説明

直動案内装置の損傷防止部品

【課題】直動案内装置を組み立てる際にインナーシール,サイドシール,及びレールカバーに損傷が生じることを防止する直動案内装置の損傷防止部品を提供する。
【解決手段】損傷防止部品32は、案内レール1の軸方向端部からスライダ2を装着することにより直動案内装置を組み立てるに際して、レールカバー8,サイドシール5,及びインナーシール9に損傷が生じることを防止するために使用される。レールカバー8と、レールカバー8から露出する案内レール1の上面1b及び側面1aとから、段差30が形成されているので、液体状の熱硬化性樹脂を、案内レール1の上面1b及び両側面1aに形成されている全ての段差30を覆うように塗布する。そして、加熱処理により熱硬化性樹脂を硬化させれば、全ての段差30を覆う損傷防止部品32が形成される。これにより、段差30が緩和される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動案内装置を組み立てるに際してインナーシール,サイドシール,及びレールカバーに損傷が生じることを防止するために使用される損傷防止部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の直動案内装置の例を、図6,7を参照しながら説明する。図6は、従来の直動案内装置の構成を説明する斜視図である。また、図7は、図6の直動案内装置を軸方向から見た正面図である。
軸方向に延びる横断面略角形の案内レール101の上に、スライダ102が軸方向に相対移動可能に組み付けられている。スライダ102の横断面形状は略コ字状で、その内面の横断面形状は、案内レール101の外面の横断面形状に沿う形状とされている。この案内レール101の両側面101a,101aには、軸方向に延びる2条の転動体軌道面110,110がそれぞれ形成されている。
【0003】
また、スライダ102は、スライダ本体102Aと、その軸方向両端部に着脱可能に取り付けられたエンドキャップ102B,102Bと、で構成されており、スライダ本体102Aの左右両袖部106,106の内側面には、案内レール101の転動体軌道面110,110,110,110に対向する2条の転動体軌道面111,111,111,111が形成されている。
【0004】
そして、案内レール101の転動体軌道面110,110,110,110と両袖部106,106の転動体軌道面111,111,111,111とで、4つの転動体転動路が形成されていて、これらの転動体転動路は軸方向に延びている。なお、案内レール101及びスライダ102が備える転動体軌道面110,111の数は、片側2条に限らず、例えば片側1条又は3条以上などであってもよい。
【0005】
さらに、この転動体転動路内には、軸方向に沿って並べられた複数の転動体103が転動自在に配されていて、これらの転動体103の転動を介してスライダ102が案内レール101に沿って軸方向に滑らかに移動するようになっている。
このような直動案内装置を射出成形機,工作機械(例えば各種研削機),ロボットなどに取り付けて使用すると、案内レール101の転動体軌道面110やその他の露出面にゴミ,塵埃等の異物が堆積して転動体103の転動に支障をきたすおそれがあることから、エンドキャップ102Bには防塵埃用のサイドシール105が取り付けられることが通例である。
【0006】
すなわち、スライダ102の軸方向両端部(各エンドキャップ102Bの軸方向端面)に、略板状のサイドシール105,105が装着されていて、案内レール101とスライダ102との間の隙間の開口のうちエンドキャップ102Bの軸方向端面に開口する部分がシールされ、該隙間への外部からの異物の侵入や、該隙間から外部への潤滑剤の流出が防止されている。
さらに、スライダ本体102A及びエンドキャップ102Bには、サイドシール105を越えてスライダ102内に侵入したゴミ,塵埃等の異物が転動体軌道面110,111に侵入することを防止するために、転動体軌道面111に沿ってインナーシール109が設けられている。
【0007】
また、射出成形機,工作機械(例えば各種研削機),ロボットなどに案内レール101をボルトで固定できるようにするために、案内レール101に取付穴107が形成されている。取付穴107内にゴミ,塵埃等の異物が堆積すると、スライダ102が取付穴107の上方を通過する際にスライダ102の転動体軌道面111にゴミ,塵埃等の異物が付着し、スライダ102の円滑な移動が妨げられるおそれがあるので、例えば金属製のレールカバー108で案内レール101の上面を覆って、取付穴107の上部の開口を塞いでいる。そして、レールカバー108の幅方向両端部は、案内レール101の両側面101aに沿うように下方に向けて折り曲げられている。
【0008】
スライダ102を案内レール101に装着して直動案内装置を組み立てる際には、スライダ102内に保持された転動体103が転動体軌道面111から脱落することを防止するために、案内レール101と略同一の形状に形成された樹脂製の仮軸(図示せず)にスライダ102を仮に組み付けた上、この仮軸を案内レール101と同軸且つ一直線状に配置して、仮軸上のスライダ102を軸方向に移動させて案内レール101上に乗り移らせる。
【0009】
このとき、レールカバー108と、レールカバー108から露出する案内レール101の上面又は側面101aとから、段差130が形成されている。そして、このスライダ102の装着時には、この段差130とサイドシール105及びインナーシール109とが接触するため、レールカバー108,サイドシール105,及びインナーシール109に損傷が生じるおそれがあった。また、スライダ102の装着時にレールカバー108とサイドシール105及びインナーシール109が干渉すると、スライダ102を円滑に移動させることができないおそれがあった。
【0010】
このような問題を解決するため、種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1には、レールカバーの幅方向端部に突き合わされるように突出する突起部を仮軸の軸方向端部に設ける技術が開示されている。仮軸上のスライダを案内レールに乗り移らせる際に、インナーシールは仮軸の突起部上に乗り上がるので、インナーシールがレールカバーと干渉することが防止される。その結果、レールカバーやインナーシールに損傷が生じることが抑制されるとともに、スライダを案内レールに円滑に移動させることができる。
【0011】
また、特許文献2には、断面の外形形状が長手方向に渡って一様ではない仮軸が開示されている。このような構成により、仮軸上のスライダを案内レールに円滑に移動させることができる。さらに、この仮軸の断面形状は直動案内装置の案内レールの断面形状と実質的に同一であり、仮軸の少なくとも一端の断面外形形状の大きさは案内レールの断面外形形状の大きさよりも大きく、仮軸の中央部の断面外形形状の大きさは案内レールの断面外形形状の大きさよりも小さいとされている。そのため、サイドシールの損傷を伴うことなく、スライダを仮軸から案内レールに移動させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−57690号公報
【特許文献2】特開2008−82504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、サイドシールの損傷を防止することは困難であった。また、仮軸の突起部の厚さは非常に薄い場合が多いため、破壊しやすいという問題があった。そのため、仮軸の材質として鋼を使用するなどして突起部の強度を高める必要があるが、仮軸全体の材質を樹脂から鋼に変更しなければならない。
また、特許文献2に開示の技術では、インナーシールの損傷は防止できるものの、案内レールの上面にレールカバーと案内レールとの段差が存在するため、サイドシールの損傷を防止することは困難であった。
【0014】
また、レールカバーと干渉する仮軸の端面の突起部分が仮軸と一体化しているため、レールカバーの位置が案内レールの軸方向にずれるような取付け誤差を許容しにくい。そのため、取付け誤差の影響を受けた場合には、レールカバーと仮軸の突起部分との間に隙間が生じるため、インナーシールに損傷が生じるとともにレールカバーが浮き上がるおそれがあった。さらに、仮軸と案内レールとの間に隙間が生じるため、仮軸上のスライダを案内レールに円滑に移動させることができないおそれがあった。
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、直動案内装置を組み立てる際にインナーシール,サイドシール,及びレールカバーに損傷が生じることを防止する直動案内装置の損傷防止部品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る直動案内装置の損傷防止部品は、軸方向に延びる転動体軌道面を有する断面形状略角形の案内レールと、該案内レールの転動体軌道面に対向する転動体軌道面を有するとともに軸方向に相対移動可能に前記案内レールに取り付けられたスライダと、前記両転動体軌道面の間に形成される転動体転動路内に転動自在に装填された複数の転動体と、前記案内レールの上面及び側面のうちの一部分を覆うレールカバーと、前記スライダの軸方向端部に取り付けられ前記案内レールの外面に摺接して前記案内レールと前記スライダとの間の隙間の開口を密封するサイドシールと、前記スライダの転動体軌道面に沿って形成され且つ前記案内レールの外面又は前記レールカバーに摺接して前記案内レールの上面側から前記スライダの転動体軌道面に異物が侵入することを防止するインナーシールと、を備える直動案内装置を、前記案内レールの軸方向端部から前記スライダを装着して組み立てるに際して、前記レールカバー,前記サイドシール,及び前記インナーシールに損傷が生じることを防止するために使用される損傷防止部品であって、前記レールカバーと、前記レールカバーから露出する前記案内レールの上面又は側面とから形成される段差を、該段差が緩和されるように覆うことが可能となっているとともに、液状樹脂の硬化又は樹脂溶液の固化により形成されたものであることを特徴とする。
このような直動案内装置の損傷防止部品においては、前記段差を覆った際に、前記損傷防止部品のうち前記段差を覆った部分の断面形状が滑らかな曲線状をなすことが可能となっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る直動案内装置の損傷防止部品は、直動案内装置を組み立てる際にインナーシール,サイドシール,及びレールカバーに損傷が生じることを防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る直動案内装置の損傷防止部品の一実施形態を説明する直動案内装置の斜視図である。
【図2】図1の直動案内装置の正面図である。
【図3】インナーシールの構造を説明する部分拡大断面図である。
【図4】仮軸に仮に組み付けたスライダを案内レールに装着する方法を説明する斜視図である。
【図5】損傷防止部品を取り付ける方法を説明する図である。
【図6】従来の直動案内装置の斜視図である。
【図7】図6の直動案内装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る直動案内装置の損傷防止部品の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係る直動案内装置の損傷防止部品の一実施形態を説明する直動案内装置の斜視図であり、図2は、図1の直動案内装置を軸方向から見た正面図である。なお、これ以降の各図においては、同一又は相当する部分には、同一の符号を付してある。
【0019】
軸方向に延びる横断面形状略角形の案内レール1上に、スライダ2が軸方向に相対移動可能に組み付けられている。スライダ2の横断面形状は略コ字状で、その内面の横断面形状は、案内レール1の外面の横断面形状に沿う形状とされている。この案内レール1の両側面1a,1aには、軸方向に延びる2条の転動体軌道面10,10がそれぞれ形成されている。
また、スライダ2は、スライダ本体2Aと、その軸方向両端部に着脱可能に取り付けられたエンドキャップ2B,2Bと、で構成されており、スライダ本体2Aの左右両袖部6,6の内側面には、案内レール1の転動体軌道面10,10,10,10に対向する2条の転動体軌道面11,11,11,11が形成されている。
【0020】
そして、案内レール1の転動体軌道面10,10,10,10と両袖部6,6の転動体軌道面11,11,11,11とで、4つの転動体転動路が形成されていて、これらの転動体転動路は軸方向に延びている。なお、案内レール1及びスライダ2が備える転動体軌道面10,11の数は、片側2条に限らず、例えば片側1条又は3条以上などであってもよい。
さらに、スライダ2は、スライダ本体2Aの左右両袖部6,6の肉厚部分の上部及び下部に、転動体転動路と平行をなして軸方向に貫通する貫通孔からなる直線路(図示せず)を備えている。
【0021】
一方、エンドキャップ2Bは、例えば樹脂材料の射出成形品からなり、断面形状が略コ字状に形成されている。エンドキャップ2B,2Bは、スライダ本体2Aとの当接面(裏面)の左右両側に、転動体転動路とこれに平行な直線路とを連通させる半ドーナッツ状の湾曲路(図示せず)を有している。
そして、直線路と両端の湾曲路とで、転動体3を転動体転動路の終点から始点へ送り循環させる転動体戻し路が構成され、この転動体戻し路と転動体転動路とで、略環状の転動体循環路が形成されている。この転動体循環路内には、例えば鋼製のころからなる多数の転動体3が転動自在に装填されていて、これらの転動体3の転動を介してスライダ2が案内レール1に沿って軸方向に移動するようになっている。なお、図2においては、転動体3はころとされているが、玉を用いてもよい。
【0022】
案内レール1に組みつけられたスライダ2を案内レール1に沿って軸方向に移動させると、転動体転動路内に装填されている転動体3は、転動体転動路内を転動しつつ案内レール1に対してスライダ2と同方向に移動する。そして、転動体3が転動体転動路の終点に達すると、エンドキャップ2B内に備えられたタング部によって転動体転動路からすくい上げられ、湾曲路へ送られる。湾曲路に入った転動体3はUターンして直線路に導入され、直線路を通って反対側の湾曲路に至る。ここで再びUターンして転動体転動路の始点に戻り、このような転動体循環路内の循環を無限に繰り返す。
【0023】
このような直動案内装置を射出成形機,工作機械(例えば各種研削機),ロボットなどにボルトで固定できるようにするために、案内レール1に取付穴7が形成されている。取付穴7内にゴミ,塵埃等の異物が堆積すると、スライダ2が取付穴7の上方を通過する際にスライダ2の転動体軌道面11にゴミ,塵埃等の異物が付着し、スライダ2の円滑な移動が妨げられるおそれがあるので、例えば金属製や樹脂製のレールカバー8で案内レール1の上面1bのほぼ全面を覆って、取付穴7の上部の開口を塞いでいる。そして、レールカバー8の幅方向両端部8aは、案内レール1の両側面1aに沿うように下方に向けて折り曲げられている。
【0024】
また、直動案内装置を射出成形機,工作機械(例えば各種研削機),ロボットなどに取り付けて使用すると、案内レール1の転動体軌道面10やその他の露出面にゴミ,塵埃等の異物が堆積して転動体3の転動に支障をきたすおそれがあることから、エンドキャップ2Bには防塵埃用のサイドシール5が取り付けられている。すなわち、スライダ2の軸方向両端部(各エンドキャップ2Bの軸方向端面)に、案内レール1の外面(上面1b及び両側面1a)に摺接する略板状のサイドシール5,5が装着されていて、案内レール1とスライダ2との間の隙間の開口のうちエンドキャップ2Bの軸方向端面に開口する部分がシールされ、該隙間への外部からの異物の侵入や、該隙間から外部への潤滑剤の流出が防止されている。
【0025】
さらに、図2,3に示すように、スライダ本体2A及びエンドキャップ2Bには、左右両側の転動体軌道面11に沿ってインナーシール9,9が設けられている。すなわち、軸方向に延びるインナーシール9が、スライダ本体2A及びエンドキャップ2Bの内側面に、転動体軌道面11に沿うように取り付けられている。そして、インナーシール9のリップ部9aが、案内レール1の側面1aに沿うように下方に向けて折り曲げられたレールカバー8の幅方向両端部8aに摺接するようになっている。このインナーシール9により、サイドシール5を越えてスライダ2内に侵入したゴミ,塵埃等の異物が案内レール1の上面1b側から転動体軌道面10,11に侵入することが防止される。
【0026】
このような直動案内装置を、案内レール1の軸方向端部からスライダ2を装着することにより組み立てる際には、スライダ2内に保持された転動体3が転動体軌道面11から脱落することを防止するために、案内レール1と略同一の形状に形成された樹脂製の仮軸20にスライダ2を仮に組み付けた上、図4に示すように、この仮軸20を案内レール1と同軸且つ一直線状に配置して、仮軸20上のスライダ2を軸方向に移動させて案内レール1上に乗り移らせる。なお、図4においては、仮軸20上のスライダ2の図示は省略している。
【0027】
このとき、レールカバー8と、レールカバー8から露出する案内レール1の上面1b又は側面1aとから、段差30が形成されている。そして、このスライダ2の装着時には、この段差30(段差30の端面)とサイドシール5及びインナーシール9とが接触するため、レールカバー8,サイドシール5,及びインナーシール9に損傷が生じるおそれがある。また、スライダ2の装着時にレールカバー8とサイドシール5及びインナーシール9とが干渉すると、スライダ2を円滑に移動させることができないおそれがある。
【0028】
そこで、本実施形態においては、レールカバー8,サイドシール5,及びインナーシール9に損傷が生じることを防止するために、損傷防止部品32を使用する。すなわち、段差30を覆うように損傷防止部品32を取り付けて、段差30を緩和する。そして、この損傷防止部品32は、液状樹脂の硬化又は樹脂溶液の固化により形成されたものである。このとき、段差30を覆った損傷防止部品32は、段差30を覆った部分の断面形状が滑らかな曲線状をなしていることが好ましい。
【0029】
損傷防止部品32を取り付けて段差30を緩和すれば、スライダ2の装着時にサイドシール5及びインナーシール9は損傷防止部品32の表面上を接触しつつ移動するので、スライダ2の装着時のレールカバー8とサイドシール5及びインナーシール9との干渉(段差30の端面との接触)がほとんど生じない。よって、直動案内装置を組み立てる際にレールカバー8,サイドシール5,及びインナーシール9に損傷が生じることはほとんどない。また、サイドシール5及びインナーシール9が案内レール1の外方側に向かって徐々に変形しながら、スライダ2が案内レール1に装着されるので、スライダ2を案内レール1に円滑に装着することが可能である。
損傷防止部品32は、任意の位置の段差30に取り付けることが可能であるため、レールカバー8に取り付け誤差があったとしても、取り付け誤差を含む任意の位置において段差30を緩和することができる。
【0030】
以下に、損傷防止部品32について、図5を参照しながらさらに詳細に説明する。なお、直動案内装置の構成や直動案内装置の組み立て方法、さらに損傷防止部品32の作用効果については、前述の通りであるので、その部分の説明は省略する。
例えば金属製のレールカバー8で、案内レール1の上面1bのほぼ全面が覆われており、取付穴7の上部の開口が塞がれている。そして、レールカバー8の幅方向両端部8aは、案内レール1の両側面1aに沿うように下方に向けて折り曲げられている。レールカバー8から露出しているのは、上面1b、側面1aともに案内レール1の軸方向一端部のみである。
【0031】
レールカバー8と案内レール1の露出面とで、案内レール1の上面1b及び側面1aに段差30が形成されているので、この段差30を覆うように損傷防止部品32が取り付けられている。
この損傷防止部品32は、樹脂で構成されている。この樹脂製の損傷防止部品32の原材料としては、例えば、樹脂の溶液、液体状の硬化性樹脂、粘性体状の硬化性樹脂があげられる。このような液状の原材料を、案内レール1の上面1b及び側面1aに形成されている段差30を全て覆うように塗布した後に、樹脂の溶液の場合は固化、硬化性樹脂の場合は硬化させれば、段差30を覆う損傷防止部品32が形成される。
【0032】
さらに詳述すると、樹脂の溶液の場合は、加熱,減圧等の慣用の方法により溶媒を気化させて固化させれば、樹脂からなる損傷防止部品32が形成される。また、液体状の硬化性樹脂や粘性体状の硬化性樹脂の場合は、加熱,放射線照射(例えば紫外線照射),経時等の慣用の方法により硬化性樹脂を硬化させれば、固体状の硬化性樹脂からなる損傷防止部品32が形成される。溶液や硬化性樹脂を塗布するだけの作業であるため、金型等が不要となり損傷防止部品32の製造コストの低減が可能である。
【0033】
ただし、樹脂の溶液、液体状の硬化性樹脂、又は粘性体状の硬化性樹脂を型に塗布した後に、固化又は硬化させ、固体状物を型から取り外すことによって損傷防止部品32を製造してもよい。そして、このように製造した損傷防止部品32を、段差30を覆うように案内レール1に取り付けてもよい。
損傷防止部品32を取り付ける際には、図5の(a),(b)に示すように、例えば液体状の熱硬化性樹脂を、案内レール1の上面1b及び両側面1aに形成されている全ての段差30を覆うように塗布する。そして、加熱処理により熱硬化性樹脂を硬化させれば、全ての段差30を覆う損傷防止部品32が形成される。これにより、段差30が緩和されている。そして、損傷防止部品32のうち段差30を覆った部分の断面形状は、滑らかな曲線状をなしている。
【0034】
また、液体状の熱硬化性樹脂の代わりに、経時により液体から半固体状に硬化するシリコーン樹脂を用いてもよい。損傷防止部品32が半固体状であるため、案内レール1に取り付けた損傷防止部品32を容易に取り外すことができる。また、再使用することも可能である。すなわち、案内レール1から取り外した損傷防止部品32を、再度案内レール1に取り付けることも可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 案内レール
1a 側面
1b 上面
2 スライダ
2A スライダ本体
2B エンドキャップ
3 転動体
5 サイドシール
8 レールカバー
9 インナーシール
10 転動体軌道面
11 転動体軌道面
30 段差
32 損傷防止部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる転動体軌道面を有する断面形状略角形の案内レールと、該案内レールの転動体軌道面に対向する転動体軌道面を有するとともに軸方向に相対移動可能に前記案内レールに取り付けられたスライダと、前記両転動体軌道面の間に形成される転動体転動路内に転動自在に装填された複数の転動体と、前記案内レールの上面及び側面のうちの一部分を覆うレールカバーと、前記スライダの軸方向端部に取り付けられ前記案内レールの外面に摺接して前記案内レールと前記スライダとの間の隙間の開口を密封するサイドシールと、前記スライダの転動体軌道面に沿って形成され且つ前記案内レールの外面又は前記レールカバーに摺接して前記案内レールの上面側から前記スライダの転動体軌道面に異物が侵入することを防止するインナーシールと、を備える直動案内装置を、前記案内レールの軸方向端部から前記スライダを装着して組み立てるに際して、前記レールカバー,前記サイドシール,及び前記インナーシールに損傷が生じることを防止するために使用される損傷防止部品であって、
前記レールカバーと、前記レールカバーから露出する前記案内レールの上面又は側面とから形成される段差を、該段差が緩和されるように覆うことが可能となっているとともに、液状樹脂の硬化又は樹脂溶液の固化により形成されたものであることを特徴とする直動案内装置の損傷防止部品。
【請求項2】
前記段差を覆った際に、前記損傷防止部品のうち前記段差を覆った部分の断面形状が滑らかな曲線状をなすことが可能となっていることを特徴とする請求項1に記載の直動案内装置の損傷防止部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−154431(P2012−154431A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14362(P2011−14362)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】