説明

直並列回路において誘導コイルを用いる誘導加熱

【課題】均一で制御可能な加熱を提供するために自己平衡型である複数の誘導コイル回路を用いる比較的広い表面範囲を誘導加熱するための方法および装置を提供すること。
【解決手段】サセプタを有し、それぞれが並列に結合され、AC電源26と直列に結合される、複数の自己制御型誘導コイル回路24a、24b、24cによって、部品が誘導加熱される。各回路は、AC電源26の周波数で共振するよう回路を調整する調整コンデンサを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、誘導加熱技術に関し、より詳しくは、比較的低電圧で動作するスマートサセプタと共に複数の誘導加熱コイルを用いて、比較的広い範囲を誘導加熱するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導加熱は、多種多様な工業過程で使用され、部品や構造の温度を上げることができる。例えば、複合材の分野において、ファイバー強化ポリマー樹脂等の複合材料から形成された構造の1つまたは複数の部分を硬化するために、誘導加熱を使用することができる。加熱処理の間の熱均一性を実現するために、誘導加熱システムは、サセプタと磁気的に結合した誘導コイルを使用して、電力を熱エネルギーに変換することができる。サセプタは「スマート」サセプタと呼ばれることがあり、これは、サセプタを形成する材料が、誘導加熱の際、最大で一定の温度を生み出すよう特に選ばれるためである。この平衡定数温度は、サセプタ材料のキュリー点で実現される。キュリー点とは、材料の強磁性相と非磁性相の間の転移温度である。ひとたびキュリー温度に達すると、サセプタは非磁性になり、加熱速度が大幅に減少する。この組み込み式自動調温制御は、加熱を避ける手段を提供し、精密な温度制御を可能にする。サセプタはさまざまな物理的形態をとることができ、それには誘導コイルの周りに配置されたスリーブまたはスパイラルラップ、プレート、周囲のマトリックス内に分散された磁気粒子が含まれるが、これらに限定されない。
【0003】
上記した種類のスマートサセプタを用いる誘導加熱システムは、例えば、航空機表面の補修のために使われる複合材パッチ等の複合材の、狭い範囲を硬化するための加熱ブランケットとして使うことができる。しかしながら、この誘導加熱技術は、部品または構造の比較的広い範囲を加熱する必要がある場合は、実用的ではないであろう。例えば、より広い部品範囲を対象とするために、複数の誘導加熱コイルを直列に結合することができる。広い範囲にわたってコイルを直列に結合すると、用途によっては不利益を有する可能性があり、これには、電力源に対してコイルが示す累積抵抗のために比較的高い駆動電圧を用いることが必要となることを含む。さらに、直列結合したコイルは、制御がより困難になる可能性があり、部品の熱暴走および/または不均一加熱の可能性がある。
【0004】
したがって、複数の自己平衡型誘導コイル回路を用いて、広い表面範囲に均一で制御された加熱をもたらすことが誘導加熱装置に必要である。比較的広い表面範囲を対象とするスマートサセプタと共に複数の誘導コイルを駆動するために比較的低い電圧を用いることも、誘導加熱方法および装置に必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願第20110139769号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
開示される実施形態は、均一で制御可能な加熱を提供するために自己平衡型である複数の誘導コイル回路を用いる比較的広い表面範囲を誘導加熱するための方法および装置を提供する。誘導コイル回路は互いに並列に結合され、ならびに比較的低い電圧で回路を駆動し、およびシステム調整の容易性向上を可能にするAC電源と直列に結合される。誘導コイル回路間の不均衡によって引き起こされる熱暴走は、回路をAC電源の駆動周波数で共振させるために必要なキャパシタンスを用いて回路を調整することによって避けられる。各誘導コイル回路に印加された交流電流は、サセプタがキュリー温度未満であるそれら回路により多くのエネルギーが印加され、キュリー温度に達した回路により少ないエネルギーが印加されるように、本質的に制御される。このことは、誘導加熱装置が、要求された処理温度で均一な温度を迅速に実現するために電流を本質的に制御することを可能にする。さらに、直並列誘導コイル回路を使用することにより、誘導加熱用途に対して、電圧により規定されたサイズ制限を取り去り、加熱する範囲全体にわたって熱収束させる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの開示された実施形態によれば、誘導加熱方法は、少なくとも2つの誘導コイル回路を選択するステップを備え、各誘導コイル回路は、誘導コイルと、あるキュリー温度を有するサセプタを含む。さらに本方法は、回路を互いに並列に結合し、AC電源と直列に結合するステップを含む。本方法は、回路内のサセプタがキュリー温度に実質的に達すると、誘導コイル回路の1つから他の回路に電力を分路するステップも備える。さらに本方法は、キュリー温度に達した回路から電力が分路された場合、AC電源によって印加された電力を他の誘導コイル回路にリバランスするステップを備える。電力のリバランスは、他の回路に送られる電力を、実質的に一定に維持することによって行うことができる。キュリー温度に達した回路から電力を分路するステップは、回路を離調するステップを含むことができる。さらに本方法は、AC電源の周波数で共振するよう各回路を調整するためにコンデンサを使用することを含む。
【0008】
開示された他の方法によれば、部品を加熱するステップは、複数の誘導コイル加熱回路を提供するステップを備え、各回路は、誘導加熱コイルと、コイルと磁気的に結合し、事前選択されたキュリー点を有するサセプタを含む。さらに本方法は、加熱回路を互いに並列に、電気的に結合するステップと、加熱すべき部品と近接して加熱コイルを配置するステップとを備える。本方法は、並列結合した加熱回路と直列にAC電源を結合するステップと、AC電源を使用して回路に交流電流を供給するステップも含む。さらに本方法は、各加熱回路の共振周波数を調整し、回路の誘導リアクタンスを実質的に打ち消すステップを備える。調整は、コンデンサを使用することによって行うことができる。
【0009】
さらに他の実施形態によれば、誘導加熱装置は、AC電源と、1組の誘導コイル回路を備え、各誘導コイル回路は、事前選択されたキュリー温度を有する。誘導コイル回路は、互いに並列に、電気的に結合され、AC電源と直列に結合される。各誘導コイル回路は、AC電源の共振周波数に調整される。
【0010】
特徴、機能、および利点は、本開示のさまざまな実施例において独立して実現することができ、または、以下の記述および図面を参照してさらに詳細に説明される、さらに他の実施形態において組み合わせることができる。
【0011】
新規機能と考えられる有利な実施形態の特徴を添付図面に示す。しかしながら、有利な実施形態と、その好適な使用モードと、それらの更なる目的および利点は、添付図面と併せて本開示の有利な一実施形態に関する後述の詳細な記述を参照することにより最もよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】複数の誘導コイル回路を使用して部品を加熱する誘導加熱装置の斜視図である。
【図2】図1の線2−2断面図である。
【図3】図2において「図3」として指定された範囲を示す図である。
【図4】誘導加熱装置の回路ブロック図である。
【図5】複数の誘導コイル回路を用いる誘導加熱方法のフローダイアグラムである。
【図6】誘導加熱装置の等価回路図である。
【図7】誘導加熱装置の詳細な回路図である。
【図8】事前選択された電圧で駆動する場合の、さまざまな表面範囲を対象とするのに要するコイルの数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず図1を参照すると、誘導加熱装置20は、複数の部分20a、20b、20cを含み、各部分は、加熱すべき部品25の対応する範囲と接触する。例示した例において、部品25は、装置20によって生成された熱によって硬化された積層複合材を備える。しかしながら、複合材積層部品25は、加熱装置20を用いて温度を上げることができる幅広い部品、構造、および表面の単なる例である。装置20の各部分20aから20cは、1つまたは複数の対応する、別々の誘導加熱コイル22a、22b、22cを含む。例示した例において、別々のコイル22aから22cは、概ね長方形である部分20a、20b、20cをそれぞれ対象とするが、別々のコイル22aから22cによって対象とされる部分20a、20b、20cは、どんな形状を有することもでき、および、加熱すべき部品25の範囲によって、互いに隣接することも、しないことも可能である。例示的な実施形態において、コイル22a、22b、22cは、蛇行パターンで配置されるが、用途により、他のレイアウト形状が可能である。図1に示す例では3つのコイルを使用したが、2つ以下または3つより多いコイル22を使用してもよい。
【0014】
ここで図2および図3を参照すると、誘導加熱装置20は、適切なマトリックス材料34、例えば、これに限定されるものではないが、シリコーン等で満たされた外側ハウジング36を含み、適切なマトリックス材料34は熱伝導性であり、部品25と接触する装置20の表面に、後に説明するサセプタスリーブ40によって生成される熱の熱伝導を促進する。マトリックス材料34は、加熱装置20が部品25の輪郭(図示しない)に適合することができるよう、柔軟性および/または弾力性があってもよく、なくてもよい。ハウジング36は、ケイ素、ゴム、ポリウレタン、または、要求された寸法安定性をハウジング36に提供し、ある程度の柔軟性を有していても、いなくてもよい他の材料が含まれるが、これらに限定されない任意の適切な材料から形成される上側および下側表面プレート38a、38bを含むことができる。
【0015】
各誘導加熱コイル22a、22b、22cは、本明細書でサセプタ40と称されることもある同心のサセプタスリーブ40によって囲まれる導電体を備え、サセプタ40は、関連するコイル22a、22b、22cを通って流れる交流電流によって誘導加熱される。誘導加熱されたサセプタスリーブ40は、高い透磁率を有する材料から形成することができ、マトリックス34に熱を熱伝導するよう機能し、マトリックス34は部品25に熱を伝える。サセプタスリーブ40は、関連するコイル22aから22cの一部、または全体の長さに沿って連続するか連続しなくてもよく、部品25を加熱するための所望の温度に対応する事前選択されたキュリー温度を有する磁気材料から形成される。サセプタスリーブ40は、関連するコイル22aから22cの周りに配置されるが、電気的に絶縁された剛体円柱または網目材料を備える。
【0016】
図3に最もよく示されているように、コイル22を通る交流電流の流れは、コイル22aから22cの周りに交番磁界44を生み出す。磁界44は、サセプタスリーブ40を形成する磁気材料によって吸収され、サセプタスリーブ40に誘導加熱を引き起こす。磁界44は、磁界96への暴露によって、サセプタスリーブ40において渦電流46の生成をもたらし、サセプタスリーブ40の抵抗加熱を引き起こす。キュリー温度に達すると、サセプタスリーブ40は、その時点で磁界44がサセプタスリーブ40内にもはや集中しない非磁性となる。スリーブ40の誘起された渦電流46および関連する抵抗加熱は、キュリー温度でサセプタスリーブ40の温度を維持するために十分なレベルに低減される。
【0017】
上記のように、サセプタスリーブ40は、任意のさまざまな磁気材料から形成することができ、磁気材料は、複合材硬化用途の場合、部品25の硬化をもたらす温度範囲内である所望の範囲内でキュリー温度を有する合金等である。サセプタスリーブ40を形成することができる合金は、銅、ニッケル、鉄、コバルト、ならびに、これらに限定されるものではないが、磁鉄鉱、磁赤鉄鉱、およびさまざまな他の酸化物と金属を含む金属酸化物の合金を含むが、これらに限定されない。
【0018】
スリーブ40の形態におけるサセプタは、上記の例示した実施形態と関連して記載したが、誘導加熱装置20は、他の種類のスマートサセプタ40を使用してもよい。例えば、2011年6月16日に出願され、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願第20110139769号で開示されたように、スマートサセプタ40は、マトリックス34に埋め込まれた強磁性または超常磁性体の粒子(図示しない)を備えることができる。導体22を通るAC電流の流れは、強磁性粒子のヒステリシス加熱をもたらす。埋め込まれた強磁性粒子のこのヒステリシス加熱は、次に、熱伝導によってマトリックス34を加熱する。埋め込まれた粒子が超常磁性である場合、マトリックス34は、粒子の大きさまたは直径に関連したキュリー温度範囲に対応する超常磁性粒子の弛緩熱を通じて加熱される。他の種類のサセプタは、誘導コイル22aから22bの周りに配置されたプレートおよびスパイラルラップ(図示しない)を含むことができるが、これらに限定されない。
【0019】
図4を参照すると、各誘導加熱コイル22a、22b、22cは、関連するサセプタ(例えば、サセプタスリーブ40)と一緒に、対応する誘導コイル回路24a、24b、24cを形成する。開示された実施形態によれば、誘導コイル回路24aから24cは、互いに並列関係で、および交流電流で誘導コイル回路24aから24cを駆動するAC電源26と直列で、電気的に結合される。上記のように、例示した実施形態において、3つの誘導コイル回路24a、24b、24cは、互いに並列に結合するものとして示されるが、他の実施形態では、3つを超えるか2つ以下の回路24を使用してもよい。AC電源26は、携帯型または固定型電源26として構成することができ、用途に適切な周波数および電圧で交流電流を供給するよう構成される。例えば、これに限定されるものではないが、供給されたAC電流の周波数は、約1kHzから300kHzの範囲にすることができるが、部品25におけるグラファイト複合材等の材料の望ましくない誘導加熱を最小にするために、約20kHzを超えることが好ましい。
【0020】
誘導加熱装置20は、装置20の各所で熱をモニタするための熱電対等の熱センサを備えることができる1つまたは複数のセンサ28を含むことができる。あるいは、センサ28は、誘導コイル回路24aから24cに印加された電圧を示すために、電圧センサや電源26と結合された他の装置を備えることができる。コントローラ30は、プログラム式コンピュータまたはPLC(プログラマブルロジックコントローラ)を備えることができ、電源26およびセンサ28と結合され、異なる所要熱量を有する多種多様な構造に装置20を適合させるために、所定の範囲にわたって、印加された交流電流を調整するよう動作する。さらに、コントローラ30は、1つまたは複数の誘導コイル回路24aから24cがそのキュリー回路に達し、電流の引き込みを止めると、これら回路に供給された交流電流をリバランスするよう機能することができる。
【0021】
センサ28が熱電対等の熱センサである場合、熱電対からのデータがコントローラ30に提供され、電源26をモニタする、および/または供給された交流電流の大きさや周波数を制御することができる。後により詳細に説明するように、各コイル22aから22cに印加された交流電流は、サセプタ40がキュリー点未満であるコイル22に、より多くのエネルギーが印加され、サセプタ40がキュリー点より高いコイル22に、より少ない電力が印加されるように、本質的に制御される。電力は、スマートサセプタ40が依然として磁気を帯び、そのキュリー点に達していないコイルに分路される。本質的に、誘導コイル回路24aから24cは自己平衡型であり、加熱される部品25全体により均一な温度分布を提供する。
【0022】
図5は、スマートサセプタと組み合わせた複数の誘導コイルを用いる誘導加熱方法のステップを示す。ステップ52の始めで、多くの誘導コイル22aから22cは、加熱すべき部品25の所望の範囲を一括して対象とするために十分であるよう選択される。ステップ54で、誘導コイル22aから22cは、互いに並列に結合され、各誘導コイル回路24aから24cに交流電流を送るAC電源26と直列に結合される回路24aから24cに配置される。ステップ56で各誘導コイル回路24aから24cは、交流電流の周波数に対応する共振周波数に調整され、駆動される。ステップ58で、誘導コイル回路24aから24cにおけるサセプタ40がキュリー温度に達した場合、誘導コイル回路24aから24cは調整されなくなり(すなわち、共振されなくなり)、電力は、特定の回路から残りの回路24aから24cに分路される。ステップ60で、AC電源26によって加熱装置20に供給された電力は、キュリー温度未満で動作している誘導コイル回路24aから24cに実質的に等しい量の電力を供給するようリバランスされる。
【0023】
図6は、図4における直並列回路構成に対応する等価回路であり、各誘導コイル回路24aから24cは、互いに並列に結合され、AC電圧源Vocと直列に結合される対応するインピーダンスZ1、Z2、およびZ3によって表すことができる。図6から、誘導加熱装置20は、インピーダンスZ1、Z2、Z3により表されて並列に結合される別々のコイル22aから22cに分割されるので、加熱装置20を駆動するのに要する電圧は、別々のコイル22の数によって減衰されることを理解することができる。以下で説明するように、62で示される直列回路は固有抵抗Rsを含み、各インピーダンスZ1からZ3は抵抗、ならびに誘導分および容量分からなるリアクタンスを含む。誘導コイル回路24の1つ、例えば、インピーダンスZ2によって表される誘導コイル回路24bにおけるサセプタ40がそのキュリー点に接近すると、関連するサセプタ40の透過性が実質的に低減し、インピーダンスZ2の抵抗および誘導リアクタンス分の対応する降下を引き起こす。本質的に、回路24bのコイル22bは、主に非磁性になり、さらに、コイル22bは関連するサセプタ40に完全には結合せず、コイル22bに送られた電力が減衰するために、他のコイル22a、22cより非常に低い電力をとる。抵抗の減衰が約90%以上であり、インダクタンスが約50%減衰するという条件で、誘導コイル回路24bは非常に少ない電力をとることになり、他の2つの回路24a、24cが入力電力の約半分をとることになる。良好な整合を維持するために、入力回路62は、それに応じて再調整することができる。
【0024】
図7は、各誘導コイル回路24aから24cの追加の詳細を示し、誘導コイル回路24aから24cは、それぞれ、図6におけるインピーダンスZ1、Z2、Z3によって表される。各回路24aから24cは、RLC回路を備える。各回路24aから24cにおけるRは、誘導コイル22の抵抗を表し、さらに、関連するサセプタ40と抵抗が結合されることを表す。回路24aから24cのインダクタンスLは、コイル22の構成によって制御され、この構成には、コイル22のレイアウト形状、コイル22の巻数、および関連するサセプタ40の磁気特性が含まれる。大多数の抵抗Rは、回路24aから24cにおけるサセプタ40の抵抗となることができる。回路24aから24cのキャパシタンスCは、印加された交流電流の周波数で共振するよう回路24aから24cを調整する調整コンデンサのキャパシタンスである。調整コンデンサCの特定の値は、回路24aから24cの誘導リアクタンスと実質的に等しく、その誘導リアクタンスを打ち消す容量リアクタンスをもたらすように選択される。この調整は、回路24aから24cの関連するインピーダンスZ1からZ3を最小にし、回路を流れる最大電流をもたらす。調整コンデンサCは離散コンデンサ装置とすることができ、または、誘導コイル回路24aから24cの設計全体において固有である分布キャパシタンスとすることができる。
【0025】
各回路24aから24cを駆動するのに要する電圧は、回路のインピーダンスZ1、Z2、Z3および関連するコイル22(L)を駆動するために必要な電流の量によって決まり、オームの法則によって計算される。したがって、電源電圧出力Vocは、必要な駆動電圧を供給するよう選択されるべきである。いくつかの実施形態において、電源電圧出力Vocが、所望のレベルの電流で回路24aから24cを駆動するために必要な電圧と整合しない場合、変圧器64は、必要な電圧レベルに出力電圧Vocを変圧するために、それぞれ使用することができる。
【0026】
上記のように、誘導コイル回路24aから24cは自己平衡型である。スマートサセプタ40を励磁するコイル22の入力インピーダンスZは、狭帯域で整合され、AC電源Vocで調整される必要がある、比較的大きいリアクタンスを有する。サセプタ40の温度が上がるにつれ、インダクタンスLと抵抗Rの両方が著しく変化し、AC電源Vocのリアルタイム調整が必要となる。キュリー温度の付近では、インダクタンスLと抵抗Rの両方が劇的に降下する。2つ以上の誘導コイル回路が、すでに述べたように、互いに並列でAC電源Vocと直列に、適切に結合する場合、すでに十分に加熱されたキュリー状態サセプタ40から電力を分路するために、この鋭いインピーダンス降下を利用することが可能である。調整コンデンサCは、コイル22を、電源入力抵抗と整合するように調整し、誘導リアクタンスを打ち消し、一方、変圧器(図示しない)は、電源入力に整合するように、残りの抵抗の大きさを変えるために使用することができる。
【0027】
誘導コイル回路24aから24cの1つにおけるスマートサセプタ40がキュリー温度に達して非磁性になると、関連する誘導コイル回路24aから24cはインダクタンスの変化のため共振駆動周波数を用いる調整をやめ、無負荷(非磁性コイル)回路24aから24cを流れる電流を本質的にブロックする。キュリー温度に達した回路を通るより高い電流を通常はもたらすであろう抵抗が実質的に降下するが、コンデンサCの値が著しく変化しないことは、回路22aから22cへの電流を実質的に防ぐ回路22aから22cの離調をもたらすことに、ここで留意されたい。
【0028】
図8は、複数の誘導コイル22が互いに並列に配置され、印加された電圧68と直列に配列された場合の、印加された電圧68と加熱された範囲の間の関係を示すグラフである。図8のグラフに示す例は、駆動周波数250kHzの場合である。区画66から分かるように、印加された電圧68の所与のレベルで、互いに並列に結合し、印加された電圧68と直列に結合したより多くのコイルに分割される加熱回路を用いることによって、部品25のより広い範囲70を加熱することができる。
【0029】
種々の有利な実施形態の説明は、例示および説明を目的として提示されているのであり、包括的であること、または開示された形態に実施形態を限定することを意図していない。当業者には、多数の修正例および変形例が明らかであろう。さらに、種々の有利な実施形態は、他の有利な実施形態とは異なる利点を提供することができる。選択された1つまたは複数の実施形態は、実施形態の原理、実際の用途を最もよく説明するため、および他の当業者に対し、さまざまな実施形態の開示と、考慮される特定の用途に適したさまざまな修正との理解を促すために選択および記述されている。
【符号の説明】
【0030】
20 誘導加熱装置
20a 部分
20b 部分
20c 部分
22a 誘導加熱コイル
22b 誘導加熱コイル
22c 誘導加熱コイル
25 部品
34 マトリックス材料
36 外側ハウジング
38a 上側表面プレート
38b 下側表面プレート
40 サセプタスリーブ
44 交番磁界
46 渦電流
24a 誘導コイル回路
24b 誘導コイル回路
24c 誘導コイル回路
26 AC電源
28 センサ
30 コントローラ
62 入力回路
64 変圧器
66 区画
68 印加された電圧
70 範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
あるキュリー温度を有するサセプタをそれぞれが含む少なくとも2つの誘導コイル回路を選択するステップと、
前記誘導コイル回路を互いに並列に結合し、AC電源と直列に結合するステップと、
前記1つの回路の前記サセプタがキュリー温度に実質的に達した場合、前記誘導コイル回路の1つから他の誘導コイル回路に電力を分路するステップと
を備える誘導加熱方法。
【請求項2】
キュリー温度に達した前記回路から電力が分路された場合、前記AC電源によって印加された前記電力を、他の誘導コイル回路にリバランスするステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
キュリー温度に達した前記誘導コイル回路から前記電力を分路するステップは、前記回路を離調するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記誘導コイル回路のそれぞれの共振周波数を、前記AC電源の周波数に整合するように調整するステップをさらに備える、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記誘導コイル回路のそれぞれを、前記AC電源の入力抵抗に実質的に整合し、前記回路の誘導リアクタンスを打ち消すように調整するステップをさらに備える、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記調整は、変圧器を使って、キュリー点に達した前記誘導コイル回路の1つの抵抗の大きさを、前記AC電源の前記抵抗に実質的に整合するように変更するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
それぞれが誘導加熱コイルと、前記コイルと磁気的に結合し、事前選択されたキュリー点を有するサセプタとを含む、複数の誘導加熱回路を提供するステップと、
前記回路を互いに並列に、電気的に結合するステップと、
前記部品と近接して前記誘導加熱コイルを配置するステップと、
前記並列に結合された回路と直列にAC電源を結合するステップと、
前記回路に交流電流を供給するために前記AC電源を用いるステップと、
前記回路それぞれの共振周波数を、前記回路の誘導リアクタンスを実質的に打ち消すように調整するステップと
を備える、部品を加熱する方法。
【請求項8】
前記調整は、前記回路の前記誘導リアクタンスを実質的に打ち消す値を有するコンデンサを用いて行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記調整は、変圧器を用いて、前記回路それぞれの抵抗の大きさを、前記AC電源に整合するように変更するために行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記回路の少なくとも1つの前記サセプタがキュリー温度に達した場合、前記AC電源によって前記回路装置に印加された電力をリバランスするステップをさらに備える、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
AC電源と、
誘導加熱コイルと、事前選択されたキュリー温度を有するサセプタとをそれぞれが含む1組の誘導コイル回路をと備え、
前記誘導コイル回路は、互いに並列に結合され、前記AC電源と直列に結合される、誘導加熱装置。
【請求項12】
前記誘導コイル回路のそれぞれは、前記AC電源の入力抵抗に整合するように調整される、請求項11に記載の誘導加熱装置。
【請求項13】
前記誘導コイル回路のそれぞれは、前記AC電源から供給される電流の周波数で共振するよう調整される、請求項11に記載の誘導加熱装置。
【請求項14】
前記誘導コイル回路のそれぞれは、前記サセプタがキュリー温度未満の場合、前記回路の前記誘導リアクタンスに実質的に等しいキャパシタンスリアクタンスの値を前記回路に提供するコンデンサを含む、請求項11に記載の誘導加熱装置。
【請求項15】
前記サセプタの1つまたは複数がキュリー温度に達した場合、前記誘導コイル回路に供給された電力を再分配するために前記電源を制御するコントローラをさらに備える、
請求項13に記載の誘導加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−77565(P2013−77565A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−212389(P2012−212389)
【出願日】平成24年9月26日(2012.9.26)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】