目止め用治具及び流体処理器の製造方法
【課題】目止め剤の使用量を抑えつつ、封止剤の使用量も抑えることができる目止め用治具を提供する。
【解決手段】本発明にかかる目止め用治具30は、流体処理器1の製造時に、流体処理器1の筒状部10に収容された中空糸膜束Aの開口端を目止め剤Eにより目止めする際に、筒状部10の端部に取り付けられる。目止め用治具30は、筒状に形成されており、筒状の外周壁40の内側には、軸方向の一の方向に向けて開口する溝41が外周壁40に沿って形成されている。目止め用治具30は、外筒部50と、内筒部51と、底部52と、嵌合部53を有している。外筒部50の端部は、内筒部51の端部よりも突出しており、溝41は、外筒部50と内筒部51との間に形成されている。
【解決手段】本発明にかかる目止め用治具30は、流体処理器1の製造時に、流体処理器1の筒状部10に収容された中空糸膜束Aの開口端を目止め剤Eにより目止めする際に、筒状部10の端部に取り付けられる。目止め用治具30は、筒状に形成されており、筒状の外周壁40の内側には、軸方向の一の方向に向けて開口する溝41が外周壁40に沿って形成されている。目止め用治具30は、外筒部50と、内筒部51と、底部52と、嵌合部53を有している。外筒部50の端部は、内筒部51の端部よりも突出しており、溝41は、外筒部50と内筒部51との間に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体処理器の製造時に、流体処理器の筒状部に収容された中空糸膜束の両端を目止め剤で目止めする際に、前記筒状部の端部に取り付けられる目止め用治具と、当該目止め用治具を用いた流体処理器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、中空糸膜を用いた流体処理器は、水処理やガス分離等の産業分野、血液処理などの医療分野などの多岐にわたって使用されており、特に浄水器、人工腎臓、人工肺等としてその需要が極めて増大している。
【0003】
一般に上記流体処理器の製造では、流体処理器の筒状部の内部に中空糸膜束を装填した後、筒状部と中空糸膜束の両端部とを固定しつつ筒状部の両端部を封止剤により封止し、さらに硬化後の封止部を切断して中空糸膜束の開口部を形成するポッティング工程が行われる。具体的には、数千〜数万本の中空糸膜束が筒状部に挿入された状態で、その筒状部の両端部にポリウレタンやエポキシ等の熱硬化性樹脂の封止剤(ポッティング剤)が注入され、それが、中空糸膜間、及び筒状部と中空糸膜束との間で硬化し、筒状部の両端が封止される。封止後、中空糸膜束の両端部が封止剤の位置で切断されて中空糸膜束の開口端が形成される。その後は、流体の出入口となるヘッダーキャップが筒状部の開口部に取り付けられる。
【0004】
上記ポッティング工程は、一般的に遠心成型法が用いられている。遠心成型法では、中空糸膜束が装填された筒状部の両端部が一時的にエンドキャップ等で閉鎖され、当該筒状部が水平にセットされた後、当該筒状部を鉛直中心軸周りに回転させつつ、筒状部の内部に封止剤が注入される(例えば、特許文献1、2)。遠心力によって封止剤が筒状部の両端部に移動しそこで硬化される。しかしながら、このようなポッティング工程では、封止剤の一部が中空糸膜の開口端からその内部に進入することがある。この封止剤の進入距離が長くなると、例えばその後硬化した封止剤の位置で中空糸膜を切断しても、中空糸膜の開口端ができず、中空糸膜内に流体が適切に流れなくなることがある。
【0005】
そこで、遠心法によるポッティング工程時の中空糸膜内への封止剤の進入を防ぐ方法として、ポッティング工程を行う前に、中空糸膜の両端部にある開口端を予め塞ぐ(目止めする)方法が提案されている。例えば封止剤の注入を2回に分けて、1回目の注入と硬化で目止めを行う方法がある(特許文献3参照)。
【0006】
上述の目止めを行う際には、例えば上記ポッティング工程と同様に筒状部の両端部を既存のエンドキャップ等で閉鎖して、その筒状部内に熱硬化性樹脂の封止剤を注入し、遠心力等によりその封止剤を中空糸膜の端部に移動させて行うことが考えられる。しかし、この場合、元々エンドキャップと中空糸膜の開口端との間には距離があり、その間の空間の容積は比較的大きいため、遠心成型により封止剤がエンドキャップ側から順に溜まっていき、それが中空糸膜の開口端に達するまでに、多量の封止剤が必要になる。この封止剤の大部分は、後工程の切断により破棄されるために無駄になる。特に直径の大きな流体処理器や、直径が小さくても大量生産を行う血液透析器用の流体処理器では、封止剤の使用量が無視できず、生産コストの増大を招く恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−279374号公報
【特許文献2】特許第271987号公報
【特許文献3】特公昭56−3772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、例えば図14に示すように目止めを行う際に、流体処理器100の筒状部101の端部101aにリング状の目止め用冶具102を接続し、当該目止め用治具102の内側に目止め剤Eを充填し硬化して、中空糸膜束Aの開口端を目止めすることが考えられる。この場合、中空糸膜束Aの開口端の周辺にのみ目止め剤Eが供給されるので、目止め剤Eの使用量を低減できる。そして、この場合のポッティング工程は、目止めの後に、目止め剤Eよりも内側の筒状部101内に封止剤を供給し、遠心力等により当該封止剤を筒状部101の端部側に移動させて行われる。
【0009】
しかしながら、この場合、例えば図15に示すように目止め剤Eが硬化する際に、熱収縮により目止め剤Eが内側に収縮する。このため、目止め用治具102の内周面と目止め剤Eとの間に隙間ができることが考えられる。目止め用治具102と目止め剤Eとの間に隙間ができると、ポッティング工程時にその隙間から封止剤が外側に漏れることが考えられる。この場合、封止剤の一部が無駄になり、封止剤の使用量が多くなる。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、目止め剤の使用量を抑えつつ、封止剤の使用量も抑えることができる目止め用治具、及び当該目止め用治具を用いた流体処理器の製造方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定構造の目止め用冶具を用いると、目止め剤が硬化して収縮しても封止剤の漏れ出しが全く起こらないことを見出し、本発明に至った。
すなわち、
本発明は、流体処理器の製造時に、流体処理器の筒状部に収容された中空糸膜束の開口端を目止め剤により目止めする際に、前記筒状部の端部に取り付けられる目止め用治具であって、筒状に形成され、筒状の外周壁の内側には、軸方向の一の方向に向けて開口する溝が前記外周壁に沿って形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、目止め時に目止め剤が溝内に入るので、当該目止め剤が内側に熱収縮しても、溝内の目止め剤が収縮方向にある溝の壁面に密着して、目止め剤と目止め用治具との間の気密性が確保される。このため、ポッティング工程時に封止剤が目止め剤と目止め用治具との隙間を通って外側に漏れることが防止される。この結果、目止め用治具を用いて目止め剤の使用量を低減しつつ、封止剤の使用量も低減できる。
【0013】
また、本発明にかかる目止め用治具は、前記外周壁を形成する筒状の外筒部と、前記外筒部の内側に配置された筒状の内筒部と、前記外筒部と前記内筒部を径方向に接続する底部と、前記底部の前記の一方向の反対側に接続され、前記流体処理器の筒状部の端部に嵌め合わせ可能な嵌合部と、を有し、前記外筒部の前記一の方向側の端部は、前記内筒部の一の方向側の端部よりも突出しており、前記溝は、前記外筒部と前記内筒部との間に形成されていてもよい。
【0014】
前記内筒部は、前記底部側の溝の幅が狭くなるような段部を有していてもよい。当該段部の内角部は、湾曲していてもよい。
【0015】
また、前記外筒部と前記内筒部の前記一の方向側の端面のずれが、2.0mm以上15.0mm以下であってもよい。
【0016】
前記溝の最も幅のある部分が、2.0mm以上6.0mm以下であってもよい。
【0017】
前記流体処理器は、血液処理器であってもよい。
【0018】
別の観点による本発明は、上記目止め用治具を用いた流体処理器の製造方法であって、 目止め用治具を、流体処理器の筒状部の端部に装着する工程と、前記筒状部に中空糸膜束が収容された状態で、前記目止め用治具内の溝を含む内側に目止め剤を供給し、前記目止め剤を固化して、前記中空糸膜束の開口端を目止めする工程と、前記目止め剤より中央側の前記筒状部内に封止剤を供給し、当該封止剤を前記筒状部の端部に移動させ、当該封止剤を固化して、前記筒状部の端部を封止する工程と、固化された前記封止剤を切断することにより中空糸膜の端部に開口端を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
上記流体処理器の製造方法において、前記中空糸膜束の開口端が目止めされる際、前記中空糸膜束の開口端は、前記目止め用治具の内筒部の端面と外筒部の端面の間に位置していてもよい。
【0020】
前記中空糸膜束の端が前記内筒部の端面から0.1mm以上13.0mm以下の範囲で突出するようにしてもよい。
【0021】
前記目止め剤は、熱可塑性の樹脂であってもよい。
【0022】
前記目止め剤の樹脂粘度が100mPa・s以上100000mPa・s以下であってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、目止め剤と封止剤の両方の使用量を抑えることができるので、流体処理器の生産コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】流体処理器の構図の概略を示す説明図である。
【図2】目止め用治具の構成の概略を示す縦断面の説明図である。
【図3】目止め用治具の平面図である。
【図4】流体処理器の筒状部の両端に目止め用治具を取り付けた状態を示す説明図である。
【図5】目止め用治具に目止め剤が供給された状態を示す縦断面の説明図である。
【図6】目止め剤が収縮した状態を示す説明図である。
【図7】筒状部に封止剤が供給された状態を示す説明図である。
【図8】溝に段部がある目止め用治具の構成の概略を示す縦断面の説明図である。
【図9】図9(A)〜(F)は、目止め用治具の外筒部の構造のバリエーションを示す模式図である。
【図10】図10(A)〜(F)は、目止め用治具の内筒部の構造のバリエーションを示す模式図である。
【図11】図11(A)〜(F)は、目止め用治具の溝部の構造のバリエーションを示す模式図である。
【図12】図12(A)〜(F)は、目止め用治具の嵌合部の構造のバリエーションを示す模式図である。
【図13】溝のない目止め用治具の説明図である。
【図14】溝のない筒状の目止め用治具に目止め剤が供給された状態を示す縦断面の説明図である。
【図15】図14の目止め用治具において目止め剤が収縮した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、製造の際に本実施の形態にかかる目止め用治具が用いられる流体処理器1の構成の概略を示す模式図である。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0026】
流体処理器1は、例えば図1に示すように中空糸膜束Aが長手方向(軸方向)に収容される筒状部10と、筒状部10の両端を閉鎖するヘッダーキャップ11を有している。
【0027】
中空糸膜束Aは、5000本〜16000本程度の中空糸膜により形成されている。中空糸膜は、多孔質で管状に形成されている。
【0028】
筒状部10の両端部は、封止剤Bにより封止されている。封止剤Bは、円盤状に硬化しており、中空糸膜同士の間と、中空糸膜束Aと筒状部10の内壁と間に充填され、中空糸膜束Aと筒状部10を固定している。なお、中空糸膜束Aの各中空糸膜の両端は、封止剤Bの外側に開口している。
【0029】
筒状部10の両端部付近の外周面には、流体処理器1の外部から筒状部10内部に連通する流体通過部20が形成されている。流体通過部20は、封止剤Bの位置よりも中央側に形成され、筒状部10の内部の中空糸膜束Aの外周空間Cに連通している。また、各ヘッダーキャップ11の中央には、流体処理器1の外部に連通する流体通過部21が形成されており、流体処理器1の外部とヘッダーキャップ11内の端部空間Dが連通している。中空糸膜束Aの開口端は、この端部空間Dに開口している。したがって、例えばヘッダーキャップ11の一方の流体通過部21から流入した流体は、端部空間Dを通過して中空糸膜束A内に流入し、中空糸膜束Aを通って反対の端部空間Dに流出し、他方の流体通過部21から外部に流出される。そして、中空糸膜束Aを通過する際に、各中空糸膜の側壁の微細な孔を通過した特定成分が外周空間Cに流出し、流体通過部20から外部に流出される。
【0030】
次に、流体処理器1の製造時に用いられる目止め用治具30の構成について説明する。
【0031】
目止め用治具30は、例えば図2及び図3に示すように円筒状に形成され、筒状の外周壁40の内側に、軸方向Xの一の方向X1に向けて開口する溝41が形成されている。溝41は、外周壁40に沿って環状に形成されている。
【0032】
目止め用治具30は、図2に示すように例えば外周壁40を形成する筒状の外筒部50と、外筒部50の内側に配置された筒状の内筒部51と、外筒部50と内筒部51を径方向に接続する底部52と、底部52の一の方向X1の反対側に形成され、流体処理器1の筒状部10の端部10aに嵌め合わせ可能な嵌合部53を有している。
【0033】
外筒部50の一の方向X1側の端部は、内筒部51の一の方向X1側の端部よりも突出している。例えば外筒部50と内筒部51の一の方向X1側の端面のずれH1は、2.0mm以上15.0mm以下に設定されている。なお、中空糸膜束Aの端が内筒部51の端面から0.10mm以上13.0mm以下、より好ましくは1.0mm以上5.0mm以下の範囲で突出するように、目止め用治具30が構成されている。
【0034】
溝41は、外筒部50と内筒部51との間に形成されている。溝41の最も幅のある部分T1は、2.0mm以上6.0mm以下、好ましくは2.5mm以上5.0mm以下に設定されている。
【0035】
嵌合部53は、筒状部10の端部10aより僅かに径が大きい円筒状に形成され、筒状部10の端部10aの外側に気密に嵌め込むことができる。
【0036】
次に、以上のように構成された目止め用治具30を用いた流体処理器1の製造方法について説明する。
【0037】
先ず、ヘッダーキャップ11が未だ取り付けられていない筒状部10内に中空糸膜束Aが装填され、その状態で、図4に示すように目止め用治具30が、筒状部10の両端部に装着される。予め、目止め用冶具30が筒状部10の両端側に装着された状態で、筒状部10内に中空糸膜束Aが装填されてもよい。このとき、中空糸膜束Aの両端は、図2に示すように目止め用治具30の外筒部50の端面と内筒部51の端面の間に位置する。
【0038】
次に、例えば図5に示すように筒状部10が鉛直方向に立てられた状態で、目止め用治具30の上方から例えば溶融された熱硬化性樹脂の目止め剤Eが目止め用治具30内に流し込まれる。これにより、溝41と、内筒部51の内側を含む目止め用治具41の内側に目止め剤Eが満たされる。目止め剤Eの樹脂粘度は、例えば100mPa・s以上100000mPa・s以下、より好ましくは1000mP・s以上10000mP・s以下に設定されている。
【0039】
目止め剤Eは、目止め用治具30内に流し込まれた後冷却され、硬化する。これにより、中空糸膜束Aの開口端が塞がれて目止めされる。このとき、図6に示すように目止め剤Eは、全体が中心軸P側に熱収縮するが、少なくとも溝41内の目止め剤Eが内筒部51に密着するので、目止め剤Eを挟んで筒状部10の中央側と外側が連通することが防止される。この目止めは、中空糸膜束Aの両側で行われる。
【0040】
次に、中心軸が水平になるように筒状部10が遠心成型機内に配置され、その状態で筒状部10の中央を通る鉛直軸周りに筒状部10が回転される。そして、筒状部10が回転された状態で、例えば流体通過部20から筒状部10の内部に、例えば熱硬化性樹脂の封止剤Bが流入される。筒状部10内に流入された封止剤Bは、図7に示すように遠心力により外側に流され、目止め剤Eの中央側に溜められる。この状態で、封止剤Bが硬化され、中空糸膜束Aの両端部において、中空糸膜同士の間と、中空糸膜束Aと筒状部10の内壁の間で封止剤Bが固化し、中空糸膜束Aと筒状部10が固定されて、筒状部10の両端部が封止される(ポッティング)。
【0041】
その後、例えば目止め用治具30が取り外され、あるいは取り付けたまま、中空糸膜束Aの両端部が封止剤Bのある部分(図7の切断線Q)で軸方向Xの垂直方向に切断される。これにより、中空糸膜束Aの開口端が形成されている。その後、筒状部10の両端部にヘッダーキャップ11が取り付けられ、流体処理器1が完成する。
【0042】
以上の実施の形態によれば、目止め用治具30の外周壁40の内側に、一の方向X1に向けて開口する溝41が外周壁40に沿って形成されている。このため、目止め剤Eが硬化し熱収縮する際に、溝41内の目止め剤Eが溝41の内側の壁面に密着して、目止め剤Eと目止め用治具30との間に隙間ができることを防止できる。これにより、後工程で、筒状部10内に供給される封止剤Bが、目止め用治具30と目止め剤Eとの隙間を通って漏れることを防止できる。これにより、封止剤Bの使用量を低減できる。
【0043】
また、目止め用治具30に溝41を形成した場合、溝を形成しない場合に比べて中空糸膜束Aと目止め用治具30の外周壁40との距離が離れる。このため、中空糸膜束Aの外周側周辺に供給される目止め剤Eが低温の外壁面40により冷やされて早い段階で硬化することを抑制できる。これにより、中空糸膜束Aの外周側にも、溶融した目止め剤Eが十分に供給され、中空糸膜束Aの外周側の目止めを十分に行うことができる。
【0044】
また、目止め用治具30は、外筒部50と、内筒部51と、底部52と、嵌合部53を有し、外筒部50の一の方向X1側の端部は、内筒部51の一の方向X1側の端部よりも突出しており、溝41は、外筒部50と内筒部51との間に形成されている。これにより、簡単な構成の目止め用治具30を実現できる。
【0045】
外筒部50と内筒部51の一の方向X1側の端面のずれH1が、2.0mm以上15.0mm以下に設定されている。ずれH1を2.0mm以上にすることにより、目止め剤Eを供給する際に、目止め剤Eが外筒部50の外側に漏れることを防止できる。また、ずれH1を15.0mm以下にすることにより、例えば目止め剤Eの目止め用治具30内の落下等による衝撃により目止め剤Eに気泡が混入することを防止できる。また、中空糸膜束Aの開口端に到達するまでに目止め剤Eが冷えて硬化し十分に中空糸膜束Aの目止めが十分に行われないことを防止できる。
【0046】
上記実施の形態では、中空糸膜束Aの開口端が目止めされる際に、中空糸膜束Aの開口端が目止め用治具30の内筒部51の端面と外筒部50の端面の間に位置し、内筒部51の端面から0.10mm以上13.0mm以下の範囲で突出するようにしている。このため、目止め剤Eが中空糸膜束Aの開口端に効率的に供給され、目止めが最小限の目止め剤Eの量で効果的に行われる。
【0047】
溝41の最も幅のある部分T1が、2.0mm以上6.0mm以下であるので、目止め剤Eが溝41内に適正に進入する。
【0048】
上記実施の形態では、目止め剤Eの樹脂粘度が100mPa・s以上100000mPa・s以下に設定されている。目止め剤Eの塗布或いは浸漬時の粘度は、高粘度過ぎると目止め剤Eが中空糸膜の開口端面に到達しても中空糸膜内に進入しなくなる恐れがあるが、本実施の形態で、適正の粘度の目止め剤Eが使用されるので、目止め剤Eの中空糸膜内への進入が適正に行われる。
【0049】
また、上記実施の形態の流体処理器1の製造方法は、目止め用治具30を、流体処理器1の筒状部10の端部10aに装着する工程と、筒状部10に中空糸膜束Aが収容された状態で、目止め用治具30内の溝41を含む内部に目止め剤Eを供給し、さらに目止め剤Eを固化して中空糸膜束Aの開口端を目止めする工程と、目止め剤Eより中央側の筒状部10内に封止剤Bを供給し、当該封止剤Bを筒状部10の端部に移動させ、当該封止剤Bを固化して、筒状部10の端部を封止する工程と、を有している。この製造方法により、流体処理器1の製造コストを低減できる。
【0050】
図8に示すように上記実施の形態における溝41の内筒部51の外筒部50側の面には、底部52側の溝41の幅が狭くなるような段部60が形成されていてもよい。例えばこの段部60の内角部60aは、滑らかに湾曲している。また、溝41の底面、つまり底部52の内面は、凹状に湾曲していてもよい。この場合、溝41の最も幅のある部分T1は、筒部51の上端部となる。
【0051】
かかる場合、内筒部51が段部60を有しているので、例えば目止め剤Eが溝41の底まで到達することを抑制できる。これにより、目止め剤Eの消費量を低減できる。また、段部60の内角部60aが湾曲しているので、当該段部60の内角部60aにも目止め剤Eが隙間なく供給される。これにより、目止め剤Eと内筒部51の密着性が向上し、 封止剤Bの漏れがより確実に防止される。
【0052】
なお、中空糸膜束Aは、中空糸膜が変形したり、ばらついたりしない様にフィルムで包装されているものであってもよい。中空糸膜の素材としては、例えばポリスルホン系ポリマー、再生セルロース、セルロースアセテート、ポリアミド系ポリマー、ポリアクリロニトリル系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー、ポリメチルメタクリレート系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー、ポリ弗化ビニリデン系ポリマー等が用いられる。
【0053】
また、流体処理器1は、水処理器やガス分離器あるいは血液処理器等の何れかであってもよい。上記方法で製造された流体処理器1は、中空糸膜の封止性にも優れているため、流体処理器1が血液処理器の場合にはより好ましい。つまり、流体処理器の中空糸膜に封止剤の侵入による目詰まりが発生すると、血液もしくは血液成分が流体処理器内に残留(残血)し、被対象者(患者)への心理的かつ肉体的負担を生じる恐れがあるが、本発明によればそのような恐れがないからである。血液処理器としては、人工腎臓、人工肝臓、人工肺、血漿分離器、血液成分分離器等を例示できる。
【0054】
ポッティング工程で使用される封止剤Bは、溶融状態で注入した後に硬化する樹脂が好ましく、例えば、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂等が使用される。
【0055】
中空糸膜の開口端の目止めに使用される目止め剤Eの樹脂は、容易に粘度を変更可能な樹脂が好ましく、熱可塑性樹脂が含まれることが最適である。熱可塑性樹脂として好ましくは、オレフィン系樹脂である。熱可塑性樹脂が含まれることにより、目止め剤の供給後の目止め剤を固化する過程が容易となる。
【0056】
以上の実施の形態において、目止め用治具30と流体処理器1の筒状部10との装着は、嵌合により行っていたが、接着剤や超音波による他の接着方法を使用してもよい。
【0057】
図9(A)〜(F)は、本発明にかかる目止め用治具30の外筒部50の構造のバリエーションを示す模式図である。図10(A)〜(F)は、本発明にかかる目止め用治具30の内筒部51の構造のバリエーションを示す模式図である。図11(A)〜(F)は、本発明にかかる目止め用治具30の溝41の構造のバリエーションを示す模式図である。図12(A)〜(F)は、本発明にかかる目止め用治具30の嵌合部53の構造のバリエーションを示す模式図である。いずれの組み合わせで使用しても構わない。
【実施例】
【0058】
次に、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。まず初めに、実施例で用いた測定方法について説明する。
【0059】
(中空糸膜の開口率)
最終的な中空糸膜束の端部面の開口率を求めることにより、中空糸膜内部への封止剤の侵入による目詰まりの程度を定量的に評価した。先ず、所定の各製造方法で製造された流体処理器を準備し、中空糸膜束の開口端の全面を濃色の油性ペンで着色した。こうすることにより、目詰まりしている中空糸膜の開口端内に侵入している封止剤が着色され、正常に開口している中空糸膜との区別が明確になるため、精度の高い観察が可能となる。次に、中空糸膜束の開口端をルーペか顕微鏡で観察しながら、中空糸膜の開口数と未開口数をカウントし、中空糸膜束の開口率を式(2)により算出した。
中空糸膜束の開口率(%)=(中空糸膜の開口数/中空糸膜の本数)×100 (2)
【0060】
(樹脂層部の最小厚み)
それぞれ同一サイズの容器を用い、同一量の封止剤を注入して樹脂層部を形成した後、同一位置で樹脂層部を切断したサンプルを作成し、封止剤により形成された樹脂層部の厚みを比較することで封止剤の使用量の多少(ロスの多少)を評価した。樹脂層部の厚みはノギスにて数点測定し、最小厚みを記録した。この場合、最小厚みが小さいほど、注入した封止剤が目止め剤の蓋から漏れ出たことを意味する。
なお、本実施例では、図8に示したような溝41に段部60ある目止め用治具30を用いた。
【0061】
<実施例1>
外径255μmのポリスルホン中空糸膜を10000本(±500本)製束し、直径45mm、長さ305mmの中空糸膜束を用意した。筒状部としては、両端部付近に流体の流入/流出用の2本のノズル(流体通過部)が設けられ、全長286mmのポリスチレン系樹脂からなる容器を用意した。ポリプロピレン製で、内筒部と外筒部の端面のずれH1が8.0mm(溝の底面から外筒部の端面までの高さが11.0mm、内筒部の端面までの高さが3.0mm)、溝の幅の最大値T1が3.0mmの目止め用治具を、図1に示すように、筒状部の両端に装着した後、中空糸膜束を目止め用治具が取り付けられた筒状部内に装填した。その際、中空糸膜束の両端部が、内筒部の端面から2.0mmはみ出るように調整した。次に、ポリプロピレン系ポリマーを主成分とする粘度2000mmPa・sの溶融樹脂10gを、目止め剤として目止め用治具内に注入した。この時、目止め剤が中空糸膜束の端面全体を被覆し、さらに目止め用冶具の溝にまで行き渡るように被覆した後、室温で静置して固化させることより目止めを行った。同様に反対側の端面も目止めを行った。次に、筒状部に設けられた2本のノズル(流体通過部)から、封止剤としてポリウレタン樹脂を50(g/本)注入しながら遠心成型を行って樹脂層部を形成した。硬化後の樹脂層部をキャップが取り付け可能となる位置まで切断した。
切断後の中空糸膜両端面をルーペにより目視観察し、中空糸膜束の開口率を求めるとともに、樹脂層部の最小厚みをノギスにて測定した。
【0062】
<実施例2>
中空糸膜束の両端部の内筒部の端面からのはみ出し距離を1.0mm以上とし、目止め剤の粘度を8000mmPa・sとした以外は、実施例1と同じ条件でサンプルを作成した。
【0063】
<実施例3>
中空糸膜束の両端部の内筒部の端面からのはみ出し距離を1.0mm以上とし、目止め剤の粘度を3000mmPa・sとし、さらに溝の幅の最大値T1を4.0mmとした以外は、実施例1と同じ条件でサンプルを作成した。
【0064】
<実施例4>
中空糸膜束の両端部の内筒部の端面からのはみ出し距離を1.0mm以上とし、目止め剤の粘度を3000mmPa・sとし、さらに溝の幅の最大値T1を6.0mmとした以外は、実施例1と同じ条件でサンプルを作成した。
【0065】
<実施例5>
中空糸膜束の両端部の内筒部の端面からのはみ出し距離を1.0mm以上とし、目止め剤の粘度を8000mmPa・sとし、溝の幅の最大値T1を3.0mmとし、内筒部と外筒部の端面のズレH1を14.0mmとし、さらに溝の底面から外筒部の端面までの高さを17.0mmとした以外は、実施例1と同じ条件でサンプルを作成した。
【0066】
<実施例6>
中空糸膜束の両端部の内筒部の端面からのはみ出し距離を1.0mm以上とし、目止め剤の粘度を8000mmPa・sとし、溝の幅の最大値T1を3.0mmとし、内筒部と外筒部の端面のズレH1を4.0mmとし、さらに溝の底面から外筒部の端面までの高さを7.0mmとした以外は、実施例1と同じ条件でサンプルを作成した。
【0067】
<比較例1>
外径255μmのポリスルホン中空糸膜を10000本(±500本)製束し、直径45mm、長さ305mmの中空糸膜束を用意した。筒状部としては、両端部付近に流体の流入/流出用の2本のノズル(流体通過部)が設けられ、全長286mmのポリスチレン系樹脂からなる容器を用意した。ポリプロピレン製で、内筒部と外筒部の端面のずれH1が8.0mm(溝の底面から外筒部の端面までの高さが11.0mm、内筒部の端面までの高さが3.0mm)、溝の幅の最大値T1が3.0mmの目止め用治具を、図1に示すように、筒状部の両端に装着した後、中空糸膜束を目止め用治具が取り付けられた筒状部内に装填した。その際、中空糸膜束の両端部が、内筒部の端面から−1.0mmはみ出るように(1.0mm引っ込むように)調整した。次に、ポリプロピレン系ポリマーを主成分とする粘度3000mmPa・sの溶融樹脂10gを、目止め剤として目止め用治具内に注入した。この時、目止め剤が中空糸膜束の端面全体を被覆し、さらに目止め用冶具の溝にまで行き渡るように被覆した後、室温で静置して固化させることより目止めを行った。同様に反対側の端面も目止めを行った。次に、筒状部に設けられた2本のノズル(流体通過部)から、封止剤としてポリウレタン樹脂を50(g/本)注入しながら遠心成型を行って樹脂層部を形成した。硬化後の樹脂層部をキャップが取り付け可能となる位置まで切断した。
切断後の中空糸膜両端面をルーペにより目視観察し、中空糸膜束の開口率を求めるとともに、樹脂層部の最小厚みをノギスにて測定した。
【0068】
<比較例2>
中空糸膜束の長さを305mmとし、中空糸膜束の両端部の内筒部の端面からのはみ出し距離を1.0mm以上とし、さらに溝の幅の最大値T1を1.0mmとした以外は、比較例1と同じ条件でサンプルを作成した。
【0069】
<比較例3>
中空糸膜束の長さを305mmとし、中空糸膜束の両端部の内筒部の端面からのはみ出し距離を1.0mm以上とし、目止め剤の粘度を1000000mmPa・sとした以外は、比較例1と同じ条件でサンプルを作成した。
【0070】
<比較例4>
中空糸膜束の長さを305mmとし、中空糸膜束の両端部の内筒部の端面からのはみ出し距離を1.0mm以上とし、目止め剤の粘度を3000mmPa・sとし、内筒部と外筒部の端面のズレH1を17.0mmとし、さらに溝の底面から外筒部の端面までの高さを20.0mmとした以外は、比較例1と同じ条件でサンプルを作成した。
【0071】
<比較例5>
中空糸膜束の長さを305mmとし、中空糸膜束の両端部の内筒部の端面からのはみ出し距離を1.0mm以上とし、目止め剤の粘度を3000mmPa・sとし、内筒部と外筒部の端面のズレH1を1.0mmとし、さらに溝の底面から外筒部の端面までの高さを4.0mmとした以外は、比較例1と同じ条件でサンプルを作成した。
【0072】
<比較例6>
目止め冶具として、外筒部の端面と内筒部の端面までの高さの差(この図では、正確には、外筒部の端面と内壁部の段差までの高さの差となる)が8.0mmのポリプロピレン性の図13で示されているような溝が形成されていない形状のものを用いた。
中空糸膜束の長さを305mmとし、内筒部(内壁部の段差)と外筒部の端面のズレH1を8.0mmとした以外は、比較例1と同じ条件でサンプルを作成した。
【0073】
表1に実施例で用いた目止め用治具の仕様と目止め剤(目止め樹脂)の塗布条件を、表2に比較例で用いた目止め用治具の仕様と目止め剤(目止め樹脂)の塗布条件を示す。表3に実施例の中空糸膜束の開口率(%)、樹脂層部の最小厚み(mm)測定結果を、表4に比較例の中空糸膜束の開口率(%)、樹脂層部の最小厚み測定結果を示す
【0074】
実施例1〜6と比較例1、3、4との対比から明らかな通り、目止め用治具の各部形状のパラメーターや目止め剤の粘度、中空糸膜束の内筒部の端面からのはみ出し距離が中空糸膜束の開口率に影響していることが分かった。比較例1は中空糸膜端部の外周部が内筒部の頂部付近と接触しており、目止め樹脂塗布時に内筒部の頂部に先に目止め剤が接触し、熱が奪われ、固化することにより中空糸膜端部の外周部に目止め剤が到達せずに固まってしまったことを意味していると考えられる。比較例3は目止め樹脂の粘度が高すぎるために中空糸膜の開口端に目止め樹脂が到達しても中空糸膜内部に樹脂が浸透しなかったことを意味していると考えられる。比較例4は外筒部の高さが高いため、目止め剤の中空糸膜束端面までの空走距離が高くなり、塗布時に目止め樹脂が気泡を巻き込んだことによる目止め不良を意味していると考えられる。
【0075】
実施例1〜6と比較例2、3、6との対比から明らかな通り、目止め用治具の各部形状のパラメーターや目止め樹脂の粘度が樹脂層部の最小厚み、つまり封止剤の漏れに影響していることが分かった。比較例2、3、6は溝の最大幅が狭すぎる(溝がない)及び目止め剤の粘度が高すぎるため、目止め剤が溝に浸漬せず、固化収縮による内筒部の頂部付近の物理的な接触が得られないことにより、封止剤の漏れが発生し、樹脂層部の最小厚みが実施例と比較して薄くなったと考えられる。実際にポッティング後のワークを確認した所、比較例2、3、6のワークでは封止剤の漏れが確認された。
比較例5では目止め剤を塗布した際に目止め剤の盛り上がり及び、外筒部の端面からの目止め剤のはみ出しが確認された。外筒部の端面と内筒部の端面の高さの差が短いことが原因と考えられる。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
なお、封止剤の漏れの低減に関しては、図2に示したような段部60のない溝41の目止め用治具を用いた場合も同様の効果が得られている。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、目止め用治具を用いて流体処理器の製造するときに、目止め剤の使用量と封止剤の使用量を抑える際に有用である。
【符号の説明】
【0082】
1 流体処理器
10 筒状部
11 ヘッダーキャップ
30 目止め用治具
40 外周壁
41 溝
50 内筒部
51 外筒部
A 中空糸膜束
B 封止剤
E 目止め剤
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体処理器の製造時に、流体処理器の筒状部に収容された中空糸膜束の両端を目止め剤で目止めする際に、前記筒状部の端部に取り付けられる目止め用治具と、当該目止め用治具を用いた流体処理器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、中空糸膜を用いた流体処理器は、水処理やガス分離等の産業分野、血液処理などの医療分野などの多岐にわたって使用されており、特に浄水器、人工腎臓、人工肺等としてその需要が極めて増大している。
【0003】
一般に上記流体処理器の製造では、流体処理器の筒状部の内部に中空糸膜束を装填した後、筒状部と中空糸膜束の両端部とを固定しつつ筒状部の両端部を封止剤により封止し、さらに硬化後の封止部を切断して中空糸膜束の開口部を形成するポッティング工程が行われる。具体的には、数千〜数万本の中空糸膜束が筒状部に挿入された状態で、その筒状部の両端部にポリウレタンやエポキシ等の熱硬化性樹脂の封止剤(ポッティング剤)が注入され、それが、中空糸膜間、及び筒状部と中空糸膜束との間で硬化し、筒状部の両端が封止される。封止後、中空糸膜束の両端部が封止剤の位置で切断されて中空糸膜束の開口端が形成される。その後は、流体の出入口となるヘッダーキャップが筒状部の開口部に取り付けられる。
【0004】
上記ポッティング工程は、一般的に遠心成型法が用いられている。遠心成型法では、中空糸膜束が装填された筒状部の両端部が一時的にエンドキャップ等で閉鎖され、当該筒状部が水平にセットされた後、当該筒状部を鉛直中心軸周りに回転させつつ、筒状部の内部に封止剤が注入される(例えば、特許文献1、2)。遠心力によって封止剤が筒状部の両端部に移動しそこで硬化される。しかしながら、このようなポッティング工程では、封止剤の一部が中空糸膜の開口端からその内部に進入することがある。この封止剤の進入距離が長くなると、例えばその後硬化した封止剤の位置で中空糸膜を切断しても、中空糸膜の開口端ができず、中空糸膜内に流体が適切に流れなくなることがある。
【0005】
そこで、遠心法によるポッティング工程時の中空糸膜内への封止剤の進入を防ぐ方法として、ポッティング工程を行う前に、中空糸膜の両端部にある開口端を予め塞ぐ(目止めする)方法が提案されている。例えば封止剤の注入を2回に分けて、1回目の注入と硬化で目止めを行う方法がある(特許文献3参照)。
【0006】
上述の目止めを行う際には、例えば上記ポッティング工程と同様に筒状部の両端部を既存のエンドキャップ等で閉鎖して、その筒状部内に熱硬化性樹脂の封止剤を注入し、遠心力等によりその封止剤を中空糸膜の端部に移動させて行うことが考えられる。しかし、この場合、元々エンドキャップと中空糸膜の開口端との間には距離があり、その間の空間の容積は比較的大きいため、遠心成型により封止剤がエンドキャップ側から順に溜まっていき、それが中空糸膜の開口端に達するまでに、多量の封止剤が必要になる。この封止剤の大部分は、後工程の切断により破棄されるために無駄になる。特に直径の大きな流体処理器や、直径が小さくても大量生産を行う血液透析器用の流体処理器では、封止剤の使用量が無視できず、生産コストの増大を招く恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−279374号公報
【特許文献2】特許第271987号公報
【特許文献3】特公昭56−3772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、例えば図14に示すように目止めを行う際に、流体処理器100の筒状部101の端部101aにリング状の目止め用冶具102を接続し、当該目止め用治具102の内側に目止め剤Eを充填し硬化して、中空糸膜束Aの開口端を目止めすることが考えられる。この場合、中空糸膜束Aの開口端の周辺にのみ目止め剤Eが供給されるので、目止め剤Eの使用量を低減できる。そして、この場合のポッティング工程は、目止めの後に、目止め剤Eよりも内側の筒状部101内に封止剤を供給し、遠心力等により当該封止剤を筒状部101の端部側に移動させて行われる。
【0009】
しかしながら、この場合、例えば図15に示すように目止め剤Eが硬化する際に、熱収縮により目止め剤Eが内側に収縮する。このため、目止め用治具102の内周面と目止め剤Eとの間に隙間ができることが考えられる。目止め用治具102と目止め剤Eとの間に隙間ができると、ポッティング工程時にその隙間から封止剤が外側に漏れることが考えられる。この場合、封止剤の一部が無駄になり、封止剤の使用量が多くなる。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、目止め剤の使用量を抑えつつ、封止剤の使用量も抑えることができる目止め用治具、及び当該目止め用治具を用いた流体処理器の製造方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定構造の目止め用冶具を用いると、目止め剤が硬化して収縮しても封止剤の漏れ出しが全く起こらないことを見出し、本発明に至った。
すなわち、
本発明は、流体処理器の製造時に、流体処理器の筒状部に収容された中空糸膜束の開口端を目止め剤により目止めする際に、前記筒状部の端部に取り付けられる目止め用治具であって、筒状に形成され、筒状の外周壁の内側には、軸方向の一の方向に向けて開口する溝が前記外周壁に沿って形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、目止め時に目止め剤が溝内に入るので、当該目止め剤が内側に熱収縮しても、溝内の目止め剤が収縮方向にある溝の壁面に密着して、目止め剤と目止め用治具との間の気密性が確保される。このため、ポッティング工程時に封止剤が目止め剤と目止め用治具との隙間を通って外側に漏れることが防止される。この結果、目止め用治具を用いて目止め剤の使用量を低減しつつ、封止剤の使用量も低減できる。
【0013】
また、本発明にかかる目止め用治具は、前記外周壁を形成する筒状の外筒部と、前記外筒部の内側に配置された筒状の内筒部と、前記外筒部と前記内筒部を径方向に接続する底部と、前記底部の前記の一方向の反対側に接続され、前記流体処理器の筒状部の端部に嵌め合わせ可能な嵌合部と、を有し、前記外筒部の前記一の方向側の端部は、前記内筒部の一の方向側の端部よりも突出しており、前記溝は、前記外筒部と前記内筒部との間に形成されていてもよい。
【0014】
前記内筒部は、前記底部側の溝の幅が狭くなるような段部を有していてもよい。当該段部の内角部は、湾曲していてもよい。
【0015】
また、前記外筒部と前記内筒部の前記一の方向側の端面のずれが、2.0mm以上15.0mm以下であってもよい。
【0016】
前記溝の最も幅のある部分が、2.0mm以上6.0mm以下であってもよい。
【0017】
前記流体処理器は、血液処理器であってもよい。
【0018】
別の観点による本発明は、上記目止め用治具を用いた流体処理器の製造方法であって、 目止め用治具を、流体処理器の筒状部の端部に装着する工程と、前記筒状部に中空糸膜束が収容された状態で、前記目止め用治具内の溝を含む内側に目止め剤を供給し、前記目止め剤を固化して、前記中空糸膜束の開口端を目止めする工程と、前記目止め剤より中央側の前記筒状部内に封止剤を供給し、当該封止剤を前記筒状部の端部に移動させ、当該封止剤を固化して、前記筒状部の端部を封止する工程と、固化された前記封止剤を切断することにより中空糸膜の端部に開口端を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
上記流体処理器の製造方法において、前記中空糸膜束の開口端が目止めされる際、前記中空糸膜束の開口端は、前記目止め用治具の内筒部の端面と外筒部の端面の間に位置していてもよい。
【0020】
前記中空糸膜束の端が前記内筒部の端面から0.1mm以上13.0mm以下の範囲で突出するようにしてもよい。
【0021】
前記目止め剤は、熱可塑性の樹脂であってもよい。
【0022】
前記目止め剤の樹脂粘度が100mPa・s以上100000mPa・s以下であってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、目止め剤と封止剤の両方の使用量を抑えることができるので、流体処理器の生産コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】流体処理器の構図の概略を示す説明図である。
【図2】目止め用治具の構成の概略を示す縦断面の説明図である。
【図3】目止め用治具の平面図である。
【図4】流体処理器の筒状部の両端に目止め用治具を取り付けた状態を示す説明図である。
【図5】目止め用治具に目止め剤が供給された状態を示す縦断面の説明図である。
【図6】目止め剤が収縮した状態を示す説明図である。
【図7】筒状部に封止剤が供給された状態を示す説明図である。
【図8】溝に段部がある目止め用治具の構成の概略を示す縦断面の説明図である。
【図9】図9(A)〜(F)は、目止め用治具の外筒部の構造のバリエーションを示す模式図である。
【図10】図10(A)〜(F)は、目止め用治具の内筒部の構造のバリエーションを示す模式図である。
【図11】図11(A)〜(F)は、目止め用治具の溝部の構造のバリエーションを示す模式図である。
【図12】図12(A)〜(F)は、目止め用治具の嵌合部の構造のバリエーションを示す模式図である。
【図13】溝のない目止め用治具の説明図である。
【図14】溝のない筒状の目止め用治具に目止め剤が供給された状態を示す縦断面の説明図である。
【図15】図14の目止め用治具において目止め剤が収縮した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、製造の際に本実施の形態にかかる目止め用治具が用いられる流体処理器1の構成の概略を示す模式図である。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0026】
流体処理器1は、例えば図1に示すように中空糸膜束Aが長手方向(軸方向)に収容される筒状部10と、筒状部10の両端を閉鎖するヘッダーキャップ11を有している。
【0027】
中空糸膜束Aは、5000本〜16000本程度の中空糸膜により形成されている。中空糸膜は、多孔質で管状に形成されている。
【0028】
筒状部10の両端部は、封止剤Bにより封止されている。封止剤Bは、円盤状に硬化しており、中空糸膜同士の間と、中空糸膜束Aと筒状部10の内壁と間に充填され、中空糸膜束Aと筒状部10を固定している。なお、中空糸膜束Aの各中空糸膜の両端は、封止剤Bの外側に開口している。
【0029】
筒状部10の両端部付近の外周面には、流体処理器1の外部から筒状部10内部に連通する流体通過部20が形成されている。流体通過部20は、封止剤Bの位置よりも中央側に形成され、筒状部10の内部の中空糸膜束Aの外周空間Cに連通している。また、各ヘッダーキャップ11の中央には、流体処理器1の外部に連通する流体通過部21が形成されており、流体処理器1の外部とヘッダーキャップ11内の端部空間Dが連通している。中空糸膜束Aの開口端は、この端部空間Dに開口している。したがって、例えばヘッダーキャップ11の一方の流体通過部21から流入した流体は、端部空間Dを通過して中空糸膜束A内に流入し、中空糸膜束Aを通って反対の端部空間Dに流出し、他方の流体通過部21から外部に流出される。そして、中空糸膜束Aを通過する際に、各中空糸膜の側壁の微細な孔を通過した特定成分が外周空間Cに流出し、流体通過部20から外部に流出される。
【0030】
次に、流体処理器1の製造時に用いられる目止め用治具30の構成について説明する。
【0031】
目止め用治具30は、例えば図2及び図3に示すように円筒状に形成され、筒状の外周壁40の内側に、軸方向Xの一の方向X1に向けて開口する溝41が形成されている。溝41は、外周壁40に沿って環状に形成されている。
【0032】
目止め用治具30は、図2に示すように例えば外周壁40を形成する筒状の外筒部50と、外筒部50の内側に配置された筒状の内筒部51と、外筒部50と内筒部51を径方向に接続する底部52と、底部52の一の方向X1の反対側に形成され、流体処理器1の筒状部10の端部10aに嵌め合わせ可能な嵌合部53を有している。
【0033】
外筒部50の一の方向X1側の端部は、内筒部51の一の方向X1側の端部よりも突出している。例えば外筒部50と内筒部51の一の方向X1側の端面のずれH1は、2.0mm以上15.0mm以下に設定されている。なお、中空糸膜束Aの端が内筒部51の端面から0.10mm以上13.0mm以下、より好ましくは1.0mm以上5.0mm以下の範囲で突出するように、目止め用治具30が構成されている。
【0034】
溝41は、外筒部50と内筒部51との間に形成されている。溝41の最も幅のある部分T1は、2.0mm以上6.0mm以下、好ましくは2.5mm以上5.0mm以下に設定されている。
【0035】
嵌合部53は、筒状部10の端部10aより僅かに径が大きい円筒状に形成され、筒状部10の端部10aの外側に気密に嵌め込むことができる。
【0036】
次に、以上のように構成された目止め用治具30を用いた流体処理器1の製造方法について説明する。
【0037】
先ず、ヘッダーキャップ11が未だ取り付けられていない筒状部10内に中空糸膜束Aが装填され、その状態で、図4に示すように目止め用治具30が、筒状部10の両端部に装着される。予め、目止め用冶具30が筒状部10の両端側に装着された状態で、筒状部10内に中空糸膜束Aが装填されてもよい。このとき、中空糸膜束Aの両端は、図2に示すように目止め用治具30の外筒部50の端面と内筒部51の端面の間に位置する。
【0038】
次に、例えば図5に示すように筒状部10が鉛直方向に立てられた状態で、目止め用治具30の上方から例えば溶融された熱硬化性樹脂の目止め剤Eが目止め用治具30内に流し込まれる。これにより、溝41と、内筒部51の内側を含む目止め用治具41の内側に目止め剤Eが満たされる。目止め剤Eの樹脂粘度は、例えば100mPa・s以上100000mPa・s以下、より好ましくは1000mP・s以上10000mP・s以下に設定されている。
【0039】
目止め剤Eは、目止め用治具30内に流し込まれた後冷却され、硬化する。これにより、中空糸膜束Aの開口端が塞がれて目止めされる。このとき、図6に示すように目止め剤Eは、全体が中心軸P側に熱収縮するが、少なくとも溝41内の目止め剤Eが内筒部51に密着するので、目止め剤Eを挟んで筒状部10の中央側と外側が連通することが防止される。この目止めは、中空糸膜束Aの両側で行われる。
【0040】
次に、中心軸が水平になるように筒状部10が遠心成型機内に配置され、その状態で筒状部10の中央を通る鉛直軸周りに筒状部10が回転される。そして、筒状部10が回転された状態で、例えば流体通過部20から筒状部10の内部に、例えば熱硬化性樹脂の封止剤Bが流入される。筒状部10内に流入された封止剤Bは、図7に示すように遠心力により外側に流され、目止め剤Eの中央側に溜められる。この状態で、封止剤Bが硬化され、中空糸膜束Aの両端部において、中空糸膜同士の間と、中空糸膜束Aと筒状部10の内壁の間で封止剤Bが固化し、中空糸膜束Aと筒状部10が固定されて、筒状部10の両端部が封止される(ポッティング)。
【0041】
その後、例えば目止め用治具30が取り外され、あるいは取り付けたまま、中空糸膜束Aの両端部が封止剤Bのある部分(図7の切断線Q)で軸方向Xの垂直方向に切断される。これにより、中空糸膜束Aの開口端が形成されている。その後、筒状部10の両端部にヘッダーキャップ11が取り付けられ、流体処理器1が完成する。
【0042】
以上の実施の形態によれば、目止め用治具30の外周壁40の内側に、一の方向X1に向けて開口する溝41が外周壁40に沿って形成されている。このため、目止め剤Eが硬化し熱収縮する際に、溝41内の目止め剤Eが溝41の内側の壁面に密着して、目止め剤Eと目止め用治具30との間に隙間ができることを防止できる。これにより、後工程で、筒状部10内に供給される封止剤Bが、目止め用治具30と目止め剤Eとの隙間を通って漏れることを防止できる。これにより、封止剤Bの使用量を低減できる。
【0043】
また、目止め用治具30に溝41を形成した場合、溝を形成しない場合に比べて中空糸膜束Aと目止め用治具30の外周壁40との距離が離れる。このため、中空糸膜束Aの外周側周辺に供給される目止め剤Eが低温の外壁面40により冷やされて早い段階で硬化することを抑制できる。これにより、中空糸膜束Aの外周側にも、溶融した目止め剤Eが十分に供給され、中空糸膜束Aの外周側の目止めを十分に行うことができる。
【0044】
また、目止め用治具30は、外筒部50と、内筒部51と、底部52と、嵌合部53を有し、外筒部50の一の方向X1側の端部は、内筒部51の一の方向X1側の端部よりも突出しており、溝41は、外筒部50と内筒部51との間に形成されている。これにより、簡単な構成の目止め用治具30を実現できる。
【0045】
外筒部50と内筒部51の一の方向X1側の端面のずれH1が、2.0mm以上15.0mm以下に設定されている。ずれH1を2.0mm以上にすることにより、目止め剤Eを供給する際に、目止め剤Eが外筒部50の外側に漏れることを防止できる。また、ずれH1を15.0mm以下にすることにより、例えば目止め剤Eの目止め用治具30内の落下等による衝撃により目止め剤Eに気泡が混入することを防止できる。また、中空糸膜束Aの開口端に到達するまでに目止め剤Eが冷えて硬化し十分に中空糸膜束Aの目止めが十分に行われないことを防止できる。
【0046】
上記実施の形態では、中空糸膜束Aの開口端が目止めされる際に、中空糸膜束Aの開口端が目止め用治具30の内筒部51の端面と外筒部50の端面の間に位置し、内筒部51の端面から0.10mm以上13.0mm以下の範囲で突出するようにしている。このため、目止め剤Eが中空糸膜束Aの開口端に効率的に供給され、目止めが最小限の目止め剤Eの量で効果的に行われる。
【0047】
溝41の最も幅のある部分T1が、2.0mm以上6.0mm以下であるので、目止め剤Eが溝41内に適正に進入する。
【0048】
上記実施の形態では、目止め剤Eの樹脂粘度が100mPa・s以上100000mPa・s以下に設定されている。目止め剤Eの塗布或いは浸漬時の粘度は、高粘度過ぎると目止め剤Eが中空糸膜の開口端面に到達しても中空糸膜内に進入しなくなる恐れがあるが、本実施の形態で、適正の粘度の目止め剤Eが使用されるので、目止め剤Eの中空糸膜内への進入が適正に行われる。
【0049】
また、上記実施の形態の流体処理器1の製造方法は、目止め用治具30を、流体処理器1の筒状部10の端部10aに装着する工程と、筒状部10に中空糸膜束Aが収容された状態で、目止め用治具30内の溝41を含む内部に目止め剤Eを供給し、さらに目止め剤Eを固化して中空糸膜束Aの開口端を目止めする工程と、目止め剤Eより中央側の筒状部10内に封止剤Bを供給し、当該封止剤Bを筒状部10の端部に移動させ、当該封止剤Bを固化して、筒状部10の端部を封止する工程と、を有している。この製造方法により、流体処理器1の製造コストを低減できる。
【0050】
図8に示すように上記実施の形態における溝41の内筒部51の外筒部50側の面には、底部52側の溝41の幅が狭くなるような段部60が形成されていてもよい。例えばこの段部60の内角部60aは、滑らかに湾曲している。また、溝41の底面、つまり底部52の内面は、凹状に湾曲していてもよい。この場合、溝41の最も幅のある部分T1は、筒部51の上端部となる。
【0051】
かかる場合、内筒部51が段部60を有しているので、例えば目止め剤Eが溝41の底まで到達することを抑制できる。これにより、目止め剤Eの消費量を低減できる。また、段部60の内角部60aが湾曲しているので、当該段部60の内角部60aにも目止め剤Eが隙間なく供給される。これにより、目止め剤Eと内筒部51の密着性が向上し、 封止剤Bの漏れがより確実に防止される。
【0052】
なお、中空糸膜束Aは、中空糸膜が変形したり、ばらついたりしない様にフィルムで包装されているものであってもよい。中空糸膜の素材としては、例えばポリスルホン系ポリマー、再生セルロース、セルロースアセテート、ポリアミド系ポリマー、ポリアクリロニトリル系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー、ポリメチルメタクリレート系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー、ポリ弗化ビニリデン系ポリマー等が用いられる。
【0053】
また、流体処理器1は、水処理器やガス分離器あるいは血液処理器等の何れかであってもよい。上記方法で製造された流体処理器1は、中空糸膜の封止性にも優れているため、流体処理器1が血液処理器の場合にはより好ましい。つまり、流体処理器の中空糸膜に封止剤の侵入による目詰まりが発生すると、血液もしくは血液成分が流体処理器内に残留(残血)し、被対象者(患者)への心理的かつ肉体的負担を生じる恐れがあるが、本発明によればそのような恐れがないからである。血液処理器としては、人工腎臓、人工肝臓、人工肺、血漿分離器、血液成分分離器等を例示できる。
【0054】
ポッティング工程で使用される封止剤Bは、溶融状態で注入した後に硬化する樹脂が好ましく、例えば、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂等が使用される。
【0055】
中空糸膜の開口端の目止めに使用される目止め剤Eの樹脂は、容易に粘度を変更可能な樹脂が好ましく、熱可塑性樹脂が含まれることが最適である。熱可塑性樹脂として好ましくは、オレフィン系樹脂である。熱可塑性樹脂が含まれることにより、目止め剤の供給後の目止め剤を固化する過程が容易となる。
【0056】
以上の実施の形態において、目止め用治具30と流体処理器1の筒状部10との装着は、嵌合により行っていたが、接着剤や超音波による他の接着方法を使用してもよい。
【0057】
図9(A)〜(F)は、本発明にかかる目止め用治具30の外筒部50の構造のバリエーションを示す模式図である。図10(A)〜(F)は、本発明にかかる目止め用治具30の内筒部51の構造のバリエーションを示す模式図である。図11(A)〜(F)は、本発明にかかる目止め用治具30の溝41の構造のバリエーションを示す模式図である。図12(A)〜(F)は、本発明にかかる目止め用治具30の嵌合部53の構造のバリエーションを示す模式図である。いずれの組み合わせで使用しても構わない。
【実施例】
【0058】
次に、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。まず初めに、実施例で用いた測定方法について説明する。
【0059】
(中空糸膜の開口率)
最終的な中空糸膜束の端部面の開口率を求めることにより、中空糸膜内部への封止剤の侵入による目詰まりの程度を定量的に評価した。先ず、所定の各製造方法で製造された流体処理器を準備し、中空糸膜束の開口端の全面を濃色の油性ペンで着色した。こうすることにより、目詰まりしている中空糸膜の開口端内に侵入している封止剤が着色され、正常に開口している中空糸膜との区別が明確になるため、精度の高い観察が可能となる。次に、中空糸膜束の開口端をルーペか顕微鏡で観察しながら、中空糸膜の開口数と未開口数をカウントし、中空糸膜束の開口率を式(2)により算出した。
中空糸膜束の開口率(%)=(中空糸膜の開口数/中空糸膜の本数)×100 (2)
【0060】
(樹脂層部の最小厚み)
それぞれ同一サイズの容器を用い、同一量の封止剤を注入して樹脂層部を形成した後、同一位置で樹脂層部を切断したサンプルを作成し、封止剤により形成された樹脂層部の厚みを比較することで封止剤の使用量の多少(ロスの多少)を評価した。樹脂層部の厚みはノギスにて数点測定し、最小厚みを記録した。この場合、最小厚みが小さいほど、注入した封止剤が目止め剤の蓋から漏れ出たことを意味する。
なお、本実施例では、図8に示したような溝41に段部60ある目止め用治具30を用いた。
【0061】
<実施例1>
外径255μmのポリスルホン中空糸膜を10000本(±500本)製束し、直径45mm、長さ305mmの中空糸膜束を用意した。筒状部としては、両端部付近に流体の流入/流出用の2本のノズル(流体通過部)が設けられ、全長286mmのポリスチレン系樹脂からなる容器を用意した。ポリプロピレン製で、内筒部と外筒部の端面のずれH1が8.0mm(溝の底面から外筒部の端面までの高さが11.0mm、内筒部の端面までの高さが3.0mm)、溝の幅の最大値T1が3.0mmの目止め用治具を、図1に示すように、筒状部の両端に装着した後、中空糸膜束を目止め用治具が取り付けられた筒状部内に装填した。その際、中空糸膜束の両端部が、内筒部の端面から2.0mmはみ出るように調整した。次に、ポリプロピレン系ポリマーを主成分とする粘度2000mmPa・sの溶融樹脂10gを、目止め剤として目止め用治具内に注入した。この時、目止め剤が中空糸膜束の端面全体を被覆し、さらに目止め用冶具の溝にまで行き渡るように被覆した後、室温で静置して固化させることより目止めを行った。同様に反対側の端面も目止めを行った。次に、筒状部に設けられた2本のノズル(流体通過部)から、封止剤としてポリウレタン樹脂を50(g/本)注入しながら遠心成型を行って樹脂層部を形成した。硬化後の樹脂層部をキャップが取り付け可能となる位置まで切断した。
切断後の中空糸膜両端面をルーペにより目視観察し、中空糸膜束の開口率を求めるとともに、樹脂層部の最小厚みをノギスにて測定した。
【0062】
<実施例2>
中空糸膜束の両端部の内筒部の端面からのはみ出し距離を1.0mm以上とし、目止め剤の粘度を8000mmPa・sとした以外は、実施例1と同じ条件でサンプルを作成した。
【0063】
<実施例3>
中空糸膜束の両端部の内筒部の端面からのはみ出し距離を1.0mm以上とし、目止め剤の粘度を3000mmPa・sとし、さらに溝の幅の最大値T1を4.0mmとした以外は、実施例1と同じ条件でサンプルを作成した。
【0064】
<実施例4>
中空糸膜束の両端部の内筒部の端面からのはみ出し距離を1.0mm以上とし、目止め剤の粘度を3000mmPa・sとし、さらに溝の幅の最大値T1を6.0mmとした以外は、実施例1と同じ条件でサンプルを作成した。
【0065】
<実施例5>
中空糸膜束の両端部の内筒部の端面からのはみ出し距離を1.0mm以上とし、目止め剤の粘度を8000mmPa・sとし、溝の幅の最大値T1を3.0mmとし、内筒部と外筒部の端面のズレH1を14.0mmとし、さらに溝の底面から外筒部の端面までの高さを17.0mmとした以外は、実施例1と同じ条件でサンプルを作成した。
【0066】
<実施例6>
中空糸膜束の両端部の内筒部の端面からのはみ出し距離を1.0mm以上とし、目止め剤の粘度を8000mmPa・sとし、溝の幅の最大値T1を3.0mmとし、内筒部と外筒部の端面のズレH1を4.0mmとし、さらに溝の底面から外筒部の端面までの高さを7.0mmとした以外は、実施例1と同じ条件でサンプルを作成した。
【0067】
<比較例1>
外径255μmのポリスルホン中空糸膜を10000本(±500本)製束し、直径45mm、長さ305mmの中空糸膜束を用意した。筒状部としては、両端部付近に流体の流入/流出用の2本のノズル(流体通過部)が設けられ、全長286mmのポリスチレン系樹脂からなる容器を用意した。ポリプロピレン製で、内筒部と外筒部の端面のずれH1が8.0mm(溝の底面から外筒部の端面までの高さが11.0mm、内筒部の端面までの高さが3.0mm)、溝の幅の最大値T1が3.0mmの目止め用治具を、図1に示すように、筒状部の両端に装着した後、中空糸膜束を目止め用治具が取り付けられた筒状部内に装填した。その際、中空糸膜束の両端部が、内筒部の端面から−1.0mmはみ出るように(1.0mm引っ込むように)調整した。次に、ポリプロピレン系ポリマーを主成分とする粘度3000mmPa・sの溶融樹脂10gを、目止め剤として目止め用治具内に注入した。この時、目止め剤が中空糸膜束の端面全体を被覆し、さらに目止め用冶具の溝にまで行き渡るように被覆した後、室温で静置して固化させることより目止めを行った。同様に反対側の端面も目止めを行った。次に、筒状部に設けられた2本のノズル(流体通過部)から、封止剤としてポリウレタン樹脂を50(g/本)注入しながら遠心成型を行って樹脂層部を形成した。硬化後の樹脂層部をキャップが取り付け可能となる位置まで切断した。
切断後の中空糸膜両端面をルーペにより目視観察し、中空糸膜束の開口率を求めるとともに、樹脂層部の最小厚みをノギスにて測定した。
【0068】
<比較例2>
中空糸膜束の長さを305mmとし、中空糸膜束の両端部の内筒部の端面からのはみ出し距離を1.0mm以上とし、さらに溝の幅の最大値T1を1.0mmとした以外は、比較例1と同じ条件でサンプルを作成した。
【0069】
<比較例3>
中空糸膜束の長さを305mmとし、中空糸膜束の両端部の内筒部の端面からのはみ出し距離を1.0mm以上とし、目止め剤の粘度を1000000mmPa・sとした以外は、比較例1と同じ条件でサンプルを作成した。
【0070】
<比較例4>
中空糸膜束の長さを305mmとし、中空糸膜束の両端部の内筒部の端面からのはみ出し距離を1.0mm以上とし、目止め剤の粘度を3000mmPa・sとし、内筒部と外筒部の端面のズレH1を17.0mmとし、さらに溝の底面から外筒部の端面までの高さを20.0mmとした以外は、比較例1と同じ条件でサンプルを作成した。
【0071】
<比較例5>
中空糸膜束の長さを305mmとし、中空糸膜束の両端部の内筒部の端面からのはみ出し距離を1.0mm以上とし、目止め剤の粘度を3000mmPa・sとし、内筒部と外筒部の端面のズレH1を1.0mmとし、さらに溝の底面から外筒部の端面までの高さを4.0mmとした以外は、比較例1と同じ条件でサンプルを作成した。
【0072】
<比較例6>
目止め冶具として、外筒部の端面と内筒部の端面までの高さの差(この図では、正確には、外筒部の端面と内壁部の段差までの高さの差となる)が8.0mmのポリプロピレン性の図13で示されているような溝が形成されていない形状のものを用いた。
中空糸膜束の長さを305mmとし、内筒部(内壁部の段差)と外筒部の端面のズレH1を8.0mmとした以外は、比較例1と同じ条件でサンプルを作成した。
【0073】
表1に実施例で用いた目止め用治具の仕様と目止め剤(目止め樹脂)の塗布条件を、表2に比較例で用いた目止め用治具の仕様と目止め剤(目止め樹脂)の塗布条件を示す。表3に実施例の中空糸膜束の開口率(%)、樹脂層部の最小厚み(mm)測定結果を、表4に比較例の中空糸膜束の開口率(%)、樹脂層部の最小厚み測定結果を示す
【0074】
実施例1〜6と比較例1、3、4との対比から明らかな通り、目止め用治具の各部形状のパラメーターや目止め剤の粘度、中空糸膜束の内筒部の端面からのはみ出し距離が中空糸膜束の開口率に影響していることが分かった。比較例1は中空糸膜端部の外周部が内筒部の頂部付近と接触しており、目止め樹脂塗布時に内筒部の頂部に先に目止め剤が接触し、熱が奪われ、固化することにより中空糸膜端部の外周部に目止め剤が到達せずに固まってしまったことを意味していると考えられる。比較例3は目止め樹脂の粘度が高すぎるために中空糸膜の開口端に目止め樹脂が到達しても中空糸膜内部に樹脂が浸透しなかったことを意味していると考えられる。比較例4は外筒部の高さが高いため、目止め剤の中空糸膜束端面までの空走距離が高くなり、塗布時に目止め樹脂が気泡を巻き込んだことによる目止め不良を意味していると考えられる。
【0075】
実施例1〜6と比較例2、3、6との対比から明らかな通り、目止め用治具の各部形状のパラメーターや目止め樹脂の粘度が樹脂層部の最小厚み、つまり封止剤の漏れに影響していることが分かった。比較例2、3、6は溝の最大幅が狭すぎる(溝がない)及び目止め剤の粘度が高すぎるため、目止め剤が溝に浸漬せず、固化収縮による内筒部の頂部付近の物理的な接触が得られないことにより、封止剤の漏れが発生し、樹脂層部の最小厚みが実施例と比較して薄くなったと考えられる。実際にポッティング後のワークを確認した所、比較例2、3、6のワークでは封止剤の漏れが確認された。
比較例5では目止め剤を塗布した際に目止め剤の盛り上がり及び、外筒部の端面からの目止め剤のはみ出しが確認された。外筒部の端面と内筒部の端面の高さの差が短いことが原因と考えられる。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
なお、封止剤の漏れの低減に関しては、図2に示したような段部60のない溝41の目止め用治具を用いた場合も同様の効果が得られている。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、目止め用治具を用いて流体処理器の製造するときに、目止め剤の使用量と封止剤の使用量を抑える際に有用である。
【符号の説明】
【0082】
1 流体処理器
10 筒状部
11 ヘッダーキャップ
30 目止め用治具
40 外周壁
41 溝
50 内筒部
51 外筒部
A 中空糸膜束
B 封止剤
E 目止め剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体処理器の製造時に、流体処理器の筒状部に収容された中空糸膜束の開口端を目止め剤により目止めする際に、前記筒状部の端部に取り付けられる目止め用治具であって、
筒状に形成され、筒状の外周壁の内側には、軸方向の一の方向に向けて開口する溝が前記外周壁に沿って形成されていることを特徴とする、目止め用治具。
【請求項2】
前記外周壁を形成する筒状の外筒部と、
前記外筒部の内側に配置された筒状の内筒部と、
前記外筒部と前記内筒部を径方向に接続する底部と、
前記底部の前記一の方向の反対側に接続され、前記流体処理器の筒状部の端部に嵌め合わせ可能な嵌合部と、を有し、
前記外筒部の前記一の方向側の端部は、前記内筒部の一の方向側の端部よりも突出しており、
前記溝は、前記外筒部と前記内筒部との間に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の目止め用治具。
【請求項3】
前記内筒部は、前記底部側の溝の幅が狭くなるような段部を有していることを特徴とする、請求項2に記載の目止め用治具。
【請求項4】
前記段部の内角部は、湾曲していることを特徴とする、請求項3に記載の目止め用治具。
【請求項5】
前記外筒部と前記内筒部の前記一の方向側の端面のずれが、2.0mm以上15.0mm以下であることを特徴とする、請求項2〜4のいずれかに記載の目止め用治具。
【請求項6】
前記溝の最も幅のある部分が、2.0mm以上6.0mm以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の目止め用治具。
【請求項7】
前記流体処理器は、血液処理器であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の目止め用治具。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の目止め用治具を用いた流体処理器の製造方法であって、
目止め用治具を、流体処理器の筒状部の端部に装着する工程と、
前記筒状部に中空糸膜束が収容された状態で、前記目止め用治具内の溝を含む内側に目止め剤を供給し、前記目止め剤を固化して、前記中空糸膜束の開口端を目止めする工程と、
前記目止め剤より中央側の前記筒状部内に封止剤を供給し、当該封止剤を前記筒状部の端部に移動させ、当該封止剤を固化して、前記筒状部の端部を封止する工程と、
固化された前記封止剤を切断することにより中空糸膜の端部に開口端を形成する工程と、を有することを特徴とする、流体処理器の製造方法。
【請求項9】
前記中空糸膜束の開口端が目止めされる際、前記中空糸膜束の開口端は、前記目止め用治具の内筒部の端面と外筒部の端面の間に位置していることを特徴とする、請求項8に記載の流体処理器の製造方法。
【請求項10】
前記中空糸膜束の端が前記内筒部の端面から0.1mm以上13.0mm以下の範囲で突出することを特徴とする、請求項9に記載の流体処理器の製造方法。
【請求項11】
前記目止め剤は、熱可塑性の樹脂であることを特徴とする、請求項8または9に記載の流体処理器の製造方法。
【請求項12】
前記目止め剤の樹脂粘度が100mPa・s以上100000mPa・s以下であることを特徴とする、請求項8〜11のいずれかに記載の流体処理器の製造方法。
【請求項1】
流体処理器の製造時に、流体処理器の筒状部に収容された中空糸膜束の開口端を目止め剤により目止めする際に、前記筒状部の端部に取り付けられる目止め用治具であって、
筒状に形成され、筒状の外周壁の内側には、軸方向の一の方向に向けて開口する溝が前記外周壁に沿って形成されていることを特徴とする、目止め用治具。
【請求項2】
前記外周壁を形成する筒状の外筒部と、
前記外筒部の内側に配置された筒状の内筒部と、
前記外筒部と前記内筒部を径方向に接続する底部と、
前記底部の前記一の方向の反対側に接続され、前記流体処理器の筒状部の端部に嵌め合わせ可能な嵌合部と、を有し、
前記外筒部の前記一の方向側の端部は、前記内筒部の一の方向側の端部よりも突出しており、
前記溝は、前記外筒部と前記内筒部との間に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の目止め用治具。
【請求項3】
前記内筒部は、前記底部側の溝の幅が狭くなるような段部を有していることを特徴とする、請求項2に記載の目止め用治具。
【請求項4】
前記段部の内角部は、湾曲していることを特徴とする、請求項3に記載の目止め用治具。
【請求項5】
前記外筒部と前記内筒部の前記一の方向側の端面のずれが、2.0mm以上15.0mm以下であることを特徴とする、請求項2〜4のいずれかに記載の目止め用治具。
【請求項6】
前記溝の最も幅のある部分が、2.0mm以上6.0mm以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の目止め用治具。
【請求項7】
前記流体処理器は、血液処理器であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の目止め用治具。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の目止め用治具を用いた流体処理器の製造方法であって、
目止め用治具を、流体処理器の筒状部の端部に装着する工程と、
前記筒状部に中空糸膜束が収容された状態で、前記目止め用治具内の溝を含む内側に目止め剤を供給し、前記目止め剤を固化して、前記中空糸膜束の開口端を目止めする工程と、
前記目止め剤より中央側の前記筒状部内に封止剤を供給し、当該封止剤を前記筒状部の端部に移動させ、当該封止剤を固化して、前記筒状部の端部を封止する工程と、
固化された前記封止剤を切断することにより中空糸膜の端部に開口端を形成する工程と、を有することを特徴とする、流体処理器の製造方法。
【請求項9】
前記中空糸膜束の開口端が目止めされる際、前記中空糸膜束の開口端は、前記目止め用治具の内筒部の端面と外筒部の端面の間に位置していることを特徴とする、請求項8に記載の流体処理器の製造方法。
【請求項10】
前記中空糸膜束の端が前記内筒部の端面から0.1mm以上13.0mm以下の範囲で突出することを特徴とする、請求項9に記載の流体処理器の製造方法。
【請求項11】
前記目止め剤は、熱可塑性の樹脂であることを特徴とする、請求項8または9に記載の流体処理器の製造方法。
【請求項12】
前記目止め剤の樹脂粘度が100mPa・s以上100000mPa・s以下であることを特徴とする、請求項8〜11のいずれかに記載の流体処理器の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図13】
【図14】
【図15】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図13】
【図14】
【図15】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−234308(P2010−234308A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86674(P2009−86674)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000116806)旭化成クラレメディカル株式会社 (133)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000116806)旭化成クラレメディカル株式会社 (133)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]