説明

直接的な化学的溶解のための方法および組成物

直接的な化学的溶解のための組成物は、アッセイ適合性のバッファー組成物およびアッセイ適合性の界面活性剤を含んでいる。検体貯蔵のための組成物と併せる場合、このような組成物は、生物学的試料中の細胞から溶解した核酸およびタンパク質に対する望ましくない修飾を防ぐ。このような組成物からの試料のアッセイは、遠心分離および長時間の高温処理加工などの高価で時間を要するステップを必要としない。本発明の直接的な化学的溶解のための組成物は、輸送媒体をデカントして除く必要なしに、または他の点で輸送媒体をアッセイ適合性のバッファーと交換する必要なしに、生物学的試料中の細胞から核酸の直接的な抽出を可能にする。細胞から核酸を抽出するために、試料をプロテイナーゼKまたは別の酵素と併せる必要はない。細胞を溶解してアッセイ用の標的核酸を得る方法および直接的な化学的溶解のための組成物を試料と併せるためのキットも企図される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね、保存されている生物学的試料に対して診断的試験を行うための方法および組成物に関し、特に、このような保存されている試料に対して核酸の抽出および増幅の方法を行うことに関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示が参照によって本明細書に組み入れられる、2009年9月3日出願の米国特許仮出願第61/239,553号の出願日の利益を主張するものである。
【0003】
医学診断および医学研究の分野において、研究を支援して、対象の状態を決定し、医学診断を行うために患者の現在の状態を決定し、治療または処置の現在の経過に対する患者の反応を決定するなどのために、試料(例えば、組織)は、患者または対象(例えば、ヒト患者、ヒト対象、ヒト疾患の実験動物モデル)から採取される。
【0004】
医学診断を行うため、または科学研究において用いるためのいずれかの、分析用に得られる試料は、対象から除去されたときに試料を分解または腐敗から防ぐために、特別な輸送/保存の媒体中に配置されることが多い。このように、試料は、対象から除去されたときにそれがあった正確な条件にできるだけ近くある。これにより、試料は確実に、試料採取時の患者または対象の状態を正確に反映し、したがってその後の試料のあらゆる試験において最も正確な結果をもたらす。これら試験のいくつかは、核酸(例えば、デオキシ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA))の抽出および増幅を伴う。
【0005】
生物学的試料からのDNAおよび/またはRNAの抽出は、他のステップの中でも、細胞壁の溶解(原核細胞の場合)、細胞膜の溶解(ある種の真核細胞の場合)、またはウイルスのカプシドの溶解(ウイルスの場合)を必要とする。その後の増幅は、部分的に、標的核酸内の特定の部位へのプライマーの付着を必要とする。
【0006】
核酸の抽出およびその後の増幅には、利用可能な数々のプロトコールが存在する。これらプロトコールのいくつかは、ハイスループットの装置を利用するものである。ハイスループットの装置は、試料が好適な化学薬品と一緒に装置内に配置され、抽出および増幅のステップが操作者からのさらなる入力なしに行われる意味で自動的である(例えば、Becton Dickinson(登録商標)BD ProbeTec Qx AmplifiedのDNA Assay Package InsertによるViper(商標)XTR System、Becton Dickinson、2008年)。他のプロトコールはそれほど洗練された設備を利用しておらず、手操作の手順と呼ばれるのが典型的である。しかし、プロトコールにかかわらず、核酸を放出させるために細胞またはウイルスのカプシドを溶解する必要性、試料の残りから核酸を抽出するために酸化第二鉄などの粒子に核酸を付着させる必要性、および核酸を増幅するために標的核酸に対してプライマーを付着させる必要性が残っている。
【0007】
輸送媒体(例えば、液体の細胞学的媒体)は、1つまたは複数の方法においてある種の細胞を保存する1つまたは複数の構成成分を含んでいるのが典型的である(例えば、細胞溶解による細胞壁または細胞膜の破壊を防ぐ)。さらに、これら構成成分のいくつかは、試料の保存および除染の二重の目的を果たしている。これら構成成分は、細胞膜および細胞壁を溶解する能力、抽出された核酸が核酸抽出に利用された粒子に付着する能力、および標的核酸を増殖する能力を妨害することが知られている。
【0008】
SurePath(登録商標)(Tripath Imaging,Inc.、N.C.)溶液、またはThinPrep(登録商標)PreservCyt(登録商標)溶液(Hologic Inc.、MA)などの液体ベースの細胞学的組成物は、それらに曝露された試料から増幅可能な標的核酸を抽出する能力に有害に影響を及ぼす。この観察される有害効果を説明するのに、1)媒体中の構成成分による核酸の分解、2)媒体中の構成成分による核酸の化学的改変、および3)抽出および増幅用の核酸の放出を阻害する、組織中の細胞溶解メカニズムの阻害を含む、多くの理由が示唆されている。抽出されたDNAに対する液体の細胞学的組成物の有害効果を避けるために、細胞は溶解前に組成物から抽出される。液体の細胞学的組成物を細胞からデカントするために、遠心分離が抽出に必要とされるのが典型的である。次いで、細胞をバッファー中に再懸濁し、酵素で溶解する。このような余分なステップは、例えば、前述のViper(商標)Systemなど、多くのハイスループットの自動化装置と適合性でないのが典型的である。自動化が関与しない状況でも、このようなステップはやはり時間を要するものである。これらのステップが必要とするさらなる時間は試験結果の獲得を遅らせることがあり、避けるのが好ましい。
【0009】
核酸を精製するための媒体キットの一例は、QiagenからのQIAamp MinElute Media Kitである。この媒体キットは、非特許文献1に記載されている。QIAampの手順は、溶解、結合、洗浄、および溶出の4つのステップを有すると記載されている。この手順において、プロテイナーゼKを用いて試料を溶解し、引き続きシリカゲルのライセート上に吸収することによって、核酸をQIAmp MinEluteカラムに結合させる。QIAampの手順は証明されている方法であるが、わずか250μlの液体の細胞学的媒体の精製に最適化されており、労働力を要し、時間を要する(すなわち、異なる温度でのインキュベート65分、遠心分離5ステップ、減圧ろ過2ステップ、およびいくつかの混合ステップを含む18ステップを必要とする)。このような多ステップ方法の使用が、以前は、液体の細胞学的媒体およびパラフィン包埋された組織など、固定された試料から核酸を上首尾に精製するのに必要とされていた。固定化された媒体からの核酸の精製は、媒体中の固定液が試料中の標的分子の望ましくない化学修飾を導入するので、新鮮な組織から精製するより困難であることはよく知られている。反応は、試料において架橋を生じることがあり、またはその他の点で核酸を修飾することがある。輸送媒体中の他の添加物も、望ましくない架橋を引き起こすことがある。例えば、輸送媒体中にホルマリンが存在することによる架橋は、非特許文献2に記載されている。ホルムアルデヒドも、非特許文献3に記載されている通り、核酸とタンパク質との間に架橋を生成する。非特許文献4に記載されている通り、ホルマリン固定されているパラフィンロウから採取した細胞からのDNA抽出は処理加工のステップ(例えば、長時間の煮沸)を必要とするのが典型的であり、処理加工のステップは増幅用のDNAの量に有害に影響を及ぼし得る。Sepp,Rらによると、試料の煮沸は、他の事項の中でも、プロテイナーゼKを不活化するのに必要とされる。さらに、プロテイナーゼKは、多くの固定液中の構成成分によって阻害され、それにより、直接的な使用は、タンパク質の架橋を破壊する上で有効性が限定されたものとなっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】the QIAmp MinElute Media Handbook dated February, 2004
【非特許文献2】Rai, V.K., et al. "Modeling formalin fixation and antigen retrieval with bovine pancreatic ribonuclease A : I-Structural and functional alterations", Lab. Invest. Vol. 84 (3) : 292-299 (March 2004)
【非特許文献3】Solomon, M.J., "Formaldehyde-mediated DNA-protein crosslinking : A probe for in vivo chromatin structures," Proc Natl. Acad. Sci. Vol. 82, pp. 6470-6474 (October 1983)
【非特許文献4】Sepp, R., et al . "Rapid techniques for DNA extraction from routinely processed archival tissue for use in PCR, " J. Clin. Pathol. Vol. 47:318-323 (1994)
【発明の概要】
【0011】
したがって、核酸に対する架橋および他の望ましくない修飾の問題を克服するが、試料に有害に影響を及ぼし得、またはプロセスを高価で時間を要するものにし得る、長時間の高温の処理加工を必要としない、組織ならびに他の細胞および細胞成分からDNAを抽出するための方法および組成物が引き続き求められている。
【0012】
検体貯蔵のための組成物と併せるための直接的な化学的溶解のための組成物は、アッセイ適合性のバッファー組成物と、アッセイ適合性の界面活性剤とを含んでいる。このような組成物は、生物学的試料中の細胞から溶解される核酸に対する望ましくない修飾を防ぎ、このような組成物からの試料のアッセイは、遠心分離および長時間の高温の処理加工などの高価で時間を要するステップを必要としない。
【0013】
本発明の直接的な化学的溶解のための組成物は、細胞学的媒体をデカントして除く必要なく、または他の点で細胞学的媒体をアッセイ適合性のバッファーと交換する必要なく、生物学的試料中の細胞から核酸の直接的な抽出を可能にする。細胞の溶解は、試料が依然として直接的な化学的溶解のための組成物と併せられている場合に直接起こることがある。細胞から核酸を抽出するために、試料をプロテイナーゼKまたはいくつかの他の酵素と併せる必要性はない。
【0014】
一実施形態において、直接的な化学的溶解のための組成物は、試料の希釈、貯蔵、輸送などに用いられる液体ベースの細胞学的(LBC)組成物に、添加剤として配置される。試料からNAを抽出する前に、試料は予温またはインキュベートされるので、直接的な化学的溶解のための組成物は試料の溶解を可能にする。LBCの例には、それだけには限定されないが、SurePath LBCおよびThinPrep PreservCyt LBCが含まれる。
【0015】
一実施形態において、検体貯蔵のための組成物と併せるための直接的な化学的溶解のための組成物は、アッセイ適合性のバッファー組成物およびアッセイ適合性の界面活性剤を有する。好ましい実施形態において、アッセイ適合性のバッファー組成物は、バッファー成分および金属塩成分を有する。好ましい一実施形態において、直接的な化学的溶解のための組成物のpHは約6.6から約10の範囲にある。
【0016】
適切な金属塩の例には、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、酢酸ナトリウム(C23Na02)、および硫酸アンモニウム((NH42S04)が含まれる。記載する実施形態において、直接的な化学的溶解のための組成物中の金属塩の濃度は少なくとも約0.01Mである。好ましくは、塩はNaClであり、塩濃度は約0.01Mから約1Mの範囲にある。
【0017】
好ましい実施形態において、バッファー成分の濃度は約0.2Mから約2Mの範囲にある。適切なバッファー成分の例には、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、およびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの酸塩が含まれる。
【0018】
ある実施形態において、直接的な化学的溶解のための組成物は非イオン性界面活性剤も含む。適切な界面活性剤の例には、ポリエチレングリコールベースの非イオン性界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル(Trioton(登録商標)x−100として市販されている)が含まれる。適切な非イオン性界面活性剤のさらなる例には、ポリソルベート界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(商業的にポリソルベート20またはTween(登録商標)20として知られる)が含まれる。Tween(登録商標)20およびTriton(登録商標)x−100は両方とも市販されている。好ましい実施形態において、非イオン性界面活性剤の濃度は、約0.01から約2パーセント(v/v)の範囲にある。
【0019】
ある実施形態において、直接的な化学的溶解のための組成物はグリシンも含む。
【0020】
好ましい一実施形態において、バッファー成分はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの酸塩であり、バッファー成分の濃度は約0.75Mであり、NaCl濃度は約0.19Mであり、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル濃度は約0.75パーセント(v/v)である、請求項10に記載の直接的な化学的溶解のための組成物。
【0021】
本発明は、検体貯蔵のための組成物中に貯蔵される試料を分析するための方法も企図するものである。この方法において、試料を、上記に記載した通り、直接的な化学的溶解のための組成物と併せる。少なくとも試料の一部分を、少なくともいくらかの検体貯蔵のための組成物と一緒に検体貯蔵のための組成物から除去する。検体貯蔵のための組成物と併せた試料を、次いで、試料の除去された部分中の細胞の少なくとも一部分を溶解するのに十分な時間、少なくとも80℃の温度でインキュベートする。核酸を試料から抽出し、次いで増幅する。抽出は、自動化または手操作のプロセスのいずれかを用いて起こり得る。ある実施形態において、標的核酸はRNAまたはDNAのいずれかである。
【0022】
一実施形態において、試料を、a)アッセイ適合性のバッファー組成物、およびb)アッセイ適合性の界面活性剤を含む直接的な化学的溶解のための組成物と併せる。試料の少なくとも一部分を検体貯蔵のための組成物から除去し、除去された部分は検体貯蔵のための組成物をやはり含んでいる。試料の除去された部分を、少なくとも80℃である温度で、試料の除去された部分中の少なくとも一部分の細胞を溶解するのに十分な時間インキュベートする。上記に記載した通り、核酸を抽出し、増幅する。この実施形態において、試料の除去された部分は、溶解および抽出のステップの前に検体貯蔵のための媒体からさらに分離されない。抽出ステップは手操作でも、または自動化のいずれかでもよい。
【0023】
本発明の他の実施形態は、直接的な化学的溶解によって、検体貯蔵のための組成物から除去した検体から核酸を抽出するための診断キットを含む。診断キットは、上記に記載した直接的な化学的溶解のための組成物を含む。組織試料を保存するために、検体貯蔵のための組成物が提供される。
【0024】
一実施形態において、核酸を抽出するための診断キットは、a)アッセイ適合性のバッファー成分、およびb)非イオン性界面活性剤を有する直接的な化学的溶解のための組成物を有する検体貯蔵のための組成物を含み、検体貯蔵は組織試料を保存するために提供される。アッセイ適合性のバッファー組成物は、バッファー成分および金属塩を有する。一実施形態において、金属塩はNaClであり、直接的な化学的溶解のための組成物中のNaClの濃度は少なくとも0.01Mであり、バッファー成分の濃度は約0.2Mから約2Mの範囲にある。直接的な化学的溶解のための組成物のpHは約7から約9の範囲にあり、非イオン性界面活性剤の濃度は約0.01から約2パーセント(v/v)の範囲にある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1A】直接的な化学的溶解のための組成物の一実施形態の効率に対するpHの効果を示す図である。
【図1B】直接的な化学的溶解のための組成物の一実施形態の効率に対するpHの効果を示す図である。
【図1C】直接的な化学的溶解のための組成物の一実施形態の効率に対するpHの効果を示す図である。
【図1D】直接的な化学的溶解のための組成物の一実施形態の効率に対するpHの効果を示す図である。
【図2】直接的な化学的溶解のための組成物の一実施形態および本明細書に開示する方法を用いて溶解される試料からのタンパク質のバイオマーカーの検出を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の少なくとも一つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、以下の発明を実施するための形態において記載され、または実施例によって例証される詳細に制限されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法において実践され、もしくは行われることが可能である。また、本明細書において用いられる言葉遣いおよび専門用語は記述を目的とするものであり、限定的なものとみなしてはならないことを理解されたい。以下は、本明細書において用いるある種の語の定義である。
【0027】
直接的な化学的溶解のための組成物は、試料から化学的溶解のための組成物を分離する介在性のステップを必要とせずに、核酸(NA)のその抽出のための試料において、細胞の成分の溶解を可能にする組成物である。直接的な化学的溶解のための組成物はまた、これらの構成成分をアッセイ/検出する前に、化学的溶解のための組成物を試料から分離する必要なしに、試料の他の構成成分(例えば、タンパク質のバイオマーカー)のアッセイ/検出を可能にする。
【0028】
NAの例には、一本鎖または二本鎖のDNAおよびRNAがある。本方法によって抽出することができるNAのさらなる例には、動物、植物、細菌、ウイルス、真菌、および寄生生物体からのゲノムのDNAまたはRNAだけではなく、ミトコンドリアまたは葉緑体のDNAまたはRNAも含まれる。本方法によって抽出することができる他のクラスのNAの例には、mRNAだけでなく、トランスファーRNA、リボソームRNA、および小型の核RNA、ならびにプラスミドRNAも含まれる。本発明の方法によって抽出されるDNAおよびRNAは、完全に、もしくは部分的のいずれかで、一本鎖であってよく、または他の三次もしくは四次構造を有していてもよい。NAを含んでいる試料は、白血球細胞などの生存能力のある試料、遺伝子組換え技術によって調製されるのが典型的であるベクターなどを含む宿主細胞の培養物、ウイルスまたはファージに感染している細胞、血液中のウイルス、および試料の微生物の培養物によって例証される。培養物は微生物を含んでいてよいが、その上清だけでも十分である。人工的な培養物だけではなく、天然に存在する培養物も適用可能である。微生物の塊を含む試料の場合は、適宜ホモジナイズまたは超音波処理を行って、良好な効率の抽出を達成してもよい。
【0029】
代替の試料タイプには、それだけには限定されないが、感染性疾患または非感染性疾患の診断のための生物学的検体、環境検体、または食品もしくは水の試料が含まれる。標的のNAは特定の配列であっても、または1クラスのNAであってもよい。1クラスの核酸は、特定のアッセイ方法に対して、その化学的、物理的、または生物学的性質が、NA抽出に用いられる方法において効果的に抽出されることが予想され得るような分子である。必ずではないが、典型的に、1クラスのNAは全てのDNAもしくはDNAの類似体であり、または全てのRNAもしくはRNAの類似体である。他の標的は、タンパク質のバイオマーカーなどのタンパク質の配列であってよい。
【0030】
標的化される生物体には、それだけには限定されないが、トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、ヒトパピローマウイルス(Human Pappilloma Virus)、ヒト免疫不全ウイルス1/2(Human Immunodeficiency Virus 1/2)、C型肝炎ウイルス(Hepatitis C Virus)、B型肝炎ウイルス(Hepatitis B Virus)、重症急性呼吸器症候群ウイルス(Severe Acute Respiratory Syndrome Virus)、インフルエンザA/B(Influenza A/B)、単純ヘルペスウイルス1〜6(Herpes Simplex Viruses 1−6)、エンテロウイルス(Enteroviruses)、ウエストナイルウイルス(West Nile Virus)、パラインフルエンザウイルス(Parainfluenza viruses)、アデノウイルス(Adenoviruses)、呼吸器合胞体ウイルスA/B(Respiratory Syncytial Virus A/B)、パラ結核菌(Mycobacterium paratuberculosis)、マイコバクテリウムアビウムイントラセルラーレ複合体(Mycobacterium avium−intracellulare complex)、結核菌群(Mycobacterium tuberculosis complex)、サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus)、B群溶連菌(Group B Streptococcus)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、およびパラ百日咳菌(Bordetella parapertussis)が含まれ得る。
【0031】
本発明の一態様において、標的核酸は、以下の1つまたは複数の源からの特定のRNAまたはcDNAである:細菌の病原体、細菌の非病原体、ウイルスの病原体、ウイルスの非病原体、真菌の病原体、真菌の非病原体、酵母菌の病原体、酵母菌の非病原体、寄生体の病原体、寄生体の非病原体、植物、動物の生成物、食品、試料マトリックス内の全RNAもしくはcDNA、全体の原核生物のRNAもしくはcDNA、全体の真核生物のRNAもしくはcDNA、または全体のウイルスのRNAもしくはcDNA。
【0032】
本発明の別の一態様において、探求される標的核酸は以下の1つまたは複数の源からのDNAである:細菌の病原体、細菌の非病原体、ウイルスの病原体、ウイルスの非病原体、真菌の病原体、真菌の非病原体、酵母菌の病原体、酵母菌の非病原体、寄生体の病原体、寄生体の非病原体、植物、動物の生成物、食品、試料マトリックス内のRNA全体、原核生物のゲノムDNAの全体、真核生物のゲノムDNAの全体、または全体のウイルスのRNA。
【0033】
本発明の別の一態様において、標的はタンパク質のバイオマーカーである。
【0034】
検体貯蔵のための組成物は、試料中の細胞成分から核酸を抽出する前に、生物学的試料を貯蔵およびまたは輸送するのに用いられるあらゆる組成物である。上記に記載した通り、検体貯蔵のための組成物は、LBC媒体、パラフィン媒体などを含む。
【0035】
本明細書で用いられるアッセイ適合性は、試料(例えば、抽出された核酸/タンパク質)が曝されるアッセイに著しく有害に影響を及ぼさないあらゆる組成物である。例えば、アッセイ適合性の組成物は、タンパク質のバイオマーカーなど、核酸または他の試料の構成成分を検出するための下流のアッセイの能力に有害に影響を及ぼすやり方で、試料中の抽出された核酸を修飾しない。
【0036】
一実施形態において、本明細書に記載する直接的な化学的溶解のための組成物は、2つの成分のアッセイ適合性のバッファー組成物を有する。アッセイ適合性のバッファー組成物は、単独で、または化学的溶解のための組成物の他の構成成分と、もしくは抽出された核酸の構成成分(例えば、検体貯蔵のための組成物の残部)と併せた場合のいずれかに、核酸を検出するための下流のアッセイの能力に有害に影響を及ぼすやり方で試料中の抽出された核酸を修飾しない。アッセイ適合性のバッファー組成物の第1の成分はアッセイ適合性のバッファーである。このようなバッファーは当業者にはよく知られており、本明細書において徹底的に列挙しない。適切なバッファーの例には、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンおよびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの酸塩(本明細書における、Tris HCl)が含まれる。直接的な化学的溶解のための組成物中のバッファーの最終の作業用濃度は、約0.2Mから約2Mの範囲にある。バッファー成分の濃度が約0.5Mから約1Mの範囲にあるのが好ましい。本明細書における濃度は全て、最終の作業用濃度として表される(すなわち、直接的な化学的溶解のための組成物が試料と併せられる濃度)。
【0037】
アッセイ適合性のバッファーの第2の成分は塩である。適切な塩の例には、NaCl、KCl、C23Na02(酢酸ナトリウム)および(NH42S04(硫酸ナトリウム)が含まれる。好ましい実施形態において、塩は金属塩であり、最も好ましくはNaClである。直接的な化学的溶解のための組成物中の塩の濃度は、約0.01Mから約1Mの範囲にある。好ましい実施形態において、金属塩の濃度は約0.1Mから約0.5Mであり、最も好ましくは約0.1Mから約0.4Mである。特定の直接的な化学的溶解のための組成物中の塩濃度は、組成物中のバッファー、pH、および界面活性剤(ある場合には)に依存する。
【0038】
直接的な化学的溶解のための組成物はアッセイ適合性の界面活性剤も含む。適切な界面活性剤の例には、上記に記載したTriton(登録商標)X−100およびTween(登録商標)20(ポリソルベート20)が含まれる。アッセイ適合性は上記で規定した通りである。好ましい一実施形態において、アッセイ適合性の界面活性剤はポリエチレングリコールベースの非イオン性界面活性剤である。非イオン性界面活性剤の濃度は約0.01から約2パーセント(v/v)の範囲にある。好ましい実施形態において、非イオン性界面活性剤はポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテルである。アッセイ適合性の界面活性剤は当業者にはよく知られており、本明細書では詳しく論じない。
【0039】
直接的な化学的溶解のための組成物は約6.6から約10の範囲のpHを有する。好ましい実施形態において、pHは約7から約9の範囲にある。
【0040】
本明細書に記載する直接的な化学的溶解のための組成物は、抽出可能および増幅可能の両方のNAをもたらすために典型的にNAと媒体の構成成分との間に生じる架橋を低減することによって媒体に固定された試料からの核酸の抽出を促進する。一実施形態において、試料を直接的な化学的溶解と併せ、細胞の少なくとも一部分を化学的に溶解するために、およびNA架橋が起こり、NAを脱架橋する程度に約100℃から約130℃の範囲の温度で約10分から約30分の範囲の時間インキュベートする。この後、試料からNAを抽出する。好ましい実施形態において、NAはDNAであり、DNA抽出は酸化第二鉄粒子を用いてDNAを磁気分離することによって遂行される。好ましい実施形態において、抽出のプロトコールはBD Viper XTR(商標)プラットフォームと適合性である。このようなプロトコールは、DNAの酸化第二鉄粒子との結合、粒子から試料の残りの洗浄、および粒子からのDNAの溶出をもたらす。抽出されたDNAは適切な増幅および検出のアッセイ(例えば、リアルタイムPCR)にかけられる。
【0041】
別の一実施形態において、試料を標的の抗原(例えば、タンパク質のバイオマーカー)に対して分析する。試料から抽出された抗原を検出するための従来のアッセイは当業者にはよく知られており、本明細書において詳しく記載しない。一例において、標的の抗原に結合し、アッセイするために抗体捕獲分子が用いられる。このような捕獲のための抗体法は、様々な異なるフォーマットにおいて日常的に用いられている。最も一般的に行われている技術の一つは、タンパク質の診断適用において日常的に用いられている酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)である。タンパク質検出方法の望ましい特徴は、これらが捕獲抗体に曝露され得、また場合によってはそれらの天然の形状を保持し、高次構造的に依存する抗体を標的の抗原に特異的に結合させるように、細胞から抗原を保存および回収の両方をする能力である。別の望ましい特徴は、正しい抗体分子を標的に対して選択的に結合させ、非特異的な相互作用を洗浄ステップの間に除去させる能力である。タンパク質のバイオマーカーの検出は、それゆえ、アッセイ適合性のバッファーが、特異的なタンパク質結合性の相互作用と適合性であり、促進することを必要とする。本明細書に記載する直接的な化学的溶解のための組成物は細胞を溶解するのに十分強力であり、それによってこれらの細胞のタンパク質含有物を遊離する。直接的な化学的溶解のための組成物は遊離されたタンパク質に有害に影響を及ぼさず、タンパク質をタンパク分解酵素から保護する。最後に、アッセイ適合性のバッファーは特異的な抗体の結合と適合性であり、変性効果、イオン相互作用などによりこれらのプロセスを妨害しない。
【0042】
以下に、上記に記載した概念を具体的に説明するための実施例をいくつか提供する。以下の実施例は本発明の高度に特異的な実施形態であり、添付の特許請求の範囲と一致するやり方における以外は、本発明を限定するものと決して解釈してはならない。
【実施例1】
【0043】
SurePath LBC中に貯蔵された患者試料からのHPV DNAの抽出
直接的な化学的溶解のための組成物としての有効性を決定するために、2つの溶液を比較した。第1番目は1M Tris−HCl、0.5M NaCl、1%Triton X−100を含みpH9.0を有する希釈液であった(本明細書における希釈液1)。第2の希釈液は330mM Tris−HCl、16.67mM NaClを含みpH7.8を有していた(本明細書における希釈液2)。患者由来の保存細胞を収集し、SurePath LBC中21日間貯蔵した。希釈液1および希釈液2は両方とも、本発明の直接的な化学的溶解のための組成物の実施形態である。
【0044】
具体的に述べると、患者由来の保存細胞を約12,500細胞/mlの濃度でSurePath LBC中に希釈した。Becton Dickinson(BD)Viper(商標)ツール上でのアッセイ用に試験チューブ48本を準備した。チューブ24本は希釈液1を0.85ml有し、24本は同量の希釈液2を有した。希釈した患者由来の細胞(0.25ml)を試料チューブ48本の各々に加えた。試料と併せた後、最終の作業用バッファーの濃度は以下の通りであった:i)希釈液1中、0.77M Tris−HCl、0.386M NaCl、0.77% Triton X−100、(pHおよそ9.0)、およびii)希釈液2中、0.255M Tris−HCl、0.0129M NaCl(pHおよそ7.8)。
【0045】
各群24本から8本の試料を、i)室温、ii)80℃、またはiii)120℃のいずれかで、全て24時間インキュベートした。次いで、試料を室温で25分間冷却した。次いで、酸化第二鉄(FEO)粒子を用いて試料を改変Viper(商標)XTR DNA抽出プロトコールに供し、予温またはインキュベートした試料0.8mlを抽出に用いた。Viper(商標)XTR用の抽出プロトコールは市販されており、本明細書において詳しく記載しない。DNAが抽出される程度まで、試料用のDNAを溶出/中和バッファー400μl中に溶出した。溶出液(20μl)をPCRマスター混合物5μlと混合し、HPV18およびHPV45のプラスミドDNAの標的20コピー/反応を、PCR阻害の試験用に各反応中に後スパイクした。リアルタイムPCRアッセイをHPV16、18、および45、ならびにヒトDNA内在性の対照遺伝子HBBの検出に用いた。DNA検出を、得られたサイクル閾値(Ct)の値によって決定した。Ct値が約30未満であれば、試料中に標的核酸が豊富にあることを示す強力な陽性反応を表す。Ct値が30〜35であれば、試料中に標的核酸が中程度から少量あることを示す中程度から低度の陽性反応を表す。Ct値が35〜45であれば、試料中に最小量の標的核酸があることを示す弱い反応を表す。Ct値が45を超えれば、「Ctなし」と表現され、DNAが検出されないことを示す。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
希釈液1中120℃のインキュベーションは、希釈液2中120℃のインキュベーションと比べてHPV16およびHBBのCt値をそれぞれ1.90および2.77低減した。両方の希釈液中室温または80℃でのインキュベーションは、HPV16およびHBBに対して増幅をもたらさなかった。スパイクしたHPV45およびHPV18の検出により、アッセイ自体は作用したが、HPV16およびHBBは低いインキュベート温度では検出されないことが確認され、溶解、抽出、または検出はこれらの試料中で生じなかったことを示していた。
【実施例2】
【0049】
様々な希釈液および個々の希釈成分を用いたSurePathからのHPV DNAの抽出
患者由来の保存細胞を、12500細胞/mlでSurePath LBC中に希釈した。BD Viper試料チューブ48本を準備した。各群にはチューブ8本が存在し、全6群(a〜f)であった。各群において以下のバッファーの1つの0.85mlを加えた:
a.1M Tris(pH9.0)のみ、
b.0.5M NaCl、
c.1% Triton X−100、
d.a+b+c。
【0050】
希釈した患者の細胞(0.25ml)を試料チューブ48本の各々に加えた。試料と併せた後、最終の作業用バッファー濃度は以下の通りであった:a群 0.77M Tris−HCl;b群0.386M NaCl;c群 0.77% Triton X−100;ならびにd群 0.77M Tris−HCl、0.386M NaCl、および0.77% Triton X−100(バッファーa、b、およびcの組合せ)。試料チューブ全てを120℃で20分間インキュベートした。次いで、試料を25分間室温に冷却した。次いで、試料をBD Viper(商標)XTRツール上に搭載し、上記に記載した通り0.8mlを抽出に用いた。DNAを、溶出/中和バッファー400μl中に試料から溶出した。溶出液(20μl)を、PCRマスター混合物5μlと混合した。HPV18およびHPV45のプラスミドDNAの標的20コピー/反応を、PCR阻害の試験に対する対照として各反応中に後スパイクした。リアルタイムPCRアッセイをHPV16、18、および45、ならびにヒトDNA内在性の対照遺伝子HBBの検出に用いた。
【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
上記のd)を用い、120℃でインキュベートしてHPVタイプ16、18、および45を検出した。他の個々の希釈成分(1M Tris、0.5M NaCl、および1% Triton)は、HPVのタイプにかかわらず一貫したDNA検出をもたらさなかった。個々の各成分はDNA抽出の改善に寄与した。成分a、b、およびcを一緒に併せた場合に最良の結果が達成された。
【実施例3】
【0054】
120℃の希釈液1および室温の希釈液2のインキュベートを用いたSurePath LBCからのDNA抽出の比較
SurePath試料36本を収集し、以下の2つのプロトコールにしたがって抽出した。
1)加熱なし実験
BD Viper(商標)試料チューブ36本に、実施例1に記載した希釈液2 0.85mlを加えることによって準備した。SurePath臨床試料(0.25ml)を各チューブ中に加えた。試料と併せた後、最終の作業用バッファーの濃度は以下の通りであった:希釈液2に対して0.255M Tris−HCl、0.0129M NaCl (pHおよそ7.8)。チューブ36本をBD Viper(商標)上に搭載し、試料0.8mlを抽出に用いた。DNAを、溶出/中和バッファー400μl中に試料から溶出した。溶出液(20μl)をPCRマスター混合物5μlと混合した。リアルタイムPCRアッセイをHPV16、18、および45、ならびにヒトDNA内在性の対照遺伝子HBBの検出に用いた。
2)加熱実験
BD Viper(商標)試料チューブ36本を準備し、これに実施例1に記載した希釈液1 0.85mlを加えた。SurePath臨床試料(0.25ml)を各チューブ中に加えた。希釈液を試料と併せた後、最終の作業用バッファーの濃度は以下の通りであった:希釈液1中0.77M Tris−HCl、0.386M NaCl、および0.77% Triton X−100(pHおよそ9.0)。試料チューブ全てを120℃で20分間インキュベートし、次いで25分間室温に冷却した。チューブ36本をBD Viper(商標)上に搭載し、試料0.8mlを抽出に用いた。DNAを、溶出/中和バッファー400μl中に試料から溶出した。溶出液(20μl)をPCRマスター混合物5μlと混合した。リアルタイムPCR HPVアッセイをHPV16、18、および45、ならびにヒトDNA内在性の対照遺伝子HBBの検出に用いた。HPV45およびHPV18は検出されなかった。
【0055】
【表5】

【0056】
【表6】

【0057】
平均して、加熱するインキュベーション/希釈液1のプロトコールは、希釈液2を用いた室温のインキュベーションのプロトコールに比べてHBBの検出を4.29Ct短縮した。タイプ16のHPV DNAを有した試料(試料は全てHBB対照のDNAを有することが推定され、一方で全ての試料が1つまたは複数のタイプのHPVを有するわけではない)は短縮したCt値での検出を表し、したがって加熱するインキュベーションおよび希釈液1でのプロトコールを用いた場合、室温のインキュベーションおよび希釈液2を用いたものに比べて、より検出可能になる。
【実施例4】
【0058】
加熱あり、またはなしのSurePathおよびThinPrep PreservCyt LBCからのDNA抽出の比較
患者由来の保存細胞を、12500細胞/mlで、SurePathまたはThinPrep陰性臨床検体のいずれか一方中に希釈した。BD Viper試料チューブ32本を準備し、それらに希釈液1 0.85mlを加えた。患者細胞をスパイクしたSurePath(0.25ml)を試料チューブ16本に加え、患者細胞をスパイクしたThinPrep(0.25ml)を他の16本の試料チューブに加えた。希釈液を試料と併せた後、最終の作業用バッファー濃度は実施例1に記載した通りであった。各群から8本の試料チューブを室温でインキュベートし、8本を120℃で20分間インキュベートした。加熱したチューブを25分間室温に冷却した。次いで、試料チューブをBD Viper(商標)プラットフォーム上に搭載し、試料0.8mlをDNA抽出用に用いた。次いで、DNAを、溶出/中和バッファー400μl中に溶出した。溶出液(20μl)を、PCRマスター混合物5μlと混合した。HPV18およびHPV45プラスミドDNA標的20コピー/反応を、PCR阻害の試験用に各試料中に後スパイクした。リアルタイムPCRアッセイをHPV16、18、および45、ならびにヒトDNA内在性の対照遺伝子HBBの検出に用いた。
【0059】
【表7】

【0060】
【表8】

【0061】
【表9】

【0062】
希釈液1中120℃で検体をインキュベートすると、ThinPrepおよびSurePath両方の試料に対するHBB Ct値を有意に短縮した。この低減(室温のインキュベーションに比べて)は、ThinPrep試料に対して0.93Ctであり、SurePath試料に対して5.08Ctであった。加熱はThinPrepからのHPV16の検出に対して統計的に有意な効果がなかったが、SurePathからのHPV16の検出を有意に改善した。
【実施例5】
【0063】
様々なpH、温度、および時間での希釈液1を用いたSurePathからのDNAの抽出
114℃で10分間のインキュベーションのプロトコールを、実施例1に記載した希釈液1と併せて用いた(すなわち、1M Tris、0.5M NaCl、および1%Triton x100)。pHの異なる(9.0および7.8)試料を用い、様々なインキュベーション温度およびインキュベーション時間で試験した。実施例1の希釈液2に対して、やはり、様々なpHを評価した(16.67mMNaClおよび330mMTris)。
【0064】
患者由来の保存細胞を、12500細胞/mlの濃度でSurePath中に希釈した。試料チューブ56本を、BD Viper XTR(商標)プラットフォームにおいて用いるために準備した。7群に各々8個の試料が存在した。7群の1本中に下記の各々のバッファー(0.85ml)を加えた:
a.希釈液1、pH9.0(120℃、20分インキュベーション)
b.希釈液1、pH9.0(120℃、10分インキュベーション)
c.希釈液1、pH9.0(114℃、20分インキュベーション)
d.希釈液1、pH9.0(114℃、10分インキュベーション)
e.希釈液1、pH7.8(120℃、20分インキュベーション)
f.希釈液2、pH7.8(120℃、20分インキュベーション)
g.希釈液2、pH9.0(120℃、20分インキュベーション)
【0065】
希釈した患者試料のアリコート(0.25ml)を各群の各チューブ中に加えた。希釈液を試料と併せた後、最終の作業用バッファー濃度は実施例1に記載した通りである。各群を、その特定された上記の温度および時間でインキュベートした。次いで、チューブを全て25分間室温に冷却した。チューブを、それより、BD Viper XTR(商標)上に搭載し、0.8mlを試料からのDNA抽出に用いた。DNAを、溶出/中和バッファー400μl中に溶出した。各々の溶出液(20μl)を、PCRマスター混合物5μlと混合した。HPV18およびHPV45のプラスミドDNAの標的20コピー/反応を、PCR阻害のための試験に対して各反応中に後スパイクした。リアルタイムPCRアッセイをHPV16、18、および45、ならびにヒトDNA内在性の対照遺伝子HBBの検出に用いた。
【0066】
【表10】

【0067】
【表11】

【0068】
インキュベーションのプロトコール(114℃、10分)は、より高温の加熱プロトコールを用いた場合に得られた程度のHPV16に対する検出をもたらさなかった。しかし、用いたインキュベーションのプロトコールに関係なく、スパイクしたHPV45およびHPV18に対して同程度の検出が得られた。これより、114℃のプロトコールは、120℃のインキュベーションのプロトコールよりも低い程度のDNA抽出をもたらすことが結論づけられた。同様に、120℃10分間のインキュベーションは、120℃20分間のインキュベーションほどHPV16DNAの抽出に対して効果的ではなかった。pH7.8の希釈液1を用いたHPV16のDNAの抽出および検出は、pH9.0で希釈液1を用いた抽出および検出に比べて(120℃20分間のインキュベーションに対して)1Ct近くの改善を示した。希釈液1中120℃のインキュベーション後の抽出により、検出されたPCR複製物における標準偏差によって測定して、アッセイ変動性における有意な低減がもたらされた。
【実施例6】
【0069】
希釈液の有効性に対するpHの効果
患者由来の保存細胞を、12500細胞/mlで、SurePath LBC媒体中に希釈した。試料チューブ40本をBD Viper XTR(商標)プラットフォーム用に準備した。これらを5群に分けた。pHの異なる、実施例1に記載した希釈液1(0.85ml)を、各群におけるチューブに加えた。用いた希釈液は:
a.希釈液1、pH6.6
b.希釈液1、pH6.7
c.希釈液1、pH7.3
d.希釈液1、pH8.0
e.希釈液1、pH9.0、および
f.希釈液1、pH10.0。
【0070】
希釈した保存患者細胞(0.25ml)を各群の各チューブに加えた。各群を、120℃で20分間インキュベートし、次いで、25分間室温に冷却した。次いで、試料をBD Viper XTR(商標)上に搭載し、試料0.8mlを抽出に用いた。DNAを、溶出/中和バッファー400μl中に試料から溶出し、溶出液20μlをPCRマスター混合物5μlと混合した。HPV18およびHPV45のプラスミドDNAの標的20コピーを、PCR阻害に対して試験にするために各試料中に後スパイクした。リアルタイムPCRアッセイをHPV16、18、および45、ならびにヒトDNA内在性の対照遺伝子HBBの検出に用いた。
【0071】
【表12】

【0072】
【表13】

【0073】
図1A〜Dの結果に関して、pHが約7.3〜9の範囲にある希釈液1は、試料からのHPV検出の程度に関して最良の結果をもたらす。これは、試料からのDNAの抽出は、pHがこの範囲にある希釈液を用いる場合に最良であることを示している。スパイクしたHPV18および45の検出は全てのpHで基本的に同じであるので、HPV16およびHBBの検出における改善は、pHが7.3と9.0の範囲において得られるDNA抽出がよりよいことに起因する。
【実施例7】
【0074】
DNA抽出プロトコールの比較
患者由来の細胞を収集し、2つの等しい群に分けた。半分はThinPrep中に貯蔵し、他の半分はSurePath LBC中に貯蔵した。両群とも1.14×107細胞/mlの濃度であった。細胞濃度2.5×104細胞/mlの保存物を、SurePath媒体中1.14×107細胞/mlの保存物から調製した。この保存物を以下の抽出プロトコールに用いた。全ての抽出プロトコールの後に、BD Viper XTR(商標)プラットフォームを用いてDNA抽出を行った。
【0075】
第1のプロトコールにおいて、SurePath保存物の試料226μl 8本を、13,000gの力で5分間回転させた。得られた上清をデカントし、2mg/mlの濃度のプロテイナーゼKをやはり含んでいた希釈液2(実施例1において記載)1ml中に再懸濁した。試料8本をBD Viper XTR(商標)プラットフォームで用いるために試料チューブ中に移し、70℃で1時間インキュベートした。この後、以下に記載するように、BD Viper XTR(商標)プラットフォーム上で抽出を行った。
【0076】
第2のプロトコールにおいて、SurePath保存物の試料(226μl)8本を、2mg/mlの濃度のプロテイナーゼKをやはり含んでいた希釈液2 774μlの試料に加えることによって希釈した(1:4)。試料8本をBD Viper XTR(商標)プラットフォームで用いるために試料チューブ中に移し、70℃で1時間インキュベートした。この後、以下に記載するように、BD Viper XTR(商標)プラットフォーム上で抽出を行った。
【0077】
第3のプロトコールにおいて、SurePath保存物の試料(250μl)8本を、希釈液2(実施例1に記載)850μlと併せた。試料8本をBD Viper XTR(商標)プラットフォームで用いるために試料チューブ中に移し、120℃で20分間インキュベートした。この後、以下に記載するように、BD Viper XTR(商標)プラットフォーム上で抽出を行った。
【0078】
第4のプロトコールにおいて、SurePath保存物の試料(250μl)8本を、希釈液1(実施例1に記載)850μlと併せた。試料8本をBD Viper XTR(商標)プラットフォームで用いるために試料チューブ中に移し、120℃で20分間インキュベートした。この後、以下に記載する通り、BD Viper XTR(商標)プラットフォーム上で抽出を行った。
【0079】
陰性対照として、希釈液2のアリコート850μl 8本を、汚染されていないSurePath媒体250μlと併せた。この後、以下に記載する通り、BD Viper XTR(商標)プラットフォーム上で抽出を行った。
【0080】
試料を全てBD Viper XTR(商標)上に搭載し、試料0.8mlを抽出に用いた。DNAを、溶出/中和バッファー400μl中試料から溶出し、溶出液20μlをPCRマスター混合物5μlと混合した。リアルタイムPCRアッセイをHPV16、およびヒトDNA内在性の対照遺伝子HBBの検出に用いた。
【0081】
【表14】

【0082】
希釈液1中120℃のインキュベーションにより、HPV16に対して平均して最小のCT値が得られた。これは、試験したプロトコールの中でも、希釈液1中でのインキュベーションが、試料からのDNAの最良の抽出をもたらしたことを示している。希釈液2を用いる120℃のインキュベーションのプロトコールは、遠心沈澱なしの70℃のプロテイナーゼKでのインキュベーションから得られた結果よりもよい結果がもたらされた。具体的に述べると、希釈液1は、i)70℃のプロテイナーゼK処理(遠心沈澱後)、ii)プロテイナーゼK処理(遠心沈澱なし)、およびiii)希釈液2中120℃のインキュベーションに比べた場合、HPV16の平均Ct値をそれぞれ0.90、2.72、および1.5低減し、HBBのCt値をそれぞれ0.97、2.45、および1.72低減した。
【実施例8】
【0083】
血液をスパイクした試料からの抽出
プールしたSurePathおよびThinPrepの臨床陰性検体を全血と併せた。試料は1%、2%、5%、および10%(試料体積あたりの血液の体積)を有していた。試料を全て、実施例1に記載した希釈液1中、120℃で20分間インキュベートした。この後、先の実施例に記載したプロトコールを用いてBD Viper XTR(商標)プラットフォーム上で抽出を行った。試料を全て、BD Viper XTR(商標)上に搭載し、試料0.8mlを抽出に用いた。DNAを、溶出/中和バッファー400μl中に試料から溶出し、溶出液20μlをPCRマスター混合物5μlと混合した。リアルタイムPCR HPVアッセイをヒトDNA内在性の対照遺伝子HBBの検出に用いた。
【0084】
【表15】

【0085】
【表16】

【0086】
アッセイは、LBC検体中にしばしば見られる物質であり、PCR反応の既知の阻害物質である高濃度の全血の影響を受けなかった。このDNA抽出方法は、臨床試料中に高濃度の全血が存在してもPCR増幅に適するDNAを送達する。
【実施例9】
【0087】
ホルマリン固定し、パラフィン包埋した組織切片からのDNAの抽出
ホルマリン固定し、パラフィン包埋した頸部の生検組織切片を、実施例1に記載した希釈液1の2ml中120℃で25分間インキュベートした。次いで、試料を室温に冷却した。冷却後、試料を、先に記載した、BD Viper XTR(商標)プラットフォーム上での抽出プロトコールに供した。試料を全てBD Viper XTR(商標)上に搭載し、試料0.8mlを抽出に用いた。DNAを、溶出/中和バッファー400μl中試料から溶出し、溶出液50μlをPCRマスター乾燥混合物中に加えた。リアルタイムPCRアッセイをHPVサブタイプ16、18、45、31、51、52、59、(33、58、56、66)、(39、68、35)、およびヒトDNA内在性の対照遺伝子HBBの検出に用いた。
【0088】
【表17】

【0089】
個々の試料22個中20個において、HPV DNAのいくつかのサブタイプ(1つまたは複数)が上首尾に検出された。ヒト内在性ベータグロブリン遺伝子が、試料22個中21個に検出された。リアルタイムPCR、ならびにHPVサブタイプ特異的なプライマーおよびHBBに対してベータグロブリン特異的なプライマーを用いた。ベータグロブリンの結果は、現在のDNA抽出方法に付随する明らかなPCRの阻害は存在しなかったことを指摘している。1試料においてベータグロブリンのシグナルを検出できず、第二にベータグロブリンおよびHPVシグナルの両方を検出できなかったのは、DNA抽出用に処理加工された切片中に十分な標的の細胞がなかったことによる可能性がある。
【実施例10】
【0090】
直接的な化学的溶解用の希釈液1を用いたSurPathおよびThinPrep LBC媒体中に貯蔵された患者由来の細胞からのHPV DNAの抽出
患者由来の保存細胞を、5000細胞/mlで、SurePathおよびThinprep LBC中に希釈した。各試料タイプ16本のチューブは以下の希釈液0.05mlを有していた:1.5M Tris、0.386M NaCl、および1.5% Triton X−100(v/v)。希釈液のpHは7.9であった。SurePathおよびThinPrep中の希釈した患者由来の細胞(0.5ml)を、希釈液を有する試料チューブの各々に加えた。試料と併せた後、最終の作業用バッファーの濃度は以下の通りであった:0.75M Tris−HCl、0.193M NaCl、および0.75% Triton X−100(v/v)(pHおよそ7.9)。併せた溶液を、直接的な化学的溶解として120℃で20分間インキュベートした。インキュベーション後、試料を、BD Viper(商標)XTRプラットフォーム上の抽出用に調製した。先に記載した抽出のプロトコールを用いた。すなわち、試料を全てBD Viper XTR(商標)上に搭載し、試料0.8mlを抽出に用いた。試料の半分は抽出の間に溶解のステップがあり、試料の半分にはなかった。DNAを、溶出/中和バッファー400μl中試料から溶出し、溶出液20μlをPCRマスター混合物5μlと混合した。HPV18およびHPV45プラスミドDNAの標的20コピーを、PCR阻害に対して試験するために、各試料中に後スパイクした。リアルタイムPCRアッセイをHPV16、18、および45、ならびにヒトDNA内在性の対照遺伝子HBBの検出に用いた。アッセイの結果を以下に記載する。
【0091】
【表18】

【0092】
【表19】

【0093】
抽出したDNA(すなわち、HPV16およびHBB)ならびにスパイクしたDNA(すなわち、HPV45およびHPV18)の両方に対するDNAの収率は、NA抽出の間の溶解ありおよび溶解なしの両方に対してほぼ同じである(すなわち、本明細書に記載する組成物および方法の一例を用いる直接的な化学的溶解)。これは、ThinPrep(TP)およびSurePath(SP)両方の媒体に対して当てはまった。これは、本明細書に記載する組成物および方法は、他の酵素的または化学的な溶解ステップを必要とせずに、試料中の細胞の直接的な化学的溶解として供することを示している。
【実施例11】
【0094】
直接的な化学的溶解用の希釈液を用いたSurePath LBC媒体中に貯蔵された患者由来の細胞からのViper DNA抽出の能力
1か月間SurePath LBC中に貯蔵したC33A細胞を、108、107、106、105、lO4、103、500、250、125、62.5、31.25細胞/mlに希釈した。各濃度には4本の反復が含まれた。各濃度のSurePath細胞保存物0.25ml(各濃度0.25ml)をHPV希釈液(1.0M Tris、0.257M NaCl、および1.0% Triton X−100(v/v);pH7.9)0.75mlと混合した。Triton X−100(v/v);pH7.9)。希釈液を試料と併せた後、直接的な化学的溶解のための組成物の最終の作業用濃度は、0.75M Tris−HCl、0.193M NaCl、およびTriton X−100(v/v)0.75%であった(pHおよそ7.9)。希釈液中の試料を120℃で20分間予め温め、次いで室温に冷却した。これらの試料(0.8ml)をViper XTR装置を用いて抽出し、最終体積400μLに中に溶出した。DNA溶出物(20μL)を、リアルタイムPCR中PCRマスター混合物(5μL)と混合して、抽出したHBB DNAのコピー数を定量化した。PCRに、100,000、10,000、1000、100、10、1コピー/反応の精製したヒトゲノムDNAを加え、試料のDNAの定量化に用いた。抽出の効率を、投入した細胞数に基づき、リアルタイムPCRおよび合計のHBBコピーによって定量化した抽出したHBBコピーの比率から計算した。
【0095】
【表20】

【0096】
SurePath媒体からの抽出の能力を、上記に記載した希釈液を用いて表11に図示する。表11は、直接的な化学的溶解およびその後のDNA抽出は、モデル系としてSurePath媒体中ヒト頸部癌細胞系を用いて、6logを超える直線状のダイナミックレンジをもたらし、平均の効率は58%であったことを示している。
【実施例12】
【0097】
直接的な化学的溶解HPV希釈液の、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)のタンパク質バイオマーカー検出との適合性
SiHa細胞を、作業濃度6.7×106細胞/mlのHPV希釈液中室温で再懸濁し、無希釈で、およびリン酸緩衝食塩水0.1%Tween中1%ウシ血清アルブミン(BSA)中2倍の段階希釈で用いた。標的の抗原を、標準のサンドイッチ酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)において検出した。標的の抗原を、一次抗原を用いてマイクロウエルプレートの表面に対して結合させ、その後、ストレプトアビジンおよび西洋ワサビのペルオキシダーゼとコンジュゲートしている二次抗体、ならびに化学発光の基質を用いて検出した。図2は、4つの標的の分析物各々に対する結果を示すものであり(p16INK4a、HPV16 EIE4、MCM2、およびMCM6)、標的の抗原は容易に検出された。抗原の完全性は標的の抗原2つ(MCM2およびMCM6)に対するウエスタン免疫ブロッティングによって確認され、この場合標的のタンパク質は両方とも全長であることが見出され(およそ100キロダルトン)、著しい分解生成物はなかった(データ図示せず)。これらの結果は、HPV希釈バッファーはタンパク質バイオマーカーの回収および検出に適合性であり、核酸の一次的な検出およびその後の、またはその前の、疾患の検出をさらに改善または洗練するためのタンパク質のバイオマーカーの検出に用いられ得ることを実証するものである。
【0098】
本明細書に引用する参照は全て、個々の各出版物または特許または特許出願が、全ての目的でその全文において参照によって組み入れられると具体的かつ個々に指摘されたように、その全文において参照によって、および同程度の目的で本明細書に組み入れられる。
【0099】
当業者には明らかである通り、本発明の多くの改変および変形を、その精神および範囲から逸脱することなしに行うことができる。本明細書に記載する特定の実施形態は例示のみによって提供されるものであり、本発明は、それに対してこのような特許請求の範囲が権利を与えられる同等物の全範囲とともに、添付の特許請求の範囲の用語によってのみ限定されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)アッセイ適合性のバッファー組成物と、
b)アッセイ適合性の界面活性剤と
を含む、検体貯蔵のための組成物と併せるための直接的な化学的溶解のための組成物。
【請求項2】
アッセイ適合性のバッファー組成物はバッファー成分および金属塩成分をさらに含む、請求項1に記載の直接的な化学的溶解のための組成物。
【請求項3】
pHは約6.6から約10の範囲にある、請求項2に記載の直接的な化学的溶解のための組成物。
【請求項4】
金属塩成分は、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、酢酸ナトリウム(C23Na02)、および硫酸アンモニウム((NH42S04)からなる群から選択され、直接的な化学的溶解のための組成物中の金属塩の濃度は少なくとも約0.01Mである、請求項2に記載の直接的な化学的溶解のための組成物。
【請求項5】
バッファー成分の濃度は約0.2Mから約2Mの範囲にある、請求項4に記載の直接的な化学的溶解のための組成物。
【請求項6】
金属塩成分はNaClであり、NaCl濃度は約0.01Mから約1Mの範囲にある、請求項5に記載の直接的な化学的溶解のための組成物。
【請求項7】
バッファー成分は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、およびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの酸塩からなる群から選択される、請求項6に記載の直接的な化学的溶解のための組成物。
【請求項8】
非イオン性界面活性剤はポリエチレングリコールベースの非イオン性界面活性剤である、請求項7に記載の直接的な化学的溶解のための組成物。
【請求項9】
非イオン性界面活性剤の濃度は約0.01から約2パーセント(v/v)の範囲にある、請求項7に記載の直接的な化学的溶解のための組成物。
【請求項10】
非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、およびポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテルからなる群から選択される、請求項9に記載の直接的な化学的溶解のための組成物。
【請求項11】
バッファー成分はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの酸塩であり、バッファー成分の濃度は約0.75Mであり、NaClの濃度は約0.19Mであり、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテルの濃度は約0.75パーセント(v/v)である、請求項10に記載の直接的な化学的溶解のための組成物。
【請求項12】
グリシンをさらに含む、請求項11に記載の直接的な化学的溶解のための組成物。
【請求項13】
試料を、a)アッセイ適合性のバッファー組成物、およびb)アッセイ適合性の界面活性剤を含む直接的な化学的溶解のための組成物と併せるステップと、
検体貯蔵のための組成物から少なくとも試料の一部分を除去するステップであって、除去された部分も検体貯蔵のための組成物を含んでいるステップと、
試料の除去された部分を、少なくとも80℃である温度で、試料の除去された部分中の細胞の少なくとも一部分を溶解するのに十分な時間インキュベートするステップと、
試料の除去された部分から標的を抽出するステップと、
試料の除去された部分中の標的をアッセイするステップと
を含む、検体貯蔵のための組成物中に貯蔵される試料を分析するための方法。
【請求項14】
標的は標的核酸であり、アッセイは標的核酸に対する増幅アッセイである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
標的核酸はDNAである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
標的核酸はRNAである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
試料は血液試料である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
試料は、膣の細胞、頸部の細胞、子宮頸管の細胞、肛門の細胞、剥脱した細胞、口腔の細胞、咽頭の細胞、および腹膜の細胞からなる群から選択される細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
細胞は、スワブ、ブラシ、ブルーム(broom)、または生検によって採集される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
検体貯蔵のための組成物は、ホルムアルデヒド、ギ酸、メタノール、エタノール、緩衝ホルマリン、EDTA、ポリペプチド、ポリアミノ酸、および多糖からなる群から選択される少なくとも1つの構成成分を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
輸送媒体は緩衝ホルマリンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
試料の除去された部分は、溶解および抽出のステップの前に検体貯蔵のための媒体からさらに分離されない、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
直接的な化学的溶解のための組成物のpHは約6.6から約10の範囲にある、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
アッセイ適合性のバッファー組成物はバッファー成分および金属塩を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項25】
金属塩はNaClであり、直接的な化学的溶解のための組成物中のNaCl濃度は少なくとも約0.01Mである、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
バッファー成分の濃度は約0.2Mから約2Mの範囲にある、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
NaClの濃度は約0.01Mから約1Mの範囲にある、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
非イオン性界面活性剤の濃度は約0.01から約2パーセント(v/v)の範囲にある、請求項13に記載の方法。
【請求項29】
バッファー成分はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの酸塩であり、バッファーの濃度は約0.75Mであり、NaCl濃度は約0.19Mであり、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテルの濃度は約0.75パーセント(v/v)である、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
抽出のステップは手操作のプロセスによって行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項31】
増幅ステップのステップは手操作のプロセスによって行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項32】
抽出のステップおよび増幅のステップは自動化されたプロセスによって行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項33】
標的はタンパク質であり、アッセイはタンパク質に対する検出アッセイである、請求項13に記載の方法。
【請求項34】
タンパク質はバイオマーカーである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
バイオマーカーは抗体および抗原からなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
アッセイは酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)である、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
検体貯蔵のための組成物を、a)アッセイ適合性のバッファー成分、およびb)非イオン性界面活性剤を含む直接的な化学的溶解のための組成物と一緒に含み、検体貯蔵は組織試料を保存するために提供される、細胞成分から標的分子を抽出するための診断キット。
【請求項38】
アッセイ適合性のバッファー組成物はバッファー成分および金属塩を含む、請求項37に記載の診断キット。
【請求項39】
金属塩はNaClであり、直接的な化学的溶解のための組成物中のNaClの濃度は少なくとも約0.01Mである、請求項38に記載の診断キット。
【請求項40】
バッファー成分の濃度は約0.2Mから約2Mの範囲にある、請求項37に記載の診断キット。
【請求項41】
直接的な化学的溶解のための組成物は約7から約9の範囲のpHを有する、請求項40に記載の診断キット。
【請求項42】
非イオン性界面活性剤の濃度は約0.01から約2パーセント(v/v)の範囲にある、請求項40に記載の診断キット。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−503639(P2013−503639A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528040(P2012−528040)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/047653
【国際公開番号】WO2011/028887
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】