説明

目的物質の分離方法および分子コンプレックス

【課題】目的物質を迅速かつ効率よく濃縮し、特に熱に不安定なタンパクなどの生物学的物質を好適に回収し、アフィニティタグおよび目的物質の活性を低下させることなく、分離条件を適宜設定して、容易に目的物質を分離する。
【解決手段】目的物質と結合し得るアフィニティタグを有する親水性物質に該目的物質を作用させて目的物質と親水性物質との結合体を均一分散系で形成し、該目的物質と親水性物質との結合体に、該親水性物質と水性二液分離可能な複合体を形成する凝集剤を作用させて、分子コンプレックス凝集体を形成し、該分子コンプレックス凝集体を上澄から分離することで、目的物を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチド、タンパク質、細菌、細胞等の生物学的物質または化学物質の分離方法および、該分離方法において得られる高分子コンプレックスもしくは低分子コンプレックス(以下「分子コンプレックス」と称する)に関する。
【背景技術】
【0002】
アフィニティタグが固定された担体を分離剤として用い、目的物質とそれ以外の物質を含む液を接触させて分離剤に目的物質を吸着させ、液と担体を分離し、さらに分離剤から目的物質を脱離させることにより、目的物質を濃縮、精製する方法が知られている。これらの分離剤はたとえば、診断薬担体として用いることができる。
具体的には、担体としてセルロースビーズ、アガロースビーズ、ラテックスビーズ、磁気ビーズを用い、これら担体に固定するアフィニティタグと目的物質の組み合わせとして、抗体/ペプチド、抗体/抗原、抗体のフラグメント/抗原、核酸/核酸、タンパク質/核酸、ペプチド/ペプチド、タンパク質/タンパク質、薬物候補物質/タンパク質、グルタチオン/グルタチオン−(S)−トランスフェラーゼ、マルトース/マルトース結合タンパク質、炭水化物/タンパク質、炭水化物誘導体/タンパク質、ペプチドタグ/金属イオン−金属キレート、ペプチド/NTA−Ni、プロテインA/抗体、プロテインG/抗体、プロテインL/抗体、Fcレセプター/抗体、ビオチン/アビジン、ビオチン/ストレプトアビジン、ジンクフィンガー/核酸、薬物候補物質/ペプチド、薬物候補物質/レセプター、および金属イオン/キレート剤/ポリアミノ酸を用いる方法が知られている。
【0003】
従来の方法では、これらの分離剤は水溶液中で均一に分散することがなく、懸濁もしくは沈降するように設計されているため、クロマトグラフィー法、濾過分離法、遠心分離法と上澄除去による方法等により、目的物質とそれ以外の物質と分離できる点で優れているものの、担体の単位体積あたりの表面積が小さく、担体上に固定化できるアフィニティタグ量が少なくなり、ある一定量の目的物質を回収するためには多くの分離剤を必要とする問題があった。また、分離剤が水溶液中で均一に分散しないことから分離剤と目的物質が接触する機会が少なくなるため、目的物質を分離剤に吸着するために長い時間を必要とする問題、更には、分離剤を充填した際にできる隙間の体積が大きいため、目的物質を含む液を分離剤に満遍なく接触させるためには、液量を増やす必要があり、目的物質の濃縮効率という点で劣っているという問題がある。
【0004】
これらの問題は、特に少量多検体を処理する際に大きな問題となっており、診断薬、創薬の分野ではこの問題を解決する一つの手段として、アフィニティタグを固定するための面積を増やすために、単位体積あたりの表面積を増やす方法、たとえば担体のサイズを1ミクロン程度まで小さくする方法が取られている。さらに、濃縮、精製工程を自動化するために、担体を磁石で回収可能にした分離剤が開発されている。このような分離剤を用いることにより、既存の方法と比較し、少量多検体処理において良好な濃縮、精製が可能となる。さらに担体のサイズを小さくすることで、アフィニティタグの固定量を増やすことができるが、ある程度のサイズにおいて担体が受けるブラウン運動の影響が無視できなくなり、担体は水溶液中で自然沈降することがなくなり、水溶液中に均一に分散したコロイド液の様相を示す。このような担体を用いる際には、超高速遠心分離法とを用いることにより担体を分離できるが、多検体処理の際には操作が煩雑となる。また、担体が磁気成分を含む場合には磁気カラム法を使用することで目的物質の分離、濃縮を行うことができるが、操作が煩雑であり、1検体の処理に必要な時間が長く、また、貴重な目的物質を吸着した分離剤が磁気カラムに吸着されて溶出できなくなる場合があるなどの問題が指摘されている。
【0005】
また、他の有力な物質の単離、精製方法として、水性二相系における液−液抽出が知られている。液−液抽出による巨大分子や粒子の分離はよく知られている(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。液−液抽出においては主としてポリエチレングリコール(PEG)−塩系、PEG−デキストラン系およびPEG−でんぷん系が使用されてきた。水性二相系の利点は、特に、微生物のタンパク質の大量処理に適する点であり、微生物の培養上清液のみならず、微生物細胞や細胞の残渣を含む粗細胞抽出物からのタンパク質の精製に適している(非特許文献4、非特許文献5)。生体由来の液体およびその懸濁液の典型的な特徴は、その中に含有される粒子のサイズが比較的小さく、懸濁している固体との密度の差が小さく、抽出物される物質の粘度が高く、また、固体の圧縮性が高いことであり(非特許文献6)、これがタンパク質回収工程の早い段階で行われる遠心分離やろ過分離などの操作による固−液分離法の精製精度が低くなる原因である。水性二相系を用いることにより、固体の除去工程を液−液分離工程に統合することができるので、細胞除去も初期精製工程に組み込まれる(非特許文献4、非特許文献5)。
【0006】
抽出工程の後、相分離は遠心のみならず重力による沈降によっても行うことができる(非特許文献5)。水性二相系は非常に小さい実験室規模から大きな工業規模にまで適用可能であり、従って種々のタンパク質の性質に応じた使用が可能である。工業用目的では、分離時間を短縮化するために市販の遠心分離機を使用することができる。大容量の水性二相系を処理できるような様々な設計の遠心分離機の可能性について研究されている(非特許文献4、非特許文献5、非特許文献7)。これらの研究においては、ポリマー/ポリマー系またはポリマー/塩系を使用し、遠心分離機による水性二相系の連続分離の可能性が示されている。
【0007】
水性二相系においては、目的物質、例えばタンパク質などは選択的に一つの相(好ましくは軽い相)に分配され、他の物質はもう一方の相(好ましくは重い相)に分配されるべきである。ポリエチレングリコール/塩、ポリエチレングリコール/デキストランや類似の系では、物質の移動に関与する力として、電荷、物質の疎水性または親水性、あるいは物質の立体構造やアフィニティタグとの相互作用が挙げられ、ポリエチレングリコール−アフィニティタグ複合体により水性二相分離上澄に目的物質を多く分配させた報告がある(非特許文献8)。界面活性剤を主成分とする水性二相系において分離を導く力は本質的に疎水性である(非特許文献9)。水性二相系における物質の移動を予見するための研究がなされてはいるが、どのようなモデルも実際の相の動態を示すことができず、予測することすらほとんど不可能である(非特許文献10)。
【0008】
このような問題を解決する一つの方法として、水性二相分離のいずれかの相への分配係数を大きくした目的物質を認識するターゲッティングタンパク質を添加する手法が開発されている。目的物質との複合体を形成した場合においても、ターゲッティングタンパクの効果により希望する相へ目的物質を分配させる研究がある(特許文献1)。
しかしながら、このような手法においても目的物質の分離操作は液量が多くなるなど、濃縮操作としてみた際に簡便とは言えない。
【0009】
水性二相分離を利用した物質濃縮方法の一つに磁気分離を組み合わせた報告がある(非特許文献11)。この方法では、目的とするタンパクの性質に依存した二相への分配のみにより分離を行っており、任意の目的物質を収率良く回収することが難しい。
また、アフィニティタグを固定した磁性微粒子による磁性二相分離を利用したプロテインAの回収の報告がある(非特許文献12)。しかしながら、用いられたIgG固定化磁性微粒子は、15000RPM、10分の高速遠心分離条件で回収していることから比較的大きな粒子であると考えられる。また、この報告では、プロテインA回収後の二相分離時に、磁性微粒子が上澄に分配しており、磁気分離が5分以上必要であることから、凝集
時の粒子径が大きくなりにくいと考えられる。
【0010】
一方、アフィニティタグを固定した小粒子径の磁気ビーズを用いた際に発生する上記のような問題を解決する方法として、ビオチンおよびアビジンから選ばれた1種以上が下限臨界溶液温度を有する高分子を介して磁性微粒子に固定された熱応答性磁性微粒子と磁石の磁力を用いた生体物質の分離方法が開発されている(例えば特許文献2参照)。具体的には、この磁性微粒子は、アフィニティタグによる目的物質の吸着を行う際には、分離剤が水溶液中で均一に分散した状態で行うことができ、また、分離剤を回収する際には、溶液温度を変化させ、分離剤に固定化された下限臨界溶液温度または上限臨界溶液温度を有する高分子の効果で分離剤を凝集させて凝集塊とした後に磁石を用いて回収、濃縮することができる。
【非特許文献1】Enzyme recycling in cellulose hydrolysis by combined use of aqueous two-phase systems and ultrafiltration. Tjerneld, Folke; Persson, Ingrid; Albertsson, Per Aake; Hahn-Haegerdal, Baerbel. Chem. Cent., Univ. Lund, Lund, Swed. Biotechnology and Bioengineering Symposium (1986), 15(Symp. Biotechnol. Fuels Chem., 7th, 1985), 419-29.
【非特許文献2】Partitioning in Aqueous Two-Phase Systems: Theory, Methods, Uses, and Applications to Biotechnology. Walter, Harry; Brooks, Donald E.; Fisher, Derek; Editors. USA. (1985), 704 pp.
【非特許文献3】Interfacial tension of polyethylene glycol-dextran-water systems: influence of temperature and polymer molecular weight. Forciniti, D.; Hall, C. K.; Kula, M. R.. Dep. Chem. Eng., North Carolina State Univ., Raleigh, NC, USA. Journal of Biotechnology (1990), 16(3-4), 279-96.
【非特許文献4】Large-scale isolation of enzymes. Kula, Maria Regina; Johansson, Goete; Bueckmann, Andreas F. Gesellsch. Biotechnol. Forsch. m.b.H., Braunschweig, Fed. Rep. Ger. Biochemical Society Transactions (1979), 7(1), 1-5.
【非特許文献5】Phase equilibration in agitated vessels during extractive enzyme recovery. Fauquex, Pierre Francois; Hustedt, Helmut; Kula, Maria Regina. Ges. Biotechnol. Forschung m.b.H, Braunschweig, Fed. Rep. Ger. Journal of Chemical Technology and Biotechnology, Biotechnology (1985), 35B(1), 51-9.
【非特許文献6】Phase equilibration in agitated vessels during extractive enzyme recovery. Fauquex, Pierre Francois; Hustedt, Helmut; Kula, Maria Regina. Ges. Biotechnol. Forschung m.b.H, Braunschweig, Fed. Rep. Ger. Journal of Chemical Technology and Biotechnology, Biotechnology (1985), 35B(1), 51-9.
【非特許文献7】Evaluation of crude dextran as phase-forming polymer for the extraction of enzymes in aqueous two-phase systems in large scale. Kroner, K. H.; Hustedt, H.; Kula, M. R.. Ges. Biotechnol. Forsch. m.b.H., Braunschweig-Stoeckheim, Fed. Rep. Ger. Biotechnology and Bioengineering (1982), 24(5), 1015-45.
【非特許文献8】Enzyme recycling in cellulose hydrolysis by combined use of aqueous two-phase systems and ultrafiltration. Tjerneld, Folke; Persson, Ingrid; Albertsson, Per Aake; Hahn-Haegerdal, Baerbel. Chem. Cent., Univ. Lund, Lund, Swed. Biotechnology and Bioengineering Symposium (1986), 15(Symp. Biotechnol. Fuels Chem., 7th, 1985), 419-29.
【非特許文献9】Protein partitioning in detergent-based aqueous two-phase systems. Terstappen, Georg C.; Ramelmeier, R. Andrew; Kula, Maria Regina. Inst. Enzymtechnol., Forschungszent. Juelich, Juelich, Germany. Journal of Biotechnology (1993), 28(2-3), 263-75.
【非特許文献10】Separation of amino acids and peptides by temperature induced phase partitioning. Theoretical model for partitioning and experimental data. Johansson, Hans-Olof; Karlstrom, Gunnar; Tjerneld, Folke. Departments of Biochemistry, Swedish Center for Bioseparation, Lund University, Lund, Swed. Bioseparation (1998), 7(4/5), 259-267.
【非特許文献11】Magnetic aqueous two-phase separation in preparative applications. Flygare, S.; Wikstroem, P.;Johansson, G.;Larsson, P. O. Enzyme and Microbial Technology (1990), 12(2), 95-103
【非特許文献12】Affinity Partitioning of protein A using a magnetic aqueous two-phase system. Suzuki, Motoshi; Kamihara, Masamichi; Shiraishi, Tomoki; Takeuchi, Hiroshi; Kobayashi, Takeshi. Journal of Fermentation and Bioengineering (1995), 80(1), 78-84
【特許文献1】特表2002−543766号公報
【特許文献2】特開2005−82538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、分離操作に温度の変化を必要とするため、濃縮、精製するべき目的物質によってはこの条件により機能を喪失することが予想され、さらに温和な条件での目的物質の濃縮、精製条件が求められていた。
従って本発明の課題は、分離剤に目的物質を吸着させる際には迅速に目的物質を吸着させるために分離剤が水溶液中で均一分散することができ、また、目的物質を吸着させた分離剤を水溶液から分離する際には凝集を形成して、遠心分離法、濾過分離法、磁気分離法などの分離条件を適用することのできる目的物質の濃縮方法、およびそれにより得られる分子コンプレックス凝集体を提供することである。本発明の更なる課題は、アフィニティタグおよび目的物質の活性を低下させることなく、分離条件を行う方法を提供することにある。本発明の更なる課題は、薬物発見、生化学的研究、または分子生体学的研究において標的物質の濃縮工程で有効に用いることのできる目的物質の濃縮方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは種々検討の結果、目的物質と相互作用により結合し得るアフィニティタグを固定した水溶性の親水性物質と、該親水性物質と混和することで分子コンプレックスを形成して凝集を発生させることのできる水溶性の凝集剤との二成分を用いることにより、上記目的を達成できることを見出したものである。すなわち、上記アフィニティタグを固定した親水性物質と、目的物質を含有すると予想される水溶液を混和して、親水性物質と目的物質の複合体を形成する工程、前記工程により目的物質と親水性物質の複合体を含む水溶液に対し、凝集剤を添加して、目的物質と親水性物質および凝集剤の分子コンプレックスを形成する工程、凝集した分子コンプレックスを水溶液から分離する工程、分離された分子コンプレックス凝集体を水により再分散させて水溶液とする工程を含む方法により、容易に目的物質の濃縮、精製を行うことができる。ここで、親水性物質は磁気成分を含む複合体であっても良く、これにより、磁気分離により容易に目的物質を分離することができる。すなわち、本発明は下記の構成よりなるものである。
【0013】
(1)生理学的物質および化学物質から選択される少なくとも一つの目的物質を、該目的物質と相互作用により結合し得るアフィニティタグを固定した水溶性の親水性物質および該親水性物質と混和することで水性二相分離を発現する水溶性の凝集剤の少なくとも二成分を用いて分離する方法であって、該目的物質と結合し得るアフィニティタグを有する親水性物質に該目的物質を作用させて、目的物質と親水性物質との結合体を均一分散系で形
成する工程、該目的物質と親水性物質との結合体に、該親水性物質と水性二液分離可能な複合体を形成する凝集剤を作用させて、高分子コンプレックスもしくは低分子コンプレックス(以下「分子コンプレックス」と称する)の凝集体を形成する工程、該分子コンプレックス凝集体を上澄から分離する工程を含むことを特徴とする目的物質の分離方法。
【0014】
(2)生理学的物質および化学物質から選択される少なくとも一つの目的物質を、該目的物質と相互作用により結合し得るアフィニティタグを固定した水溶性の親水性物質と磁気成分との複合体(以下「親水性物質/磁気成分複合体」と称する)および該親水性物質と混和することで水性二相分離を発現する水溶性の凝集剤の少なくとも二成分を用いて分離する方法であって、該目的物質と結合し得るアフィニティタグを有する親水性物質と磁気成分との複合体に該目的物質を作用させて、目的物質と親水性物質/磁気成分複合体との結合体を均一分散系で形成する工程、該目的物質と親水性物質/磁気成分複合体との結合体に、該親水性物質と水性二液分離可能な複合体を形成する凝集剤を作用させて、分子コンプレックス凝集体を形成する工程、該分子コンプレックス凝集体を上澄から分離する工程を含むことを特徴とする目的物質の分離方法。
【0015】
(3)上記アフィニティタグが、二種以上の異なるアフィニティタグの連続体であることを特徴とする上記(1)または(2)記載の分離方法。
【0016】
(4)上記親水性物質がポリオールである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の分離方法。
(5)上記親水性物質がポリサッカライドまたはポリサッカライド誘導体である上記(4)記載の分離方法。
(6)上記親水性物質がデキストラン、デキストリン、セルロース、アガロース、澱粉、カルボキシメチルセルロース、ジエチルアミノセルロース、ヒドロキシアセチルセルロース、ジエチルアミノエチルセルロース、ヒドロキシアセチルセルロース、プルラン、アミロース、ゼラチン、アラビノースガラクタンから選択される少なくとも1種である上記(5)記載の分離方法。
(7)上記親水性物質がデキストランである上記(6)記載の分離方法。
【0017】
(8)上記親水性物質が水酸基を有する合成ポリオールである上記(4)記載の分離方法。
(9)上記親水性物質がポリビニルアルコールおよびポリアリルアルコールから選択される少なくとも1種である上記(8)記載の分離方法。
(10)上記親水性物質が水酸基を有する重合性単量体を重合して得られた合成ポリマーである上記(8)記載の分離方法。
(11)上記親水性物質が、重合性単量体としてアリルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール−モノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルアクリレートから選択される少なくとも一種を重合して得られた合成ポリマーである上記(10)記載の分離方法。
(12)上記親水性物質が、重合性単量体として、水酸基を保護された、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール−モノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルアクリレートから選択される少なくとも一種を重合して得られた合成ポリマーから、該水酸基の保護基を除去した合成ポリマーである上記(10)記載の分離方法。
【0018】
(13)上記親水性物質/磁気成分複合体における磁気成分が、マグネタイト、マグヘマイトおよびヘマタイトから選択される少なくとも一種を含有することを特徴とする上記(
2)〜(12)のいずれかに記載の分離方法。
(14)上記親水性物質/磁気成分複合体が、磁気成分表面への親水性物質の物理的な吸着および化学的固定化の少なくともいずれか一方により得られることを特徴とする上記(13)記載の分離方法。
(15)上記親水性物質/磁気成分複合体が、親水性物質を含有する水溶液中での鉄イオンの共沈法によって調製されていることを特徴とする上記(13)記載の分離方法。
(16)上記親水性物質/磁気成分複合体における磁気成分が、ラテックス磁気ビーズである上記(13)記載の分離方法。
【0019】
(17)上記アフィニティタグと目的物質との組み合わせ(アフィニティタグ/目的物質)が、抗体/ペプチド、抗体/抗原、抗体のフラグメント/抗原、核酸/核酸、タンパク質/核酸、ペプチド/ペプチド、タンパク質/タンパク質、薬物候補物質/タンパク質、グルタチオン/GST、マルトース/マルトース結合タンパク質、炭水化物/タンパク質、炭水化物誘導体/タンパク質、ペプチドタグ/金属イオン−金属キレート、ペプチド/NTA−Ni、プロテインA/抗体、プロテインG/抗体、プロテインL/抗体、Fcレセプター/抗体、ビオチン/アビジン、ビオチン/ストレプトアビジン、ジンクフィンガー/核酸、薬物候補物質/ペプチド、薬物候補物質/レセプター、および金属イオン/キレート剤/ポリアミノ酸からなる群から選択される少なくとも一種である上記(1)〜(16)のいずれかに記載の分離方法。
(18)上記アフィニティタグと目的物質との組み合わせ(目的物質/アフィニティタグ)が、抗体/ペプチド、抗体/抗原、抗体のフラグメント/抗原、タンパク質/核酸、薬物候補物質/タンパク質、炭水化物/タンパク質、炭水化物誘導体/タンパク質、ペプチドタグ/金属イオン−金属キレート、プロテインA/抗体、プロテインG/抗体、プロテインL/抗体、Fcレセプター/抗体、ビオチン/アビジン、ビオチン/ストレプトアビジン、ジンクフィンガー/核酸、薬物候補物質/ペプチド、および金属イオン/キレート剤/ポリアミノ酸からなる群から選択される少なくとも一種である上記(1)〜(16)のいずれかに記載の分離方法。
【0020】
(19)アフィニティタグと目的物質の相互作用が、抗体とペプチドの相互作用、抗体と抗原の相互作用、抗体のフラグメントと抗原の相互作用、核酸と核酸の相互作用、タンパク質と核酸の相互作用、ペプチドとペプチドの相互作用、タンパク質とタンパク質の相互作用、薬物候補物質とタンパク質の相互作用、グルタチオンとGSTの相互作用、マルトースとマルトース結合タンパク質の相互作用、炭水化物とタンパク質の相互作用、炭水化物誘導体とタンパク質の相互作用、ペプチドタグと金属イオン−金属キレートの相互作用、ペプチドとNTA−Niの相互作用、プロテインAと抗体の相互作用、プロテインGと抗体の相互作用、プロテインLと抗体の相互作用、Fcレセプターと抗体の相互作用、ビオチンとアビジンの相互作用、ビオチンとストレプトアビジンの相互作用、ジンクフィンガーと核酸の相互作用、薬物候補物質とペプチドの相互作用、薬物候補物質とレセプターの相互作用、および金属イオンとキレート剤とポリアミノ酸の相互作用からなる群から選択される少なくとも一種である上記(1)〜(16)のいずれかに記載の分離方法。
【0021】
(20)上記親水性物質または上記親水性物質/磁気成分複合体と水性二液分離可能な複合体を形成する凝集剤が、ポリアルキレングリコールである上記(1)〜(19)のいずれかに記載の分離方法。
(21)上記親水性物質または上記親水性物質/磁気成分複合体と水性二液分離可能な複合体を形成する凝集剤が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールランダムコポリマーおよびポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマーから選択される少なくとも一種である上記(20)記載の分離方法。
(22)上記親水性物質または上記親水性物質/磁気成分複合体と水性二液分離可能な複
合体を形成する凝集剤が、ポリエチレングリコールである上記(20)記載の分離方法。
【0022】
(23)上記親水性物質または上記親水性物質/磁気成分複合体と凝集剤とから得られる分子コンプレックス凝集体を、遠心分離により上澄から分離することを特徴とする上記(2)〜(22)のいずれかに記載の分離方法。
(24)上記親水性物質または上記親水性物質/磁気成分複合体と凝集剤とから得られる分子コンプレックス凝集体を、濾過分離により上澄から分離することを特徴とする上記(2)〜(22)のいずれかに記載の分離方法。
(25)上記親水性物質または上記親水性物質/磁気成分複合体と凝集剤とから得られる分子コンプレックス凝集体を、磁気分離により上澄から分離することを特徴とする上記(2)〜(22)のいずれかに記載の分離方法。
【0023】
(26)生理学的物質および化学物質から選択される少なくとも一つの目的物質と、該目的物質と相互作用により結合し得るアフィニティタグを固定した水溶性の親水性物質と、該親水性物質と混和することで水性二相分離を発現する水溶性の凝集剤とを含有する分子コンプレックス。
(27)生理学的物質および化学物質から選択される少なくとも一つの目的物質と、該目的物質と相互作用により結合し得るアフィニティタグを固定した水溶性の親水性物質と磁気成分との複合体と、該親水性物質と混和することで水性二相分離を発現する水溶性の凝集剤とを含有する分子コンプレックス。
(28)上記アフィニティタグが、二種以上の異なるアフィニティタグの連続体であることを特徴とする上記(26)または(27)記載の分子コンプレックス。
【0024】
(29)上記親水性物質がポリオールである上記(26)〜(28)のいずれかに記載の分子コンプレックス。
(30)上記親水性物質がポリサッカライドまたはポリサッカライド誘導体である上記(29)記載の分子コンプレックス。
(31)上記親水性物質がデキストラン、デキストリン、セルロース、アガロース、澱粉、カルボキシメチルセルロース、ジエチルアミノセルロース、ヒドロキシアセチルセルロース、ジエチルアミノエチルセルロース、ヒドロキシアセチルセルロース、プルラン、アミロースおよびゼラチン、アラビノースガラクタンから選択される少なくとも1種である上記(30)記載の分子コンプレックス。
(32)上記親水性物質がデキストランである上記(31)記載の分子コンプレックス。
【0025】
(33)上記親水性物質が水酸基を有する合成ポリオールである上記(29)記載の分子コンプレックス。
(34)上記親水性物質がポリビニルアルコールおよびポリアリルアルコールから選択される少なくとも1種である上記(33)記載の分子コンプレックス。
(35)上記親水性物質が水酸基を有する重合性単量体を重合して得られた合成ポリマーである上記(33)記載の分子コンプレックス。
(36)上記親水性物質が、重合性単量体としてアリルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール−モノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレートおよび2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルアクリレートから選択される少なくとも一種を重合して得られた合成ポリマーである上記(35)記載の分子コンプレックス。(37)上記親水性物質が、重合性単量体として、水酸基を保護された、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール−モノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレートおよび2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルアクリレートから選択される少なくとも一種を重合して得られた合成ポリマーから、該水酸基の保護基
を除去した合成ポリマーである上記(35)記載の分子コンプレックス。
【0026】
(38)上記親水性物質/磁気成分複合体における磁気成分が、マグネタイト、マグヘマイトおよびヘマタイトから選択される少なくとも一種を含有することを特徴とする上記(27)〜(37)のいずれかに記載の分子コンプレックス。
(39)上記親水性物質/磁気成分複合体が、磁気成分表面への親水性物質の物理的な吸着および化学的固定化の少なくともいずれか一方により得られることを特徴とする上記(38)記載の分子コンプレックス。
(40)上記親水性物質/磁気成分複合体が、親水性物質を含有する水溶液中での鉄イオンの共沈法によって調製されていることを特徴とする上記(38)記載の分子コンプレックス。
(41)上記親水性物質/磁気成分複合体における磁気成分が、ラテックス磁気ビーズである上記(38)記載の分子コンプレックス。
【0027】
(42)上記アフィニティタグと目的物質との組み合わせ(アフィニティタグ/目的物質)が、抗体/ペプチド、抗体/抗原、抗体のフラグメント/抗原、核酸/核酸、タンパク質/核酸、ペプチド/ペプチド、タンパク質/タンパク質、薬物候補物質/タンパク質、グルタチオン/GST、マルトース/マルトース結合タンパク質、炭水化物/タンパク質、炭水化物誘導体/タンパク質、ペプチドタグ/金属イオン−金属キレート、ペプチド/NTA−Ni、プロテインA/抗体、プロテインG/抗体、プロテインL/抗体、Fcレセプター/抗体、ビオチン/アビジン、ビオチン/ストレプトアビジン、ジンクフィンガー/核酸、薬物候補物質/ペプチド、薬物候補物質/レセプター、および金属イオン/キレート剤/ポリアミノ酸からなる群から選択される少なくとも一種である上記(26)〜(41)のいずれかに記載の分子コンプレックス。
【0028】
(43)アフィニティタグと目的物質の相互作用が、抗体とペプチドの相互作用、抗体と抗原の相互作用、抗体のフラグメントと抗原の相互作用、核酸と核酸の相互作用、タンパク質と核酸の相互作用、ペプチドとペプチドの相互作用、タンパク質とタンパク質の相互作用、薬物候補物質とタンパク質の相互作用、グルタチオンとGSTの相互作用、マルトースとマルトース結合タンパク質の相互作用、炭水化物とタンパク質の相互作用、炭水化物誘導体とタンパク質の相互作用、ペプチドタグと金属イオン−金属キレートの相互作用、ペプチドとNTA−Niの相互作用、プロテインAと抗体の相互作用、プロテインGと抗体の相互作用、プロテインLと抗体の相互作用、Fcレセプターと抗体の相互作用、ビオチンとアビジンの相互作用、ビオチンとストレプトアビジンの相互作用、ジンクフィンガーと核酸の相互作用、薬物候補物質とペプチドの相互作用、薬物候補物質とレセプターの相互作用、および金属イオンとキレート剤とポリアミノ酸の相互作用からなる群から選択される少なくとも一種である上記(26)〜(41)のいずれかに記載の分子コンプレックス。
【0029】
(44)上記親水性物質または上記親水性物質/磁気成分複合体と水性二液分離可能な複合体を形成する凝集剤が、ポリアルキレングリコールである上記(26)〜(43)のいずれかに記載の分子コンプレックス。
(45)上記親水性物質または上記親水性物質/磁気成分複合体と水性二液分離可能な複合体を形成する凝集剤が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールランダムコポリマーおよびポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマーから選択される少なくとも一種である上記(44)記載の分子コンプレックス。
(46)上記親水性物質または上記親水性物質/磁気成分複合体と水性二液分離可能な複合体を形成する凝集剤が、ポリエチレングリコールである上記(44)記載の分子コンプレックス。
【0030】
(47)上記親水性物質または上記親水性物質/磁気成分複合体と凝集剤とから得られる分子コンプレックス凝集体を、遠心分離により上澄から分離することを特徴とする上記(26)〜(46)のいずれかに記載の分子コンプレックス。
(48)上記親水性物質または上記親水性物質/磁気成分複合体と凝集剤とから得られる分子コンプレックス凝集体を、濾過分離により上澄から分離することを特徴とする上記(26)〜(46)のいずれかに記載の分子コンプレックス。
(49)上記親水性物質または上記親水性物質/磁気成分複合体と凝集剤とから得られる分子コンプレックス凝集体を、磁気分離により上澄から分離することを特徴とする上記(26)〜(46)のいずれかに記載の分子コンプレックス。
(50)上記分子コンプレックス凝集体を上澄から分離する工程によって、分離された該分子コンプレックス凝集体を水に再分散させて水溶液とする工程を含むことを特徴とする上記(1)または(2)記載の目的物質の分離方法。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、目的物質を迅速かつ効率よく濃縮することができる。特に本発明によれば、氷冷下においても迅速に目的物の回収が可能であり、熱に不安定なタンパク質などの生物学的物質を好適に回収することができる。
更に、本発明によれば、アフィニティタグおよび目的物質の活性を低下させることなく、分離条件を適宜設定して、容易に目的物質を分離することができる。
本発明の方法は、特に、薬物発見、生化学的研究、または分子生体学的研究において標的物質の濃縮工程で有効に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
<親水性物質>
本発明の水溶性の親水性物質は、磁性あるいは非磁性のいずれであっても良く、構造中に水酸基を有することが好ましく、構造中にポリオールを有することが特に好ましい。
ポリオールとしては、デキストラン、デキストリン、セルロース、アガロース、澱粉、ジェラン等のポリサッカライド類、カルボキシメチルセルロース、ジエチルアミノセルロース、ヒドロキシアセチルセルロース、ヒドロキシアセチルセルロース、カルボキシメチルデキストラン、ジエチルアミノエチルセルロース、ジエチルアミノエチルデキストラン等のポリサッカライド誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアリルアルコールなどの合成ポリオール、重合性単量体として、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール−モノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基を有する重合性単量体の少なくとも一種を重合成分として含有する重合体、酢酸エステル型、トリメチルシリルエーテル型、t−ブトキシカルボニルオキシ型の保護された水酸基を有するビニルアルコールを含む重合性単量体の少なくとも一種を重合成分として含有する重合体から水酸基の保護を除去して得られるポリビニルアルコールランダムコポリマーなどを挙げることができる。これらのポリオールは1種単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0033】
なかでも、ポリサッカライド類またはポリサッカライド誘導体等の糖骨格を含有する中性のポリマーが好ましい。具体的には、水性二相分配用の相を形成する作用を有するものであればよく、グルコース骨格などの糖骨格を含有する水溶性ポリマーであって、電気的に中性のポリマーであり、例えばデキストランなどの澱粉、より好ましくは、デキストランが挙げられる。デキストランとしては、実験により最適な重量平均分子量を持つものを選んで使用することができ、例えば重量平均分子量10,000〜100,000のもの、重量平均分子量60,000〜600,000のもの、さらには重量平均分子量67,300〜500,900のものが挙げられ、例えばシグマ社などから入手できる。
【0034】
親水性物質が磁気成分との複合体であって磁性を有する場合、親水性物質/磁気成分複合体に含有される磁気成分は、たとえば磁性微粒子であり、磁性金属微粒子、磁性酸化物微粒子などを挙げることができる。これらの磁性微粒子は、必要に応じて、希土類元素や遷移金属元素を含有していても良い。磁性金属微粒子としては、たとえば、Fe−Co、Fe−Ni、Fe−Al、Fe−Ni−Al、Fe−Co−Ni、Fe−Ni−Al−Zn、Fe−Al−Siなどの金属微粒子を挙げることができる。磁性酸化物微粒子として、FeOx(4/3≦x≦3/2)で表される酸化鉄(フェライト)型の強磁性微粒子、Feの一部がNi、Coで一部置換されたフェライトを挙げることができる。より具体的には、磁性微粒子の素材として、マグネタイト、酸化ニッケル、フェライト、コバルト鉄酸化物、バリウムフェライト、炭素鋼、タングステン鋼、KS鋼、希土類コバルト磁石、マグヘマイト、ヘマタイト等の微粒子を挙げることができる。なかでも、マグネタイト、マグヘマイトおよびヘマタイトが好ましく利用できる。これらの磁性微粒子の形状は、球状、針状、紡錘状、無定形のいずれでもよい。
【0035】
上記磁性微粒子は親水性物質、アフィニティタグなどへの親和性を高めるために表面処理を施しても良い。表面処理は、シラン系カップリング処理、チタン系カップリング処理、リン酸系カップリング処理、塩酸、硫酸などによる酸処理、水酸化ナトリウムなどによるアルカリ処理などの処理を行うことができる。
【0036】
磁性微粒子の沈降物が確認できるまでの時間が30秒程度の短時間でも良い場合、平均粒子径は1nm〜10μmである。上記磁性微粒子は水溶液中で均一に分散し、長時間において、沈降物が発生しないことが好ましく、平均粒子径は、1nm〜300nmであることが好ましい。
また、上記磁性微粒子がポリスチレンやポリメチルアクリレートのようなラテックスにより表面を被覆された磁気成分、ラテックスビーズ中に上記磁性微粒子が分散された磁気成分であっても良い。このラテックス磁気ビーズの平均粒子径は、20nm〜300nmであることが好ましい。
【0037】
磁性を有する親水性物質に関して、上記ポリオールと上記磁気成分の複合化様式としては、物理的な吸着や共有結合形成を挙げることができる。
また、磁性を有する親水性物質は、ポリオールを含む鉄イオン水溶液にアンモニア、水酸化ナトリウムなどのアルカリを添加する共沈法により得られる、ポリオールにより被覆されたフェライト微粒子を用いても良い(たとえば、特開平6−92640号公報参照)。
より具体的には、例えば米国特許第4452773号に記載されているように、デキストラン50質量%水溶液(10ml)中に、塩化第二鉄・六水和物(1.51g)および塩化第一鉄・四水和物(0.64g)混合水溶液(10ml)を加えて撹拌し、60〜65℃に水浴中で7.4(V/V)%アンモニア水溶液をpH10〜11程度になるように滴下しながら加熱し、15分反応させる方法により得ることができる。
【0038】
本発明で用いる磁性を有する親水性物質に求められる性状として、物質回収操作に際して、水溶液中で均一分散していることが挙げられる。磁性を有する親水性物質水溶液に凝集が発生した場合は、攪拌処理、超音波処理、加熱処理により、再分散して使用することができる。磁性を有する親水性物質は、上記操作後、1分以上水溶液として安定に均一分散し、凝集、沈殿を生じないことが望ましく、好ましくは、2週間以上、さらに好ましくは6ヶ月以上の期間、凝集、沈殿を生じないことが好ましい。
この経時変化は、たとえば、透明なサンプル瓶に磁性を有する親水性物質の水溶液を添加し、通常は、常温、好ましくは4℃から37℃の温度条件で静置し、一定期間ごとに沈査の発生を目視するか、もしくは10秒以内の磁気回収操作を行うことによって確認できる。
【0039】
磁性を有する親水性物質が水溶液中で均一分散している場合では、磁気回収操作を行っても、該水溶液は磁性流体として挙動し、磁気回収できない。一方、沈査が発生している場合は、上記条件で即座に沈査が回収されることから、確認は容易に行える。このような操作により、磁性を有する親水性物質の経時変化を確認することができる。
【0040】
<アフィニティタグ/目的物質>
本発明では、親水性物質に固定化されたアフィニティタグと、該アフィニティタグに結合する目的物質は特に限定されず、種々のものを適宜使用することができる。
【0041】
アフィニティタグとしては、ストレプトアビジン、単量体ストレプトアビジン、ストレプトアビジンの結合特性を有する分子、アビジン、単量体アビジン、アビジンの結合特性を有する分子、ストレプトアクチン、単量体ストレプトアクチン、ストレプトアクチンの結合特性を有する分子、エクストラビジン、単量体エクストラビジン、エクストラビジンの結合特性を有する分子、ニュートラビジン、単量体ニュートラビジン、ニュートラビジンの結合特性を有する分子、プロテインA、プロテインAの結合特性を有する分子、プロテインL、プロテインLの結合特性を有する分子、プロテインG、プロテインGの結合特性を有する分子、プロテインA/G、プロテインA/Gの結合特性を有する分子、プロテインL/A、プロテインL/Aの結合特性を有する分子、カルモデュリン、カルモデュリンの結合特性を有する分子、ビオチン、ビオチンの結合特性を有する分子、金属キレート、グルタチオン、アンチセンスDNA、オリゴdT、抗体等が挙げられる。
【0042】
本発明で用いることのできる親水性物質に固定化されたアフィニティタグと、吸着される目的物質との組み合わせの例としては、例えば、抗体/ペプチド、抗体/ 抗原、抗体フラグメント/抗原、抗体/抗原フラグメント、抗体フラグメント/抗原フラグメント、抗体/ハプテン、酵素/基質、酵素/インヒビター、酵素/補因子、タンパク質/基質、核酸/核酸、タンパク質/核酸、ペプチド/ペプチド、タンパク質/タンパク質、低分子/タンパク質、グルタチオン/GST、マルトース/マルトース結合タンパク質、糖質/タンパク質、糖質誘導体/タンパク質、金属結合タグ/金属/キレート、ペプチド/NTA、レクチン/糖質、レセプター/ホルモン、レセプター/エフェクター、相補的核酸/核酸、エフェクター/細胞表面レセプター、プロテインA/抗体、プロテインG/抗体、プロテインL/抗体、Fcレセプター/抗体、ビオチン/アビジン、ビオチン/ストレプトアビジン、薬物/レセプター、ジンクフィンガー/核酸、低分子/ペプチド、低分子/タンパク質、糖質/タンパク質(マルトース/MBP(マルトース結合タンパク質))、低分子/レセプター、または金属イオン/キレート剤、NTA/Ni2+/ポリアミノ酸タグ(例えば、ポリヒスチジン)、グルタチオン/GST、抗GFP/GFP融合タンパク質、またはMyc/Maxの組み合わせが挙げられる。
【0043】
<結合様式>
本発明においては、親水性物質にアフィニティタグを固定するための種々の方法を用いることができる。アフィニティタグは、適切な任意の手段(例えば、共有結合、水素結合、イオン結合または疎水結合)によって固定され得る。また、親水性物質とアフィニティタグの結合中に、本発明に記載の他のアフィニティタグ/目的物質の組み合わせを利用でき、アフィニティタグが二種以上の異なるアフィニティタグの連続体であってもよく、たとえば、ビオチン/アビジンの吸着を介して親水性物質と抗体とを結合させる場合、親水性物質−ビオチン/アビジン/ビオチン化された抗体の組み合わせが利用できる。
【0044】
ここで親水性物質とビオチンは共有結合により固定されていることが望ましく、たとえば、1級アミンを有するビオチン誘導体とアルデヒド基を有するデキストランを還元的アミノ化の手法により結合させる方法が挙げられる。アルデヒド基を有するデキストランは
、デキストランの還元末端をそのまま利用するか、アルカリ処理などの操作によりデキストランのグリコシド結合を開裂させて低分子量の末端にアルデヒド基を有するデキストランを発生させるか、もしくは過ヨウ素酸ナトリウムなどの酸化試薬を用いて、デキストラン構造中のビシナルジオールを発生することにより得られる。
【0045】
また、他の方法として、ポリオールにアルカリ条件下で、エピクロロヒドリンを反応させて、グリシジル基を有するデキストランとし、アミノ化ビオチンを反応させる方法、ポリオールにアルカリ存在下で、クロロ酢酸を反応させ、カルボキシメチル化ポリオールとした後、ジエチルアミノプロピルエチルカルボジイミド・イオダイド(WSC・I)存在下にアミンを有するビオチンと反応させる方法が挙げられる。上記アミノ化ビオチンのようにアフィニティタグがアミノ基、場合によっては水酸基、メルカプト基を有する場合は、上記と類似の方法により、親水性物質にアフィニティタグを導入できることは当業者にとって周知である。
【0046】
また、メルカプト基を有するアフィニティタグを親水性物質に固定する場合は、マレイミドを構造中に導入した親水性物質と該アフィニティタグを混和することで、簡便に達成できる。マレイミド基を導入する際には、たとえば、スルホサクシンイミジル−4−[N−マレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシレート(sulfo−SMCC、1mg、Pierce製)を用いる方法が簡便である。
【0047】
結合させる目的物質としては、抗体分子などのタンパク質、核酸、多糖類などを挙げることができる。これら生体高分子は、通常、そのままではメルカプト基を有さないので、下記のような処理が施される。タンパク質の場合は、その中に含有される−SS−結合を還元することにより、メルカプト基に変換することができる。また、核酸の場合、例えばヌクレオチドを構成する塩基が有するアミノ基を2−イミノチオランと反応させてチオール化することにより、SH基を導入することができる。また、多糖類の場合、例えばアミノ糖が有するアミノ基を2−イミノチオランと反応させてチオール化することにより、SH基を導入することができる。これらの処理方法は、それ自体公知であり、Traut and Kenney 1977 Protein Crosslinking, Plenum Pub.Co.、およびKing et al.,1978 Biochemistry vol 17,1499に記載されている。
【0048】
本発明にあっては、固定するアフィニティタグは、元の生体高分子を部分分解して得られるフラグメント(断片)または大腸菌などで生産された組換え抗体分子フラグメントであってもよい。ここで、部分分解とは、生体高分子を完全に分解することなく、一部を分解して複数個のフラグメントを得る処理をいう。従って、本発明では、例えば抗体分子を部分分解して、または大腸菌などにより組換え抗体分子フラグメントを生産して、生理活性を有する構造を含むフラグメントを得、必要に応じてSH基に変換する処理を行ったのち、生体高分子としての該フラグメントを親水性物質に固定することができる。親水性物質とアフィニティタグとを接触させマレイミド基とSH基を反応させることにより、アフィニティタグが固定化された親水性物質が得られる。
【0049】
<凝集剤>
本発明においては、親水性物質を簡便に回収可能とするための手法として、親水性物質と分子コンプレックスを形成し凝集体を形成する凝集剤が使用される。
本発明において凝集剤とは、上記親水性物質と分子コンプレックスを形成可能な物質であり、たとえば、ポリアルキレングリコール構造を有する物質が挙げられ、具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ランダムコポリマー、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ブロックコポリマーが挙げられる。
【0050】
また、本発明の他の実施形態として、ポリ−メトキシエトキシ(メタ)アクリレート、ポリ−ジエチレングリコール−(メタ)アクリレート−メチルエーテル、ポリ−トリエチレングリコール−(メタ)アクリレート−メチルエーテル、ポリ−テトラエチレングリコール−(メタ)アクリレート−メチルエーテル、およびこれらのランダムおよびブロックコポリマーもまた凝集剤として挙げることができる。
【0051】
なかでも、「ポリアルキレングリコール」としては、水性二相分配用の相を形成する作用を有するものであればよく、より親水性ポリマーあるいはより疎水性ポリマーと組み合わせることにより、分配用の相を形成することが知られたものが挙げられる。該ポリアルキレングリコールは、水溶性のもので、実験により最適なものを決定し、それを選んで使用することができ、好ましくはポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、より好ましくは、ポリエチレングリコールである。該ポリエチレングリコールは、実験により最適な分子量を持つものを選んで使用することができ、例えばおおよそ200〜25,000の範囲の数平均分子量を持つもの、好ましくは約3,000〜20,000、より好ましくは約6,000〜15,000、もっと好ましくは約8,000〜10,000の範囲の数平均分子量を持つものが挙げられ、例えばシグマ社、和光純薬などから入手できる。
【0052】
凝集剤は粉末のまま使用することもできるが、好ましくは水溶液として用いることが好ましく、この場合の凝集剤濃度は好ましくは30質量%以下である。この濃度以上では、粘度が高くなりすぎるなど、扱いが難しくなり、とくに少量を分取する際に大きな問題となる。親水性物質との凝集体を形成するために、凝集剤濃度を上げる必要があるなど、凝集剤を粉末として使用する必要がある場合には、水から凍結乾燥したものを利用することが望ましい。
【0053】
<目的物質の回収>
アフィニティタグを固定した親水性物質は、水もしくはリン酸ナトリウムバッファー、TRISバッファー、サリンバッファーなどに溶解させた後、目的物質を含むと予想されるサンプルと混和し、軽く攪拌した後、10秒〜15分程度インキュベートすることにより、目的物質を吸着することができる。粘度の高いサンプルを用いた場合など、目的物質の吸着に時間を要すると考えられる場合は、混和、攪拌操作、インキュベートの時間を1時間程度まで延長する必要がある。これらの操作は室温で行っても良いが、目的物質の性状にあわせて、氷冷下で行っても良い。
【0054】
<凝集体の形成>
本発明において、凝集体である親水性物質と凝集剤の分子コンプレックスは、親水性物質の水溶液と凝集剤の水溶液を加え、適切な方法で混和することによって形成される。本発明に使用できる混和方法として、マグネティックスターラーによる攪拌、メカニカルスターラーによる攪拌、ボルテックスミキサーによる混和、タッピングによる混和などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0055】
親水性物質と目的物質および凝集剤の混合液に対して、凝集剤の添加量は、乾燥質量で1〜20%程度が良好である。特に好ましくは、凝集剤が6〜12質量%の場合である。この操作は室温で行っても良いが、目的物質の性状にあわせて、氷冷下で行っても良い。
【0056】
<凝集体の回収>
本発明において、得られた凝集体の回収は、遠心分離操作と上澄除去によるペレット化、濾過分離操作による液体除去によるペレット化等により、行うことができる。また、磁気成分を含む親水性物質を用いた場合は、上記の回収方法のほかに凝集体の回収方法として、磁気分離によるペレット化を挙げることができる。この操作は室温で行っても良いが、目的物質の性状にあわせて、氷冷下で行っても良い。
【0057】
水性二相を構成する液相系は、それを攪拌してよく混合する。攪拌混合処理は、当業者に知られた手法を適用でき、例えば、容器を手で上下に激しく数回振ることにより行ってもよいし、あるいはハンドミキサー(例えば、immuno mixer; シノテスト社) を使用して、30秒程度それにかけることにより行ったり、その両者を組み合わせて行ってもよい。攪拌混合処理された液体を含有する容器は、遠心分離に付すことにより凝集体を回収することができる。遠心分離の処理条件は、実験により適切な条件を選択することができ、二相に相分離させることができる条件であれば特に限定されることなく条件を選ぶことができ、例えば、約5,000〜8,000rpm、より好ましくは約6,000〜7,000rpmで、約1〜60分間、より好ましくは約5〜20分間、さらに好ましくは約8〜15分間処理し、二相に相分離させることができる。相分離させた二相のうち、上相は、ポリアルキレングリコールに富んだ相であり、本相に目的物質を抽出採取することができる。相分離させた二相系から上相を採取するのは、例えばマイクロピペットなどを使用して行うことができる。
【0058】
分離した上相は、必要に応じて洗浄処理を施すことができる。同様に、分離した下相についても、再度抽出分離処理をして、その結果、得られた上相を最初に得られた該上相を併せた後、洗浄処理を施すこともできるが、こうした再抽出分離処理を組み合わせると、操作が煩雑になるというマイナスが生じる。該分離した上相の洗浄処理は、先ず該上相に少なくとも糖骨格を含有する中性のポリマーと混合することにより行われる。上相は、上記相分離させた二相系から採取されたものを、直ぐに使用してもよいし、あるいは採取後一旦保存されていたものを使用してもよく、通常、採取された上相はそれを濃縮などすることなくそのまま使用される。上記上相と混合される成分は、それが固体状態で使用してもよいが、通常、好ましくは、水溶液で使用する。分離した上相の洗浄処理系において、洗浄液には、適したイオン成分が含まれていてもよい。好適なイオン成分としては、上記したリン酸イオンが挙げられる。
【0059】
該分離した上相の洗浄処理系を構成する液相系は、それを攪拌してよく混合する。攪拌混合処理は、当業者に知られた手法を適用でき、例えば、上記水性二相分配系におけると同様にして行ってよい。次に該攪拌混合処理された液体を含有する容器は、通常、遠心分離に付される。遠心分離の処理条件は、実験により適切な条件を選択することができ、二相に相分離させることができる条件であれば特に限定されることなく条件を選ぶことができ、例えば、上記水性二相分配系における遠心分離と同様にして行うことができる。目的物質を含んでいる相を採取するのは、上記と同様にして、例えばマイクロピペットなどを使用して行うことができる。
【0060】
<再処理と精製>
上記分離操作において、ペレット中に上澄成分が残存していることがある。回収される目的物質の純度を上げるためには、得られたペレットを再分散させ、再度凝集操作、凝集体の回収操作を行う方法等を採用することができる。
【0061】
<凝集体の再分散>
得られたペレットは、分子コンプレックス凝集体の塊であり、このペレットは、水に再分散させて、水溶液として使用することができる。なお、この水は、純水だけでなく、リン酸ナトリウムバッファー、TRISバッファー、サリンバッファーであってもよい。
【0062】
<具体的濃縮方法>
以下に、種々の目的物質/アフィニティタグの組み合わせにおける本発明の濃縮方法を更に具体的に詳述する。
【0063】
A.親水性物質とアフィニティタグを固定した態様
親水性物質とアフィニティタグの結合部分は、各種の一般的な結合方法によって結合可能である。結合方法としては、限定的ではないが、化学的修飾、共有結合、強イオンまたは水素結合、リンカーの使用などが含まれる。好ましい方法は標準的な臭化シアン(CNBr)結合を使用している。この結合は親水性物質をCNBrで処理した後、アフィニティタグを加え、インキュベーションすることによって達成される。アフィニティタグのアミノ基はCNBrリンカーに共有結合によって結合する。
【0064】
結合処理するための別の方法としては、過ヨウ素酸ナトリウムによる親水性物質のアルデヒド化とアフィニティタグのアミノ基によるイミン形成、続くシアノホウ化水素ナトリウムもしくはホウ化水素ナトリウムによる処理による2級アミンへの変換する還元的アミノ化の手法により結合を形成することが可能である。
限定的ではないが、過酸化水素、エピクロロヒドリン、1,4−ブタンジオールジグリシドールエーテル、塩化シアヌル、カルボニルジイミダゾール、ヒドロキシサクシンイミドエステル、置換塩化スルホニル、またはフルオロメチルピリジニウム塩、および同様な方法で適合された抗原が含まれる。
【0065】
上記手法により調製された親水性物質と抗体の複合物を用いて、タンパクを濃縮する方法は下記のとおりである。
1)目的タンパク質の生産菌を培養し、得られた細胞懸濁液を破砕し、細胞破砕懸濁液を調製する。
2)目的タンパク質のポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を調製し、親水性物質に結合させる。
3)目的タンパク質を捕獲可能な抗体の結合した親水性物質と目的タンパク質を含む細胞破砕懸濁液を加え、混合液とし、目的タンパク質/抗体−親水性物質の結合体を生成させる。
4)前記混合液に凝集剤を加え、攪拌もしくはピペッティングを行い、目的タンパク質/抗体−親水性物質/凝集剤の複合体を凝集させる。
5)遠心分離装置を用いて、凝集物を沈降させ、上澄をピペットなどにより注意深く除去する。
6)目的によっては、結合体からタンパク質を分離し、また、標識抗体などで目的タンパク量を定量する。
【0066】
上記手法により調製された親水性物質とグルタチオンの複合物を用いて、グルタチオン−(S)−トランスフェラーゼ(GST)融合タンパクを濃縮する方法は下記のとおりである。
1)グルタチオン−(S)−トランスフェラーゼ融合タンパクを生産するように形質転換した生産菌を培養し、得られた細胞懸濁液を破砕し、細胞破砕懸濁液を調製する。
2)グルタチオンの結合した親水性物質とグルタチオン−(S)−トランスフェラーゼ融合タンパク質を含む細胞破砕懸濁液を加え、混合液とし、グルタチオン−(S)−トランスフェラーゼ融合タンパク質/グルタチオン−親水性物質の結合体を生成させる。
3)前記混合液に凝集剤を加え、攪拌もしくはピペッティングを行い、グルタチオン−(S)−トランスフェラーゼ融合タンパク質/グルタチオン−親水性物質/凝集剤の複合体を凝集させる。
4)遠心分離装置を用いて、凝集物を沈降させ、上澄をピペットなどにより注意深く除去する。
5)目的によっては、結合体からタンパク質を分離、もしくはグルタチオン−(S)−トランスフェラーゼと目的タンパクの切り出しを行い、また、標識抗体などで目的タンパク量を定量する。
【0067】
上記手法により調製された親水性物質とイミノジ酢酸ニッケルの複合物を用いて、ヒス
チジン−タグ融合タンパクを濃縮する方法は下記のとおりである。
1)ヒスチジン−タグ融合タンパクを生産するように形質転換した生産菌を培養し、得られた細胞懸濁液を破砕し、細胞破砕懸濁液を調製する。
2)ビオチンを結合させた親水性物質と、アビジンを含むサリンバッファーを加えて混合液とし、親水性物質−ビオチン/アビジン複合体を形成させる。さらに上記複合体に、ビオチン−イミノジ酢酸ニッケルを加えて、親水性物質−ビオチン/アビジン/ビオチン−イミノジ酢酸ニッケル複合体を形成させる。
3)親水性物質−ビオチン/アビジン/ビオチン−イミノジ酢酸ニッケル複合体と、ヒスチジン−タグ融合タンパクを含む細胞破砕懸濁液を加え、混合液とし、親水性物質−ビオチン/アビジン/ビオチン−イミノジ酢酸ニッケル複合体/ヒスチジン−タグ融合タンパクの結合体を生成させる。
4)前記混合液に凝集剤を加え、攪拌もしくはピペッティングを行い、親水性物質−ビオチン/アビジン/ビオチン−イミノジ酢酸ニッケル複合体/ヒスチジン−タグ融合タンパク/凝集剤の複合体を凝集させる。
5)遠心分離装置を用いて、凝集物を沈降させ、上澄をピペットなどにより注意深く除去する。
6)目的によっては、結合体からイミノジ酢酸ニッケル融合タンパクを分離、また、標識抗体などで目的タンパク量を定量する。
【0068】
上記手法により調製された親水性物質とアンチセンスDNAの複合物を用いて、目的DNAを濃縮する方法は下記のとおりである。
1)目的DNAを含有する細胞破砕懸濁液を調製する。
2)目的DNAと相補的な配列を有するDNAを親水性物質に結合させる。
3)目的DNAと相補的な配列を有するDNAを結合させた親水性物質と目的DNAを含む細胞破砕懸濁液を加えてハイブリダイズさせ、目的DNA/目的DNAと相補的な配列を有するDNA−親水性物質の結合体を生成させる。
4)前記混合液に凝集剤を加え、攪拌もしくはピペッティングを行い、目的DNA/目的DNAと相補的な配列を有するDNA−親水性物質/凝集剤の複合体を凝集させる。
5)遠心分離装置を用いて、凝集物を沈降させ、上澄をピペットなどにより注意深く除去する。
6)目的によっては、結合体から目的DNAを分離し、また、標識用DNAなどで目的DNA量を定量する。
【0069】
上記手法により調製された親水性物質とオリゴdTの複合物を用いて、mRNAを濃縮する方法は下記のとおりである。
1)目的mRNAを含有する細胞破砕懸濁液を調製する。
2)オリゴdTを親水性物質に結合させる。
3)オリゴdTを結合させた親水性物質とmRNAを含む細胞破砕懸濁液を加えてハイブリダイズさせ、mRNA/オリゴdT−親水性物質の結合体を生成させる。
4)前記混合液に凝集剤を加え、攪拌もしくはピペッティングを行い、mRNA/オリゴdT−親水性物質/凝集剤の複合体を凝集させる。
5)遠心分離装置を用いて、凝集物を沈降させ、上澄をピペットなどにより注意深く除去する。
6)目的によっては、結合体からmDNAを分離し、また、ブロッティングの手法により定量する。
【0070】
B.リンカーを介しての親水性物質とアフィニティタグを固定した態様
親水性物質とアフィニティタグを結合させるためには、上記のような共有結合を用いるかわりに、アビジン/ビオチン−セットなどの標準的なリンカーも使用可能である。アビジン/ビオチンおよびそれらの誘導体を用いる場合には、親水性物質およびアフィニティ
タグにそれぞれビオチンあるいはアビジンを導入しておく必要がある。
親水性物質とアフィニティタグを結合させるためにリンカーを用いるほかは、上記Aの態様と同様である。
【0071】
C.親水性物質/磁気成分複合体とアフィニティタグを固定した態様
従来知られている方法により、磁性を付与した親水性物質を得ることができる。
磁性を付与した親水性物質とアフィニティタグの結合部分は、各種の一般的な結合方法によって結合可能である。結合方法としては、限定的ではないが、化学的修飾、共有結合、強イオンまたは水素結合、リンカーの使用などが含まれる。好ましい方法は標準的な臭化シアン(CNBr)結合を使用している。この結合は親水性物質をCNBrで処理した後、アフィニティタグを加えた後、インキュベーションすることによって達成される。アフィニティタグのアミノ基はCNBrリンカーに共有結合によって結合する。
【0072】
結合処理するための別の方法としては、過ヨウ素酸ナトリウムによる親水性物質のアルデヒド化とアフィニティタグのアミノ基によるイミン形成、続くシアン化ホウ素ナトリウムもしくは水素化ホウ素ナトリウムによる処理による2級アミンへの変換する還元的アミノ化の手法により結合を形成することが可能である。
限定的ではないが、過酸化水素、エピクロロヒドリン、1,4−ブタンジオールジグリシドールエーテル、塩化シアヌル、カルボニルジイミダゾール、ヒドロキシサクシンイミドエステル、置換塩化スルホニル、またはフルオロメチルピリジニウム塩、および同様な方法で適合された抗原が含まれる。
【0073】
アフィニティタグを結合させた磁性微粒子/親水性物質の複合体は磁石によって回収することはできないが、凝集剤を添加してアフィニティタグを結合させた磁性微粒子/親水性物質/凝集剤の複合体とすることによって、磁石での回収が可能となる。
この際、磁性を付与した親水性物質によって捕獲されていない物質は、磁気回収されないため、物質の濃縮とともに、精製できる。
【0074】
上記手法により調製された磁性を付与された親水性物質と抗体の複合物を用いて、タンパクを濃縮する方法は下記のとおりである。
1)目的タンパク質の生産菌を培養し、得られた細胞懸濁液を破砕し、細胞破砕懸濁液を調製する。
2)目的タンパク質のポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を調製し、磁性を付与された親水性物質に結合させる。
3)目的タンパク質を捕獲可能な抗体の結合した磁性を付与された親水性物質と目的タンパク質を含む細胞破砕懸濁液を加え、混合液とし、目的タンパク質/抗体−磁性を付与された親水性物質の結合体を生成させる。
4)前記混合液に凝集剤を加え、攪拌もしくはピペッティングを行い、目的タンパク質/抗体−磁性を付与された親水性物質/凝集剤の複合体を凝集させる。
5)ネオジ磁石を用いて凝集を磁気回収し、上澄をピペットなどにより注意深く除去する。
6)目的によっては、結合体からタンパク質を分離し、また、標識抗体などで目的タンパク量を定量する。
【0075】
上記手法により調製された磁性を付与された親水性物質とグルタチオンの複合物を用いて、グルタチオン−(S)−トランスフェラーゼ融合タンパクを濃縮する方法は下記のとおりである。
1)グルタチオン−(S)−トランスフェラーゼ融合タンパクを生産するように形質転換した生産菌を培養し、得られた細胞懸濁液を破砕し、細胞破砕懸濁液を調製する。
2)グルタチオンの結合した磁性を付与された親水性物質とグルタチオン−(S)−ト
ランスフェラーゼ融合タンパク質を含む細胞破砕懸濁液を加え、混合液とし、グルタチオン−(S)−トランスフェラーゼ融合タンパク質/グルタチオン−磁性を付与された親水性物質の結合体を生成させる。
3)前記混合液に凝集剤を加え、攪拌もしくはピペッティングを行い、グルタチオン−(S)−トランスフェラーゼ融合タンパク質/グルタチオン−磁性を付与された親水性物質/凝集剤の複合体を凝集させる。
4)ネオジ磁石を用いて凝集を磁気回収し、上澄をピペットなどにより注意深く除去する。
5)目的によっては、結合体からタンパク質を分離、もしくはグルタチオン−(S)−トランスフェラーゼと目的タンパクの切り出しを行い、また、標識抗体などで目的タンパク量を定量する。
【0076】
上記手法により調製された磁性を付与された親水性物質とイミノジ酢酸ニッケルの複合物を用いて、ヒスチジン−タグ融合タンパクを濃縮する方法は下記のとおりである。
1)ヒスチジン−タグ融合タンパクを生産するように形質転換した生産菌を培養し、得られた細胞懸濁液を破砕し、細胞破砕懸濁液を調製する。
2)ビオチンを結合させた親水性物質と、アビジンを含むサリンバッファーを加えて混合液とし、親水性物質−ビオチン/アビジン複合体を形成させる。さらに上記複合体に、ビオチン−イミノジ酢酸ニッケルを加えて、親水性物質−ビオチン/アビジン/ビオチン−イミノジ酢酸ニッケル複合体を形成させる。
3)前記混合液に凝集剤を加え、攪拌もしくはピペッティングを行い、ヒスチジン−タグ融合タンパク/イミノジ酢酸ニッケル−磁性を付与された親水性物質/凝集剤の複合体を凝集させる。
4)ネオジ磁石を用いて凝集を磁気回収し、上澄をピペットなどにより注意深く除去する。
5)目的によっては、結合体からイミノジ酢酸ニッケル融合タンパクを分離、また、標識抗体などで目的タンパク量を定量する。
【0077】
上記手法により調製された磁性を付与された親水性物質とアンチセンスDNAの複合物を用いて、目的DNAを濃縮する方法は下記のとおりである。
1)目的DNAを含有する細胞破砕懸濁液を調製する。
2)目的DNAと相補的な配列を有するDNAを磁性を付与された親水性物質に結合させる。
3)目的DNAと相補的な配列を有するDNAを結合させた磁性を付与された親水性物質と目的DNAを含む細胞破砕懸濁液を加えてハイブリダイズさせ、目的DNA/目的DNAと相補的な配列を有するDNA−磁性を付与された親水性物質の結合体を生成させる。
4)前記混合液に凝集剤を加え、攪拌もしくはピペッティングを行い、目的DNA/目的DNAと相補的な配列を有するDNA−磁性を付与された親水性物質/凝集剤の複合体を凝集させる。
5)ネオジ磁石を用いて凝集を磁気回収し、上澄をピペットなどにより注意深く除去する。
6)目的によっては、結合体から目的DNAを分離し、また、標識用DNAなどで目的DNA量を定量する。
【0078】
上記手法により調製された磁性を付与された親水性物質とオリゴdTの複合物を用いて、mRNAを濃縮する方法は下記のとおりである。
1)目的mRNAを含有する細胞破砕懸濁液を調製する。
2)オリゴdTを磁性を付与された親水性物質に結合させる。
3)オリゴdTを結合させた磁性を付与された親水性物質とmRNAを含む細胞破砕懸
濁液を加えてハイブリダイズさせ、mRNA/オリゴdT−磁性を付与された親水性物質の結合体を生成させる。
4)前記混合液に凝集剤を加え、攪拌もしくはピペッティングを行い、mRNA/オリゴdT−磁性を付与された親水性物質/凝集剤の複合体を凝集させる。
5)ネオジ磁石を用いて凝集を磁気回収し、上澄をピペットなどにより注意深く除去する。
6)目的によっては、結合体からmDNAを分離し、また、ブロッティングの手法により定量する。
【0079】
D.リンカーを介して、親水性物質/磁気成分複合体とアフィニティタグを固定した態様
親水性物質とアフィニティタグを結合させるためにリンカーを用いるほかは、上記Cの態様と同様である。
【実施例】
【0080】
以下に本発明を実施例により例証するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
検討に用いた試薬のうち、下記のものは以下のようにして調製した。
(6−アミノヘキシルビオチンアミドの合成)
窒素ライン、還流塔、マグネティックスターラーバーを装備した100mL二口フラスコに、ビオチン−N−ヒドロキシサクシンイミドエステル(1.0g)、DMF(18mL)を加え、懸濁液とした。窒素雰囲気下、60℃で攪拌し、均一に溶解させた。1.6−ヘキサメンチレンジアミン(2.5g)を加えた後、60℃で3.5時間攪拌した後、室温に戻した。攪拌下、酢酸エチル(150mL)を加え、析出した白色粉末を減圧下メンブランフィルターを用いて吸引濾過し、酢酸エチル(50mL)で3度、ジエチルエーテル(20mL)で2度洗浄した。得られた白色粉末をジエチルエーテル(20mL)に懸濁させ、30分攪拌した後、再度減圧下吸引濾過を行った。得られた白色粉末を減圧化、40℃で乾燥させた。収量1.12g。
【0081】
(ポリエチレングリコール水溶液の調製)
マグネティックスターラーバーを装備した150mLガラス瓶に、ポリエチレングリコール(6KDa、2.5g)、超純水(97.5g)、ジエチルピロカーボネート(0.1mL)を加えた後、蓋を閉めて室温で一昼夜攪拌した。120℃40分の条件でオートクレーブ滅菌した。
【0082】
(塩化鉄水溶液の調製)
マグネティックスターラーバーを装備した500mLのビーカーに塩化第二鉄・六水和物(81.9g) および塩化第一鉄・四水和物(29.8g)、超純水(188.3g)を入れ、窒素をバブリングしながら室温で2時間攪拌して均一に溶解させた。得られた溶液を減圧下吸引濾過し、得られた黄褐色液を300mLにメスアップした。なお、超純水は、ミリポア製Direct−Q(商品名)を使用して調製した。
【0083】
実施例1
末端ビオチン化デキストランの合成とアビジン回収を、以下の方法で行った。
マグネティックスターラーバーを装備した50mLナス方フラスコに、デキストラン(40KDa、1.0g)、超純水(10mL)を加え、攪拌して均一に溶解させた。別途、マグネティックスターラーバーを装備した10mLビーカーに実施例2の6−アミノヘキシルビオチンアミド(50mg)、DMF(9.95g)を加え、均一に溶解させた。6−アミノヘキシルビオチンアミドDMF溶液(2g)をデキストラン水溶液に加えた。反応液に窒素を5分間バブリングさせた後、活栓にて反応容器を封止し、室温で1週間攪拌した。
減圧化溶媒を完全に留去し、超純水(10mL)を加え、3時間攪拌を行い、減圧下メンブランフィルターを用いて吸引濾過を行った。超純水(5mL)で2度洗浄を行い、得られた濾液を100mLナス型フラスコに移し、凍結乾燥させた。収量998mg。ビオチン導入量(10μmol/mL、Biotin Quantitation Kit(Pierce製)で測定)
得られたビオチン導入デキストラン(10mg)を超純水(990mg)に溶解させた液(10μL)を1.5mLスクリューキャップチューブに移し、アビジンのサリンバッファー(0.1g/mL、50μL)を加えて、ボルテックスミキサーを用いて10秒間攪拌した。ポリエチレングリコール水溶液(30μL)を加え、ボルテックスミキサーを用いて10秒間攪拌し、凝集体を発生させた。ネオジ磁石をスクリューキャップチューブの側面に配し、5分間静置し凝集体をペレットとした。ピペッターを用いて、上澄を注意深く除去した。SDS−PAGEによりペレット画分にアビジンのバンドを確認した。
【0084】
実施例2
ビオチン導入デキストラン被覆マグネタイトの調製(米国特許第452773号に記載されている方法)、アビジン回収を、下記の方法により行った。
メカニカルスターラー、還流塔、窒素ラインを装備した2L3つ口フラスコにデキストラン(和光純薬製、40KDa)の5.0質量%水溶液(1L)を入れ、攪拌下65℃に加熱した。上記塩化鉄水溶液(100mL)を滴下し、滴下終了後10分間攪拌した後、pH10〜11程度になるように28質量%アンモニア水溶液を滴下しながら、30分間攪拌した。この溶液を減圧下吸引濾過し、得られた濾液の一部(100mL)に対して、イオン交換水(5L)を用いた透析操作を、3時間を4度と12時間を1度とを1サイクルとして、2サイクル行った。この操作で平均粒子径が102±15.4nmの、デキストランが固定された磁性微粒子が得られた。
【0085】
アルデヒド基を有するデキストラン被覆マグネタイトを調製するために、メカニカルスターラー、還流塔、窒素ラインを装備した200mL3つ口フラスコに上記方法で調製したデキストラン被覆マグネタイト水溶液(100mL)を加え、過ヨウ素酸ナトリウム(10mg)を超純水(1mL)に溶解させたものを添加し、50℃で5時間攪拌を行い、室温へ冷却した。
この磁性微粒子は特に精製せずに次の反応に用いた。平均粒子径は110±15.7nmであった。
【0086】
ビオチンを導入したデキストラン被覆マグネタイトを調製するために、マグネティックスターラーバーを装備した20mLナス型フラスコに、上記で調製したアルデヒド基を有するデキストラン被覆マグネタイト水溶液(10mL)を入れた。
別途、8mL試験管に6−アミノヘキシルビオチンアミド(10mg)、DMF(1.99g)を入れ、60℃まで加熱した後、超音波処理を行い、均一に溶解させた。6−アミノヘキシルビオチンアミドDMF溶液(500mg)を上記20mLナス型フラスコに入れ、窒素を5分間バブリングした後、活栓をして24時間攪拌した。
別途、8mL試験管に水素化ホウ素ナトリウム(10mg)を超純水(1mL)に溶解させた発泡液の一部(1mL)を上記20mLナス型フラスコに添加した。20mLナス型フラスコに綿詮で蓋をし、24時間攪拌した。
この溶液を減圧下吸引濾過し、得られた濾液に対して、イオン交換水(500mL)を用いた透析操作を、1時間を3度と19時間を1度行った。この操作で平均粒子径が109±37nmの、ビオチンが導入され、またデキストランが固定化された磁性微粒子が得られた。
ビオチン導入量(420nmol/mL、Biotin Quantitation Kit(Pierce製)で測定)
【0087】
得られたビオチン導入デキストラン被覆マグネタイト水溶液(10μL)を1.5mL
スクリューキャップチューブに移し、アビジンのサリンバッファー(0.1g/mL、50μL)を加えて、ボルテックスミキサーを用いて10秒間攪拌した。ポリエチレングリコール水溶液(30μL)を加え、ボルテックスミキサーを用いて10秒間攪拌し、凝集体を発生させた。ネオジ磁石をスクリューキャップチューブの側面に配し、5分間静置し凝集体をペレットとした。このとき上澄は無色透明であり、ビオチン導入デキストラン被覆マグネタイトが良好に分離されていることを確認した。ピペッターを用いて、上澄を注意深く除去した。SDS−PAGEにより磁気ペレット画分にアビジンのバンドを確認した。
【0088】
実施例3
ポリビニルアルコール被覆マグネタイトの調製と磁気分離は、下記の方法で行った。
メカニカルスターラー、還流塔、窒素ラインを装備した100mL3つ口フラスコにポリオールであるポリビニルアルコール(和光純薬社製、分子量22KDa)の1質量%水溶液(60mL)を入れ、メカニカルスターラーで攪拌し、この混合溶液を50℃に昇温した後、pH10〜11程度になるように28質量%アンモニア水溶液を滴下しながら、1時間攪拌した。この溶液を減圧下吸引濾過し、得られた濾液の一部(100mL)に対して、イオン交換水(5L)を用いた透析操作を、3時間を4度と12時間を1度とを1サイクルとして、2サイクル行った。この操作で平均粒子径が50±23.4nmのポリビニルアルコールが固定された磁性微粒子が得られた。
【0089】
得られたポリビニルアルコール被覆マグネタイト水溶液(10μL)を1.5mLスクリューキャップチューブに移し、サリンバッファー(50μL)を加えて、ボルテックスミキサーを用いて10秒間攪拌した。ポリエチレングリコール水溶液(30μL)を加え、ボルテックスミキサーを用いて10秒間攪拌し、凝集体を発生させた。ネオジ磁石をスクリューキャップチューブの側面に配し、5分間静置し凝集体をペレットとした。このとき、上澄は透明であり、上記手法により、良好にポリビニルアルコール被覆マグネタイトが分離可能であることを確認した。
【0090】
実施例4
グリシジル基を導入したデキストラン被覆マグネタイトの調製と凝集体形成および磁気分離性能の確認を、下記の方法で行った。
還流塔、マグネティックスターラーバーを装備した20mLナス型フラスコに実施例5のデキストランが固定化されたマグネタイト水溶液(10mL)、エピクロロヒドリン(100mg)、トリエチルアミン(1g)を加え、60℃で加熱しながら8時間強攪拌した。反応液に酢酸エチル(15mL)を加え、分液操作を行った。水層に対してさらに酢酸エチル(15mL)で2度洗浄を行った。
水層を50mLナス型フラスコへ移し、減圧下溶媒を留去し、水の蒸発が確認できた段階で濃縮を停止した。得られた水層に対してイオン交換水(500mL)を用いた1時間の透析操作を4度行った。この操作で平均粒子径が102±15.4nmの、グリシジル基が導入されたデキストラン被覆磁性微粒子が得られた。
【0091】
得られたグリシジル導入デキストラン被覆マグネタイト水溶液(10μL)を1.5mLスクリューキャップチューブに移し、サリンバッファー(50μL)を加えて、ボルテックスミキサーを用いて10秒間攪拌した。ポリエチレングリコール水溶液(30μL)を加え、ボルテックスミキサーを用いて10秒間攪拌し、凝集体を発生させた。ネオジ磁石をスクリューキャップチューブの側面に配し、5分間静置し凝集体をペレットとした。このとき、上澄は透明であり、上記手法により、良好にグリシジル導入デキストラン被覆マグネタイトが分離可能であることを確認した。
【0092】
実施例5
アミノ基を導入したデキストラン被覆マグネタイトの調製と凝集体形成および磁気分離
性能の確認を、下記の方法で行った。
還流塔、マグネティックスターラーバーを装備した5mLナス型フラスコに実施例10のグリシジル基を導入したデキストラン被覆マグネタイト水溶液(4mL)、トリス(2−アミノエチル)アミン(10mg)、トリエチルアミン(100mg)を加え、60℃で加熱しながら3時間強攪拌した。得られた反応液に対して、イオン交換水(300mL)を用いた透析操作を、1時間を4度行った。この操作で平均粒子径が112±16.8nmの、アミノ基が導入されたデキストラン被覆磁性微粒子が得られた。
得られたアミノ基を導入したデキストラン被覆マグネタイト水溶液(10μL)を1.5mLスクリューキャップチューブに移し、サリンバッファー(50μL)を加えて、ボルテックスミキサーを用いて10秒間攪拌した。ポリエチレングリコール水溶液(30μL)を加え、ボルテックスミキサーを用いて10秒間攪拌し、凝集体を発生させた。ネオジ磁石をスクリューキャップチューブの側面に配し、5分間静置し凝集体をペレットとした。このとき、上澄は透明であり、上記手法により、良好にアミノ基を導入したデキストラン被覆マグネタイトが分離可能であることを確認した。
【0093】
実施例6
グルタチオンを導入したデキストラン被覆マグネタイトの調製と凝集体形成および磁気分離性能の確認を下記の方法で行った。
マグネティックスターラーバーを装備した5mLナス型フラスコに実施例10のアミノ基導入デキストラン被覆マグネタイト水溶液(2mL)にスルホサクシンイミジル−4−[N−マレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシレート(sulfo−SMCC、1mg、Pierce製)を加えて室温で1分間攪拌し、1時間放置した。37℃に設定したシェーカー付きの恒温層で、60RPMで30分震とうし、得られた反応液をセントリコン−3(ミリポア製)で500μL程度に濃縮し、超純水を用いて2mLにメスアップした。この濃縮−希釈操作を5度繰り返す。この操作でマレイミド基が導入されたデキストラン被覆磁性微粒子が得られた。
【0094】
マグネティックスターラーバーを装備した5mLナス型フラスコにマレイミド基を導入したデキストラン被覆マグネタイト水溶液(2mL)に1Mリン酸ナトリウムバッファ(pH7.4、100μL)を加えて攪拌し、全体として47mMのリン酸バッファー液とした。別途、グルタチオン(1mg)を50mMリン酸バッファー(pH7.4、99μL)に溶解させたものの一部(5μL)を加え、1分間攪拌した後、5℃で22時間放置した。得られた反応液をセントリコン−3(ミリポア製)で500μL程度に濃縮し、超純水を用いて2mLにメスアップする。この濃縮−希釈操作を5度繰り返した。この操作でグルタチオンが導入されたデキストラン被覆磁性微粒子が得られた。
【0095】
得られたグルタチオンを導入したデキストラン被覆マグネタイト水溶液(10μL)を1.5mLスクリューキャップチューブに移し、サリンバッファー(50μL)を加えて、ボルテックスミキサーを用いて10秒間攪拌した。ポリエチレングリコール水溶液(30μL)を加え、ボルテックスミキサーを用いて10秒間攪拌し、凝集体を発生させた。ネオジ磁石をスクリューキャップチューブの側面に配し、5分間静置し凝集体をペレットとした。このとき、上澄は透明であり、上記手法により、良好にアミノ基を導入したデキストラン被覆マグネタイトが分離可能であることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、診断、分子生物学に関する研究、プロテオミクスに関する研究、または薬物スクリーニングのための物質濃縮手段として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理学的物質および化学物質から選択される少なくとも一つの目的物質を、該目的物質と相互作用により結合し得るアフィニティタグを固定した水溶性の親水性物質および該親水性物質と混和することで水性二相分離を発現する水溶性の凝集剤の少なくとも二成分を用いて分離する方法であって、該目的物質と結合し得るアフィニティタグを有する親水性物質に該目的物質を作用させて、目的物質と親水性物質との結合体を均一分散系で形成する工程、該目的物質と親水性物質との結合体に、該親水性物質と水性二液分離可能な複合体を形成する凝集剤を作用させて、高分子コンプレックスもしくは低分子コンプレックス(以下「分子コンプレックス」と称する)の凝集体を形成する工程、該分子コンプレックス凝集体を上澄から分離する工程を含むことを特徴とする目的物質の分離方法。
【請求項2】
生理学的物質および化学物質から選択される少なくとも一つの目的物質を、該目的物質と相互作用により結合し得るアフィニティタグを固定した水溶性の親水性物質と磁気成分との複合体(以下「親水性物質/磁気成分複合体」と称する)および該親水性物質と混和することで水性二相分離を発現する水溶性の凝集剤の少なくとも二成分を用いて分離する方法であって、該目的物質と結合し得るアフィニティタグを有する親水性物質と磁気成分との複合体に該目的物質を作用させて、目的物質と親水性物質/磁気成分複合体との結合体を均一分散系で形成する工程、該目的物質と親水性物質/磁気成分複合体との結合体に、該親水性物質と水性二液分離可能な複合体を形成する凝集剤を作用させて、分子コンプレックス凝集体を形成する工程、該分子コンプレックス凝集体を上澄から分離する工程を含むことを特徴とする目的物質の分離方法。
【請求項3】
上記アフィニティタグが、二種以上の異なるアフィニティタグの連続体であることを特徴とする請求項1または2記載の分離方法。
【請求項4】
上記親水性物質がポリオールである請求項1〜3のいずれかに記載の分離方法。
【請求項5】
上記親水性物質がポリサッカライドまたはポリサッカライド誘導体である請求項4記載の分離方法。
【請求項6】
上記親水性物質がデキストラン、デキストリン、セルロース、アガロース、澱粉、カルボキシメチルセルロース、ジエチルアミノセルロース、ヒドロキシアセチルセルロース、ジエチルアミノエチルセルロース、ヒドロキシアセチルセルロース、プルラン、アミロース、ゼラチン、アラビノースガラクタンから選択される少なくとも1種である請求項5記載の分離方法。
【請求項7】
上記親水性物質がデキストランである請求項6記載の分離方法。
【請求項8】
上記親水性物質が水酸基を有する合成ポリオールである請求項4記載の分離方法。
【請求項9】
上記親水性物質がポリビニルアルコールおよびポリアリルアルコールから選択される少なくとも1種である請求項8記載の分離方法。
【請求項10】
上記親水性物質が水酸基を有する重合性単量体を重合して得られた合成ポリマーである請求項8記載の分離方法。
【請求項11】
上記親水性物質が、重合性単量体としてアリルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール−モノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート
および2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルアクリレートから選択される少なくとも一種を重合して得られた合成ポリマーである請求項10記載の分離方法。
【請求項12】
上記親水性物質が、重合性単量体として、水酸基を保護された、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール−モノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレートおよび3−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルアクリレートから選択される少なくとも一種を重合して得られた合成ポリマーから、該水酸基の保護基を除去した合成ポリマーである請求項10記載の分離方法。
【請求項13】
上記親水性物質/磁気成分複合体における磁気成分が、マグネタイト、マグヘマイトおよびヘマタイトから選択される少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項2〜12のいずれかに記載の分離方法。
【請求項14】
上記親水性物質/磁気成分複合体が、磁気成分表面への親水性物質の物理的な吸着および化学的固定化の少なくともいずれか一方により得られることを特徴とする請求項13記載の分離方法。
【請求項15】
上記親水性物質/磁気成分複合体が、親水性物質を含有する水溶液中での鉄イオンの共沈法によって調製されていることを特徴とする請求項13記載の分離方法。
【請求項16】
上記親水性物質/磁気成分複合体における磁気成分が、ラテックス磁気ビーズである請求項13記載の分離方法。
【請求項17】
上記アフィニティタグと目的物質との組み合わせ(アフィニティタグ/目的物質)が、抗体/ペプチド、抗体/抗原、抗体のフラグメント/抗原、核酸/核酸、タンパク質/核酸、ペプチド/ペプチド、タンパク質/タンパク質、薬物候補物質/タンパク質、グルタチオン/GST、マルトース/マルトース結合タンパク質、炭水化物/タンパク質、炭水化物誘導体/タンパク質、ペプチドタグ/金属イオン−金属キレート、ペプチド/NTA−Ni、プロテインA/抗体、プロテインG/抗体、プロテインL/抗体、Fcレセプター/抗体、ビオチン/アビジン、ビオチン/ストレプトアビジン、ジンクフィンガー/核酸、薬物候補物質/ペプチド、薬物候補物質/レセプター、および金属イオン/キレート剤/ポリアミノ酸からなる群から選択される少なくとも一種である請求項1〜16のいずれかに記載の分離方法。
【請求項18】
上記アフィニティタグと目的物質との組み合わせ(目的物質/アフィニティタグ)が、抗体/ペプチド、抗体/抗原、抗体のフラグメント/抗原、タンパク質/核酸、薬物候補物質/タンパク質、炭水化物/タンパク質、炭水化物誘導体/タンパク質、ペプチドタグ/金属イオン−金属キレート、プロテインA/抗体、プロテインG/抗体、プロテインL/抗体、Fcレセプター/抗体、ビオチン/アビジン、ビオチン/ストレプトアビジン、ジンクフィンガー/核酸、薬物候補物質/ペプチド、および金属イオン/キレート剤/ポリアミノ酸からなる群から選択される少なくとも一種である請求項1〜16のいずれかに記載の分離方法。
【請求項19】
アフィニティタグと目的物質の相互作用が、抗体とペプチドの相互作用、抗体と抗原の相互作用、抗体のフラグメントと抗原の相互作用、核酸と核酸の相互作用、タンパク質と核酸の相互作用、ペプチドとペプチドの相互作用、タンパク質とタンパク質の相互作用、薬物候補物質とタンパク質の相互作用、グルタチオンとGSTの相互作用、マルトースとマルトース結合タンパク質の相互作用、炭水化物とタンパク質の相互作用、炭水化物誘導体とタンパク質の相互作用、ペプチドタグと金属イオン−金属キレートの相互作用、ペプ
チドとNTA−Niの相互作用、プロテインAと抗体の相互作用、プロテインGと抗体の相互作用、プロテインLと抗体の相互作用、Fcレセプターと抗体の相互作用、ビオチンとアビジンの相互作用、ビオチンとストレプトアビジンの相互作用、ジンクフィンガーと核酸の相互作用、薬物候補物質とペプチドの相互作用、薬物候補物質とレセプターの相互作用、および金属イオンとキレート剤とポリアミノ酸の相互作用からなる群から選択される少なくとも一種である請求項1〜16のいずれかに記載の分離方法。
【請求項20】
上記親水性物質または上記親水性物質/磁気成分複合体と水性二液分離可能な複合体を形成する凝集剤が、ポリアルキレングリコールである請求項1〜19のいずれかに記載の分離方法。
【請求項21】
上記親水性物質または上記親水性物質/磁気成分複合体と水性二液分離可能な複合体を形成する凝集剤が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールランダムコポリマーおよびポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマーから選択される少なくとも一種である請求項20記載の分離方法。
【請求項22】
上記親水性物質または上記親水性物質/磁気成分複合体と水性二液分離可能な複合体を形成する凝集剤が、ポリエチレングリコールである請求項20記載の分離方法。
【請求項23】
上記親水性物質または上記親水性物質/磁気成分複合体と凝集剤とから得られる分子コンプレックス凝集体を、遠心分離により上澄から分離することを特徴とする請求項2〜22のいずれかに記載の分離方法。
【請求項24】
上記親水性物質または上記親水性物質/磁気成分複合体と凝集剤とから得られる分子コンプレックス凝集体を、濾過分離により上澄から分離することを特徴とする請求項2〜22のいずれかに記載の分離方法。
【請求項25】
上記親水性物質または上記親水性物質/磁気成分複合体と凝集剤とから得られる分子コンプレックス凝集体を、磁気分離により上澄から分離することを特徴とする請求項2〜22のいずれかに記載の分離方法。
【請求項26】
生理学的物質および化学物質から選択される少なくとも一つの目的物質と、該目的物質と相互作用により結合し得るアフィニティタグを固定した水溶性の親水性物質と、該親水性物質と混和することで水性二相分離を発現する水溶性の凝集剤とを含有する分子コンプレックス。
【請求項27】
生理学的物質および化学物質から選択される少なくとも一つの目的物質と、該目的物質と相互作用により結合し得るアフィニティタグを固定した水溶性の親水性物質と磁気成分との複合体と、該親水性物質と混和することで水性二相分離を発現する水溶性の凝集剤とを含有する分子コンプレックス。
【請求項28】
上記アフィニティタグが、二種以上の異なるアフィニティタグの連続体であることを特徴とする請求項26または27記載の分子コンプレックス。
【請求項29】
上記親水性物質がポリオールである請求項26〜28のいずれかに記載の分子コンプレックス。
【請求項30】
上記親水性物質がポリサッカライドまたはポリサッカライド誘導体である請求項29記載の分子コンプレックス。
【請求項31】
上記親水性物質がデキストラン、デキストリン、セルロース、アガロース、澱粉、カルボキシメチルセルロース、ジエチルアミノセルロース、ヒドロキシアセチルセルロース、ジエチルアミノエチルセルロース、ヒドロキシアセチルセルロース、プルラン、アミロース、ゼラチンおよびアラビノースガラクタンから選択される少なくとも1種である請求項30記載の分子コンプレックス。
【請求項32】
上記親水性物質がデキストランである請求項31記載の分子コンプレックス。
【請求項33】
上記親水性物質が水酸基を有する合成ポリオールである請求項29記載の分子コンプレックス。
【請求項34】
上記親水性物質がポリビニルアルコールおよびポリアリルアルコールから選択される少なくとも1種である請求項33記載の分子コンプレックス。
【請求項35】
上記親水性物質が水酸基を有する重合性単量体を重合して得られた合成ポリマーである請求項33記載の分子コンプレックス。
【請求項36】
上記親水性物質が、重合性単量体としてアリルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール−モノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレートおよび2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルアクリレートから選択される少なくとも一種を重合して得られた合成ポリマーである請求項35記載の分子コンプレックス。
【請求項37】
上記親水性物質が、重合性単量体として、水酸基を保護された、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール−モノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレートおよび2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルアクリレートから選択される少なくとも一種を重合して得られた合成ポリマーから、該水酸基の保護基を除去した合成ポリマーである請求項35記載の分子コンプレックス。
【請求項38】
上記親水性物質/磁気成分複合体における磁気成分が、マグネタイト、マグヘマイトおよびヘマタイトから選択される少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項27〜37のいずれかに記載の分子コンプレックス。
【請求項39】
上記親水性物質/磁気成分複合体が、磁気成分表面への親水性物質の物理的な吸着および化学的固定化の少なくともいずれか一方により得られることを特徴とする請求項38記載の分子コンプレックス。
【請求項40】
上記親水性物質/磁気成分複合体が、親水性物質を含有する水溶液中での鉄イオンの共沈法によって調製されていることを特徴とする請求項38記載の分子コンプレックス。
【請求項41】
上記親水性物質/磁気成分複合体における磁気成分が、ラテックス磁気ビーズである請求項38記載の分子コンプレックス。
【請求項42】
上記アフィニティタグと目的物質との組み合わせ(アフィニティタグ/目的物質)が、抗体/ペプチド、抗体/抗原、抗体のフラグメント/抗原、核酸/核酸、タンパク質/核酸、ペプチド/ペプチド、タンパク質/タンパク質、薬物候補物質/タンパク質、グルタチオン/GST、マルトース/マルトース結合タンパク質、炭水化物/タンパク質、炭水化物誘導体/タンパク質、ペプチドタグ/金属イオン−金属キレート、ペプチド/NTA
−Ni、プロテインA/抗体、プロテインG/抗体、プロテインL/抗体、Fcレセプター/抗体、ビオチン/アビジン、ビオチン/ストレプトアビジン、ジンクフィンガー/核酸、薬物候補物質/ペプチド、薬物候補物質/レセプター、および金属イオン/キレート剤/ポリアミノ酸からなる群から選択される少なくとも一種である請求項26〜41のいずれかに記載の分子コンプレックス。
【請求項43】
アフィニティタグと目的物質の相互作用が、抗体とペプチドの相互作用、抗体と抗原の相互作用、抗体のフラグメントと抗原の相互作用、核酸と核酸の相互作用、タンパク質と核酸の相互作用、ペプチドとペプチドの相互作用、タンパク質とタンパク質の相互作用、薬物候補物質とタンパク質の相互作用、グルタチオンとGSTの相互作用、マルトースとマルトース結合タンパク質の相互作用、炭水化物とタンパク質の相互作用、炭水化物誘導体とタンパク質の相互作用、ペプチドタグと金属イオン−金属キレートの相互作用、ペプチドとNTA−Niの相互作用、プロテインAと抗体の相互作用、プロテインGと抗体の相互作用、プロテインLと抗体の相互作用、Fcレセプターと抗体の相互作用、ビオチンとアビジンの相互作用、ビオチンとストレプトアビジンの相互作用、ジンクフィンガーと核酸の相互作用、薬物候補物質とペプチドの相互作用、薬物候補物質とレセプターの相互作用、および金属イオンとキレート剤とポリアミノ酸の相互作用からなる群から選択される少なくとも一種である請求項26〜41のいずれかに記載の分子コンプレックス。
【請求項44】
上記親水性物質または上記親水性物質/磁気成分複合体と水性二液分離可能な複合体を形成する凝集剤が、ポリアルキレングリコールである請求項26〜43のいずれかに記載の分子コンプレックス。
【請求項45】
上記親水性物質または上記親水性物質/磁気成分複合体と水性二液分離可能な複合体を形成する凝集剤が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールランダムコポリマーおよびポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマーから選択される少なくとも一種である請求項44記載の分子コンプレックス。
【請求項46】
上記親水性物質または上記親水性物質/磁気成分複合体と水性二液分離可能な複合体を形成する凝集剤が、ポリエチレングリコールである請求項44記載の分子コンプレックス。
【請求項47】
上記親水性物質または上記親水性物質/磁気成分複合体と凝集剤とから得られる分子コンプレックス凝集体を、遠心分離により上澄から分離することを特徴とする請求項26〜46のいずれかに記載の分子コンプレックス。
【請求項48】
上記親水性物質または上記親水性物質/磁気成分複合体と凝集剤とから得られる分子コンプレックス凝集体を、濾過分離により上澄から分離することを特徴とする請求項26〜46のいずれかに記載の分子コンプレックス。
【請求項49】
上記親水性物質または上記親水性物質/磁気成分複合体と凝集剤とから得られる分子コンプレックス凝集体を、磁気分離により上澄から分離することを特徴とする請求項26〜46のいずれかに記載の分子コンプレックス。
【請求項50】
上記分子コンプレックス凝集体を上澄から分離する工程によって、分離された該分子コンプレックス凝集体を水に再分散させて水溶液とする工程を含むことを特徴とする請求項1または2記載の目的物質の分離方法。

【公開番号】特開2006−327962(P2006−327962A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151484(P2005−151484)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】