説明

直列のアドレス間接参照メタデータ記憶を備えた記憶装置

【課題】直列のアドレス間接参照メタデータ記憶を備えた記憶装置を提供する。
【解決手段】シングル磁気記録(SMR)ドライブなどのディスクドライブが、緊急電源遮断(EPO)後に、PBAに対するLBAの間接参照アドレス表マッピングを復元できるようにする方法が説明される。間接参照アドレス表(IAT)スナップショットが、ユーザデータ記憶と直列に周期的に書き込まれ、増分アドレス更新情報を備えた累積デルタリスト(CDL)が、スナップショット間に記憶される。切迫した電力喪失が検出された場合に、ディスクにまだ書き込まれていないIAT更新をカバーする現在のCDLは、不揮発性メモリに保存される。CDLセットと組み合わされたIATスナップショットは、緊急電力喪失後に電力が回復された場合に、現在の間接参照アドレス表を再生成するために必要とされる情報を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理記憶位置を論理アドレスにマッピングするために間接参照を用いるデータ記憶装置アーキテクチャの分野に関し、より具体的には、シングル磁気記録(SMR)装置において用いられる、かかる間接参照に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気媒体を備えた従来のディスクドライブは、離間された同心トラックにデータを組織化する。シングル書き込みの概念は、垂直磁気記録の形態であり、磁気記録の面密度を増加させる方法として提案されてきた。シングル磁気記録(SMR)媒体において、隣接トラックの領域(バンド)が、1つまたは複数の、前に書き込まれたトラックにオーバーラップするように書き込まれる。シングルトラックは、任意の順序で書き込むことができる従来的には分離されたトラックとは異なり、順々に書き込まなければならない。ディスク表面上のトラックは、複数のシングル領域(I領域とも呼ばれる)に構成されるが、これらの領域は、内径(ID)から外径(OD)へ、またはODからIDへ連続して書き込むことができる。領域において一緒に重なり合うように配置されるトラックの数は、シングル書き込みの重要な性能パラメータである。一旦シングル構造に書き込まれると、個別トラックは、適所で更新することができない。なぜなら、それは、オーバーラップしているトラックに上書きし、それを破壊することになるからである。したがって、ユーザの観点から、シングル書き込みデータトラックは、追記専用ログと考えられるときもある。SMRドライブの性能を改善するために、媒体の一部が、結局はI領域に書き込まれるデータ用の中間領域として用いられる、いわゆる「例外領域」(E領域)に割り当てられる。E領域は、時にはEキャッシュと呼ばれる。
【0003】
シングル書き込み記憶装置の内部構造におけるアドレス間接参照は、少なくともある程度まで既存のホストインターフェースをエミュレートし、かつSMRに関連する複雑さからホストを守るのに有用である。従来的には、ホストファイルシステムは、コマンドにおいて論理ブロックアドレス(LBA)を用い、記憶装置によって内部で用いられる実際の位置(物理ブロックアドレス(PBA))に関係なくデータブロックを読み出し、かつ書き込む。ハードディスクドライブは、とりわけ、再マッピングの目的のために確保された良好なセクタへディスク上の不良セクタを再マッピングできるようにする、あるレベルのLBA−PBA間接参照を数十年にわたって有してきた。アドレス間接参照は、典型的には、ドライブアーキテクチャのコントローラ部において実行される。コントローラは、ホストコマンドにおけるLBAを、内部物理アドレス、または物理アドレスにより近いものに翻訳する。
【0004】
欠陥に対して従来のLBA−PBAマッピングは、頻繁に変更する必要はない。対照的に、SMR装置において、論理ブロックアドレス(LBA)の物理ブロックアドレス(PBA)は、書き込み履歴に応じて変化する可能性がある。例えば、ガーベッジコレクションなどのバックグランド処理は、データセクタをあるPBAから別のPBAに移動させるが、しかしLBAは、同じままである。SMR用の間接参照システムは、コントローラがホストアドレス要求を物理位置に翻訳する本来的に動的なシステムである。SMRシステムにおいて、LBA−PBAマッピングは、あらゆる書き込み動作と共に変化する。なぜなら、システムは、LBA用のホストデータが書き込まれる媒体上の物理位置を動的に決定するからである。ホストLBAが次に更新されたときに、同じLBAは、異なる位置に書き込まれる。間接参照システムは、ホストLBAと媒体上の現在の物理位置との間に動的翻訳層を設ける。
【0005】
記憶装置の設計は、緊急電源遮断後に復元可能な間接参照アドレスマッピング方式に備えなければならず、したがって、物理位置への論理ブロックアドレス(LBA)のマッピングは、永続的な媒体に記録しなければならない。先行技術のファイルシステムは、LBA位置を追跡するために用いられるメタデータ記憶用に、ディスク上に別個の領域を維持する。しかしながら、かかる解決法は、それがメタデータ領域とのやりとりに追加的なシークを必要とするので、ディスクドライブ用には性能不足を示す。
【0006】
ディスクドライブRAMキャッシュを扱う先行技術の方法は、電力喪失問題の解決策を提供しなければならなかった。2002年4月23日にHallに付与された(特許文献1)において、フェイルセーフの書き込みキャッシングは、ドライブのアイドル時間に書き込みキャッシュデータを記憶するために、ディスク表面の特別に配置された部分を用いた。データがその最終的なディスク宛先に書き込まれる前のシステム障害または電力障害が起きた場合、データ損失なしに復元を達成するためにデータが特別に配置された部分から、データを読み出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6378037号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態によって、シングル磁気記録(SMR)ドライブなどのディスクドライブは、ディスク上の確保された位置における完全な間接参照アドレス表の頻繁なバックアップなしに、緊急電源遮断(EPO)後に、PBAに対するLBAの間接参照アドレス表マッピングを復元できるようになる。本発明の実施形態は、間接参照アドレス表(IAT)スナップショットを周期的に記憶し、次に、ユーザデータを書き込まれた実際のセクタと同じトラック(または近くのトラック)に沿って、スナップショット間に、累積デルタリストと呼ばれる増分アドレスメタデータ更新情報を記憶する。これによって、IATを保存するために、ディスク上の確保されたメタデータエリアとやりとりする追加的なシークを必要とする問題が除去される。本発明は、E領域におけるユーザデータの一時記憶またはステージング用に使用されるリングバッファ技術と共に用いることができる。IATスナップショットおよび累積デルタリストは、例えば、所定の数の書き込みの後で、I/O動作に基づいて媒体に周期的に書き込まれる。累積デルタリスト(CDL)は、IATスナップショット間に何度も書き込むことができ、各CDLは、一意の識別子によって最後のスナップショットにリンクされる。各CDLには、最後にCDLが保存されて以来のアドレスデルタだけが含まれる。
【0009】
本発明の実施形態において、切迫した電力喪失が検出された場合に、ディスクにまだ書き込まれていないIAT更新をカバーする現在の累積デルタリストは、フラッシュメモリなどの所定の不揮発性メモリに保存される。累積デルタリストセットと組み合わされたIATスナップショットは、緊急電力喪失後に電力が回復された場合に、現在の間接参照アドレス表を再生成するために必要とされる情報を提供する。緊急電力喪失後におけるドライブの起動ルーチンは、媒体に書き込まれた最後のIATスナップショットを見つけ、次にそれを、ディスクに書き込まれた対応する累積デルタリストセットおよびフラッシュメモリに書き込まれた最後の累積デルタリストセットを用いて更新することによって、間接参照アドレス表を更新する。
【0010】
一実施形態において、累積デルタリストは、標準的なユーザデータブロック(例えばセクタ)エリアに、データブロック全体を用いて書き込まれる。累積デルタリストを含むセクタには、ユーザデータセクタが点在している。装置によってそのメタデータ用に用いられるセクタが、IATにおいて割り当てられるLBAを有さず、したがって通常の動作ではホストに見えないことに留意されたい。
【0011】
代替実施形態において、累積デルタリストは、アドレス間接参照マッピングおよび最後のスナップショットIDを符号化する装置のセクタにメタデータを含むことによって不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態による間接参照システムを備えたデータ記憶装置の図である。
【図2】本発明の実施形態に従って用いられるような媒体上のリングバッファを示す。
【図3】本発明の実施形態による累積デルタリストの内容を示す。
【図4】本発明の代替実施形態による、タイムスタンプを含む累積デルタリストの内容を示す。
【図5A】本発明の代替実施形態によるセクタメタデータ構造の内容を示す。
【図5B】本発明の代替実施形態による、タイムスタンプを含むセクタメタデータ構造の内容を示す。
【図6】本発明の実施形態による、IATスナップショットおよびCDLを書き込む方法を示す。
【図7】本発明の実施形態による、緊急電源遮断後に、IATスナップショットおよびCDLを用いてIATを再構築する方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の実施形態に従って、単一の間接参照アドレス表(IAT)17を備えた間接参照システム16を有するSMRを用いるデータ記憶装置(DSD)10の図である。ホスト11は、標準的な論理ブロックアドレス(LBA)を参照する読み出しおよび書き込みコマンドを送信する。典型的なSMRドライブアーキテクチャにおいて、LBAは、E領域またはI領域へと割り当てることができるが、これは、間接参照マッピングのタスクを複雑にする。実際の用途においては、間接参照表を維持する問題への様々なアプローチが予想され得る。例えば、アプローチの一つは、2つの間接参照表、すなわち、LBAをE領域またはI領域にマッピングする1つの表、およびLBAをI領域内のIトラックにマッピングする第2の表を維持することである。本明細書で説明する本発明の実施形態によって、複数の表の使用を含む間接参照表管理の様々なアプローチ内で、ユーザデータと直列の間接参照表情報の書き込みが可能になる。しかしながら、説明する実施形態では、1つの間接参照表のみが参照される。追加の表は、同様の方法で扱うことができるか、または完全に異なるアプローチを用いて記憶することができる。例えば、表の1つが、E領域をカバーすることから、はるかに頻繁に更新される場合に、それは、本発明に従って処理してもよく、一方で同程度に頻繁には更新されない第2の表は、より多くのオーバーヘッドを必要とする方法を用いて処理してもよい。
【0014】
間接参照システム16は、装置による内部使用のために、LBAを物理ブロックアドレス(PBA)に翻訳する。例えば、間接参照システム16は、DSD10のコントローラ部における機能コンポーネントとして実現することができる。間接参照システム16は、本明細書で説明する場合を除いて先行技術に従って機能し、先行技術の機能を実行する間接参照システムの態様は、示されていない。装置が正常に動作している間は、LBAに対応する現在のPBAは、RAMにおける間接参照アドレス表(IAT)17で見つかる。上記のように、IATは、SMRドライブにおけるあらゆる書き込み動作と共に変化する。なぜなら、RAMにおけるIATは、電力が失われた場合に、損失にさらされるからである。しかしながら、間接参照アドレス表(IAT)の内容は、緊急電源遮断後に、永続的な媒体から復元可能でなければならず、そうでなければデータは永久に失われる。ディスク上の確保された位置における、完全な間接参照アドレス表の頻繁なバックアップは、現実的な解決法ではない。なぜなら、追加的なI/Oが、性能不足に帰着することになるからである。SMRにおいて、メタデータ書き込みを含む書き込みは、最適な性能のために順次化すべきである。本発明は、ユーザデータが、I領域に書き込まれる前に一時的に保存されるE領域において、ユーザデータと共にIATメタデータをトラック上に書き込むことができるようにする。SMRにおける各ディスク表面は、典型的には、E領域として働くための専用トラックの少なくとも1つのバンドを有する。トラックの大部分は、I領域へと構成される。
【0015】
本発明の実施形態は、間接参照アドレス表(IAT)スナップショット17A、17Bを同じトラック(または近くのトラック)に沿って記憶し(実際のセクタは、E領域においてユーザデータを書き込まれる)、したがって、通常のE領域の利用との効率的な統合を可能にする。ディスク12A、12B上の複数の同心トラックは示されておらず、本明細書で言及する場合を除いて、先行技術に従う。間接参照アドレス表(IAT)スナップショットは、その時の現行のIATのコピーである。復元プロセス中に最新のスナップショットを識別できるように、一意のIATスナップショットID(図示せず)が、各スナップショットに含まれる。IATスナップショットIDは、古いスナップショットと新しいスナップショットとの間の曖昧さを回避するために、十分に大きな範囲を有するカウンタとすることができる。範囲は、完全なシングルI領域をディスク上に書き込む時に実行されるスナップショットの数をカバーすべきである。
【0016】
IATの単一スナップショットコピーだけが必要とされるが、図示のように、異なるディスク12A、12B上に2つ以上のコピーを作成することは、コピーの1つが、ヘッドまたはディスク表面全体の損失を含む何らかの理由で復元不可能である場合に、冗長性を提供するという利点を有する。間接参照構造の複数のコピーを記憶することによって、装置は、残りの非損傷データを用いて適切に動作できるようになる。余分なコピーは、2つのディスクへの同時的な書き込みを可能にする複数のチャネルを有しない装置の典型例な場合であっても、ヘッドを切り替えることによって、追加ディスク上のE領域に効率的に書き込むことができる。
【0017】
上記のように、装置によって実行される次の書き込み動作は、最後のスナップショットには反映されない。したがって、媒体上のスナップショットは、各追加書き込み動作が実行されるときに、現在のIATより遅れる。各書き込み動作のために、IAT全体を書き換える(これは極めて大きくなり得る)のではなく、本発明は、スナップショット間に増分メタデータ更新情報を作成し周期的に書き込む。増分更新情報は、累積デルタリスト(CDL)18と呼ばれ、このリストは、RAMに維持される。その点で、IATスナップショット間に、媒体への複数のCDL書き込みがあり得る。CDLの最大サイズによって、書き込まれる頻度が決定される。各CDL書き込みは、IATスナップショットIDを含むことによって、最後のIATスナップショットにリンクされる。各CDL書き込みには、最後のCDL書き込み以来の、またはそれがスナップショット後の最初のCDLである場合にはIATスナップショット以来の、アドレスデルタが含まれる。
【0018】
IATスナップショットが媒体に書き込まれる頻度は、本発明を実施する場合の設計選択である。スナップショット頻度は、EPO復元時間、および分散実施形態においてCDL記憶用に割り当てられる記憶容量のトレードオフを意味する。一実施形態において、スナップショット書き込みは、選択された数の書き込み動作後にトリガされる。同様に、CDLにおけるデルタの数は、トレードオフを伴う設計選択である。書き込みは、CDLデルタが書き込まれるまでコミットされず、その結果、より大きなCDLは、存在可能な非コミット書き込みのより大きな最大数を意味する。
【0019】
本発明は、E領域アーキテクチャのリングバッファ実施形態と適合するが、本発明は、リングバッファが用いられることを必要としない。本発明によって、IATスナップショットおよびCDLをユーザデータと直列に書き込むことが可能になるので、本発明は、他のE領域アーキテクチャと共に用いることができる。
【0020】
図2は、本発明の実施形態に従って用いられるような、媒体上のE領域におけるリングバッファ21を示す。リングバッファにおけるヘッドおよびテールポインタの管理は、先行技術に従う。「安全な書き込み」25は、媒体トラックに書き込まれる一連のユーザデータセクタである。安全な書き込み後に、IATスナップショット17Aが書き込まれる。スナップショットの書き込みが、以前の書き込み用のPBA−LBAマッピングを含むIATスナップショットを記録することによって、以前の書き込みを「安全に」する。「非コミット書き込み」26は、IATスナップショット後に行われたユーザデータ書き込みである。RAMに維持されるCDL18は、各書き込みが行われる場合に更新される。リングバッファにおけるCDL18Aは、一連の「非コミット書き込み」26の後に書き込まれるもので、非コミット書き込みのそれぞれのためのデルタIDエントリを含む。この実施形態において、CDLは、デルタIDの数が、例えば、割り当てられたRAMスペース(バッファ)を満たす所定の数に達した場合に書き込まれる。IATスナップショットが、上記のように複数のディスク上に書き込まれる場合には、CDL18A、18Bもまた、複数のディスク上に書き込まれるべきである。
【0021】
図3は、本発明の実施形態に従って媒体に書き込まれるような累積デルタリスト(CDL)18Aの内容を示す。IATスナップショットが媒体上に保存される場合に、CDLのデルタID部33、34は、空にリセットされ、保存されたスナップショット用のIATスナップショットID32は記録される。CDLは、本質的に、IDによって最新のIATスナップショットに結合される。リングバッファは、前のスナップショットが自動的には消去されないので、複数のスナップショットおよびCDLが媒体に存在できるように十分に大きくすることができる。したがって、ポストEPO復元プロセスは、最新のスナップショットおよび関連するCDLを、より前のスナップショットおよび関連するCDLの中から知らせる方法を有しなければならない。IATスナップショットおよびCDLの両方に記録されたIATスナップショットIDは、この目的に役立つ。IATスナップショットIDシーケンスは、どのIDが最も最近のものかをEPO後の復元ルーチンが分かるように、明白でなければならない。IDを実現する方法の一つは、それを、単調に増加するカウンタにすることであり、その後、電源オンの復元ルーチン中に、ファームウェアは、IDが減少する場合にはいつでも、スナップショットおよびCDLデータの読み出しを停止することができ、これはリングバッファにおける最も最近のデータに達したことの合図となる。
【0022】
リスト33、34における各デルタIDには、記録されている特定の書き込みコマンド用のIATを更新するために必要な情報の3つの断片が含まれ、それらは、開始LBA、開始PBAおよびセクタ数である。各デルタIDは、例えば、6バイトとすることができる。複数のデルタIDを備えたCDLの最大サイズは、それを1つのセクタに含むことができるように制限することができる。開始LBA/PBAフィールドは、完全なLBA/PBAアドレスである必要はない。なぜなら、間接参照は、制限することができるからである(例えば、ドライブは、独立セクションに分割することができ、セクション内のオフセットだけが必要とされる)。
【0023】
間接参照マッピングのいくつかの実施形態において、どのデルタIDが最も最近のものかを決定するためにタイムスタンプが必要とされる。したがって、図4に示すCDLの実施形態において、追加フィールド、すなわちタイムスタンプカウンタ35が含まれる。本発明のある実施形態において、所与のLBAのデルタIDは、LBAの有効位置が、スナップショットポイント後の最後のデルタIDに現れるように、現在のシングル領域に常駐するだけに制約される。しかしながら、いくつかの実施形態において、この制約は課されず、タイムスタンプが、どのデルタIDが最も最近のものかを決定するために必要とされる。このタイムスタンプは、例えば、LBAをE領域またはIトラックにマッピングする表、およびIトラックをI領域内の位置にマッピングする表を含む2つの間接参照表が存在する場合に必要になり得る。最初の表に関して、デルタは、どちらの位置に記憶することも可能であるのに対して、第2の表用のデルタは、Iトラック領域に記憶することが潜在的に可能である。
【0024】
本発明の実施形態による、ホストから装置が受信する書き込みコマンド用の典型的な書き込み動作のための例示的なシーケンスを、図6に関連して以下で説明するが、図6は、本発明の実施形態に従ってIATスナップショットおよびCDLを書き込む方法を示す。1つまたは複数のLBAは、ホストによって定義され、装置へ送信されるコマンドに含まれる。1つまたは複数のPBAは、装置によって決定される。RAMにおけるIATは、書き込み動作に関連する1つまたは複数のLBAおよびPBA用に更新される(61)。デルタIDエントリが、この書き込み動作用に、RAMにおける累積デルタリストに追加される(62)。書き込みコマンド用にホストによって供給されたデータは、媒体上の1つまたは複数のPBAに書き込まれるが、しかし「コミットされない」。デルタおよびスナップショットカウンタは、増分される(63)。IATスナップショットカウンタトリガポイントに達した場合に(64)、IATスナップショット(デルタを含む)は、スナップショットIDを書き込まれ、スナップショットカウンタは、リセットされる(66)。今や、RAMにおける累積デルタリストは、陳腐化し、したがってそれは、スナップショットIDだけを含み、デルタを含まないようにリセットされる(67)。
【0025】
IATスナップショットがトリガされない場合に、デルタカウンタは、選択された最大値に関してチェックされ(68)、達した場合には、累積デルタリスト(CDL)は媒体に書き込まれ、デルタIDは、空に設定され、デルタカウンタは、0に設定される(69)。CDLが媒体に書き込まれる場合に、CDL用のIATスナップショットIDが変更されないことに留意されたい。IATスナップショット間に複数のCDL書き込みが存在可能であり、これらのCDLのそれぞれには、同じIATスナップショットIDが含まれる。
【0026】
本発明の実施形態において、切迫した電力喪失が装置によって検出された場合に、RAMにおけるCDLは、最後のメタデータ書き込み(IATスナップショットまたは最後のCDL書き込みであり得る)以来のいかなる更新もカバーし、図1におけるフラッシュメモリ19などの所定の不揮発性メモリに保存される。各CDLは、本質的にIATより小さく、ディスクへのより頻繁な書き込みによってサイズを低くしておくことができる。EPO記憶用に必要とされるフラッシュメモリのサイズは、それが単に最新のCDLを保持する必要があるだけなので、比較的小さい。切迫したEPO条件下でCDLを書き込むために必要な時間もまた小さいということになる。対照的に、IATのサイズは、例えば、セクタ当たり単純なバイト数ではなく、Iトラックの総数およびE領域のサイズの関数である。実際的なSMR装置は、少なくとも数十メガバイト程度のIATを有すると見込むことができる。
【0027】
図7は、本発明の実施形態に従って、緊急電源遮断後に、IATスナップショットおよびCDLを用いて、IATを再構築する方法を示す。恐らく複数あると思われる累積デルタリストのセットと組み合わされた最後のIATスナップショットは、緊急電力喪失後に電力が回復された場合に、現在の間接参照アドレス表を再生成するために必要とされる情報を提供する。起動ルーチンは、もし存在すれば、最後のIATスナップショット71および続くCDL72を見つけることが必要な場合に、リングバッファ全体を読み出すことができる。IATスナップショットIDは、リングバッファに依然として存在する可能性がある、より古いスナップショットから最後のスナップショットを識別するために用いられる。起動ルーチンが、バッファから読み出された前のIDより古いIDを備えたIATスナップショットを読み出す場合に、ルーチンは、最後のIATスナップショットが見つかったことを知る。対応するCDLセットは、IATスナップショットIDを含み、リングバッファにおいて最新のIATスナップショットに続く。さらに、起動ルーチンは、上記のようにフラッシュメモリに書き込まれた最終EPO CDLを読み出さなければならない(73)。一旦起動ルーチンが、最後のIATスナップショットを有すれば、IATは、現在のIATを得るために、CDLのそれぞれにおけるデルタIDを用いて更新される(74)。もちろん、いかなる新しいデルタIDエントリも行われないうちに、スナップショットまたはCDLの書き込み直後にEPOが発生する可能性がある。この場合に、EPO CDLは、いかなるデルタIDも含まない。また、EPOは、いかなるCDLもディスクに書き込まれないうちに、発生する可能性がある。ディスクにもフラッシュにもCDLがない場合に、IATスナップショットは、いかなる更新も必要とせずに、現在のIATを表す。
【0028】
本発明の一代替実施形態において、LBAおよびPBAをマッピングするメタデータは、セクタフォーマットの一部として含まれ、これによって、CDLを維持し書き込む必要性が除去される。IATスナップショットは、上記のように、やはり作成される。この実施形態の利点の一つは、セクタメタデータがデルタIDの役割を果たすため、セクタにCDLを書き込む必要がないということである。スナップショットに続いて書き込まれるセクタはそれぞれ、続いて書き込まれたセクタを含む前スナップショットにおけるIATを更新するために必要とされるLBAメタデータを本質的に含む。この実施形態に対して、EPO後の起動ルーチンは、上記のように最後のIATスナップショットを見つけるが、しかし見つけるべきCDLは存在しない。CDLの代わりに、ルーチンは、リングバッファにおける最後のスナップショット用のスナップショットIDを含む、各PBA(セクタ)におけるメタデータを読み出す。次に、メタデータにおけるPBAに対応するLBAを用いて、最後のスナップショットにおけるIATを現在の状態に更新する。
【0029】
本発明の実施形態用のセクタメタデータ41Aは、図5Aに示されている。余分なメタデータは、数バイト、例えば4バイトだけセクタの物理サイズを長くする。この実施形態において明示的に記憶されたメタデータ41Aには、最後のIATスナップショットID42およびLBA44が含まれる。IATスナップショットIDは、コミットされた書き込みおよび非コミット書き込み間を識別するために必要とされる。本発明の実施形態用のセクタメタデータ41Bの代替実施形態が、図5Bに示されている。セクタメタデータ41Bには、タイムスタンプカウンタ43が含まれるが、このタイムスタンプカウンタ43は、上記の代替CDLにおけるタイムスタンプカウンタと同じ機能を果たす。タイムスタンプカウンタ43は、同じLBAにおけるIAT更新が、上記のように別のシングル領域、例えばIトラック領域に出現し得る場合に必要とされる。PBAは、それが実際の物理アドレスであるので、媒体上の各セクタ用に装置によって暗黙に知られている。また、本質的に1つであるセクタの数を定義する必要はない。
【0030】
LBAメタデータは、セクタアーキテクチャに含まれる任意の他のメタデータに加えて明示的に保存することができる。先行技術のセクタフォーマットには、典型的には媒体上の物理セクタにおけるユーザデータに続くECCバイトの形態におけるメタデータが含まれる。LBAメタデータはまた、例えば、ECC符号化のシードとして用いられることによって、ECCバイトへ符号化することができる。トレードオフとは、明示的に保存されたLBAメタデータの記憶が、フォーマット効率において余分な数のバイトを要するのに対して、それをECCシードとして用いることにより、ECC能力が低下することで、信頼性が犠牲になるということである。
【符号の説明】
【0031】
10 データ記憶装置
11 ホスト
12A、12B ディスク
16 間接参照システム
17 間接参照アドレス表(IAT)
17A、17B 間接参照アドレス表(IAT)スナップショット
18、18A、18B 累積デルタリスト(CDL)
19 フラッシュメモリ
21 リングバッファ
25 安全な書き込み
26 非コミット書き込み
32 IATスナップショットID
33、34 デルタID部
35 タイムスタンプカウンタ
41A、41B セクタメタデータ
42 IATスナップショットID
43 タイムスタンプカウンタ
44 LBA

【特許請求の範囲】
【請求項1】
論理ブロックアドレス(LBA)を物理ブロックアドレス(PBA)にマッピングする間接参照アドレス表を有するデータ記憶装置を動作させる方法であって、
前記間接参照アドレス表のスナップショットを、ディスク上のバッファに書き込まれたユーザデータと直列に、前記ディスク上に周期的に書き込むことであって、前記各スナップショットが、前のスナップショットから最後のスナップショットを識別するスナップショットIDを含むことと、
前記各スナップショットが書き込まれた後で、前記間接参照アドレス表の後続の変更を含むデルタリストを作成すること、および前記デルタリストを前記ディスク上の前記バッファに周期的に書き込むことであって、前記各デルタリストが、前記最後のスナップショットを識別する前記スナップショットIDを含むことと、
を含む方法。
【請求項2】
緊急電源遮断に続いて電力が回復された後で取られる動作であって、
前記バッファを読み出して、前記間接参照アドレス表の前記最後のスナップショット、および前記最後のスナップショットを識別する前記スナップショットIDを見つけることと、
前記最後のスナップショットを識別する前記スナップショットIDを含む、前記バッファにおける前記各デルタリストを読み出すことと、
前記各デルタリストに記録された、前記間接参照アドレス表の変更を用いて、前記最後のスナップショットにおける前記間接参照アドレス表を更新することと、
をさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
緊急電源遮断が検出された場合に、前記デルタリストを所定の不揮発性メモリに保存することをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
緊急電源遮断に続いて電力が回復された後で取られる動作であって、
前記バッファを読み出して、前記間接参照アドレス表の前記最後のスナップショット、および前記最後のスナップショットを識別する前記スナップショットIDを見つけることと、
前記最後のスナップショットを識別する前記スナップショットIDを含む、前記バッファにおける前記各デルタリストを読み出すことと、
前記所定の不揮発性メモリにおける前記デルタリストを読み出すことと、
前記各デルタリストに記録された、前記間接参照アドレス表の変更を用いて、前記最後のスナップショットにおける前記間接参照アドレス表を更新することと、
をさらに含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記デルタリストを前記ディスク上の前記バッファに周期的に書き込むことは、データブロック全体を用いたユーザデータブロックエリアに前記デルタリストを書き込むことをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記間接参照アドレス表の前記スナップショットを周期的に書き込むことは、前記スナップショットを書き込むためのトリガとして、書き込み動作のカウントを用いることをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記データ記憶装置がシングル磁気記録(SMR)装置であり、前記バッファが前記ディスク上のE領域におけるリングバッファである、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記デルタリストにおける各エントリが、タイムスタンプを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
論理ブロックアドレス(LBA)を物理ブロックアドレス(PBA)にマッピングする間接参照アドレス表を有するデータ記憶装置を動作させる方法であって、
前記間接参照アドレス表のスナップショットを、ディスク上のバッファに書き込まれたユーザデータと直列に、前記ディスク上に周期的に書き込むことであって、前記各スナップショットが、前のスナップショットから最後のスナップショットを識別するスナップショットIDを含むことと、
前記バッファに続いて書き込まれる前記各PBAのメタデータであって、前記PBAに対応する前記LBAを識別し、かつ前記最後のスナップショットを識別する前記スナップショットIDを含むメタデータを書き込むことと、
を含む方法。
【請求項10】
緊急電源遮断に続いて電力が回復された後で取られる動作であって、
前記バッファを読み出して、前記間接参照アドレス表の前記最後のスナップショット、および前記最後のスナップショットを識別する前記スナップショットIDを見つけることと、
前記最後のスナップショットを識別する前記スナップショットIDを含む、前記バッファにおける前記PBAのセットを、対応するLBAを用いて読み出すことと、
前記対応するLBAを前記PBAセットにおける前記PBAにマッピングするために、前記最後のスナップショットにおける前記間接参照アドレス表を更新することと、
をさらに含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記間接参照アドレス表の前記スナップショットを周期的に書き込むことは、前記スナップショットを書き込むためのトリガとして、書き込み動作のカウントを用いることをさらに含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記データ記憶装置がシングル磁気記録(SMR)装置であり、前記バッファが前記ディスク上のE領域におけるリングバッファである、
請求項9に記載の方法。
【請求項13】
シングル磁気記録を用いるデータ記憶装置であって、
論理ブロックアドレス(LBA)を物理ブロックアドレス(PBA)にマッピングする間接参照アドレス表と、
ユーザデータ、および前記ユーザデータと直列の前記間接参照アドレス表の少なくとも1つのスナップショットを含む、ディスク表面上の磁気媒体におけるバッファであって、前記スナップショットがスナップショットIDを含むバッファと、
前記スナップショットIDを備えた前記間接参照アドレス表の前記スナップショットを前記バッファに周期的に書き込む間接参照システムであって、前記スナップショットIDが、前のスナップショットから最後のスナップショットを識別する間接参照システムと、
を含むデータ記憶装置。
【請求項14】
前記間接参照システムが、前記各スナップショットが書き込まれた後で、前記間接参照アドレス表の後続の変更を含むデルタリストを作成し、かつ前記デルタリストを前記ディスク上の前記バッファに周期的に書き込み、前記各デルタリストが、前記最後のスナップショットを識別する前記スナップショットIDを含む、
請求項13に記載のデータ記憶装置。
【請求項15】
緊急電源遮断が検出された場合に前記デルタリストを記憶するためのフラッシュメモリをさらに含む、
請求項14に記載のデータ記憶装置。
【請求項16】
前記間接参照システムが、
前記バッファを読み出して、前記間接参照アドレス表の前記最後のスナップショット、および前記最後のスナップショットを識別する前記スナップショットIDを見つけることと、
前記最後のスナップショットを識別する前記スナップショットIDを含む、前記バッファにおける前記各デルタリストを読み出すことと、
前記フラッシュメモリにおける前記デルタリストを読み出し、かつ前記デルタリストに記録された前記間接参照アドレス表の変更を用いて、前記最後のスナップショットにおける前記間接参照アドレス表を更新することと、
によって、緊急電源遮断後に前記間接参照アドレス表を再構築する、
請求項15に記載のデータ記憶装置。
【請求項17】
前記デルタリストにおける各エントリがタイムスタンプを含む、
請求項14に記載のデータ記憶装置。
【請求項18】
前記デルタリストが、データブロック全体を用いたユーザデータブロックエリアに書き込まれる、
請求項14に記載のデータ記憶装置。
【請求項19】
前記バッファにおける前記各PBAが、前記PBAに対応する前記LBAを識別し、かつ前記最後のスナップショットを識別する前記スナップショットIDを含むメタデータを含む、
請求項13に記載のデータ記憶装置。
【請求項20】
前記バッファが、前記ディスク上のE領域におけるリングバッファである、
請求項13に記載のデータ記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−243385(P2012−243385A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−112880(P2012−112880)
【出願日】平成24年5月16日(2012.5.16)
【出願人】(503116280)エイチジーエスティーネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】