失や浄化性能等のフィルタとしての他の特性が犠牲となっていた。特に、ハニカム構造体の強度の向上と、圧力損失の増加抑制とは、従来、二律背反の関係にあるとされ、両者を同時に解決することは極めて困難であるとされていた。
【0011】
また、目封止ハニカム構造体は、DPFとして用いた場合に、捕集した粒子状物質を燃焼除去する再生を行うことがある。この際、目封止ハニカム構造体は、その端面にクラック(以下、「端面クラック」ともいう)等の破損を生じることがある。この端面クラックが発生する箇所には、特定の傾向があり、端面クラックに対する対策がなされた目封止ハニカム構造体の開発も要望されている。特に、複数個のハニカムセグメントを接合したハニカム構造体を用いた目封止ハニカム構造体においては、ハニカムセグメントの端面の中央部分に応力が集中して、ハニカムセグメントの端面の中央部分から、この端面の対角線方向にクラックが発生することがある。
【0012】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、流体が流入するセル(流入セル)の容積を十分に確保することにより、圧力損失の増加を抑制することができるとともに、その耐久性を良好に向上させることが可能な目封止ハニカム構造体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、以下に示す、目封止ハニカム構造体が提供される。
【0014】
[1] 流入側端面から流出側端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有する柱状のハニカムセグメントを、複数個有し、複数個の前記ハニカムセグメントの互いの側面同士が対向するように隣接して配置された状態で接合されたハニカム構造体と、それぞれの前記ハニカムセグメントの前記流出側端面における所定のセルの開口部に配設されて、前記流入側端面が開口し且つ前記流出側端面が封止された流入セルを形成する流出側目封止部と、それぞれの前記ハニカムセグメントの前記流入側端面における残余のセルの開口部に配設されて、前記流出側端面が開口し且つ前記流入側端面が封止された流出セルを形成する流入側目封止部と、を備え、前記ハニカム構造体を構成する複数個の前記ハニカムセグメントが、前記ハニカムセグメントの前記セルの延びる方向に垂直な断面の形状が四角形の完全セグメントを有し、少なくとも一の前記ハニカムセグメントが、前記ハニカムセグメントの前記四角形の断面における対角線上に存在する前記セル及び前記対角線上に存在する前記セルから前記隔壁を隔てて連続して隣接する5個の前記セルからなる領域内の前記流出セルのうち、少なくとも前記対角線の交点部に存在する前記流出セル又は前記交点部からの距離が最も短い位置に存在する前記流出セルの、前記セルの延びる方向に垂直な断面における前記隔壁が交差する少なくとも一の角部に、前記流出セルを補強する補強部が形成された補強セグメントであり、前記ハニカム構造体の前記セルの延びる方向に垂直な断面において、前記ハニカム構造体の前記断面の重心を含む又は前記重心からの距離が最も短い位置に存在する前記ハニカムセグメントが、少なくとも前記補強セグメントである目封止ハニカム構造体。
【0015】
[2] 前記補強セグメントの前記補強部が形成された前記流出セルは、前記補強部が形成された補強角部と、前記補強部が形成されていない非補強角度部とを含むものである前記[1]に記載の目封止ハニカム構造体。
【0016】
[3] 前記補強セグメントの前記補強部が形成された前記流出セルは、前記流出セルの全ての角部に前記補強部が形成されたものである前記[2]に記載の目封止ハニカム構造体。
【0017】
[4] 前記補強セグメントは、前記ハニカムセグメントの前記四角形の断面における対角線上に存在する全ての前記流出セルに、前記補強部が形成されたものである前記[1]〜[3]のいずれかに記載の目封止ハニカム構造体。
【0018】
[5] 前記補強セグメントは、前記ハニカムセグメントの前記四角形の断面における対角線上に存在する前記セル及び前記対角線上に存在する前記セルから前記隔壁を隔てて連続して隣接する5個の前記セルからなる領域内の全ての前記流出セルに、前記補強部が形成されたものである前記[1]〜[4]のいずれかに記載の目封止ハニカム構造体。
【0019】
[6] 前記完全セグメントの全てが、少なくとも前記補強セグメントである前記[1]〜[5]のいずれかに記載の目封止ハニカム構造体。
【0020】
[7] 前記ハニカムセグメントの全てが、前記補強セグメントである前記[6]に記載の目封止ハニカム構造体。
【0021】
[8] 前記補強部を除く前記隔壁の平均厚さに対する、前記補強部が形成された前記流出セルの前記補強部の表面から、前記補強部が形成された前記流出セルを区画形成する前記隔壁の交差点を隔てて配置された他のセルの表面までの隔壁交差部分の交差距離の比の値が、1.5〜9.3である前記[1]〜[7]のいずれかに記載の目封止ハニカム構造体。
【0022】
[9] 各前記補強部は、前記セルの延びる方向に垂直な断面における前記補強部が除かれた開口部分の面積の0.05〜20%に相当する範囲を占める大きさのものである前記[1]〜[8]のいずれかに記載の目封止ハニカム構造体。
【発明の効果】
【0023】
本発明の目封止ハニカム構造体においては、「少なくとも一のハニカムセグメントが、ハニカムセグメントの四角形の断面における対角線上に存在するセル及び対角線上に存在するセルから隔壁を隔てて連続して隣接する5個のセルからなる領域内の流出セルのうち、少なくとも対角線の交点部に存在する流出セル又は交点部からの距離が最も短い位置に存在する流出セルの、セルの延びる方向に垂直な断面における隔壁が交差する少なくとも一の角部に、この流出セルを補強する補強部が形成された補強セグメント」となっている。そして、「ハニカム構造体のセルの延びる方向に垂直な断面において、ハニカム構造体の断面の重心を含む又は重心からの距離が最も短い位置に存在するハニカムセグメントが、少なくとも上記補強セグメント」となっている。即ち、本発明の目封止ハニカム構造体においては、ハニカムセグメントの特定領域内の流出セルが、上記補強部により補強された補強セルとなっている。一方、流入セル及び上記特定領域以外の流出セルが、上記補強部が形成されていない非補強セルとなっている。このため、流入セルの容積、及びこの流入セルの開口部の面積を十分に確保することができ、目封止ハニカム構造体の圧力損失の増加を抑制することができる。一方、圧力損失に対する影響が、上記流入セルに比して少ない流出セルの一部には、隔壁が交差する少なくとも一の角部に補強部を形成することで、目封止ハニカム構造体の耐久性を良好に向上させることができる。これにより、目封止ハニカム構造体を機械的強度に優れたものとすることができる。
【0024】
特に、本発明の目封止ハニカム構造体は、流入セルと流出セルとの両方に補強部を形成した従来のハニカム構造体に比して、補強部が流路に占める容積が半分以下であるが、ハニカム構造体の耐久性を、上記補強部の容積比率以上の割合で向上させることができる。また、目封止ハニカム構造体に生じる熱応力が最大となる流出セルのみを補強することで、目封止ハニカム構造体の質量の過剰な増加を抑制することができる。このため、目封止ハニカム構造体を内燃機関の排ガス流路に設置して用いた場合に、目封止ハニカム構造体が加熱され易く、排気ガスに対する浄化性能の劣化を良好に抑制することができる。なお、排気ガスの温度によって目封止ハニカム構造体の温度を調整する場合であっても、目封止ハニカム構造体が加熱され易いため、自動車等の内燃機関の燃費の悪化を抑制することができる。このように、本発明の目封止ハニカム構造体によれば、従来、二律背反の関係にあるとされた、ハニカム構造体の耐久性向上と、圧力損失の増加抑制とを両立させることができる。更に、浄化性能の劣化や内燃機関の燃費の悪化も抑制することができる。
【0025】
更に、従来、複数個のハニカムセグメントを接合したハニカム構造体を用いた目封止ハニカム構造体においては、ハニカムセグメントの端面の中央部分に応力が集中して、ハニカムセグメントの端面の中央部分から、この端面の対角線方向にクラック(端面クラック)が発生し易くなることがある。本発明の目封止ハニカム構造体は、上記端面クラックが発生し易い部分が、選択的に上記補強部により補強されているため、端面クラックの発生を有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の目封止ハニカム構造体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の目封止ハニカム構造体の一実施形態の、流出側端面を示す模式図である。
【図3】本発明の目封止ハニカム構造体の一実施形態に用いられるハニカムセグメントの流出側端面を拡大して示す模式図である。
【図4】本発明の目封止ハニカム構造体の一実施形態に用いられるハニカムセグメントの、流入側端面の一部を拡大して示す模式図である。
【図5】本発明の目封止ハニカム構造体の一実施形態に用いられるハニカムセグメントの、流出側端面の一部を拡大して示す模式図である。
【図6】本発明の目封止ハニカム構造体の一実施形態に用いられるハニカムセグメントの、セルの延びる方向に垂直な断面の一部を拡大して示す模式図である。
【図7】本発明の目封止ハニカム構造体の一実施形態に用いられるハニカムセグメントの、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。
【図8】本発明の目封止ハニカム構造体の一実施形態の、流出側端面を示す模式図である。
【図9】本発明の目封止ハニカム構造体の他の実施形態に用いられるハニカムセグメントの流出側端面を拡大して示す模式図である。
【図10】本発明の目封止ハニカム構造体の更に他の実施形態に用いられるハニカムセグメントの流出側端面を拡大して示す模式図である。
【図11】本発明の目封止ハニカム構造体の更に他の実施形態の、流出側端面を示す模式図である。
【図12】本発明の目封止ハニカム構造体の一実施形態の、セルの延びる方向に垂直な断面を拡大して示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0028】
(1)目封止ハニカム構造体:
図1〜図7に示すように、本発明の目封止ハニカム構造体の一実施形態(目封止ハニカム構造体100)は、「流入側端面11から流出側端面12まで延びる流体の流路となる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を有する柱状のハニカムセグメント8を、複数個有し、複数個のハニカムセグメント8の互いの側面同士が対向するように隣接して配置された状態で接合されたハニカム構造体4」と、「それぞれのハニカムセグメント8の流出側端面12における所定のセル2の開口部に配設されて、流入側端面11が開口し且つ流出側端面12が封止された流入セル2aを形成する流出側目封止部5b」と、それぞれのハニカムセグメント8の流入側端面11における残余のセル2の開口部に配設されて、流出側端面12が開口し且つ流入側端面11が封止された流出セル2bを形成する流入側目封止部5a」と、を備えた目封止ハニカム構造体100である。
【0029】
本実施形態の目封止ハニカム構造体100においては、ハニカム構造体4を構成する複数個のハニカムセグメント8が、このハニカムセグメント8のセル2の延びる方向に垂直な断面の形状が四角形の完全セグメント8aを有している。また、ハニカム構造体4の外周部を構成する不完全セグメント8bを更に有していてもよい。本実施形態の目封止ハニカム構造体100のハニカム構造体4は、四角形柱の完全セグメント8aと、完全セグメント8aと同様の四角形柱のハニカムセグメントの周囲の一部がハニカム構造体4の外周形状にあわせて切り取られた柱状の不完全セグメント8bとによって構成されたセグメント構造のハニカム構造体4である。それぞれのハニカムセグメント8に形成されたセル2のセル2の延びる方向に垂直な断面の形状については特に制限はなく、例えば、四角形等の形状を挙げることができる。図1〜図7に示す目封止ハニカム構造体100のおいては、セル2のセル2の延びる方向に垂直な断面の形状が正方形の場合の例を示す。
【0030】
更に、本実施形態の目封止ハニカム構造体100においては、ハニカム構造体4を構成する少なくとも一のハニカムセグメント8が、補強セグメント8xとなっている。補強セグメント8xは、ハニカムセグメント8の四角形(例えば、正方形)の断面における対角線P1,P2上に存在するセル2及びこの対角線P1,P2上に存在するセル2から隔壁1を隔てて連続して隣接する5個のセル2からなる領域S(以下、「対角線領域S」ということがある)内の流出セル2bのうち、少なくとも対角線P1,P2の交点部Uに存在する流出セル2b又は交点部Uからの距離が最も短い位置に存在する流出セル2bの、セル2の延びる方向に垂直な断面における隔壁1が交差する少なくとも一の角部21に、流出セル2bを補強する補強部6が形成されたものである。そして、ハニカム構造体4のセル2の延びる方向に垂直な断面において、ハニカム構造体4の断面の重心Oを含む又は重心Oからの距離が最も短い位置に存在するハニカムセグメント8が、少なくとも補強セグメント8xである。
【0031】
補強セグメント8xの流出セル2bのうち、上記対角線領域S内の流出セル2bには、隔壁1が交差する少なくとも一の角部21に、流出セル2bを補強する補強部6が形成されていてもよい。上記対角線領域S内の流出セル2bのうち、少なくとも対角線P1,P2の交点部Uに存在する流出セル2b又は交点部Uからの距離が最も短い位置に存在する流出セル2bには、補強部6が形成されている必要がある。以下、流出セル2bを補強する補強部6が形成されたセル(流出セル2b)のことを、「補強セル22」ということがある。
【0032】
また、補強セグメント8xにおいて、流入セル2a、及び上記補強セル22以外の流出セル2bは、セル2の延びる方向に垂直な断面における隔壁1が交差する全ての角部21に、上記補強部6が形成されていない。このように、補強部6が形成されていないセルのことを、「非補強セル23」ということがある。
【0033】
即ち、本実施形態の目封止ハニカム構造体100は、流体が流入する流入セル2aには、全てのハニカムセグメントにおいて、上記補強部6が形成されておらず、例えば、比較的に均一な隔壁厚さの隔壁1によって、セルが区画形成されている。また、流体が流出する流出セル2bについては、上記対角線領域S外の流出セル2bには、上記補強部6が形成されていない。補強部6が形成されて補強セル22になり得るセルは、上記対角線領域S内の流出セル2bのみである。
【0034】
また、補強部6が形成されるハニカムセグメント8は、少なくともハニカム構造体4のセル2の延びる方向に垂直な断面において、ハニカム構造体4の断面の重心Oを含む又は重心Oからの距離が最も短い位置に存在するハニカムセグメント8である。この断面の重心Oを含む又は重心Oからの距離が最も短い位置に存在するハニカムセグメント8が補強セグメント8xであれば、他のハニカムセグメント8は、補強セグメント8xであってもよいし、補強部6が形成されていない通常のハニカムセグメント(以下、「非補強セグメント」ということがある)であってもよい。
【0035】
このように、本実施形態の目封止ハニカム構造体においては、補強部が最大に形成された場合でも、全てのハニカムセグメントの流入セル、及び対角線領域外の流出セルが、非補強セルとなる。このため、流入セル及び所定の流出セルの容積、及び流入セルの開口部の面積を十分に確保することができ、目封止ハニカム構造体の圧力損失の増加を抑制することができる。一方、圧力損失に対する影響が、上記流入セルに比して少ない流出セルの一部には、隔壁が交差する少なくとも一の角部に補強部を形成することで、目封止ハニカム構造体の耐久性を良好に向上させることができる。これにより、目封止ハニカム構造体を機械的強度に優れたものとすることができる。
【0036】
特に、本実施形態の目封止ハニカム構造体は、流入セルと流出セルとの両方に補強部を形成した従来のハニカム構造体に比して、補強部が流路に占める容積が半分以下であるが、ハニカム構造体の耐久性を、上記補強部の容積比率以上の割合で向上させることができる。また、目封止ハニカム構造体に生じる熱応力が最大となる流出セルのみを補強することで、目封止ハニカム構造体の質量の過剰な増加を抑制することができる。このため、目封止ハニカム構造体を内燃機関の排ガス流路に設置して用いた場合に、目封止ハニカム構造体が加熱され易く、排気ガスに対する浄化性能の劣化を良好に抑制することができる。なお、排気ガスの温度によって目封止ハニカム構造体の温度を調整する場合であっても、目封止ハニカム構造体が加熱され易いため、自動車等の内燃機関の燃費の悪化を抑制することができる。このように、本実施形態の目封止ハニカム構造体によれば、従来、二律背反の関係にあるとされた、ハニカム構造体の耐久性向上と、圧力損失の増加抑制とを両立させることができる。更に、浄化性能の劣化や内燃機関の燃費の悪化も抑制することができる。
【0037】
更に、従来、複数個のハニカムセグメントを接合したハニカム構造体を用いた目封止ハニカム構造体においては、ハニカムセグメントの端面の中央部分に応力が集中して、ハニカムセグメントの端面の中央部分から、この端面の対角線方向にクラック(端面クラック)が発生し易くなることがある。本実施形態の目封止ハニカム構造体は、上記端面クラックが発生し易い部分が、選択的に上記補強部により補強されているため、端面クラックの発生を有効に防止することができる。
【0038】
ここで、図1は、本発明の目封止ハニカム構造体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、本発明の目封止ハニカム構造体の一実施形態の、流出側端面を示す模式図である。図3は、本発明の目封止ハニカム構造体の一実施形態に用いられるハニカムセグメントの流出側端面を拡大して示す模式図である。図4は、本発明の目封止ハニカム構造体の一実施形態に用いられるハニカムセグメントの、流入側端面の一部を拡大して示す模式図である。図5は、本発明の目封止ハニカム構造体の一実施形態に用いられるハニカムセグメントの、流出側端面の一部を拡大して示す模式図である。図6は、本発明の目封止ハニカム構造体の一実施形態に用いられるハニカムセグメントの、セルの延びる方向に垂直な断面の一部を拡大して示す模式図である。図7は、本発明の目封止ハニカム構造体の一実施形態に用いられるハニカムセグメントの、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。
【0039】
なお、図3は、複数個のハニカムセグメント8のうち、完全セグメント8aであり、且つ、補強セグメント8xであるハニカムセグメント8を示す模式図である。また、図4〜図6は、図3に示すハニカムセグメント8(補強セグメント8x)の対角線領域S内を拡大して示す模式図である。図7は、図3に示すハニカムセグメント8(補強セグメント8x)の対角線領域Sにおける断面を拡大して示す模式図である。
【0040】
完全セグメント8aは、流入側端面11から流出側端面12まで延びる流体の流路となる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1と、この隔壁1を取り囲むように配設された外周壁7とを有するものであることが好ましい。不完全セグメント8bは、流入側端面11から流出側端面12まで延びる流体の流路となる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1と、少なくとも隣接する他のハニカムセグメントに接する外周部分に配設された外周壁7とを有するものであることが好ましい。
【0041】
「ハニカムセグメント8の四角形の断面における対角線P1,P2」とは、図3に示すように、完全セグメント8aの場合には、セル2の延びる方向に垂直な断面(或いは、端面)の形状が四角形の完全セグメント8aにおける、上記四角形の断面の対角線P1,P2のことをいう。一方、不完全セグメント8bの場合には、図8に示すように、この不完全セグメント8bの周囲の一部が切り取られる前の四角形柱のセグメントを想定し、想定した四角形柱のセグメント(以下、「仮想セグメント8b’」ということがある)のセルの延びる方向に垂直な断面の対角線P3,P4のことをいう。なお、仮想セグメント8b’を想定する際には、仮想セグメント8b’の断面(仮想断面)の一辺の長さを、この仮想セグメント8b’(換言すれば、想定対象となる不完全セグメント8b)から最も近い位置に存在する完全セグメント8aの断面の一辺の長さと同じ長さとする。ここで、図8は、本発明の目封止ハニカム構造体の一実施形態の、流出側端面を示す模式図である。図8においては、各ハニカムセグメント(完全セグメント8a、及び不完全セグメント8b)の隔壁及びセルを捨象した状態を示す。
【0042】
「ハニカム構造体の外周部を構成する不完全セグメント」は、上記「仮想セグメント」を完全セグメントした場合に、この完全セグメント(仮想セグメント)の周囲の一部が、本実施形態の目封止ハニカム構造体に用いられるハニカム構造体の外周形状にあわせて切り取られた形状のハニカムセグメントということもできる。
【0043】
本実施形態の目封止ハニカム構造体においては、全ての完全セグメントの断面形状が同じ形状であることが好ましい。全ての完全セグメントの断面形状が同じ形状となる場合には、不完全セグメントから想定される仮想セグメントの断面形状も、上記完全セグメントの断面形状と同じになる。
【0044】
「ハニカムセグメントの四角形の断面における対角線上に存在するセル」とは、四角形の断面に二本の対角線を描いた場合に、上記二本の対角線と、セルの開口部分とが重なる位置に存在するセルのことをいう。ハニカムセグメントの隔壁は、完全セグメント又は仮想セグメントの四角形柱の側面に平行となるように格子状に形成されたものであることが好ましい。
【0045】
「隔壁を隔てて隣接するセル」とは、一のセルに対して、この一のセルの一辺を構成する隔壁を隔てて隣接するセルのことをいう。即ち、格子状に配列したセルのうち、列方向、又は行方向に隣接するセルのことを、「隔壁を隔てて隣接するセル」という。このため、例えば、格子状に配列した四角形のセルのうち、四角形の対角線方向に配置されるセルは、「隔壁を隔てて隣接するセル」ではなく、「隔壁を隔てて隣接するセルに対して更に隔壁を隔てて隣接するセル(即ち、隔壁を2回隔てて隣接するセル)」ということになる。
【0046】
「対角線上に存在するセルから隔壁を隔てて連続して隣接する5個のセル」とは、上述した「対角線上に存在するセル」から、セルの一辺を構成する隔壁を隔てて隣接するセルを、隣接する1個目のセルとした場合に、隔壁を5回隔てて隣接するセルまでの全てのセルのことをいう。「対角線上に存在するセルから隔壁を隔てて連続して隣接する5個のセル」には、「隣接する1個目〜4個目までのセル」も含まれる。
【0047】
図3に示すように、ハニカムセグメント8(補強セグメント8x)の四角形の断面における対角線P1,P2上に存在するセル2及びこの対角線P1,P2上に存在するセル2から隔壁1を隔てて連続して隣接する5個のセル2からなる領域(対角線領域S)が、流出セル2bが補強セル22となり得る領域である。即ち、この対角線領域S以外の領域には、流出セル2bであっても、隔壁1が交差する角部に補強部6が形成されることはない。上記対角線領域S以外のセルに補強部が形成されたとしても、目封止ハニカム構造体の補強効果が格段に向上することはなく、逆に、圧力損失の増加の点で不利となってしまう。
【0048】
また、補強部6が形成されるセルは、補強セグメント8xの対角線領域S内のセルであっても、流出セル2bのみである。即ち、流入セル2aには、対角線領域Sの如何に関わらず、補強部が形成されることはない。このように構成することによって、圧力損失の増加を極めて良好に抑制することができる。
【0049】
補強セグメント8xの対角線領域S内の流出セル2bのうち、対角線P1,P2の交点部Uに存在する流出セル2b又は交点部Uからの距離が最も短い位置に存在する流出セル2bは、補強セル22である必要がある。これにより、ハニカムセグメントの断面の中央部分における、端面クラックの発生を有効に抑制することができる。
【0050】
「対角線P1,P2の交点部Uに存在する流出セル2b」とは、対角線P1,P2の交点部Uと、セルの開口部分とが重なる位置に存在するセルのことをいう。また、「交点部Uからの距離が最も短い位置に存在する流出セル2b」とは、例えば、対角線P1,P2の交点上にセルの開口部分が存在せず、隔壁が存在する場合等に、ハニカムセグメントの断面において、対角線P1,P2の交点部Uから最も近い位置に存在する流出セル2bのことをいう。例えば、対角線P1,P2の交点部Uが、格子状に配列した4個のセルの中央部分に位置する場合には、「交点部Uからの距離が最も短い位置に存在するセル2」が、上記4個のセル2となる。そして、この4個のうちのに1個以上の流出セル2bが存在する場合には、当該1個以上の流出セル2bが、「交点部Uからの距離が最も短い位置に存在する流出セル2b」となる。また、「対角線P1,P2の交点部Uに存在する流出セル2b」は、当然に「交点部Uからの距離が最も短い位置に存在する流出セル2b」である。以下、「対角線P1,P2の交点部Uに存在する流出セル2b又は交点部Uからの距離が最も短い位置に存在する流出セル2b」のことを、「対角線交点流出セル」ということがある。
【0051】
対角線領域S内の対角線交点流出セル以外の流出セルは、補強セルであっても、非補強セルであってもよい。例えば、図3においては、角線領域S内の全ての流出セル2bに、補強部6が形成された場合の例を示す。図9に示すように、対角線P1,P2の交点部Uに存在する流出セル2bと、この交点部Uに存在する流出セル2bから隔壁1を隔てて隣接する5個のセル2のうちの流出セル2bとに、補強部6が形成されたものであってもよい。更に、図10に示すように、ハニカムセグメント8の断面の対角線P1,P2上に存在する全ての流出セル2bに、補強部6が形成されたものであってもよい。補強部を形成する流出セルについては、例えば、目封止ハニカム構造体の使用用途や、ハニカムセグメントを構成する隔壁の材質等により、圧力損失の増加抑制効果と、耐久性向上効果とを考慮して適宜決定することができる。なお、対角線上に存在する全ての流出セルに、補強部を形成することにより、ハニカムセグメントの断面の中央部分から、対角線に延びる方向に生じる端面クラックの発生をより効果的に防止することができる。更に、対角線領域内の全ての流出セルに、補強部を形成することにより、耐久性を極めて良好に向上させることができる。ここで、図9は、本発明の目封止ハニカム構造体の他の実施形態に用いられるハニカムセグメントの流出側端面を拡大して示す模式図である。図10は、本発明の目封止ハニカム構造体の更に他の実施形態に用いられるハニカムセグメントの流出側端面を拡大して示す模式図である。
【0052】
図2に示すように、本実施形態の目封止ハニカム構造体100においては、対角線領域S内の流出セル2bが補強された補強セグメント8xが、ハニカム構造体4のセル2の延びる方向に垂直な断面において、ハニカム構造体4の断面の重心Oを含む又は重心Oからの距離が最も短い位置に存在するハニカムセグメント8である必要がある。即ち、ハニカム構造体4の断面の重心Oにハニカムセグメント8が存在する場合には、このハニカムセグメント8が補強セグメント8xとなる。一方、ハニカム構造体4の断面の重心Oに、ハニカムセグメント8が存在せずに、例えば、二つのハニカムセグメント8の互いの側面同士を接合するための接合層が存在する場合には、ハニカム構造体4の断面の重心Oからの距離が最も短い位置に存在するハニカムセグメント8が、補強セグメント8xとなる。例えば、図2に示すように、ハニカム構造体4の断面の重心Oが、四つのハニカムセグメント8が接合された部位の中心に存在する場合には、この四つのハニカムセグメント8が補強セグメント8xとなる。ハニカム構造体4の断面の重心Oを含むハニカムセグメント8xは、上記断面の重心Oからの距離が最も短い位置に存在するハニカムセグメント8である。
【0053】
本実施形態の目封止ハニカム構造体においては、完全セグメント8aの全てが、少なくとも補強セグメント6xであってもよい。また、ハニカム構造体4を構成するハニカムセグメント8の全てが、補強セグメント6xであってもよい。重心Oに近いハニカムセグメントのみを、補強セグメントとすることにより、圧力損失の増加を抑制しつつ、中央部分に発生する端面クラックを有効に防止する効果がある。一方、例えば、全ての完全セグメント8aを、補強セグメントとすることにより、上記効果に加え、中央部分のセグメントに隣接するセグメントに発生する端面クラックも有効に防止する効果がある。更に、全てのハニカムセグメント8を、補強セグメントとすることにより、上記効果に加え、外周部分に発生する端面クラックも有効に防止する効果がある。
【0054】
図2においては、16個のハニカムセグメント8の全てが、補強セグメント8xである目封止ハニカム構造体100の例を示す。例えば、図11に示すように、16個のハニカムセグメント8のうち、4個の完全セグメント8aが「2個×2個」に配列し、この4個の完全セグメント8aが補強セグメント8xとなっていてもよい。ハニカム構造体4の外周部を構成する不完全セグメント8bが非補強セグメント8yとなっている。ここで、図11は、本発明の目封止ハニカム構造体の更に他の実施形態の、流出側端面を示す模式図である。
【0055】
「補強部」とは、セルを区画形成する隔壁が交差する角部に配置され、ハニカムセグメントの実体部分である隔壁の強度(耐久性)を補強する部位のことをいう。例えば、「補強部」は、隔壁が交差する角部に対して、当該角部を補強するために別途配設された別部材(例えば、凹部や梁等の補強部材)からなるものであってもよい。また、「補強部」は、隔壁が交差する角部が、予め、他の角部(例えば、非補強セルの角部や、補強セルであっても補強部が形成されていない角部)とは異なるように、R形状やC形状等の肉厚に形成された部位であってもよい。
【0056】
補強部が、角部を補強するために別途配設された別部材からなるものの場合には、ハニカムセグメントの作製時において、任意の形状の補強部を、所定の角部に配設することができる。このため、ハニカムセグメント成形用の口金の形状によらず、多彩な補強セルのバリエーションを実現することができる。一方、補強部が、角部が肉厚に形成された部位からなるものの場合には、ハニカムセグメントの製造時(より具体的には、ハニカムセグメントの成形時)において、所定の流出セル(補強セル)に補強部を形成することができ、補強部の形成を極めて簡便に行うことができる。
【0057】
「補強セル」は、セルの外周部分に形成される角部のうちの少なくとも一の角部が、上記「補強部」によって補強されたセルである。「補強セル」は、補強部が形成された補強角部と、補強部が形成されていない非補強角度部とを含むものであってもよい。また、「補強セル」は、補強セルにおける全ての角部に補強部が形成されたもの(即ち、全ての角部が補強角部であるもの)であってもよい。
【0058】
例えば、補強角部と非補強角度部とを含む補強セルは、流出セルの容積の減少を抑制することができ、圧力損失の上昇を更に抑制することができる。一方、全ての角部が補強角部である補強セルは、目封止ハニカム構造体の耐久性を良好に向上させることができる。補強セルのうち、全部が補強角部である場合には、耐久性をより良好に向上させることができる。
【0059】
本実施形態の目封止ハニカム構造体100において、ハニカム構造体4の形状は、特に限定されないが、円筒形状、端面が楕円形の筒形状、端面が「正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、八角形等」の多角形の角柱状等が好ましい。図1に示すハニカム構造体4は、円筒形状の場合の例を示している。また、図1に示すハニカム構造体4は、外周壁3を有している。ハニカム構造体4の外周壁3は、複数個のハニカムセグメント8が互いの側面同士が対向するように配置された状態で接合された接合体の外周部分に、セラミック材料を塗工して形成したものであることが好ましい。
【0060】
ハニカム構造体4を構成するハニカムセグメント8の形状は、完全セグメントと不完全セグメントの場合で異なる。完全セグメントの形状は、セルの延びる方向に直交する断面形状が四角形の四角柱である。なお、断面形状は正方形であることが好ましい。一方、不完全セグメントの形状は、セルの延びる方向に直交する断面形状の一部に、ハニカム構造体の外周形状に対応した円弧部分を有する柱状である。本実施形態の目封止ハニカム構造体においては、ハニカム構造体を構成する複数個のハニカムセグメントのうち、少なくとも1個のハニカムセグメントが、これまでに説明した補強セグメントであれば、ハニカムセグメントを接合する接合層や、ハニカム構造体の外周壁の構成については、従来公知のセグメント構造のハニカム構造体に準じた構成を採用することができる。
【0061】
ハニカム構造体を構成するハニカムセグメントの個数についても特に制限はない。例えば、図2に示す目封止ハニカム構造体100においては、4個の完全セグメント8aが「2個×2個」の配列で並んだ状態になっている。そして、この4個の完全セグメント8aの外周(セルの延びる方向に直交する断面における外周)に位置する12個のハニカムセグメント8が、不完全セグメント8bであり、この12個の不完全セグメント8bによって、ハニカム構造体4の最外周が形成されている。
【0062】
「流入セル」は、流出側端面におけるセルの開口部に流出側目封止部が配設されたセルである。この流入セルの流入側端面の開口部から、排ガス等の流体が流入する。一方、「流出セル」は、流入側端面におけるセルの開口部に流入側目封止部が配設されたセルである。この流出セルには、排ガス等の流体が直接流入することはできず、流入セルに流入した流体が、隔壁を通過して流出セル内に流入し、流出セルの流出側端面の開口部から流出される。流入セルから流出セルに流体が移動する際に、多孔質の隔壁によって流体中の粒子状物質が捕集される。
【0063】
流入セルと流出セルとの配置、換言すれば、流出側目封止部と流入側目封止部との配置については、特に制限はない。但し、流体中の粒子状物質を隔壁によって良好に捕集するという観点からは、流入セルと流出セルと隔壁を隔てて交互に配置されていることが好ましい。なお、流入セルの一部、或いは流出セルの一部が、ハニカム構造体の端面の一ヶ所に集合するように配置されたものであってもよい。
【0064】
セルの形状(セルの延びる方向に垂直な断面における開口形状)については特に制限はない。例えば、三角形、四角形、六角形、八角形等の形状を挙げることができる。四角形の場合には、正方形、又は長方形が好ましく、正方形がより好ましい。上記セルの形状は、補強部が形成されたセルについては、補強部が除かれた状態の形状のことである。更に、本実施形態の目封止ハニカム構造体においては、流入セルの、セルの延びる方向に垂直な断面における開口形状(以下、単に、「流入セルの開口形状」ということがある)と、流出セルの、セルの延びる方向に垂直な断面における補強部が除かれた開口形状(以下、単に、「流出セルの開口形状」ということがある)とが、同一形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。
【0065】
なお、本実施形態の目封止ハニカム構造体においては、ハニカムセグメントを構成する隔壁の、セルの延びる方向に垂直な断面における厚さ(以下、単に、「隔壁の厚さ」ということがある)は、基本的に均一なものとする。「基本的に均一」とは、成形時の変形等により、僅かに隔壁の厚さに差異が生じた場合を除き、隔壁の厚さが均一であることを意味する。即ち、本実施形態の目封止ハニカム構造体のハニカムセグメントにおいては、意図的に隔壁の厚さに差異を生じさせることはなく、上記断面において、隔壁の厚さは均一なものとする。例えば、ハニカムセグメントを押出成形する口金(金型)のスリットを、スライサー加工により製造した場合に、上記均一な厚さの隔壁が実現される。そして、本実施形態の目封止ハニカム構造体においては、本来、均一な厚さであるはずの隔壁において、その隔壁の一部(特に角部)が、他部分に比べ厚く形成されている部位を、補強部が形成された部位とみなすことができる。
【0066】
隔壁の厚さは、100〜600μmであることが好ましく、110〜560μmであることが更に好ましく、280〜420μmであることが特に好ましい。100μmより薄いと、目封止ハニカム構造体の強度が低くなることがある。600μmより厚いと、目封止ハニカム構造体の初期の圧力損失が高くなることがある。ハニカムセグメントの隔壁は、ハニカム構造体を構成する複数個のハニカムセグメントにおいて、それぞれ同じ厚さに形成されたものであることが好ましい。
【0067】
隔壁の気孔率は、30〜85%であることが好ましく、35〜70%であることが更に好ましく、40〜65%であることが特に好ましい。気孔率が30%より小さいと、目封止ハニカム構造体の初期の圧力損失が高くなることがある。気孔率が85%より大きいと、目封止ハニカム構造体の強度が低くなることがある。気孔率は、水銀ポロシメータによって測定した値である。ハニカムセグメントの隔壁は、ハニカム構造体を構成する複数個のハニカムセグメントにおいて、それぞれ同じ気孔率となるように形成されたものであることが好ましい。
【0068】
隔壁の平均細孔径は、5〜40μmであることが好ましく、10〜25μmであることが更に好ましく、13〜23μmであることが特に好ましい。平均細孔径が5μmより小さいと、目封止ハニカム構造体の初期の圧力損失が高くなることがある。平均細孔径が40μmより大きいと、目封止ハニカム構造体の強度が低くなることがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータによって測定した値である。ハニカムセグメントの隔壁は、ハニカム構造体を構成する複数個のハニカムセグメントにおいて、それぞれ同じ平均細孔径となるように形成されたものであることが好ましい。
【0069】
ハニカムセグメントのセル密度は、特に制限されないが、10〜70個/cmであることが好ましく、15〜50個/cmであることが更に好ましい。セル密度が、10個/cmより小さいと、目封止ハニカムセグメント接合体の強度が低くなることがある。セル密度が、70個/cmより大きいと、セルの断面積(セルの延びる方向に直交する断面の面積)が小さくなるため、圧力損失が高くなる。複数個のハニカムセグメントは、ハニカム構造体を構成する複数個のハニカムセグメントにおいて、それぞれ同じセル密度となるように構成されたものであることが好ましい。
【0070】
ハニカムセグメントの断面の大きさについては特に制限はない。また、ハニカムセグメントに形成されるセルの個数についても特に制限はない。例えば、ハニカムセグメントの四角形の断面の縦方向及び横方向のそれぞれのセルの個数が、5〜40個であることが好ましく、10〜30個であることが更に好ましく、16〜28個であることが特に好ましい。ハニカムセグメントの四角形の断面の縦方向及び横方向のそれぞれのセルの個数が、5個未満であると、圧力損失が高くなることがあり、40個を超えると、目封止ハニカムセグメント接合体の強度が低くなることがある。なお、ハニカムセグメントの四角形の断面の縦方向及び横方向のセルの個数とは、四角形の断面の一辺に平行な方向を縦方向とし、上記一辺に直角に交わるもう一辺に平行な方向を横方向とした場合における、セルの個数のことをいう。
【0071】
隔壁の材料としては、セラミックが好ましく、強度及び耐熱性に優れることより、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム、窒化珪素、及び炭化珪素−コージェライト系複合材料からなる群から選択される少なくとも1種が更に好ましい。これらの中でも、炭化珪素が特に好ましい。
【0072】
補強部の材料については特に制限はないが、セラミックが好ましく、上記隔壁の好ましい材料として挙げられた材料を好適に用いることができる。本実施形態の目封止ハニカム構造体においては、隔壁の熱膨張係数と、補強部の熱膨張係数とが同じ値又は近い値になることがより好ましい。更に、隔壁の材料と補強部の材料とが同じ材料であることがより好ましい。このように構成することによって、目封止ハニカム構造体に熱応力がかかっても、補強部がハニカム構造体(具体的には、ハニカムセグメント)から剥れたり、補強部と隔壁との接合部分が破損したりすることを防ぐことができる。なお、隔壁と補強部とが一体的に形成されたものの場合には、隔壁の材料と補強部の材料とが同じ材料となる。
【0073】
補強部の大きさは、流出セルを区画形成する隔壁の少なくとも一の角部に配設され、実質的に流出セルの開口部分を完全に塞がない程度の大きさであれば特に制限はない。但し、流出セルの開口部分が、補強部によって大きく塞がれてしまうと圧力損失が増大してしまう。このため、図12に示すように、本実施形態の目封止ハニカム構造体においては、「補強部6を除く隔壁1の平均厚さT(以下、「隔壁1の平均厚さT」ということがある)」に対する、「補強セル22(流出セル2b)の補強部6の表面から、補強セル22を区画形成する隔壁1の交差点を隔てて配置された他のセルの表面までの隔壁交差部分の交差距離L」の比の値(L/T)が、1.5〜9.3であることが好ましい。このように構成することによって、圧力損失の増加抑制と、耐久性向上とをバランスよく実現することができる。図12は、本発明の目封止ハニカム構造体の一実施形態の、セルの延びる方向に垂直な断面を拡大して示す模式図である。
【0074】
ここで、「補強部6を除く隔壁1の平均厚さT(以下、「隔壁1の平均厚さT」ということがある)」に対する、「補強セル22の補強部6の表面から、補強セル22を区画形成する隔壁1の交差点を隔てて配置された他のセルの表面までの隔壁交差部分の交差距離L(以下、「隔壁交差部分の交差距離L」ということがある)」の比の値(L/T)について説明する。図12に示すように、まず、補強部6が形成されていない部分の隔壁1に沿って平行線AB及びCDを引き、その平均距離を「隔壁1の平均厚さT」とする。また、平行線AB及びCDの交点をそれぞれE,F,G,Hとする。ここで、測定対象の補強部6xに最も近い交点(交点E)と、隔壁1の交差点を隔てて配置された他のセル(図12においては、他のセルも補強セル22である)に最も近い交点(交点F)とを通るように、両セル間の距離を測定した長さを、「隔壁交差部分の交差距離L」と定義する。上記方法により測定される「隔壁交差部分の交差距離L」の値を、「隔壁1の平均厚さT」の値で除算した値が、上記「比の値(L/T)」である。
【0075】
図12においては、測定対象の補強部6xを有する補強セル22と、隔壁1の交差点を隔てて配置された他のセルとの両方が、共に補強セル22の場合を示しているが、例えば、補強部6xの配置によっては、隔壁1の交差点を隔てて配置された他のセルが、非補強セル23の場合や、補強セル22であっても隔壁の角部に補強部を有していない場合もある。このような場合でも、上述した方法により、「比の値(L/T)」を求めることができる。上記「比の値(L/T)」の測定は、オプティカルマイクロスコープによって行うことができる。
【0076】
「隔壁1の平均厚さT」に対する「隔壁交差部分の交差距離L」の比の値(L/T)が1.5未満であると、補強部による耐久性向上の効果が十分に得られないことがある。一方、「隔壁1の平均厚さT」に対する「隔壁交差部分の交差距離L」の比の値(L/T)が9.3を超えると、補強セル22の開口面積が減少し過ぎて、圧力損失が過剰に増加してしまうことがある。また、9.3を超えても、耐久性が更に向上し難く、圧力損失の増加する比率が増大してしまうことがある。なお、上記比の値(L/T)は、1.6〜5.0であることが更に好ましく、1.7〜2.7であることが特に好ましい。
【0077】
なお、本実施形態のハニカム構造体における非補強セルは、隔壁が交差する角部に補強部が形成されていないものである。但し、意図して補強部を形成しない非補強セルであっても、ハニカム構造体を押出成形する口金の磨耗等により、補強部を形成していないはずの角部に、極めて僅かな肉厚部分が生じることがある。そこで、本実施形態のハニカム構造体においては、上記比の値(L/T)を測定した際に、その値が、1.5未満の場合については、補強部が形成されていない角部とする。なお、例えば、開口部分の形状が正方形のセルにおいて、角部に全く補強部が形成されず、意図しない肉厚部分も形成されていない場合には、上記比の値(L/T)は、1.41となる。
【0078】
また、各補強部(1個の補強部)は、セルの延びる方向に垂直な断面における補強部が除かれた開口部分の面積の0.05〜20%に相当する範囲を占める大きさのものであることが好ましい。補強部が占める面積が、開口部分の面積の0.05%未満であると、補強部による補強効果が十分に発現しないことがある。また、補強部が占める面積が、開口部分の面積の20%を超えると、例えば、四角形のセルの四個の角部全てに補強部が形成された場合、補強セルの開口面積が小さくなり過ぎて、目封止ハニカム構造体の圧力損失が増大してしまうことがある。なお、各補強部の大きさは、セルの延びる方向に垂直な断面における補強部が除かれた開口部分の面積の0.1〜12%に相当する範囲を占める大きさのものであることが更に好ましく、0.4〜5%に相当する範囲を占める大きさのものであることが特に好ましい。
【0079】
また、各補強部は、補強セルの流入側端面から流出側端面までの全域に形成されたものであってもよいし、補強セルの流入側端面から、ハニカム構造体(具体的には、ハニカムセグメント)の長手方向(セルの延びる方向)の一部に形成されていてもよい。例えば、補強セルの流入側端面から流出側端面までの全域に形成されたものの場合には、目封止ハニカム構造体の長手方向全体の耐久性を良好に向上させることができる。一方、補強セルの流入側端面から、ハニカム構造体の長手方向の一部に形成されたものの場合には、流出側端面における耐久性を向上しつつ、流出セルの容積を大きくして圧力損失の増大をより抑制することができる。
【0080】
本実施形態の目封止ハニカム構造体は、隣接するハニカムセグメント間に接合部が配置され、ハニカムセグメントが接合部により接合されていることが好ましい。接合部は、隣接するハニカムセグメントの対向する側面の全体に配置されることが好ましい。接合部は、ハニカム構造体に負荷がかかったときの緩衝材としての役割も果たす。接合部の材料は、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、SiC粒子等の無機原料に、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤等の添加材を加えたものに水を加えて混練したもの等が好ましい。接合部の厚さは、0.2〜2.0mmであることが好ましく、0.5〜1.5mmであることが更に好ましい。0.2mmより薄いと、隣接するハニカムセグメント同士が接触することがある。2.0mmより厚いと、排ガスを浄化するときの圧力損失が大きくなることがある。
【0081】
(2)目封止ハニカム構造体の製造方法:
本実施形態の目封止ハニカム構造体の製造方法について説明する。まず、ハニカムセグメントを作製するための坏土を調整し、この坏土を成形して、複数個のハニカムセグメントの成形体を作製する(成形工程)。ハニカムセグメントの成形体は、ハニカムセグメントのセルの延びる方向に垂直な断面の形状が四角形の柱状とする。
【0082】
ハニカムセグメントとして、補強セグメントを形成する場合には、ハニカムセグメントのセルのうち、流出セルとなる所定のセルの角部に補強部を形成してもよい。即ち、ハニカムセグメントの四角形の断面における対角線上に存在するセル及び対角線上に存在するセルから隔壁を隔てて連続して隣接する5個のセルからなる対角線領域内のセルのうち、流出セルとなるセルの少なくとも一の角部に、流出セルを補強する補強部を形成してもよい。この際、補強セグメントの、上記対角線領域の少なくとも対角線の交点部に存在する流出セル又は交点部からの距離が最も短い位置に存在する流出セルには、補強部を形成する。
【0083】
また、成形時においては、セルに補強部を形成せずに、ハニカムセグメントの成形体を得た後に、ハニカムセグメントの成形体、ハニカムセグメントの成形体を乾燥した乾燥体、又は、ハニカムセグメントの乾燥体を焼成したハニカムセグメントのいずれかに、補強部を形成することもできる。ハニカムセグメントを接合したハニカム構造体を作製した後に、補強部を形成することもできる。具体的な方法については、後述する各工程において更に詳細に説明する。
【0084】
また、ハニカムセグメントの成形体を製造する時点において、目封止ハニカム構造体として用いる際の、流入側端面と、流出側端面とを決定しておくことが好ましい。即ち、本実施形態の目封止ハニカム構造体は、流入側端面と流出側端面とで(換言すれば、流入セルと流出セルとで)、セルの形状(即ち、補強部の有無)が異なるため、予め、柱状のハニカムセグメントの方向性を決定しておくことが好ましい。
【0085】
次に、得られたハニカムセグメントの成形体(或いは、必要に応じて行われた乾燥後のハニカムセグメントの乾燥体)を焼成してハニカムセグメントを作製する(ハニカムセグメント作製工程)。成形時に補強部を形成していない場合には、焼成の前後のいずれかにおいて、流出セルとなるセルの少なくとも一部に、補強部を形成する。
【0086】
次に、得られた各ハニカムセグメントの流入側端面における所定のセルの開口部、及び流出側端面における残余のセルの開口部に目封止を施して、流入側目封止部及び流出側目封止部を形成する(目封止工程)。
【0087】
次に、得られた各ハニカムセグメントを接合材で接合して、図1に示すような、複数個のハニカムセグメント8が、互いの側面同士が対向するように隣接して配置されると共に、対向する側面同士が接合材により接合されたハニカムセグメント接合体(目封止ハニカム構造体)を作製する(ハニカムセグメント接合工程)。接合させるハニカムセグメントの個数は、作製しようとするハニカム構造体の大きさに合わせた個数であることが好ましい。接合材は、対向する側面全体すなわち接合面全体に配設されることが好ましい。接合材は、ハニカムセグメントが熱膨張、熱収縮したときに、体積変化分を緩衝する(吸収する)役割を果たすとともに、各ハニカムセグメントを接合する役割を果たす。複数個のハニカムセグメントを接合する際には、ハニカム構造体のセルの延びる方向に垂直な断面において、ハニカム構造体の断面の重心を含む又は重心からの距離が最も短い位置に存在するハニカムセグメントが、少なくとも補強セグメントとなるようにする。
【0088】
また、接合体を形成した後、接合体の外周部分を切削して所望の形状にすることが好ましい。本実施形態の目封止ハニカム構造体を製造する場合には、最外周に位置するハニカムセグメントが切削されるようにして、セルの延びる方向に直交する断面における形状が円形になるように、切合体の外周部分を切削することが好ましい。
【0089】
また、接合体を形成した後に、又は、更に外周部分を切削して所望の形状にした後に、外周コート処理を行い、接合体の最外周に外周部を配設して目封止ハニカム構造体を得ることが好ましい。
【0090】
このようにして本実施形態の目封止ハニカム構造体を製造することができる。以下、各製造工程について更に詳細に説明する。
【0091】
(2−1)成形工程:
まず、成形工程においては、セラミック原料を含有するセラミック成形原料を成形して、流体の流路となる複数のセルを区画形成するハニカムセグメントの成形体を複数個形成する。
【0092】
セラミック成形原料に含有されるセラミック原料としては、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト化原料、コージェライト、ムライト、アルミナ、チタニア、及びチタン酸アルミニウムからなる群から選択された少なくとも1種を含むものであることが好ましく、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト化原料、コージェライト、ムライト、アルミナ、チタニア、及びチタン酸アルミニウムからなる群から選択された少なくとも1種であることが更に好ましく、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト化原料、コージェライト、ムライト、アルミナ、チタニア、及びチタン酸アルミニウムからなる群から選択された1種であることが特に好ましい。なお、コージェライト化原料とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミック原料であって、焼成されてコージェライトになるものである。
【0093】
また、このセラミック成形原料は、上記セラミック原料に、分散媒、有機バインダ、無機バインダ、造孔材、界面活性剤等を混合して調製することが好ましい。各原料の組成比は、特に限定されず、作製しようとするハニカム構造体の構造、材質等に合わせた組成比とすることが好ましい。
【0094】
セラミック成形原料を成形する際には、まず成形原料を混練して坏土とし、得られた坏土をハニカム形状に成形することが好ましい。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。坏土を成形してハニカム成形体を形成する方法としては特に制限はなく、押出成形、射出成形等の従来公知の成形方法を用いることができる。例えば、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形してハニカム成形体を形成する方法等を好適例として挙げることができる。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。
【0095】
ハニカムセグメントの成形体は、ハニカムセグメントのセルの延びる方向に垂直な断面の形状が四角形の柱状とする。即ち、成形時においては、全てのハニカムセグメントの形状を、ハニカムセグメントのセルの延びる方向に垂直な断面の形状が正方形の完全セグメントとし、複数個のハニカムセグメントを接合した接合体において、必要に応じて、接合体の外周部分を切削して所望の形状にすることが好ましい。
【0096】
成形時において、ハニカムセグメントとして補強セグメントを形成する場合には、得られる目封止ハニカム構造体にて流出セルとなるセルのうちの、ハニカムセグメントの対角線領域内のセルに補強部を形成してもよい。具体的には、補強部を形成するセル(流出セルとなるセル)の、セルの延びる方向に垂直な断面における隔壁が交差する少なくとも一の角部に、このセルを補強する補強部を形成する。補強部を形成する方法については特に制限はないが、例えば、ハニカムセグメント成形用の口金のスリットの形状が、上記補強部を有するセル(補強セル)と、補強部を有しないセル(非補強セル)とを選択的に形成することができるように構成された口金を用いることが好ましい。なお、補強セグメントにおいては、対角線の交点部に存在する流出セルとなるセル又は交点部からの距離が最も短い位置に存在する流出セルとなるセルについては、補強部を形成する必要がある。
【0097】
補強セルと非補強セルとを選択的に形成することが可能な口金としては、二つの面を有し、一方の面にハニカム形状のスリットが格子状に形成されるとともに、他方の面にスリットと連通し、成形原料を導入するための裏孔が形成された口金基体からなる口金を挙げることができる。そして、この口金は、スリットが交差する交点のうち、得られるハニカム構造体において流体が流出する流出セルが形成される交点における角部のうちの少なくとも一の角部の頂点が、曲線状又は平面上に面取りされていることが好ましい。このような口金を用いることにより、ハニカムセグメントの成形時に、所望のセルに、選択的に補強部を形成することができる。また、口金のスリットの交点に、流出セルの角部が補強されるように凹部や梁を設けてもよい。
【0098】
また、上記成形後に、得られたハニカムセグメントの成形体を乾燥してもよい。乾燥方法は、特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができ、なかでも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組合せて行うことが好ましい。
【0099】
(2−2)ハニカムセグメント作製工程:
次に、得られたハニカムセグメントの成形体を焼成してハニカムセグメントを得ることが好ましい。なお、ハニカムセグメントの成形体の焼成は、ハニカムセグメントの成形体に目封止部を配設した後に行ってもよい。
【0100】
また、ハニカムセグメントの成形体を焼成(本焼成)する前には、そのハニカムセグメントの成形体を仮焼することが好ましい。仮焼は、脱脂のために行うものである。仮焼の方法は、特に制限はなく、成形体中の有機物(有機バインダ、分散剤、造孔材等)を除去することができればよい。一般に、有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度であるので、仮焼の条件としては、酸化雰囲気において、200〜1000℃程度で、3〜100時間程度加熱することが好ましい。
【0101】
ハニカムセグメントの成形体の焼成(本焼成)は、仮焼した成形体を構成する成形原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するために行われる。焼成条件(温度、時間、雰囲気)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、コージェライト化原料を使用している場合には、焼成温度は、1410〜1440℃が好ましい。また、焼成時間は、最高温度でのキープ時間として、4〜6時間が好ましい。
【0102】
また、ハニカムセグメントの成形体の成形時に補強部を形成しなかった場合には、焼成の前後において、凹状や梁状の補強材を、流出セルの角部に塗布することにより、補強部を形成することが好ましい。
【0103】
具体的には、ある容器にスラリー状で準備された補強材に、焼成前又は焼成後のハニカムセグメントを、その流出側端面側から浸漬させるディッピング方式を用いて補強部を形成することができる。また、同様のスラリー状の補強材に、ハニカムセグメントの流出側端面を接触させ、この状態から、ハニカムセグメントの流入側端面より上記補強材を吸引するサッキング方式を用いて補強部を形成することもできる。更に、同様のスラリーの補強材をハニカムセグメントの流出側端面より注入するインジェクション方式を用いて補強部を形成することもできる。この際、補強材が流入セル側に含浸してしまうことを避けるため、補強材成分の粒子径が、ハニカムセグメントの隔壁の平均細孔径より大きく調整されていることが好ましい。また、実使用下での補強材又はハニカムセグメントの破損を避けるため、補強材の熱膨張係数は、ハニカムセグメントの熱膨張係数と同等に調整することが好ましい。
【0104】
このようにして、流出セルとなる特定のセルの、セルの延びる方向に垂直な断面における隔壁が交差する少なくとも一の角部に補強部が形成されたハニカムセグメント(補強セグメント)を得ることができる。また、補強部を形成しないハニカムセグメント(非補強セグメント)については、ハニカムセグメントの成形体をそのまま焼成することによって得ることができる。
【0105】
(2−3)目封止工程:
次に、ハニカムセグメントの、流体の流入側端面における流出セルの開口部と、流体の流出側の端面における流入セルの開口部とに、目封止材料を充填して、流入側端面における流出セルの開口部と、流出側端面における流入セルの開口部とに、目封止部を形成する。
【0106】
ハニカムセグメントに目封止材料を充填する際には、まず、一方の端部側に目封止材料を充填し、その後、他方の端部側に目封止材料を充填する。一方の端部側に目封止材料を充填する方法としては、ハニカムセグメントの一方の端面(例えば、流入側端面)にシートを貼り付け、シートにおける、「目封止部を形成しようとするセル」と重なる位置に孔を開けるマスキング工程と、「ハニカムセグメントの、シートが貼り付けられた側の端部」を目封止材料が貯留された容器内に圧入して、目封止材料をハニカムセグメントのセル内に圧入する圧入工程と、を有する方法を挙げることができる。目封止材料をハニカムセグメントのセル内に圧入する際には、目封止材料は、シートに形成された孔を通過し、シートに形成された孔と連通するセルのみに充填される。
【0107】
また、ハニカムセグメントの他方の端部(例えば、流出側端面)側に目封止材料を充填する方法も、上記、ハニカムセグメントの一方の端部側に目封止材料を充填する方法と同様の方法とすることが好ましい。また、ハニカムセグメントの両端部に、目封止材料を同時に充填してもよい。
【0108】
次に、ハニカムセグメントに充填された目封止材料を乾燥させて、目封止部を形成し、目封止ハニカムセグメントを得ることが好ましい。なお、ハニカムセグメントの両端部に目封止材料を充填した後に、目封止材料を乾燥させてもよいし、ハニカムセグメントの一方の端部に充填した目封止材料を乾燥させた後に、他方の端部に目封止材料を充填し、その後、他方の端部に充填した目封止材料を乾燥させてもよい。更に、目封止材料を、より確実に固定化する目的で、焼成してもよい。また、乾燥前のハニカムセグメントの成形体又は乾燥後のハニカムセグメントの成形体に目封止材料を充填し、乾燥前のハニカムセグメントの成形体又は乾燥後のハニカムセグメントの成形体と共に、目封止材料を焼成してもよい。
【0109】
(2−4)ハニカムセグメント接合工程:
次に、得られた各ハニカムセグメントを接合材で接合して、図1に示すような、複数個のハニカムセグメント8が、互いの側面同士が対向するように隣接して配置されると共に、対向する側面同士が接合材により接合されたハニカムセグメント接合体(目封止ハニカム構造体)を作製する。
【0110】
複数個のハニカムセグメントを接合する際には、ハニカム構造体のセルの延びる方向に垂直な断面において、ハニカム構造体の断面の重心を含む又は重心からの距離が最も短い位置に存在するハニカムセグメントが、少なくとも補強セグメントとなるようにする。
【0111】
ハニカムセグメントは、接合材を用いて接合されることが好ましい。接合材をハニカムセグメントの側面に塗布する方法は、特に限定されず、刷毛塗り等の方法を用いることができる。
【0112】
接合材としては、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、SiC粒子等の無機原料に、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤等の添加材を加えたものに水を加えて混練したスラリー等を挙げることができる。
【0113】
ハニカムセグメントの側面同士を接合する接合材が、作製されるハニカム構造体における接合部となる。接合部は、ハニカムセグメントの対向する側面全体に配設されることが好ましい。接合部は、ハニカムセグメントが熱膨張、熱収縮したときに、体積変化分を緩衝する(吸収する)役割を果たすとともに、各ハニカムセグメントを接合する役割を果たす。
【0114】
接合体を形成した後、外周部分を切削して所望の形状にすることが好ましい。また、ハニカムセグメントを接合し、接合体の外周部分を切削した後に、ハニカム構造体の外周部分に外周壁を配設して目封止ハニカム構造体を作製することが好ましい。外周コート処理を行うことにより、目封止ハニカム構造体の真円度が向上する等の利点がある。
【0115】
このように構成することによって、本実施形態の目封止ハニカム構造体を製造することができる。但し、本実施形態の目封止ハニカム構造体の製造方法は、上述した製造方法に限定されることはない。
【実施例】
【0116】
以下、本発明の目封止ハニカム構造体を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0117】
(実施例1)
セラミック原料として、炭化珪素(SiC)を用いて、ハニカムセグメントを作製し、16個のハニカムセグメントを接合してセグメント構造のハニカム構造体を作製した。具体的には、SiC粉、金属Si粉を80:20の質量割合で混合し、これに、バインダとしてメチルセルロース及びヒドロキシプロポキシメチルセルロース、造孔材として澱粉と吸水性樹脂、界面活性剤及び水を混合してセラミック成形原料を得た。得られたセラミック成形原料を、ニーダーを用いて混練して、坏土を得た。
【0118】
次に、得られた坏土を、真空押出成形機を用いて成形し、ハニカムセグメントの成形体を16個得た。得られたハニカムセグメントの成形体は、このハニカムセグメントの成形体を焼成した後のハニカムセグメントにおいて、隔壁厚さが0.305mmとなり、セル密度が46.5個/cmとなり、セルピッチが1.47mmとなるような形状のものとした。また、ハニカムセグメントの成形体の全体形状(焼成後の全体形状)は、端面が正方形の角柱形(端面の一辺の長さが36.6mm、セルの延びる方向における長さが152.4mm)であった。
【0119】
また、このハニカムセグメントの成形体としては、4個のハニカムセグメントを補強セグメントとして形成した。この4個の補強セグメントは、重心からの距離が最も短い位置に存在する4個のハニカムセグメントとした。表1における「補強セグメントの位置」の欄において「中央の4個」と示す。補強セグメントは、2本の対角線の交点部に存在する2個の流出セル(後に流出セルとするセル)における隔壁が交差する角部に補強部を形成した。表1における「補強セルの位置」の欄において「交点部」と示す。
【0120】
補強部が形成された流出セル(補強セル)は、「補強部を除く隔壁の平均厚さT」に対する、「補強セルの補強部の表面から、この補強セルを区画形成する隔壁の交差点を隔てて配置された他のセルの表面までの隔壁交差部分の交差距離L」の比の値(以下、「補強セルの交点比(L/T)」という)が、2.200であった。交点比の測定は、オプティカルマイクロスコープによって行った。
【0121】
一方、補強部が形成されていない流入セル及び流出セルは、「補強部を除く隔壁の平均厚さT」に対する、「補強部が形成されていないセルの表面から、このセルを区画形成する隔壁の交差点を隔てて配置された他のセルの表面までの隔壁交差部分の交差距離L」の比の値(以下、「非補強セルの交点比(L/T)」という)が、1.410であった。交点比(L/T)の測定は、図12を用いて説明した上述の測定方法に従って測定した。
【0122】
次に、それぞれのハニカムセグメントの成形体の端面(流入側及び流出側の端面)における複数のセル開口部の中の一部に、マスクを施した。このとき、マスクを施したセルとマスクを施さないセルとが交互に並ぶようにした。即ち、流出セルと流入セルとが、隔壁を隔てて交互に並ぶようにした。そして、マスクを施した側の端部を、目封止スラリーに浸漬して、マスクが施されていないセルの開口部に目封止スラリーを充填した。これにより、流入側端面における流出セルの開口部及び流出側端面における流入セルの開口部に目封止部が配設された目封止ハニカムセグメントの成形体を得た。
【0123】
次に、目封止ハニカムセグメントの成形体について、脱脂を行い、更に、1410〜1440℃で15時間加熱することにより焼成を行い、ハニカムセグメントを得た。
【0124】
得られた16個のハニカムセグメントを、セルの延びる方向に直交する断面において、4個×4個の並びになるようにして、接合材で接合し、乾燥させて接合体を得た。このとき、最外周を形成しない(中央部に位置する)4つのハニカムセグメントを補強セグメントとした。乾燥後の接合材の厚さは、1.0mmであった。
【0125】
接合材としては、アルミノシリケート無機繊維とSiC粒子との混合物を含有するスラリーを用いた。接合材としては、接合材全体に対して、水を30質量%、アルミノシリケート無機繊維を30質量%、SiC粒子を30質量%含有するものを用いた。なお、接合材に含有されるその他の成分は、有機バインダ、発泡樹脂、及び分散剤であった。
【0126】
得られた接合体の外周を研削し、セルの延びる方向に直交する断面の形状が円形の接合体とした。このとき、最外周を形成する12個のハニカムセグメントのみを研削した。
【0127】
次に、外周を研削した接合体に外周コート処理を行い、目封止ハニカム構造体とした(図1参照)。外周コート材としては無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、SiC粒子等の無機原料に、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤等の添加材を加えたものに水を加えて混練したものを用いた。
【0128】
得られたハニカム構造体の底面の直径は、143.8mmであった。
【0129】
得られた目封止ハニカム構造体について、以下に示す方法で、「中央部最大主応力(MPa)」、「圧力損失(kPa)」、及び「中央部端面クラックの有無」の測定を行った。測定結果を表1に示す。
【0130】
[中央部最大主応力(MPa)]
目封止ハニカム構造体の幾何学構造をCADモデルより構築し、アンシス・ジャパン社製の有限要素法解析ソフト(商品名:ANSYS Release 11.0)にて、モデル構築した構造体に発生する最大主応力を求める。その際、構造体の幾何学構造パラメータとしては、「隔壁の厚さ」、「セル密度」、「セルピッチ」、「底面の直径」、「セルの延びる方向における長さ」、「流入セル又は流出セルの交点比」、「目封じ長さ」、「外壁の厚さ」をそれぞれ与え、また有限要素法解析においては事前に測定されたハニカム構造体の「ヤング率」、「ポアソン比」、「熱膨張係数」を与えると同時に、事前に実施した煤の燃焼試験にて得られた目封じハニカム構造体内で発生する温度分布を適当に与えることで目的とする最大主応力を得ることができる。本実施例においては、目封止ハニカム構造体のセルの延びる方向に垂直な断面の中央部に存在するハニカムセグメントの最大主応力を求めた。表1においては、この中央部最大主応力を、「6g/LDTI再生時中央部最大応力(MPa)」と示す。
【0131】
また、「比較例1の中央部最大応力(MPa)に対する、実施例1〜3、8〜10及び比較例4、5の中央部最大応力(MPa)の比の値」、「比較例2の中央部最大応力(MPa)に対する、実施例4、及び6の中央部最大応力(MPa)の比の値」、及び「比較例3の中央部最大応力(MPa)に対する、実施例5、及び7の中央部最大応力(MPa)の比の値」を、最大応力の「ベース比」として示す。
【0132】
[圧力損失(kPa)]
特開2005−172652号公報に記載の「フィルタの圧力損失測定装置」を用いて、目封止ハニカム構造体の圧力損失を測定した。測定条件としては、流体の流量を10Nm/分とし、実験時の流体温度を25℃とした。
【0133】
また、「比較例1の圧力損失(kPa)に対する、実施例1〜3、8〜10及び比較例4、5の圧力損失(kPa)の比の値」、「比較例2の圧力損失(kPa)に対する、実施例4、及び6の圧力損失(kPa)の比の値」、及び「比較例3の圧力損失(kPa)に対する、実施例5、及び7の圧力損失(kPa)の比の値」を、圧力損失のベース比として示す。
【0134】
[中央部端面クラックの有無]
煤の燃焼試験後におけるハニカムセグメント接合体(目封止ハニカム構造体)のセルの延びる方向に垂直な断面の中央部に存在するハニカムセグメントの端面部のクラック発生を目視にて判断し、クラックが発生した場合を「有り」と評価し、クラックが発生していない場合を「無し」と評価した。煤の燃焼試験としては、以下の方法にて行うこととする。目封止ハニカム構造体をDPFとして用い、煤(スート)を堆積させて、再生(煤の燃焼)を行う。まず、得られた目封止ハニカム構造体の外周に、保持材としてセラミック製非熱膨張性マットを巻き、ステンレス鋼(SUS409)製のキャニング用缶体に押し込んで、キャニング構造体とする。その後、ディーゼル燃料(軽油)の燃焼により発生させた煤を含む燃焼ガスを、目封止ハニカム構造体の一方の端面より流入させ、他方の端面より流出させる。これにより、目封止ハニカム構造体内に、上記煤を、目封止ハニカム構造体の容積1リットル当り6g堆積させる。そして、一旦、室温(25℃)まで冷却した後、目封止ハニカム構造体の一方の端面より、680℃の燃焼ガスを流入させる。堆積させた煤が燃焼することにより、目封止ハニカム構造体の圧力損失が低下したときに、燃焼ガスの流量を減少させることによって、煤を急燃焼させる。
【0135】
【表1】

【0136】
(実施例2〜10、比較例1〜5)
ハニカムセグメントの隔壁厚さ、セルピッチ、補強セグメントの位置、及び補強セルの位置(補強部の有無)を表1に示すように変更し、且つ、補強セルの交点比(L/T)及び非補強セルの交点比(L/T)を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法で目封止ハニカム構造体を製造した。得られた目封止ハニカム構造体について、実施例1の場合と同様の評価を行った。結果を表1に示す。なお、実施例10においては、ハニカムセグメントの成形体の成形時には補強部を形成せずに、ハニカムセグメントの成形体を形成した後に、別途、補強部を形成するための補強材を用いて補強部を形成した。具体的には、まず、ハニカムセグメントの成形体の成形に用いたセラミック成形原料と同じ材料を用い、スラリー状で準備された補強材を調製した。なお、この補強材は、ハニカムセグメントの成形体に用いたセラミック成形原料よりも水分量が多くなるように調製した。次に、この補強材を容器に入れ、ハニカムセグメントを、その流出側端面より浸漬させて補強部を形成した。補強部の形状は、実施例1における補強部と同様の形状になるようにした。
【0137】
なお、実施例2、3、6、8、及び比較例4、5については、16個のハニカムセグメントの全てを補強セルとした。表1の「補強セグメントの位置」の欄において、「全て」と示す。また、実施例3、6、9、及び比較例4については、補強セグメントの補強セルを、断面の対角線上に存在する全ての流出セルとした。表1の「補強セルの位置」の欄において、「対角線」と示す。また、実施例8については、補強セグメントの補強セルを、対角線領域に存在する全ての流出セルとした。表1の「補強セルの位置」の欄において、「対角線領域全て(対角線+5セル)」と示す。比較例4については、補強セグメントの補強セルを、断面の対角線上に存在するセルから隔壁を隔てて連続して隣接する6個のセルからなる領域内の全ての流出セルとした。表1の「補強セルの位置」の欄において、「対角線+6セル」と示す。比較例5については、補強セグメントの補強セルを、全ての流出セルとした。表1の「補強セルの位置」の欄において、「全てのセル」と示す。
【0138】
(結果)
表1に示すように、実施例1〜10の目封止ハニカム構造体は、最大応力が小さく、耐久性に優れるものであった。また、比較例4及び5の目封止ハニカム構造体と比較して、圧力損失が抑制されたものであった。即ち、補強セルを過剰に多くしても、耐久性向上の効果が大幅に増大することはなく、逆に、比較例5の目封止ハニカム構造体のように圧力損失が大きく増大してしまうことが判明した。また、比較例1及び2の全く補強部を形成しない目封止ハニカム構造体と比較した場合には、実施例1〜10の目封止ハニカム構造体は、顕著に耐久性(最大応力)の向上が確認され、特に、比較例1で発生していた端面クラックは実施例1で確認されなかった。その反面、圧力損失については、大きな増加が見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の目封止ハニカム構造体は、ディーゼルエンジン等の内燃機関や各種の燃焼装置等から排出されるガスを浄化するためのフィルタとして好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0140】
1:隔壁、2:セル、2a:流入セル、2b:流出セル、2x:重心セル、3:外周壁、4:ハニカム構造体、5a:流入側目封止部、5b:流出側目封止部、6,6x:補強部、7:外周壁、8:ハニカムセグメント、8a:完全セグメント、8b:不完全セグメント、8x:補強セグメント、8y:非補強セグメント、11:流入側端面、12:流出側端面、21,21a:角部、22:補強セル、23:非補強セル、100,110:目封止ハニカム構造体、A,B,C,D:線(平行線)、E,F,G,H:交点、L:隔壁交差部分の交差距離、T:隔壁の平均厚さ、O:重心(ハニカム構造体の断面の重心)、P1,P2:対角線(対角線の延長線)、S:領域、U:交点部(ハニカムセグメントの断面における対角線の交点部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入側端面から流出側端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有する柱状のハニカムセグメントを、複数個有し、複数個の前記ハニカムセグメントの互いの側面同士が対向するように隣接して配置された状態で接合されたハニカム構造体と、
それぞれの前記ハニカムセグメントの前記流出側端面における所定のセルの開口部に配設されて、前記流入側端面が開口し且つ前記流出側端面が封止された流入セルを形成する流出側目封止部と、
それぞれの前記ハニカムセグメントの前記流入側端面における残余のセルの開口部に配設されて、前記流出側端面が開口し且つ前記流入側端面が封止された流出セルを形成する流入側目封止部と、を備え、
前記ハニカム構造体を構成する複数個の前記ハニカムセグメントが、前記ハニカムセグメントの前記セルの延びる方向に垂直な断面の形状が四角形の完全セグメントを有し、
少なくとも一の前記ハニカムセグメントが、前記ハニカムセグメントの前記四角形の断面における対角線上に存在する前記セル及び前記対角線上に存在する前記セルから前記隔壁を隔てて連続して隣接する5個の前記セルからなる領域内の前記流出セルのうち、少なくとも前記対角線の交点部に存在する前記流出セル又は前記交点部からの距離が最も短い位置に存在する前記流出セルの、前記セルの延びる方向に垂直な断面における前記隔壁が交差する少なくとも一の角部に、前記流出セルを補強する補強部が形成された補強セグメントであり、
前記ハニカム構造体の前記セルの延びる方向に垂直な断面において、前記ハニカム構造体の前記断面の重心を含む又は前記重心からの距離が最も短い位置に存在する前記ハニカムセグメントが、少なくとも前記補強セグメントである目封止ハニカム構造体。
【請求項2】
前記補強セグメントの前記補強部が形成された前記流出セルは、前記補強部が形成された補強角部と、前記補強部が形成されていない非補強角度部とを含むものである請求項1に記載の目封止ハニカム構造体。
【請求項3】
前記補強セグメントの前記補強部が形成された前記流出セルは、前記流出セルの全ての角部に前記補強部が形成されたものである請求項1に記載の目封止ハニカム構造体。
【請求項4】
前記補強セグメントは、前記ハニカムセグメントの前記四角形の断面における対角線上に存在する全ての前記流出セルに、前記補強部が形成されたものである請求項1〜3のいずれか一項に記載の目封止ハニカム構造体。
【請求項5】
前記補強セグメントは、前記ハニカムセグメントの前記四角形の断面における対角線上に存在する前記セル及び前記対角線上に存在する前記セルから前記隔壁を隔てて連続して隣接する5個の前記セルからなる領域内の全ての前記流出セルに、前記補強部が形成されたものである請求項1〜4のいずれか一項に記載の目封止ハニカム構造体。
【請求項6】
前記完全セグメントの全てが、少なくとも前記補強セグメントである請求項1〜5のいずれか一項に記載の目封止ハニカム構造体。
【請求項7】
前記ハニカムセグメントの全てが、前記補強セグメントである請求項6に記載の目封止ハニカム構造体。
【請求項8】
前記補強部を除く前記隔壁の平均厚さに対する、前記補強部が形成された前記流出セルの前記補強部の表面から、前記補強部が形成された前記流出セルを区画形成する前記隔壁の交差点を隔てて配置された他のセルの表面までの隔壁交差部分の交差距離の比の値が、1.5〜9.3である請求項1〜7のいずれか一項に記載の目封止ハニカム構造体。
【請求項9】
各前記補強部は、前記セルの延びる方向に垂直な断面における前記補強部が除かれた開口部分の面積の0.05〜20%に相当する範囲を占める大きさのものである請求項1〜8のいずれか一項に記載の目封止ハニカム構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−210614(P2012−210614A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78711(P2011−78711)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】