説明

目視検査で使用する位置測定定規

【課題】製造物の目視検査で発見された不具合の位置を、その不具合が発生している面ごとにその面の縦方向長さおよび横方向長さを一定の数値で等分した目盛からなる座標を設定し、その座標の中で不具合位置を測定する定規。
【解決手段】三角形の底辺を一定の数値で等分し、等分された各点と頂点を結ぶ放射線状に目盛られた定規、あるいは伸縮材に一定の数値で等分した目盛を印し、伸縮させることで全長が変化する定規であって、検査対象面と平行にかざし、面の両端と定規の両端をにらみ合わせながら不具合の位置を測定する定規。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製造物の目視検査において使用する位置測定定規に関する。
【背景技術】
【0002】
製造物の目視検査で発見された不具合の記録は、その不具合の状態を表す内容情報と、発生している場所を示す位置情報からなる。不具合には発見された度に一つ一つ不具合番号が付けられて内容状況と共にその番号が内容情報の内容リスト欄に記録される。位置情報は予め準備した平面図等の図面を利用して該当位置にマーキングと引き出し線で不具合番号が付され、視覚的な方法で記録される。不具合の是正者はこの2つの記録を頼りに、両方の不具合番号を照合しながら不具合の発生している場所を探しだす。
【0003】
以上のように2つの異質な情報をそれぞれ別の記録欄あるいは別の資料に記録しなければ関係者に伝達することができない。そこで不具合が発生している面に、縦方向の最左端をY軸、横方向の最下端をX軸とする平面座標を設定し、その座標の数値で不具合の位置を内容リスト欄に記録できれば従来の視覚的な位置情報を省くことができる。しかし設定した平面座標内から数値を読み取るために不具合が発見された度に距離測定道具を使ってX軸とY軸からの距離を測定するのは面倒であり、現物に触れなければ、あるいは近傍でなければ測定することもできない。そこで、その面の縦方向長さおよび横方向長さを一定の数値で等分し、その等分された1つの巾を1目盛とした座標を設定し、その座標の数値で不具合の位置を測定する方法が考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この面を等分し、その等分数の目盛で設定した座標の中で数値を読み取るには、例えば1面を8等分する例では、その半分が4、そのまた半分が2、またその半分が1と勘でおおよその位置を判定するほか、精度を要求される場合は図4のようなマス目を描いた透明の定規401を図2(A)のように対象面202に平行にかざし、前後に動かしながら面の両端203と定規の両端402をにらみ合わせ、面内の該当位置をその等分数による座標で読み取ることもできる。また、細長い棒状に等分目盛を入れた物をかざすことも考えられる。面の大きさが同一の物ばかりで、対象物との位置も常時、同じ位置関係、例えば同じ形状で大量に作りだされる製品を同一場所で行う目視検査ではこのような固定された目盛の定規でも有効に利用できる。
【0005】
しかし、対象面の大きさや形状がその都度変化し、更に距離関係も変化する、例えば建築の1室の検査では、室を構成する壁面の縦横寸法は面ごとに違い、面を正視する目の測定位置と面の距離もその都度違ってくる。1室に取り付く家具や建具のみを検査対象とする場合は、それら個々の大きさや、目との位置関係も多岐である。また、同一場所で製造される製品でも、形状が個々に異なる製品や、構成する面が複雑な物もある。このように面や条件がその度に変化する検査では、メモリ巾が固定された定規では小さ過ぎたり、大き過ぎたり、面と合わせづらいと言う問題がある。
【0006】
本発明は、目視検査において発見された不具合の位置を、その不具合が発生している面ごとに座標を設定し、その座標の中で不具合の位置を測定する定規の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、検査対象面の大きさと測定位置の関係に即応できる定規を使って上記目的を達成しようとするものである。具体的には、製造物の目視検査で発見された不具合の位置を、その不具合が存在する面にその面の縦方向長さおよび横方向長さを一定の数値で等分した目盛からなる座標を設定し、その座標の数値で不具合の位置を測定するための板状の透明な材質からなる定規であって、その定規の目盛は、三角形の1辺を一定の数値で等分し、等分された各点と他の2辺の頂点を結ぶ放射状の線郡からなり、等分された辺部分を最長定規とし、前記頂点に平行に近づくに従い少しずつ定規長が短く使える定規である。
【0008】
また、第2の課題解決手段は製造物の目視検査で発見された不具合の位置を、その不具合が存在する面に前記座標を設定し、その座標の数値で不具合の位置を測定するための線状の伸縮する材料からなる定規であって、線状部分を一定の数値で等分し、等分された各点に目盛となる印が付けられ、伸縮させることで定規長を伸縮させることができる定規である。
【0009】
上記第1の課題解決手段による作用は次の通りである。長さが違う数個の定規を一つに組み合わせた機能を持つ定規で、検査対象面を正視して面に平行にこの定規をかざし、あるいは面上に置いて、面の両端と定規の最適な部分の両端を選択して合わせることができる。
【0010】
また第2の課題解決手段による作用は,検査対象面を正視して面に平行にこの定規をかざし、あるいは面上に置いて、面の両端と定規の両端を伸縮により合わせることができる
【発明の効果】
【0011】
上述したように放射状に描かれた等分定規を使うことにより、対象面の大きさや測定位置との距離に対して、定規と目の位置の調整が楽にできる。特に面が相対的に小さく見える状況、例えば遠くにあって小さく見える、あるいは面の実長が一定巾の定規より短い場合でも更に短い部分を使って測定することができる。
【0012】
また、伸縮する定規を使うことでも対象面の大きさや測定位置との距離に対して、定規と目の位置の調整が楽にできる。特に面が大きく見える状況、例えば視野一杯に広がっている場合でも伸ばすことにより測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は透明な材質からなる定規101である。図1のように配置された三角形ABC102の底辺BC103を一定の数値で等分、ここでは1例として10等分し、各等分点104と頂点Aを結ぶ線が放射状に描かれている。頂点Aは線を描くための支点であって定規の中にあっても外にあってもよく、図1では頂点Aは外にあり定規には台形105が描かれている。底辺BC103と平行に4本の定規線106−2から5を引き、底辺BC103は一番長い定規線106−1として使われ、他の定規線は少しずつ長さが変わるので、この定規は5本の長さが違う10等分定規で構成されたことになる。
【0014】
図2の(A)図はこの定規の使用例で測定者は目201と対象面202の間に定規101を面に平行にかざし、定規の平行線106−1から5のいずれかの両端マーク107と面の両端203をにらみ合わせ不具合の位置を読み取る。図2の(B)図は使用中の定規101の拡大図を示す。ここでは上から2番目の定規線106−2に面の両端203を合わせている。面202内に発生している不具合204の位置は定規の中では左から4番目の目盛204−1を透して見えるので、(A)図の等分座標の目盛205の4番目に相当する位置としてX=4と読み取ることができる。Y方向、即ち縦方向も10等分とすればこの定規を縦使いにして同様の方法で数値を読み取ることができる。
【0015】
上記例より対象面の巾が広い、あるいはもっと近い場合は最上段の定規線106−1を使い、狭い、あるいはもっと離れている場合は下の定規線106−3等を使うことができる。また定規線の両端に直角方向の端部マーク107をつけると面の端部と合わせ易くなるので便利である。このマークは端部と分かる程度の長さでも、線107−1のように定規一杯まで伸ばしてもよい。また定規線がない中間部分でも定規線に平行に1本の線状な物を添えて使うこともできる。以上のように目盛が放射状の線から構成された定規なので面の両端と定規の両端を合わせる作業に幅を持つ。また頂点Aを定規内に置けば視覚許す限り小さな面も測定できる。定規の材料は透明であれば板でも折りたためる透明なシートを利用してもよい。

【0016】
図3は伸縮材に等分印302を付けて10等分した定規301の例である。図3の(A)図は定規301の両端をホルダー303の両端に装着させ、駒304の回転で長さが変化するホルダー303の動きによって定規301の長さを伸縮させる例である。(B)図は定規301の両端に引掛け材305を取り付け、引っ張ることにより定規301の長さを伸縮させる例である。以上の例の他、ホルダーの形状や、伸縮方法は長さの調整ができればよく、また伸縮材はゴム質系でもコイル状からなるスプリングでも伸縮できればよい。測定方法は図2の(A)図と同様、対象面にかざし、両端マーク107即ち、定規メモリの両端と面の両端203を合わせて不具合の位置を読み取る。この定規は伸縮素材の自然の長さより長い定規を使う必要がある状況で効果を発揮する。
【0017】
従って仮に請求項1の定規の定規線106−1と請求項2の定規の素材長さを同一にして2つの定規を使いわければ、面の大小や検査条件に係わらず視野の範囲において、また視覚の許容範囲において全ての面の等分測定に利用できる。
【0018】
以上、使用例を説明してきたが、本発明による定規を使えば、数面から構成された製造物の各面に発生している不具合の位置測定の他、写真・図面等の1枚からなる物でもその面内の位置を、その面内に設定した等分座標中の数値で素早く測定できる。仮に「○○等分のX=○、Y=○」という表現でルール付けすると、例えば、「10等分のX=3、Y=5」等の記述で確実に他者に伝達することができる。
【0019】
図1の例では10等分を利用したが、目盛を20等分して10等分と20等分と使いわけても、32等分して8等分、16等分,32等分と偶数等分の中で使いわけてもよい。等分数は要求される精度や使い勝手により関係者間で基準化されることが望ましいが、製造物の検査担当者が目視で発見した不具合を是正者に伝達する等、専門家同士であれば10等分に統一してもよいし、検査以外の活用として1枚の紙面、例えば写真・図面・広告紙等において特定の位置を第三者に伝達するには、例えば16等分定規で測定した数字で表現すれば、受け取る側は該当面を指でまず半分を押さえ、またその半分と4回繰り返すと該当位置にたどりつくことができる。

【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態を表す定規例1
【図2】定規の使用例
【図3】本発明の実施の形態を表す定規例2
【図4】従来の定規
【符号の説明】
【0021】
101 本発明による透明な材質からなる定規例
104 三角形の底辺につけた等分印
107 定規の端部マーク
202 検査対象面
301 本発明による伸縮材からなる定規例
302 伸縮材につけた等分印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造物の目視検査で発見された不具合の位置を、その不具合が存在する面にその面の縦方向長さおよび横方向長さを一定の数値で等分した目盛からなる平面座標を設定し、その座標の数値で前記不具合の位置を測定するための板状の透明な材質からなる定規であって、その定規の目盛は、三角形の1辺を前記一定の数値で等分し、等分された各点と他の2辺の頂点を結ぶ放射状の線郡からなることを特徴とする定規。
【請求項2】
製造物の目視検査で発見された不具合の位置を、その不具合が存在する面にその面の縦方向長さおよび横方向長さを一定の数値で等分した目盛からなる平面座標を設定し、その座標の数値で前記不具合の位置を測定するための線状の伸縮する材質からなる定規であって、前記線状部分を一定の数値で等分し、等分された各点に目盛となる印が付けられていることを特徴とする定規。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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